(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148602
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20220929BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20220929BHJP
F28D 1/053 20060101ALI20220929BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20220929BHJP
F28F 17/00 20060101ALI20220929BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F28F1/32 Y
F28F9/013 E
F28D1/053 A
F28F1/02 A
F28F17/00 501A
F25B39/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050347
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 亜由美
(72)【発明者】
【氏名】畠田 崇史
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA22
3L103BB42
3L103CC17
3L103CC18
3L103CC23
3L103DD70
(57)【要約】
【課題】凝縮水や融解水などの排水性を高めて滞留を抑制するとともに、フィンピッチの設計自由度を高めることが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器は、第1方向に配列されるとともに、第1方向と交差する第2方向に延びる複数の扁平管と、第2方向に所定の間隔をあけて配列されるとともに、第1方向に延びる複数のフィンとを備える。フィンは、複数のスリットと、複数の開口部と、複数の切片とを有する。複数のスリットは、第1方向に沿った辺部の入口から第1方向および第2方向と交差する第3方向へ延びて扁平管が挿入される。複数の開口部は、第1方向に隣り合うスリットで挟まれた面域に位置し、フィンを第2方向に貫通する。複数の切片は、開口部の辺縁から第2方向の同一側へ第2方向と平行に延びる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に配列されるとともに、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の扁平管と、
前記第2方向に所定の間隔をあけて配列されるとともに、前記第1方向に延びる複数のフィンと、を備え、
前記フィンは、
前記第1方向に沿った辺部の入口から前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向へ延びて前記扁平管が挿入される複数のスリットと、
前記第1方向に隣り合う前記スリットで挟まれた面域に位置し、前記フィンを前記第2方向に貫通する複数の開口部と、
前記開口部の辺縁から前記第2方向の同一側へ前記第2方向と平行に延びる複数の切片と、を有する
熱交換器。
【請求項2】
前記開口部は、前記スリットを規定する辺縁と隣接して配置される
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第2方向における前記切片の長さは、前記間隔以下である
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第3方向における前記開口部の長さは、前記第3方向における前記扁平管の長さの三分の一以下である
請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1方向は、鉛直方向であり、
前記開口部と前記切片は、前記鉛直方向において前記スリットを挟んで上下両側にそれぞれ少なくとも一つずつ設けられ、
前記鉛直方向の上側に配置された前記開口部と前記切片は、前記第3方向における前記スリットの長さの中間近傍に配置され、
前記鉛直方向の下側に配置された前記開口部と前記切片は、前記第3方向における前記スリットの閉塞端近傍に配置される
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
複数の前記フィンは、前記第2方向において前記切片とは反対側へ前記第2方向と平行に、前記スリットを規定する辺縁から起立するカラーを有する
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パラレルフロー型の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、空気調和機に用いられるパラレルフロー型の熱交換器は、互いに間隔を存して起立された一対のヘッダと、ヘッダの間に水平に架け渡された複数の扁平管と、複数の扁平管が架け渡された方向に所定ピッチで並んだ放熱用のフィンと、を主要な要素として備えている。扁平管は、ヘッダの高さ方向に互いに間隔を存して配列されている。フィンは、ヘッダの高さ方向に配列された扁平管に対応して形成された複数のスリットに扁平管がそれぞれ挿入され、隣り合う扁平管の間を熱的に接続している。これらの扁平管とフィンは、例えばろう付けによって互いに接合されている。
【0003】
この種の熱交換器は、蒸発器あるいは凝縮器として機能し、扁平管を流れる冷媒と外気との間で熱交換を行う。熱交換時、例えば上下に隣り合う扁平管と左右に隣り合うフィンとで囲まれた空間に凝縮水や融解水などが滞留する場合がある。この場合、これらの滞留水によって前記空間における気流の通過が阻害され、熱交換器を通過する気流の抵抗(通風抵抗)が低下し易くなる。また、ろう付け時に扁平管やフィンが熱膨張した場合、その程度によっては、隣り合うフィンの間隔(フィンピッチ)にばらつきが生じるおそれがある。このようなフィンピッチのばらつきを抑制することに加えて、例えば扁平管の高さ(厚み)などにフィンピッチを依存させることなく、フィンピッチの設計自由度を高めることも求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これを踏まえてなされたものであり、その目的は、凝縮水や融解水などの排水性を高めて滞留を抑制するとともに、フィンピッチの設計自由度を高めることが可能な熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、熱交換器は、第1方向に配列されるとともに、前記第1方向と交差する第2方向に延びる複数の扁平管と、前記第2方向に所定の間隔をあけて配列されるとともに、前記第1方向に延びる複数のフィンとを備える。前記フィンは、複数のスリットと、複数の開口部と、複数の切片とを有する。複数の前記スリットは、前記第1方向に沿った辺部の入口から前記第1方向および前記第2方向にと交差する第3方向へ延びて前記扁平管が挿入される。複数の前記開口部は、前記第1方向に隣り合う前記スリットで挟まれた面域に位置し、前記フィンを前記第2方向に貫通する。複数の前記切片は、前記開口部の辺縁から前記第2方向の同一側へ前記第2方向と平行に延びる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る冷凍サイクル装置の概略的な構成を示す回路図である。
【
図2】実施形態に係る熱交換器の概略的な構成を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る熱交換器において、複数の扁平管と複数のフィンとを組み付けた状態を概略的に示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る熱交換器において、
図2におけるA4-A4線に沿って
図3の扁平管とフィンとの組み付け状態を概略的に示す断面図である。
【
図5】実施形態に係る熱交換器において、フィンを第2方向の一方側(第1面部側)から概略的に示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係る熱交換器において、フィンを第2方向の他方側(第2面部側)から概略的に示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係る熱交換器において、フィンを第2方向の一方側(第1面部側)から概略的に示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る熱交換器において、フィンを第1方向の一方側から概略的に示す平面図である。
【
図9】実施形態に係る熱交換器において、フィンピッチに着目した切片とカラーとの関係を模式的に示す図である。
【
図10】実施形態に係る熱交換器における排水態様を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について、
図1から
図10を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の概略的な構成を示す回路図である。冷凍サイクル装置1は、例えば冷房運転および暖房運転のいずれか一方もしくは双方の運転が可能な空気調和機であり、主たる要素として圧縮機2と、四方弁3と、室外熱交換器4と、膨張弁5と、室内熱交換器6と、これらの要素を接続する冷媒流路7とを備えている。
【0009】
圧縮機2は、例えば圧縮機本体2aと、アキュムレータ2bとを備えている。圧縮機本体2aは、アキュムレータ2bから供給されるガス冷媒を圧縮して高温高圧のガス冷媒を冷媒流路7に吐出する。アキュムレータ2bは、冷媒流路7を介して供給される冷媒を気液分離し、ガス冷媒を圧縮機本体2aに供給する。
【0010】
四方弁3は、冷媒流路7における冷媒の流れを変更することで、冷房運転や暖房運転などの運転モードを切り換える。
図1に示す例では、実線矢印が冷房運転時の冷媒の流れを示し、破線矢印が暖房運転時の冷媒の流れを示す。
【0011】
例えば、冷房運転時には、圧縮機2、四方弁3、室外熱交換器4、膨張弁5、および室内熱交換器6の順に冷媒が流れる。この場合、室外熱交換器4が凝縮器として機能し、室内熱交換器6が蒸発器として機能することで、空調対象空間が冷房される。
【0012】
一方、暖房運転時には、圧縮機2、四方弁3、室内熱交換器6、膨張弁5、および室外熱交換器4の順に冷媒が流れる。この場合、室内熱交換器6が凝縮器として機能し、室外熱交換器4が蒸発器として機能することで、空調対象空間が暖房される。
【0013】
図2は、本実施形態に係る熱交換器100の概略的な構成を示す平面図である。熱交換器100は、
図1に示す冷凍サイクル装置1の室外熱交換器4や室内熱交換器6として適用可能である。なお、熱交換器100は、冷凍サイクル装置1とは異なる種類の冷凍サイクル装置、あるいは冷凍サイクル装置以外の各種装置にも適用可能である。
【0014】
以下の説明においては、
図2から
図10に示すように第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3をそれぞれ定義する。これら方向D1,D2,D3は、例えば互いに直交する方向である。本実施形態では一例として、第1方向D1を上下方向、第2方向D2を左右方向、第3方向D3を前後方向とする。この場合、第1方向D1は鉛直方向(重力方向)であり、第2方向D2および第3方向D3で規定される平面が水平面である。また、第3方向D3は、後述する熱交換器100における空気の通過方向(送風方向)である。
【0015】
熱交換器100は、主たる要素として、第1ヘッダ10、第2ヘッダ20、複数の扁平管30、複数のフィン40を備えている。
第1ヘッダ10および第2ヘッダ20は、いずれも真っ直ぐな管状の要素であって、第2方向D2に所定の間隔をあけて配置され、第1方向(鉛直方向)D1と平行に起立している。第1方向D1における第1ヘッダ10の両端部は、第1エンドキャップ11,12により閉塞されている。第1ヘッダ10は、冷媒流路7と接続するための第1継手13を、第1方向D1の第1エンドキャップ11寄りに有している。同様に、第1方向D1における第2ヘッダ20の両端部は、第2エンドキャップ21,22により閉塞されている。第2ヘッダ20は、冷媒流路7と接続するための第2継手23を、第1方向D1の第2エンドキャップ22寄りに有している。
【0016】
図3は、複数の扁平管30と複数のフィン40とを組み付けた状態を概略的に示す斜視図である。
図2および
図3に示すように、複数の扁平管30は、第1方向D1に所定間隔をあけて配列されるとともに、第2方向D2に延びる管状の要素である。
図2に示す例において、これらの扁平管30は、第1ヘッダ10と第2ヘッダ20との間を結ぶように、第1方向D1に一定の間隔を存して第2方向D2と平行に架け渡されている。すなわち、これらの扁平管30は、第1ヘッダ10および第2ヘッダ20を第1方向D1に沿って流れる冷媒を、これらヘッダ10,20の間で第2方向D2に分岐させてそれぞれ流す分流管である。
【0017】
扁平管30は、第1方向D1に対して押し潰され、第1方向D1の長さ(寸法)に比べて第2方向D2および第3方向D3の長さ(寸法)がそれぞれ大きな扁平の形態をなしている。このような扁平形態において、扁平管30は、水平面と平行な第1扁平面31および第2扁平面32を有している。第1扁平面31は、第1方向D1の一方側(上下方向の上側)に臨んだ面である。第2扁平面32は、第1方向D1の他方側(上下方向の下側)に臨んだ面である。
【0018】
また、第3方向D3における扁平管30の端部33,34は、第2方向D2からみて凸状に湾曲した形態をなしている。扁平管30において、第1方向D1の長さ(寸法)は高さ(厚み)であり、第2方向D2方向の長さ(寸法)は幅であり、第3方向D3の長さ(寸法)は奥行である。扁平管30の内部は、複数の流路(内部流路)35が第3方向(奥行方向)D3に並んで区画されている。これら複数の内部流路35は、第2方向D2に沿ってそれぞれ延びている。
【0019】
第2方向D2において、各扁平管30の一端は第1ヘッダ10に連結されており、第1ヘッダ10の配管内で各内部流路35が開口している。これらの開口は、第1方向D1に所定間隔をあけて並んでおり、互いに同一向きに臨んでいる。また、各扁平管30の他端は第2ヘッダ20に連結されており、第2ヘッダ20の配管内で各内部流路35が開口している。これらの開口は、第1方向D1に所定間隔をあけて並んでおり、互いに同一向き(各扁平管30の開口とは逆向き)に臨んでいる。
【0020】
例えば第1継手13を通じて熱交換器100に冷媒が導かれた場合、該冷媒は第1ヘッダ10から各扁平管30に分流され、第2ヘッダ20で合流して第2継手23を通じて熱交換器100から排出される。これに対し、例えば第2継手23を通じて熱交換器100に冷媒が導かれた場合、該冷媒は第2ヘッダ20から各扁平管30に分流され、第1ヘッダ10で合流して第1継手13を通じて熱交換器100から排出される。
【0021】
図4は、
図2におけるA4-A4線に沿って
図3に示す扁平管30とフィン40との組み付け状態を概略的に示す断面図である。
図2から
図4に示すように、複数のフィン40は、第2方向D2に所定の間隔(以下、フィンピッチという)をあけて配列されるとともに、第1方向D1に延びる板状の要素である。フィン40は、第1辺部41、第2辺部42、第3辺部43、および第4辺部44により規定される板状体である。
【0022】
第1辺部41および第2辺部42は、第1方向D1と平行に延びる辺部である。
図2から
図4に示す例においては、熱交換器100における空気の通過方向(送風方向)の上流側に第1辺部41が配置され、下流側に第2辺部42が配置される。送風方向の上流側は、第3方向D3の前側(手前側)であり、下流側は第3方向D3の後ろ側(奥側)である。
【0023】
第3辺部43および第4辺部44は、第3方向D3と平行に延びる辺部であり、第1辺部41および第2辺部42に対する短辺部である。
図2から
図4に示す例においては、熱交換器100における第1方向D1の一方側に第3辺部43が配置され、他方側に第3辺部43が配置される。第1方向D1の一方側は上下方向の上側であり、他方側は上下方向の下側である。
【0024】
これらの四辺部41~44により、第1方向D1に長尺で第2方向D2に背中合わせとなる一対の面部45,46が形成されている。
図2から
図4に示す例においては、熱交換器100における第2方向D2の一方側に第1面部45が配置され、他方側に第2面部46が配置される。本実施形態では一例として、第2方向D2の一方側は左右方向の右側であり、第1面部45はフィン40の右面部に相当する。これに対し、第2方向D2の他方側は左右方向の左側であり、第2面部46はフィン40の左面部に相当する。
【0025】
図5から
図8には、フィン40の構成を概略的に示す。
図5は、フィン40を第1面部45側から概略的に示す斜視図である。
図6は、フィン40を第2面部46側から概略的に示す斜視図である。
図7は、フィン40を第1面部45側から概略的に示す平面図である。
図8は、フィン40を第1方向D1の一方側(上下方向の上側)から概略的に示す平面図である。
【0026】
図5から
図8に示すように、フィン40は、複数のスリット50を有している。これらのスリット50は、扁平管30が挿入されて、扁平管30とフィン40とを一体的に組み付けるための空間領域であり、第1方向D1において複数の扁平管30の配列間隔と同一間隔で並んでいる。なお、スリット50に扁平管30が挿入されてフィン40と一体的に組み付けられた状態は、
図3および
図4に示す状態である。スリット50は、第1方向D1に沿った辺部のうち、第1辺部41(換言すれば熱交換器100における送風方向の上流側)の入口から第2辺部42の手前まで第3方向D3へ延びるとともに、第1面部45と第2面部46の間を第2方向D2へ貫いている。スリット50の入口は、第1辺部41に開口して扁平管30が挿入される挿入口である。
【0027】
スリット50は、第1縁部51、第2縁部52、底部53を有している。
第1縁部51および第2縁部52は、スリット50に扁平管30が挿入される際に扁平管30を底部53まで導くガイド部であり、挿入後に扁平管30を支持する支持部である。これら縁部51,52は、扁平管30の第1方向D1の寸法である高さ(厚み)とほぼ同等の間隔をあけて対向して第3方向D3と平行に直線状に延びている。
図5から
図8に示す例では、第1縁部51がスリット50の上縁部であり、第2縁部52がスリット50の下縁部である。
【0028】
底部53は、第1縁部51および第2縁部52から連続し、スリット50に挿入された扁平管30が突き当たるどんつき部、つまり閉塞端である。底部53は、第2方向D2からみて、扁平管30の端部34に沿って凹状に湾曲した形態をなしている。これにより、スリット50に挿入された扁平管30の端部34と底部53とを密着させることが可能となる。扁平管30は、端部34が底部53と密着した状態で、スリット50に対して位置決めされる。
【0029】
本実施形態では一例として、
図4に示すように、スリット50の奥行(第3方向D3の長さ)は、扁平管30の奥行よりも小さい。したがって、扁平管30の端部33は、スリット50から第3方向D3の手前側に飛び出した状態とされている。ただし、スリット50の奥行寸法は、扁平管30の奥行寸法と同程度であってもよいし、大きくてもよい。
【0030】
扁平管30とフィン40とは、扁平管30がスリット50に挿入された状態で、例えばろう付けなどにより接合され、熱的に接続されている。これにより、扁平管30とフィン40とが一体的に組み付けられ、両者の間で伝熱作用が生じる。
【0031】
また、
図5から
図8に示すように、フィン40は、第1方向D1と平行に連続する段差部47を第2辺部42の近傍に有している。第1面部45は、段差部47を境にして第1辺部41側の面域が隆起し、第2辺部42側の面域が窪んだ凹凸面状をなしている。第2面部46は、段差部47を境にして第1辺部41側の面域が窪み、第2辺部42側の面域が隆起した凹凸面状をなしている。段差部47を有することで、フィン40は、撓み難くなり変形が抑制される。
【0032】
フィン40は、複数のスリット50に挿入された各扁平管30の姿勢をそれぞれ支持して安定させる複数のカラー48を有している。カラー48は、スリット50の第1縁部51、第2縁部52、および底部53とそれぞれ連続し、第1面部45から第2方向D2と平行に起立している。カラー48の第1面部45に対する起立角度(
図9に示す角度α)は、例えば90度である。すなわち、カラー48は、スリット50を規定する辺縁に沿ってフランジ状に設けられている。本実施形態では、
図5から
図8に示すように、各フィン40において、複数のカラー48はいずれも、スリット50を規定する辺縁(端的には第1縁部51、第2縁部52、および底部53)から第2方向D2の同一側(第1面部45側)へ起立している。
【0033】
これにより、各カラー48は、スリット50に挿入された扁平管30の第1扁平面31、第2扁平面32、および端部34と面接触する。したがって、カラー48は、第2方向D2における長さ(起立寸法)によってフィンピッチを管理する。カラー48の第2方向D2における長さは、第1面部45と接続する基端から起立端までの寸法(
図9に示す寸法L48)である。また、カラー48は、例えば扁平管30とフィン40とをろう付けする場合のろう付け代としても機能する。
【0034】
加えて、フィン40は、複数の開口部60および複数の切片70をそれぞれ有している。
開口部60は、フィン40を第2方向D2に貫通する。これにより、フィン40は、第1面部45と第2面部46とが開口部60を介して繋がった形態とされている。換言すれば、フィン40を挟んで第1面部45側の空間と第2面部46側の空間とが開口部60を通じて連通した状態となる。
【0035】
開口部60は、第1方向D1に隣り合うスリット50で挟まれた面域に位置している。本実施形態では、
図5から
図8に示すように、開口部60は、第1方向D1、つまり鉛直方向においてスリット50を挟んで上下両側にそれぞれ一つずつ配置されている。また、開口部60は、スリット50、具体的にはスリット50規定する辺縁と隣接して配置されている。ただし、開口部60の数は、スリット50を挟んで第1方向D1における上下両側にそれぞれ二つ以上ずつ配置されていてもよい。また、スリット50を挟んだ第1方向D1における上下で開口部60の数が異なっていてもよい。このように開口部60の数は限定されず、フィン40が最低限持つべき放熱性能および強度と後述する排水性とを最大限両立可能な数まで増やし得る。
【0036】
図5から
図8に示す例では、スリット50を挟んで第1方向D1における上側に配置された開口部60(以下、第1開口部61という)は、第3方向D3におけるスリット50の長さ(奥行)の中間近傍に配置されている。これに対し、スリット50を挟んで第1方向D1における下側に配置された開口部60(以下、第2開口部62という)は、第3方向D3におけるスリット50の閉塞端である底部53の近傍に配置されている。
【0037】
第3方向D3において、開口部60の長さ(奥行)は、扁平管30の長さ(奥行)の三分の一以下である。ただし、開口部60の長さは、フィン40が最低限持つべき放熱性能および強度と後述する排水性とを最大限両立可能な長さであれば、扁平管30の長さ(奥行)の三分の一を超えてもよい。
【0038】
切片70は、開口部60に対応して設けられている。例えば、開口部60は、第1方向D1と平行な一対の切込み、および当該切込みを繋ぐ第3方向D3と平行な切込みをそれぞれフィン40に形成し、これら切込みで囲まれた部位をカラー48が起立している逆方向(逆側、すなわち第1面部45側)に屈曲させる(倒す)ことで形成される。換言すれば、カラー48は、スリット50を規定する辺縁(端的には第1縁部51、第2縁部52、および底部53)から、第2方向D2において切片70とは反対側へ起立している。これにより、これら切込みで囲まれて屈曲された(倒れた)部位が切片70となる。複数の切片70はいずれも、開口部60を規定する辺縁から第2方向D2の同一側(第2面部46側)で、かつカラー48が起立している方向と逆側へ第2方向D2と平行に延びている。本実施形態では、切片70は、フィン40の開口部60に対応して複数の直線の切込みで囲まれた四角い部位(矩形部位)を屈曲させ、倒された四角い部位で形成されている。
【0039】
図5から
図8に示す例では、スリット50の第1縁部51と連続する第1方向D1と平行な一対の切込み、および当該切込みの上端を繋ぐ第3方向D3と平行な切込みをそれぞれフィン40に形成し、これら切込みで囲まれた部位を第2面部46側に倒すことで、第1開口部61が形成されている。これにより、これら切込みで囲まれて第2面部46側へ第2方向D2と平行に倒れた部位が上側の切片70(以下、第1切片71という)とされている。したがって、第1切片71は、第1開口部61と対応して、第3方向D3におけるスリット50の長さ(奥行)の中間近傍に配置されている。
【0040】
これに対し、スリット50の第2縁部52と連続する第1方向D1と平行な一対の切込み、および当該切込みの下端を繋ぐ第3方向D3と平行な切込みをそれぞれフィン40に形成し、これら切込みで囲まれた部位を第2面部46側に倒すことで、第2開口部62が形成されている。これにより、これら切込みで囲まれて第2面部46側へ第2方向D2と平行に倒れた部位が下側の切片70(以下、第2切片72という)とされている。したがって、第2切片72は、第2開口部62と対応して、第3方向D3におけるスリット50の閉塞端である底部53の近傍に配置されている。
【0041】
各フィン40において、複数の切片70はいずれも、開口部60に対して第2方向D2の同一側(第2面部46側)へ第2方向D2と平行に屈曲して(倒れて)いる。これにより、各切片70は、スリット50に挿入された扁平管30の第1扁平面31もしくは第2扁平面32と面接触する。
図5から
図8に示す例では、第1切片71が第1扁平面31と面接触し、第2切片72が第2扁平面32と面接触する。第1切片71および第2切片72の第2面部46に対する屈曲角度(
図9に示す角度β)は、例えば90度である。ただし、第1切片71が第1扁平面31と、第2切片72が第2扁平面32と、それぞれ面接触可能であれば、かかる屈曲角度は90度に限定されない。
【0042】
図9には、フィンピッチに着目した切片70とカラー48との関係を模式的に示す。
図9に示すように、切片70(第1切片71および第2切片72)は、開口部60に対して第2面部46側、つまり第1面部45側へ起立するカラー48とは反対側へ第2方向D2と平行に延びている。このため、第1切片71および第2切片72は、カラー48と面一に連続した形態となっている。したがって、第2方向D2において隣り合うフィン40は、一方のカラー48と他方の切片70とが第2方向D2に当接可能となる。すなわち、第1切片71および第2切片72は、第2方向D2における長さ(
図9に示す寸法L70)によってフィンピッチを管理する。第1切片71および第2切片72の第2方向D2における長さ(L70)は、第2面部46と接続する基端から延出端までの寸法である。その結果、第2方向D2におけるカラー48の長さ(
図9に示す寸法L48)と第2方向D2における切片70の長さとの合計寸法(L48+L70)によって、フィンピッチ(
図9に示す寸法FP)を管理できる。また、第1切片71および第2切片72は、例えば扁平管30とフィン40とをろう付けする場合、カラー48とともにろう付け代として機能する。
【0043】
本実施形態において、第2方向D2における切片70(第1切片71および第2切片72)の長さ(L70)は、フィンピッチ(FP)以下である(L70≦FP)。また、第2方向D2における第1切片71および第2切片72の長さ(L70)は、第2方向D2におけるカラー48の長さ(L48)よりも大寸である(L70>L48)。
【0044】
このように本実施形態によれば、フィン40が開口部60を有することで、熱交換器100での熱交換時に生じた凝縮水や融解水を、開口部60の縁の表面張力で当該縁を伝わせて落下させることができる。これにより、凝縮水等をスムーズに排水できる。
図10には、本実施形態に係るフィン40のように第1開口部61および第2開口部62を有する場合の排水態様を模式的に示す。
【0045】
図10に示すように、熱交換器100での熱交換時に生じた凝縮水等が矢印A1で示すように第1開口部61に落下すると、落下した凝縮水等は矢印A2で示すように第1開口部61の縁63,64を伝って扁平管30の第1扁平面31の上に誘導される。第1扁平面31の上に誘導された凝縮水等は、矢印A3で示すように、熱交換器100を通過する空気の流れ(送風流)によって第1扁平面31を端部34側へ流れ、端部34を伝って、さらに第2開口部62の縁65を伝って流れる。そして、縁65の表面張力を超える重量の凝縮水等が滞留すると、重力によって落下する。これにより、凝縮水等をスムーズに排水させることができる。
【0046】
本実施形態では、
図10に示す例のように、スリット50に扁平管30が挿入された状態で、端部34と第2開口部62の縁65が第1方向D1において並んだ状態となっている。具体的には、第2方向D2からみて凸状に湾曲した端部34の湾曲線が第2開口部62の縁65を第1方向D1に延長した仮想線(
図10に示す二点鎖線L)と交差する位置に、端部34と縁65とが配置されている。このような配置とすることで、
図10に矢印A3で示すように凝縮水等を誘導し易くなるとともに落下させ易くなる。
【0047】
したがって、凝縮水等が発生した場合であっても、熱交換器100において、例えば第1方向D1に隣り合う扁平管30と第2方向D2に隣り合うフィン40とで囲まれた空間、あるいは該空間を区画する第1扁平面31および第2扁平面32に凝縮水等を滞留させずに、その排水を促進させることができる。これにより、凝縮水等の滞留によって送風流が阻害されることを抑止し、送風流の抵抗(通風抵抗)を低減できる。さらに、上記空間は、第1開口部61および第2開口部62を介して、第2方向D2の両隣の空間と連通している。このため、第1開口部61および第2開口部62を通じて上記空間から第2方向D2の両隣の空間へ凝縮水等を流出させることができる。これにより、かかる空間が凝縮水等で閉塞されることを抑止でき、送風流の抵抗(通風抵抗)をさらに低減できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、フィン40が切片70を有することで、切片70によってフィンピッチを管理できる。すなわち、カラー48に加えて切片70によってもフィンピッチを管理可能となる。このため、フィンピッチの設計自由度を高めることができる。例えば、扁平管30とフィン40とを組み付ける際の衝撃やろう付け時のこれらの熱膨張などによるフィンピッチずれを抑制し易くなる。また、切片70およびカラー48を設けるという簡易な構造であっても、フィンピッチを均一に管理できる。
【0049】
フィンピッチの管理に加えて、切片70は、扁平管30に対してフィン40をろう付けする際のろう付け代としても機能する。すなわち、カラー48に加えて切片70もろう付け代として用いることができる。したがって、ろう付け代を切片70の分だけ拡大できる。このため、扁平管30とフィン40との接合面積をカラー48および切片70の分だけ拡大して確保でき、接合強度を高めることができる。かかる観点では、第2方向D2における切片70の長さをカラー48の長さよりも大寸とすれば、ろう付け代を拡大させ易くなる。
【0050】
以上、本発明の実施形態を説明したが、かかる実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…冷凍サイクル装置、10…第1ヘッダ、11,12…第1エンドキャップ、13…第1継手、20…第2ヘッダ、21,22…第2エンドキャップ、23…第2継手、30…扁平管、31…第1扁平面、32…第2扁平面、33,34…端部、35…内部流路、40…フィン、41…第1辺部、42…第2辺部、43…第3辺部、44…第4辺部、45…第1面部、46…第2面部、47…段差部、48…カラー、50…スリット、51…第1縁部、52…第2縁部、53…底部、60…開口部、61…第1開口部、62…第2開口部、63,64,65…縁、70…切片、71…第1切片、72…第2切片、100…熱交換器、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、α…カラーの起立角度、β…切片の屈曲角度。