(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148553
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】印刷システム、プリンタドライバ、およびプリンタ
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20220929BHJP
B41J 3/407 20060101ALI20220929BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20220929BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06F3/12 355
G06F3/12 310
G06F3/12 352
G06F3/12 359
G06F3/12 332
B41J3/407
B41J29/38 401
H04N1/00 912
H04N1/00 127B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050291
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】垣鍔 亮太
【テーマコード(参考)】
2C061
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AS11
2C061HK05
2C061HN05
2C061HN27
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA29
5C062AB08
5C062AB22
5C062AB38
5C062AB40
5C062AC04
5C062AC34
(57)【要約】
【課題】情報処理装置からプリンタに対してモデルごとに対応可否が異なる特定の印刷媒体が指定された場合であって、モデルごとにその印刷ジョブの印刷可否を制御可能な技術を提供すること。
【解決手段】プリンタは、用紙種類として「布」や「光沢紙」が指定された特定ジョブを受信した場合、用紙種類として「布」や「光沢紙」をサポートする高級モデルのプリンタ3であれば、特定コマンドを受信したことを条件としてその特定ジョブの実行を開始し、低級モデルのプリンタであればその特定ジョブの実行を開始しないことにすることで、モデルごとにその特定ジョブの印刷可否を制御できる印刷システムを提供すること。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタと、情報処理装置に組み込まれたプリンタドライバと、を備える印刷システムにおいて、
前記プリンタには、特定の印刷媒体に対応する第1モデルと、前記特定の印刷媒体に対応しない第2モデルと、があり、前記プリンタドライバは、前記第1モデルにも前記第2モデルにも対応するプログラムであり、
前記プリンタドライバは、
印刷媒体の種類として前記特定の印刷媒体が指定された印刷ジョブである特定ジョブの送信が指示された場合、前記特定の印刷媒体が指定されたことを示す特定コマンドを前記特定ジョブに対応付けて前記プリンタに送信し、
前記プリンタは、前記特定ジョブを受信した場合、
前記第1モデルであれば、前記特定ジョブに関連付けられた前記特定コマンドを受信したことを条件として、前記特定ジョブの実行を開始し、
前記第2モデルであれば、前記特定ジョブの実行を開始しない、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載する印刷システムにおいて、
前記特定の印刷媒体は、布である、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項1に記載する印刷システムにおいて、
前記特定の印刷媒体は、光沢紙である、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する印刷システムにおいて、
前記情報処理装置に常駐する常駐プログラムを備え、
前記プリンタは、
前記特定ジョブを受信した場合に、前記特定ジョブに対する処理結果を示す結果コマンドを前記情報処理装置に送信し、
前記常駐プログラムは、
前記情報処理装置が前記結果コマンドを受信した場合に、前記結果コマンドに示される前記特定ジョブの処理結果を、前記情報処理装置のユーザインタフェースを用いて報知する、
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
情報処理装置のコンピュータに、
印刷媒体の種類として特定の印刷媒体が指定された印刷ジョブである特定ジョブの送信指示を受け付けた場合に、前記特定の印刷媒体を示す特定コマンドを前記特定ジョブに対応付けてプリンタに送信する送信処理を実行させ、送信先となる前記プリンタには、前記特定の印刷媒体に対応する第1モデルと、前記特定の印刷媒体に対応しない第2モデルとがあり、前記特定ジョブを受信した前記プリンタが前記第1モデルの場合、前記特定ジョブに関連付けられた前記特定コマンドを受信したことを条件として、前記特定ジョブの実行を開始し、前記特定ジョブを受信した前記プリンタが前記第2モデルの場合、前記特定ジョブの実行を開始しない、
ことを特徴とするプリンタドライバ。
【請求項6】
請求項5に記載するプリンタドライバにおいて、
前記送信処理では、
前記特定ジョブを構成するデータに前記特定コマンドを含めることにより、前記特定コマンドを前記特定ジョブに対応付けて前記プリンタに送信する、
ことを特徴とするプリンタドライバ。
【請求項7】
請求項5に記載するプリンタドライバにおいて、
前記情報処理装置の前記コンピュータに、
印刷媒体の種類として前記特定ジョブの送信指示を受け付けた場合に、前記特定ジョブの印刷対象となる画像データを含む前記特定ジョブと、前記特定ジョブの識別情報とを、前記プリンタに送信する本体送信処理を実行させ、
さらに前記情報処理装置の前記コンピュータに、
前記本体送信処理による前記特定ジョブの送信に先行して、前記識別情報を特定コマンドとして送信する前記送信処理を実行させる、
ことを特徴とするプリンタドライバ。
【請求項8】
印刷ユニットと、
通信インタフェースと、
メモリと、
コントローラと、
を備え、
前記メモリには特定の印刷媒体に対応するモデルか否かを示すモデル情報が記憶されており、
前記コントローラは、
前記通信インタフェースによって、印刷媒体の種類として前記特定の印刷媒体が指定された印刷ジョブである特定ジョブが受信された場合であって、前記メモリに前記特定の印刷媒体に対応することを示す前記モデル情報が記憶されている場合に、前記通信インタフェースが前記特定ジョブに関連付けられた特定コマンドを受信しことを条件として、前記特定ジョブに基づく印刷を前記印刷ユニットに行わせる印刷処理を実行し、前記特定コマンドは、前記特定ジョブを送信した情報処理装置に組み込まれたプリンタドライバによって、前記特定ジョブが送信される際に、前記特定ジョブに対応付けて送信されるコマンドである、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項8に記載するプリンタにおいて、
前記コントローラは、
前記通信インタフェースによって、前記特定ジョブが受信された場合であって、前記メモリに前記特定の印刷媒体に対応しないことを示す前記モデル情報が記憶されている場合に、印刷媒体の種類が対応しないことを示すエラーコマンドを、前記情報処理装置に送信するエラー処理を実行し、前記エラーコマンドを受信した前記情報処理装置では、印刷媒体の種類が対応しないことを報知する、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
請求項8に記載するプリンタにおいて、
ユーザインタフェースを備え、
前記コントローラは、
前記通信インタフェースによって、前記特定ジョブが受信された場合であって、前記メモリに前記特定の印刷媒体に対応しないことを示す前記モデル情報が記憶されている場合に、前記ユーザインタフェースを用いて印刷媒体の種類が対応しないことを報知する報知処理と、印刷を行うか否かの指示を受け付け、印刷を行う指示を受け付けたことを条件として、前記特定ジョブに基づく印刷を前記印刷ユニットに行わせる確認印刷処理とを実行する、
ことを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、印刷システム、プリンタドライバ、およびプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体への画像の印刷を行うプリンタでは、様々な種類の印刷媒体に対応しており、印刷設定には印刷媒体の種類を指定するパラメータが含まれる。例えば、特許文献1には、プリンタドライバによって表示される印刷設定画面において、用紙種類の設定を受け付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリンタには、普通紙とは異なる種類の特定の印刷媒体への印刷をサポートしているモデルと、そのような特定の印刷媒体への印刷をサポートしていないモデルがある。しかしながら、その特定の印刷媒体への印刷をサポートしていないモデルであっても、印刷自体を制限していないものもあり、その特定の印刷媒体の搬送が成功し、その特定の印刷媒体への印刷が行われる場合もある。この場合、その特定の印刷媒体への印刷をサポートしていないモデルとしては保証外の使用であり、好ましくない。また、搬送に失敗した場合には故障の原因にもなる。そのため、モデルごとに対応可否が異なる特定の印刷媒体が指定された場合の、プリンタないしプリンタドライバの制御には改善の余地がある。
【0005】
本明細書は、情報処理装置からプリンタに対してモデルごとに対応可否が異なる特定の印刷媒体が指定された場合であって、モデルごとにその印刷ジョブの印刷可否を制御可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題の解決を目的としてなされた印刷システムは、プリンタと、情報処理装置に組み込まれたプリンタドライバと、を備える印刷システムにおいて、前記プリンタには、特定の印刷媒体に対応する第1モデルと、前記特定の印刷媒体に対応しない第2モデルと、があり、前記プリンタドライバは、前記第1モデルにも前記第2モデルにも対応するプログラムであり、前記プリンタドライバは、印刷媒体の種類として前記特定の印刷媒体が指定された印刷ジョブである特定ジョブの送信が指示された場合、前記特定の印刷媒体が指定されたことを示す特定コマンドを前記特定ジョブに対応付けて前記プリンタに送信し、前記プリンタは、前記特定ジョブを受信した場合、前記第1モデルであれば、前記特定ジョブに関連付けられた前記特定コマンドを受信したことを条件として、前記特定ジョブの実行を開始し、前記第2モデルであれば、前記特定ジョブの実行を開始しない、ことを特徴とする。
【0007】
上述の構成によれば、プリンタは、特定の印刷媒体が指定された特定ジョブを受信した場合、特定の印刷媒体に対応する第1モデルであれば、特定コマンドを受信したことを条件としてその特定ジョブの実行を開始し、第2モデルであればその特定ジョブの実行を開始しないことにすることで、モデルごとにその特定ジョブの印刷可否を制御できる。また、プリンタドライバとしては、第1モデルであっても第2モデルであっても特定コマンドを送信するという同じ処理を行うため、モデルごとに異なるプリンタドライバを用意する必要がなく、共通のプリンタドライバとして利用できる。
【0008】
上記装置の機能を実現するためのプリンタドライバ、およびプリンタも、新規で有用である。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示される技術によれば、情報処理装置からプリンタに対してモデルごとに対応可否が異なる特定の印刷媒体が指定された場合であって、モデルごとにその印刷ジョブの印刷可否を制御可能な技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(A)実施の形態にかかるパーソナルコンピュータの電気的な概略構成図である。(B)ユーザインタフェースの一例を示す外観図である。
【
図2】印刷設定を設定するための印刷設定画面の例を示す説明図である。
【
図5】プリンタドライバによる印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】(A)PC側の排他警告画面の例を示す説明図である。(B)プリンタ側の排他警告画面の例を示す説明図である。
【
図7】プリンタによる印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態に係るプリンタドライバによる印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態に係るプリンタによる印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。すなわち、
図1に示すように、本形態の印刷システム1は、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」とする)2と、そのPC2と通信可能に接続されプリンタ3とから構成されている。
【0012】
本形態のPC2は、プリンタ3に各種の機能を行わせるために、各種のアプリケーションプログラム(以下、「アプリ」とする)を実行可能な装置である。なお、PC2は、情報処理装置の一例である。PC2に代えて、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータであっても良い。
【0013】
PC2は、
図1(A)に示すように、CPU21と、メモリ24と、を含む制御部20を備えている。さらに、PC2は、通信インタフェース(以下、「通信IF」とする)26と、ユーザインタフェース(以下、「ユーザIF」とする)28と、を備え、これらが制御部20に電気的に接続されている。なお、
図1(A)中の制御部20は、PC2の制御に利用されるハードウェアやソフトウェアを纏めた総称であって、実際にPC2に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0014】
CPU21は、メモリ24から読み出したプログラムに従って、また、ユーザの操作に基づいて、各種の処理を実行する。メモリ24は、例えば、HDD、フラッシュメモリであり、各種のプログラム、画像データや文書データ等のデータ、各種設定を記憶する領域として利用される。CPU21が備えるバッファも、メモリの一例である。
【0015】
メモリの一例は、コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体であってもよい。コンピュータが読み取り可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記録媒体も含まれる。
【0016】
通信IF26は、プリンタ3等の外部装置との通信を行うためのハードウェアを含む。通信IF26の通信方式は、無線でも有線でもよく、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、USB、LAN等、どのような規格の方式でもよい。
【0017】
ユーザIF28は、情報を画面に表示するハードウェアと、ユーザによる入力操作を受け付けるハードウェアと、を含む。ユーザIF28は、例えば、
図1(B)に示すように、情報を画面に表示するためのディスプレイ28Aと、ユーザによる入力操作を受け付けるキーボード28Bおよびマウス28C等との組み合わせであっても良いし、表示機能と入力受付機能とを備えるタッチパネルであっても良い。
【0018】
本形態のPC2のメモリ24には、
図1(A)に示すように、オペレーティングシステム(以下、「OS」とする)41と、印刷アプリ42と、プリンタドライバ43と、が組み込まれている。OS41は、例えば、Windows(登録商標)、macOS(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)、Linux(登録商標)である。
【0019】
印刷アプリ42は、印刷に関する各種の指示を受け付けるプログラムである。印刷アプリ42は、例えば、印刷を行わせるプリンタ3の指定、印刷部数の指定、印刷範囲の指定、印刷実行の指示、を受け付ける。さらに、印刷対象の用紙の種類やサイズの指定、両面印刷の指示等を受け付けてもよい。
【0020】
プリンタドライバ43は、プリンタ3の、同じ時期に開発されたところのシリーズモデルに共通して対応するプログラムであり、通信IF26を介してプリンタ3と通信を行って、プリンタ3の動作を制御するプログラムである。プリンタドライバ43は、例えば、印刷アプリ42等にてプリンタ3が指定された状態で、プリンタ3のプロパティ設定の指示を受け付けた場合に起動される。なお、プリンタドライバ43が常駐プログラムの一例である。
【0021】
プリンタドライバ43が起動されると、CPU21は、ディスプレイ28A上に、例えば、
図2に一例として示す印刷設定画面51を表示する。印刷設定画面51の基本タブ51A上には、例えば、用紙種類の選択欄511、印刷品質の選択欄512、用紙サイズの選択欄513と、部数の選択欄514と、給紙方法の選択欄515と、OKボタン516と、キャンセルボタン517と、が表示される。CPU21は、ユーザの、キーボード28Bやマウス28Cの操作を通じて印刷設定画面51に表示した各選択欄や各ボタンへの操作を受け付ける。
【0022】
具体的には、用紙種類の選択欄511では、ユーザは、普通紙、光沢紙、布、インクジェット紙などの何れか1つを選択することができる。なお、普通紙、光沢紙、布、インクジェット紙などが印刷媒体の一例であり、また、光沢紙や布が特定の印刷媒体の一例である。
【0023】
また、用紙サイズの選択欄513では、ユーザは、プレカットされた定形サイズの用紙名、例えば、A4、B4、A5、B5、A6、Letter、Legal、A3などの何れか1つを選択することができる。また、用紙種類の「光沢紙」や「布」に対応して、長尺紙(297mm×600mm)、長尺紙(297mm×1200mm)などのサイズの何れか1つを選択することができる。
【0024】
また、給紙方法の選択欄515では、ユーザは、プリンタ3の給紙トレイ、すなわち、後述する、
図3に示すところの、多目的トレイ3A、第1トレイ3Bおよび第2トレイ3Cの何れか1つの選択、もしくは、給紙トレイの選択をプリンタ3で行う「自動選択」を選択することができる。
【0025】
また、プリンタドライバ43は、OS41から印刷指示情報を受け付けた場合、印刷指示情報にて指定されている画像データに基づいて、印刷データを生成する。また、プリンタドライバ43は、生成した印刷データと、印刷設定画面51などにおいて設定された用紙種類を含む印刷設定などとからなる印刷ジョブをプリンタ3に送信する。
【0026】
また、プリンタドライバ43は、OS41から印刷指示情報を受け付けた際に、ユーザが、用紙種類の選択欄511において「光沢紙」もしくは「布」を選択していた場合には、用紙種類として「光沢紙」または「布」が選択されていることを示す特定コマンドを含む印刷ジョブをプリンタ3に送信する。なお、特定コマンドは、用紙種類として「光沢紙」もしくは「布」を示すところの印刷設定中のパラメータそのものであっても差し支えない。また、特定コマンドを含む印刷ジョブが特定ジョブの一例である。
【0027】
プリンタ3は、少なくともインクジェット方式の印刷機能と、PC2との通信を行う通信機能と、を有する装置であり、PC2から送信された印刷ジョブに基づいて印刷が可能である。プリンタ3の印刷機能にて印刷可能な用紙サイズの範囲には、所定の制限がある。なお、以下では、用紙サイズのうち、プリンタ3での用紙の搬送方向のサイズを「用紙高さ」、用紙高さに直交する方向のサイズを「用紙幅」とする。また、用紙サイズの範囲は、用紙高さの範囲と用紙幅の範囲とを含み、プリンタ3は、用紙高さと用紙幅とのいずれもが範囲内である用紙や布への印刷が可能である。
【0028】
図3は、プリンタの概略的な外観図である。すなわち、本形態のプリンタ3は、3つのタイプのトレイから成る給紙トレイを備える、所謂、高級モデルに相当するプリンタ3である。具体的には、給紙トレイの3つのタイプのトレイとして、多目的トレイ3Aと、第1トレイ3Bと、第2トレイ3Cを備える。また、プリンタ3は、排紙トレイ3Dを備え、給紙トレイから給紙された印刷媒体は、搬送機構39(
図4に示す)によって、プリンタ3の印刷機能を担う印刷機構38(
図4に示す)を通って排紙トレイ3Dに排出される。
【0029】
具体的には、プリンタ3において、多目的トレイ3Aから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39は、略ストレートに配置された、所謂、ストレートパスによって構成されている。したがって、多目的トレイ3Aは、例えば、A4、B4、A5、B5、A6、Letter、Legal、A3、長尺紙(297mm×600mm)および長尺紙(297mm×1200mm)などの多種類の用紙サイズの印刷媒体を供給可能である。
【0030】
また、用紙種類として「光沢紙」や「布」を用いる場合においても、多目的トレイ3Aから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39は、それらを適切に搬送することができる。すなわち、「光沢紙」は、「普通紙」に比べて腰が著しく強いタイプのものがある。そのような場合においても、搬送機構は、ストレートパスによって構成されているので、「光沢紙」をスムースに搬送することができる。また、「布」は、「普通紙」に比べて厚みが厚いタイプのものがある。そのような場合においても、搬送機構39は、ストレートパスによって構成されているので、「布」をスムースに搬送することができる。
【0031】
また、高級モデルのプリンタ3の印刷機構38は、用紙種類として「光沢紙」や「布」を用いる場合においても、良好に印刷することが可能である。具体的には、例えば、用紙種類として「布」を用いる場合、布はインクを吸収するので、印刷に際しては、紙などに比較してインクの量を増加させる必要がある。しかし、高級モデルのプリンタ3の印刷機構38は、印刷ジョブに含まれる特定コマンドに基づいて、すなわち、用紙種類として「布」が指定されている場合には、印刷の際のインクの量を増加させることによって、布に良好に印刷することが可能である。また、用紙種類として「光沢紙」が指定されている場合には、印刷ジョブに含まれる特定コマンドに基づいて、印刷の際のインクの量を適正に制御することによって、光沢紙に良好に印刷することが可能である。
【0032】
一方、プリンタ3において、第1トレイ3Bから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39は、その途中で搬送方向が略180度大きく反転する、所謂、U字状パスによって構成されている。したがって、第1トレイ3Bは、用紙サイズとして長尺紙(297mm×600mm)および長尺紙(297mm×1200mm)というサイズの印刷媒体を給紙することができない。また、用紙種類においても、第1トレイ3Bから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39は、U字状パスによって構成されているので、用紙種類として「布」や「光沢紙」を用いる場合、それらの搬送には適さない。
【0033】
また、第2トレイ3Cは、ロール状に巻かれた長尺状の「布」を供給可能であり、第2トレイ3Cから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39は、「普通紙」に比べて厚みが厚く、また「普通紙」に比べて柔軟性がある「布」を良好に搬送可能なように構成されている。また、第2トレイ3Cから排紙トレイ3Dに至る搬送機構39には、長尺状の「布」を、搬送方向の所定の寸法(用紙高さ)で切断するための切断機構(図示せず)を備えている。
【0034】
また、本形態のプリンタ3は、多目的トレイ3A、第1トレイ3Bおよび第2トレイ3Cに、用紙サイズセンサ(図示せず)をそれぞれ備える。したがって、各トレイごとに、用紙サイズセンサによって、そのトレイに用紙がセットされているか否か、さらには、そのトレイにセットされている用紙の用紙サイズを検出することができる。そして、プリンタ3は、給紙トレイの各トレイごとに、検出された用紙の用紙サイズを記憶している。また、ユーザは、プリンタ3の操作パネルを操作することにより、給紙トレイのトレイごとに、そこにセットされている用紙の用紙サイズを記憶させることができる。
【0035】
したがって、本形態のプリンタ3は、PC2から印刷ジョブを受信した場合には、印刷ジョブに含まれる印刷設定に基づいて給紙トレイの1つトレイを選択する。つまり、印刷設定に含まれる給紙方法により指定された給紙トレイの1つトレイを選択する。そして、選択した給紙トレイのトレイから用紙を給紙し、印刷を可能としている。また、PC2から受信した印刷ジョブに含まれる印刷設定に、給紙方法として自動選択が含まれる場合には、給紙トレイの各トレイごとに記憶された用紙の用紙サイズに基づいて、給紙トレイの1つのトレイを選択し、そして、選択したトレイから、印刷設定に設定された用紙サイズの用紙を給紙することが可能である。なお、高級モデルのプリンタ3は、第1モデルの一例である。
【0036】
一方、高級モデルのプリンタ3と同じ時期に開発されたプリンタには、高級モデルのプリンタ3が備える多目的トレイ3Aや第2トレイ3Cを備えず、プリンタ3の第1トレイ3Bのみにより構成された、所謂、普及モデルのプリンタ(図示せず)も存在する。普及モデルのプリンタにおいては、プリンタ3の多目的トレイ3Aを備えないので、用紙サイズとして長尺紙(297mm×600mm)および長尺紙(297mm×1200mm)を扱うことができない。また、用紙種類においても、第1トレイから排紙トレイに至る搬送機構は、U字状パスによって構成されているので、用紙種類として「光沢紙」や「布」を用いる場合、それらの搬送には、適さない。なお、普及モデルのプリンタが第2モデルの一例である。
【0037】
また、普及モデルのプリンタの印刷機構38は、用紙種類として「光沢紙」や「布」を用いる場合においても、良好な印刷をすることができない。具体的には、例えば、用紙種類として「布」を用いる場合、布はインクを吸収するので、印刷に際しては、紙などに比較してインク量を増加させる必要がある。しかし、普及モデルのプリンタの印刷機構38は、インク量を適正に制御することができず、布に良好な印刷をすることができない。また、用紙種類として「光沢紙」が指定されている場合には、印刷の際のインクの量を適正に制御することができず、光沢紙に良好な印刷をすることができない。つまり、普及モデルのプリンタは、用紙種類として「光沢紙」や「布」への印刷は、保証外となっている。
【0038】
なお、プリンタドライバ43は、OS41から印刷指示情報を受け付けた場合、印刷データ、印刷設定画面51などにおいて設定された印刷設定などを含む印刷ジョブを普及モデルのプリンタに送信することは可能である。すなわち、プリンタドライバ43は、同じ時期に開発されたシリーズ上の各モデル、例えば、高級モデル、中級モデル、普及モデルなどの各モデル、具体的には、例えば、高級モデルのプリンタ3及び普及モデルのプリンタの動作を共通して制御することが可能である。
【0039】
このように本形態では、同一のプリンタドライバ43によって、同じ時期に開発されたシリーズ上の各モデルを制御することができるので、各モデルごとにプリンタドライバを開発する場合に比べて、開発コストを抑えることが可能となる。
【0040】
図4は、プリンタの電気的な概略構成図であり、続いて、高級モデルのプリンタ3の電気的構成について、
図4を参照しながら説明する。普及モデルのプリンタの電気的構成は、高級モデルのプリンタ3と略同じであるので、その説明を省略する。
【0041】
すなわち、プリンタ3は、CPU31と、ROM32と、RAM33と、NVRAM(不揮発性RAM)34とを含むコントローラ30を備えている。また、プリンタ3は、ユーザインタフェース(以下、「ユーザIF」とする)35と、通信インターフェース(以下、「通信IF」とする)36と、USBインターフェース(以下、「USBIF」とする)37と、印刷機構38と、搬送機構39と、を備え、これらがコントローラ30に電気的に接続されている。印刷機構38は、印刷データに基づく画像を用紙等の印刷媒体に印刷する構成を含む。印刷機構38が印刷ユニットの一例である。
【0042】
ROM32には、プリンタ3を制御するための各種制御プログラムや各種設定、初期値等が記憶されている。RAM33は、各種制御プログラムが読み出される作業領域として、あるいは、データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。CPU31は、ROM32から読み出した制御プログラムに従って、その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら、プリンタ3の各構成要素を制御する。なお、RAM33またはNVRAM34によって記憶部が構成される。
【0043】
また、ROM32またはNVRAM34には、プリンタ3が用紙種類としての「光沢紙」や「布」に対応するモデルか否かの情報が記憶それている。具体的には、例えば、高級モデルのプリンタ3であれば、「光沢紙」や「布」に対応するモデルとしての情報が記憶され、普及モデルのプリンタであれば、「光沢紙」や「布」に対応しないモデルとしての情報が記憶されている。
【0044】
CPU31は、制御部の一例である。コントローラ30が制御部の一例であってもよい。なお、
図4中のコントローラ30は、CPU31等、プリンタ3の制御に利用されるハードウェアを纏めた総称であって、実際にプリンタ3に存在する単一のハードウェアを表すとは限らない。
【0045】
ユーザIF35は、ユーザに対する報知の表示と、ユーザによる指示入力の受け付けとを担うハードウェアである。具体的には、
図3に示すように、ユーザIF35は、情報を画面に表示するためのディスプレイ35Aと、ユーザによる入力操作を受け付ける多数のキー35Bとから構成される。
【0046】
通信IF36は、ネットワークを介して接続されたPC2と通信を行うためのハードウェアである。USBIF37は、USB規格に基づいて接続された装置と通信を行うためのハードウェアである。
【0047】
続いて、本形態のプリンタドライバ43による処理について説明する。なお、以下の処理およびフローチャートの各処理ステップは、基本的に、各プログラムに記述された命令に従ったCPU21の処理を示す。すなわち、CPU21による処理は、PC2のOS41のAPIを用いたハードウェア制御も含む。本明細書では、OS41の記載を省略して各プログラムの動作を説明する。すなわち、以下の説明において、「プログラムBがハードウェアCを制御する」という趣旨の記載は、「プログラムBがOS41のAPIを用いてハードウェアCを制御する」ことを指してもよい。また、プログラムに記述された命令に従ったCPU21の処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「CPU21が行う」、「プログラムが行う」のように記載することがある。
【0048】
以下、本形態のプリンタドライバ43による印刷処理の手順について、
図5のフローチャートを参照して説明する。プリンタドライバ43による印刷処理は、印刷アプリ42が印刷実行の指示を受け付けた際に、PC2のCPU21にて実行される。
【0049】
まず、ステップ10(以下、S10と称す)において、CPU21は、印刷ジョブの送信に先立って、プリンタ3において印刷の準備を開始させるための先行コマンドをプリンタ3に対して送信する。
【0050】
次に、S11において、CPU21は、アプリでの印刷に係る設定と、印刷設定画面51で設定された印刷設定との妥当性を確認する。
【0051】
次に、S12において、CPU21は、印刷設定画面51などで設定された印刷設定を含むジョブ単位のヘッダーコマンドをプリンタ3に対して送信する。なお、ジョブ単位のヘッダーコマンドは、印刷ジョブの一部を構成する。ジョブ単位のヘッダーコマンドには、例えば、印刷設定画面51などで設定された、用紙種類、印刷品質、用紙サイズ、部数および給紙方法などのジョブ単位のパラメータが含まれる。なお、用紙種類において「布」や「光沢紙」の何れかが選択されている場合のジョブ単位のヘッダーコマンドが、特定ジョブの一例である。
【0052】
次に、S13において、CPU21は、S12によって送信されたヘッダーコマンドに応じてプリンタ3から送信される対応コマンドおよび非対応コマンドの何れかのコマンドの受信を待って、対応コマンドおよび非対応コマンドの何れを受信したかを判断する。なお、対応コマンドは、
図7に示すS48において、非対応コマンドは、
図7に示すS50において、それぞれ、ヘッダーコマンドに応じてプリンタ3からPC2に対して送信されるコマンドである。ここで、PC2が対応コマンドを受信すれば、CPU21は、プリンタ3から対応コマンドを受信したと判断し(S13:対応コマンド)、次のS14へ移行する。
【0053】
次に、S14において、CPU21は、印刷ジョブの一部を構成するところの、ページ単位のヘッダコマンドをプリンタ3に対して送信する。ページ単位のヘッダコマンドには、例えば、印刷設定画面51などで設定された、印刷品質、カラー/グレースケール、などのページ単位のパラメータが含まれる。
【0054】
次に、S15において、CPU21は、OS41からの印刷指示情報にて指定されている画像データに基づいて印刷データを頁単位で生成する。
【0055】
次に、S16において、CPU21は、印刷ジョブの一部を構成するところの、生成した印刷データをプリンタ3に対して送信する。
【0056】
次に、S17において、CPU21は、全頁の印刷が終えたか否かを判断する。ここで、全頁の印刷が終えた場合には、CPU21は、全頁の印刷が終えたと判断し(S17:YES)、次のS18へ移行する。
【0057】
次に、S18において、CPU21は、印刷ジョブの一部を構成するところの、ジョブ単位のフッタコマンドをプリンタ3に対して送信したのち、印刷処理を終了する。
【0058】
一方、S15において、全頁の印刷が終えていない場合には、CPU21は、全頁の印刷が終えていないと判断し(S17:NO)、次のS14へ移行して、次の頁の印刷を実行する。
【0059】
一方、S13において、PC2がプリンタ3から非対応コマンドを受信していれば、CPU21は、プリンタ3から非対応コマンドを受信していると判断し(S13:非対応コマンド)、次のS19へ移行する。
【0060】
次に、S19において、CPU21は、
図6(A)に示す、排他警告画面52をディスプレイ28Aに表示させる。なお、この処理がPC2側の報知処理である。排他警告画面52には、印刷アプリ42において指定されたプリンタと、用紙種類として「布」とが同時に設定することができないことをユーザに報知するための排他警告メッセージ52Aが含まれる。また、排他警告画面52には、印刷アプリ42におけるプリンタの指定、もしくは印刷設定画面51上で選択された用紙種類を変更することをユーザに促すための案内メッセージ52Bが含まれる。
【0061】
次に、S20において、CPU21は、排他警告画面52上のOKボタン52Cかキャンセルボタン52Dの何れかがユーザによって操作されたかを判断する。ここで、ユーザによってOKボタン52Cが操作された場合には、CPU21は、排他警告画面52上のOKボタン52Cが操作されたと判断し(S20:OKボタン)、その後にS24へ移行し、印刷を中断する処理を実行する。すなわち、「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデルのプリンタに対して印刷中止コマンドを送信する。
【0062】
この場合には、本形態では、ディスプレイ28Aに表示された排他警告画面52を見たユーザは、PC2の設置場所に居る状態で、印刷アプリ42において、「布」や「光沢紙」を印刷可能な高級モデルのプリンタ3を指定し直すことが可能となる。その後、ユーザは、再び、印刷アプリ42において印刷実行を指示すれば、その指定したプリンタ3によって「布」や「光沢紙」に対してスムースに印刷を実行することができる。また、印刷結果においても、良好な結果を得ることができる。
【0063】
一般的に、従来技術においては、例えば、用紙種類として「布」や「光沢紙」と、印刷アプリ42において「布」や「光沢紙」が印刷できないプリンタとが指定されていた場合、ユーザが、PC2の設置場所からプリンタの設置場所に移動して初めて印刷ができていないことに気づくので、利便性が悪い。
【0064】
ところが、本形態では、用紙種類として「布」や「光沢紙」と、印刷アプリ42において、「布」や「光沢紙」が印刷できないプリンタが指定されていた場合には、PC2のディスプレイ28Aに排他警告画面52を表示するので、排他警告画面52を見たユーザは、印刷アプリ42において、用紙種類として「布」や「光沢紙」を印刷可能な高級モデルのプリンタ3を指定し直すことで、プリンタ3において「布」や「光沢紙」に対してスムースに印刷を実行することができ、利便性が向上する。
【0065】
また、本形態では、ユーザによって、排他警告画面52上のOKボタン52Cが操作された場合には(S20:OKボタン)、印刷を中断する処理を実行する(S24)。したがって、印刷アプリ42において、「布」や「光沢紙」が印刷できないプリンタが指定されていた場合には、CPU21は、処理量が非常に多い画像処理(S15)を実行することがなく、CPU21の負荷が軽減される。また、プリンタにおいても保証外の印刷動作を回避することができる。
【0066】
一方、S20において、ここで、ユーザによってキャンセルボタン52Dが操作された場合には、CPU21は、排他警告画面52上のキャンセルボタン52Dが操作されたと判断し(S20:キャンセルボタン)、その後にS14へ移行し、引き続き印刷処理を実行する。
【0067】
この場合には、本形態では、ユーザの意図に従ってスムースに印刷を実行することができ、利便性が向上する。なお、図示は省略しているが、S13にて対応コマンドも非対応コマンドも受信せずにタイムアウトした場合、エラーとして印刷を中断する処理を実行する。
【0068】
次に、本形態のプリンタによる印刷処理の手順について、
図7のフローチャートを参照して説明する。プリンタによる印刷処理は、CPU31にて実行される。なお、その説明中、高級モデルのプリンタ3と普及モデルのプリンタとを区別することなく、プリンタ3として説明するが、高級モデルのプリンタ3と普及モデルのプリンタとを区別する必要がある場合には、高級モデルのプリンタ3、もしくは、普及モデルのプリンタと区別して説明する。
【0069】
まず、S41において、CPU31は、PC2からデータを受信したか否かを判断する。ここで、プリンタ3がPC2からデータを受信した場合には、CPU31は、PC2からデータを受信したと判断し(S41:YES)、次のS42へ移行する。
【0070】
一方、プリンタ3がPC2からデータを受信していない場合には、CPU31は、PC2からデータを受信していないと判断し(S41:NO)、次のS43へ移行する。そして、S43において、CPU31は、他の処理を実行する。
【0071】
次に、S42において、CPU31は、プリンタ3が受信したデータが先行コマンドか否かを判断する。ここで、プリンタ3が受信したデータが先行コマンドである場合には、CPU31は、受信したデータが先行コマンドであると判断し(S42:YES)、次のS44へ移行する。そして、S44において、CPU31は、プリンタ3での印刷の実行に先立って、印刷の準備動作を始動した後、S41へ戻る。印刷の準備動作としては、インクジェット方式のプリンタであれば、例えば印刷ヘッドの乾燥防止用キャップを外して、印刷開始位置まで印刷ヘッドを移動させる動作が該当する。また、電子写真方式のプリンタであれば、例えば定着装置の予熱を開始させる動作が該当する。
【0072】
一方、S42において、ここで、プリンタ3が受信したデータが先行コマンドではない場合には、CPU31は、受信したデータが先行コマンドではないと判断し(S42:NO)、次のS45へ移行する。
【0073】
次に、S45において、CPU31は、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位のヘッダコマンドか否かを判断する。ここで、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位のヘッダコマンドである場合には、CPU31は、受信したデータがジョブ単位のヘッダコマンドであると判断し(S45:YES)、次のS46へ移行する。
【0074】
次に、S46において、CPU31は、ジョブ単位のヘッダコマンドにおいて、特定の印刷媒体が選択されている否かを判断する。本実施形態では、特定の印刷媒体とは、例えば、「布」や「光沢紙」である。ここで、PC2の印刷設定画面51の用紙種類の選択欄511において「布」や「光沢紙」が選択されている場合には、CPU31は、ジョブ単位のヘッダコマンドにおいて、特定の印刷媒体が選択されていると判断し(S46:YES)、次のS47へ移行する。
【0075】
次に、S47において、CPU31は、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を印刷することができる対応モデルか否かを判断する。S47におけるCPU31は、ROM32またはNVRAM34に記憶されたところの、「光沢紙」や「布」に対応するモデルか否かの情報に基づいて判断する。なお、「光沢紙」や「布」に対応するモデルか否かの情報がモデル情報の一例である。
【0076】
なお、本形態では、「光沢紙」や「布」に対応するモデルか否かの情報をモデル情報として用いたが、それに限定されることない。例えば、ROM32またはNVRAM34に記憶されたプリンタ3のモデル名と、そのモデル名が「光沢紙」や「布」に対応しているか否かを示すテーブルとを用いても差し支えない。この場合、プリンタ3のモデル名に変えて、製造番号やIPアドレスを用いても差し支えない。また、テーブルは、予めROM32またはNVRAM34に記憶させたものでもよいし、PC2からプリンタ3に送信しても差し支えない。また、印刷アプリ42においてプリンタ3が指定され、また、用紙種類の選択欄511において「布」が選択された際に、PC2側において指定されたプリンタ3が「光沢紙」や「布」に対応するモデルか否かを判断し、その対応情報をPC2側からプリンタ3に送信するようにしても差し支えない。
【0077】
そして、S47において、CPU31は、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができる対応モデル、すなわち、高級モデルのプリンタ3であると判断した場合には(S47:YES)、次のS48へ移行する。そして、次に、S48において、CPU31は、PC2に対して対応コマンドを送信した後、次のS49において、CPU31は、ジョブ単位のヘッダコマンドに含まれるパラメータをRAM33またはNVRAM34に記憶させた後に、S41へ戻る。
【0078】
一方、S47において、CPU31が、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデル、すなわち、普及モデルのプリンタと判断した場合には(S47:NO)、次のS50へ移行する。
【0079】
次に、S50において、CPU31は、非対応コマンドをPC2に対して送信し、その後、S49へ移行する。なお、非対応コマンドがエラーコマンドの一例である。
【0080】
なお、本形態では、CPU31は、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができるモデルの場合、すなわち、高級モデルのプリンタ3と判断した場合には(S47:YES)、対応コマンドをPC2に対して送信し、また、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデル、すなわち、普及モデルのプリンタと判断した場合には(S47:NO)、非対応コマンドををPC2に対して送信するように構成したが、それに限定されるものではない。例えば、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができるモデル、すなわち、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができるモデルの場合と、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデルの場合との何れかの場合に、対応コマンドと非対応コマンドの何れかをPC2に対して送信するようにしても良い。
【0081】
一方、S46において、CPU31は、ジョブ単位のヘッダコマンドにおいて、特定の印刷媒体が選択されていないと判断した場合には(S46:NO)、次のS48へ移行して対応コマンドをPC2に対して送信する。
【0082】
一方、S45において、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位のヘッダコマンドでない場合には、CPU31は、受信したデータがジョブ単位のヘッダコマンドではないと判断し(S45:NO)、次のS51へ移行する。
【0083】
次に、S51において、CPU31は、プリンタ3が受信したデータがページ単位のヘッダコマンドか否かを判断する。ここで、プリンタ3が受信したデータがページ単位のヘッダコマンドである場合には、CPU31は、受信したデータがページ単位のヘッダコマンドであると判断し(S51:YES)、次のS52へ移行する。そして、S52において、CPU31は、ページ単位のヘッダコマンドに含まれるパラメータをRAM33またはNVRAM34に記憶させた後に、S41へ戻る。
【0084】
一方、S51において、プリンタ3が受信したデータがページ単位のヘッダコマンドでない場合には、CPU31は、受信したデータがページ単位のヘッダコマンドではないと判断し(S51:NO)、次のS53へ移行する。
【0085】
次に、S53において、CPU31は、プリンタ3が受信したデータがページ単位の画像データか否かを判断する。ここで、プリンタ3が受信したデータがページ単位の画像データである場合には、CPU31は、受信したデータがページ単位の画像データであると判断し(S53:YES)、次のS54へ移行する。そして、S54において、CPU31は、ページ単位の画像データ、およびRAM33またはNVRAM34に記憶されたパラメータに基づいて、印刷機構38や搬送機構39を駆動して1枚の記録媒体に印刷を実行した後に、S41へ戻る。なお、印刷の実行中、用紙ジャム等、エラーが発生した場合には、エラーの発生を示すコマンドをPC2に送信し、PC2のディスプレイ28Aにエラーの内容を表示させるようにしても良い。
【0086】
一方、S53において、プリンタ3が受信したデータがページ単位の画像データでない場合には、CPU31は、受信したデータがページ単位の画像データではないと判断し(S53:NO)、次のS55へ移行する。
【0087】
次に、S55において、CPU31は、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位のフッターコマンドか否かを判断する。ここで、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位ののフッターコマンドである場合には、CPU31は、受信したデータがジョブ単位ののフッターコマンドであると判断し(S55:YES)、次のS56へ移行する。そして、S56において、CPU31は、印刷終了処理を実行した後に、S41へ戻る。印刷終了処理では、例えば全ページの印刷が完了していれば正常終了を示す正常終了コマンドをPC2に送信し、PC2のディスプレイ28Aに正常に終了したことを表示させるようにしても良い。
【0088】
本形態では、ユーザがPC2の排他警告画面52上のOKボタン52Cが操作された場合には(S20:OKボタン)、PC2からプリンタ3に対して印刷中断コマンドが送信されるので(S24)、プリンタ3は、その印刷中断コマンドを受信することで、印刷終了処理を実行する。この場合には、S54が実行されることなく、印刷動作が行われない。
【0089】
一方、S55において、プリンタ3が受信したデータがジョブ単位のフッターコマンドでない場合には、CPU31は、受信したデータがジョブ単位のフッターコマンドではないと判断し(S55:NO)、S41へ戻る。
【0090】
なお、
図7に示す、プリンタによる印刷処理の手順を示すフローチャートには記載されていないが、
図5のS24において、PC2からプリンタ3に対して送信された印刷中止コマンドを受信した場合には、「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデルのプリンタは、印刷中止処理を実行する。
【0091】
(第2実施形態)
以下、プリンタドライバ43による第2実施形態に係る印刷処理の手順について、
図8のフローチャートを参照して説明する。第1実施形態では、PC2側で排他警告画面52を表示するように構成したが、第2実施形態では、プリンタ3側で排他警告画面38を表示するように構成しており、その点において、第1実施形態と第2実施形態とは大きく相違している。なお、その説明中、第1実施形態と同じ作用効果を奏するものには、同じ符号を付して説明する。
【0092】
すなわち、本形態では、
図5のS13に示されるようなヘッダーコマンドに応じて返信されるコマンドの解析、さらにS19以降に示される非対応コマンドであった場合以降の処理は行わない。一方で、S18に示されるフッターコマンドを送信した後の処理として、S21において、CPU21は、PC2が正常終了コマンドと、エラーコマンドの何れを受信したかを判断する。ここで、プリンタ3から正常終了コマンドを受信していれば、CPU21は、プリンタ3から正常終了コマンドを受信していると判断し(S21:正常終了)、その後、次のS22において、CPU21は、ディスプレイ28Aに印刷が正常に終了したことを表示してPC2側の印刷処理を終了する。
【0093】
一方、PC2がエラーコマンドを受信しておれば、S21において、CPU21は、プリンタ3からエラーコマンドを受信したと判断し(S21:エラー)、次のS23へ移行してCPU21は、ディスプレイ28Aにエラーが発生した旨を表示させてPC2側の印刷処理を終了する。なお、正常終了コマンドもエラーコマンドも受信せずにタイムアウトした場合も、CPU21は、ディスプレイ28Aにエラーが発生した旨を表示してPC2側の印刷処理を終了する。
【0094】
したがって、本形態では、ユーザが、ディスプレイ28Aに表示されたエラー画面を見た後、PC2の設置場所からプリンタ3の設置場所に移動する。そして、ユーザは、後述する排他警告画面38を見た上で、印刷処理を進めることが可能となる。
【0095】
次に、本形態のプリンタによる印刷処理の手順について、
図9のフローチャートを参照して説明する。なお、その説明中、第1実施形態と同じ作用効果を奏するものには、同じ符号を付して説明する。
【0096】
すなわち、本形態では、S47において、CPU31が、プリンタ3が「布」や「光沢紙」を最適に印刷することができないモデル、すなわち、普及モデルのプリンタと判断した場合には(S47:NO)、次のS60へ移行する。そして、次のS60において、CPU31は、ディスプレイ35Aに、排他警告画面38を表示させた後に、次のS61へ移行する。なお、この処理が報知処理の一例である。
【0097】
排他警告画面38には、例えば、このプリンタでは、用紙種類として「布」がサポートされていないことをユーザに報知するための排他警告メッセージ38Aが含まれる。また、排他警告画面38には、印刷アプリ42におけるプリンタの指定、もしくは印刷設定画面51上で選択された用紙種類を変更することをユーザに促すための案内メッセージ38Bが含まれる。次に、S61において、CPU31は、排他警告画面38上のOKボタン38Cおよびキャンセルボタン38Dの何れかがユーザによって操作されたかを判断する。
【0098】
ここで、ユーザによってOKボタンが38C操作された場合には、CPU31は、排他警告画面38上のOKボタンが操作されたと判断し(S61:OKボタン)、次のS49へ移行する。そして、次に、S49において、CPU31は、エラーコマンドをPC2に対して送信し、その後、S56へ移行して、プリンタ側の印刷を中断する処理を実行する。
【0099】
一方、ユーザによってキャンセルボタンが操作された場合には、CPU31は、排他警告画面38上のキャンセルボタンが操作されたと判断し(S61:キャンセルボタン)、次のS49へ移行して、印刷処理を継続する。なお、この処理が、確認印刷処理の一例である。
【0100】
このように本形態では、プリンタ3側において、プリンタ3が特定の用紙種類に対応しない場合には、用紙種類に対応しないことを示す報知をプリンタ3のディスプレイ35Aで行うことで、ユーザは、プリンタ3側において用紙種類に関するエラーがあったことを認識できる。さらにその報知とともに印刷を行うか否かの指示を受け付けることで、ユーザはサポート外での印刷であることを認識した上での印刷を行うか否かを決めることになり、サポート外での印刷を抑制できる。
【0101】
なお、本形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、プリンタ3は、印刷単機能の装置に限らず、例えば、原稿読取機能やFAX送受信機能を備えている装置であっても良い。本形態は、プリンタ3に代えて、複合機、コピー機、FAX装置等に接続されるPC2にも適用可能である。また、PC2には、2台以上のプリンタが接続されていても良い。
【0102】
本形態では、用紙種類において「布」や「光沢紙」が選択されている場合、印刷ジョブの一部を構成するところの、ジョブ単位のヘッダーコマンドを特定ジョブとしてプリンタ3に対して送信するようにしたが、これに限定されない。たとえば、用紙種類において「布」や「光沢紙」が選択されていた場合には、印刷ジョブに先立ってプリンタ3に送信される先行コマンドに、「布」や「光沢紙」が選択されていることを示す識別情報を付加して送信するようにしても差し支えない。なお、識別情報としては、「布」や「光沢紙」選択されていることを示す印字設定のパラメータそのものを用いても差し支えない。
【0103】
この場合、識別情報を特定ジョブの送信に先行して送信することで、プリンタ3での印刷媒体の搬送を早期に開始させ、印刷開始を早めることができる。特に、第2トレイ3Cから供給されるところの、ロール状に巻かれた長尺状の「布」の場合には有効である。
【0104】
また、各図に示した画面の構成は、いずれも一例であり、図示の例に限らない。例えば、印刷設定画面51の基本タブ51Aの画面では、用紙サイズと両面印刷と給紙トレイとの全ての選択を受け付けるとしたが、一部の選択は別の画面で受け付けてもよいし、それぞれ別の画面であっても良い。
【0105】
また、本形態では、排他警告画面52をPC2のディスプレイ28Aに表示するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、排他警告画面52上の各メッセージなどを音声により報知するようにしても差し支えない。音もしくは振動のパータンにより、排他警告画面52上の各メッセージなどの内容をユーザに報知するようにしても差し支えない。また、これらの組み合わせであっても良い。
【0106】
また、排他警告画面52は、印刷設定画面51に組み込まれた状態でユーザIF18のディスプレイ28Aに表示されるようにしても差し支えない。もちろん、排他警告画面52を単独でディスプレイ28Aに表示されるようにしても差し支えない。
【0107】
また、プリンタ3のディスプレイ35Aに、排他警告画面38を表示するようにしたが、これに限定されるものではない。例えば、排他警告画面38上の各メッセージなどを音声により報知するようにしても差し支えない。音もしくは振動のパータンにより、排他警告画面38上の各メッセージなどの内容をユーザに報知するようにしても差し支えない。また、これらの組み合わせであっても良い。
【0108】
また、本形態では、プリンタドライバ43の処理として説明したが、本発明のプログラムは、プリンタドライバに限らない。プリンタドライバに代えて汎用の印刷プログラムを備えるOSが搭載された、いわゆるドライバレスの構成を有するPCにも適用可能である。本発明は、例えば、汎用の印刷プログラムとは別にPCに組み込まれる印刷に関するプログラム、汎用の印刷プログラムと協働して印刷設定を受け付けるプログラム、にも適用可能である。
【0109】
また、本形態では、常駐ブログラムとしてプリンタドライバ43を用いたが、それに限定されることはない。例えば、常駐ブログラムとして、印刷アプリ42や、そのための単独のアプリを用いても差し支えない。
【0110】
また、各実施の形態に開示されている任意のフローチャートにおいて、任意の複数のステップにおける複数の処理は、処理内容に矛盾が生じない範囲で、任意に実行順序を変更できる、または並列に実行できる。
【0111】
また、各実施の形態に開示されている処理は、単一のCPU、複数のCPU、ASICなどのハードウェア、またはそれらの組合せで実行されてもよい。また、実施の形態に開示されている処理は、その処理を実行するためのプログラムを記録した記録媒体、または方法等の種々の態様で実現することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 印刷システム
2 PC
21 CPU
28A ディスプレイ
43 プリンタドライバ
51 印刷設定画面
52 排他警告画面
3 プリンタ
31 CPU
35A ディスプレイ
38 排他警告画面