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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148645
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20220929BHJP
   F16N 7/38 20060101ALI20220929BHJP
   F16N 21/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16C29/06
F16N7/38 A
F16N21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050400
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一弘
【テーマコード(参考)】
3J104
【Fターム(参考)】
3J104AA03
3J104AA23
3J104AA36
3J104AA65
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA77
3J104BA80
3J104CA01
3J104CA13
3J104CA24
3J104DA17
3J104EA01
3J104EA07
(57)【要約】
【課題】給油継手をスライダに接続する際に、給油継手の緩みや過剰な締め付けによる部品破損を防止しつつ、正確かつ簡単に給油継手を位置決め固定できる直動案内装置を提供する。
【解決手段】スライダは、スライダ本体30と、スライダ本体30の相対移動方向の端面35aに取り付けられたエンドキャップ50とを有する。スライダ本体30の端面35aには、潤滑油供給路40に接続された給油口43に底面41aで連通する座ぐり部41が形成されている。エンドキャップ50は、スライダ本体30の端面35aに対向する側面53aから突出して座ぐり部41に嵌入される樹脂製の嵌合突起部55を有する。嵌合突起部55は、嵌合突起部の軸線に沿って形成された貫通孔57が形成され、貫通孔57にスライダ本体30へ潤滑剤を供給する給油継手80が固定される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるレール側軌道面を有する案内レールと、
前記案内レールを跨いで設けられ、前記レール側軌道面とともに転動体転動路を構成するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動可能なスライダと、
前記転動体転動路内を、前記スライダの相対移動に伴って転動する複数の転動体と、
を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体の相対移動方向の端面に取り付けられたエンドキャップとを有し、
前記スライダ本体の内部には、前記転動体転動路に潤滑剤を送給する潤滑油供給路が形成され、
前記スライダ本体の前記端面には、前記潤滑油供給路に接続された給油口に底面で連通する座ぐり部が形成されており、
前記エンドキャップは、前記スライダ本体の前記端面に対向する側面から突出して前記座ぐり部に嵌入される樹脂製の嵌合突起部を有し、
前記嵌合突起部は、該嵌合突起部の軸線に沿って形成された貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記スライダ本体へ潤滑剤を供給する給油継手が固定される、
直動案内装置。
【請求項2】
前記給油継手は、前記嵌合突起部の前記貫通孔に挿入される軸部を有し、
前記軸部には雄ねじ部が形成され、前記貫通孔には前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されている請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記給油継手に形成される油路は、前記給油口との接続方向から屈曲するL字形に形成されている請求項1又は2に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直動テーブル等の直動体を、その移動方向に案内する直動案内装置が知られている。直動案内装置は、案内レールと、案内レールに沿って相対移動可能なスライダとを備えている。スライダは、案内レールの長手方向に直交する方向に跨設されており、スライダと案内レールには、相互の対向面に転動体転動溝がそれぞれ形成される。また、互いの転動体転動溝間には複数の転動体が介装され、転動体が転動体転動溝間を転動することでスライダが案内レール上を円滑にスライド可能になっている。
【0003】
直動案内装置は、スライダと案内レールの転動溝間を複数の転動体が無限循環して繰り返し転動するため、スライダのスムーズな動きを確保して、磨耗や異音の発生を防止する。このような動作を実現するために、スライダ及び案内レールの外部から潤滑剤が絶えず供給されるようになっている。
【0004】
特許文献1に記載の直動案内装置では、スライダ内に形成した油路に給油継手の軸部先端を挿入して、油路と給油継手とを接続し、給油継手を介して転動体転動溝等に給油している。給油継手の軸部外径には切欠部が設けられ、軸部先端がスライダの油路に挿入される。この状態で、スライダ上面の通し孔からねじ込まれた止めねじ先端を、給油継手の切欠部に係合させている。これにより、給油継手の取り付け及び位置決めするとともに、スライダからの給油継手の抜けを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-185564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の直動案内装置では、スライダ上面の通し孔に形成されたねじ部に螺合する止めねじを、その先端を給油継手の切欠部に係合させることで、スライダに給油継手を接続固定している。そのため、給油継手の切欠部がスライダのねじ部に一致するように給油継手の挿入位置を調整することや、止めねじの先端を給油継手の切欠部に係合させる作業が必要であり、組み付け作業が繁雑になるという問題があった。
【0007】
また、スライダの油路に雌ねじを形成し、給油継手の先端に形成した雄ねじを直接螺合して組み付ける構造の直動案内装置も知られている。この構成によれば、組み付け作業を簡単化できるが、潤滑剤を送給する給油用チューブなどを給油継手に接続するための接続口と、給油継手内の給油孔とがL字形に屈曲する給油継手の場合、給油継手の接続口の位相(向き)を合せるため、給油継手を回転させて調整する必要がある。
【0008】
しかし、金属製の給油継手を回転させて、金属製のスライダに締め付ける場合には、ねじ山が形成される位相のばらつきによって、給油継手を所望の回転位置(位相)で固定できないことがある。その際、給油継手を反時計回りに回転させて位相調整すると、スライダの雌ねじと給油継手の雄ねじとの締め付けが緩くなり、スライダの移動動作などによって、給油継手が動いてしまうおそれがある。逆に、給油継手をさらに時計回りに回転させて位相調整すると、スライダの雌ねじと給油継手の雄ねじの締め付けが過多となり、極端に強く締め付けた場合には、ねじ部が破損するおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、給油継手をスライダに接続する際に、給油継手の緩みや過剰な締め付けによる部品破損を防止しつつ、正確かつ簡単に給油継手を位置決め固定できる直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の構成からなる。
軸方向に延びるレール側軌道面を有する案内レールと、
前記案内レールを跨いで設けられ、前記レール側軌道面とともに転動体転動路を構成するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動可能なスライダと、
前記転動体転動路内を、前記スライダの相対移動に伴って転動する複数の転動体と、
を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体の相対移動方向の端面に取り付けられたエンドキャップとを有し、
前記スライダ本体の内部には、前記転動体転動路に潤滑剤を送給する潤滑油供給路が形成され、
前記スライダ本体の前記端面には、前記潤滑油供給路に接続された給油口に底面で連通する座ぐり部が形成されており、
前記エンドキャップは、前記スライダ本体の前記端面に対向する側面から突出して前記座ぐり部に嵌入される樹脂製の嵌合突起部を有し、
前記嵌合突起部は、該嵌合突起部の軸線に沿って形成された貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記スライダ本体へ潤滑剤を供給する給油継手が固定される、
直動案内装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、給油継手をスライダに接続する際に、給油継手の緩みや過剰な締め付けによる部品破損を防止しつつ、正確かつ簡単に給油継手を位置決め固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る直動案内装置の一実施形態の斜視図である。
図2図1に示す直動案内装置の平面図である。
図3図1に示す直動案内装置の要部分解斜視図である。
図4図1に示す直動案内装置の上面の一部を切除した上面模式図である。
図5】エンドキャップの図3に示すV方向の矢視図である。
図6】エンドキャップの図5に示すVI-VI線の断面図である。
図7】給油継手の平面図である。
図8】スライダの給油継手の接続部分を示す概略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る直動案内装置の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は直動案内装置の一実施形態の斜視図、図2図1に示す直動案内装置の平面図、図3図1に示す直動案内装置の要部分解斜視図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、直動案内装置100は、一方向に延びる案内レール20と、案内レール20を跨ぐように組み付けられ、案内レール20に対して軸方向に沿って前後に移動可能な、断面が略C字状のスライダ10と、を備える。
【0015】
本願明細書において、軸方向(前後方向とも言う)とは、スライダ10が案内レール20に沿って移動する方向(図2の上下方向)を表し、左右方向とは、案内レール20に取り付けられたスライダ10の幅方向(図2の左右方向)を表す。また、本願明細書では、案内レール20が取り付けられる被取付面が下側になるように表しており、下方、下面とは、被取付面側を表し、上方、上面とは、その反対側を表す。
【0016】
案内レール20は金属製で、その左右側面21には、レール側転動溝(レール側軌道面)23が案内レール20の軸方向に沿って形成されている。
【0017】
スライダ10は、案内レール20の左右両側に袖部32(図3参照)を有するスライダ本体30と、スライダ本体30の前後方向(移動方向)の一端と他端に装着された一対のエンドキャップ50、50Aと、案内レール20とエンドキャップ50、50Aとの間の隙間をシールする一対のサイドシール70、70Aとを備える。また、スライダ本体30には、スライダ本体30の内部に潤滑剤(例えば、潤滑油)を給油するための給油継手80が取り付けられる。
【0018】
図3に示すように、スライダ本体30の各袖部32は、案内レール20のレール側転動溝23と対向する2条のスライダ側転動溝(スライダ側軌道面)31と、転動体戻し路33とを有する。スライダ側転動溝31は、スライダ本体30の袖部32の内側面に形成され、レール側転動溝23(図1参照)と対向して、レール側転動溝23とスライダ側転動溝31により後述する負荷転動路35が構成される。転動体戻し路33は、袖部32の肉厚部分を案内レール20の軸方向に貫通している。
【0019】
スライダ本体30の前後両端にそれぞれ接合されるエンドキャップ50,50Aは、スライダ本体30と同様に横断面が略C字状をなす。
【0020】
図4図1に示す直動案内装置の上面の一部を切除した上面模式図、図5はエンドキャップ50の図3に示すV方向の矢視図である。
図3に示すエンドキャップ50の左右方向の一対の袖部51には、スライダ本体30の端面35aに当接する内側面53a側に、半円盤状凹部56が上下2段に形成されている。また、図5に示すように、エンドキャップ50の上下2段の半円盤状凹部56の中央部を横断する位置には、半円柱状凹溝58が形成されている。この半円柱状凹溝58には、図4に示す半円柱状のリターンガイド34が嵌合され、半円盤状凹部56とリターンガイド34とにより、半ドーナツ状の方向転換路37が形成される。
【0021】
方向転換路37は負荷転動路35と転動体戻し路33とを連通させるものであり、負荷転動路35、転動体戻し路33及び方向転換路37によって、転動体転動路39が構成される。転動体転動路39内には、転動体としての鋼製の複数の玉36が装填されており、これら複数の玉36は、スライダ10の相対移動に伴って、転動体転動路39内を転動しながら無限循環する。
【0022】
なお、エンドキャップ50は、その全体、又は少なくとも後述する嵌合突起部55(図6参照)が合成樹脂材の射出成形品で構成されている。
【0023】
図2図3に示すように、スライダ本体30の内部には、外部から転動体転動路39に潤滑油を供給するための潤滑油供給路40が形成されている。潤滑油供給路40の油導入側となる一端は、スライダ本体30の一方の端面35aから凹んで形成された座ぐり部41の底面41aに開口する給油口43に接続される。潤滑油供給路40の油排出側となる他端は、スライダ側軌道面31,31等の各転がり接触部に開口する。座ぐり部41は、軸方向断面が円形であり、後述するエンドキャップ50の嵌合突起部55が嵌挿される。
【0024】
これにより、座ぐり部41側(油導入側)から供給された潤滑油は、給油口43、潤滑油供給路40を通じて、転動体転動路39を循環して転動する玉36等に供給され、スライダ本体30のスムーズな動きを確保すると共に、磨耗や異音の発生を防止する。
【0025】
図6はエンドキャップ50の図5に示すVI-VI線の断面図である。
エンドキャップ50は、図3に示すスライダ本体30の端面35aに対向する内側面53aに、スライダ本体30の座ぐり部41に対応する円筒形状の嵌合突起部55が、内側面53aから突出して形成されている。嵌合突起部55は、座ぐり部41の内径と同じか、しまり嵌め可能な僅かに大きい外径を有することが好ましい。また、嵌合突起部55は、潤滑油漏れが生じない程度に、座ぐり部41の内径よりも僅かに小さな外径であってもよい。なお、図示は省略するが、座ぐり部41と嵌合突起部55とは、Oリング等のオイルシールを適宜な位置に設けて、より確実に潤滑油漏れを防止する構成にしてもよい。
【0026】
嵌合突起部55は、その軸線に沿って形成されて、嵌合突起部55の先端に開口する貫通孔57を備える。貫通孔57には雌ねじ部59が形成されている。エンドキャップ50は、図3に示すように、サイドシール70と共に、貫通孔61,71に挿通された取付ネジ63により、スライダ本体30の端面35aに固定される。スライダ本体30に固定された状態で、嵌合突起部55の先端と座ぐり部41の底面41aとの間には、僅かな隙間が存在する。なお、スライダ本体30の他方の端面35bに固定されるエンドキャップ50A側からの給油が必要ない場合は、エンドキャップ50Aには、上記した嵌合突起部55、貫通孔57、雌ねじ部59は不要となる。
【0027】
サイドシール70は、エンドキャップ50の外形に合わせた略C字形状の部材であり、エンドキャップ50の外側面53bに取り付けられる。サイドシール70は、案内レール20とスライダ本体30との間の隙間の開口のうち、軸方向端面側に面する部分を密封する。サイドシール70には、取付ネジ63を挿通させる一対の貫通孔71と、貫通孔71同士の間における、エンドキャップ50の貫通孔57(雌ねじ部59)に対応する位置に、給油継手80を挿通させる貫通孔73とが形成されている。
【0028】
図7は給油継手80の平面図である。
給油継手80は、外部からスライダ本体30に給油するための継手であり、管状の軸部81と、軸部81の基端に接続される継手部83とを備える。軸部81及び継手部83に形成された油路85,87は、互いの流路がL字形に屈曲して接続されている。油路85は、軸部81の内部を、軸部81の軸方向に貫通している。油路87は、継手部83の内部に、軸部81の径方向に沿って形成されており、油路85の端部に連通している。軸部81の外周には雄ねじ部89が形成されており、この雄ねじ部89は、樹脂製の嵌合突起部55の雌ねじ部59に螺合する。継手部83には、潤滑油を供給する給油用チューブが接続される。
【0029】
ここで、スライダ10の組み付けと、給油継手80の取り付けの手順を説明する。
図8はスライダ10の給油継手80の接続部分を示す概略拡大断面図である。
まず、図3も参照して、スライダ本体30の一方の端面35aに形成された座ぐり部41に、エンドキャップ50の嵌合突起部55を嵌挿させ、さらにエンドキャップ50の外側面53bにサイドシール70を配置して、取付ネジ63でエンドキャップ50及びサイドシール70をスライダ本体30に固定する。
【0030】
そして、サイドシール70の貫通孔73を通じて、給油継手80の軸部81をエンドキャップ50の貫通孔57に挿入して、軸部81の雄ねじ部89と、エンドキャップ50の貫通孔57に形成された雌ねじ部59とを螺合させる。このとき、エンドキャップ50の外側面53bに給油継手80の継手部83を当接させて組み付ける。
【0031】
次いで、図示しない潤滑油ポンプに接続された給油用チューブ91の先端を、連結管88を介して継手部83に連結する。このようにして、潤滑油ポンプから送給される潤滑油を潤滑油供給路40に供給可能に給油継手80をスライダ本体30に接続する。なお、組み付け手順はこれに限らず、例えば、エンドキャップ50をスライダ本体30にねじ止めする前に、給油継手80を、エンドキャップ50の貫通孔57に予め固定しておいてもよい。
【0032】
ここで、給油継手80をエンドキャップ50に取り付ける際、給油継手80の継手部83の位相(給油用チューブ91の導出方向)を合せるため、給油継手80を回転させて調整することが求められる。
一般的な直動案内装置では、エンドキャップ50は金属製であり、給油継手80もまた金属製である。そのため、金属製のエンドキャップと金属製の給油継手80とを、ねじ接合する場合には、ねじの締め付け完了位置、すなわち、給油継手80の回転位置を自由に選べない。つまり、給油継手80に接続される給油用チューブ91の導出方向に制限がある。しかし、本構成においては、エンドキャップ50側の接合部位が樹脂製であるため、金属製の給油継手80の軸部81の雄ねじ部89をエンドキャップ50の貫通孔57の雌ねじ部59に螺合させる際に、樹脂材の弾性や僅かな変形によって、ねじの締め付け完了位置(回転位置)をある程度調整できる。
【0033】
つまり、通常の締め付け動作で、給油継手80をエンドキャップ50に一旦締め付けた際、その締め付け完了した回転位置(位相)では、給油継手80に接続された給油用チューブ91の導出方向が、周囲部材との干渉を生じやすい回転位置である場合がある。その場合に、給油継手80を更に時計方向へ回転させて(更に締め付けて)、給油用チューブ91の干渉が生じにくい適正な回転位置に変更できる。樹脂材から成る給油継手80は、追加された回転(更なる締め付け)による変形を、弾性変形により吸収(許容)している。
【0034】
その結果、給油継手80に接続される給油用チューブ91の導出方向を、周囲部材との干渉が少ない適正な方向に簡単に調整できる。また、給油継手80の追加回転によって、給油継手80とエンドキャップ50とが摩擦によって強固に固定され、スライダ10とレール20との相対移動時に給油継手80の緩みが生じにくくなる。
【0035】
そして、エンドキャップ50は、スライダ本体30の座ぐり部41に樹脂製の嵌合突起部55を嵌挿するだけで、スライダ本体30との位置決めを簡単かつ正確に行える。嵌合突起部55が樹脂製であるため、座ぐり部41と嵌合突起部55とが、しまり嵌めである場合でも、金属同士の嵌め合いの場合と比較して簡単に挿入でき、組立性、施工性を向上できる。また、メンテナンス時の分解作業も簡単に行える。
【0036】
以上より、本構成によれば、スライダ本体30に給油継手80を接続する際に、樹脂製のエンドキャップ50の嵌合突起部55と、スライダ本体30の座ぐり部41とを嵌合させて、双方を簡単かつ正確に位置決めできる。また、給油継手80の軸部81をエンドキャップ50の貫通孔57にねじによって締結する場合に、給油継手80の締め付け後の最終的な回転位置が調整可能となる。そのため、給油用チューブ91を適正な方向に導出させることができる。
【0037】
そして、図8に示すように、給油用チューブ91を給油継手80の軸部81に対して交差する方向へ導出することで、スライダ本体30から突出する給油継手80の実質的な突出長さを短縮でき、スライダ10をよりコンパクトな形状にできる。その結果、直動案内装置100のストロークが延長でき、適用範囲の拡大と汎用性の向上が図れる。
【0038】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0039】
例えば、エンドキャップ50の嵌合突起部55の外周面と、スライダ本体30の座ぐり部41の内周面とに、スプラインやセレーションによる凹凸溝を設けてもよい。その場合、エンドキャップ50を、嵌合突起部55の軸線周りに回転するのを阻止して、より正確な位置決めが行える。また、エンドキャップ50の側面35aと、スライダ本体30の端面35aの一部に、互いに嵌合する凹凸部を設けてもよい。その場合でも、嵌合突起部55の軸線周りの回転を阻止した位置決めが可能となる。
【0040】
なお、上記では転動体が玉である直動案内装置を例示しているが、これに限らず、転動体がころである直動案内装置であってもよい。
【0041】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 軸方向に延びるレール側軌道面を有する案内レールと、
前記案内レールを跨いで設けられ、前記レール側軌道面とともに転動体転動路を構成するスライダ側軌道面を有し、前記案内レールに対して軸方向に相対移動可能なスライダと、
前記転動体転動路内を、前記スライダの相対移動に伴って転動する複数の転動体と、
を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、スライダ本体と、前記スライダ本体の相対移動方向の端面に取り付けられたエンドキャップとを有し、
前記スライダ本体の内部には、前記転動体転動路に潤滑剤を送給する潤滑油供給路が形成され、
前記スライダ本体の前記端面には、前記潤滑油供給路に接続された給油口に底面で連通する座ぐり部が形成されており、
前記エンドキャップは、前記スライダ本体の前記端面に対向する側面から突出して前記座ぐり部に嵌入される樹脂製の嵌合突起部を有し、
前記嵌合突起部は、該嵌合突起部の軸線に沿って形成された貫通孔が形成され、前記貫通孔に前記スライダ本体へ潤滑剤を供給する給油継手が固定される、
直動案内装置。
この直動案内装置によれば、給油継手が接続されるエンドキャップの樹脂製の嵌合突起部を、スライダ本体に形成された座ぐり部に嵌入することで、エンドキャップをスライダ本体に簡単かつ正確に位置決めできる。また、給油継手がエンドキャップに固定されることで、給油継手をエンドキャップとともに簡単にスライダ本体に接続できる。
【0042】
(2) 前記給油継手は、前記嵌合突起部の前記貫通孔に挿入される軸部を有し、
前記軸部には雄ねじ部が形成され、前記貫通孔には前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されている(1)に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、エンドキャップが樹脂製であるため、給油継手の軸部の雄ねじ部をエンドキャップの貫通孔の雌ねじ部に螺合させる際に、樹脂材の弾性や僅かな変形によって、ねじの締め付け完了位置を調整できる。これにより、給油継手をエンドキャップに一旦締め付けた後で、更に給油継手を適正な固定位置まで回転させることができる。
【0043】
(3) 前記給油継手に形成される油路は、前記給油口との接続方向から屈曲するL字形に形成されている(1)又は(2)に記載の直動案内装置。
この直動案内装置によれば、給油継手の油路に接続される給油用チューブ等の向きを、適切な方向に調整できる。また、給油継手の実質的な長さを短縮でき、スライダをコンパクトにできる。
【符号の説明】
【0044】
10 スライダ
20 案内レール
23 レール側軌道面
30 スライダ本体
31 スライダ側軌道面
35a,35b 端面
40 潤滑油供給路
41 座ぐり部
41a 底面
43 給油口
50,50A エンドキャップ
53a 内側面(スライダ本体の端面に対向する側面)
55 嵌合突起部
57 貫通孔
59 雌ねじ部
80 給油継手
85,87 油路
89 雄ねじ部
100 直動案内装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8