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特開2022-148536波形観測装置及びマスクマージンの計算方法
<図1>
  • 特開-波形観測装置及びマスクマージンの計算方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148536
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】波形観測装置及びマスクマージンの計算方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 13/20 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01R13/20 T
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050263
(22)【出願日】2021-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】吉野 創
(57)【要約】
【課題】任意の違反サンプルを無視したときのマスクマージンを知ることができる。
【解決手段】マスク設定手段4bは、データ信号のアイパターンで囲まれる領域の形とほぼ相似な形状で、データ信号のビットレートおよび振幅に対応した大きさのマスクを基準マスクとして設定する。マスク表示手段4cは、データ信号のアイパターンで囲まれる領域と重なりあう位置にマスク設定手段にて設定された基準マスクを表示する。マスク品質評価手段4fは、基準マスクの領域内の任意のピクセルに対応するサンプルを違反サンプルとして選択したときに、違反サンプルを無視して基準マスクを拡大していき、拡大したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算して基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクマージン試験の評価対象となるデータ信号をサンプリングして前記データ信号の波形データを取得し、この取得した波形データに基づいて前記データ信号のアイパターンを表示画面に表示する波形観測装置(1)であって、
前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域の形とほぼ相似な形状で、前記データ信号のビットレートおよび振幅に対応した大きさのマスクを、前記データ信号の品質評価用の基準マスクとして設定するマスク設定手段(4b)と、
前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域と重なりあう位置に前記マスク設定手段にて設定された基準マスクを表示するマスク表示手段(4c)と、
前記基準マスクの領域内の任意のピクセルに対応するサンプルを違反サンプルとして選択したときに、該違反サンプルを無視して前記基準マスクを拡大していき、拡大したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算して前記基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行うマスク品質評価手段(4f)と、を備えたことを特徴とする波形観測装置。
【請求項2】
前記基準マスクが波形の上部・下部を含むことを特徴とする請求項1に記載の波形観測装置。
【請求項3】
マスクマージン試験の評価対象となるデータ信号をサンプリングして前記データ信号の波形データを取得し、この取得した波形データに基づいて前記データ信号のアイパターンを表示画面に表示する波形観測装置(1)のマスクマージンの計算方法であって、
前記波形観測装置のマスク設定手段(4b)が、前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域の形とほぼ相似な形状で、前記データ信号のビットレートおよび振幅に対応した大きさのマスクを、前記データ信号の品質評価用の基準マスクとして設定するステップと、
前記波形観測装置のマスク表示手段(4c)が、前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域と重なりあう位置に前記マスク設定手段にて設定された基準マスクを表示するステップと、
前記基準マスクの領域内の任意のピクセルに対応するサンプルを違反サンプルとして選択したときに、前記波形観測装置のマスク品質評価手段(4f)が、前記違反サンプルを無視して前記基準マスクを拡大していき、拡大したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算して前記基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行うステップと、を含むことを特徴とするマスクマージンの計算方法。
【請求項4】
前記基準マスクが波形の上部・下部を含むことを特徴とする請求項3に記載のマスクマージンの計算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種デジタル機器や伝送システムが扱う被測定物からの被測定信号をサンプリングしてアイ波形を表示する波形観測装置及びマスクマージンの計算方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種デジタル機器や伝送システムが扱う被測定物からの被測定信号をサンプリングしてアイ波形を表示する波形観測装置としては、例えば下記特許文献1に開示されるようなサンプリングオシロスコープが知られている。
【0003】
この種のサンプリングオシロスコープは、例えば生産ラインにおいて、被測定物の性能を確認するため、被測定物からの被測定信号をサンプリングしてアイ波形を表示し、ジッタやマスクマージンなどを測定し、測定した値を評価する際に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-064006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ネットワークを光でやり取りする光トランシーバを被測定物として、サンプリングオシロスコープを用いてマスクマージン試験を行う場合、光トランシーバの特性や雑音により、アイ波形に設定される基準マスクの領域内のピクセルに対応するサンプル、すなわち、マスクマージン試験に違反するサンプルを含む場合がある。このため、ユーザからは、違反サンプルの原因を改善した場合にマスクマージンが改善するか、マスクマージン試験に合格するかを確認するため、違反サンプルを無視したときのマスクマージンがどうなるか知りたいという要望があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、任意の違反サンプルを無視したときのマスクマージンを知ることができる波形観測装置及びマスクマージンの計算方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された波形観測装置は、マスクマージン試験の評価対象となるデータ信号をサンプリングして前記データ信号の波形データを取得し、この取得した波形データに基づいて前記データ信号のアイパターンを表示画面に表示する波形観測装置1であって、
前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域の形とほぼ相似な形状で、前記データ信号のビットレートおよび振幅に対応した大きさのマスクを、前記データ信号の品質評価用の基準マスクとして設定するマスク設定手段4bと、
前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域と重なりあう位置に前記マスク設定手段にて設定された基準マスクを表示するマスク表示手段4cと、
前記基準マスクの領域内の任意のピクセルに対応するサンプルを違反サンプルとして選択したときに、該違反サンプルを無視して前記基準マスクを拡大していき、拡大したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算して前記基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行うマスク品質評価手段4fと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載された波形観測装置は、請求項1の波形観測装置において、
前記基準マスクが波形の上部・下部を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載されたマスクマージンの計算方法は、マスクマージン試験の評価対象となるデータ信号をサンプリングして前記データ信号の波形データを取得し、この取得した波形データに基づいて前記データ信号のアイパターンを表示画面に表示する波形観測装置1のマスクマージンの計算方法であって、
前記波形観測装置のマスク設定手段4bが、前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域の形とほぼ相似な形状で、前記データ信号のビットレートおよび振幅に対応した大きさのマスクを、前記データ信号の品質評価用の基準マスクとして設定するステップと、
前記波形観測装置のマスク表示手段4cが、前記データ信号のアイパターンで囲まれる領域と重なりあう位置に前記マスク設定手段にて設定された基準マスクを表示するステップと、
前記基準マスクの領域内の任意のピクセルに対応するサンプルを違反サンプルとして選択したときに、前記波形観測装置のマスク品質評価手段4fが、前記違反サンプルを無視して前記基準マスクを拡大していき、拡大したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算して前記基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行うステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載されたマスクマージンの計算方法は、請求項3のマスクマージンの計算方法において、
前記基準マスクが波形の上部・下部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基準マスクの領域内における任意の違反サンプルを無視したときのマスクマージンを知ることができ、違反サンプルの原因を改善した場合にマスクマージンが改善するか、コンプライアンステストに合格するかを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る波形観測装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】波形観測対象となる被測定信号(PAM2信号)の一例を示す図である。
図3】(a)データ信号とサンプリングクロックとの関係を示す図、(b)データ信号のサンプル値の一例を示す図である。
図4】被測定信号(PAM2信号)のアイパターンの一例を示す図である。
図5】閾値との比較によりサンプル値をシンボル値に変換した一例を示す図である。
図6】基準マスクを拡大してマスクマージンを計算するときの説明図である。
図7】基準マスクの領域内に違反サンプルが存在するアイパターンの一例を示す図である。
図8図7の違反サンプルを無視したときの基準マスクと拡大したマスクとの関係を示す図である。
図9】違反サンプルを無視したときのマスクマージンの計算方法のフローチャートである。
図10】基準マスクが波形の上部・下部を含む場合の説明図であって、マスクマージンが0%を示す図である。
図11】基準マスクが波形の上部・下部を含む場合の説明図であって、マスクマージンが100%を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、波形観測装置1は、各種デジタル機器や伝送システムが扱う被測定物(例えば光トランシーバなどの測定対象)からのPAM信号(PAMn信号:n=2以上の正の整数)による被測定信号をサンプリングしてアイ波形を表示するサンプリングオシロスコープであり、規格によって定められた基準マスクの領域内に伝送波形が含まれないようにする試験(マスクマージン試験)を行うため、操作部2、波形データ取得部3、演算処理部4、表示部5を備えて概略構成される。
【0015】
被測定信号は、図2に示すように、一定のシンボル長、周期Tごとに同じ波形を繰り返す周期信号(例えばPRBSパターン)によるPAM信号(PAMn信号:n=2以上の正の整数)である。被測定信号は、シンボル長、周期Tが操作部2の操作により予め後述するサンプリング制御部12に設定される。
【0016】
なお、波形観測装置1に入力される被測定信号は、例えばNRZ信号(PAM2信号)のときシンボル値として「0」、「1」の値を取り、PAM3信号のときシンボル値として「0」、「1」、「2」の値を取り、PAM4信号のときシンボル値として「0」、「1」、「2」、「3」の値を取るが、NRZ信号、PAM3、PAM4信号で一連の表示処理は変わらないので、一連の表示処理に関しては主に被測定信号がNRZ信号の場合を図示して説明する。
【0017】
操作部2は、波形観測および違反サンプルを無視したときのマスクマージンの計算に必要な各種設定(例えば被測定信号のシンボル長、周期T、サンプリング間隔、基準マスクに関する情報など)、違反サンプルの選択、各種指示(測定開始・停止の指示など)をユーザの操作により行う。
【0018】
波形データ取得部3は、例えば図2に示すような被測定信号としてのデータ信号x(t)を被測定物から受け、データ信号x(t)の波形データを取得するものであり、サンプリング部11、サンプリング制御部12、波形データメモリ13を備える。
【0019】
サンプリング部11は、操作部2にて設定されたサンプリング間隔で被測定物のデータ信号x(t)をサンプリングするもので、サンプリングクロック発生器11aとA/D変換器11aから構成される。
【0020】
サンプリングクロック発生器11aは、サンプリング制御部12の制御により、図3(a)に示すように、被測定物のデータ信号x(t)をサンプリングするためのパルス信号であるサンプリングクロックC(s)を発生する。
【0021】
A/D変換器11bは、サンプリングクロック発生器11bが発生するサンプリングクロックC(s)に同期したタイミングで被測定物のデータ信号x(t)のサンプリングを行い、このサンプリングで得られたサンプル値をデジタルのデータX(k)に順次変換する(例えば図3(b)のA,B,C)。
【0022】
サンプリング制御部12は、サンプリングクロックC(s)の発生タイミングが所定時間Δtずつ変わるようにサンプリングクロック発生器11aを制御する。
【0023】
波形データメモリ13は、A/D変換部11bにて順次変換されたデータX(k)の振幅(power)・位置(index)を保存する。
【0024】
すなわち、上述した波形データ取得部3では、サンプリング制御部12にてサンプリングクロックC(s)の発生タイミングを所定量Δtずつ変えながらデータ信号x(t)をA/D変換器11bにてサンプリングクロックC(s)のタイミングでサンプリングを複数周期行うことにより、データ信号x(t)のシンボル長分のサンプル値(例えばデータ信号x(t)の1つのシンボルにつき8サンプル)に基づくデジタルのデータX(k)を取得し、取得したデータX(k)の振幅・位置を波形データメモリ13に保存する。
【0025】
演算処理部4は、波形観測に関わる処理を統括するもので、アイパターン表示手段4a、マスク設定手段4b、マスク表示手段4c、シンボル解析手段4d、シンボル解析メモリ4e、マスク品質評価手段4fを備える。
【0026】
アイパターン表示手段4aは、波形データ取得部3にて取得したデータ信号x(t)の波形データに基づいてデータ信号x(t)のアイパターンを表示部5の表示画面に表示する。さらに説明すると、アイパターン表示手段4aは、波形データメモリ13に保存されたデータx(k)の振幅・位置を参照して、表示部5の表示画面上の対応するピクセルの位置に対し、図4に示すようなデータ信号x(t)のアイパターンの描画を行う。アイパターンは、位置が一定の値で折り返って描画される。
【0027】
マスク設定手段4bは、データ信号x(t)のアイパターンに関する品質評価用の基準マスクを設定する。基準マスクは、形状、横軸(時間軸)、縦軸(振幅軸)が規格や被測定物に応じて設定される。具体的に、基準マスクは、データ信号x(t)のアイパターンで囲まれた領域の外形とほぼ相似な形状(例えば上下の対向する2辺が平行な6角形、4角形、8角形などの多角形、菱形など)であり、横軸(時間軸)方向の大きさがデータ信号x(t)のビットレートに対応(例えば公称周期Tcの0.6倍)し、縦軸(振幅軸)方向の大きさがデータ信号x(t)の振幅に対応(例えばNRZ信号のデータ信号x(t)の公称振幅の1/2)したマスクである。
【0028】
なお、基準マスクの形状データは、不図示のメモリに予め記憶されており、評価対象のデータ信号x(t)のビットレートや振幅を操作部2から入力し、その入力情報に対応した基準マスクを選択するのが好ましい。
【0029】
また、ユーザが任意の形状のマスクの外形を決定するパラメータ(マスクの高さ、長さおよび前部、後部のエッジ角など)を操作部2の操作により設定登録しておき、この設定登録したパラメータに基づくマスクを選択することもできる。
【0030】
マスク表示手段4cは、マスク設定手段4bにて設定された基準マスクを、表示部5の表示画面上のアイパターンの品質評価に適した特定位置に表示する。
【0031】
このアイパターンに対する基準マスクの表示位置は、NRZ信号のデータ信号x(t)の場合、時間方向についてはアイパターンの中央ビットの半周期(Tc/2)の位置で、振幅方向についてはデータ信号x(t)のデータ「0」の設計電力WL(例えば0μW)とデータ「1」の設計電力WH(例えば1000μW)の中心の電力(WH-WL)/2の位置に基準マスクのセンタ位置が一致するように設定する。
【0032】
また、PAM4信号のデータ信号x(t)の場合、時間軸方向については各アイパターンの中央ビットの半周期(Tc/2)の位置で、振幅方向についてはデータ「0」の設定電力WL(例えば0μW)とデータ「1」の設計電力WM1(例えば1000μW)の中心の電力(WM1-WL)/2の位置、データ「1」の設定電力WM1(例えば1000μW)とデータ「2」の設計電力WM2(例えば2000μW)の中心の電力(WM2-WM1/2の位置、データ「2」の設計電力WM2(例えば2000μW)とデータ「3」の設計電力WH(例えば3000μW)の中心の電力(WH-WM2)/2の位置にそれぞれの基準マスクのセンタ位置が一致するように設定する。
【0033】
シンボル解析手段4dは、閾値との比較に基づいて波形データメモリ13の波形データの各サンプルをシンボル値に変換する。例えば波形データメモリ13の波形データが図5の点線で示すPAM2(NRZ)信号の場合、波形データの各サンプルは閾値より大きければシンボル値「1」、閾値より小さければシンボル値「0」に変換され、結果として010101110000111のシンボル値に変換される。
【0034】
なお、閾値は、周知の方法や任意の方法で計算して設定されるものであり、データ信号x(t)がPAM2(NRZ)信号であればシンボル値「0」、「1」に変換するための1つの閾値が設定され、PAM3信号であればシンボル値「0」、「1」、「2」に変換するための2つの閾値が設定され、PAM4信号であればシンボル値「0」、「1」、「2」、「3」に変換するための3つの閾値が設定される。
【0035】
シンボル解析メモリ4eは、シンボル解析手段4dにて変換された波形データの各サンプルのシンボル値を保存する。
【0036】
なお、波形データの各サンプルとシンボル値の対応はシンボル解析手段4dによって紐付けられてシンボル解析メモリ4eに保存されており、表示部5の表示画面上の表示ポイントを操作部2にて選択してサンプルの振幅・位置を指定すれば、指定したサンプルのシンボル値を取得することができる。
【0037】
マスク品質評価手段4fは、データ信号x(t)に対する種々の品質評価処理として、例えばアイパターンとマスクを用いたマスクマージン試験が指定された場合、設定された基準マスクの大きさを順次拡大(または縮小)させつつ、その大きさが異なる基準マスクの領域に、アイパターンを形成する波形データの所定数P個の表示ポイントのうち幾つが入るかを計数し、その計数値とマスク拡大率(またはマスク縮小率)との関係からデータ信号の基準マスクに対するマージンに関する品質評価を行い、その評価結果を表示部5の表示画面に表示する。
【0038】
さらに説明すると、マージン測定では、アイパターン表示に使用する波形データの総数Pとして、K個の波形データを1取得単位とし、これを規定回数A回(例えば1000回)繰り返し、波形データ取得部3にP=K・A個のデータを取得させ、このデータで表示されるアイパターンに対し、基準マスクを拡大(または縮小)していき、拡大(または縮小)したマスクに入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算する。例えば図6のPAM4信号のアイパターンに対し、基準マスクMを拡大していき、拡大したマスクM1に入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算する。
【0039】
また、マスク品質評価手段4fは、図7に示すように、基準マスクMの領域内の任意のピクセルに対応するサンプル(図7の四角で囲むS)を違反サンプルとして選択したときに、この違反サンプルSを無視して基準マスクMを拡大していき、図8に示すように、拡大したマスクM2に入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算(再計算)する。なお、図7および図8において、M0は基準マスクMを拡大してマスクマージンを計算する前のデータ信号x(t)のサンプルを含まないマスク領域である。
【0040】
表示部5は、例えば液晶表示器などで構成され、データ信号x(t)の波形データに基づくアイパターン、マスク設定手段4bにて設定される基準マスク、データ信号x(t)のサンプルを含まないマスク領域、マスク品質評価手段4dによるデータ信号x(t)の品質評価の結果、マスクマージンの計算結果、違反サンプルを含むシンボル値の推移などを表示する。
【0041】
次に、上記のように構成される波形観測装置1の動作として、マスクマージン試験において違反サンプルを無視したときのマスクマージンの計算方法について図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0042】
ユーザは、操作部2を操作し、波形観測および違反サンプルを無視したときのマスクマージンの計算に必要な各種設定として、被測定信号のシンボル長、周期T、サンプリング周期、基準マスクMに関する情報などを設定する(図9のST1)。
【0043】
波形データ取得部3は、データ信号x(t)が入力されると、データ信号x(t)のシンボル長分のサンプルに基づくデジタルのデータX(k)を取得し、取得したデータX(k)の振幅・位置を波形データメモリ13に保存する(図9のST2)。
【0044】
そして、アイパターン表示手段4aは、波形データ取得部3にて取得したデータ信号x(t)の波形データに基づいてデータ信号x(t)のアイパターンを表示部5の表示画面に表示する(図9のST3)。
【0045】
続いて、マスク表示手段4cは、マスク設定手段4bは、データ信号x(t)のアイパターンに関する品質評価用の基準マスクMがマスク設定手段4bにて設定されると、表示部5の表示画面上のアイパターンの品質評価に適した特定位置に基準マスクMを表示する(図9のST4)。
【0046】
そして、マスク品質評価手段4fは、基準マスクMの領域内の任意のピクセルに対応するサンプル(例えば図7の四角で囲むS)が違反サンプルとして選択されると(図9のST5)、この違反サンプルSを無視して基準マスクMを拡大していき、図8に示すように、拡大したマスクM2に入るデータ数がリミットを越えない最大の大きさをマスクマージンとして計算する(図9のST6)。
【0047】
ところで、基準マスクMは、波形(アイパターン)の上部・下部を含んでもよい。この場合、図10に示すように、基準マスクMの上部マスクMUの下端とデータ信号のLevel3との間の距離、および基準マスクMの下部マスクMDの上端とデータ信号のLevel0との間の距離が所定値に規定されている。
【0048】
マージン測定では、データ信号のLevel0の平均値が200μW、Level3の平均値が1000μWのとき、その差(Diff)が1000μW-200μW=80μWとなる。したがって、上述した基準マスクMの距離の規定が0.25であるとき、800μW×0.25=200μWとなり、200μWがマスクマージン:0%となり、図10はマスクマージン:0%の状態を示している。また、マスクマージン:100%では、図11に示すように、基準マスクMの上部マスクの下端とデータ信号のLevel3との間の距離、および基準マスクMの下部マスクの上端とデータ信号のLevel0との間の距離が0μWとなる。
【0049】
このように、本実施の形態によれば、基準マスクの領域内における任意の違反サンプルを無視したときのマスクマージンを知ることができる。これにより、違反サンプルの原因を改善した場合にマスクマージンが改善するか、コンプライアンステストに合格するかを確認することができる。また、被測定物のどのような特性が違反サンプルの原因かを調査して改善した場合のマスクマージンを測定することが可能になる。
【0050】
以上、本発明に係る波形観測装置及びマスクマージンの計算方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述および図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例および運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1 波形観測装置
2 操作部
3 波形データ取得部
4 演算処理部
4a アイパターン表示手段
4b マスク設定手段
4c マスク表示手段
4d シンボル解析手段
4e シンボル解析メモリ
4f マスク品質評価手段
5 表示部
11 サンプリング部
11a サンプリングクロック発生器
11b A/D変換器
12 サンプリング制御部
13 波形データメモリ
S 違反サンプル
M 基準マスク
MU 上部マスク
MD 下部マスク
M0 基準マスクを拡大する前のマスク領域
M1,M2 拡大したマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11