(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148629
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】超音波式流量測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20220929BHJP
【FI】
G01F1/66 101
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050378
(22)【出願日】2021-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】390026996
【氏名又は名称】東京計装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035DA08
2F035DA14
2F035DA19
2F035DA22
2F035DA23
(57)【要約】
【課題】流量の測定及び追加した電子デバイスの制御を、共通の信号電線を利用して行うことが可能な超音波式流量測定装置を提供する。
【解決手段】圧電素子132には、引出電線142が接続されており、引出電線142の分岐点170から並列に分岐した分岐引出電線に、保護回路部190を介して電子デバイス部160が接続されている。測定部300はタイミングチャートに従って接続を時間的に切り換えるマルチプレクサ310と、圧電素子131、132を励振させる駆動信号を生成して出力する超音波信号駆動回路320と、圧電素子131、132からの測定信号を入力することで管路110の流量を算出する超音波信号受信回路330と、電子デバイス部160と情報信号であるデジタル信号の送受信を行うデバイス用通信回路340とから構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる管路を挟んで、対向して配置した一対の超音波送受信部を備える管路部と、各超音波送受信部のプラス極、マイナス極に接続された引出電線に接続された測定部とから成り、前記流体の流量を計測する超音波式流量測定装置であって、
前記一対の超音波送受信部の一方又は両方の前記引出電線の分岐点から並列に分岐した分岐引出電線には、保護回路部を介して電子デバイス部が接続されており、
前記測定部は前記引出電線を介して、前記超音波送受信部に対する信号通信処理と、前記引出電線及び前記分岐引出電線を介して、前記電子デバイス部に対する信号通信処理とを、時間的に切り換えて行うことを特徴とする超音波式流量測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、接続を時間的に切り換えるマルチプレクサと、前記一対の超音波送受信部を励振させる駆動信号を生成して出力する超音波信号駆動回路と、前記一対の超音波送受信部からの測定信号を入力することで前記管路の流量を算出する超音波信号受信回路と、前記電子デバイス部と情報信号であるデジタル信号の送受信を行うデバイス用通信回路とから成り、前記各回路は、前記マルチプレクサに対して並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波式流量測定装置。
【請求項3】
前記保護回路部は、電流制限抵抗及びコンデンサから成るローパスフィルタと、前記電子デバイス部の電圧を定格電圧の範囲内に抑える電圧抑制素子とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波式流量測定装置。
【請求項4】
前記電圧抑制素子は1個又は2個のダイオードから成り、前記分岐引出電線に前記電流制限抵抗が直列に接続されており、該電流制限抵抗の接続以降の前記分岐引出電線間に、前記コンデンサ及び前記ダイオードが並列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の超音波式流量測定装置。
【請求項5】
前記ダイオードが1個の場合は、該ダイオードはショットキーバリアダイオードであることを特徴とする請求項4に記載の超音波式流量測定装置。
【請求項6】
前記ダイオードが第1、第2のダイオードから成る場合は、前記第1のダイオードはショットキーバリアダイオードであり、前記第2のダイオードはツェナーダイオードであることを特徴とする請求項4に記載の超音波式流量測定装置。
【請求項7】
前記第2のダイオードである前記ツェナーダイオードに代えて、印可する電圧によって抵抗値が変化するバリスタを採用したことを特徴とする請求項6に記載の超音波式流量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体や電子部品等の製品や医療の分野において使用される流体の流量を測定する超音波式流量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クランク型の管路部の屈曲個所に対向して、一対の圧電素子から成る超音波送受信器を配置し、これら一対の超音波送受信器の間で超音波ビームの送受信を交互に切り換えて行うことにより、管路内の流体の流量を測定する超音波式流量測定装置が広く使用されている。
【0003】
一対の超音波送受信器によって管路内の流体中を伝搬して送受信された超音波信号は、信号電線を介して外部に設置した測定回路部に出力される。管路部と測定回路部間の信号電線は数mに及ぶこともあり、各種の機器間やフリーアクセスフロアに敷設されて配線されている。
【0004】
特許文献1には、一方の超音波送受信器の近傍の管路部に、実測流量を実流量に校正する補正データを記憶したメモリチップから成る電子デバイスを配置し、このメモリチップ用の信号電線を、超音波送受信器の信号電線と並行して配線した超音波式流量測定装置が開示されている。この超音波式流量測定装置も、従来の超音波式流量測定装置と同様に、長さが数mに及ぶ信号電線を介して、測定回路部に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の超音波式流量測定装置のように、メモリチップのような電子デバイスを新たに管路部に搭載することに伴って、電子デバイスを動作させるために新たな信号電線が追加されていることがある。
【0007】
このような場合には、前述の従来の管路部を既設の信号電線から取り外して、特許文献1の管路部を接続しようとしても、既設の信号電線には電子デバイス用の信号電線が含まれていないため、特許文献1の管路部を直ちに既設の信号線に接続することはできない。
【0008】
つまり、電子デバイス用の信号電線を、既設の信号線に並行して、管路部から測定回路部まで新設しなければ、特許文献1の管路部を信号線に接続できず、設置するために多大な時間を要する問題がある。
【0009】
また、他の機材の設置等によるスペース上の制約のために、既設の信号電線と同じ個所に、並行して電子デバイス用の新たな信号電線を配線することが困難な場合もある。更には、特許文献1の管路部は、電子デバイス用の信号電線が増える分、ケーブル本数が増加し、重量や材料費も上昇する。
【0010】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、管路部又は管路部近傍に電子デバイスを追加すると共に、流量の測定及び電子デバイスの制御を共通の信号電線を利用して行うことが可能な超音波式流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る超音波式流量測定装置は、流体が流れる管路を挟んで、対向して配置した一対の超音波送受信部を備える管路部と、各超音波送受信部のプラス極、マイナス極に接続された引出電線に接続された測定部とから成り、前記流体の流量を計測する超音波式流量測定装置であって、前記一対の超音波送受信部の一方又は両方の前記引出電線の分岐点から並列に分岐した分岐引出電線には、保護回路部を介して電子デバイス部が接続されており、前記測定部は前記引出電線を介して、前記超音波送受信部に対する信号通信処理と、前記引出電線及び前記分岐引出電線を介して、前記電子デバイス部に対する信号通信処理とを、時間的に切り換えて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波式流量測定装置によれば、測定部は超音波送受信部との計測処理と、電子デバイス部との情報処理を、共通の信号電線を介して行うことができる。測定部と電子デバイス部との間に専用の信号電線を敷設することは不要である。従って、既設の測定部に接続された信号電線に、管路部を接続することができ、大幅なコストダウンに繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】電子デバイス部の電気的接続を説明する等価回路図である。
【
図4】測定部の動作を説明するタイミングチャート図である。
【
図5】別の実施形態の測定部の動作を説明するタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は超音波式流量測定装置の管路部100及び信号電線200の説明図、
図2は電子デバイス部の電気的接続を説明する等価回路図、
図3は電気系統の接続図である。
【0015】
超音波式流量測定装置は、流体が流れる管路を挟んで、互いに対向して配置した一対の超音波送受信部を備える管路部100と、各超音波送受信部のプラス極、マイナス極に接続された引出電線に信号電線200を介して接続された測定部300とから構成されている。
【0016】
管路部100の管路110は、例えばポリプロピレン、テフロン(登録商標)等の合成樹脂材から成り、直管路120の両端近傍において、それぞれ直管路120の軸方向に対し、直角方向に向けて流体の流入を行う入口管路121と流体の排出を行う出口管路122とが、所謂クランク型に配置されている。
【0017】
管路110を構成する直管路120、入口管路121、及び出口管路122は、例えば内径4mmで、入口管路121、出口管路122の各端部には、例えばポンプに接続された合成樹脂材から成る可撓管が接続し易く、かつ抜け難くなるように、図示しない接続口が形成されている。
【0018】
なお、入口管路121と出口管路122は、例えば
図1に示すように同形で構成してもよいし、或いは管路部100の設置スペースに合わせて、適宜に形状を変更することも可能である。また、管路110は、
図1ではクランク型に配置されているが、流体が流れる管路を挟んで一対の超音波送受信部が対向して配置できる管路形状であれば、適宜に形状を採用することができる。
【0019】
入口管路121、出口管路122には、直管路120を隔てて対向する部位の壁面121a、122aを囲むように、超音波送受信部を取り付けるための筒状の素子取付部121b、122bがそれぞれ形成されている。各素子取付部121b、122b内には、壁面121a、122aに超音波送受信部である圧電素子131、132がそれぞれ取り付けられ、素子取付部121b、122b後端の開口部には、素子取付部121b、122bを閉塞するキャップ121c、122cが嵌合されている。
【0020】
また、各圧電素子131、132のプラス極、マイナス極には、それぞれ引出電線141a、141b、142a、142bが半田等により接続されている。引出電線141a、141b、142a、142bはそれぞれキャップ121c、122cの中央に設けられた孔部から外部に引き出されている。
【0021】
外部に引き出された引出電線141a、141b、142a、142bの端部は、それぞれコネクタ部151、152によって束ねられた接続端子とされている。なお、各引出電線141、142は合成ゴム等の絶縁体により被覆されている。
【0022】
更に、出口管路122の素子取付部122b内の側面部には、電子デバイス部160が内設されている。この電子デバイス部160としては、例えば記憶媒体である半導体記憶素子から成るメモリチップが用いられる。引出電線142a、142bには素子取付部122b内で分岐点170a、170bが設けられ、これらの分岐点170a、170bから並列に分岐した分岐引出電線180a、180bに、保護回路部190を介して電子デバイス部160が接続されている。この電子デバイス部160は、外部回路、例えば後述するデバイス用通信回路との通信が可能とされている。
【0023】
保護回路部190は、圧電素子132及び電子デバイス部160の管路110外との電気的接続に、引出電線142a、142bを共通に用いるために、電子デバイス部160が圧電素子132を励振する電気パルス信号によって破損するのを保護する保護機能を有している。
【0024】
保護回路部190は、
図2の等価回路図に示すように引出電線142の分岐点170から分岐した分岐引出電線180に直列に接続されている。そして、保護回路部190は、分岐引出電線180に直列に接続された電流制限抵抗190aと、それ以降の分岐引出電線180a、180bの間に順次に並列に接続されたコンデンサ190b、第1のダイオード190c、第2のダイオード190dとから構成されている。コンデンサ190bには保護回路部190が有する寄生容量が含まれ、電流制限抵抗190aはコンデンサ190bと組み合わせてローパスフィルタを構成し、例えば第1のダイオード190cにはショットキーバリアダイオード、第2のダイオード190dにはツェナーダイオードを用いることが好ましい。
【0025】
なお、ショットキーバリアダイオードを用いる第1のダイオード190cは、電子デバイス部160に加わる負電圧を抑制するために保護回路部190内に必要な部品である。これに対して、ツェナーダイオードを用いる第2のダイオード190dは、非常時に電子デバイス部160に加わる正電圧を抑制するためのものであり、電流制限抵抗190a、コンデンサ190bによって構成されたローパスフィルタが正常に動作していれば、実質的に動作することはない。従って、第2のダイオード190dを省略し、第1のダイオード190cのみを電圧抑制素子として用いることも可能である。更には、電圧抑制素子として第2のダイオード190dに代えて、印可する電圧によって抵抗値が変化するバリスタを採用することも可能である。
【0026】
引出電線142aを通る電気信号は、電流制限抵抗190aが存在するため、大部分の電流が分岐点170aで引出電線142a’側に流れるため、分岐引出電線180a側に流れる電流は減少する。また、分岐引出電線180aを通る電気信号は、電圧抑制素子として機能する第1のダイオード190c及び第2のダイオード190dによって、電子デバイス部160の定格電圧の範囲内に電圧を抑えられるので、電子デバイス部160に対して過大な電流や電圧が供給されて、破損に繋がることはない。
【0027】
更に、分岐引出電線180a側を通る電気信号は、電流制限抵抗190a、コンデンサ190bによって構成されたローパスフィルタによって、圧電素子132を励振させるための電圧パルス成分が抑制される。その結果、保護回路部190を通過できる電気信号は、電子デバイス部160の例えば半導体記憶素子と通信するためのデジタル信号成分のみとなり、電子デバイス部160に供給される。
【0028】
入口管路121側の引出電線141a、141bと接続するコネクタ部151、及び出口管路122側の引出電線142a、142bと接続するコネクタ部152には、それぞれ信号電線200が接続されている。各信号電線200は、一端にコネクタ部151、152と接続可能な端子部211、212と、他端に測定部300と接続可能な挿込端子221、222と、端子部211、212及び挿込端子221、222とを接続する電線とから構成されている。各挿込端子221、222は測定部300のマルチプレクサ310の入出力端子に並列に接続されている。
【0029】
図3の接続図に示すように、測定部300は後述するタイミングチャートに従って接続を時間的に切り換えるマルチプレクサ310と、このマルチプレクサ310に対して、並列に接続された圧電素子131、132を励振させる駆動信号を生成して出力する超音波信号駆動回路320と、圧電素子131、132からの測定信号を入力することで管路110の流量を算出する超音波信号受信回路330と、電子デバイス部160と情報信号であるデジタル信号の送受信を行うデバイス用通信回路340とから構成されている。マルチプレクサ310はこれら各回路との接続を切り換えて、測定部300の信号送受信の動作制御を行う。
【0030】
圧電素子131、132及び電子デバイス部160を取り付けた管路部100は、各管路120、121、122同士の接合時の軸線の不一致や、圧電素子131、132の取付精度等の影響を受けて、個々の管路110ごとに流量特性が異なる。このため、圧電素子131、132を取り付けた管路110ごとに、予め基準となる基準流体供給部及び測定部と組み合わせて、実流量を流して実測流量に対する出力の校正を行い、その補正データを電子デバイス部160に記憶させておく。
【0031】
校正作業を完了した管路部100は、信号電線200や測定部300とは個別に、校正済の管路部100として複数個を保管しておくことで、稼働中の管路部100に故障等が発生した場合に、直ちに新品の管路部100と交換して信号電線200、測定部300に取り付けることができる。なお、電子デバイス部160を備えていない従来の超音波式流量測定装置では、故障した際には交換の度に、測定部に交換した新たな管路部100の補正データを入力する必要があり、面倒であった。
【0032】
例えば、圧電素子の故障等の発生により、電子デバイス部160を備えた管路部100を交換する場合には、故障した管路部100の各引出電線141a、141b、142a、142bのコネクタ部151、152を、それぞれ信号電線200から取り外して、新たな管路部100のコネクタ部151、152を、信号単線221a、221b、222a、222bに端子部211、212を介して接続する。
【0033】
また、従来の電子デバイスが搭載されていない管路部を、本実施例の管路部100に交換する場合にも、既設の電線2本から成る信号電線200に、コネクタ部152を介してそのまま接続することができる。つまり、既設の管路部を管路部100に交換する場合に、管路部100と既設の測定部300の間に新たな信号電線を追加で敷設する必要はない。このように管路部100の各コネクタ部151、152をそれぞれ既設の信号電線に接続するだけで、管路部100の交換作業を迅速に行うことができる。
【0034】
図4は電子デバイス部160として補正データを記憶した記憶媒体を採用した超音波式流量測定装置の測定部300の動作を説明するタイミングチャート図である。校正済の管路部100に信号電線200を介して測定部300を接続し流量測定を開始すると、測定部300のマルチプレクサ310は、先ず接続先をデバイス用通信回路340に切り換えて、管路部100の電子デバイス部160とデータ通信を行う。
【0035】
デバイス用通信回路340は、信号電線200を介して電子デバイス部160に補正データ読出信号を送信する。補正データ読出信号は引出電線142、分岐引出電線180を通り、低電圧のデジタル信号であるため保護回路部190を通過して電子デバイス部160に入力される。電子デバイス部160から補正データ読出信号に従って記憶されている補正データが読み出され、補正データ出力信号が分岐引出電線180、引出電線142、信号電線200を順次に通ってデバイス用通信回路340に返信される。
【0036】
この補正データに基づいて、実流量と実測流量の関係式或いは校正テーブルを作成し、圧電素子131、132によって得られた流量測定信号を補正演算して流量値として出力する準備をする。電子デバイス部160に記憶されている補正データは離散的な数値データであるので、例えば既知の補間法を用いて校正データの点間を補間すればよい。なお、この補正演算は予め数式等を準備することなく、測定中に管路部100から得られた出力をその都度、補正データによって演算するようにしてもよい。
【0037】
次いで、図示しないポンプが接続され、流体を流すため接続管を、入口管路121、出口管路122の接続口にそれぞれ接続する。そして、ポンプにより測定すべき流体を入口管路121、直管路120、出口管路122の順に管路110内に流す。
【0038】
測定部300は管路110内の流れが安定すると、マルチプレクサ310の接続先を超音波信号駆動回路320及び超音波信号受信回路330に切り換えて、超音波信号駆動回路320から信号電線200を介して圧電素子132に駆動信号を送信する。
【0039】
駆動信号は引出電線142を通って圧電素子132に到達するが、分岐引出電線180側には保護回路部190があるため、その先の電子デバイス部160には微弱になった駆動信号の一部しか到達せず、電子デバイス部160が駆動信号によって破損することはない。
【0040】
圧電素子132は駆動信号により、直管路120内に超音波ビームBを発信し、圧電素子131は、圧電素子132から発信されて直管路120内を伝搬した超音波ビームBを受信する。測定部300は圧電素子131が受信した測定信号を、信号電線200を介して超音波信号受信回路330で受信する。
【0041】
続いて、マルチプレクサ310の接続先を超音波信号駆動回路320及び超音波信号受信回路330に切り換えて、超音波信号駆動回路320から信号電線200を介して圧電素子131に駆動信号を送信する。上述の圧電素子132、圧電素子131間の処理と同様に、測定部300は圧電素子132が受信した圧電素子131から発信された超音波ビームBの測定信号を、信号電線200を介して超音波信号受信回路330で受信する。
【0042】
このようにして、測定部300は超音波信号駆動回路320による駆動信号の送信と、超音波信号受信回路330による測定信号の受信を繰り返し、それに対応して圧電素子131、132は超音波ビームの送信と受信を交互に繰り返す。
【0043】
先ず上流側の圧電素子131から発した超音波ビームBは、直管路120内の流体中を直進し、下流側の圧電素子132に達する。次に、下流側の圧電素子132から発した超音波ビームBは、直管路120内に進入し上流側の圧電素子131に達する。圧電素子131から圧電素子132に向う超音波ビームBの流体中の伝播速度は、
図1の入口管路121から出口管路122の矢印方向に流れる流体により加速され、圧電素子132から圧電素子131に向う超音波ビームBの伝播速度は、流れ方向とは逆方向に向かうので減速される。
【0044】
測定部300において、これらの2方向の送受信により得られた超音波ビームの測定信号の到達時間差を求めることにより、直管路120における流速が測定され、更に直管路120の断面積を乗ずることにより流量が求められる。測定部300は、予め準備しておいた実流量と実測流量の関係式、又は校正テーブルを用いて、この実測流量値の補正を行い、正確な流量値を算出する。
【0045】
このように、測定部300は引出電線142a、142bを介して、圧電素子132に対する信号通信処理と、引出電線142a、142b及び分岐引出電線180a、180bを介して、電子デバイス部160に対する信号通信処理とを、時間的に切り換えて行うことが可能である。つまり、測定部300は信号電線200を介して圧電素子131及び132又は電子デバイス部160の何れか一方と、時間的に切り換えて信号の送受信を行うことができる。
【0046】
測定部300と圧電素子131、132との間の計測処理に関する信号送受信と、測定部300と電子デバイス部160との間の情報処理に関する信号送受信に信号電線200を共通して用いるので、信号電線200の本数が増加することはなく、信号電線200として既設の信号電線を用いることも可能である。
【0047】
上述の
図1~
図4に示した実施例では、電子デバイス部160として記憶媒体である半導体記憶素子から成るメモリチップを使用した場合について説明したが、電子デバイス部160は必ずしもこれに限定されない。
【0048】
ダイオード等の電圧降下の温度依存性を利用した温度測定デバイス、記憶素子と温度測定素子を共に形成したICやLSI等の半導体デバイス等のあらゆる電子デバイスを、電子デバイス部160として用いることができる。例えば、温度測定素子等の半導体デバイスから成る温度測定デバイスを、電子デバイス部160’として用いる場合には、
図5の測定部300の動作のタイミングチャート図に示すように、圧電素子131、132の送受信による流量値の測定の間に、デバイス通信を行う。このようにすることで、随時に超音波式流量測定装置の温度を測定することが可能である。
【0049】
温度測定デバイスである電子デバイス部160’は、出口管路122側の素子取付部122b内における直管路120や圧電素子132の更に近傍に配置して、直管路120内を流れる流体の温度を高精度に測定し、この温度測定値を受信した測定部300は、実測流量値の温度変化による誤差の補正を行うことができる。
【0050】
また、電子デバイス部160、160’は、管路部100の出口管路122側の素子取付部122b内に内蔵されているが、入口管路121側の素子取付部121b内に内蔵してもよいし、入口管路121側及び出口管路122側の両方の素子取付部121b、122bの両方に、それぞれ電子デバイス部160、160’を内蔵してもよい。例えば、一方側の引出電線141a及び141bに保護回路部190を介して、補正データを記憶した記憶媒体である電子デバイス部160を、他方側の引出電線142a及び142bに保護回路部190を介して、温度測定デバイスである電子デバイス部160’を接続することもできる。
【0051】
更に、電子デバイス部160、160’は、管路部100の入口管路121側又は出口管路122側の何れか一方の引出電線141又は142の、管路110外に引き出されて被覆部に覆われた部分に設置してもよい。この場合には、分岐点170a、170bを引出電線141a、141b又は引出電線142a、142bの管路110外に引き出された部分に設けて、分岐点170a、170bから並列に分岐した分岐引出電線180a、180bの間に保護回路部190を配置し、分岐引出電線180a、180bに保護回路部190を介して電子デバイス部160を接続する。
【0052】
電子デバイス部160、160’、分岐引出電線180a、180b、及び保護回路部190は、破損防止のために引出電線141又は142の被覆部内に設けるか、収納ケース内に収納されて引出電線141又は142の被覆部に取り付けられる。
【0053】
更には、管路部100の入口管路121側及び出口管路122側の管路110外に引き出された引出電線141a、141b、142a、142b、つまり4本の引出電線を纏めて収納する中継ボックスを管路110外に設けて、この中継ボックス内に電子デバイス部160、160’を設置することもできる。この場合には、中継ボックス内において、分岐点170a、170bを引出電線141a及び141b、又は142a及び142bの何れか一方に設けて、分岐点170a、170bから並列に分岐した分岐引出電線180a、180bの間に保護回路部190を配置し、保護回路部190を介して電子デバイス部160、160’を接続する。
【0054】
なお、中継ボックス内には2個の電子デバイス部160、160’を設置してもよい。分岐点170a、170bを引出電線141a及び141b、142a及び142bの両方に設けて、それぞれの分岐点170a、170bから同様にして分岐引出電線180a、180bを引き出して、個別に保護回路部190を介して、電子デバイス部160を接続する。
【0055】
また、引出電線141a及び141b又は142a及び142bに複数の分岐点を設けて、2本以上の分岐引出電線180を引き出し、それぞれの分岐引出電線180に個別に保護回路部190を介して電子デバイス部160、160’を接続することによって、3個以上の電子デバイス部160を設けることも可能である。
【0056】
このように、複数個の電子デバイス部160、160’を設けることによって、例えば電子デバイス部160が温度測定デバイスであれば、入口管路121側及び出口管路122側の温度を同時に測定し、直管路120を流れる流体の温度の測定精度を高めて、実測流量値の温度補正を高精度に行うこともできる。
【0057】
本実施例の超音波式流量測定装置では、管路部100に設けた電子デバイス部160、160’を、保護回路部190を介して圧電素子131、132を駆動する引出電線141a、141b、142a、142bに接続することによって、引出電線141a、141b、142a、142bの本数を増加させることなく、測定部30に接続された信号電線200に、管路部100の引出電線141a、141b、142a、142bを直ちに接続することができる。従って、実施例の超音波式流量測定装置は、既設の信号電線200を改修せずにそのまま利用できるので、電子デバイス部160、160’の補正データ、温度データ等の活用による測定精度等の向上だけでなく、同時にコストダウンも実現できる。
【0058】
また、既設の管路部100に超音波送受信部の故障等が発生し、直ちに別の管路部100に交換する必要がある場合にも、管路部100を既設の信号電線200を利用して、交換作業を容易に完了させることができる。
【符号の説明】
【0059】
100 管路部
110、120、121、122 管路
131、132 圧電素子
141a、141b、142a、142b 引出電線
160 電子デバイス部
170a、170b 分岐点
180a、180b 分岐引出電線
190 保護回路部
190a 電流制限抵抗
190b コンデンサ
190c 第1のダイオード
190d 第2のダイオード
300 測定部
310 マルチプレクサ
320 超音波信号駆動回路
330 超音波信号受信回路
340 デバイス用通信回路
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
前記電圧抑制素子は、ショットキーバリアダイオードである1個のダイオードと、印可する電圧によって抵抗値が変化するバリスタとから成り、前記分岐引出電線に前記電流制限抵抗が直列に接続されており、前記電流制限抵抗の接続以降の前記分岐引出電線間に、前記コンデンサ及び前記ダイオードが並列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の超音波式流量測定装置。