(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148668
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ハニカム構造体、ならびに該ハニカム構造体を用いた電気加熱式担体および排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
C04B 41/87 20060101AFI20220929BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220929BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220929BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20220929BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220929BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20220929BHJP
C04B 35/577 20060101ALI20220929BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20220929BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B41/87 C
F01N3/20 K
F01N3/28 301P
B01J32/00 ZAB
B01J35/04 301F
B01J27/224 A
C04B35/577
C04B38/00 303Z
B01D53/86 222
B01D53/86 245
B01D53/86 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050434
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】保浦 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 崇行
(72)【発明者】
【氏名】野呂 貴志
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G019
4G169
【Fターム(参考)】
3G091BA03
3G091CA03
3G091GA06
3G091GB13Z
3G091GB17X
4D148AA06
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4G169EA19
4G169EA26
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC06Y
4G169EC22X
4G169ED10
4G169EE03
(57)【要約】
【課題】低抵抗な領域で抵抗の調整が可能である電極部を有するハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態によるハニカム構造体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びて流路を形成する複数のセルを規定する隔壁と、を有するハニカム構造部と;ハニカム構造部の外周壁の外周面上に配設された一対の電極部と;を備える。電極部は、炭化珪素の粒子が結合材により結合された多孔体で構成されている。炭化珪素は、α型炭化珪素とβ型炭化珪素とを含む。炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD50は25μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、該外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びて流路を形成する複数のセルを規定する隔壁と、を有するハニカム構造部と、
該ハニカム構造部の外周壁の外周面上に配設された一対の電極部と、を備え、
該電極部が、炭化珪素の粒子が結合材により結合された多孔体で構成されており、
該炭化珪素が、α型炭化珪素とβ型炭化珪素とを含み、
該炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD50が25μm以下である、
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記α型炭化珪素のD50が10μm~45μmであり、前記β型炭化珪素のD50が10μm~45μmである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記炭化珪素における前記α型炭化珪素の含有量が5質量%~95質量%である、請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記電極部の体積抵抗率が0.01Ω・cm~2.0Ω・cmである、請求項1から3のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記結合材が金属珪素および/または金属珪化物を含む、請求項1から4のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のハニカム構造体と;
該ハニカム構造体の前記一対の電極部上に設けられた一対の金属端子と;
を備える、電気加熱式担体。
【請求項7】
前記ハニカム構造体の電極部と前記金属端子との間に設けられた下地層をさらに備える、請求項6に記載の電気加熱式担体。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電気加熱式担体と;
該電気加熱式担体を保持する缶体と;
を備える、排気ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体、ならびに該ハニカム構造体を用いた電気加熱式担体および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排ガス浄化性能の低下を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、導電性セラミックで構成されたハニカム構造体に電極を配設し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることにより、ハニカム構造体に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温するものである。
【0003】
EHCに用いられるハニカム構造体としては、例えば、ハニカム構造部と当該ハニカム構造部に設けられた電極部(ペースト電極)とを有するハニカム構造体が知られている。EHCの技術分野においては、所定の体積抵抗率を有するハニカム構造部を均一に通電するために、ペースト電極の抵抗調整について種々の検討がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5883795号
【特許文献2】国際公開第2020/246004号
【特許文献3】特許第6364374号
【特許文献4】特許第6778644号
【特許文献5】特許第5965862号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主たる目的は、低抵抗な領域で抵抗の調整が可能である電極部を有するハニカム構造体を提供することにある。本発明のさらなる目的は、このようなハニカム構造体を用いた電気加熱式担体および排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態によるハニカム構造体は、外周壁と、該外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びて流路を形成する複数のセルを規定する隔壁と、を有するハニカム構造部と;該ハニカム構造部の外周壁の外周面上に配設された一対の電極部と;を備える。該電極部は、炭化珪素の粒子が結合材により結合された多孔体で構成されている。該炭化珪素は、α型炭化珪素とβ型炭化珪素とを含む。該炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD50は25μm以下である。
1つの実施形態においては、上記α型炭化珪素のD50は10μm~45μmであり、上記β型炭化珪素のD50は10μm~45μmである。
1つの実施形態においては、上記炭化珪素における上記α型炭化珪素の含有量は5質量%~95質量%である。
1つの実施形態においては、上記電極部の体積抵抗率は0.01Ω・cm~2.0Ω・cmである。
1つの実施形態においては、上記結合材は金属珪素および/または金属珪化物を含む。
本発明の別の局面によれば、電気加熱式担体が提供される。当該電気加熱式担体は、上記のハニカム構造体と、該ハニカム構造体の上記一対の電極部上に設けられた一対の金属端子と、を有する。
1つの実施形態においては、上記電気加熱式担体は、上記ハニカム構造体の電極部と上記金属端子との間に設けられた下地層をさらに備える。
本発明のさらに別の局面によれば、排気ガス処理装置が提供される。当該排気ガス処理装置は、上記の電気加熱式担体と;該電気加熱式担体を保持する缶体と;を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、低抵抗な領域で抵抗の調整が可能である電極部を有するハニカム構造体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるハニカム構造体の概略斜視図である。
【
図2】
図1のハニカム構造体の排ガスの流路方向に平行な方向の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.ハニカム構造体
A-1.ハニカム構造体の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態によるハニカム構造体の概略斜視図であり、
図2は、
図1のハニカム構造体の排ガスの流路方向に平行な方向の概略断面図である。図示例のハニカム構造体200は、ハニカム構造部100と、ハニカム構造部100の側面に配設された一対の電極部120、120と、を備える。ハニカム構造部100は、外周壁40と、外周壁40の内側に配設され、第1端面10aから第2端面10bまで延びて流路を形成する複数のセル20を規定する隔壁30と、を有する。なお、
図2において、流体は、紙面の左右のいずれの方向にも流れることができる。流体としては、目的に応じた任意の適切な液体または気体が挙げられる。例えば、ハニカム構造体が後述する電気加熱式担体に用いられる場合には、流体は好ましくは排ガスである。
【0011】
電極部は、例えば、ハニカム構造部の外周壁の外周面上に配設されている。図示例においては、電極部120、120は、ハニカム構造部100の中心軸を挟んで(代表的には、中心軸に対して対称な位置で)、外周壁40の外周面上に配設されている。電極部120、120は、代表的にはハニカム構造部の流路方向に沿って延びる帯状に配設されており、例えば図示例のように、ハニカム構造部の流路方向全域にわたって(すなわち、第1端面10aから第2端面10bまで)配設されている。このような構成であれば、ハニカム構造部を均一に発熱させることができる。電極部120、120のそれぞれの幅は、ハニカム構造部の流路方向に直交する方向の断面における中心角(中心軸とそれぞれの電極部の両端部とを結ぶ線とにより規定される角度)が例えば15°~65°、また例えば30°~60°となるような幅である。このような構成であれば、流路方向の長さを上記のように設定する効果との相乗的な効果により、ハニカム構造部をより均一に発熱させることができる。
【0012】
本発明の実施形態においては、電極部120、120は、炭化珪素の粒子が結合材により結合された多孔体で構成されている。さらに、炭化珪素はα型炭化珪素とβ型炭化珪素とを含み、炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD50は25μm以下である。
【0013】
A-2.ハニカム構造部
ハニカム構造部の形状は目的に応じて適切に設計され得る。図示例のハニカム構造部100は円柱状(セルの延びる方向に直交する方向の断面形状が円形)であるが、ハニカム構造部は、断面形状が例えば楕円形または多角形(例えば、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)の柱状であってもよい。ハニカム構造部の長さは、目的に応じて適切に設定され得る。ハニカム構造部の長さは、例えば5mm~250mmであり得、また例えば10mm~150mmであり得、また例えば20mm~100mmであり得る。ハニカム構造部の直径は、目的に応じて適切に設定され得る。ハニカム構造部の直径は、例えば20mm~200mmであり得、また例えば30mm~100mmであり得る。なお、ハニカム構造部の断面形状が円形でない場合には、ハニカム構造部の断面形状(例えば、多角形)に内接する最大内接円の直径をハニカム構造部の直径とすることができる。
【0014】
隔壁30および外周壁40は、代表的には、炭化珪素および珪素(以下、炭化珪素-珪素複合材と称する場合がある)を含有するセラミックスで構成されている。セラミックスは、炭化珪素および珪素を合計で例えば90質量%以上、また例えば95質量%以上含有する。このような構成であれば、ハニカム構造部の25℃における体積抵抗率を所定の範囲とすることができる。ハニカム構造部の体積抵抗率は、好ましくは0.1Ω・cm~200Ω・cmであり、より好ましくは1.0Ω・cm~200Ω・cmである。本発明の実施形態によれば、電極部を後述するような所定の構成とすることにより、このような体積抵抗率を有するハニカム構造部を均一に通電することができる。セラミックスには、炭化珪素-珪素複合材以外の物質が含まれていてもよい。このような物質としては、例えばストロンチウムが挙げられる。
【0015】
炭化珪素-珪素複合材は、代表的には、骨材としての炭化珪素粒子と、炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素と、を含む。炭化珪素-珪素複合材は、例えば、複数の炭化珪素粒子が炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして珪素により結合されている。すなわち、炭化珪素-珪素複合材を含む隔壁30および外周壁40は、例えば多孔体であり得る。
【0016】
炭化珪素-珪素複合材における珪素の含有比率は、好ましくは10質量%~40質量%であり、より好ましくは15質量%~35質量%である。珪素の含有比率が小さすぎると、ハニカム構造部(結果として、ハニカム構造体)の強度が不十分となる場合がある。珪素の含有比率が大きすぎると、ハニカム構造部の焼成時に形状を保持できない場合がある。
【0017】
炭化珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは3μm~50μmであり、より好ましくは3μm~40μmであり、さらに好ましくは10μm~35μmである。炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であれば、ハニカム構造部の体積抵抗率を上記のような適切な範囲とすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が大きすぎると、ハニカム構造部の前駆体であるハニカム成形体を成形する際に、成形用の口金に原料が詰まってしまう場合がある。炭化珪素粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0018】
隔壁30および外周壁40の平均細孔径は、好ましくは2μm~20μmであり、より好ましくは2μm~15μmであり、さらに好ましくは4μm~8μmである。隔壁の平均細孔径がこのような範囲であれば、体積抵抗率を上記の適切な範囲とすることができる。平均細孔径は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0019】
隔壁30および外周壁40の気孔率は、好ましくは15%~60%であり、より好ましくは30%~45%である。気孔率が小さすぎると、ハニカム構造部の焼成時の変形が大きくなってしまう場合がある。気孔率が大きすぎると、ハニカム構造部の強度が不十分となる場合がある。気孔率は、例えば水銀ポロシメータにより測定され得る。
【0020】
隔壁30の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁30の厚みは、例えば50μm~0.3mmであり、また例えば150μm~250μmであり得る。隔壁の厚みがこのような範囲であれば、ハニカム構造部(結果として、ハニカム構造体)の機械的強度を十分なものとすることができ、かつ、開口面積(断面におけるセルの総面積)を十分なものとすることができ、ハニカム構造体を触媒担体として用いた場合に排ガスを流した時の圧力損失を抑制することができる。
【0021】
隔壁30の密度は、目的に応じて適切に設定され得る。隔壁30の密度は、例えば0.5g/cm3~5.0g/cm3であり得る。隔壁の密度がこのような範囲であれば、ハニカム構造部(結果として、ハニカム構造体)を軽量化することができ、かつ、機械的強度を十分なものとすることができる。密度は、例えばアルキメデス法により測定され得る。
【0022】
外周壁40の厚みは、1つの実施形態においては、隔壁30の厚みより大きい。このような構成であれば、外力(例えば、外部からの衝撃、排ガスと外部との温度差による熱応力)による外周壁の破壊、割れ、クラック等を抑制することができる。外周壁40の厚みは、例えば0.05mm以上であり、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁を厚くしすぎると熱容量が増加し、外周壁の内周側と内周側の隔壁との間で温度差が大きくなり、耐熱衝撃性が低下することから、外周壁の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、さらに好ましくは0.5mm以下である。
【0023】
セル20は、セルの延びる方向に直交する方向において、任意の適切な断面形状を有する。図示例においては、セルを規定する隔壁30が互いに直交し、外周壁40と接する部分を除いて四角形(図示例では正方形)の断面形状を有するセル20が規定される。セル20の断面形状は、正方形以外に、三角形、五角形、六角形以上の多角形などの形状としてもよい。セルの断面形状は、好ましくは四角形または六角形である。このような構成であれば、排ガスを流したときの圧力損失が小さく、浄化性能が優れるという利点がある。
【0024】
セル20の延びる方向に直交する方向におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル20の数)は、目的に応じて適切に設定され得る。セル密度は、好ましくは40セル/cm2~150セル/cm2であり、より好ましくは50セル/cm2~150セル/cm2であり、さらに好ましくは70セル/cm2~100セル/cm2である。セル密度がこのような範囲であれば、ハニカム構造部の強度および有効GSA(幾何学的表面積、すなわち、触媒担持面積)を十分に確保するとともに、排ガスを流した際の圧力損失を抑制することができる。
【0025】
A-3.電極部
電極部は、上記のとおり、炭化珪素の粒子が結合材により結合された多孔体で構成されている。結合材の代表例としては、金属珪素、金属珪化物が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。金属珪化物を構成する金属としては、例えば、ニッケル、ジルコニウム、およびその組み合わせが挙げられる。電極部においては、例えば、複数の炭化珪素粒子が炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして結合材により結合されている。電極部における炭化珪素の含有量は、好ましくは50質量%~90質量%であり、より好ましくは60質量%~80質量%であり、さらに好ましくは65質量%~75質量%である。電極部における結合材の含有量は、好ましくは10質量%~50質量%であり、より好ましくは20質量%~40質量%である。炭化珪素および結合材の含有量がこのような範囲であれば、十分なSiC結合強度を得ることができる。結合材(代表的には、金属珪素)が過剰となると、製造上、構造内に結合材(代表的には、金属珪素)を維持できない可能性がある。
【0026】
本発明の実施形態においては、炭化珪素はα型炭化珪素(以下、α-SiCと称する場合がある)とβ型炭化珪素(以下、β-SiCと称する場合がある)とを含む。電極部にα-SiCとβ-SiCとを組み合わせて用いることにより、低抵抗な領域で抵抗の調整が可能な電極部を形成することができる。α-SiCのみでは、低抵抗の電極部を実現できない場合がある。β-SiCのみでは、抵抗が低くなり過ぎてしまい、電極部において局所的に過剰な電流が流れるおそれがある。炭化珪素におけるα-SiCの含有量は、好ましくは5質量%~95質量%である。α-SiCの含有量は、例えば5質量%~30質量%であってもよく、また例えば5質量%~15質量%であってもよく、また例えば10質量%~50質量%であってもよく、また例えば10質量%~30質量%であってもよく、また例えば20質量%~80質量%であってもよく、また例えば30質量%~70質量%であってもよく、また例えば30質量%~50質量%であってもよく、また例えば50質量%~70質量%であってもよく、また例えば70質量%~95質量%であってもよく、また例えば85質量%~95質量%であってもよい。炭化珪素におけるα-SiCの含有量がこのような範囲であれば、上記の効果がより顕著なものとなる。なお、本明細書において「SiC」という表記は、純粋なSiCのみならず、不可避の不純物を含むSiCも包含することを意図している。
【0027】
本発明の実施形態においては、炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD50は、上記のとおり25μm以下であり、好ましくは5μm~25μmであり、より好ましくは10μm~25μmであり、さらに好ましくは10μm~20μmである。炭化珪素のD50がこのような範囲であれば、後述の電気加熱式担体において電極部と金属端子との間に下地層(例えば、溶射下地層)が形成される場合に、下地層との良好な連続性を確保することができる。なお、炭化珪素のD50は、例えば20μm以下であってもよく、また例えば18μm以下であってもよく、また例えば15μm以下であってもよい。
【0028】
炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD10は、好ましくは3μm~20μmであり、より好ましくは5μm~15μmである。炭化珪素の体積基準の累積粒度分布におけるD90は、好ましくは15μm~65μmであり、より好ましくは15μm~55μmである。
【0029】
α-SiCのD50は、好ましくは10μm~45μmである。α-SiCのD50は、例えば10μm~18μmであってもよく、また例えば10μm~15μmであってもよく、また例えば25μm~45μmであってもよく、また例えば30μm~45μmであってもよい。α-SiCのD50がこのような範囲であれば、さらに適切な低抵抗領域で抵抗の調整が可能であり、かつ、調整した抵抗値をさらに安定して維持し得る電極部を形成することができる。さらに、後述の電気加熱式担体において電極部と金属端子との間に下地層(例えば、溶射下地層)が形成される場合に、下地層との良好な連続性を確保することができる。β-SiCのD50は、好ましくは10μm~45μmであり、より好ましくは18μm~25μmである。
【0030】
α-SiCのD10は、好ましくは3μm~30μmであり、より好ましくは5μm~20μmである。また、α-SiCのD90は、好ましくは10μm~90μmであり、より好ましくは15μm~80μm、さらに好ましくは15μm~60μmである。β-SiCのD10は、好ましくは3μm~30μmであり、より好ましくは5μm~20μmである。α-SiCのD90は、好ましくは10μm~90μmであり、より好ましくは15μm~65μmであり、より好ましくは20μm~65μmである。α-SiCのD10、D50およびD90、ならびに、β-SiCのD10、D50およびD90は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0031】
電極部の体積抵抗率は、好ましくは0.01Ω・cm~2.0Ω・cmであり、より好ましくは0.05Ω・cm~1.8Ω・cmであり、さらに好ましくは0.07Ω・cm~1.6Ω・cmであり、特に好ましくは0.07Ω・cm~1.2Ω・cmである。電極部にα-SiCとβ-SiCとを組み合わせて用いることにより、このような低抵抗な領域で抵抗の調整が可能であり、かつ、調整した抵抗値を安定して維持することができる。特に、本発明の実施形態によれば、ハニカム構造部の体積抵抗率が変動した場合でも、電極部の体積抵抗率を0.07Ω・cm~1.2Ω・cmの範囲に制御することで、通電加熱時に良好な発熱分布を実現することができる。なお、電極部の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値である。
【0032】
電極部の気孔率は、好ましくは15%~60%であり、より好ましくは18%~50%であり、さらに好ましくは19%~40%である。気孔率は、例えば、電極部の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した画像から画像処理ソフトを用いて求めることができる。
【0033】
電極部の厚みは、好ましくは50μm~300μmであり、より好ましくは100μm~200μmであり、さらに好ましくは100μm~150μmである。電極部の厚みがこのような範囲であれば、ハニカム構造部を均一に発熱させることができ、および、良好な耐熱衝撃性を有する電極部を形成することができる。電極部の厚みが薄すぎると、ハニカム構造部を均一に発熱させることが困難となる場合がある。電極部の厚みが厚すぎると、電極部の耐熱衝撃性が不十分となる場合がある。
【0034】
A-4.ハニカム構造体の製造方法
ハニカム構造体は、任意の適切な方法により製造され得る。以下、代表例について説明する。
【0035】
まず、炭化珪素粉末に、金属珪素粉末、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加してハニカム構造部成形原料(以下、単に成形原料と称する場合がある)を調製する。金属珪素粉末は、上記A-2項に記載のとおり、炭化珪素粉末の質量と金属珪素粉末の質量との合計に対して好ましくは10質量%~40質量%となるように配合され得る。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、上記A-2項に記載のとおり、好ましくは3μm~50μmである。金属珪素粉末における金属珪素粒子の平均粒子径は、好ましくは2μm~35μmである。金属珪素粒子の平均粒子径が小さすぎると、得られるハニカム構造部の体積抵抗率が過度に小さくなる場合がある。金属珪素粒子の平均粒子径が大きすぎると、得られるハニカム構造部の体積抵抗率が過度に大きくなる場合がある。炭化珪素粉末および金属珪素粉末の合計含有量は、得られるハニカム構造部に所望される構成に応じて適切に設定され得る。当該合計含有量は、成形原料全体の質量に対して好ましくは30質量%~78質量%である。なお、金属珪素粒子の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0036】
バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量もまた、得られるハニカム構造部に所望される構成に応じて適切に設定され得る。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量100質量部に対して、好ましくは2質量%~10質量%である。
【0037】
界面活性剤としては、例えば、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。界面活性剤の含有量もまた、得られるハニカム構造部に所望される構成に応じて適切に設定され得る。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量100質量部に対して、好ましくは0.1質量%以上2質量%以下である。
【0038】
造孔材としては、焼成により消失して気孔を形成する限りにおいて任意の適切な材料を用いることができる。造孔材としては、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲルが挙げられる。造孔材の含有量もまた、得られるハニカム構造部に所望される構成に応じて適切に設定され得る。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量100質量部に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。造孔材の平均粒子径は、好ましくは10μm~30μmである。造孔材の平均粒子径が小さすぎると、気孔を十分に形成できない場合がある。造孔材の平均粒子径が大きすぎると、成形時に成形原料が口金に詰まる場合がある。なお、造孔材の平均粒子径は、例えばレーザー回折法により測定され得る。
【0039】
水の含有量もまた、得られるハニカム構造部に所望される構成に応じて適切に設定され得る。水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量100質量部に対して、好ましくは20質量%~60質量%である。
【0040】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。混練手段としては、任意の適切な装置・機構が採用され得る。具体例としては、ニーダー、真空土練機が挙げられる。
【0041】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、ハニカム構造部の所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等に対応した構成を有する口金を用いることができる。口金の材質としては、例えば、摩耗し難い超硬合金を用いることができる。ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等(すなわち、口金の構成)は、後述する乾燥および焼成における収縮を考慮し、得られるハニカム構造部の所望の構成に対応して適切に設定することができる。
【0042】
次に、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を得る。乾燥方法としては、任意の適切な方法を用いることができる。具体例としては、マイクロ波加熱乾燥、誘電加熱乾燥(例えば、高周波誘電加熱乾燥)等の電磁波加熱方式;熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式;が挙げられる。1つの実施形態においては、2段階の乾燥が行われ得る。2段階の乾燥は、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることを含む。このような2段階の乾燥によれば、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる。より詳細には、2段階の乾燥は、電磁波加熱方式により、乾燥前のハニカム成形体の水分量に対して30質量%~99質量%の水分を除去した後、外部加熱方式により、ハニカム乾燥体の水分量を3質量%以下とすることを含む。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0043】
次に、ハニカム乾燥体を焼成してハニカム構造部を得る。1つの実施形態においては、焼成の前に仮焼成が行われ得る。仮焼成を行うことにより、バインダ等を良好に除去することができる。仮焼成は、例えば、大気雰囲気において、400℃~500℃で0.5時間~20時間行われ得る。焼成は、例えば、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400℃~1500℃で1時間~20時間行われ得る。仮焼成および焼成は、任意の適切な手段を用いて行われ得る。仮焼成および焼成は、例えば、電気炉、ガス炉を用いて行われ得る。
【0044】
最後に、ハニカム構造部の所定の位置に(例えば
図1に示すように、ハニカム構造部の中心軸を挟んで外周壁の外周面上に)一対の電極部を形成して、ハニカム構造体を得る。電極部は、ハニカム構造部の所定の位置に電極部形成ペーストを塗工し、塗工した電極部形成ペーストを乾燥および焼成することにより形成される。
【0045】
電極部形成ペーストは、炭化珪素粉末と、金属珪素粉末および/または金属珪化物粉末と、必要に応じて、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等と、を含む。炭化珪素粉末は、上記A-3項に記載のとおり、α-SiCとβ-SiCとを所定の割合で含む。さらに、上記A-3項に記載のとおり、炭化珪素のD50は25μm以下であり、α-SiCのD50は好ましくは10μm~45μmであり、β-SiCのD50は好ましくは10μm~45μmである。炭化珪素粉末と金属珪素粉末および/または金属珪化物粉末との配合比率は、上記A-3項に記載の炭化珪素および結合材の含有量に応じて調整され得る。
【0046】
バインダ、界面活性剤、造孔材、水等については、ハニカム構造部成形原料に関して上記で説明したとおりである。乾燥および焼成についても、ハニカム構造部の形成に関して上記で説明したとおりである。
【0047】
上記ではハニカム構造部(すなわち、ハニカム乾燥体の焼成後)に電極部を形成する実施形態について説明したが、ハニカム乾燥体(焼成前)に電極部形成ペーストを塗布し、これを焼成して、ハニカム構造部と電極部とを同時に形成してもよい。
【0048】
以上のようにして、ハニカム構造体を製造することができる。
【0049】
B.電気加熱式担体
本発明の実施形態によるハニカム構造体は、電気加熱式担体に好適に用いられ得る。したがって、このようなハニカム構造体を用いた電気加熱式担体もまた、本発明の実施形態に包含され得る。本発明の実施形態による電気加熱式担体は、上記A項に記載のハニカム構造体200と、ハニカム構造体200の電極部120、120上に設けられた金属端子(図示せず)と、を備える。一方の金属端子は電源(例えば、バッテリ)のプラス極に接続され、他方の金属端子は(例えば、バッテリ)のマイナス極に接続されている。必要に応じて、電極部と金属端子との間に下地層が形成されてもよい。下地層は、金属端子との接合の際のレーザー溶接や溶射の下地となるものであるところ、好ましくは応力緩和層としての機能を有する。すなわち、電極部と金属端子との間の線膨張率の差が大きい場合には、熱応力によって電極部にクラックが入る可能性がある。そこで、下地層が、電極部と金属端子との線膨張率の違いにより生じる熱応力を緩和する機能を有していることが好ましい。これにより、金属端子を電極部に接合する際の、および/または、熱サイクルの繰り返し疲労による電極部のクラック発生を抑制することが可能となる。下地層は、溶射により形成してもよく、下地層形成ペーストを焼成することにより形成してもよい。
【0050】
金属端子は、一方の金属端子が、他方の金属端子に対して、ハニカム構造体の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の金属端子であってもよい。金属端子は、電極部を介して電圧を印加すると通電してジュール熱によりハニカム構造体を発熱させることが可能である。このため、電気加熱式担体はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は、目的に応じて適切に設定され得る。印加する電圧は、例えば12V~900Vであってもよく、また例えば48~600Vであってもよい。
【0051】
金属端子の材質としては、任意の適切な金属を用いることができる。例えば、単体金属を用いてもよく合金等を用いてもよい。耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から、例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiから選択される少なくとも一種を含む合金が好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。
【0052】
下地層の材質は、特に限定されない。下地層の材質としては、例えば、金属とセラミックス(とりわけ導電性セラミックス)との複合材(サーメット)を使用することができる。但し、電極部と金属端子の間の熱膨張差を緩和することができるような材質であることが好ましい。
【0053】
下地層の構成は、特に限定されない。下地層は、例えば、Ni基合金、Fe基合金、Ti基合金、Co基合金、金属珪素、及びCrから選択される一種又は二種以上の金属を含有することが好ましい。より好ましくは、下地層は、Ni基合金、Fe基合金、Ti基合金、又はCo基合金で構成される。Ni基合金としては、インコネル、ハステロイが挙げられる。Fe基合金としては、SUS430等のステンレス鋼が挙げられる。Ti基合金としては、JIS60種(ASTM B348 Gr5)が挙げられる。Co基合金としては、ステライトが挙げられる。これは600~800℃での耐熱性の理由による。これらの中でも、ハニカム構造体との熱膨張差が小さく熱応力を少なくすることが可能との理由により、Fe基合金(例:フェライト系ステンレス鋼)が好ましい。
【0054】
下地層は、1つの実施形態においては、アルミナ、ムライト、ジルコニア、ガラス及びコージェライト等の酸化物系セラミックス、炭化珪素、窒化珪素及び窒化アルミ等の非酸化物系セラミックスから選択される一種又は二種以上のセラミックスを含有してもよい。これは金属端子と電極部の間の熱膨張差による応力を緩和できるように熱膨張率を調整するという理由と、下地層に含まれる金属の酸化を抑制するという理由による。
【0055】
下地層は、1つの実施形態においては、ステンレス及びガラスを含有する複合材で構成されている。ガラスとしては、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、及びソーダ石灰ガラスが挙げられる。アルミノケイ酸塩ガラスとしては、例えば、Mg-Al-Si系酸化物(例;MgO-Al2O3-SiO2)が挙げられる。
【0056】
電気加熱式担体においては、代表的には、触媒がハニカム構造体200の隔壁30に担持され得る。隔壁に触媒を担持させることにより、セル20に排ガスを流す場合に排ガス中のCO、NOx、炭化水素などを触媒反応によって無害な物質にすることが可能となる。触媒は、好ましくは、貴金属(例えば、白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、バリウム、およびこれらの組み合わせを含有し得る。これらの元素は、金属単体、金属酸化物、またはそれ以外の金属化合物として含有され得る。触媒の担持量は、例えば0.1g/L~400g/Lであり得る。
【0057】
電気加熱式担体においてハニカム構造体200に電圧を印加すると通電し、ジュール熱によりハニカム構造体を発熱させることができる。これにより、ハニカム構造体(実質的には、隔壁)に担持された触媒をエンジン始動前またはエンジン始動時に活性温度まで昇温することができる。その結果、エンジン始動時においても排ガスを十分に処理(代表的には、浄化)することができる。
【0058】
C.排ガス処理装置
本発明の実施形態による電気加熱式担体は、排ガス処理装置に好適に用いられ得る。したがって、このような電気加熱式担体を用いた排ガス処理装置もまた、本発明の実施形態に包含され得る。本発明の実施形態による排ガス処理装置は、上記B項に記載の電気加熱式担体と、電気加熱式担体を保持する缶体と、を備える。缶体は、任意の適切な(例えば、金属製の)筒状部材である。排ガス処理装置は、代表的には、自動車のエンジンからの排ガスを流すための排ガス流路の途中に設置される。
【実施例0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価項目は以下のとおりである。また、実施例における「部」および「%」は、特に明記しない限り質量基準である。
【0060】
(1)体積抵抗率
電極部の体積抵抗率は、四端子法により25℃で測定した。具体的には、ハニカム構造体の電極部から、体積抵抗率を測定するための測定試料を切り出して作製した。作製した測定試料について、両端部全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。測定試料に電圧印加電流測定装置をつなぎ印加した。10V~200V印加し、25℃の状態における電流値及び電圧値を測定し、得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。体積抵抗率の値が、0.07Ω・cm~1.2Ω・cmの範囲内であれば、電極部が低抵抗な領域の抵抗に好適に調整されている。
【0061】
(2)気孔率
電極部の気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した。
【0062】
(3)粒度
炭化珪素の粒度は、以下の方法で測定した。ハニカム構造体から電極部を切り出し、酸処理により、炭化珪素以外の構成要素を溶解させた。次いで、炭化珪素のみを取り出し、洗浄および乾燥した後、レーザー回折法により粒度を測定した。
【0063】
(4)溶射下地層との連続性
溶射下地層との連続性の評価は、以下のようにして行った。1.0kW~2.0kWの電力を電極部に通電したときの溶射下地層と電極部との発熱分布を確認した。発熱分布をサーモグラフィで確認し、目視にて以下の評価基準で判定した。
◎(優良):電極層と溶射下地層との境における局所的発熱なし
○(良好):電極層と溶射下地層との境における軽微な局所的発熱あり
×(不良):電極層と溶射下地層との境における顕著な局所的発熱あり
【0064】
<実施例1>
金属珪素粉末および炭化珪素粉末を含む坏土を押し出した後、乾燥させ、最終的に
図1に示すような形状となるハニカム乾燥体を得た。次に、得られたハニカム乾燥体の中心軸を挟んで対向する位置に一対の電極部を形成した。具体的には以下のとおりであった。金属珪素粉末30部、α型炭化珪素粉末35部、β型炭化珪素粉末35部、メチルセルロース0.5部、グリセリン10部および水38部を自転公転撹拌機で混合して、電極部形成ペーストを調製した。得られた電極部形成ペーストを上記の電極部形成位置に塗工した。電極部形成ペーストが塗工されたハニカム乾燥体を脱脂し、焼成して、ハニカム構造体を得た。脱脂は、450℃の大気中で5時間行った。焼成は、1450℃のアルゴン雰囲気中で2時間行った。ここで、α型炭化珪素粉末およびβ型炭化珪素粉末のそれぞれのD10、D50およびD90は表1に示すとおりであった。得られたハニカム構造体は、直径が75mm、セルの延びる方向の長さが33mm、セル密度が57セル/cm
2、隔壁の厚さが0.3mmであった。形成された電極部は、それぞれ、厚みが230μmであり、ハニカム構造部の流路方向に直交する方向の断面における中心角(中心軸とそれぞれの電極部の両端部とを結ぶ線とにより規定される角度)が45°であった。電極部の体積抵抗率は0.40Ω・cmであり、気孔率は32.5%であった。さらに、電極部における炭化珪素のD10、D50およびD90は表1に示すとおりであった。
【0065】
(溶射下地層の形成)
金属(SUS430)粉末、ガラス(MgO-Al2O3-SiO2)粉末、メチルセルロース、グリセリン、及び水を、自転公転攪拌機で混合して、下地層形成ペーストを調製した。ここでは、金属粉末及びガラス粉末は体積比で、金属粉末:ガラス粉末=40:60となるように配合した。また、金属粉末及びガラス粉末の合計を100質量部としたときに、メチルセルロースは0.5質量部であり、グリセリンは10質量部であり、水は38質量部であった。金属粉末の平均粒子径は10μmであった。ガラス粉末の平均粒子径は5μmであった。次いで、上記で形成された電極部を部分的に被覆するようにして下地層形成ペーストを塗布し、下地層形成ペースト付きハニカム構造体を得た。次いで、下地層形成ペースト付きハニカム構造体に対して、熱風により80℃で1時間乾燥した後、1000℃のアルゴン雰囲気中で2時間の条件で焼成処理を行い、溶射下地層を形成した。このようにして、本実施例のハニカム構造体を得た。得られたハニカム構造体を上記(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
<実施例2~16および比較例1~7>
電極部形成ペーストにおける金属珪素粉末、α型炭化珪素粉末およびβ型炭化珪素粉末の配合割合、ならびにこれらのD10、D50およびD90を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ハニカム構造体を得た。電極部の体積抵抗率および気孔率、ならびに、電極部における炭化珪素のD10、D50およびD90は表1に示すとおりであった。得られたハニカム構造体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0067】
【0068】
表1から明らかなとおり、本発明の実施例のハニカム構造体は、電極部が低抵抗な領域の抵抗に調整されており、溶射下地層との連続性も優れている。