(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148540
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ミキサドラムの制御システム
(51)【国際特許分類】
B60P 3/16 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B60P3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050269
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市川 卓
(72)【発明者】
【氏名】小森 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
(57)【要約】
【課題】作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制する。
【解決手段】制御システム100は、操作部と、操作部への操作量に応じた信号強度の操作信号を出力する操作信号出力部と、コントローラ20と、を備える。コントローラ20は、操作部に中立位置から最大量の操作が行われた際の信号強度に基づき、操作部が単位量操作された際の信号強度の変化量である単位変化量を算出する単位変化量算出部52と、単位変化量に基づき、操作部に規定の操作量の操作が行われる場合のミキサドラムへの回転指令を設定する回転指令設定部54と、回転指令を受けて回転したミキサドラムの回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する判定部56と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車に設けられるミキサドラムの制御システムであって、
作業者の操作を受け付ける操作部と、
前記操作部への操作量に応じた信号強度の操作信号を出力する操作信号出力部と、
前記操作信号の信号強度に応じて前記ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記操作部に中立位置から最大量の操作が行われた際の前記信号強度に基づき、前記操作部が単位量操作された際の前記信号強度の変化量である単位変化量を算出する単位変化量算出部と、
前記単位変化量に基づき、前記操作部に規定の操作量の操作が行われる場合の前記ミキサドラムへの回転指令を設定する回転指令設定部と、
前記回転指令を受けて回転した前記ミキサドラムの回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する判定部と、
を含む、
ミキサドラムの制御システム。
【請求項2】
前記回転速度が前記規格範囲の範囲外と判定された場合に、前記信号強度と前記回転指令との対応関係を変化させる前記ミキサドラムの制御パラメータを調整する調整部を更に含み、
前記回転指令設定部は、前記回転速度が前記規格範囲の範囲外と判定されて前記制御パラメータが調整されたら、調整後の前記制御パラメータに基づいて前記回転指令を設定し直し、
前記判定部は、設定し直された前記回転指令を受けて回転した前記ミキサドラムの回転速度が、前記規格範囲の範囲内であるかを判定する、
請求項1に記載のミキサドラムの制御システム。
【請求項3】
前記制御パラメータは、前記ミキサドラムのポンプの吐出量を調整する電流値であり、前記電流値は、初期状態において、前記電流値の調整可能な範囲の上限である第1上限値と、調整可能な範囲の下限値である第1下限値との間の中央値である第1中央値に設定されており、
前記調整部は、前記回転速度が前記規格範囲よりも高い場合には、前記第1中央値を第2上限値として、前記第2上限値と前記第1下限値との間の中央値である第2中央値に、前記電流値を設定し、前記回転速度が前記規格範囲よりも低い場合には、前記第1中央値を第2下限値として、前記第2下限値と前記第1上限値との間の中央値である第3中央値に、前記電流値を設定する、請求項2に記載のミキサドラムの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサドラムの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミキサ車のミキサドラムの回転を電子制御で行う技術が知られている。例えば特許文献1には、作業者により操作部が操作されると、コントローラによって、ミキサドラムの回転速度が操作部の操作量に応じた状態となるように、ミキサドラムの駆動装置が制御される旨が記載されている。
【0003】
このようなミキサ車において、操作部を操作した際のミキサドラムの回転速度は、個体差がありミキサドラム毎に異なるため、操作部への操作量とミキサドラムの回転速度との対応関係を統一する必要がある。従来においては、作業者が、定規で操作部の操作量を測定しながら規定位置まで操作部を操作し、その際の回転速度を確認してミキサドラムの制御パラメータを調整する、という作業を繰り返して、操作部への操作量とミキサドラムの回転速度との対応関係を統一していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の調整方法では、作業者が、手動で規定位置まで操作したかを測定する作業と、規定位置まで操作した際の回転速度が適切であるかを判定するという作業とを繰り返し行っていたため、作業時間がかかったり、作業者によっては調整精度が低くなったりするおそれがあった。従って、操作量とミキサドラムの回転速度との調整において、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが求められている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操作量とミキサドラムの回転速度との調整において、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが可能なミキサドラムの制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るミキサドラムの制御システムは、ミキサ車に設けられるミキサドラムの制御システムであって、作業者の操作を受け付ける操作部と、前記操作部への操作量に応じた信号強度の操作信号を出力する操作信号出力部と、前記操作信号の信号強度に応じて前記ミキサドラムの回転速度を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記操作部に中立位置から最大量の操作が行われた際の前記信号強度に基づき、前記操作部が単位量操作された際の前記信号強度の変化量である単位変化量を算出する単位変化量算出部と、前記単位変化量に基づき、前記操作部に規定の操作量の操作が行われる場合の前記ミキサドラムへの回転指令を設定する回転指令設定部と、前記回転指令を受けて回転した前記ミキサドラムの回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する判定部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作量とミキサドラムの回転速度との調整において、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るミキサ車の模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るミキサ車の模式的な背面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るミキサ車のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るコントローラの模式的な機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、校正処理の処理フローを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本実施形態に係るミキサ車の模式的な平面図であり、
図2は、本実施形態に係るミキサ車の模式的な背面図であり、
図3は、本実施形態に係るミキサ車のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0012】
(ミキサ車の全体構成)
以下、
図1から
図3を参照して、本実施形態に係るミキサ車1の全体構成について説明する。本実施形態に係るミキサ車1は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車1が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0013】
図1に示すように、ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、図示しないドラムブレードがドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの撹拌等が行われる。
【0014】
図2に示すように、ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コン工場においてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0015】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を駆動源として、
図1に示す駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。
【0016】
図3に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、エンジン10によって駆動装置4を駆動させる際に図示しないアクチュエータを介してコントローラ20により制御される。また、エンジン10には、エンジン10の回転速度を検出し、検出された回転速度に応じた信号をコントローラ20へ出力する回転センサ10bが設けられる。
【0017】
駆動装置4を駆動する際のエンジン10の回転数は、回転センサ10bによって検出された回転速度が所定の大きさとなるように、スロットル弁10aを介してコントローラ20により制御される。なお、回転センサ10bは、駆動装置4の入力軸である後述のPTO軸9やドライブシャフト8の回転速度を検出するものであってもよいし、後述の油圧ポンプ5の回転速度を検出するものであってもよい。
【0018】
エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take-off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0019】
駆動装置4は、エンジン10によって駆動され作動流体としての作動油OIを吐出する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油OIによって作動しミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、を有する。なお、駆動装置4では、作動流体として作動油OIではなく、他の非圧縮性流体が用いられてもよい。
【0020】
油圧ポンプ5は、図示しない斜板の傾転角に応じて吐出量が変更される斜板型アキシャルピストンポンプであり、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油OIの流れを制御する制御弁5aと、斜板の傾転角を変化させることで油圧ポンプ5の吐出量を調整する傾転角調整機構5bと、油圧モータ6に供給される作動油OIの圧力を検出する圧力センサ5cと、を有する。
【0021】
油圧ポンプ5は、PTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源としては、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。
【0022】
制御弁5aは、ミキサドラム2を一方の方向に回転させるように油圧モータ6に作動油OIを導く第1位置と、ミキサドラム2を他方の方向に回転させるように油圧モータ6に作動油OIを導く第2位置と、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油OIの流れを遮断する遮断位置と、を有する3位置切換弁である。制御弁5aの位置は、コントローラ20により電気的に制御される。
【0023】
傾転角調整機構5bは、斜板の傾転角を変化させる図示しない油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに導かれる作動油圧を制御する図示しないソレノイドバルブと、を有する。傾転角調整機構5bは、コントローラ20からソレノイドバルブに供給される駆動電流の大きさに応じて斜板の傾転角を変化させ、斜板の傾転角の変化に応じて油圧ポンプ5の吐出量が変更される。
【0024】
圧力センサ5cは、検出された作動油OIの圧力に応じた信号をコントローラ20に出力する。なお、圧力センサ5cは、駆動装置4における作動油の圧力である油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油OIの圧力を検出することができれば何処に設けられていてもよく、油圧モータ6に設けられていてもよい。
【0025】
なお、油圧ポンプ5は、上記形式のポンプに限定されず、吐出容量が可変であるポンプ装置であればどのような形式のポンプであってもよい。例えば、油圧ポンプ5は、斜板の傾転角に応じて吐出量及び吐出方向が変更される斜板型アキシャルピストンポンプであってもよい。また、斜板が固定された固定容量型のポンプでもよい。この場合、ポンプに設けられる切替弁の開度によって吐出量が変更されるようにすればよい。
【0026】
油圧モータ6は、図示しない斜板の傾転角に応じて容量が変更される斜板型アキシャルピストンモータであり、油圧モータ6の図示しない出力軸の回転方向と回転速度とを検出する回転センサ6aと、斜板の傾転角を調整する傾転角調整機構6bと、を有する。
【0027】
回転センサ6aは、検出された出力軸の回転方向と回転速度とに応じた信号をコントローラ20に出力する。なお、回転センサ6aにより検出される油圧モータ6の回転数及び回転方向は、後述のようにミキサドラム2の回転数及び回転方向に相関する。
【0028】
傾転角調整機構6bは、斜板の傾転角を変化させる図示しない油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに導かれる作動油圧を制御する図示しないソレノイドバルブと、を有する。コントローラ20からソレノイドバルブに供給される電流値に応じて斜板の傾転角が変化し油圧モータ6の容量が変更される。
【0029】
なお、油圧モータ6は、上記形式のモータに限定されず、任意の形式の油圧モータであってよい。例えば、油圧モータ6は、容量が高速回転用の小容量と通常回転用の大容量との二段階に切り換えられる斜板型アキシャルピストンモータであってもよい。
【0030】
上記構成の駆動装置4において、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることによって油圧モータ6が回転し、供給される油量や油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転速度が変更される。また、油圧モータ6の回転方向は、油圧ポンプ5の制御弁5aの位置が切り換えられることで切り換わる。
【0031】
駆動装置4の出力軸、すなわち油圧モータ6の出力軸は、減速機7を介してミキサドラム2の回転軸Oに連結される。このため、油圧モータ6の回転速度を増減することによって、ミキサドラム2の回転速度を増減させることが可能であり、油圧モータ6の回転方向を切り換えることによって、ミキサドラム2の回転方向を正回転方向である撹拌方向と逆回転方向である排出方向とに切り換えることが可能である。
【0032】
このように、ミキサドラム2の回転数及び回転方向は、油圧モータ6の回転数及び回転方向に相関することから、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値からミキサドラム2の回転数及び回転方向を把握することが可能である。なお、回転センサ6aは、油圧モータ6に代えて、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を検出するものであってもよい。
【0033】
ミキサドラム2が撹拌方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより撹拌されながら前方へと移動する。一方、ミキサドラム2が排出方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより撹拌されながら後方へと移動する。
【0034】
このようにミキサドラム2を撹拌方向とは反対の方向である排出方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出することができる。ミキサドラム2から排出された生コンは、フローガイド17及びシュート18を介して所定位置に誘導される。
【0035】
なお、ホッパ16を介して、ミキサドラム2内へ生コンを投入する場合には、撹拌時よりもミキサドラム2を高速で撹拌方向に回転させることで、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。
【0036】
(制御システム)
ミキサ車1には、ミキサ車1のミキサドラム2を制御する制御システム100が設けられている。
図3に示すように、制御システム100は、コントローラ20と、表示装置30と、第1操作盤41と、第2操作盤42と、第3操作盤43と、第4操作盤44とを有する。
【0037】
(コントローラ)
コントローラ20は、駆動装置4を制御して、ミキサドラム2の動作を制御するコンピュータである。コントローラ20は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAM等をROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって駆動装置4の作動が制御される。
【0038】
コントローラ20には、上述のように、油圧モータ6の回転センサ6aと、エンジン10の回転センサ10bと、油圧ポンプ5の圧力センサ5cとが接続され、これらのセンサ類で検出された検出値が入力される。また、コントローラ20には、上述のように、傾転角調整機構5bのソレノイドバルブと、傾転角調整機構6bのソレノイドバルブと、制御弁5aと、スロットル弁10aと、が接続され、これらを作動させる指令値がコントローラ20から出力される。なお、コントローラ20は、回転センサ6a、回転センサ10b、圧力センサ5c、各ソレノイドバルブ、制御弁5a、及びスロットル弁10aに、有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。
【0039】
(表示装置)
表示装置30は、画像を表示するディスプレイであり、例えばミキサドラム2の作動状態を表示する。表示装置30は、運転室11内に配置され、運転室11内において作業者が見やすい位置に設置されることが好ましい。表示装置30は、例えば、画像を表示するモニタに加えて、コントローラ20と同様に、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータを有してよい。
【0040】
表示装置30は、コントローラ20と接続されて、コントローラ20と情報(信号)の送受信を行う。本実施形態では、表示装置30は、CAN(Controller Area Network)を介してコントローラ20に接続されており、コントローラ20のCPUで生成された画像データは、CANを介して表示装置30に送信され、表示装置30のモニタに画像が表示される。なお、画像データの生成は、コントローラ20から送信された信号に基づいて表示装置30のCPUにおいて行われてもよい。なお、表示装置30は、コントローラ20に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。また、表示装置30とコントローラ20とは、CAN以外の通信規格を利用した通信網を介して接続されてもよい。
【0041】
表示装置30は、車両の車速を検出する車速センサ21と、パーキングブレーキの作動状態を検出するパーキングブレーキスイッチ22とが接続され、これらの機器で検出された検出値が入力される。すなわち、本実施形態では、コントローラ20は、車速センサ21及びパーキングブレーキスイッチ22に直接接続されておらず、表示装置30を介して、車速センサ21及びパーキングブレーキスイッチ22に接続されている。なお、表示装置30は、車速センサ21及びパーキングブレーキスイッチ22に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。
【0042】
このように、本実施形態では、車速センサ21やパーキングブレーキスイッチ22等の車両に関するデータを取得する機器が、コントローラ20に直接接続されず、表示装置30に接続される。これにより、車両に関するデータを取得する機器とコントローラ20との接続数(ここでは配線数)を少なくすることができ、好適である。特に、車両に関するデータを取得する機器とコントローラ20とを有線で接続する場合には、配線の長さが長くなってしまうため、配線数を減らすことが特に有効となる。なお、車両に関するデータを取得する機器とコントローラ20との情報の送受信は、表示装置30とコントローラ20との間で、一括で行われる。
【0043】
また、表示装置30は、マイクロコンピュータを有することなく、表示機能のみを有するものであってもよい。表示装置30は車両に複数設けられてもよい。また、車速センサ21やパーキングブレーキスイッチ22等の車両に関するデータを取得する機器は、コントローラ20に直接接続されてもよい。
【0044】
(第1操作盤)
第1操作盤41は、ミキサドラム2の作動を制御するための作業者の入力(操作)を受け付ける入力装置である。第1操作盤41は、コントローラ20と接続されて、コントローラ20と情報(信号)の送受信を行う。第1操作盤41は、表示装置30を介することなく、コントローラ20に直接接続されている。なお、第1操作盤41は、コントローラ20に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。
【0045】
本実施形態では、第1操作盤41は、操作ユニット41aと、非常停止スイッチ41bとが設けられる。
【0046】
操作ユニット41aは、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するためのユーザインターフェースであり、作業者によるミキサドラム2の回転を制御するための操作(入力)を受け付ける。コントローラ20は、操作ユニット41aへの作業者の操作量に応じて、ミキサドラム2の作動を制御する。操作ユニット41aの詳細については後述する。
【0047】
非常停止スイッチ41bは、ミキサドラム2の回転を停止するためのユーザインターフェースであり、作業者によるミキサドラム2の回転を停止するための入力(操作)である緊急停止入力を受け付ける。第1操作盤41は、作業者による非常停止スイッチ41bへの緊急停止入力を検出して、緊急停止入力が検出された旨の情報をコントローラ20に出力する。コントローラ20は、緊急停止入力が検出された旨の情報を取得したら、ミキサドラム2の回転を停止する。
【0048】
(第2操作盤)
第2操作盤42は、ミキサドラム2の作動を制御するための作業者の入力(操作)を受け付ける入力装置である。第2操作盤42は、コントローラ20と接続されて、コントローラ20と情報(信号)の送受信を行う。第2操作盤42は、表示装置30を介することなく、コントローラ20に直接接続されている。なお、第2操作盤42は、コントローラ20に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。
【0049】
本実施形態では、第2操作盤42は、操作ユニット42aと、非常停止スイッチ42bとが設けられる。操作ユニット42aと非常停止スイッチ42bの構成や機能は、第1操作盤41の操作ユニット41aと非常停止スイッチ41bと同様なので、説明を省略する。
【0050】
第2操作盤42は、本実施形態では運転室11外に設けられている。さらに言えば、
図1に示すように、第2操作盤42は、車両の右側へシュート18を介して排出される生コンの量を見ながらミキサドラム2の操作を可能とするために、ミキサ車1の右後方に設けられる。例えば、ミキサ車1を2台並べた状態において生コンを排出する際に、一方の車両の右後方に設けられた第2操作盤42を操作しつつ、他方の車両の左後方に設けられた第1操作盤41を操作することによって、生コンを途切れることなく供給したり多量の生コンを供給したりすることができる。ただし、第2操作盤42の設置位置は、車両の右後方に限られず、任意の位置であってよい。また、第2操作盤42は、車両に固定された据付型であってもよいし、車両にケーブルを介して接続され取り外すことが可能な着脱型であってもよい。
【0051】
(第3操作盤)
第3操作盤43は、ミキサドラム2の作動を制御するための作業者の入力(操作)を受け付ける入力装置である。第3操作盤43は、表示装置30と接続されて、表示装置30と情報(信号)の送受信を行う。すなわち、第3操作盤43は、コントローラ20に直接接続されておらず、表示装置30を介してコントローラ20に接続される。なお、第3操作盤43は、表示装置30に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。このように表示装置30を介して第3操作盤43の操作信号をコントローラ20へ送信する構成とすることにより、第3操作盤43とコントローラ20とを接続する配線が不要となる。コントローラ20から配索される配線が少なくなることで、表示装置30及び第3操作盤43の配置の自由度が向上し、作業者が作業し易い位置に表示装置30及び第3操作盤43を配置することが可能となる。この結果、作業者によるミキサドラム2の操作作業性を向上させることができる。
【0052】
本実施形態では、第3操作盤43は、操作ユニット43aと、非常停止スイッチ43bと、自動撹拌スイッチ43cとが設けられる。操作ユニット43aと非常停止スイッチ43bの構成や機能は、第1操作盤41の操作ユニット41aと非常停止スイッチ41bと同様なので、説明を省略する。
【0053】
自動撹拌スイッチ43cは、ミキサドラム2を自動撹拌するためのユーザインターフェースであり、作業者によるミキサドラム2の自動撹拌を実行するための入力である自動撹拌入力を受け付ける。自動撹拌の実行手順については後述する。
【0054】
第3操作盤43は、本実施形態では、車両が走行中であってもミキサドラム2の操作を可能とするために、運転室11内に設けられている。ただし、第3操作盤43の設置位置は、運転室11内に限られず、任意の位置であってよい。また、第3操作盤43は、車両に固定された据付型であってもよいし、車両にケーブルを介して接続され取り外すことが可能な着脱型であってもよい。
【0055】
(第4操作盤)
第4操作盤44は、ミキサドラム2の作動を制御するための作業者の入力(操作)を受け付ける入力装置である。第4操作盤44は、コントローラ20と接続されて、コントローラ20と情報(信号)の送受信を行う。第4操作盤44は、表示装置30を介することなく、コントローラ20に直接接続されている。なお、第4操作盤44は、コントローラ20に有線(配線)で接続されており、有線通信で情報の送受信を行っているが、それに限られず、無線で接続されていてもよく、無線通信で情報の送受信を行ってもよい。
【0056】
本実施形態では、第4操作盤44は、操作ユニット44aと、非常停止スイッチ44bとが設けられる。操作ユニット44aと非常停止スイッチ44bの構成や機能は、第1操作盤41の操作ユニット41aと非常停止スイッチ41bと同様なので、説明を省略する。
【0057】
第4操作盤44は、本実施形態では運転室11外に設けられている。さらに言えば、
図1に示すように、第4操作盤44は、ミキサドラム2内の生コンの残量を確認しながらミキサドラム2の操作を可能とするために、ホッパ16の周辺、すなわち車両の上方に設けられる。ただし、第4操作盤44の設置位置は、車両の上方に限られず、任意の位置であってよい。また、第4操作盤44は、車両に固定された据付型であってもよいし、車両にケーブルを介して接続され取り外すことが可能な着脱型であってもよい。
【0058】
なお、本実施形態では、操作盤として、第1操作盤41、第2操作盤42、第3操作盤43、第4操作盤44の、4つが設けられるが、操作盤の数や設置位置は以上の説明に限られず任意である。
【0059】
制御システム100は、以上のような構成となっている。以下、制御システム100によるミキサドラム2の制御について説明する。
【0060】
(自動攪拌)
コントローラ20は、パーキングブレーキが作動しておらず、車速信号が、ミキサ車1が走行している旨を示す場合に、ミキサドラム2を撹拌方向に回転させる自動撹拌を実行する。より詳しくは、作業者は、自動撹拌を実行させたい場合には、運転室11内の第3操作盤43の自動撹拌スイッチ43cを操作して、自動撹拌スイッチ43cをオンにする。自動撹拌スイッチ43cがオンにされたら、第3操作盤43は、自動撹拌を実行可能であることを示す自動撹拌入力を検出して、表示装置30に自動撹拌入力を取得した旨の情報を送信する。また、作業者は、ミキサ車1を走行させる場合、パーキングブレーキをオフ(パーキングブレーキを作動させない状態)にして、ミキサ車1を走行させる。パーキングブレーキスイッチ22は、パーキングブレーキがオフにされたことを検出して、表示装置30は、パーキングブレーキが作動していない旨を示すパーキングオフ情報を、パーキングブレーキスイッチ22から取得する。また、車速センサ21は、ミキサ車1の車速を逐次検出し、表示装置30は、車速センサ21から、ミキサ車1の車速を示す車速信号を取得する。表示装置30は、自動撹拌スイッチ43cから取得した自動撹拌入力を取得した旨の情報と、パーキングブレーキスイッチ22から取得したパーキングオフ情報と、車速センサ21から取得した車速信号とを、コントローラ20に送信する。コントローラ20は、自動撹拌入力を取得した旨の情報と、パーキングオフ情報とを取得し、かつ、取得した車速信号が、ミキサ車1が走行している状態であることを示す場合に、自動撹拌を開始する。
【0061】
なお、コントローラ20は、ミキサ車1が走行中であると判断した場合には、生コンの排出を防止するために、各操作盤41~44による操作ユニットの操作を原則禁止とすることが好ましい。すなわち、コントローラ20は、ミキサ車1が走行中である場合には、各操作盤41~44への操作を受けず、各操作盤41~44の操作ユニットが操作されても、その操作量に応じたミキサドラム2の回転を行わないことが好ましい。
【0062】
(操作ユニットの操作による制御)
コントローラ20は、作業者が各操作盤41~44に設けられる操作ユニット41a~44aが操作されたら、操作ユニット41a~44aの操作量に応じて駆動装置4を制御して、ミキサドラム2の回転を制御する。以下、操作ユニット43aの構成を説明する。なお、操作ユニット41a、42a、44aも同様の構成であるため、それらの説明は省略する。
【0063】
図4は、操作ユニットの模式図である。
図4に示すように、操作ユニット41aは、操作部43a1と、操作信号出力部43a2とを有する。操作部43a1は、作業者による操作を受け付けるユーザインターフェースである。
図4に示すように、本実施形態では、操作部43a1は、ダイヤルつまみ型であり、回転方向Rに回転させる操作が可能である。操作部43a1は、中立位置θ0から、回転方向Rの一方側である正転方向R1に向けた最大の回転位置である最大位置θ
maxまで、正転方向R1に移動可能(操作可能)である。つまり、中立位置θ0から正転方向R1に最大量の操作が行われた位置が最大位置θ
maxとなる。また、操作部43a1は、中立位置θ0から、回転方向Rの他方側である逆転方向R2に向けた最大の回転位置である最小位置θ
minまで、逆転方向R2に移動可能(操作可能)である。つまり、中立位置θ0から逆転方向R2に最大量の操作が行われた位置が最小位置θ
minとなる。
【0064】
操作信号出力部43a2は、操作部43a1への操作量に応じた信号強度の操作信号Sを出力する。本実施形態では、操作信号出力部43a2は、いわゆるポテンショメータである。操作信号出力部43a2は、操作部43a1の回転軸に同軸で取り付けられる。操作信号出力部43a2は、操作部41a1への中立位置θ0からの操作量に対応した信号強度の操作信号Sを、コントローラ20に出力する。本実施形態では、操作信号出力部43a2は、操作信号Sとして、操作部41aへの操作量に応じて電圧値(すなわち信号強度)が異なる電圧信号を出力する。具体的には、操作信号出力部43a2は、最小位置θminから最大位置θmaxまでの間で、その回転角度に応じて所定範囲の間で電圧値が比例的に変化する電圧信号を出力する。
【0065】
コントローラ20は、操作信号出力部43a2から出力された操作信号Sの電圧値に応じて、油圧ポンプ5の斜板の傾転角や油圧モータ6の斜板の傾転角、油圧ポンプ5の制御弁5aといった駆動装置4を構成する各機構を制御することで、操作信号Sの電圧値に対応するように、ミキサドラム2の回転速度を制御する。操作信号Sの電圧値が操作部43a1への操作量に対応しているため、コントローラ20は、操作部43a1の操作量に比例するように、ミキサドラム2の回転速度を制御するといえる。例えば、操作部43a1が中立位置θ0から正転方向R1に操作されると、コントローラ20は、操作部43a1の操作量(すなわち操作信号Sの電圧値)に応じた回転速度で、ミキサドラム2を撹拌方向へと回転させる。一方、操作部43a1が中立位置θ0から逆転方向R2に操作されると、コントローラ20は、操作部43a1の操作量(すなわち操作信号Sの電圧値)に応じた回転速度で、ミキサドラム2を排出方向へと回転させる。
【0066】
なお、ミキサ車1には、複数の操作盤41~44が設けられるが、各操作盤41~44の操作ユニット41a~44aが同時に操作されると、どの操作を優先するべきかをコントローラ20では判別できないため、ミキサドラム2の操作は、操作権利を取得した1つの操作盤によって行われるように設定されてよい。
【0067】
具体的には、例えば、第2操作盤42の操作ユニット42aを一旦最大位置θmaxまで回動操作した後、中立位置θ0に戻すと、第2操作盤42に操作権利が与えられ、以後のミキサドラム2の操作は第2操作盤42により行うことが可能となる。そして、操作権利が与えられた第2操作盤42の操作ユニット42aが操作されている間は、他の操作盤により操作することは不可能となる。第2操作盤42の操作ユニット42aが中立位置θ0に戻された状態で、他の操作盤、例えば、第3操作盤43の操作ユニット43aを一旦最大位置θmaxまで回動操作した後、中立位置θ0に戻すと、第3操作盤43に操作権利が移る。
【0068】
なお、操作権利を有する操作盤の情報や、ミキサドラム2の作動状況は、表示装置30に表示されてよい。
【0069】
(校正処理)
以上のように、コントローラ20は、操作部への操作量に応じて、ミキサドラム2の回転速度を制御している。しかし、操作部への操作量とミキサドラム2の回転速度との対応関係は、ミキサ車1毎に異なる場合がある。そのため、コントローラ20は、操作部への操作量とミキサドラム2の回転速度との対応関係を統一するように、校正処理を実行する。以下、校正処理について具体的に説明する。なお、校正処理は、例えばミキサ車1の出荷時や、部品交換された際などに行われる。以降では、第3操作盤43の操作ユニット43aについての校正処理を例として説明するが、他の操作盤の操作ユニットも同様の方法で校正処理されてよい。
【0070】
図5は、本実施形態に係るコントローラの模式的な機能ブロック図である。
図5に示すように、コントローラ20は、回転制御部50と、単位変化量算出部52と、回転指令設定部54と、判定部56と、調整部58とを含む。コントローラ20は、CPUなどの演算装置によって、記憶部からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、回転制御部50と単位変化量算出部52と回転指令設定部54と判定部56と調整部58を実現して、それらの処理を実行する。なお、コントローラ20は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、回転制御部50と単位変化量算出部52と回転指令設定部54と判定部56と調整部58の処理の少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。また、回転制御部50と単位変化量算出部52と回転指令設定部54と判定部56と調整部58との少なくとも一部の処理は、コントローラ20以外の演算装置によって実行されてもよい。
【0071】
(回転制御部)
回転制御部50は、操作信号Sに基づきミキサドラム2の回転速度を制御する。回転制御部50は、操作信号出力部43a2から出力された操作信号Sの信号強度(電圧値)に応じて駆動装置4を制御することで、ミキサドラム2の回転速度を制御する。
【0072】
(単位変化量算出部)
単位変化量算出部52は、校正処理が行われる際に、操作部43a1に所定の操作量の操作が行われた際の操作信号Sの信号強度に基づき、単位変化量を算出する。単位変化量とは、操作部43a1が単位量だけ操作された際の、信号強度の変化量である。以下、単位変化量の算出処理についてより詳細に説明する。
【0073】
校正処理が行われる際には、作業者によって、操作部43a1が、所定の操作量だけ操作される。操作信号出力部43a2は、所定の操作量に対応する信号強度(電圧値)の操作信号Sをコントローラ20に出力する。単位変化量算出部52は、操作信号出力部43a2から出力された所定の操作量に対応する信号強度と、所定の操作量の値とに基づき、単位変化量を算出する。本実施形態では、作業者によって操作部43a1が中立位置θ0から最大量操作され、操作信号出力部43a2は、中立位置θ0からの最大操作量に対応する信号強度(電圧値)の操作信号Sをコントローラ20に出力する。単位変化量算出部52は、操作信号出力部43a2から出力された中立位置θ0からの最大操作量に対応する信号強度と、最大操作量の値とに基づき、単位変化量を算出する。より詳しくは、本実施形態では、作業者は、操作部43a1を中立位置θ0から最大位置θmaxまで操作し、操作信号出力部43a2は、中立位置θ0から最大位置θmaxまでの操作量に応じた信号強度の操作信号Sを、コントローラ20に出力する。また、作業者は、操作部43a1を中立位置θ0から最小位置θminまで操作し、操作信号出力部43a2は、中立位置θ0から最小位置θminまでの操作量に応じた信号強度の操作信号Sを、コントローラ20に出力する。単位変化量算出部52は、中立位置θ0から最大位置θmaxまでの操作量に応じた信号強度である最大信号強度と、中立位置θ0から最小位置θminまでの操作量に応じた信号強度である最小信号強度とに基づき、単位変化量を算出する。すなわち、単位変化量算出部52は、最大信号強度と最小信号強度との差分を、最大位置θmaxから最小位置θminまでの操作量で除することで、操作部43a1が単位量だけ操作された際の信号強度の単位変化量を算出する。なお、最大位置θmaxから最小位置θminまでの操作量は、既知であり、例えばコントローラ20の記憶部に予め記憶されていてよい。
【0074】
単位変化量の算出方法は上記に限られない。例えば、作業者が操作部43a1を第1所定位置及び第2所定位置まで操作し、単位変化量算出部52は、第1所定位置までの操作量に応じた信号強度と、第2所定位置までの操作量に応じた信号強度とに基づき、単位変化量を算出してもよい。すなわち、単位変化量算出部52は、第1所定位置までの操作量に応じた信号強度と第2所定位置までの操作量に応じた信号強度との差分を、第1所定位置から第2所定位置までの操作量で除することで、単位変化量を算出してよい。第1所定位置及び第2所定位置は、任意の位置であってよいが、第1所定位置から第2所定位置までの操作量は既知であることが好ましいが、それに限られない。この場合、例えば作業者が、第1所定位置から第2所定位置までの操作量を表示装置30などに入力することで、コントローラ20に第1所定位置から第2所定位置までの操作量の情報を取得させてよい。
【0075】
(回転指令設定部)
回転指令設定部54は、単位変化量に基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われると仮定した場合のミキサドラム2への回転指令を設定する。規定の操作量は、校正処理を行う際の操作量として規定された操作量であり、任意に設定されてよい。回転指令とは、ミキサドラム2を回転させるための指令値であり、回転指令の値に応じてミキサドラム2の回転速度が決まる。本実施形態では、回転指令は、駆動装置4の制御量に相当し、操作信号Sの信号強度に対応付けられている。すなわち、回転指令設定部54は、単位変化量と規定の操作量とに基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合の操作信号Sの信号強度を算出し、算出した信号強度に対応する駆動装置4の制御量を、回転指令の値として算出する。
【0076】
回転制御部50は、回転指令設定部54が設定した回転指令に基づき、駆動装置4を制御することで、ミキサドラム2を回転させる。すなわち、回転制御部50は、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合の操作信号Sの信号強度に応じた回転速度で、ミキサドラム2を回転させるといえる。このように、ここでは、作業者が実際に操作部43a1を規定の操作量まで操作することなく、規定の操作量まで操作された場合の回転指令をコントローラ20によって算出して、その回転指令に基づき自動でミキサドラム2を回転させる。
【0077】
(判定部)
判定部56は、回転指令を受けて回転したミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する。規格範囲とは、操作部43a1が規定量だけ操作された際のミキサドラム2の回転速度の許容範囲であり、予め設定される。判定部56は、回転指令を受けて回転したミキサドラム2の回転速度の検出結果を取得する。例えば、判定部56は、例えば回転センサ6aによる回転速度の検出結果に基づき、ミキサドラム2の回転速度の検出結果を取得してよい。
【0078】
(調整部)
調整部58は、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲外と判定された場合には、ミキサドラム2の制御パラメータを調整する。具体的には、回転制御部50は、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲外と判定された場合には、ミキサドラム2の回転を停止させる。調整部58は、ミキサドラム2が停止した状態で、ミキサドラム2の制御パラメータを調整する。制御パラメータとは、操作信号Sの信号強度と回転指令(駆動装置4の制御度合い)との対応関係を変化させるパラメータであり、言い換えれば、信号強度の値とミキサドラム2の回転速度との対応関係を変化させるパラメータである。制御パラメータは、本実施形態の例では、ミキサドラム2のポンプの吐出量を調整する電流値であり、さらに言えば、油圧ポンプ5のソレノイドバルブの電流値である。ソレノイドバルブの電流値が変わると、油圧モータ6への作動油OIの量が変わるため、信号強度と回転指令との対応関係とが変化する。なお、制御パラメータは、油圧ポンプ5のソレノイドバルブの電流値であることに限られず、操作信号Sの信号強度と回転指令との対応関係を変化させる任意のパラメータであってよい。
【0079】
調整部58は、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも高い場合(規格範囲の上限値より高い場合)には、信号強度に対応する回転指令が、ミキサドラム2の回転速度をより低くする値になるように、制御パラメータを調整する。これにより、操作信号Sが同じ信号強度である場合にも、ミキサドラム2の回転速度を低くして、規格範囲に近づけることができる。本実施形態では、制御パラメータは、予め調整可能な範囲が設定されており、調整部58は、この調整可能範囲内で、制御パラメータを調整する。ここで、調整可能範囲の、ミキサドラム2の回転速度を下げる側の境界値を下限値(第1下限値)とし、調整可能範囲の、ミキサドラム2の回転速度を上げる側の境界値を上限値(第1上限値)とする。本実施形態では、制御パラメータは、初期状態では、調整可能範囲の中央値(第1上限値と第1下限値との間の中央値である第1中央値)に設定されており、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも高い場合、調整部58は、制御パラメータが中央値(第1中央値)よりも下限値(第1下限値)に近づくように、制御パラメータを調整する。例えば、調整部58は、現在の中央値(第1中央値)を新たな上限値(第2上限値)とし、下限値(第1下限値)と新たな上限値(第2上限値)との間の中央値(第2中央値)を、新たな制御パラメータの値とする。例えば、初期条件での上限値が3A、下限値が1A、中央値が2Aとすると、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも高い場合、調整部58は、下限値(1A)と新たな上限値(2A)との中央値(1.5A)を、新たな制御パラメータの値とする。
【0080】
一方、調整部58は、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも低い場合(規格範囲の下限値より低い場合)には、信号強度に対応する回転指令が、ミキサドラム2の回転速度をより高くする値になるように、制御パラメータを調整する。これにより、操作信号Sが同じ信号強度である場合にも、ミキサドラム2の回転速度を高くできる。本実施形態では、制御パラメータは、初期状態では、調整可能範囲の中央値(第1中央値)に設定されており、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも低い場合、調整部58は、中央値(第1中央値)よりも上限値(第1上限値)に近づくように、制御パラメータを調整する。例えば、調整部58は、現在の中央値(第1中央値)を新たな下限値(第2下限値)とし、新たな下限値(第2下限値)と上限値(第1上限値)との間の中央値(第3中央値)を、新たな制御パラメータの値とする。例えば、初期条件での上限値が3A、下限値が1A、中央値が2Aとすると、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲よりも低い場合、調整部58は、新たな下限値(2A)と上限値(3A)との中央値(2.5A)を、新たな制御パラメータの値とする。
【0081】
ただし、制御パラメータの調整方法は、以上の説明に限られず任意であってよい。
【0082】
このようにして制御パラメータが調整(更新)されたら、回転指令設定部54は、調整後の制御パラメータに基づいて、回転指令を設定し直す(更新する)。すなわち、信号強度と回転指令との対応関係は、制御パラメータにより決まるため、回転指令設定部54は、調整後の制御パラメータに基づき信号強度と回転指令との対応関係を更新し、更新した対応関係に基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合のミキサドラム2への回転指令を設定し直す。回転制御部50は、設定し直された回転指令に基づきミキサドラム2を回転させて、判定部56は、その際のミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する。ミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲外である場合には、再度制御パラメータを調整して、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲内になるまで、以上説明した処理を繰り返す。
【0083】
一方、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲内と判定された場合には、ミキサドラム2の制御パラメータがその際の値に決定されて、校正処理を終了する。これにより、操作部43a1が規定の操作量操作された際の、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲に収まるため、ミキサ車1が変わっても、操作部への操作量とミキサドラム2の回転速度との対応関係が統一される。
【0084】
なお、校正処理中でのミキサドラム2の回転速度や、制御パラメータなどは、表示装置30に表示されてよい。また、校正処理を開始するトリガとなる作業者からの開始指令も、表示装置30を介してコントローラ20に伝達されてよい。また、ミキサドラム2の回転速度、制御パラメータの表示や、作業者からの開始指令の入力及び伝達などは、表示装置30によって行われることに限られず、別の端末によって行われてもよい。
【0085】
(処理フロー)
次に、以上説明した校正処理の処理フローを説明する。
図6は、校正処理の処理フローを説明するフローチャートである。
図6に示すように、校正処理を行う際、コントローラ20は、単位変化量算出部52により、最大位置θ
maxへの操作量に応じた最大信号強度と、最小位置θ
minへの操作量に応じた最小信号強度とを取得し(ステップS10)、最大信号強度と最小信号強度とに基づき、信号強度の単位変化量を算出する(ステップS12)。コントローラ20は、回転指令設定部54により、単位変化量に基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合の回転指令を設定し(ステップS14)、回転制御部50により、回転指令に基づきミキサドラム2を回転させる(ステップS16)。そして、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転速度を検出し、判定部56により、回転速度が規定範囲内であるかを判定する(ステップS18)。回転速度が規定範囲内でない場合(ステップS18;No)、コントローラ20は、回転制御部50により、ミキサドラム2の回転を停止させ(ステップS20)、調整部58により制御パラメータを調整する(ステップS22)。制御パラメータを調整したら、ステップS14に戻り、回転指令設定部54により、調整後の制御パラメータに基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合の回転指令を設定し直し、以降の処理を繰り返す。一方、回転速度が規定範囲内である場合(ステップS18;Yes)、コントローラ20は、制御パラメータの調整を終了し、回転制御部50により、ミキサドラム2の回転を停止させ(ステップS24)、本処理を終了する。なお、ステップS22における制御パラメータの調整は、調整部58によって自動で行われることに限られず、作業者によって手動で行われてもよい。
【0086】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る制御システム100は、ミキサ車1に設けられるミキサドラム2制御するものであって、作業者の操作を受け付ける操作部43a1と、操作部43a1への操作量に応じた信号強度の操作信号Sを出力する操作信号出力部43a2と、操作信号Sの信号強度に応じてミキサドラム2の回転速度を制御するコントローラ20と、を備える。コントローラ20は、単位変化量算出部52と、回転指令設定部54と、判定部56とを含む。単位変化量算出部52は、中立位置θ0から最大量の操作が行われた際の信号強度に基づき、操作部43a1が単位量操作された際の信号強度の変化量である単位変化量を算出する。回転指令設定部54は、単位変化量に基づき、操作部43a1に規定の操作量の操作が行われる場合のミキサドラム2への回転指令を設定する。判定部56は、回転指令を受けて回転したミキサドラム2の回転速度が規格範囲の範囲内であるかを判定する。
【0087】
ここで、操作部43a1への操作量とミキサドラム2の回転速度との対応関係は、ミキサ車1毎に異なる場合があるため、統一されることが求められる。従来においては、出荷前に、作業者が、定規で操作部の操作量を測定しながら規定位置まで操作部を操作し、その際の回転速度を確認してミキサドラムの制御パラメータを調整する、という作業を繰り返して、操作量と回転速度との対応関係を統一していた。しかし、従来の方法では、作業者が、手動で規定位置まで操作したかを測定する作業と、規定位置まで操作した際の回転速度が適切であるかを判定するという作業とを繰り返し行っていたため、作業時間がかかったり、作業者によっては調整精度が低くなったりするおそれがあった。それに対し、本実施形態においては、コントローラ20が自動で判定を行うため、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが可能となる。さらに言えば、コントローラ20が、操作部43a1に所定の操作量の操作が行われた際の信号強度に基づき、信号強度の単位操作量当たりの変化量(単位変化量)を算出し、その後の校正処理は、コントローラ20が自動で実施する。従って、校正処理の際に作業者に求められる作業は、操作部43a1への所定の操作量の操作だけになり、規定位置まで操作したかを測定する作業と、規定位置まで操作した際の回転速度が適切であるかを判定するという作業とを繰り返し行う必要がなくなる。そのため、本実施形態によると、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが可能となる。
【0088】
また、制御システム100は、回転速度が規格範囲の範囲外と判定された場合に、信号強度と回転指令との対応関係を変化させるミキサドラム2の制御パラメータを調整する調整部58をさらに含む。回転指令設定部54は、回転速度が規格範囲の範囲外と判定されて制御パラメータが調整されたら、調整後の制御パラメータに基づいて回転指令を設定し直す。判定部56は、設定し直された回転指令を受けて回転したミキサドラム2の回転速度が、規格範囲の範囲内であるかを判定する。このように、本実施形態においては、制御パラメータを調整して、ミキサドラム2の回転速度が規格範囲に収まるかを調整する処理を、コントローラ20により自動で繰り返すため、作業時間を低減しつつ調整精度の低下を抑制することが可能となる。
【0089】
また、制御パラメータは、ミキサドラム2のポンプの吐出量を調整する電流値であり、電流値は、初期状態において、電流値の調整可能な範囲の上限である第1上限値と、調整可能な範囲の下限値である第1下限値との間の中央値である第1中央値に設定されている。調整部58は、回転速度が規格範囲よりも高い場合には、第1中央値を第2上限値として、第2上限値と第1下限値との間の中央値である第2中央値に、電流値を設定する。調整部58は、回転速度が規格範囲よりも低い場合には、第1中央値を第2下限値として、第2下限値と第1上限値との間の中央値である第3中央値に、電流値を設定する。このように制御パラメータを調整することで、回転速度を適切に規格範囲に収めて、操作量と回転速度との対応関係を適切に統一できる。
【0090】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、これら実施形態等の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態等の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ミキサ車
2 ミキサドラム
20 コントローラ
43a 操作ユニット
43a1 操作部
43a2 操作信号出力部
50 回転制御部
52 単位変化量算出部
54 回転指令設定部
56 判定部
58 調整部
100 制御システム
S 操作信号