(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148697
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】鋼製支保工
(51)【国際特許分類】
E21D 11/18 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E21D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050469
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈央
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA01
2D155DB00
2D155FB02
2D155KB04
(57)【要約】
【課題】掘削表面の周囲に地盤からの圧力が作用した際、トンネルの内側に大きく突出することなく支保工にある程度の変形を許容させることができ、覆工工事を円滑に行なえる鋼製支保工を提供すること。
【解決手段】吹き付けコンクリート14と協働して掘削表面12を支える鋼製支保工16である。鋼製支保工16は、掘削表面12に沿って延在する支保工20を備え、支保工20は複数の鋼製支保部材22が連結されて構成されている。隣り合う鋼製支保部材22の間に圧縮コイルスプリング26と、圧縮コイルスプリング26を覆うカバー28とが配置されている。圧縮コイルスプリング26は、掘削表面12からの荷重が鋼製支保部材22に作用した際に支保工20の変形よりも率先して圧縮変形する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削されたトンネルの掘削表面に吹き付けられた吹き付けコンクリートと協働して前記掘削表面を支える、前記掘削表面に沿わせて組み立てられた鋼製支保工であって、
前記鋼製支保工は、前記トンネルの掘削方向と直交する平面内で前記掘削表面に沿って延在する複数の鋼製支保部材が連結されて構成された支保工を含んで構成され、
前記支保工の延在方向に間隔をおいた複数箇所に、前記掘削表面からの荷重が前記支保工に作用した際に前記鋼製支保部材の変形よりも率先して圧縮変形する圧縮コイルスプリングが配置されている、
ことを特徴とする鋼製支保工。
【請求項2】
前記圧縮コイルスプリングは、前記支保工の延在方向において隣り合う前記鋼製支保部材の間に介設されている、
ことを特徴とする請求項1記載の鋼製支保工。
【請求項3】
前記圧縮コイルスプリングは、一対のスプリング取り付け板を介して前記隣り合う鋼製支保部材の間に介設され、
前記スプリング取り付け板は、その一方の面が前記圧縮コイルスプリングの軸心方向の端部が当接されるスプリング受け面とされたスプリング受け板部と、前記鋼製支保部材に取り付けられる支保部材用取り付け板部とを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項2記載の鋼製支保工。
【請求項4】
前記圧縮コイルスプリングの端部が当接される前記スプリング受け板のスプリング受け面に、前記圧縮コイルスプリングの内部に挿入される位置決めピンが突設されている、
ことを特徴とする請求項3記載の鋼製支保工。
【請求項5】
前記圧縮コイルスプリングを覆う圧縮変形可能なカバーが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項記載の鋼製支保工。
【請求項6】
前記カバーは、前記一対のスプリング取り付け板のスプリング受け板部間にわたって設けられている、
ことを特徴とする請求項3を引用する請求項5または請求項4を引用する請求項5記載の鋼製支保工。
【請求項7】
前記圧縮コイルスプリングの端部が前記スプリング受け面に当接された状態で前記圧縮コイルスプリングの端部は前記スプリング受け面に取り付けられ、前記圧縮コイルスプリングと前記カバーと前記一対のスプリング取り付け板のスプリング受け板部とは一体化されている、
ことを特徴とする請求項6記載の鋼製支保工。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNATMの支保に用いられる鋼製支保工に関する。
【背景技術】
【0002】
NATMで掘削されるトンネルでは、爆破や掘削装置で地山に掘削したトンネルの掘削表面に一次吹き付けとしてコンクリートを吹き付け、このコンクリートに沿わせて鋼製支保工を組み立て、コンクリートと鋼製支保工の上から二次吹き付けとしてコンクリートを吹き付け、さらに、コンクリートの上から複数のロックボルトを地山に打ち込む支保がなされる。
そして、鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトとにより掘削表面の崩落を防止しつつ掘削表面を支えるようにしている。
なお、地山の地質によっては、鋼製支保工とロックボルトのうち何れか一方が省略される場合もある。
その後、掘削表面の周囲の地山が安定したならば、鋼製支保工、吹き付けコンクリート、ロックボルトの上からスライドセントルを利用してコンクリートを打設する覆工がなされる。
このようにNATMでは、鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトとにより掘削表面の崩落を防止しつつ掘削表面を支え、掘削表面の周囲の地山を安定化させるため、覆工のコンクリートの厚さを小さくできるという利点を有している。
一方、NATMでは、掘削表面に周囲の地山からの圧力が作用した場合、掘削表面の周囲の地山を安定化させるため、鋼製支保工にはある程度の変形を許容し、地山の変形を吸収することが望ましい。
このような観点から、鋼製支保工を構成する鋼製支保部材に変形を許容させる技術が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、合成樹脂製の骨組み構造体にコンクリートを吹き付けたコンクリート体を用いるため、地山からの圧力が掘削表面の周囲に作用した際、コンクリートが圧縮されてトンネルの内側に大きく突出し、覆工工事を円滑に行なえず、覆工工事に支障をきたす不具合があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、掘削表面の周囲に地盤からの圧力が作用した際、トンネルの内側に大きく突出することなく支保工にある程度の変形を許容させることができ、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利な鋼製支保工を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施の形態は、掘削されたトンネルの掘削表面に吹き付けられた吹き付けコンクリートと協働して前記掘削表面を支える、前記掘削表面に沿わせて組み立てられた鋼製支保工であって、前記鋼製支保工は、前記トンネルの掘削方向と直交する平面内で前記掘削表面に沿って延在する複数の鋼製支保部材が連結されて構成された支保工を含んで構成され、前記支保工の延在方向に間隔をおいた複数箇所に、前記掘削表面からの荷重が前記支保工に作用した際に前記鋼製支保部材の変形よりも率先して圧縮変形する圧縮コイルスプリングが配置されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記圧縮コイルスプリングは、前記支保工の延在方向において隣り合う前記鋼製支保部材の間に介設されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記圧縮コイルスプリングは、一対のスプリング取り付け板を介して前記隣り合う鋼製支保部材の間に介設され、前記スプリング取り付け板は、その一方の面が前記圧縮コイルスプリングの軸心方向の端部が当接されるスプリング受け面とされたスプリング受け板部と、前記鋼製支保部材に取り付けられる支保部材用取り付け板部とを含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記圧縮コイルスプリングの端部が当接される前記スプリング受け板のスプリング受け面に、前記圧縮コイルスプリングの内部に挿入される位置決めピンが突設されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記圧縮コイルスプリングを覆う圧縮変形可能なカバーが設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記カバーは、前記一対のスプリング取り付け板のスプリング受け板部間にわたって設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記圧縮コイルスプリングの端部が前記スプリング受け面に当接された状態で前記圧縮コイルスプリングの端部は前記スプリング受け面に取り付けられ、前記圧縮コイルスプリングと前記カバーと前記一対のスプリング取り付け板のスプリング受け板部とは一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、地山からの荷重が掘削表面から支保工に作用し、支保工に軸方向の圧縮力が生じた場合、支保工の変形よりも率先して圧縮コイルスプリングが圧縮変形し、地山の変形を吸収してトンネルの周囲の地山を安定化する。
この場合、圧縮コイルスプリングが圧縮変形するので、上述の従来技術のようにトンネルの内側に大きく突出することもない。
したがって、掘削表面に周囲の地山からの荷重が作用した場合、鋼製支保工にある程度の変形を許容させ、地山の変形を吸収して地山を安定させることができ、上述の従来技術のようにトンネルの内側に大きく突出することもないので、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、圧縮コイルスプリングは、支保工の延在方向において隣り合う鋼製支保部材の間に介設されるので、圧縮コイルスプリングの配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、一対のスプリング取り付け板は、スプリング受け板部と、鋼製支保部材に取り付けられる支保部材用取り付け板部とを備えるので、圧縮コイルスプリングの配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、スプリング受け板部のスプリング受け面に、圧縮コイルスプリングの位置決めを行なう位置決めピンが設けられているので、鋼製支保部材の変形よりも率先して圧縮コイルスプリングを円滑に確実に圧縮変形させる上で有利となり、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、カバーを設けるとコンクリートの吹き付けを効率良く行なう上で有利となる。
また、カバーをスプリング受け板部に設けると、圧縮コイルスプリングとカバーと一対のスプリング取り付け板のスプリング受け板部とを一体化する上で有利となる。
また、圧縮コイルスプリングの端部をスプリング受け面に取り付けると、圧縮コイルスプリングとカバーと一対のスプリング取り付け板とが一体化されているので、圧縮コイルスプリングとカバーとの取り扱いも簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】掘削表面を支える鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトの説明図である。
【
図3】掘削表面と、一次吹き付けコンクリートと、鋼製支保部材を構成するH形鋼の説明図である。
【
図4】鋼製支保部材と圧縮コイルスプリングの位置関係の説明図である。
【
図5】(A)トンネル断面の中央から鋼製支保部材と圧縮コイルスプリングとカバーとを見た図、(B)はトンネルの掘削方向から鋼製支保部材と圧縮コイルスプリングとカバーとを見た図であり、カバーを断面で示している。
【
図6】(A)はスプリング取り付け板の平面図、(B)はスプリング取り付け板の一部断面正面図、(C)は同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、切羽の近傍のトンネル10の箇所では、爆破や掘削装置でトンネル10が掘削され、このトンネル10の掘削表面12に一次吹き付けとしてのコンクリート14Aが吹き付けられ、このコンクリート14Aの表面に沿わせて鋼製支保工16がアーチ状に組み立てられる。
そして、一次吹き付けのコンクリート14Aと鋼製支保工16の上から鋼製支保工16の表面付近まで二次吹き付けとしてのコンクリート14Bが吹き付けられ、さらに、二次吹き付けのコンクリート14Bの上から複数のロックボルト18がトンネル10の周辺の地山に打ち込まれる。
NATMでは、このような鋼製支保工16と、吹き付けコンクリート14と、ロックボルト18とにより掘削表面12の崩落を防止しつつ掘削表面12を支え、掘削表面12の周囲の地山を安定化させるようにしている。
なお、地山の地質によっては、ロックボルト18が省略される場合もあり、その場合にも本発明は無論適用される。
そして、掘削表面12の周囲の地山が安定したならば、鋼製支保工16、吹き付けコンクリート14、ロックボルト18の上からスライドセントルを利用してコンクリートを打設する覆工がなされる。
【0009】
鋼製支保工16は、トンネル10の掘削方向X(
図3、
図4参照)に間隔をおいて設けられた
図2に示す複数の支保工20を含んで構成されている。
支保工20は、トンネル10の掘削方向Xと直交する平面でトンネル10を切断したトンネル断面の周方向に沿ってアーチ状に延在し、不図示のつなぎ材が、トンネル10の掘削方向Xに延在し隣り合う支保工20の複数箇所を連結している。
【0010】
図2、
図5に示すように、支保工20は、複数の鋼製支保部材22と、複数の圧縮コイルスプリング26と、各圧縮コイルスプリング26の周囲を覆うカバー28とを含んで構成されている。
鋼製支保部材22は形鋼で構成され、本実施の形態では、鋼製支保部材22は、
図3に示すように、一対のフランジ2402とそれらフランジ2402を接続するウェブ2404とからなるH形鋼で構成されている。
鋼製支保部材22を構成するH形鋼は、一対のフランジ2402を、トンネル10の掘削方向Xと直交する平面でトンネル10を切断したトンネル断面のほぼ中央に対向させ、ウェブ2404をトンネル10の掘削方向Xに対向させて配置されている。
【0011】
圧縮コイルスプリング26とカバー28は、
図2、
図5に示すように、支保工20の延在方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
圧縮コイルスプリング26は、地山からの荷重が掘削表面12から支保工20に作用し、支保工20がそのアーチ形状を維持するため支保工20に軸方向の圧縮力が生じた場合、鋼製支保部材22の変形よりも率先して圧縮変形する。
すなわち、鋼製支保部材22を変形させる圧縮応力が圧縮コイルスプリング26に作用した際に、鋼製支保部材22の変形よりも率先して圧縮変形する。
詳細には、支保工20に生じる圧縮応力が、鋼製支保部材22を変形させる応力よりも十分に小さい場合には、圧縮コイルスプリング26は圧縮変形せずその自由長の状態を維持し、鋼製支保部材22を変形させる応力に近づいた圧縮応力となった場合に、圧縮コイルスプリング26は自由長から圧縮変形する。
このような観点から圧縮コイルスプリング26を構成する素材や、線径、外径、巻数などが設定され、本実施の形態では、
図4に示すように、H形鋼の断面形状の輪郭の内側に入る外径で形成されている。
【0012】
カバー28は、圧縮コイルスプリング26が円滑に圧縮変形できるように、二次吹き付けとしてのコンクリート14Bの圧縮コイルスプリング26への吹き付けを阻止する部材であり、詳細には、圧縮コイルスプリング26の外周や内部に二次吹き付けとしてのコンクリート14Bが吹き付けられ充填されることにより圧縮コイルスプリング26が圧縮変形されなくなることを阻止する部材である。
なお、コンクリート14Bの吹き付け時に、コンクリート14Bが圧縮コイルスプリング26に吹付けられないようにコンクリート14Aに吹付けることで、カバー28は省略可能である。ただし、本実施の形態のようにカバー28を設けると、コンクリート14Bの吹き付けを効率良く行なう上で有利となる。
支保工20に設けられる複数の圧縮コイルスプリング26とカバー28の長さの総和は、支保工20の全長の1割程度であり、一つの圧縮コイルスプリング26とカバー28の長さは、支保工20の全長の数パーセント程度である。
【0013】
圧縮コイルスプリング26は、一対のスプリング取り付け板30を介して隣り合う鋼製支保部材22の間に介設されている。
圧縮コイルスプリング26は、一対のスプリング取り付け板30を介して、その軸心を支保工20の延在方向に沿わせて配置され、また、
図4に示すように、鋼製支保部材22からの荷重により円滑に圧縮変形されるように、その軸心を鋼製支保部材22を構成するH形鋼の図心に合致させて配置されている。
図6に示すように、スプリング取り付け板30は、スプリング受け板部3002と支保部材用取り付け板部3004とを含んで構成されている。
スプリング受け板部3002は、
図6(A)、
図5(A)、(B)に示すように、圧縮コイルスプリング26の外径よりも大きい輪郭の矩形を呈している。
スプリング受け板部3002の一方の面は、圧縮コイルスプリング26の端部が当接されるスプリング受け面3012に形成され、他方の面は、鋼製支保部材22の端部が当接される支保部材受け面3014とされている。
【0014】
スプリング受け面3012には、圧縮コイルスプリング26の内部に挿入され、スプリング受け面3012に対する圧縮コイルスプリング26の位置決めを行なう位置決めピン3022が突設されている。
圧縮コイルスプリング26の端部は、
図5(A)、(B)に示すように、位置決めピン3022がその内部に挿入された状態でスプリング受け面3012に当接され、不図示の留め金具を介して、あるいは、溶接によりスプリング受け面3012に取り付けられ、このように取り付けられた状態で圧縮コイルスプリング26は自由長となっている。
したがって、圧縮コイルスプリング26と一対のスプリング取り付け板30とは一体化されている。
【0015】
支保部材用取り付け板部3004は、スプリング受け板部3002の支保部材受け面3014の両側からそれぞれ突設され、一対設けられている。
一対の支保部材用取り付け板部3004間の寸法は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の一対のフランジ2402が挿入できる寸法で形成されている。
各支保部材用取り付け板部3004には、ボルト挿通孔H1が間隔をおいて2つ設けられている。
ている。
図5に示すように、隣り合う鋼製支保部材22の端部が一対のスプリング取り付け板30のスプリング受け板部3002の支保部材受け面3014に当接され、鋼製支保部材22の端部のH形鋼のフランジ2402に一対の支保部材用取り付け板部3004が合され、ボルト挿通孔H1に挿通されフランジ2402の雌ねじF1に螺合するボルトB1により一対のスプリング取り付け板30は隣り合う鋼製支保部材22の端部に取り付けられている。
なお、圧縮コイルスプリング26を鋼製支保部材22に取り付けるための一対のスプリング取り付け板30を、例えば、隣り合う鋼製支保部材22の端部に溶接でとりつけた平板と、圧縮コイルスプリング26の長手方向の両端に取り付けた平板とで構成し、それら鋼製支保部材22の端部に取り付けた平板と、圧縮コイルスプリング26の端部に取り付けた平板をボルト、ナットを用いて締結するようにしてもよく、圧縮コイルスプリングを隣り合う鋼製支保部材22の端部間に設ける構成には従来公知の様々な構成が採用可能であり、実施の形態の構成に限定されない。ただし、実施の形態のように構成すると、圧縮コイルスプリングを隣り合う鋼製支保部材22の端部間に簡単に確実に設ける上で有利となる。
【0016】
カバー28は、一対のスプリング取り付け板30のスプリング受け板部3002間に設けられ、圧縮コイルスプリング26の周囲を覆っている。
本実施の形態では、圧縮コイルスプリング26の軸心方向の両端部がスプリング受け板部3002により覆われ、圧縮コイルスプリング26の外周部がカバー28により覆われている。
カバー28は、圧縮コイルスプリング26が円滑に圧縮変形できるように、ゴムなどの弾性部材などにより形成され、圧縮コイルスプリング26の軸心方向に変形可能である。なお、金属板や合成樹脂板等から蛇腹状に形成されたカバー28を使用するなど任意であり、要するに圧縮コイルスプリング26が円滑に圧縮変形できるものであればよい。
図7に示すように、本実施の形態では、カバー28は、矩形の筒状に、あるいは蛇腹状に延在形成されている。
カバー28の内部に圧縮コイルスプリング26が挿入され、カバー28の延在方向の両端は、スプリング受け板部3002に被せられ、スプリング受け板部3002に接着剤により接着されている。
したがって、圧縮コイルスプリング26とカバー28と一対のスプリング受け板部3002とは一体となっており、言い換えると、圧縮コイルスプリング26とカバー28と一対のスプリング取り付け板30とは一体となっており、取り扱いが簡単で、鋼製支保部材22に対する圧縮コイルスプリング26とカバー28との連結作業の効率化が図られている。
なお、カバー28は、隣り合う鋼製支保部材22の端部に直接取り付けるようにしてもよく、カバー28の配設構造は実施の形態の構成に限定されない。ただし実施の形態のように構成すると、取り扱いが簡単で、鋼製支保部材22に対する圧縮コイルスプリング26とカバー28との連結作業の効率化を図る上で有利となる。
【0017】
本実施の形態によれば、地山からの荷重が掘削表面12から支保工20に作用し、支保工20に軸方向の圧縮力が生じた場合、圧縮コイルスプリング26は、鋼製支保部材22の変形よりも率先して圧縮変形する。
そして、この圧縮コイルスプリング26の圧縮変形により、地山の変形(掘削表面の変位)を吸収し、トンネル10の周囲の地山を安定化する。
この場合、圧縮コイルスプリング26が圧縮変形することから、上述の従来技術のように、トンネル10の内側に大きく突出することもない。
したがって、本実施の形態によれば、掘削表面12に周囲の地山からの荷重が作用した場合、鋼製支保工16にある程度の変形を許容させることで地山の変形を吸収し、地山を安定させることができ、上述の従来技術のようにトンネル10の内側に大きく突出することもないので、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0018】
また、圧縮コイルスプリング26とカバー28とは、支保工20の延在方向において隣り合う鋼製支保部材22の間に介設されるので、圧縮コイルスプリング26とカバー28との配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、一対のスプリング取り付け板30は、圧縮コイルスプリング26の軸心方向の端部と、前記鋼製支保部材22の端部とが当接されるスプリング受け板部3002と、鋼製支保部材22に取り付けられる支保部材用取り付け板部3004とを備え、カバー28は、一対のスプリング取り付け板30間にわたって設けられるので、圧縮コイルスプリング26とカバー28との配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0019】
また、スプリング受け板部3002のスプリング受け面3012に、圧縮コイルスプリング26の端部に挿入されてスプリング受け面3012に対する圧縮コイルスプリング26の位置決めを行なう位置決めピン3022が設けられているので、鋼製支保部材22の変形よりも率先して圧縮コイルスプリング26を円滑に確実に圧縮変形させる上で有利となり、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、圧縮コイルスプリング26の端部はスプリング受け面3012に取り付けられ、圧縮コイルスプリング26とカバー28と一対のスプリング取り付け板30とは一体化されているので、圧縮コイルスプリング26とカバー28との取り扱いも簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0020】
10 トンネル
12 掘削表面
14 吹き付けコンクリート
14A 一次吹き付けコンクリート
14B 二次吹き付けコンクリート
16 鋼製支保工
18 ロックボルト
20 支保工
22 鋼製支保部材
2402 フランジ
2404 ウェブ
26 圧縮コイルスプリング
28 カバー
30 スプリング取り付け板
3002 スプリング受け板部
3004 支保部材用取り付け板部
3012 スプリング受け面
3014 支保部材受け面
3022 位置決めピン
B1 ボルト
F1 雌ねじ
H1 ボルト挿通孔