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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014861
(43)【公開日】2022-01-20
(54)【発明の名称】管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/02 20060101AFI20220113BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20220113BHJP
   F16L 19/025 20060101ALI20220113BHJP
【FI】
F16L19/02
F16L21/00 D
F16L19/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020218497
(22)【出願日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2020117006
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391006636
【氏名又は名称】ハードロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 克彦
【テーマコード(参考)】
3H014
【Fターム(参考)】
3H014CA02
(57)【要約】
【課題】 緩み止め機能を有する薄肉管用の管継手を提供する。
【解決手段】 薄肉管Pが挿入される円筒状のパイプ接続部2を有する継手本体3と、薄肉管Pを継手本体3に固定するようにパイプ接続部2に螺着されるナット4と、パイプ接続部2とナット4との間に装着される偏心リング6とを有する。
パイプ接続部2の外周には、雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分2cが設けられる。ナット4の内周には、薄肉管Pを継手本体3に固定したときにねじ無し外周面部分2cの径方向外方に位置するねじ無し内周面部分4cが設けられる。
偏心リング6の外周面及び内周面のうちいずれか一方はねじ無し外周面部分2c又はねじ無し内周面部分4cに嵌合する嵌合面として構成され、他方はねじ無し外周面部分2c又はねじ無し内周面部分4cに周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入される円筒状のパイプ接続部を有する継手本体と、前記パイプを前記継手本体に固定するように前記パイプ接続部に螺着されるパイプ固定用ナットとを備え、前記ナットの内周には雌ねじが設けられ、前記パイプ接続部の外周には前記雌ねじに螺合する雄ねじが設けられた管継手において、
前記パイプ接続部の外周には、前記雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分が設けられ、
前記ナットの内周には、前記パイプを前記継手本体に固定したときに前記ねじ無し外周面部分の径方向外方に位置するねじ無し内周面部分が設けられ、
前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との間に装着される偏心リングをさらに備え、
前記偏心リングの外周面及び内周面のうちいずれか一方は前記ねじ無し外周面部分又は前記ねじ無し内周面部分に嵌合する嵌合面として構成され、他方は前記ねじ無し外周面部分又は前記ねじ無し内周面部分に周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
請求項1に記載の管継手において、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記パイプ接続部の開口端側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記雌ねじよりも前記ナットの奥側に設けられ、前記偏心リングの外周面が、前記ナットの前記ねじ無し内周面部分に嵌合している、管継手。
【請求項3】
請求項1に記載の管継手において、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記継手本体側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記ナットの開口縁部に設けられ、前記偏心リングの内周面が、前記ねじ無し外周面部分に嵌合している、管継手。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の管継手において、前記偏心リングはポリアミドイミド樹脂製である、管継手。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の管継手において、前記偏心リングは、周方向一部にスリットを有するC形リングである、管継手。
【請求項6】
請求項5に記載の管継手において、前記偏心リングの内周面の軸心は、前記偏心リングの外周面の軸心に対して、前記スリット側に偏心している、管継手。
【請求項7】
請求項6に記載の管継手において、前記嵌合面と、前記偏心リングの軸方向一端面との間に、テーパー状の面取り部が設けられている、管継手。
【請求項8】
請求項7に記載の管継手において、前記面取り部の面取り量が前記スリットから周方向に離れるにしたがって大きくなるよう、前記面取り部の軸心が前記嵌合面の軸心に対して偏心している、管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行い得る管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
薄肉ステンレス鋼管用の管継手として、例えば、下記の特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
この従来の管継手は、継手本体と、継手本体に設けられた複数のパイプ接続部と、各パイプ接続部に装着されるパイプ固定用ナットとを備えている。パイプ接続部はパイプを挿入可能な内径を有する円筒状であって、パイプ接続部の外周にはパイプ固定用ナットが螺着される雄ねじが形成されている。
【0004】
パイプ固定用ナットの内周には前記雄ねじに係合する雌ねじが設けられている。継手本体から離れたナットの端部には、雌ねじよりも径方向内方に突出する内向きフランジが設けられている。パイプの管端部近傍には拡径部が設けられており、ナットの内向きフランジの内端には、前記拡径部の外周に軸方向に係合するクランプ面が形成されている。
【0005】
したがって、薄肉管などのパイプの端部に拡径加工を行い、拡径加工が施されたパイプ端部を継手本体のパイプ接続部に挿入し、ナットをパイプ接続部に締結することによって、パイプを継手本体に固定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-142293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の管継手は種々の用途に使用し得るが、用途によっては種々の振動に晒される場合があるため、何らかの緩み止め対策を講じることが求められている。
【0008】
本発明は、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行い得る管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による管継手は、パイプが挿入される円筒状のパイプ接続部を有する継手本体と、前記パイプを前記継手本体に固定するように前記パイプ接続部に螺着されるパイプ固定用ナットとを備える。前記ナットの内周には雌ねじが設けられ、前記パイプ接続部の外周には前記雌ねじに螺合する雄ねじが設けられている。
【0010】
前記パイプ接続部の外周には、前記雄ねじが設けられていないねじ無し外周面部分が設けられていてよい。
【0011】
前記ナットの内周には、前記パイプを前記継手本体に固定したときに前記ねじ無し外周面部分の径方向外方に位置するねじ無し内周面部分が設けられていてよい。
【0012】
前記管継手は、前記ねじ無し外周面部分と前記ねじ無し内周面部分との間に装着される偏心リングをさらに備えていてよい。
【0013】
前記偏心リングの外周面及び内周面のうちいずれか一方は前記ねじ無し外周面部分又は前記ねじ無し内周面部分に嵌合する嵌合面として構成され、他方は前記ねじ無し外周面部分又は前記ねじ無し内周面部分に周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されていてよい。
【0014】
かかる本発明の管継手によれば、偏心リングの外周面及び内周面のいずれか一方が、継手本体のパイプ接続部外周若しくはナット内周に嵌合することで安定的に保持され、偏心嵌合による緩み止め効果を安定的に発揮することができる。また、他方が、前記ねじ無し外周面部分又は前記ねじ無し内周面部分に周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されているため、互いに螺合するパイプ接続部とナットとが偏心リングを介して偏心嵌合した状態となり、いわゆるクサビ効果によって大きな緩み止め効果を発揮させることができる。
【0015】
上記本発明の管継手の好ましい態様において、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記パイプ接続部の開口端側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記雌ねじよりも前記ナットの奥側に設けられ、前記偏心リングの外周面が、前記ナットの前記ねじ無し内周面部分に嵌合している。これによれば、偏心リングを、ナット奥部のねじ無し内周面部分に予め嵌合させて固定しておくことにより、施工現場において偏心リングが脱落することを防止できる。
【0016】
上記本発明の管継手の別の一態様において、前記ねじ無し外周面部分は前記雄ねじよりも前記継手本体側に設けられ、前記ねじ無し内周面部分は前記ナットの開口縁部に設けられ、前記偏心リングの内周面が、前記ねじ無し外周面部分に嵌合している。これによれば、偏心リングを、パイプ接続部の基部近傍に嵌合装着しておくことができ、偏心リングに対するナット開口縁部の偏心嵌合状態を外部から比較的容易に確認することもできる。
【0017】
前記偏心リングは、適宜の金属や樹脂材からなるものであってよいが、ねじ無し内周面又はねじ無し外周面に対して偏心嵌合しつつ摺動することにより200℃を超える摩擦熱が発生する場合があるため、焼き付きのおそれが少なくかつ耐熱性に優れた材料により製作することが好ましい。例えば、ポリアミドイミド樹脂は、射出成形が可能な熱可塑性樹脂でありながら、耐熱温度は275℃前後にも達し、耐油性に優れ、高温下でも耐摩耗性や摺動特性が維持され、線膨張係数も小さいことから、偏心リングの材料として好適に用いることができる。
【0018】
前記偏心リングは、全周にわたって連続するO形リングであってもよいし、周方向一部にスリットを有するC形リングであってもよい。C形リングの場合、縮径変形乃至拡径変形が可能であるため、ねじ無し外周面部分又はねじ無し内周面部分への嵌合作業を容易に行うことができる。
【0019】
また、前記偏心リングの内周面の軸心は、前記偏心リングの外周面の軸心に対して、前記スリット側に偏心してよい。これによれば、スリットから周方向に離れるにしたがって偏心リングの肉厚が厚くなり、より強固且つ確実な偏心嵌合状態を生じさせることができる。
【0020】
好ましくは、前記嵌合面と、前記偏心リングの軸方向一端面との間に、テーパー状の面取り部を設けることができる。これによれば、ねじ無し外周面部分又はねじ無し内周面部分への偏心リングの嵌合作業を容易かつ迅速に行える。
【0021】
さらに、前記面取り部の面取り量が前記スリットから周方向に離れるにしたがって大きくなるよう、前記面取り部の軸心が前記嵌合面の軸心に対して偏心していてよい。これによれば、肉厚が比較的小さいスリット近傍における偏心リングの強度を低下させることなく面取り部を設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の管継手によれば、偏心リングを用いた簡単な構造でありながら、パイプ固定用ナットの緩み止めを効果的に行うことができる。したがって、継手本体やパイプ固定用ナットとしては既存のものを流用しつつ、必要に応じて継手本体のパイプ接続部の外周の一部やナットの内周の一部を切削加工し、パイプ接続部若しくはナットに偏心リングを装着するのみで、高い緩み止め効果を発揮させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施形態に係る管継手の断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る管継手の断面図である。
図3】ナット締め付け試験結果を示すグラフである。
図4】偏心リングの変形実施例を示す3面図である。
図5図4のA-A線断面図である。
図6図4のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る管継手1を示しており、図示左側は締結完了状態を示し、図示右側はナット4を締結する前の状態を示している。この管継手1は、一対の薄肉管として例示されるパイプPを接続するためのものであって、直線上に対向配置された2つのパイプ接続部2を有する継手本体3と、各パイプ接続部2にそれぞれ装着されるパイプ固定用ナット4とを備えている。
【0026】
パイプ接続部2は、パイプPの端部が挿入されて嵌合する内径を有する円筒状に構成され、パイプ接続部2の開口端部の内周にはパッキン5を保持する溝2aが周方向に延びている。
【0027】
パイプ接続部2の外周には、雄ねじ2bと、ねじ無し外周面部分2cとが設けられている。ねじ無し外周面部分2cは、円筒面により構成されている。本実施形態では、ねじ無し外周面部分2cは、雄ねじ2bよりもパイプ接続部2の開口端側に設けられている。ねじ無し外周面部分2cは、パイプPの端部が内嵌する部位の外周側に設けることもできるが、図示例ではパッキン保持溝2aの外周側に設けている。
【0028】
ナット4は、六角ナット等の適宜の外周面形状を有し、パイプ接続部2に外嵌するナット本体4aを有する。ナット本体4aの内周には、雄ねじ2bに螺合する雌ねじ4bと、パイプPを継手本体3に固定したときにねじ無し外周面部分2cの径方向外方に位置するねじ無し内周面部分4cとが設けられている。
【0029】
継手本体3から離れたナット本体4aの端部には、雌ねじ4bよりも径方向内方に突出する内向きフランジ4dが設けられている。このフランジ4dの内端開口径は、パイプPの径とほぼ等しい。
【0030】
パイプPの管端部近傍には拡径部Paが設けられており、ナット4の内向きフランジ4dの内端には、拡径部Paの外周に軸方向に係合するクランプ面4eが形成されている。
【0031】
ねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cの間には、締結完了状態でOリング状の偏心リング6が装着されている。本実施形態では、偏心リング6は、図1の右側に示すようにナット4の奥部のねじ無し内周面部分4cに嵌合固定しておくことができる。ねじ無し内周面部分4cは雌ねじ4bよりもナット4の奥側(継手本体3から見て軸方向外方)に設けられ、偏心リング6の外周面が、ナット4のねじ無し内周面部分4cに嵌合している。
【0032】
本実施形態では、偏心リング6の外周面はねじ無し内周面部分4cに嵌合する嵌合面として構成され、偏心リング6の内周面はねじ無し外周面部分2cに周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されている。すなわち、図1の左側に示すように、図示上側ではねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cとの間の隙間よりも偏心リング6の肉厚が僅かに大きく、これによりナット4を図示上方に押し上げる力が作用して、いわゆるクサビ作用によりナット4の緩み止め効果が発揮される。一方、図示下側では、ねじ無し外周面部分2cとねじ無し内周面部分4cとの間の隙間よりも偏心リング6の肉厚が小さく、偏心リング6の内周面とねじ無し外周面部分2cとの間に隙間が形成されている。
【0033】
図2は本発明の第2実施形態に係る管継手1’を示しており、上記第1実施形態の管継手1と同様の構成については同符号を付して詳細説明を省略し、異なる構成、作用効果について説明する。
【0034】
管継手1’では、偏心リング6が設けられる位置が管継手1とは異なる。すなわち、ねじ無し外周面部分2cは雄ねじ2bよりも継手本体3側(すなわち軸方向内方)に設けら
れ、ねじ無し内周面部分4cはナット本体4aの開口縁部(すなわち、継手本体3からみて軸方向内方側の端縁部)に設けられ、偏心リング6の内周面がねじ無し外周面部分2cに嵌合している。
【0035】
本第2実施形態では、偏心リング6は、図2の右側に示すように継手本体3のパイプ接続部2の基部外周のねじ無し外周面部分2cに嵌合固定しておくことができる。偏心リング6の内周面はねじ無し外周面部分2cに嵌合する嵌合面として構成され、偏心リング6の外周面はねじ無し内周面部分4cに周方向一部において半径方向に圧接する偏心面として構成されている。
【0036】
(ナット締め付け試験)
本発明の効果を検証するため、上記第1実施形態の管継手と、偏心リングを設けない従来の管継手につき、締結試験を実施した。その結果を図3に示す。
【0037】
「偏心リング1」は偏心リングとしてポリアミドイミド樹脂製のものを用いたものであり、「偏心リング2」は偏心リングとしてPLA樹脂製のものを用いたものである。なお、「偏心リング1」の供試体は、ナットの雌ねじを約1ピッチ分切削することによって、ねじ無し内周面部分の軸方向寸法並びに偏心リングの軸方向幅を「偏心リング2」の供試体よりも大きくした。
【0038】
図3の横軸は、雄ねじと雌ねじとの螺合開始からのナットの回転角であり、縦軸は各回転角において発生した軸力である。
【0039】
従来の管継手の場合、回転角700°近くまで殆ど締結トルクも発生せず、軸力も発生しないが、720°を超えて急激に締結トルク及び軸力が上昇した。したがって、僅かな回転量で大きな軸力を発生させており、僅かにナットが緩んだ場合でも軸力低下の影響が大きいと言える。
【0040】
「偏心リング2」の場合、従来の管継手よりも軸力の立ち上がりが改善され、ナットが回転角700°程度まで緩んだ場合でも40~50kN程度の軸力が残存することが確認された。
【0041】
「偏心リング1」の場合、回転角400°付近から締結トルク及び軸力が上昇していき、大きな緩み止め効果が発揮されることが確認された。
【0042】
(衝撃振動試験)
図3に示す3つの供試体について、NA0009・NAM1312-107に準じる衝撃振動試験を実施したところ、従来の管継手は30000サイクルの試験終了後に約3mmの位置ずれが確認され、戻しトルクも半減していることも確認された。具体的には、試験開始前のナット締め付けトルクは120N・mであったが、試験終了後の戻しトルクは60N・m程度となっていた。
【0043】
一方、「偏心リング1」及び「偏心リング2」のいずれの供試体においても、同様の試験終了後に位置ずれは確認されず、戻しトルクも減少していなかった。
【0044】
かかる結果より、本発明によれば、大きな緩み止め効果が発揮されることが確認された。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で適宜設計変更できる。例えば、継手本体は、少なくとも一つのパイプ接続部を備
えていればよく、3つ以上のパイプ接続部を備えていてもよい。複数のパイプ接続部の配置は、エルボ形状、T字形状、十字形状など、適宜の配置であってよい。また、パイプは薄肉管に限定されず、厚肉管や、可撓性ホースなどであってもよい。継手本体やナットの材質は、ステンレス等の金属が好ましいが、樹脂製であってもよい。
【0046】
偏心リングの材質も、要求される性能や用途に応じて適宜のものであってよく、鉄、アルミ、ステンレス、チタン合金などの金属製であってもよいし、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む適宜の樹脂製であってもよい。好適には、ポリアミドイミド樹脂製とすることができる。
【0047】
また、偏心リング6は、図4図6に示すようなC形リングであってよい。この偏心リング6は、図2に示す実施形態と同様、内周面がねじ無し外周面部分2cに嵌合する嵌合面となり、外周面がねじ無し内周面部分4cに周方向一部において半径方向に圧接する偏心面となる。
【0048】
偏心リング6は、周方向一部にスリット61が設けられ、これにより径方向に拡縮するよう弾性変形可能である。
【0049】
偏心リング6の内周面の軸心は、偏心リング6の外周面の軸心に対して、スリット61側に僅かに偏心している。これにより、スリット61近傍で偏心リング6の径方向の肉厚が最も小さく、スリット61に対して直径方向反対側で偏心リング6の径方向の肉厚が最も大きくなっている。
【0050】
嵌合面を構成する偏心リング6の内周面と、偏心リング6の軸方向一端面との間には、テーパー状の面取り部62が設けられている。この面取り部62は、偏心リング6をねじ無し外周面部分に嵌合する際に、案内面として機能する。なお、偏心リング6の外周面がねじ無し内周面部分に対する嵌合面となる場合には、偏心リングの外周面と偏心リングの軸方向一端面との間に上記面取り部を設けることができる。
【0051】
図示実施例では、面取り部62の面取り量がスリット61から周方向に離れるにしたがって大きくなるよう、面取り部62の軸心(テーパー軸心)が嵌合面の軸心に対して偏心している。これにより、最も肉厚の小さくなるスリット61近傍では面取り部が実質的に存在せず、肉厚の大きな部位に面取り部62を設けることができる。
【0052】
なお、偏心リング6の軸方向両端部のうち面取り部62を設けた端部がどちらかを容易に判別できるように、スリット61を形成するC形の端面に切り欠き部63を設けておくことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6