(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148598
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ステータおよびステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20220929BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050343
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】丹野 稔大
(72)【発明者】
【氏名】横田 喜正
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼原 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】小坂 弥
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB03
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA15
5H604PB03
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615RR07
5H615SS44
5H615TT03
5H615TT34
(57)【要約】
【課題】ステータの製造効率を向上させる技術を提供する。
【解決手段】複数のティース部7を有するステータ4と、ティース部7の間に設けられコイル9が収容されるスロット8と、を有するステータ4の製造方法であって、スロット8にコイル9を収容するライナー部材20(コイル収容部材)を配置するコイル収容部材配置工程S12と、ライナー部材20にコイル9を収容するコイル収容工程S14とを有し、ライナー部材20は樹脂組成物で構成されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティース部を有するステータコアと、前記ティース部の間に設けられコイルが収容されるスロットと、を有するステータの製造方法であって、
前記スロットに前記コイルを収容するコイル収容部材を配置するコイル収容部材配置工程と、
前記コイル収容部材に前記コイルを収容するコイル収容工程と、
を有し、
前記コイル収容部材は、樹脂組成物で構成されている、ステータの製造方法。
【請求項2】
前記コイル収容部材は、前記コイルを冷却する冷却水路が設けられた水路部を有する、請求項1に記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記コイル収容部材は、複数のパーツからなる、請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記コイル収容部材は、前記水路部と、前記コイルの周囲を覆って収容するコイル保護部とを有し、前記水路部と前記コイル保護部とが異なるパーツで構成されている、請求項3に記載のステータの製造方法。
【請求項5】
前記コイル収容部材は、前記水路部と、前記コイルの周囲を覆って収容するコイル保護部とを有し、前記水路部と前記コイル保護部とは一体に成形されている、請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項6】
複数の前記コイル収容部材が連結され、複数のスロットに収容されるユニットとして設けられている、請求項1から5までのいずれか1項に記載のステータの製造方法。
【請求項7】
前記スロットに樹脂組成物を充填する樹脂充填工程を更に有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のステータの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載のステータの製造方法により製造されたステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ(発動機)や発電機のような回転電機において、ステータを効率よく冷却するために、ステータの外周に配置される円筒状のケースに冷却用ジャケット構造を配置し、ステータからケースへと熱を逃がす構造が従来から提案されている(従来技術)。
例えば、特許文献1では、ステータのティース部に集中巻きしたコイルを、ティース部間のスロットに収容した回転電機において、スロットの内部空間に軸方向に延びる複数のパイプを並列配置し、かつこれらパイプの隙間及びパイプと前記コイルとの隙間に樹脂材料を充填して、ステータ内周側に向けて開口するスロットを閉塞する樹脂層を形成し、パイプ内に冷媒を流すようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のように、スロットにコイルを収容してから樹脂材料を充填する製造プロセスを採用した場合、成形不良が生じた場合、部品損失量が大きくなってしまい製造効率の点で改善が求められていた。また、別な観点では、コイルをスロットに配置する際に、コイルがステータ(ティース)に接触してしまい、これによって不良が発生してしまう虞があった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであって、ステータの製造効率を向上させる技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
複数のティース部を有するステータコアと、前記ティース部の間に設けられコイルが収容されるスロットと、を有するステータの製造方法であって、
前記スロットに前記コイルを収容するコイル収容部材を配置するコイル収容部材配置工程と、
前記コイル収容部材に前記コイルを収容するコイル収容工程と、
を有し、
前記コイル収容部材は、樹脂組成物で構成されている、ステータの製造方法が提供される。
本発明によれば、上述のステータの製造方法により製造されたステータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ステータの製造効率を向上させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係るモータの回転軸方向と垂直な方向の縦断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るモータの回転軸方向の縦断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るスロット周辺を拡大して示した図である。
【
図4】第1の実施形態に係る
図3の構成要素を分解して示した図である。
【
図5】第1の実施形態に係るステータの製造プロセスを示すチャート図である。
【
図6】第2の実施形態に係るスロット周辺を拡大して示した図である。
【
図7】第3の実施形態に係るスロット周辺を拡大して示した図である。
【
図8】第4の実施形態に係るライナー部材ユニットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<第1の実施形態>>
<概要>
本実施形態では、回転電機(電動機、発電機または電動機/発電機の両用機)として電動機(モータ)に適用した例を説明する。
図1はモータ100の回転軸方向と垂直な方向の縦断面図である。
図2はモータ100の回転軸方向の縦断面図である。
図3は、
図1のスロット周辺を拡大して示した図である。
図4は、
図3の構成要素を分解して示した図である。
【0010】
本実施形態の概要は次の通りである。モータ100において、コイル9をティース部7間のスロット8に収容するときに、スロット8の内部空間に予め別部品として用意されたライナー部材20を配置し、ついで、ライナー部材20にコイル9を収容する。さらに必要に応じて、前記スロット8に樹脂組成物を充填し、またコイル9の端部(ステータコア41から出ている部分)を樹脂組成物で覆う。ライナー部材20は樹脂材料で構成され、また、コイル9を冷却する冷却水路10が設けられた水路部26を有する。これによって、ステータ4のコイル9を効率良く冷却する。また、予め樹脂材料で構成されたライナー部材20をスロット8に収容することで、成形不良時の損失を最小限に留める。さらに、ステータ4を製造する際に昇温する回数を削減できる。
以下具体的に説明する。
【0011】
<モータ100の基本構造>
モータ100は、ケース1と、ケース1の内部に収容されたロータ2とステータ4とコイル9とを備える。
【0012】
<ケース1>
ケース1は、円筒部1aと、この円筒部1aの軸方向両端を閉塞する側板部1b、1cとを有して構成される。ケース1の材料として、例えば、アルミニウム合金(鋳物鋳造品)や樹脂材料、それらを組み合わせたものを用いることができる。側板部1b、1cには、スロット8(ライナー部材20)内の冷却水路10と外部の冷却流路とを連結部材12を介して連結する外部接続流路17が設けられている。
【0013】
<ロータ2>
ロータ2は、ケース1の内部に収容されている。ロータ2の中心には出力軸として回転軸3が取り付けられている。回転軸3の両端がそれぞれベアリング3aを介して側板部1b、1cに支持されている。これによって、ロータ2は回転軸3を中心に回転自在となっている。
【0014】
ロータ2には永久磁石5が内装されている。具体的には、
図2に示すように、複数(ここでは8個)の永久磁石5が同一円周上に等間隔で配置されている。このとき、隣合う永久磁石5の磁極は互いに異なるように設置されている。
【0015】
円筒部1aの内周には円筒型のステータ4が、ロータ2の外周を取り囲むように配置され固定されている。ステータ4の内周面とロータ2の外周面との間には微少な間隙(エアギャップ)が設けられている。
【0016】
<ステータ4>
ステータ4は、ステータコア41と、コイル9と、ライナー部材20とを備える。
ステータコア41は、複数の電磁鋼板を軸方向に積層し密着固定して設けられている。ステータコア41は、環状に設けられたヨーク部6と、ヨーク部6からロータ2側(径内方向)に向かって延出する複数のティース部7とが設けられている。複数のティース部7は周方向に等間隔に配列されて設けられている。ここでは、
図1に示すように、24個のティース部7が設けられている。各ティース部7の間にスロット8が設けられている。
【0017】
コイル9には平角線が用いられ、ティース部7を跨いで離間した二つのスロット8に収納されるようにして巻かれている。ここでは、スロット8に配置されたライナー部材20にコイル9が分布巻きで収容されている。コイル9の表面にはエナメル被覆が設けられている。
【0018】
<ティース部7>
ティース部7は上述したロータ2の永久磁石5と対応して設けられ、各コイル9を順次励磁していくことにより、これに対応した永久磁石5との吸引、反発によりロータ2が回転する。
【0019】
ティース部7は、外周側の周方向の幅が大きく、内周側の幅が小さく、内周側に向けて先細に形成されている。ティース部7の内周側の端部には、スロット8の幅を縮めるように周方向に沿って対向するティース部先端71が形成されている。
【0020】
<スロット8>
スロット8は、隣接するティース部7間の空間であって、
図3に示すように、半径方向に沿って対向するティース部7の壁面72が平行面となるように設けられている。ティース部先端71間がスロット8の内周側開口となっている。スロット8にはライナー部材20が配置されてコイル9が収容されている。
【0021】
<ライナー部材20>
ライナー部材20は、樹脂材料で構成された長尺状の部材であって、スロット8の外周側の壁面73および側面の壁面72に当接するように、上面視で矩形形状に設けられている。ライナー部材20の長さ方向の端部は、ステータコア41の両端(すなわちスロット8の両端)から所定長だけ外側に出ている。
【0022】
ライナー部材20の厚みは、最も薄い領域(ティース部7の壁面72とコイル収容部28のライナー内面23との間)で、例えば0.3mm程度である。
【0023】
このライナー部材20は、例えば押し出し成形によって予め別部材として製造され、モータ100の製造時にスロット8に配置される。
【0024】
ライナー部材20は、内周側の水路部26と外周側のコイル保護部27とを一体に設けて構成されている。水路部26には、両端を貫通する断面円形の貫通孔が設けられており、この貫通孔が冷却水が流れる冷却水路10として機能する。コイル保護部27には、両端を貫通する断面矩形の貫通孔が設けられており、この貫通孔がコイル9を収容するコイル収容部28として機能する。
【0025】
<水路部26>
水路部26の冷却水路10は、コイル保護部27に収容されるコイル9に隣接して設けられており、効率的にコイル9を冷却することができる。ライナー部材20がステータコア41の端部から所定長外側に延びているので、スロット8の内部だけでなく外部(すなわちコイル端)でもコイル9を効果的に冷却できる。
【0026】
<コイル保護部27>
コイル保護部27は、コイル収容部28を有している。複数(図示では4つ)のコイル9が径方向に並んで収容される。コイル9を収容する際には、隣接するコイル9は若干離間して配置されてコイル9相互で絶縁が確保される。そのため、コイル収容部28のライナー内面23bに、コイル9を適正な位置とするための位置決め部(突起等)が設けられてもよい。
【0027】
<ライナー部材20の材料>
ライナー部材20は、樹脂材料の硬化物によって構成される。ライナー部材20に用いられる樹脂材料は、熱伝導性の良い樹脂材料であることが望ましく、1種類の樹脂または部材毎に複数種の樹脂の組み合わせとすることができる。例えば、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂からなる群より選択される1種または2種の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0028】
フェノール樹脂としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0029】
エポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。
エポキシ樹脂としては、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンのような芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂;アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;トリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂;ナフトール型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂;フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、またはビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ-アジペイド等の脂環式エポキシ等の脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
エポキシ樹脂を含む場合、芳香族環にグリシジルエーテル構造あるいはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むものが、耐熱性、機械特性、および耐湿性の観点から好ましい。
【0030】
硬化剤は、熱硬化性樹脂に好ましい態様として含まれるエポキシ樹脂が選択される場合に、三次元架橋させるために用いられるものである。硬化剤としては、特に限定されないが、例えばフェノール樹脂を用いることができる。このようなフェノール樹脂系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造を特に限定するものではない。
フェノール樹脂系硬化剤としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂等の多官能型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物、ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0031】
無機充填剤としては、ケース材に用いられる樹脂組成物の技術分野で一般的に用いられる無機充填剤(フィラーや強化繊維)を使用することができる。無機充填剤としては、例えば溶融破砕シリカ及び溶融球状シリカ等の溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、カオリン、タルク、クレイ、マイカ、ロックウール、ウォラストナイト、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ガラスファイバー、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミ、カーボンブラック、グラファイト、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、セルロース、アラミド、木材、フェノール樹脂成形材料やエポキシ樹脂成形材料の硬化物を粉砕した粉砕粉等が挙げられる。この中でも、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ等のシリカが好ましく、溶融球状シリカがより好ましい。また、この中でも、炭酸カルシウムがコストの面で好ましい。無機充填剤としては、一種で使用しても良いし、または二種以上を併用してもよい。
【0032】
<樹脂組成物の物性>
ライナー部材20を構成する樹脂材料の硬化物の物性は例えば以下の通りである。
樹脂材料の硬化物の熱伝導率K1は1~10W/m・Kである。熱伝導率K1の下限は、好ましくは2W/m・K以上であり、より好ましくは3W/m・K以上である。熱伝導率K1の上限は、特に限定しないが、現実的な値として10W/m・Kである。
【0033】
樹脂材料の硬化物のガラス転移温度Tg1が150℃以上である。
ガラス転移温度Tg1を上記範囲とすることで、モータ100の耐熱性能を向上させ、高い出力を実現できる。
【0034】
樹脂材料の硬化物を、175℃で4時間加熱処理したサンプルに対して、動的粘弾性測定機を用いて、測定温度:-50℃~200℃、昇温速度:5℃/分、荷重:800gf、周波数:10Hz、3点曲げモードの条件で測定した、25℃における貯蔵弾性率が、20GPa以上70GPa以下である。
貯蔵弾性率の下限は、好ましくは30GPa以上、より好ましくは40GPa以上である。貯蔵弾性率の上限は、好ましくは60GPa以下、より好ましくは50GPa以下である。貯蔵弾性率を上記の範囲とすることで、モータ100の耐熱性能を向上させ、高い出力を実現できる。
【0035】
<ステータ4の製造方法>
図5にステータ4の製造方法のフローを示す。
複数の電磁鋼板を軸方向に積層し密着固定させたステータコア41を用意する(ステータコア準備工程S10)。
ついで、ステータコア41のスロット8に、コイル9を収容するライナー部材20(コイル収容部材)を配置する(コイル収容部材配置工程S12)。
スロット8にライナー部材20が適正位置に配置されると、ライナー部材20にコイル9を収容する(コイル収容工程S14)。
全てのコイル9の収容後、スロット8に樹脂組成物を充填し硬化させるとともにコイル端部を樹脂組成物で覆う(樹脂充填工程S16)。すなわち、スロット8とライナー部材20との間の隙間や、ティース部先端71間の領域、コイル収容部28内のコイル9との隙間に、樹脂組成物が充填される。樹脂組成物としては、ライナー部材20の材料として例示したものを用いることができる。このとき、ライナー部材20との密着性や隙間に充填する際の流動性を考慮して材料が選択される。
【0036】
<<第2の実施形態>>
図6は、本実施形態のステータ4の一部拡大図であって、第1の実施形態の
図4に対応した分解図である。以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0037】
本実施形態では、第1の実施形態と異なり、ライナー部材20が複数部材から構成されている。すなわち、ライナー部材20は、冷却水路10を有する水路部26と、コイル収容部28を有するコイル保護部27が異なる長尺管状の部材として構成されている。これによって、水路部26とコイル収容部28とがそれぞれシンプルな構成となり、それらの製造が容易となる。
【0038】
<<第3の実施形態>>
図7は、本実施形態のステータ4の一部拡大図であって、第1の実施形態の
図4や第2の実施形態の
図6対応した分解図である。以下では、第1及び第2の実施形態と異なる点について説明する。
【0039】
本実施形態では、第2の実施形態と異なり、ライナー部材20のコイル保護部27が複数部材から構成されている。すなわち、水路部26は、第2の実施形態と同様の長尺管状の部材として設けられている。コイル保護部27が、3つの板状の異なる部材27a~27cとし構成されている。より具体的には、コイル保護部27は、スロット8のティース部7側の両壁面72にそれぞれ当接して配置される長尺板状の部材72a、72bと、スロット8のヨーク部6側の壁面73に当接して配置される長尺状の部材27cと、を有する。このような構成とすることで、部材27a~27cをインジェクション成形、トランスファー成形、コンプレッション成形によりにより製造することができ、コイル保護部27の部品製造工程をシンプルにすることができる。
【0040】
<<第4の実施形態>>
図8は、本実施形態のライナー部材ユニット120を示した図である。以下では、第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0041】
ライナー部材ユニット120は、複数のライナー部材20が連結された部材として構成されており、連結した状態で複数のスロット8に収容される。ここでは、ライナー部材ユニット120は、3つのライナー部材20と、それらの一方の端部で3つのライナー部材20を一体に連結するライナー連結部121とを有する。3つのライナー部材20は、ライナー連結部121に連結された状態で、連続する3つのスロット8のそれぞれにライナー部材20が嵌め込むことができるようになっている。これによって、ライナー部材20をスロット8に収容する際の工数を低減できる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0043】
<モータ100の特徴・機能のまとめ>
本実施形態のモータ100の特徴についてスロット8の構造に着目して纏めて説明する。
(1)複数のティース部7を有するステータコア41と、ティース部7の間に設けられコイル9が収容されるスロット8と、を有するステータ4の製造方法であって、
スロット8にコイル9を収容するライナー部材20(コイル収容部材)を配置するコイル収容部材配置工程S12と、
前記ライナー部材20に前記コイル9を収容するコイル収容工程S14と、
を有し、
ライナー部材20は樹脂組成物で構成されている。
予め樹脂材料で構成されたライナー部材20をスロット8に収容することで、成形不良時の損失を最小限に留めることができる。すなわち、ステータ4全体の不良とならずライナー部材20のみの不良となり、製造時の無駄を抑制できる。また、製造する際にステータ4等の部材が昇温する回数を削減できる。また、コイル9をスロット8に収容する際に、ティース部7やヨーク部6の壁面がライナー部材20で覆われているため、コイル9が損傷することがない。
(2)ライナー部材20は、コイル9を冷却する冷却水路10が設けられた水路部26を有する。
コイル9からライナー部材20の水路部26まで、樹脂材料が充填された状態で隙間無く構成されているため、コイル9の熱を効率的に水路部26へ伝達できる。
(3)ライナー部材20は、複数のパーツからなる。これによって、ライナー部材20のそれぞれのパーツを簡単な形状とすることができ、パーツ製造時の歩留まりを向上させることができる。また、各パーツの設計の自由度が向上する。
(4)ライナー部材20は、水路部26と、コイル9の周囲を覆って収容するコイル保護部27とを有し、水路部26とコイル保護部27とが異なるパーツで構成されている。
これによって、水路部26やコイル保護部27が設計変更に柔軟に対応することができる。また、異なる仕様のモータ100においても、あらかじめ用意された複数種類の水路部26やコイル保護部27を組み合わせて所望の仕様に対応するといったこともできる。
(5)ライナー部材20は、水路部26と、コイル9の周囲を覆って収容するコイル保護部27とを有し、水路部26とコイル保護部27とは一体に成形されている。
これによって、部品点数の抑制と、ライナー部材20をスロット8に配置する際の工数増加を抑制できる。
(6)複数のライナー部材20が連結され、複数のスロット8に収容されるライナー部材ユニット120として設けられている。
これによって、部品点数の抑制と、ライナー部材20をスロット8に配置する際の工数増加を抑制できる。
(7)スロット8に樹脂組成物を充填する樹脂充填工程S16を更に有する。
これによって、スロット8内の樹脂の充填状態を高めることが出来、コイル9の熱を効率的に冷却水路10に伝えることができる。また、各構成の固定状態を良好に維持することができ、振動や騒音等を抑制できる。
(8)上記の製造方法により製造されたステータ4。
【符号の説明】
【0044】
100 モータ
1 ケース
2 ロータ
4 ステータ
5 永久磁石
6 ヨーク部
7 ティース部
8 スロット
9 コイル
10 冷却水路
20 ライナー部材
23 ライナー内面
25 水路部
27 コイル保護部
27a、27b、27c 部材
28 コイル収容部
41 ステータコア
72、73 壁面
120 ライナー部材ユニット