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特開2022-148537温度センサ異常判定装置および温度センサ異常判定方法並びに温度センサ異常判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148537
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】温度センサ異常判定装置および温度センサ異常判定方法並びに温度センサ異常判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20220929BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20220929BHJP
   G01K 1/14 20210101ALI20220929BHJP
【FI】
G01K7/00 311
G01K7/02 E
G01K1/14 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050264
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】石橋 政三
(57)【要約】
【課題】2対の温度センサの測定値を用いて2対の温度センサの異常を予測する。
【解決手段】温度センサ異常判定装置1は、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサA1,A2(B1,B2)の異常を判定するもので、2対の温度センサA1,A2(B1,B2)の所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器2と、データ蓄積器2に蓄積された2対の温度センサA1,A2(B1,B2)の測定値の平均の差の違いを検定する検定器3と、検定器3の検定結果に基づいて2対の温度センサA1,A2(B1,B2)の異常の有無を判定するセンサ警告判定器4と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置であって、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器と、を備えたことを特徴とする温度センサ異常判定装置。
【請求項2】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置であって、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器と、を備えたことを特徴とする温度センサ異常判定装置。
【請求項3】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置を用いた温度センサ異常判定方法であって、
前記温度センサ異常判定装置が備えるデータ蓄積器により、前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備える検定器により、前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備えるセンサ警告判定器により、前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする温度センサ異常判定方法。
【請求項4】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置を用いた温度センサ異常判定方法であって、
前記温度センサ異常判定装置が備えるデータ蓄積器により、前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備える検定器により、前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備えるセンサ警告判定器により、前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする温度センサ異常判定方法。
【請求項5】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器として機能させるための温度センサ異常判定プログラム。
【請求項6】
測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器として機能させるための温度センサ異常判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象のほぼ同じ場所の温度を測定する複数本の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置および温度センサ異常判定方法並びに温度センサ異常判定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば測定対象としての加熱炉などでは、ヒータの温度制御に熱電対や測温抵抗体などの温度センサが用いられる。加熱炉などでは、炉内の温度が高温であり、ヒータの温度制御に使用する温度センサが経時的に劣化し、検知結果の精度が低下するため炉内の温度を正確に把握できなくなり、温度センサの交換が必要になる。
【0003】
そこで、温度センサの交換時期を知る方法として、例えば下記特許文献1,2に開示される技術が知られている。特許文献1では、温度センサに電流源から電流を供給したときの電圧降下から抵抗値を計測し、計測した抵抗値の時間に対する変化から劣化時点を予測して温度センサの交換時期を知らせている。特許文献2では、温度センサが経験した過度温度のイベントの回数、過度温度のイベントの期間、過度温度のイベントの間の温度などをプロセス変数伝送器のメモリまたは温度センサのメモリ内に蓄積して温度センサをモニタすることで温度センサの交換時期を知らせている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-232170号公報
【特許文献2】特表2015-522160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、抵抗値を計測して温度センサの寿命を予測するものでは、専用の装置やパラメータ管理が必要となる問題があった。また、特許文献2のように、使用回数をカウントして温度センサの交換時期を示すものでは、温度センサの管理のために専用のパラメータが必要となる問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、2対の温度センサの測定値を用いて2対の温度センサの異常を予測することができる温度センサ異常判定装置および温度センサ異常判定方法並びに温度センサ異常判定プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された温度センサ異常判定装置は、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置であって、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2に記載された温度センサ異常判定装置は、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置であって、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3に記載された温度センサ異常判定方法は、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置を用いた温度センサ異常判定方法であって、
前記温度センサ異常判定装置が備えるデータ蓄積器により、前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備える検定器により、前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備えるセンサ警告判定器により、前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項4に記載された温度センサ異常判定方法は、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定装置を用いた温度センサ異常判定方法であって、
前記温度センサ異常判定装置が備えるデータ蓄積器により、前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備える検定器により、前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定するステップと、
前記温度センサ異常判定装置が備えるセンサ警告判定器により、前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項5に記載された温度センサ異常判定プログラムは、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの測定値の平均の差の違いを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器として機能させることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項6に記載された温度センサ異常判定プログラムは、測定対象の雰囲気中のほぼ同じ場所の温度を測定する2つのセンサが一体化された2対の温度センサの異常を判定する温度センサ異常判定プログラムであって、
コンピュータを、
前記2対の温度センサの所定時間ごとの最新の複数サンプルの測定値を蓄積するデータ蓄積器と、
前記データ蓄積器に蓄積された前記2対の温度センサの複数サンプルの測定値の差と該測定値の差のサンプル分の平均から前記測定値の差のサンプル分の平方和を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて前記測定値の差のサンプル分の分散を算出し、算出した前記測定値の差のサンプル分の分散と前記測定値の差のサンプル分の平方和と前記測定値のサンプル数に基づいて検定統計量を算出し、前記測定値のサンプル数と有意水準に基づく比較基準値と前記検定統計量との比較により前記2対の温度センサの測定値が異なるか否かを検定する検定器と、
前記検定器の検定結果に基づいて前記2対の温度センサの異常の有無を判定するセンサ警告判定器として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来のような専用の装置やパラメータ管理を必要とせず、2対の温度センサの直近の測定値を用いて2対の温度センサの異常を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る温度センサ異常判定装置のブロック構成図である。
図2】本発明に係る温度センサ異常判定装置が採用される測定系の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明が採用される測定系について図2を参照しながら説明する。図2に示すように、測定系11は、測定対象としての真空熱処理炉(加熱炉)12と2つの制御ループ13からなる。
【0017】
真空熱処理炉12は、内部が真空ポンプ14により真空状態に保持され、炉内上部と炉内下部にそれぞれヒータ15(15A,15B)が配置される。
【0018】
また、各ヒータ15(15A,15B)の近傍には2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2が配置される。図2の例では、炉内上部のヒータ15Aの近傍に2対の温度センサA1,A2が配置される。2対の温度センサA1,A2は、1つの管の中に2本の温度センサが挿入されて一体化されたものとして構成される。また、炉内下部のヒータ15Bの近傍に2対の温度センサB1,B2が配置される。2対の温度センサB1,B2は、2対の温度センサA1,A2と同様に、1つの管の中に2本の温度センサが挿入されて一体化されたものとして構成される。
【0019】
なお、本実施の形態では、2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2として、例えば内部の抵抗値の変動に伴って起電力が大きくなる熱電対を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば測温抵抗体などを用いることもできる。
【0020】
2つの制御ループ13は、上部制御ループ13A、下部制御ループ13Bからなる。
【0021】
上部制御ループ13A、下部制御ループ13Bは、例えばバッチ処理の各ロットにおける炉内温度分布がほぼ均一になるように真空熱処理炉12の炉内温度を目標温度に制御するため、それぞれPID制御器13aとSCR(サイリスタ)13bを備えて構成される。
【0022】
上部制御ループ13Aでは、2対の温度センサA1,A2の一方の測定値(温度データ)と上部炉内温度設定値がPID制御器13aに入力され、その差に応じた操作量(0~100%)をPID制御器13aがSCR13bに出力して駆動制御し、SCR13bがヒータ15Aをオン/オフ制御する。
【0023】
同様に、下部制御ループ13Bでは、2対の温度センサB1,B2の一方の測定値と下部炉内温度設定値がPID制御器13aに入力され、その差に応じた操作量(0~100%)をPID制御器13aがSCR13bに出力して駆動制御し、SCR13bがヒータ15Bをオン/オフ制御する。
【0024】
本実施の形態の温度センサ異常判定装置は、上述した測定系11の2対の温度センサA1,A2(2対の温度センサB1,B2)の平均の差(対応のあるデータの差の検定)の違いを調べることにより、2対の温度センサA1,A2(2対の温度センサB1,B2)の異常を判定し、オペレータに注意を促す機能を有する。
【0025】
図1に示すように、温度センサ異常判定装置1は、上記機能を実現するため、データ蓄積器2、検定器3、センサ警告判定器4を備えて構成される。
【0026】
データ蓄積器2は、データ保存用のメモリで構成され、2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2それぞれからの最新10サンプルの測定値(温度データ)を参照サンプルとして常に蓄積して2対の温度センサA1,A2、B1,B2ごとに保存する。
【0027】
データ蓄積器2に保存される測定値は、2対の温度センサA1,A2のバッチ処理の1ロット(所定時間)ごとの測定値と、2対の温度センサB1,B2のバッチ処理の1ロット(所定時間)ごとの測定値である。また、データ蓄積器2に保存される参照サンプルの数は、10サンプルの測定値に限定されるものではなく、適宜変えることができる。
【0028】
検定器3は、対応のあるデータの差の検定として、2対の温度センサA1,A2(2対の温度センサB1,B2)の測定値の差の平均値の違い(正常であれば同一)を下記の手順1~4に従って検定を行う。なお、ここでは、2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2の場合を例にとって説明する。
【0029】
手順1:帰無仮説H0 と対立仮説H1 の設定
帰無仮説は、H0 :δ=0である。
対立仮説は、変数iTestModeの値により、下記のように設定する。
iTestMode=0… H1 :δ≠0
iTestMode=1… H1 :δ>0
iTestMode=2… H1 :δ<0
【0030】
ここで、δは、2対の温度センサA1,A2の差または2対の温度センサB1,B2の差である。
【0031】
また、有意水準αは、変数iILevelの値により、下記のとおりである。
iILevel=0… α=0.05
iILevel=1… α=0.10
iILevel=2… α=0.20
【0032】
手順2:検定統計量t0 の算出
2対の温度センサA1,A2または2対の温度センサB1,B2の差からδのサンプル分の平均値とδのサンブル分の分散を下記式(1),(2)にて算出すると、検定統計量t0 は下記式(3)で表される。ここではサンプル数nを10に設定している。
【0033】
【数1】
【0034】
【数2】
【0035】
【数3】
【0036】
手順3:検定
t検定のための検定統計量t0 を用いて、帰無仮説H0 を検定する。なお、t(n-1,α)はt検定表から得られる比較基準値、αは有意水準(一般的には0.05)である。
【0037】
1 :δ≠0の場合、|t0 |≧t(n-1,α)ならば有意、H0 は棄却される。すなわち、H1 が正しいと判断される。
1 :δ>0の場合、t0 ≧t(n-1,2α)ならば有意、H0 は棄却される。すなわち、H1 が正しいと判断される。
1 :δ<0の場合、t0 ≦t(n-1,2α)ならば有意、H0 は棄却される。すなわち、H1 が正しいと判断される。
【0038】
何れにせよ、H0 が棄却される場合には、2対の温度センサA1,A2内または2対の温度センサB1,B2内で差があるということになり、2対の温度センサA1,A2または2対の温度センサB1,B2が故障と判断する。
【0039】
なお、グループ数kに基づく棄却域は下記表1のようになる。
【0040】
【表1】
【0041】
検定器3は、上述した検定により、2対の温度センサA1,A2または2対の温度センサB1,B2の測定値の平均が同一であると判断すると、検定結果信号として「0」を出力し、2対の温度センサA1,A2または2対の温度センサB1,B2の測定値の平均が異なると判断すると、検定結果信号として「1」を出力する。
【0042】
センサ警告判定器4は、検定器3から検定結果信号「1」が入力されると、2対の温度センサA1,A2または2対の温度センサB1,B2の測定値が異なり異常であると判定し、例えば音、表示などによりオペレータに警告を促す。
【0043】
次に、2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2の具体的な測定値による検定例について説明する。
【0044】
今、ロットごとの2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2の測定値が下記表2のように得られたものとする。
【0045】
【表2】
【0046】
まず、2対の温度センサA1,A2について検定する。
【0047】
2対の温度センサA1,A2の差を算出すると、下記表3のようになる。
【0048】
【表3】
【0049】
2対の温度センサA1,A2の差から平均値を算出するとともに式(1)から分散を算出し、式(3)から検定統計量t0 を算出すると、下記式(4),(5),(6),(7)のようになる。
【0050】
【数4】
【0051】
【数5】
【0052】
【数6】
【0053】
【数7】
【0054】
そして、t0 =4.621>t(9,0.05)=2.262より有意となり、2対の温度センサA1,A2は測定値が異なる、すなわち、どちらかの温度センサA1または温度センサA2が異常であると判断できる。
【0055】
同様に、2対の温度センサB1,B2について検定する。
【0056】
2対の温度センサB1,B2の差を算出すると、下記表4のようになる。
【0057】
【表4】
【0058】
2対の温度センサB1,B2の差から平均値を算出するとともに式(1)から分散を算出し、式(3)から検定統計量t0 を算出すると、下記式(8),(9),(10),(11)のようになる。
【0059】
【数8】
【0060】
【数9】
【0061】
【数10】
【0062】
【数11】
【0063】
そして、t0 =0.753<t(9,0.05)=2.262より有意とならず、2対の温度センサB1,B2は測定値が異なるとは言えない、すなわち、どちらの温度センサB1,B2も異常とは言えないと判断できる。
【0064】
ところで、上述した実施の形態では、測定系11における真空熱処理炉12の炉内温度を2対の温度センサA1,A2と2対の温度センサB1,B2にて検出する場合を例にとって説明したが、測定系や2対の温度センサの数が限定されるものではない。
【0065】
また、上述した実施の形態において、温度センサ異常判定装置1が備える構成要素(データ蓄積器2、検定器3、センサ警告判定器4の各部)は、演算処理装置、記憶装置などを備えたコンピュータで構成し、各構成要素の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。
【0066】
このように、上述した実施の形態によれば、従来のような専用の装置やパラメータ管理を必要とせず、温度センサ自身が出力する直近の測定値を用いて温度センサの異常を予測することができる。
【0067】
以上、本発明に係る温度センサ異常判定装置および温度センサ異常判定方法並びに温度センサ異常判定プログラムの最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 温度センサ異常判定装置
2 データ蓄積器
3 検定器
4 センサ警告判定器
11 測定系
12 真空熱処理炉
13 制御ループ
13A 第1ゾーン上部制御ループ
13B 第2ゾーン上部制御ループ
13a PID制御器
13b SCR(サイリスタ)
14 真空ポンプ
15(15A,15B) ヒータ
A1,A2、B1,B2 2対の温度センサ
図1
図2