(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148682
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】管内伝搬音抑制構造体及び管内伝搬音抑制組立体
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220929BHJP
E04B 1/84 20060101ALI20220929BHJP
E04B 1/86 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G10K11/16 100
G10K11/16 140
E04B1/84 B
E04B1/86 J
E04B1/86 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050452
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100213388
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 康司
(72)【発明者】
【氏名】小林 正明
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】小泉 穂高
(72)【発明者】
【氏名】河井 康人
【テーマコード(参考)】
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001GA01
5D061CC04
5D061EE12
5D061EE31
(57)【要約】
【課題】本発明は、管内伝搬音抑制構造の一部を構成しかつ加工性及び施工性に優れた管内伝搬音抑制構造体2を提供する。
【解決手段】本発明に係る管内伝搬音抑制構造体2は、開口する第1端部21から第2端部22へ延びる筒状の外周壁20と、第2端部22から外周壁20の中心軸Dに向かって延びる天板30と、天板30と第1端部21との間に設けられ、外周壁20の内面23から中心軸Dに向かって延びる仕切り板33と、天板30と仕切り板33との間に配置された吸音材40と、を備える。天板30及び仕切り板33は、それぞれ中央で開口する。天板30の開口の第1開口縁31は、仕切り板33の開口の第2開口縁34と同じ形状を有し、かつ、中心軸Dに沿った方向で対向して配置される。吸音材40は、第1開口縁31と第2開口縁34との間を塞ぎ、かつ、内面23に対して間隔を空けて配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口する第1端部から第2端部へ延びる筒状の外周壁と、
前記第2端部から前記外周壁の中心軸に向かって延びる天板と、
前記天板と前記第1端部との間に設けられ、前記外周壁の内面から前記中心軸に向かって延びる仕切り板と、
前記天板と前記仕切り板との間に配置された吸音材と、
を備え、
前記天板及び前記仕切り板は、それぞれ中央で開口し、
前記天板の開口の第1開口縁は、前記仕切り板の開口の第2開口縁と同じ形状を有し、かつ、前記中心軸に沿った方向で第2開口縁と対向して配置され、
前記吸音材は、前記第1開口縁と前記第2開口縁との間を塞ぎ、かつ、前記内面に対して間隔を空けて配置されることを特徴とする、管内伝搬音抑制構造体。
【請求項2】
請求項1において、
前記外周壁は、断面が四角形の角筒状であり、
前記天板の対角線上にある角部付近から前記中心軸に沿った方向に突出する少なくとも2つの突起をさらに備え、
前記2つの突起の外面間の距離は、前記第1端部における前記対角線に対応する位置にある前記内面間の距離と同じかわずかに短いことを特徴とする、管内伝搬音抑制構造体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に係る管内伝搬音抑制構造体を前記中心軸に沿った方向に複数接合して構成されたことを特徴とする、管内伝搬音抑制組立体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に係る管内伝搬音抑制構造体と、前記管内伝搬音抑制構造体に接合された他の管内伝搬音抑制構造体と、を前記中心軸に沿った方向に接合して構成された管内伝搬音抑制組立体であり、
前記他の管内伝搬音抑制構造体は、前記中心軸に沿った方向から見て前記外周壁の前記内面と相似の外周壁の内面と、前記第1開口縁及び前記第2開口縁と同じ形状の第1開口縁及び第2開口縁と、を有することを特徴とする、管内伝搬音抑制組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管内伝搬音抑制構造体及び管内伝搬音抑制組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の位相干渉・共鳴器などを応用した減音装置は、低周波数領域の特定の周波数の音をピンポイントでしか低減することができず、低周波数領域の音を広い範囲で低減することができないのでトンネル掘削時の発破音などを減音することができないという問題があった。
【0003】
そこで、伝搬音の伝搬方向と交差する方向に沿った仕切り板のエッジに吸音層を備えることにより、エッジ付近で粒子速度に基づく振動エネルギを熱エネルギに変換することで所望の周波数領域の伝搬音を広い範囲で大きく低減することができる減音装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この減音装置は、伝搬方向と直交する仕切り板等で区切られた適切な大きさの複数の窪みの並びがある場合、この窪みの開口面を形成する仕切り板付近で開口面の法線方向に大きな粒子速度の領域が集中して現れることから、この粒子速度の増大が集中する領域に吸音層を設けることにより音エネルギを熱エネルギに変換する。
【0005】
そして、この減音装置は、上記のトンネル工事の発破音のみならず、例えばオフィスビルの天井又は空中に設けられるダクト内を伝搬する伝搬音に対しても有用であることから管内伝搬音抑制構造と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の管内伝搬音抑制構造は、例えばダクト内における仕切り板や吸音層の取り付けが難しい。
【0008】
そこで、本発明は、管内伝搬音抑制構造の一部を構成しかつ加工性及び施工性に優れた管内伝搬音抑制構造体及びこれらを組み立てて管内伝搬音抑制構造を備える管内伝搬音抑制組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[1]本発明に係る管内伝搬音抑制構造体の一態様は、
開口する第1端部から第2端部へ延びる筒状の外周壁と、
前記第2端部から前記外周壁の中心軸に向かって延びる天板と、
前記天板と前記第1端部との間に設けられ、前記外周壁の内面から前記中心軸に向かって延びる仕切り板と、
前記天板と前記仕切り板との間に配置された吸音材と、
を備え、
前記天板及び前記仕切り板は、それぞれ中央で開口し、
前記天板の開口の第1開口縁は、前記仕切り板の開口の第2開口縁と同じ形状を有し、かつ、前記中心軸に沿った方向で第2開口縁と対向して配置され、
前記吸音材は、前記第1開口縁と前記第2開口縁との間を塞ぎ、かつ、前記内面に対して間隔を空けて配置されることを特徴とする。
【0011】
[2]上記管内伝搬音抑制構造体の一態様において、
前記外周壁は、断面が四角形の角筒状であり、
前記天板の対角線上にある角部付近から前記中心軸に沿った方向に突出する少なくとも2つの突起をさらに備え、
前記2つの突起の外面間の距離は、前記第1端部における前記対角線に対応する位置にある前記内面間の距離と同じかわずかに短いことができる。
【0012】
[3]本発明に係る管内伝搬音抑制組立体の一態様は、
上記管内伝搬音抑制構造体を前記中心軸に沿った方向に複数接合して構成されたことを特徴とする。
【0013】
[4]本発明に係る管内伝搬音抑制組立体の一態様は、
前記管内伝搬音抑制構造体と、前記管内伝搬音抑制構造体に接合された他の管内伝搬音抑制構造体と、を前記中心軸に沿った方向に接合して構成された管内伝搬音抑制組立体であり、
前記他の管内伝搬音抑制構造体は、前記中心軸に沿った方向から見て前記外周壁の前記内面と相似の外周壁の内面と、前記第1開口縁及び前記第2開口縁と同じ形状の第1開口縁及び第2開口縁と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る管内伝搬音抑制構造体によれば、管内伝搬音抑制構造の一部を構成しかつ加工性及び施工性に優れることができる。また、本発明に係る管内伝搬音抑制組立体によれば、管内伝搬音抑制構造体を組み立てることにより管内伝搬音抑制構造を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る管内伝搬音抑制組立体を説明する模式図である。
【
図2】本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体の正面図である。
【
図3】本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体の側面図である。
【
図4】本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体を複数積み重ねる状態を説明する断面図である。
【
図6】変形例1に係る管内伝搬音抑制構造体の断面図である。
【
図7】変形例2に係る管内伝搬音抑制組立体の断面図である。
【
図8】変形例3に係る管内伝搬音抑制組立体の断面図である。
【
図9】音源、測定点及び試験体の配置を説明する縦断面図である。
【
図10】実施例及び比較例の試験体を説明する図である。
【
図11】実施例1と比較例1の騒音低減効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0017】
1.管内伝搬音抑制組立体
図1を用いて本実施形態に係る管内伝搬音抑制組立体1について説明する。
図1は、本実施形態に係る管内伝搬音抑制組立体1を説明する模式図であり、(a)が管内伝搬音抑制組立体1の(b)におけるA-A断面図であり、(b)が管内伝搬音抑制組立体正面図である。なお、
図1の(b)では吸音材40を破線で示す。
【0018】
図1に示す管内伝搬音抑制組立体1は、管内伝搬音抑制構造体2を中心軸Dに沿った方向に複数接合して構成される。図示の例では、管内伝搬音抑制組立体1は5つの管内伝搬音抑制構造体2によって構成され、その両端に他の管体100,110が接合されて中心軸D方向に延びる1つのダクトを形成している。
【0019】
管内伝搬音抑制組立体1は、管状の外周壁20の内面23から突出し、中心軸Dに沿って間隔をあけて配置された複数組の仕切り板33及び天板30を備える管内伝搬音抑制構造を形成する。管内伝搬音抑制組立体1における仕切り板33及び天板30の枚数は、管内伝搬音抑制組立体1の長さや要求される伝搬音の抑制効果によって増減することができる。
【0020】
管内伝搬音抑制組立体1によれば、複数の管内伝搬音抑制構造体2を組み立てることにより管内伝搬音抑制構造を容易に形成することができる。
【0021】
管内伝搬音抑制組立体1は、両端に開口する管体100,110と連結して中心軸Dに沿って延びる管状体である。中心軸Dは、管状体である管内伝搬音抑制組立体1(管内伝搬音抑制構造体2)の中心軸Dであり、管内伝搬音抑制組立体1の長手方向に沿った仮想軸線である。また、中心軸Dは、管内伝搬音抑制組立体1における音の伝搬方向に沿っており、図のX方向と平行である。
【0022】
管内伝搬音抑制組立体1は、例えば、建築物に設けられるダクトの一部である。管内伝搬音抑制組立体1は、正面視(
図1の(b))で四角形の角筒状であるが、これに限らず、例えば四角形以外の多角形、円形や半円形等の筒状であってもよい。
【0023】
天板30及び仕切り板33は、内面23から中心軸D側へ向けて突出するように配置される。そのため、四方の各内面23において騒音低減効果が得られる。天板30及び仕切り板33は、それぞれ中心軸Dに沿った方向と交差(本例では直交)して配置され、かつ、天板30及び仕切り板33が正面から見て中央の開口を囲む環状に形成される。環状とは、中央の開口及び外周壁20の形状に限らず
図1の(b)のように中心軸Dに沿った方向から見て中央の開口の周りに連続する形状であり、例えば本実施形態のように天板30及び仕切り板33の開口及び外形が共に四角形の辺を形成するように環状となるものを含み、また開口及び外形が共に円形の円環状となるものも含む。天板30及び仕切り板33の中央にある開口の形状は、
図1の(b)のように内面23と相似形であることが好ましく、四角形に限らず、例えば内面23の形状に合わせて円形や多角形であってもよい。
【0024】
管内伝搬音抑制組立体1は、管内伝搬音抑制構造体2を複数連続して配置させることにより、仕切り板33と天板30との間に吸音材40が配置されて形成される第1構造11と、吸音材40が無い天板30と隣接する管内伝搬音抑制構造体2の仕切り板33との間に形成される第2構造12が交互に配置される。第1構造11を連続して設けるよりも、第1構造11と第2構造12を交互に配置した方がより200Hz~400Hzにおける気柱共鳴の騒音低減効果に優れる。また、管内伝搬音抑制構造体2の連続配置個数を変更することにより、特定の周波数帯における騒音低減効果が変化するので、騒音源の周波数特性に合わせて同設置個数を調整してもよい。
【0025】
管内伝搬音抑制組立体1は、例えば、トンネル、オフィス、病院、学校、工場などに採用することができる。
【0026】
第1構造11は、隣り合う天板30及び仕切り板33と、天板30及び仕切り板33の両自由端の間に延在する吸音材40と、吸音材40と内面23との間に設けられた空気層50と、を有する。第1構造11は、中心軸Dに沿って伝搬する音を、天板30と仕切り板33との間(空気層50)における気柱共鳴による騒音低減効果と、吸音材40のエッジ効果抑制理論(特許文献1)による騒音低減効果と、を得ることができる。第1構造11による騒音低減効果は、主に100Hz~800Hzの間で得られる。第1構造11の詳細については、管内伝搬音抑制構造体2において後述する。
【0027】
第2構造12は、隣り合う管内伝搬音抑制構造体2の天板30と仕切り板33とによって形成され、両板の自由端側(中心軸D側)が開口する。第2構造12は、天板30と仕切り板33と間の気柱共鳴による騒音低減効果は、主に200Hz~800Hzの間で得られる。
【0028】
2.管内伝搬音抑制構造体
図2~
図5を用いて管内伝搬音抑制構造体2について説明する。
図2は本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体2の正面図であり、
図3は本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体2の側面図であり、
図4は本実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体2を複数(図の例では3つ)積み重ねる状態を説明する断面図であり、
図5は
図3におけるC-C断面図である。なお、
図2の破線は吸音材40を示し、
図3の破線は仕切り板33を示す。
【0029】
図2~
図5に示すように、管内伝搬音抑制構造体2は、筒状の外周壁20と、天板30と、仕切り板33と、吸音材40と、を備える。管内伝搬音抑制構造体2は、中心軸Dに沿って複数の管内伝搬音抑制構造体2を並べることによって、複数の仕切り板を備える管内伝搬音抑制構造の一部を構成することができる。並べる管内伝搬音抑制構造体2の数を増減させることにより要求される周波数帯における騒音低減効果を調整することができるため、調整が容易で施工性に優れる。
【0030】
外周壁20は、開口する第1端部21から第2端部22へ延びる筒状である。本例における外周壁20は、断面が四角形の角筒状である。外周壁20の断面形状は、管内伝搬音抑制構造体2が接続される管体の断面形状に合わせることが好ましく、例えば円形や半円形であってもよい。管体がダクトである場合には、外周壁20の材質は、例えば、亜鉛めっき鉄板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、ステンレス鋼板等の金属製、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製であることができる。
【0031】
天板30は、第2端部22から外周壁20の中心軸Dに向かって延びる。仕切り板33は、天板30と第1端部21との間に設けられ、外周壁20の内面23から中心軸Dに向かって延びる。天板30及び仕切り板33は、それぞれ中央で開口する。天板30の開口の第1開口縁31は、仕切り板33の開口の第2開口縁34と同じ形状を有し、かつ、中心軸Dに沿った方向で第2開口縁34と対向して配置される。
【0032】
天板30及び仕切り板33は、例えば、内面23に対して鉛直方向に立設されたY-Z方向に延びる板状体である。天板30及び仕切り板33は、内面23に、伝搬音の伝搬方向(中心軸Dに沿った方向)に沿って間隔をあけて配置される。第1端部21から仕切り板33までの距離は、管内伝搬音抑制組立体1における第2構造12の天板30と仕切り板33との間隔になる。第1端部21から仕切り板33までの距離と、天板30と仕切り板33との間隔は、同じであることが第1構造11及び第2構造12における気柱共鳴に
よる騒音低減効果を予測するうえで好ましい。天板30及び仕切り板33の間隔並びに第1端部21から仕切り板33までの間隔は、外周壁20の径や求められる伝搬音抑制効果に応じて設定できるが、例えば50mm~200mmである。
【0033】
天板30及び仕切り板33は、下端の固定端が内面23上に固定される。天板30及び仕切り板33は、固定端の反対側が自由端である。自由端は、天板30及び仕切り板33の中央にある開口(
図1の(a)を参照)の第1開口縁31と第2開口縁34を構成する。第1開口縁31及び第2開口縁34は、開口を形成する縁部であって、外周壁20と相似形の四角形であり、管内伝搬音抑制構造体2の中心軸Dの周りに形成される貫通孔を形成する。第1開口縁31は、第2開口縁34と同じ寸法の四角形であり、正面視で第2開口縁34と重なり合う位置にある。
【0034】
天板30及び仕切り板33の高さは、それぞれ内面23から自由端(第1開口縁31、第2開口縁34)までの高さであって、外周壁20の径や求められる伝搬音抑制効果に応じて設定できるが、例えば100mm~400mmである。天板30及び仕切り板33の材質は、一般的に遮音材として用いられる材質を採用でき、例えば、金属、ガラス、樹脂、木材である。
【0035】
天板30及び仕切り板33と内面23との接合は、双方の材質に従って適切な接合方法を採用でき、例えば、双方とも金属であれば溶接、ボルト接合等が採用でき、双方とも合成樹脂であれば接着、溶着等が採用できる。
【0036】
図2及び
図3に示すように、管内伝搬音抑制構造体2は、天板30の対角線上にある角部25a~25d付近から中心軸Dに沿った方向に突出する4つの突起32を備える。突起32は、正面視で略L字状に屈曲した板であり、直角に接する2つの外面を有する。第1端部21における対角線上にある突起32の外面間の距離は、第1端部21における当該対角線に対応する位置にある内面23間の距離と同じかわずかに短く設定されることが好ましい。このような距離に設定することにより、
図4のように複数の管内伝搬音抑制構造体2を積み重ねる際に突起32が内面23に案内されて所定の位置に他の管内伝搬音抑制構造体2を設置することができる。
【0037】
断面が四角形の外周壁20の場合には、必ずしも突起32は4つでなくてもよく、例えば少なくとも2つの突起32を備えることが好ましい。例えば角部25aと角部25cにある2つの突起32は、第2端部22上に載せられる他の管内伝搬音抑制構造体2の2つの角部25a,25cの内面23に接触してY-Z面内における位置決めができる。
【0038】
図4のように複数の管内伝搬音抑制構造体2を重ねて、隣接する管内伝搬音抑制構造体2同士を接合する。接合方法は、外周壁20の材質により適切な方法を採用できる。外周壁20が金属であれば溶接やボルト接合等を採用でき、外周壁20が合成樹脂であれば接着や粘着テープによる接合等を採用できる。なお、
図4では第2端部22の上に他の管内伝搬音抑制構造体2の第1端部21が載るように重ねる組立方法を説明したが、これに限らず上下を逆さに積み重ねてもよいし、中心軸Dが水平になるように複数の管内伝搬音抑制構造体2を横に並べてもよい。
【0039】
吸音材40は、天板30と仕切り板33との間に配置される。吸音材40は、第1開口縁31と第2開口縁34との間を塞ぎ、かつ、内面23に対して間隔を空けて配置される。吸音材40は、第1開口縁31及び第2開口縁34と面一に設置されるが、第1開口縁31及び第2開口縁34から中心軸D側へわずかに突出してもよい。吸音材40は、内面23に対して所定の間隔をあけて配置される。
【0040】
吸音材40の材質としては、グラスウール、ロックウール、多孔質体等を採用することができる。多孔質体としては、例えば活性炭を採用することができる。吸音材40としては、価格や取り扱いの容易さなどからグラスウールが好ましい。
【0041】
吸音材40の第1開口縁31及び第2開口縁34に対する取付方法は、双方の材質により適切な方法を採用できる。例えば、吸音材40は、接触する天板30の下面及び仕切り板33の上面と両面テープにより固定してもよい。吸音材40は柔軟で固定しにくい材質が多いため、従来の管内伝搬音抑制構造に比べて短い管内伝搬音抑制構造体2にあらかじめ吸音材40を取り付ける加工は容易である。また、従来のような長い管体の内面に複数の仕切り板を設けることに比べれば、短い外周壁20の内面23に2枚の天板30と仕切り板33を固定すればよいので、管内伝搬音抑制構造体2は加工性に優れる。
【0042】
空気層50は、隣り合う天板30と仕切り板33との間であって、吸音材40と内面23との間に形成される空間である。第1構造11は、吸音材40によって蓋をされた状態の空気層50を設けることにより、主に800Hz以上の周波数に対する騒音低減効果に優れる。
【0043】
3.変形例1
図6を用いて、変形例1に係る管内伝搬音抑制構造体2aについて説明する。
図6は、変形例1に係る管内伝搬音抑制構造体2aの断面図である。突起32a及び接合板210以外の構成は、上記実施形態に係る管内伝搬音抑制構造体2と同じであるので重複する説明を省略する。
【0044】
図6に示すように、管内伝搬音抑制構造体2aは、突起32に代えて、4つの突起32aを天板30上に備える。突起32aは、例えば円柱状である。また、管内伝搬音抑制構造体2aは、第1端部21に、中心軸Dに向かって突出する板状の接合板210を備える。
【0045】
接合板210は、突起32aの真下の位置に、突起32aを案内して挿入する例えば円形の孔212が形成される。突起32aと孔212は対応する形状であればよく、円形に限らない。したがって、
図4のように複数の管内伝搬音抑制構造体2aを積み重ねる際に、突起32aが上の管内伝搬音抑制構造体2aの孔212に案内されながら挿入されることでY-Z面内の位置決めを行うことができる。
【0046】
なお、隣接する管内伝搬音抑制構造体2を適切な位置で並べることができれば、突起32,32aに限らず、他の位置決め構造を採用することができる。
【0047】
4.変形例2
図7を用いて、変形例2に係る管内伝搬音抑制組立体10について説明する。
図7は、変形例2に係る管内伝搬音抑制組立体10を組み立てる途中の断面図である。基本的な構成は、上記実施形態に係る管内伝搬音抑制組立体1及び管内伝搬音抑制構造体2と同じであるので重複する説明を省略する。
【0048】
図7に示す管内伝搬音抑制組立体10は、少なくとも管内伝搬音抑制構造体200と、管内伝搬音抑制構造体200に接合された他の管内伝搬音抑制構造体201と、を中心軸Dに沿った方向に接合して構成される。ここでは、3種類の管内伝搬音抑制構造体200,201,202を中心軸Dに沿って接合する例について説明するが、2種類であってもよいし、4種類以上であってもよいし、また、種類ごとに異なった数を組み合わせてもよい。
【0049】
管内伝搬音抑制組立体10は、互いに接合された複数例えば3つの管内伝搬音抑制構造体200,201,202の両端に他の管体100,111が接合されて中心軸D方向に延びる1つのダクトを形成する。管内伝搬音抑制構造体200の外周壁20は管体100と同じ径を有し、管内伝搬音抑制構造体202の外周壁20は管体111と同じ径を有する。
図7では管体100と一体化した管内伝搬音抑制構造体200,201に対し、管体111と一体化した管内伝搬音抑制構造体202が接合されて1つのダクトとなる。
【0050】
管内伝搬音抑制構造体201,202は、中心軸Dに沿った方向から見て管内伝搬音抑制構造体200における外周壁20の内面23と相似の外周壁20の内面23と、管内伝搬音抑制構造体200における第1開口縁31及び第2開口縁34と同じ形状の第1開口縁31及び第2開口縁34と、をそれぞれ有する。管内伝搬音抑制構造体200,201,202の各開口は中心軸Dを中心とする同じ形状であり、管内伝搬音抑制構造体200,201,202における第1開口縁31及び第2開口縁34から内面23までの距離がそれぞれ異なる。これにより、気柱共鳴による騒音低減効果が管内伝搬音抑制構造体200,201,202のそれぞれで異なるように設定できるため、幅広い周波数の騒音低減効果を得ることができる。また、管内伝搬音抑制構造体200,201,202をユニット化して組み立てることができるので、中央の開口の大きさを一定としながら気柱共鳴による騒音低減効果を容易に調整することができる。
【0051】
5.変形例3
図8を用いて、変形例3に係る管内伝搬音抑制組立体10aについて説明する。
図8は、変形例3に係る管内伝搬音抑制組立体10aを組み立てる途中の断面図である。基本的な構成は、上記実施形態に係る管内伝搬音抑制組立体1及び管内伝搬音抑制構造体2と同じであるので重複する説明を省略する。
【0052】
図8に示す管内伝搬音抑制組立体10aは、少なくとも1つの管内伝搬音抑制構造体203を含む。
図8の管内伝播音抑制組立体10aは、上記実施形態に係る1つの管内伝搬音抑制構造体2に対し、2つの管内伝搬音抑制構造体203を中心軸Dに沿った方向に接合して構成される例について説明する。
【0053】
管内伝搬音抑制構造体203は、天板30及び仕切り板33の間における内面23側に調整材52をさらに有する点で管内伝搬音抑制構造体2と異なる。調整材52の材質は、一般的に遮音材として用いられる材質を採用でき、例えば、金属、ガラス、樹脂、木材である。調整材52は、内面23を覆うように内面23よりも中心軸D側に表面53を有する。表面53は、内面23と平行に形成される。調整材52を有することにより、空気層50の深さ、すなわち第1開口縁31及び第2開口縁34から表面53までのY方向の距離が、第1開口縁31及び第2開口縁34から内面23までの距離よりも短くなる。また、管内伝搬音抑制構造体203は、管内伝搬音抑制構造体203ごとにY方向における厚さが異なる調整材52を有する複数種類の管内伝搬音抑制構造体203があってもよい。例えば、
図8では、一番上の管内伝搬音抑制構造体203の調整材52よりも上から2番目の管内伝搬音抑制構造体203の調整材52の方がY方向における厚さが厚い2種類の管内伝搬音抑制構造体203を用いている。このように第1開口縁31及び第2開口縁34から表面53までのY方向の距離が異なることにより、気柱共鳴による騒音低減効果が管内伝搬音抑制構造体2,203ごとに異なるように設定できるため、幅広い周波数の騒音低減効果を得ることができる。また、管内伝搬音抑制構造体2,203の外観形状は同じであるため、管内伝搬音抑制組立体10aの外形が凹凸の無いすっきりした外観となる。
【0054】
調整材52の固定方法は限定されないが、例えば外周壁20の外側からボルトで内面23に固定してもよく、当該ボルトにより管内伝搬音抑制構造体203から着脱可能として
もよい。調整材52を着脱自在とすることにより、厚さの異なる他の調整材52に容易に取り換えることができるので、例えば、施工現場の状況に応じて空気層50の深さ(気柱共鳴による騒音低減効果)を変更することができる。
【0055】
図8に示す調整材52は、内面23から表面53までの厚さを有する例について説明したが、これに限らず、内面23との間隔を規定しつつ内面23を覆う表面53を有することができれば例えば断面コの字状、断面L字状または断面ロの字状であってもよい。
【実施例0056】
図9に示す装置を用いて音圧レベルを測定した。
図9は、音源であるスピーカ6と測定点7の配置を説明する縦断面図である。
図9では、試験体1aを中心に開口のあるベニヤ板4の上に配置させ、ベニヤ板4の開口を塞ぐようにスピーカ6を配置した。ベニヤ板4とスピーカ6との間には緩衝材5を設けた。スピーカ6は、PIONEER製TS-F1740を使用した。試験音にはピンクノイズを用い、測定状況によらず入力電圧を一定とした。試験体1aの外周壁20は、幅250mm×奥行き250mm×高さ500mmの塩化ビニル製の角筒であり、下端の開口部をベニヤ板4上に配置して伝搬方向が試験体1aの中心軸D上を通るようにした。測定点7は、スピーカ6の真上かつベニヤ板4の上面から高さ1500mmに設定した。
図9の装置は、無響室内に配置した。
【0057】
まず、スピーカ6から試験音を放出しながら、測定点7における音圧レベルを測定した。次に、試験体1aを
図10の(a)及び(b)に示す試験体1b及び試験体1cに替えてそれぞれの音圧レベルを同様に測定した。試験体1bは、外周壁20、天板30及び仕切り板33がアルミニウム製で吸音材40にグラスウール(96kg/m
3)の試験構造体2bを5段積み重ねた高さが500mmの角筒であった。試験構造体2bは、高さが突起32(30mm)を除いて100mmであり、幅500mm×奥行き500mmであり、開口の幅及び奥行きが試験体1aと同じ幅250mm×奥行き250mmであり、開口(吸音材40)の高さが50mmであった。試験体1bは、
図1の管体100,110を除いた管内伝搬音抑制組立体1に相当し、試験構造体2bは、
図2~
図5の管内伝搬音抑制構造体2に相当する。試験体1cは、試験構造体2bから吸音材40を取り除いた試験構造体2cを5段積み重ねた。
【0058】
試験体1aの音圧レベルを基準レベルとする各試験体の騒音低減効果(dB)を算出し、
図11に100Hz~2.5kHzにおける試験体1aに対する試験体1b,1cの騒音低減効果(dB)を示した。
図10において、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は騒音低減効果(dB)であり、実線は試験体1bの騒音低減効果であり、破線は試験体1cの騒音低減効果である。騒音低減効果が大きいほど試験体1aに比べて管内伝搬音が抑制されたことを示す。
【0059】
図11に示すように、100Hz~2.5kHzの全体に渡って実施例1の試験体1bが比較例1の試験体1cに比べて騒音低減効果が大きかった。特に、実施例1の試験体1bは、200Hz~400Hz及び630Hz~2.5kHzにおいて明らかな騒音低減効果の上昇が確認できた。
【0060】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
1…管内伝搬音抑制組立体、1a,1b,1c…試験体、2,2a…管内伝搬音抑制構造体、2b,2c…試験構造体、4…ベニヤ板、5…緩衝材、6…スピーカ、7…測定点、10,10a…管内伝搬音抑制組立体、11…第1構造、12…第2構造、20…外周壁、21…第1端部、22…第2端部、23…内面、30…天板、31…第1開口縁、32,32a…突起、33…仕切り板、34…第2開口縁、40…吸音材、50…空気層、52…調整材、53…表面、100,110,111…管体、200,201,202,203…管内伝搬音抑制構造体、210…接合板、212…孔、D…中心軸