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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148630
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】複合微粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08K 9/04 20060101AFI20220929BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/28 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/44 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08K9/04
C08L101/06
C08L101/02
C08G69/28
C08G69/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050380
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 弥生
(72)【発明者】
【氏名】永廣 卓哉
【テーマコード(参考)】
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DA03
4J001EB67
4J001EC44
4J001EE09E
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA13
4J001GB02
4J001GC00
4J001JA20
4J001JB50
4J002CL001
4J002CL081
4J002CM041
4J002DE066
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE136
4J002DE146
4J002DH006
4J002DJ016
4J002DL006
4J002FB261
4J002FD206
4J002GD00
4J002GD02
4J002GD03
(57)【要約】
【課題】前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造することができ、染料等の分離能に優れる複合微粒子を提供する。
【解決手段】無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で直接被覆されている、複合微粒子。無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で被覆されている複合微粒子を含有する、染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で直接被覆されている、複合微粒子。
【請求項2】
前記高分子化合物が、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物、ポリベンズオキサゾール化合物、ポリベンズイミダゾール化合物及びポリイミド化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の複合微粒子。
【請求項3】
前記無機微粒子が、表面にシランカップリング剤由来の有機官能基を有さない、請求項1又は2に記載の複合微粒子。
【請求項4】
染料及び/又は金属イオン吸着剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【請求項5】
前記無機微粒子の平均粒径が5nm~1cmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【請求項6】
無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で被覆されている複合微粒子を含有する、染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【請求項7】
前記無機微粒子が、前記高分子化合物で直接被覆されている、請求項6に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【請求項8】
前記無機微粒子が、表面にシランカップリング剤由来の有機官能基を有さない、請求項6又は7に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【請求項9】
前記無機微粒子の平均粒径が5nm~1cmである、請求項6~8のいずれか1項に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合微粒子又は請求項6~9のいずれか1項に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤の製造方法であって、
前記無機微粒子の存在下に、酸クロライド化合物を有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、第1級アミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とを混合する工程
を備える、製造方法。
【請求項11】
前記混合工程を、さらに、第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下に行う、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記混合工程が、前記第二溶液に、前記無機微粒子と前記第2級アミン及び/又は第3級アミン化合物とを添加し、次いで、前記第1溶液を添加し、混合する工程である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物が、前記第一溶液及び第二溶液のいずれにも可溶である、請求項11又は12に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合微粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子と無機微粒子とを組み合わせた複合材料は、両者の多様な機能や特性を併せ持つ高機能性材料として幅広く利用されている。しかしながら、界面特性が大きく異なる異種材料の複合化においては、界面間の親和性や接着性の制御が常に解決すべき重要な技術課題の1つとなっており、これまでにも様々な複合化技術の検討が行われてきた。また、複合材料の形態としては、板状、粉状、繊維状等多様であるが、粉体(微粒子)は成形加工性にも優れていることから、その需要は高い。
【0003】
複合化技術の代表的なものとして、(1)無機微粒子をシランカップリング剤処理した後、高分子と反応させる方法(例えば、特許文献1及び2参照)、(2)無機微粒子に反応性化合物(モノマーや低分子化合物)を蒸着あるいは化学修飾した後、さらに高分子重合を行う方法、(3)無機微粒子を予め作製しておいた高分子溶液中に浸漬する方法、(4)無機微粒子に高分子微粒子を気相中高速で衝突させる機械的方法等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-254523号公報
【特許文献2】特開2004-010664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記(1)~(3)の方法においては、その工程が2段階(前処理、複合化)以上となり、多くの作業労力、時間及びコストを必要とする。
【0006】
また、上記(1)の方法では、シランカップリング剤を用いることから、目的とする複合微粒子の構成材料以外に別の化合物(第3成分)を混在させることになり、特性に影響を与える可能性がある。
【0007】
また、上記(2)の方法では、蒸着あるいは化学修飾における反応及び反応性化合物における反応点を利用した高分子重合反応の制御等、煩雑な工程とならざるを得ない。
【0008】
また、上記(3)の方法では、高分子の種類によっては溶媒に溶解しない、又は溶媒の種類が非常に限定される。例えば、特開2006-257345号公報に記載の方法で重合したポリアミド化合物の多くは、殆どの溶媒に溶解しない。
【0009】
一方、上記(4)の方法は機械的複合化であるため、前処理を必要としない場合も多いが、作製する複合微粒子の表面モルフォロジーや被覆量の制御は困難である。ただし、これらの制御は、機能性(分離能等)の付与や品質管理において必要不可欠であるため、煩雑な工程とならざるを得ない。
【0010】
以上から、本発明は、前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造することができ、染料等の分離能に優れる複合微粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、無機微粒子を含む溶液中で、複数のモノマーを重合させることによって、前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造することができ、染料等の分離能に優れる複合微粒子を提供することができることを見出した。本発明者は、このような知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成させた。即ち、本発明は、以下の構成を包含する。
【0012】
項1.無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で直接被覆されている、複合微粒子。
【0013】
項2.前記高分子化合物が、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物、ポリベンズオキサゾール化合物、ポリベンズイミダゾール化合物及びポリイミド化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の複合微粒子。
【0014】
項3.前記無機微粒子が、表面にシランカップリング剤由来の有機官能基を有さない、項1又は2に記載の複合微粒子。
【0015】
項4.染料及び/又は金属イオン吸着剤である、項1~3のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【0016】
項5.前記無機微粒子の平均粒径が5nm~1cmである、項1~4のいずれか1項に記載の複合微粒子。
【0017】
項6.無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で被覆されている複合微粒子を含有する、染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【0018】
項7.前記無機微粒子が、前記高分子化合物で直接被覆されている、項6に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【0019】
項8.前記無機微粒子が、表面にシランカップリング剤由来の有機官能基を有さない、項6又は7に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【0020】
項9.前記無機微粒子の平均粒径が5nm~1cmである、項6~8のいずれか1項に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤。
【0021】
項10.項1~5のいずれか1項に記載の複合微粒子又は項6~9のいずれか1項に記載の染料及び/又は金属イオン吸着剤の製造方法であって、
前記無機微粒子の存在下に、酸クロライド化合物を有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、第1級アミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とを混合する工程
を備える、製造方法。
【0022】
項11.前記混合工程を、さらに、第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下に行う、項10に記載の製造方法。
【0023】
項12.前記混合工程が、前記第二溶液に、前記無機微粒子と前記第2級アミン及び/又は第3級アミン化合物とを添加し、次いで、前記第1溶液を添加し、混合する工程である、項11に記載の製造方法。
【0024】
項13.前記第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物が、前記第一溶液及び第二溶液のいずれにも可溶である、項11又は12に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1で得られた複合微粒子のSEM像である。
図2】原料として使用したシリカ微粒子のSEM像である。
図3】実施例2で得られた複合微粒子のSEM像である。
図4】実施例3で得られた複合微粒子のSEM像である。
図5】実施例4で得られた複合微粒子のSEM像である。
図6】実施例5で得られた複合微粒子のSEM像である。
図7】原料として使用したアルミナ微粒子のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0028】
また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
【0029】
1.複合微粒子(第1の態様)
本発明の複合微粒子は、無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で直接被覆されている。
【0030】
つまり、本発明の複合微粒子においては、無機微粒子は、シランカップリング剤による前処理等に起因した有機官能基を表面に有していないことが好ましい。このため、シランカップリング剤の導入に伴う複合微粒子の物性等への影響がなく、品質管理も簡便に行うことができる。
【0031】
(1-1)無機微粒子
本発明で用いる無機微粒子の材質は限定されず、最終製品の用途等に応じて幅広く選択できる。例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、マグネシア、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライト、酸化カルシウム、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0032】
なかでも、後述する製造方法によって、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造しやすい観点から、シリカ、アルミナ、ゼオライト等が好ましい。
【0033】
本発明で使用する無機微粒子は、上記のとおり、シランカップリング剤由来の有機官能基を表面に有していないことが好ましい。
【0034】
このような有機官能基は、通常、シランカップリング剤で前処理した際に付与されるものであり、つまり、本発明で使用する無機微粒子は、シランカップリング剤で前処理されていないことが好ましい。
【0035】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリロキシ系、アクリロキシ系、アミノ系、ウレイド系、クロロプロピル系、メルカプト系、スルフィド系、イソシアネート系等が挙げられ、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
このため、無機微粒子が表面に有していないシランカップリング剤由来の有機官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチレン基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0037】
無機微粒子の形状は限定的でなく、球状、板状、フィルム状、針状、繊維状、薄片状、鱗片状等、最終製品の用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、球状である場合、無機微粒子の平均粒径は、通常、5nm~1cm程度が好ましく、10nm~1mm程度がより好ましい。なお、無機微粒子の平均粒径は、粒度分布測定装置により測定する。
【0038】
(1-2)高分子化合物
高分子化合物としては、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環(イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有していれば特に制限はなく、例えば、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物、ポリベンズオキサゾール化合物、ポリベンズイミダゾール化合物、ポリイミド化合物等が挙げられる。
【0039】
これらの高分子化合物は、公知又は市販品を使用することができる。
【0040】
なお、後述の本願発明の製造方法を用いた場合、後述の酸クロライドと第1級アミン化合物とを重合させて、無機微粒子上にポリアミド化合物やポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物等が得られることが多い。このように、ポリアミド化合物を得た後に、常法でイミド化すれば、ポリアミドイミド化合物やポリイミド化合物等を得ることができる。また、ポリアミド化合物を得た後に、常法で閉環反応を施せば、ポリベンズオキサゾール化合物やポリベンズイミダゾール化合物等を得ることができる。いずれの場合も、本発明を構成する。
【0041】
(1-3)複合微粒子
本発明の複合微粒子は、上記した無機微粒子に、上記した高分子化合物で直接被覆されている。つまり、シランカップリング剤由来の有機官能基等の他層を介することなく、無機微粒子が高分子化合物で被覆されている。
【0042】
このため、シランカップリング剤の導入に伴う複合微粒子の物性等への影響がなく、品質管理も簡便に行うことができる。
【0043】
本発明の複合微粒子において、高分子化合物による被覆量は特に制限されるわけではないが、前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆させやすく、また、染料や金属イオンを吸着しやすい観点から、1000℃での熱処理(空気中)により測定される高分子化合物の被覆量は、本発明の複合微粒子の総量を100質量%として、0.1~80質量%が好ましく、0.1~70質量%がより好ましい。
【0044】
本発明の複合微粒子の形状は限定的でなく、球状、板状、フィルム状、針状、繊維状、薄片状、鱗片状等、最終製品の用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、球状である場合、本発明の複合微粒子の平均粒径は、通常、5nm~1cm程度が好ましく、10nm~1mm程度がより好ましい。なお、本発明の複合微粒子の平均粒径は、粒度分布測定装置により測定する。
【0045】
このような本発明の複合微粒子は、例えば、染料溶液や、金属イオンを含有する溶液中に投入した際に、染料や金属イオンを吸着することができ、染料及び/又は金属イオン吸着剤として使用することが可能である。
【0046】
この際、対象となる染料としては、特に制限はなく、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、アシッドレッド87、アシッドレッド289、アシッドレッド92、スルホローダミンB、サンセットイエローFCF、アマランス、ファストグリーンFCF、インジゴカルミン、メチレンブルー、ブリリアントクレシルブルー、ニュートラルレッド、リアクティブブルー4、コンゴーレッド、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットB、ブリリアントグリーン等が挙げられ、対象となる金属イオンとしては、特に制限はなく、例えば、Cr(VI)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、As(V)、Se(IV)、Sr(II)、Pd(II)、Ag(I)、Cd(II)、La(III)、Pt(IV)、Au(III)、Pb(II)等が挙げられる。本発明の複合微粒子は、これらのなかから、単独又は複数を吸着することができる。
【0047】
2.染料及び/又は金属イオン吸着剤(第2の態様)
本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤は、無機微粒子が、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する高分子化合物で被覆されている複合微粒子を含有する。
【0048】
(2-1)無機微粒子
本発明で用いる無機微粒子の材質は限定されず、最終製品の用途等に応じて幅広く選択できる。例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、マグネシア、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライト、酸化カルシウム、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0049】
なかでも、後述する製造方法によって、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆した複合微粒子を製造しやすい観点から、シリカ、アルミナ、ゼオライト等が好ましい。
【0050】
本発明で使用する無機微粒子は、シランカップリング剤由来の有機官能基を表面に有することを排除するものではないが、シランカップリング剤の導入に伴う複合微粒子の物性等への影響がなく、品質管理も簡便に行うことができる観点から、シランカップリング剤由来の有機官能基を表面に有さないことが好ましい。
【0051】
このような有機官能基は、通常、シランカップリング剤で前処理した際に付与されるものであり、つまり、本発明で使用する無機微粒子は、シランカップリング剤で前処理されていないことが好ましい。
【0052】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリロキシ系、アクリロキシ系、アミノ系、ウレイド系、クロロプロピル系、メルカプト系、スルフィド系、イソシアネート系等が挙げられ、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
このため、無機微粒子が表面に有していないことが好ましいシランカップリング剤由来の有機官能基としては、例えば、ビニル基、エポキシ基、スチレン基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0054】
無機微粒子の形状は限定的でなく、球状、板状、フィルム状、針状、繊維状、薄片状、鱗片状等、最終製品の用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、球状である場合、無機微粒子の平均粒径は、通常、5nm~1cm程度が好ましく、10nm~1mm程度がより好ましい。なお、無機微粒子の平均粒径は、粒度分布測定装置により測定する。
【0055】
(2-2)高分子化合物
高分子化合物としては、主鎖にアミド結合、イミド結合及び窒素含有複素芳香環(イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有していれば特に制限はなく、例えば、ポリアミド化合物、ポリアミドイミド化合物、ポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物、ポリベンズオキサゾール化合物、ポリベンズイミダゾール化合物、ポリイミド化合物等が挙げられる。
【0056】
これらの高分子化合物は、公知又は市販品を使用することができる。
【0057】
なお、後述の本願発明の製造方法を用いた場合、後述の酸クロライドと第1級アミン化合物とを重合させて、無機微粒子上にポリアミド化合物やポリエステルアミド化合物、ポリアミドウレタン化合物等が得られることが多い。このように、ポリアミド化合物を得た後に、常法でイミド化すれば、ポリアミドイミド化合物やポリイミド化合物等を得ることができる。また、ポリアミド化合物を得た後に、常法で閉環反応を施せば、ポリベンズオキサゾール化合物やポリベンズイミダゾール化合物等を得ることができる。いずれの場合も、本発明を構成する。
【0058】
(2-3)染料及び/又は金属イオン吸着剤
本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤において、高分子化合物による被覆量は特に制限されるわけではないが、前処理工程を必要とせずに、ワンステップで無機微粒子に高分子化合物を被覆させやすく、また、染料や金属イオンを吸着しやすい観点から、1000℃での熱処理(空気中)により測定される高分子化合物の被覆量は、本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤の総量を100質量%として、0.1~80質量%が好ましく、0.1~70質量%がより好ましい。
【0059】
本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤の形状は限定的でなく、球状、板状、フィルム状、針状、繊維状、薄片状、鱗片状等、最終製品の用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、球状である場合、本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤の平均粒径は、通常、5nm~1cm程度が好ましく、10nm~1mm程度がより好ましい。なお、本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤の平均粒径は、粒度分布測定装置により測定する。
【0060】
このような本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤は、例えば、染料溶液や、金属イオンを含有する溶液中に投入した際に、染料や金属イオンを吸着することができる。
【0061】
この際、対象となる染料としては、特に制限はなく、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、アシッドレッド87、アシッドレッド289、アシッドレッド92、スルホローダミンB、サンセットイエローFCF、アマランス、ファストグリーンFCF、インジゴカルミン、メチレンブルー、ブリリアントクレシルブルー、ニュートラルレッド、リアクティブブルー4、コンゴーレッド、クリスタルバイオレット、メチルバイオレットB、ブリリアントグリーン等が挙げられ、対象となる金属イオンとしては、特に制限はなく、例えば、Cr(VI)、Fe(II)、Co(II)、Ni(II)、Cu(II)、As(V)、Se(IV)、Sr(II)、Pd(II)、Ag(I)、Cd(II)、La(III)、Pt(IV)、Au(III)、Pb(II)等が挙げられる。本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤は、これらのなかから、単独又は複数を吸着することができる。
【0062】
3.製造方法
本発明の製造方法は、本発明の複合微粒子又は本発明の染料及び/又は金属イオン吸着剤の製造方法であって、
無機微粒子の存在下に、酸クロライド化合物を有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、第1級アミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とを混合する工程
を備える。また、無機微粒子に高分子化合物を被覆させやすく、複合化していない高分子化合物の小片(無機微粒子上に被覆されていない高分子化合物の小片、屑等)等が生成しにくく、複合微粒子のみが得られやすい観点からは、混合工程は、第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下に行う、つまり、無機微粒子と第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物との存在下に行うことが好ましい。
【0063】
つまり、本発明では、酸クロライド化合物と第1級アミン化合物とは、それぞれ別個の溶液として調製しておく。
【0064】
(3-1)第一溶液
第一溶液で用いる酸クロライド化合物は、特に制限されず、例えば従来の高分子化合物合成で用いられているものと同様のものが使用できる。
【0065】
酸クロライド化合物としては、酸ジクロライド化合物のほか、酸トリクロライド化合物、酸テトラクロライド化合物等が挙げられるが、一般的には酸ジクロライド化合物又は酸トリクロライド化合物を好適に用いることができる。酸クロライド化合物としては、例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ムコン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ノナン酸ジクロライド、ウンデカン酸ジクロライド等の脂肪族酸ジクロライド化合物;1,2-シクロプロパンジカルボン酸ジクロライド、1,3-シクロブタンジカルボン酸ジクロライド、1,3-シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂環族酸ジクロライド化合物;フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5-(9-オキソフルオレン)ジカルボン酸ジクロライド、1,4-アントラセンジカルボン酸ジクロライド、1,4-アントラキノンジカルボン酸ジクロライド、2,5-ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、1,5-ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4’-メチレン二安息香酸ジクロライド、4,4’-イソプロピリデン二安息香酸ジクロライド、4,4’-ビベンジルジカルボン酸ジクロライド、4,4’-スチルベンジカルボン酸ジクロライド、4,4’-トランジカルボン酸ジクロライド、4,4’-カルボニル二安息香酸ジクロライド、4,4’-オキシ二安息香酸ジクロライド、4,4’-スルホニル二安息香酸ジクロライド、4,4’-ジチオ二安息香酸ジクロライド、p-フェニレン二酢酸ジクロライド、3,3’-p-フェニレンジプロピオン酸ジクロライド等の芳香族酸ジクロライド化合物;1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド等の酸トリクロライド化合物等を挙げることができる。これら酸クロライド化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0066】
酸クロライド化合物は、機能性基を有する酸クロライド化合物を使用することもできる。
【0067】
機能性基としては、得られる微粒子表面上に所望の機能を付与できる限り特に限定されない。例えば、水酸基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH)、アルケニル基(-CH=CH-を有する基)、アルキニル基(-C≡C-を有する基)、ビニルエーテル基(-CH=CH-O-を有する基)、アミド基(-CONH)、ニトリル基(-C≡N)、イソシアネート基(-N=C=O)、ニトロ基(-NO)、スルホン基(-SOH)、チオール基(-SH)、クラウンエーテル基等の官能基のほか、-CF基、-CCl基、-CBr等のハロゲン化アルキル基等を挙げることができる。なお、原料として使用される酸クロライド化合物にあっては、基-COClを有しているが、最終的に得られる微粒子表面上にそれらの基が存在する場合には、本発明の機能性基に包含される。
【0068】
これら機能性基は、単独で含まれていてもよいし、2種以上が組合せて含まれていてもよい。一つの酸クロライド化合物に2種以上の機能性基を有する場合は、これらの機能性基は同一でも良いし、あるいは互いに異なっていても良い。本発明では、得られる複合微粒子の所望の物性、最終製品の用途等に応じて、これら機能性基を微粒子表面に適宜付与することができる。
【0069】
機能性基を有する酸クロライド化合物を用いる場合には、上記酸クロライド化合物であって、かつ、前記に掲げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジクロライド、4-ニトロフタル酸ジクロライド、3-ニトロフタル酸ジクロライド、4-メチルフタル酸ジクロライド、テトラクロロフタル酸ジクロライド等を挙げることができる。また、後記のポリアミドイミドに使用できる酸クロライド化合物の酸ジクロライド、酸トリクロライド等で前記の機能性基を有するものも、本発明の酸クロライド化合物(原料)として使用することができる。また、ポリエステルアミド化合物の合成に使用できる1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド等も、本発明の酸クロライド化合物(原料)として使用することができる。
【0070】
本発明では、機能性基を有する酸クロライド化合物と、機能性基を有しない酸クロライド化合物とを併用することも可能である。これにより、得られる複合微粒子の特性を任意に制御することができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0071】
また、酸クロライド化合物は、得られる複合微粒子の所望の特性等に応じて適宜選択することができる。例えば、酸クロライド化合物として芳香族酸ジクロライド(特にテレフタル酸ジクロライド、4,4’-ビフェニルジカルボニルクロライド及びイソフタル酸ジクロライドの少なくとも1種)又は芳香族酸トリクロライド(特に1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド)を用いると、無機微粒子にポリアミド化合物を均一に被覆しやすい。
【0072】
本発明において、高分子化合物には、ポリアミドイミド化合物も含まれる。従って、酸クロライド化合物として、従来のポリアミドイミド合成で用いられているものを使用できる。例えば、トリメリット酸クロライド、ピロメリット酸クロライド、オキシジフタル酸クロライド、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸クロライド、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸クロライド、ジエチルピロメリテイトジアシルクロライド、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸クロライド、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)フタル酸クロライド、m(p)-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸クロライド、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸クロライド、1-カルボキシメチル-2,3-5シクロペンタントリカルボン酸クロライド等の酸クロライド化合物を用いることができる。これら酸クロライド化合物としては、酸ジクロライド、酸トリクロライド又は酸テトラクロライドのいずれであってもよい。
【0073】
また、ポリアミドイミド化合物を析出させる際には、酸クロライド化合物に加えて、カルボン酸の無水物として、トリメリット酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジエチルピロメリテイトジアシル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m(p)-フェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1-カルボキシメチル-2,3-5シクロペンタントリカルボン酸二無水物等を用いることができる。
【0074】
第一溶液で用いる有機溶媒は、実質的に酸クロライド化合物が溶解し、且つ、生成する高分子化合物及び複合微粒子が溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトフェノン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等の、第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物が可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。第一溶液においては、これらの中でも、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、用いる酸クロライド化合物の種類によって、アセトン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物とアセトン等との混合液に溶解させるか、あるいは予め第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物に溶解させた後にアセトン等に溶解させることができる。
【0075】
第一溶液における酸クロライド化合物の濃度は、用いる酸クロライド化合物の種類、第二溶液の濃度等に応じて適宜設定すればよいが、通常は0.001~0.2モル/リットル程度が好ましく、0.0025~0.1モル/リットル程度がより好ましい。第一溶液における酸クロライド化合物の濃度がこの範囲内であると、複合化していない高分子化合物の小片(無機微粒子上に被覆されていない高分子化合物の小片、屑等)等が生成しにくく、複合微粒子のみが得られやすい。
【0076】
(3-2)第二溶液
第二溶液で用いる第1級アミン化合物は、特に限定されず、公知の高分子化合物の合成で使用されているものを挙げることができる。例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、3,4-ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’-ジアミノトルエン、2,4-ジアミノクロロベンゼン、1,2-ジアミノアントラキノン、1,4-ジアミノアントラキノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノビベンジル、R(+)-2,2’-ジアミノ-1,1’-ビナフタレン、S(+)-2,2’-ジアミノ-1,1’-ビナフタレン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン等の1,n-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン(nは、3~10)、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;1,2-ジアミノメタン、1,4-ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノドデカン、1,11-ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン化合物;1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン化合物等の他、3,4-ジアミノピリジン、1,4-ジアミノ-2-ブタノン等を使用することもできる。これらは、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0077】
また、本発明では、ジアミン化合物のほかに、他のアミン系化合物(モノアミン化合物、多価アミン化合物等)も用いることができる。これらにより、得られる本発明の複合微粒子の特性を変えることができる。
【0078】
第1級アミン化合物は、機能性基を有する第1級アミン化合物を使用することもできる。
【0079】
機能性基としては、得られる微粒子表面上に所望の機能を付与できる限り特に限定されない。例えば、水酸基(-OH)、カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-NH)、アルケニル基(-CH=CH-を有する基)、アルキニル基(-C≡C-を有する基)、ビニルエーテル基(-CH=CH-O-を有する基)、アミド基(-CONH)、ニトリル基(-C≡N)、イソシアネート基(-N=C=O)、ニトロ基(-NO)、スルホン基(-SOH)、チオール基(-SH)、クラウンエーテル基等の官能基のほか、-CF基、-CCl基、-CBr等のハロゲン化アルキル基等を挙げることができる。なお、原料として使用される第1級アミン化合物にあっては、基-NHを有しているが、最終的に得られる微粒子表面上にそれらの基が存在する場合には、本発明の機能性基に包含される。
【0080】
これら機能性基は、単独で含まれていてもよいし、2種以上が組合せて含まれていてもよい。一つの第1級アミン化合物に2種以上の機能性基を有する場合は、これらの機能性基は同一でも良いし、あるいは互いに異なっていても良い。本発明では、得られる複合微粒子の所望の物性、最終製品の用途等に応じて、これら機能性基を微粒子表面に適宜付与することができる。
【0081】
機能性基を有する第1級アミン化合物を用いる場合には、上記第1級アミン化合物であって、前記で挙げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、1,3-ジアミノ-2-プロピルアルコール、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,5-ジアミノベンゾトリフルオライド、3,5-ジアミノ安息香酸、3,4-ジアミノ安息香酸、3,3’-ジアミノベンジジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン等を用いることができる。特に、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル等を用いると、無機微粒子にポリアミド化合物等の高分子化合物を均一に被覆しやすく、染料や金属イオン等の分離性能等が向上するので好ましい。
【0082】
本発明では、機能性基を有する第1級アミン化合物と、機能性基を有しない第1級アミン化合物とを併用することもできる。これより、得られる複合微粒子の特性等を変えることができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0083】
第二溶液で用いる有機溶媒は、実質的に前記第1級アミン化合物が溶解し、且つ、生成する高分子化合物及び複合微粒子が溶解しないものであれば特に制限されない。例えば、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸メチル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトフェノン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン等の、第1級アミン化合物が可溶な溶媒が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用できる。第二溶液においては、これらの中でも、アセトン、ジオキサン、酢酸エチル、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドの少なくとも1種を含む溶媒が好ましい。なお、これらのうち複数の溶媒を併用した混合溶媒とすると、反応溶媒の極性を最適化することができ、無機微粒子上に高分子化合物を被覆して複合化させやすい。なお、用いる第1級アミン化合物の種類によって、アセトン等の溶媒にすぐ溶解しない場合があるが、このような場合には第1級アミン化合物とアセトン等との混合液に溶解させるか、あるいは予め第1級アミン化合物に溶解させた後にアセトン等に溶解させれば良い。
【0084】
また、第二溶液の溶媒は、第一溶液の溶媒と同一であってもよいし、互いに相溶性を有していれば異なっていてもよい。
【0085】
第二溶液における第1級アミン化合物の濃度は、用いるジアミン化合物の種類、第一溶液の濃度等に応じて適宜設定すればよいが、通常は0.001~0.2モル/リットル程度が好ましく、0.0025~0.1モル/リットル程度がより好ましい。第二溶液における第1級アミン化合物の濃度がかかる範囲内であると、複合化していない高分子化合物の小片(無機微粒子上に被覆されていない高分子化合物の小片、屑等)等が生成しにくく、複合微粒子のみが得られやすい。
【0086】
(3-3)第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物
本発明の混合工程においては、上記のとおり、無機微粒子に高分子化合物を被覆させやすく、複合化していない高分子化合物の小片(無機微粒子上に被覆されていない高分子化合物の小片、屑等)等が生成しにくく、複合微粒子のみが得られやすい観点からは、混合工程は、第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下に行う、つまり、無機微粒子と第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物との存在下に行うことが好ましい。
【0087】
第2級アミン化合物及び第3級アミン化合物は、特に制限されないが、前記第一溶液と前記第二溶液のいずれにも可溶である化合物が好ましい。なお、液体(すなわち、有機溶媒)であっても固体であってもよい。
【0088】
例えば、第2級アミン化合物としては、複素環式第2級アミン、脂環式第2級アミン、脂肪族第2級アミン及び芳香族第2級アミンの少なくとも1種が好ましく例示できる。第3級アミン化合物としては、複素環式第3級アミン、脂環式第3級アミン、脂肪族第3級アミン及び芳香族第3級アミンの少なくとも1種が好ましく例示できる。
【0089】
より具体的には、複素環式第2級アミン化合物としては、例えば、ピペリジン、ピロール、ピロリジン、ピペラジン、3-ピロリン等が挙げられる。これらの複素環式第2級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0090】
複素環式第3級アミンとしては、例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール等が挙げられる。これらの複素環式第3級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0091】
本発明では、同一分子中に第2級アミノ基及び第3級アミノ基の両方を有する複素環式アミン化合物も使用できる。同一分子中に第2級アミノ基及び第3級アミノ基の両方を有する複素環式アミン化合物としては、例えば、イミダゾール、ピラゾール、プリン等が挙げられる。これらの複素環式アミン化合物は、複素環式第2級アミン化合物及び複素環式第3級アミン化合物のいずれにも属する。
【0092】
脂環式第2級アミン化合物としては、例えば、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(イソキヌクリジン)、3,7-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン(ビスピジン)、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタニン)、2,5-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの脂環式第2級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0093】
脂環式第3級アミン化合物としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(トリエチレンジアミン)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1-アザビシクロ[3.2.2]ノナン(ホモキヌクリジン)、9-メチル-9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン(グラナタン)、N,N-ジメチル-シクロヘキシルアミン、N,N-ジエチル-シクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの脂環式第3級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0094】
脂肪式第2級アミン化合物としては、例えば、エチルメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-イソ-アミルアミン、ジ-n-アミルアミン、ジベンジルアミン、2-(N-メチルアミノ)ヘプタン等が挙げられる。これらの脂肪式第2級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0095】
脂肪式第3級アミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N-メチル-ジエチルアミン、N-エチル-ジメチルアミン、N-エチル-ジアミルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン等が挙げられる。これらの脂肪式第3級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0096】
芳香族第2級アミン化合物としては、例えば、N-メチルアニリン、N-イソブチルアニリン、N-エチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。これらの芳香族第2級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0097】
芳香族第3級アミン化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N-エチル-N-メチルアニリン、トリフェニレンアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。これらの芳香族第3級アミン化合物は、単独で用いることもでき、2種以上を組合せて用いることもできる。
【0098】
これらの中でも、高分子化合物の重合度が高い複合微粒子が得られやすい観点から、複素環式第3級アミン及び/又は脂環式第3級アミンが好ましく、特にピリジン及び/又はトリエチレンジアミンが好ましい。
【0099】
(3-4)混合工程
本発明では、上記した無機微粒子と必要に応じて上記した第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下に、上記した酸クロライド化合物を有機溶媒に溶解してなる第一溶液と、上記した第1級アミン化合物を有機溶媒に溶解してなる第二溶液とを混合する。
【0100】
第一溶液と第二溶液との混合比率は、酸クロライド化合物及び第1級アミン化合物の種類、各溶液の濃度等によって適宜変更できるが、通常は酸クロライド化合物:第1級アミン化合物=1:0.5~2(モル比)、好ましくは1:0.5~1.5(モル比)となるような比率で混合することができる。
【0101】
混合工程で用いる第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の存在下には、第2級アミン化合物及び第3級アミン化合物以外の他の有機溶媒が含まれていてもよい。他の有機溶媒は、例えば第一溶液及び第二溶液で詳述したものが挙げられる。
【0102】
また、第2級アミン化合物及び第3級アミン化合物が固体である場合は、上記アセトン等の溶媒に溶解させた溶液を用いてもよい。また、固体を第一溶液又は第二溶液に直接溶解させてもよい。
【0103】
第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物は、第一溶液と第二溶液の混合直前に、第一溶液及び/又は第二溶液に加えることができるが、酸クロライドの反応性の低下を防ぎやすい観点から、第二溶液へ加えておくのが好ましい。つまり、第二溶液に、無機微粒子と第2級アミン及び/又は第3級アミン化合物とを添加し、次いで、第1溶液を添加し、混合することが好ましい。
【0104】
第2級アミン化合物及び/又は第3級アミン化合物の添加量は、用いる酸クロライド化合物及び第1級アミン化合物の種類、第一溶液及び第二溶液の濃度、得られる複合微粒子の所望の(平均)粒径等に応じて適宜設定すればよいが、通常は、第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物が有機溶媒の場合は、第一溶液又は第二溶液100mLに対して1~100mL程度が好ましく、1~50mL程度がより好ましい。第2級アミン化合物又は第3級アミン化合物が固体の場合は、第一溶液又は第二溶液100mLに対して、通常0.00002~0.01mol程度が好ましく、0.0001~0.005mol程度がより好ましい。
【0105】
混合工程では、特に、撹拌しながらポリアミド等の高分子化合物を析出させて複合微粒子を製造することが好ましい。撹拌は、公知の撹拌方法(撹拌装置)によって実施することができる。本発明では、超音波によって撹拌してもよいし、マグネチックスターラー等により常法で攪拌してもよい。超音波による撹拌によれば、高分子重合が促進され、反応時間を短縮できる。超音波による撹拌は、公知の超音波装置(例えば超音波洗浄器)及び操作条件をそのまま採用できる。超音波の周波数は、所望の(平均)粒径等に応じて適宜設定すればよく、通常は28~1000kHz程度、好ましくは28~100kHz程度とすることができる。
【0106】
混合工程における温度は、特に制限されず、通常0~100℃程度、好ましくは0~40℃程度とすることができる。混合溶液を冷却し、反応速度を小さくした方が、複合化していない高分子化合物の小片(無機微粒子上に被覆されていない高分子化合物の小片、屑等)等が生成しにくく、複合微粒子のみが得られやすいので、混合工程の温度は、室温(25℃)以下程度、特に0~20℃程度がさらに好ましい。なお、撹拌はポリアミドの析出が実質的に完了するまで行うことができる。
【0107】
混合工程で得られた複合微粒子は、遠心分離法等の公知の方法に従って固液分離して回収することができる。
【0108】
高分子化合物としてポリアミドイミド化合物を無機微粒子上に析出させようとする場合、酸クロライド化合物としてトリメリット酸クロライド等のポリアミドイミド合成で用いられているものを用い、混合工程で得られた微粒子に存在するカルボキシル基とアミド基を縮合してイミド化することができる。イミド化する方法は特に制限されないが、本発明では特に、(i)有機溶媒中に分散させ、加熱(通常130℃以上、好ましくは130~250℃程度の温度で加熱させることができる)してイミド化する方法(熱閉環)、(ii)有機溶媒中における化学反応によりイミド化する方法(化学閉環)、又は(iii)窒素雰囲気下、加熱(通常300℃以上、好ましくは350~450℃程度の温度で加熱させることができる)してイミド化する方法(熱閉環)を採用することができる。
【実施例0109】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例の態様に限定されない。
【0110】
なお、実施例における超音波撹拌は超音波洗浄器「三周波超音波洗浄器 VS-100 III」を用いた。
【0111】
本発明における各評価は、次のようにしてそれぞれ測定した。
【0112】
(1)形態
形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)(「SU8230」(株)日立製作所製)で観察した。
【0113】
(2)分離能
(染料)
紫外可視分光分析装置(日本分光製)を用い、吸着前と吸着後の水溶液の吸光度を測定した。得られたスペクトルのベースライン補正を行った後、554nmにおける吸光度を読み取り、水溶液の濃度とした。なお、吸着除去率は、次式を用い算出した。
吸着除去率(%)=(C0-C48H)/C0×100
C0:初期濃度(吸着前の溶液濃度)
C48H:48時間後の濃度(吸着後の溶液濃度)。
【0114】
(金属イオン)
誘導結合プラズマ発光分光分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)を用い、吸着前と吸着後の水溶液の金属イオン濃度を測定した。吸着除去率は、次式を用い算出した。
吸着除去率(%)=(C0-C24H)/C0×100
C0:初期濃度(吸着前の金属濃度)
C24H:24時間後の濃度(吸着後の金属イオン濃度)。
【0115】
実施例1:シリカ表面に直接ポリアミドを析出させた複合微粒子
第一溶液として、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.0005molをアセトンに溶解させた50mL溶液、第二溶液として3,5-ジアミノ安息香酸をアセトン及びジメチルアセトアミドの混合溶媒(組成比=6:4(体積比))に溶解させた50mL溶液を、それぞれ調製した。
【0116】
その後、第二溶液に、シリカ微粒子(平均粒径5μm)0.125g及びピリジン3mLを加え攪拌後、さらに第一溶液も混合して、周波数28kHzの超音波で30分間、さらに室温下マグネチックスターラーで24時間攪拌し、反応させた。
【0117】
生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた複合微粒子(図1)がシリカ微粒子(図2)と同様の形状を有していることを確認した。
【0118】
また、赤外分光分析により、シリカとともにポリアミドに由来するバンド、1000℃での熱処理(空気中)により、ポリアミドの被覆量が複合微粒子の全重量の3.6質量%であることを確認した。
【0119】
比較例1:シリカ
シリカ微粒子(平均粒径5μm)(図2)を、比較例1の微粒子とした。
【0120】
実施例2:シリカ表面に直接ポリアミドを析出させた複合微粒子
第一溶液として、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.0005molをアセトンに溶解させた50mL溶液、第二溶液としてm-フェニレンジアミンをアセトン及びジメチルアセトアミドの混合溶媒(組成比=6:4(体積比))に溶解させた50mL溶液を、それぞれ調製した。
【0121】
その後、第二溶液に、シリカ微粒子(平均粒径5μm)0.125g及びピリジン3mLを加え攪拌後、さらに第一溶液も混合して、周波数28kHzの超音波で30分間、さらに室温下マグネチックスターラーで24時間攪拌し、反応させた。
【0122】
生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた複合微粒子(図3)がシリカ微粒子(図2)と同様の形状を有していることを確認した。
【0123】
また、赤外分光分析により、シリカとともにポリアミドに由来するバンド、1000℃での熱処理(空気中)により、ポリアミドの被覆量が複合微粒子の全重量の4.3質量%であることを確認した。
【0124】
実施例3:シリカ表面に直接ポリエステルアミドを析出させた複合微粒子
第一溶液として、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.0005molをアセトンに溶解させた50mL溶液、第二溶液として4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニルをアセトン及びジメチルアセトアミドの混合溶媒(組成比=2:8(体積比))に溶解させた50mL溶液を、それぞれ調製した。
【0125】
その後、第二溶液に、シリカ微粒子(平均粒径5μm)0.125g及びピリジン3mLを加え攪拌後、さらに第一溶液も混合して、周波数28kHzの超音波で30分間、さらに室温下マグネチックスターラーで24時間攪拌し、反応させた。
【0126】
生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた複合微粒子(図4)がシリカ微粒子(図2)と同様の形状を有していることを確認した。
【0127】
また、赤外分光分析により、シリカとともにポリアミドに由来するバンド、1000℃での熱処理(空気中)により、ポリアミドの被覆量が複合微粒子の全重量の1.4質量%であることを確認した。
【0128】
実施例4:シリカ表面に直接ポリアミドを析出させた複合微粒子
第一溶液として、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.0005molをアセトンに溶解させた50mL溶液、第二溶液として3,5-ジアミノ安息香酸をアセトン及びジメチルアセトアミドの混合溶媒(組成比=6:4(体積比))に溶解させた50mL溶液を、それぞれ調製した。
【0129】
その後、第二溶液に、シリカ微粒子(平均粒径5μm)0.125gを加え攪拌後、さらに第一溶液も混合して、周波数28kHzの超音波で30分間、さらに室温下マグネチックスターラーで24時間攪拌し、反応させた。
【0130】
生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた複合微粒子(図5)がシリカ微粒子(図2)と同様の形状を有していることを確認した。
【0131】
また、赤外分光分析により、シリカとともにポリアミドに由来するバンド、1000℃での熱処理(空気中)により、ポリアミドの被覆量が複合微粒子の全重量の3.9質量%であることを確認した。
【0132】
実施例5:アルミナ表面に直接ポリアミドを析出させた複合微粒子
第一溶液として、1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド0.0005molをアセトンに溶解させた50mL溶液、第二溶液として3,5-ジアミノ安息香酸をアセトン及びジメチルアセトアミドの混合溶媒(組成比=6:4(体積比))に溶解させた50mL溶液を、それぞれ調製した。
【0133】
その後、第二溶液に、シリカ微粒子(平均粒径5μm)0.125g及びピリジン3mLを加え攪拌後、さらに第一溶液も混合して、周波数28kHzの超音波で30分間、さらに室温下マグネチックスターラーで24時間攪拌し、反応させた。
【0134】
生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、得られた複合微粒子(図6)がアルミナ微粒子(図7)と同様の形状を有していることを確認した。
【0135】
また、赤外分光分析により、アルミナとともにポリアミドに由来するバンド、1000℃での熱処理(空気中)により、ポリアミドの被覆量が複合微粒子の全重量の3.1質量%であることを確認した。
【0136】
比較例2:アルミナ
アルミナ微粒子(平均粒径100nm)(図7)を、比較例2の微粒子とした。
【0137】
試験例1:分離能(ローダミン6G)
3.5mg/Lのローダミン6G水溶液160mL(pH7)に、実施例1で得られた複合微粒子80mgを分散させ、48時間マグネチックスターラーで室温下攪拌した溶液について紫外可視分光分析を行った結果、ローダミン6Gの吸着除去率は99%であった。
【0138】
一方、未被覆のシリカ微粒子(比較例1)の吸着除去率は47%であり、顕著な被覆効果が認められた。
【0139】
試験例2:分離能(ローダミンB)
3.5mg/LのローダミンB水溶液160mL(pH7)に、実施例2で得られた複合微粒子80mgを分散させ、48時間マグネチックスターラーで室温下攪拌した溶液について紫外可視分光分析を行った結果、ローダミンBの吸着除去率は85%であった。
【0140】
一方、未被覆のシリカ微粒子(比較例1)の吸着除去率は15%であり、顕著な被覆効果が認められた。
【0141】
試験例3:分離能(ローダミンB)
3.5mg/LのローダミンB水溶液160mL(pH7)に、実施例3で得られた複合微粒子80mgを分散させ、48時間マグネチックスターラーで室温下攪拌した溶液について紫外可視分光分析を行った結果、ローダミンBの吸着除去率は77%であった。
【0142】
一方、未被覆のシリカ微粒子(比較例1)の吸着除去率は15%であり、顕著な被覆効果が認められた。
【0143】
試験例4:分離能(ローダミン6G)
3.5mg/Lのローダミン6G水溶液160mL(pH7)に、実施例4で得られた複合微粒子80mgを分散させ、48時間マグネチックスターラーで室温下攪拌した溶液について紫外可視分光分析を行った結果、ローダミン6Gの吸着除去率は100%であった。
【0144】
一方、未被覆のシリカ微粒子(比較例1)の吸着除去率は47%であり、顕著な被覆効果が認められた。
【0145】
試験例5:分離能(ローダミンB)
3.5mg/LのローダミンB水溶液160mL(pH7)に、実施例5で得られた複合微粒子80mgを分散させ、48時間マグネチックスターラーで室温下攪拌した溶液について紫外可視分光分析を行った結果、ローダミンBの吸着除去率は73%であった。
【0146】
一方、未被覆のアルミナ微粒子(比較例2)の吸着除去率は36%であり、顕著な被覆効果が認められた。
【0147】
試験例6:分離能(銅イオン)
10ppmの硝酸銅水溶液40mL(pH5.5)に、実施例1で得られた複合微粒子80mgを分散させ、24時間、30℃の恒温振盪水槽で攪拌した溶液について誘導結合プラズマ発光分光分析を行った結果、銅イオンの吸着除去率は19%であった。
【0148】
一方、未被覆のシリカ微粒子(比較例1)の吸着除去率は0%であり、顕著な被覆効果が認められた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7