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特開2022-148712路面マーキング装置及び路面マーキング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148712
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】路面マーキング装置及び路面マーキング方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/20 20060101AFI20220929BHJP
   E01C 23/00 20060101ALI20220929BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E01C23/20 Z
E01C23/00 A
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050501
(22)【出願日】2021-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年度 建設施工と建設機械シンポジウム論文集・梗概集及びそのCD-ROM(発行日:令和2年12月2日)
(71)【出願人】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】立花 洋平
(72)【発明者】
【氏名】梶原 覚
(72)【発明者】
【氏名】相田 尚
【テーマコード(参考)】
2D053
2F065
【Fターム(参考)】
2D053AA11
2D053AB02
2D053AC01
2D053EA01
2D053FA02
2F065AA04
2F065AA37
2F065BB02
2F065BB15
2F065BB29
2F065CC40
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF61
2F065GG07
2F065JJ03
2F065MM06
2F065QQ03
2F065QQ24
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065RR06
2F065UU06
(57)【要約】
【課題】路面にラインを描く路面マーキング作業に関し、移動プログラムの入力などの事前準備に要する工数を削減するとともに、安全性を確保しつつラインを描く作業員の人員を削減する。
【解決手段】路面マーキング装置100は、自律走行可能な走行台車200と、走行台車200に搭載されてその前方を撮像するカメラ300と、走行台車200に搭載されて路面RSにラインを描くマーキング装置400と、走行台車200の前方の路面RSに載置されたターゲット700と、走行台車200に搭載された電子制御装置500と、を備えている。そして、電子制御装置500は、カメラ300によってターゲット700を含む画像を撮像し、その画像を画像処理してターゲット700を認識し、ターゲット700に向けて走行台車200を走行させつつ、マーキング装置400によって路面RSにラインを描くように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な走行台車と、
前記走行台車に搭載され、当該走行台車の前方を撮像するカメラと、
前記走行台車に搭載され、路面にラインを描くマーキング装置と、
前記走行台車の前方の路面に載置されたターゲットと、
前記走行台車に搭載され、前記カメラによって前記ターゲットを含む画像を撮像し、当該画像を画像処理して前記ターゲットを認識し、当該ターゲットに向けて前記走行台車を走行させつつ、前記マーキング装置によって路面にラインを描くように構成された電子制御装置と、
を備えた路面マーキング装置。
【請求項2】
前記ターゲットは、不可視光を発光する、
請求項1に記載の路面マーキング装置。
【請求項3】
前記ターゲットには、前記不可視光を発光する発光体が上下に離間した状態で2つ配置された、
請求項2に記載の路面マーキング装置。
【請求項4】
前記ターゲットには、前記発光体の背面側の背景を覆う背板が取り付けられた、
請求項3に記載の路面マーキング装置。
【請求項5】
前記背板は、前記発光体に対面する面が黒色に塗装された、
請求項4に記載の路面マーキング装置。
【請求項6】
前記カメラ及び前記マーキング装置は、アームを介して、前記走行台車の左右方向の中心から右方向又は左方向にオフセットした位置に配置された、
請求項1~請求項5のいずれか1つに記載の路面マーキング装置。
【請求項7】
前記アームは、前記カメラ及び前記マーキング装置のオフセット量を可変である、
請求項6に記載の路面マーキング装置。
【請求項8】
前記電子制御装置は、前記走行台車を前記ターゲットに向けて操舵する操舵量を制限するように構成された、
請求項1~請求項7のいずれか1つに記載の路面マーキング装置。
【請求項9】
ボタンが取り付けられたコントローラを更に備え、
前記電子制御装置は、前記コントローラのボタンが操作されているときのみ、前記ターゲットに向けて前記走行台車を走行させつつ、前記マーキング装置によって路面にラインを描くように構成された、
請求項1~請求項8のいずれか1つに記載の路面マーキング装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1つに記載の路面マーキング装置を使用し、前記走行台車を設置した第1の地点から前記ターゲットを載置した第2の地点に向けて路面にラインを描く、
路面マーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面にラインを描く路面マーキング装置及び路面マーキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舗設作業の準備として、例えば、アスファルト舗装を補修するオーバーレイ工法の切削境界線など、路面にラインを描く路面マーキング作業が行われている。供用中の道路の路面マーキング作業では、糸の両端を張る2名の作業員、糸を弾いて路面に粉チョークを転写する1名の作業員、及び周囲の安全を確認する1名の安全監視員が必要となる。このため、路面マーキング作業の工数を削減することを目的として、特開2001-289638号公報(特許文献1)に記載されるように、予め入力した移動プログラムに従って自走式台車を走行させながら、マーキングツールで路面にマーキングする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-289638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高速道路などにおいて切削オーバーレイ工法を施工するときの通りや幅出しの基準は、既設のセンターライン(破線)とすることがほとんどであり、図面や座標を使用しないケースが多い。このような舗設現場において、図面や座標を使用して移動プログラムを入力することは手間がかかり、特に、時間的制約のある補修工事においては、特許文献1で提案される技術を利用し難い。
【0005】
そこで、本発明は、路面にラインを描く路面マーキング作業に関し、移動プログラムの入力などの事前準備に要する工数を削減するとともに、安全性を確保しつつラインを描く作業員の人員を削減可能な、路面マーキング装置及び路面マーキング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
路面マーキング装置は、自律走行可能な走行台車と、走行台車に搭載されてその前方を撮像するカメラと、走行台車に搭載されて路面にラインを描くマーキング装置と、走行台車の前方の路面に載置されたターゲットと、走行台車に搭載された電子制御装置と、を備えている。そして、電子制御装置は、カメラによってターゲットを含む画像を撮像し、その画像を画像処理してターゲットを認識し、ターゲットに向けて走行台車を走行させつつ、マーキング装置によって路面にラインを描くように構成されている。
【0007】
また、路面マーキング方法は、上記の路面マーキング装置を使用し、走行台車を設置した第1の地点からターゲットを載置した第2の地点に向けて路面にラインを描く。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、路面にラインを描く路面マーキング作業に関し、事前準備に要する工数を削減するとともに、安全性を確保しつつラインを描く作業者の人員を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】路面マーキング装置の第1実施形態を示す概略図である。
図2】第1実施形態の走行台車の一例を示す背面図である。
図3】アームを折り畳んだ第1実施形態の走行台車の一例を示す側面図である。
図4】走行台車の制御システムの一例を示す概略図である。
図5】ターゲットの一例を示す正面図である。
図6】路面マーキング処理の一例を示すフローチャートである。
図7】前方画像の一例を表す説明図である。
図8】前方画像から発光体を認識した状態の説明図である。
図9】センターライン間に描かれたラインの一例を示す説明図である。
図10】センターライン間にラインを描く路面マーキング作業の説明図である
図11】曲路にセンターラインを描く方法の説明図である。
図12】路面マーキング装置の第2実施形態を示す概略図である。
図13】第2実施形態の走行台車の一例を示す背面図である。
図14】第2実施形態の走行台車の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照し、本発明を実施するための実施形態について詳述する。
図1及び図2は、例えば、高速道路における切削オーバーレイ工法の準備として、アスファルト路面(以下「路面」と略記する。)にラインを描く路面マーキング装置100の第1実施形態を示している。
【0011】
路面マーキング装置100は、自律走行可能な走行台車200と、走行台車200の前方を撮像するカメラ300と、路面RSにラインを描くマーキング装置400と、電子制御装置500と、ボタンが取り付けられたコントローラ600と、走行台車200の前方の路面RSに載置されるターゲット700と、を備えている。
【0012】
走行台車200は、骨格となるフレーム並びにこれを内包する防塵性及び防水性を有するケーシングからなる車体210と、車体210の前部に取り付けられた左右一対の前輪220(左前輪220L及び右前輪220R)と、車体210の後部に取り付けられた自在キャスタからなる1つの後輪230と、左前輪220L及び右前輪220Rを独立して回転駆動する電動モータ240(左電動モータ240L及び右電動モータ240R)と、図示しないバッテリと、を含んで構成されている。
【0013】
車体210の上面であって、その前後方向に延びる中心線上の所定箇所には、上下方向に延びる回転軸210Aと一体となって回転し、車体210の右方に位置する展開位置Aと車体210の後方に位置する収納位置B(図中破線で示す位置)とに変位可能なアーム250が取り付けられている。アーム250は、回転軸210Aに連結される棒状の第1のアーム部材252と、第1のアーム部材252に連結される棒状の第2のアーム部材254と、第2のアーム部材254に連結されてカメラ300及びマーキング装置400を保持するホルダ256と、を含んで構成されている。ホルダ256は、平面視で矩形形状をなすベース部材256Aと、ベース部材256Aの所定箇所に取り付けられた自在キャスタからなる走行車輪256Bと、を含んで構成されている。
【0014】
第1のアーム部材252の基端部は、車体210の回転軸210Aに対して、回転軸210Aと直交する回転軸250A周りに相対回転可能に連結されている。第2のアーム部材254の基端部は、第1のアーム部材252の先端部に対して、回転軸250Aと平行な回転軸250B周りに相対回転可能に連結されている。ホルダ256のベース部材256Aの上面は、第2のアーム部材254の先端部に対して、回転軸250Bと平行な回転軸250C周りに相対回転可能に連結されている。従って、アーム250は、図1に示す展開位置Aから、第1のアーム部材252、第2のアーム部材254及びホルダ256を折り畳みながら車体210の回転軸210A周りを回転させることで、図3に示す収納位置Bに変位させることができる。収納位置Bにアーム250を変位させることで、路面マーキング装置100を運搬及び保管するときにアーム250が邪魔とならず、利便性を向上させることができる。
【0015】
カメラ300は、例えば、不可視光の一例である近赤外光を撮像可能な近赤外カメラからなり、車体210に対してアーム250を展開位置Aに変位させた状態で前方を撮像可能なように、ホルダ256におけるベース部材256Aの上面の所定箇所、例えば、前部に取り付けられている。また、マーキング装置400は、例えば、図示しないアクチュエータによって塗装スプレーを押し込んで路面RSにラインを描く装置であって、車体210に対してアーム250を展開位置Aに変位させた状態でカメラ300の後方に取り付けられている。なお、マーキング装置400は、塗装スプレーに限らず、マーキング用のチョークで路面RSにラインを描くようにしてもよい。
【0016】
電子制御装置500は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、フラッシュROM(Read Only Memory)などの不揮発性メモリ、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、アナログ信号及びデジタル信号を入出力する入出力回路、タイマなどが一体化されたマイクロコンピュータを内蔵している。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、入出力回路を介して、図4に示すように、走行台車200の前方を撮像するカメラ300、左前輪220Lを回転駆動する左電動モータ240L、右前輪220Rを回転駆動する右電動モータ240R、及びマーキング装置400と任意の電気信号を入出力可能に接続されている。
【0017】
コントローラ600は、例えば、路面RSにラインを描く作業者が保持し、走行台車200並びにこれに搭載されたカメラ300及びマーキング装置400を遠隔制御する操作卓であって、電子制御装置500のマイクロコンピュータに対して有線ケーブルCBを介して接続されている。コントローラ600の所定箇所、例えば、作業者が操作し易い位置にボタンが取り付けられており、これを作業者が操作しているときのみ、電子制御装置500のマイクロコンピュータが走行台車200、カメラ300及びマーキング装置400を作動させるように構成されている。従って、コントローラ600のボタンが操作されているときのみ、走行台車200が走行するので、作業及び周囲の安全性を担保することができる。なお、コントローラ600は、走行台車200に搭載された電子制御装置500に対して有線ケーブルCBで接続される構成に限らず、無線を介して電子制御装置500に接続されていてもよい。この場合、コントローラ600としては、タブレット端末、スマートフォンなどの携帯端末であってもよい。
【0018】
ターゲット700は、図5に示すように、路面RSに載置されるベース部材710と、ベース部材710の上面から上方へと向かって立設された矩形断面を有する立設部材720と、立設部材720の一側面において上下方向に離間した2位置に取り付けられた発光体730と、発光体730の背面側の背景を覆う背板740と、を含んで構成されている。発光体730は、周囲を走行する車両の運転者にとって邪魔にならないようにするとともに太陽光と区別をするため、人間が視認できない不可視光の一例である近赤外光を発光するLED(Light Emitted Diode)からなる。ここで、2つの発光体730は、上下方向に離間した状態で配置されているため、人工物又は天然物にも少ないユニークなものとなり、他の物体から区別し易くなる。背板740は、ターゲット700の正面から見て、立設部材720に取り付けられた2つの発光体730の端部より上下方向及び左右方向まで延びる矩形形状の板材からなり、発光体730に対面する面が黒色に塗装されている。従って、発光体730は、その背面側に黒色に塗装された背板740が位置することから、周囲の景色による影響を軽減することができる。
【0019】
路面RSにラインを描く場合、作業者が、走行台車200を既設のセンターラインの終端部に載置するとともに、ターゲット700を次のセンターラインの始端部に載置する。このとき、作業者は、カメラ300及びマーキング装置400の中心がセンターラインの中心に位置するように走行台車200を設置するとともに、発光体730の左右方向の中心がセンターラインの中心に位置するようにターゲット700を載置する。そして、作業者は、コントローラ600に取り付けられたボタンを操作して路面マーキング作業を開始させる。
【0020】
図6は、作業者がコントローラ600のボタンを操作したことを契機として、電子制御装置500のマイクロコンピュータが実行する、路面マーキング処理の一例を示している。なお、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、不揮発性メモリに格納されたアプリケーションプログラムに従って路面マーキング処理を実行する。
【0021】
ステップ10(図6では「S10」と略記する。以下同様。)では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、カメラ300からターゲット700を含んだ前方の画像(前方画像)を読み込む。なお、カメラ300から読み込まれた前方画像は、マイクロコンピュータの揮発性メモリに一時的に記憶されて以後の処理に供される(以下同様。)。
【0022】
ステップ11では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、詳細を後述するように、揮発性メモリに一時的に記憶された前方画像に対して所定の画像処理を施すことで、近赤外光を発光するターゲット700を認識できたか否かを判定する。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、ターゲット700を認識できたのであれば(Yes)、処理をステップ12へと進める。一方、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、ターゲット700を認識できなければ(No)、路面マーキング処理を終了させる。なお、ターゲット700が認識できない場合、ターゲット700に対する走行台車200の設置方向が不適切であると考えれるため、例えば、コントローラ600に取り付けられた警告ランプを点灯させたりブザーを作動させたりすることで、これを作業者に報知するようにしてもよい。
【0023】
ここで、電子制御装置500のマイクロコンピュータによる、ターゲット700の認識処理について説明する。電子制御装置500のマイクロコンピュータは、最初に、前方画像の中から所定光量以下の画素を除去することで、ターゲット700の候補となる光源を絞り込む。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、次に、候補となる光源の中から、上下方向に離間した2位置に光源があるもの、即ち、ターゲット700に特有の発光体730を特定することで、ターゲット700を認識する。
【0024】
ステップ12では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、コントローラ600に取り付けられたボタンが依然として操作されているか否かを判定する。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、ボタンが依然として操作されていると判定すれば(Yes)、処理をステップ13へと進める。一方、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、ボタンがもはや操作されていないと判定、要するに、作業者が何らかの理由によって路面マーキング作業を中止させるのであれば(No)、路面マーキング作業を終了させるべく処理をステップ19へと進める。
【0025】
ステップ13では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、左右一対の前輪220を回転駆動する電動モータ240に駆動信号を出力することで、走行台車200を走行させる。このとき、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、左前輪220Lを回転駆動する左電動モータ240L、及び右前輪220Rを回転駆動する右電動モータ240Rに同じ大きさの駆動信号を出力し、走行台車200を直進状態で走行させる。
【0026】
ステップ14では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、マーキング装置400に作動信号を出力することで、路面RSラインを描かせる。このとき、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、ラインの一例として、事前に設定されたON時間及びOFF時間に応じてアクチュエータを制御して路面RSに破線を描いてもよいし、路面RSに実線を描いてもよい。
【0027】
ステップ15では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、カメラ300からターゲット700を含んだ前方画像を読み込む。
【0028】
ステップ16では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、ステップ11と同様に、揮発性メモリに一時的に記憶された前方画像に対して所定の画像処理を施すことで、ターゲット700を認識する。
【0029】
ステップ17では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、前方画像の中から認識されたターゲット700の発光体730が前方画像の左右方向の中央に近づくように、左右一対の前輪220を回転駆動する電動モータ240に出力する駆動信号を制御する。具体的には、前方画像において発光体730が左右方向の中央より右側に位置していれば、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、左前輪220Lを回転駆動する左電動モータ240Lに対して、右前輪220Rを回転駆動する右電動モータ240Rより大きな駆動信号を出力して走行台車200を右方向へと操舵する。一方、前方画像において発光体730が左右方向の中央より左側に位置していれば、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、右前輪220Rを回転駆動する右電動モータ240Rに対して、左前輪220Lを回転駆動する左電動モータ240Lより大きな駆動信号を出力して走行台車200を左方向へと操舵する。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、このように走行台車200を左右方向に適宜操舵することで、走行台車200の車体210に対してアーム250を介してオフセットされた位置に配置されたカメラ300及びマーキング装置400の位置を変位させ、ターゲット700に向けて直線的にラインを描くことができる。このとき、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、前方画像の左右方向の中心とターゲット700との距離に応じて、例えば、距離が大きくなるにつれて操舵量を大きくするなど、前輪220の操舵量を変更するようにしてもよい。
【0030】
ステップ18では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、揮発性メモリに一時的に記録されている前方画像を参照し、そこに表れているターゲット700の発光体730が所定の大きさ以上であるか否かを認識することで、走行台車200がターゲット700に接近したか否かを判定する。そして、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、走行台車200がターゲット700に近接したと判定すれば(Yes)、処理をステップ19へと進める。一方、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、走行台車200がターゲット700に近接していないと判定すれば(No)、路面マーキング作業を続行すべく処理をステップ12へと戻す。
【0031】
ステップ19では、電子制御装置500のマイクロコンピュータが、左右一対の前輪220を回転駆動する電動モータ240に出力している駆動信号を停止させることで、走行台車200の走行を停止させる。また、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、マーキング装置400に出力している作動信号を停止させることで、路面RSにラインを描くマーキング作業を中止させる。その後、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、路面マーキング処理を終了させる。
【0032】
かかる路面マーキング処理によれば、電子制御装置500のマイクロコンピュータは、カメラ300によって撮像された前方画像からターゲット700の発光体730を認識し、これが前方画像の左右方向の中央に近づくように、走行台車200の電動モータ240を制御して操舵する。従って、路面RSのセンターラインの終端部から次のセンターラインの始端部に向かって、図9に示すように、マーキング装置400によって破線が描かれる。このとき、走行台車200がターゲット700に接近すると、走行台車200が自動的に停止して路面マーキング作業が中止されるので、作業者が走行台車200を注視する必要がなく、周囲の状況に注意を払って安全性を担保することもできる。
【0033】
このような路面マーキング作業において、事前準備として図面や座標を入力する必要がなく、事前準備に要する工数を削減することができる。また、走行台車200をセンターラインの終端部に載置する作業員、ターゲット700をセンターラインの始端部に載置する作業員、及びコントローラ600を操作する作業員のみが必要であり、従来技術と比べて、ラインを描く作業員の人員を削減することもできる。そして、事前準備に要する工数、及び作業員の人員を削減可能なことから、作業効率が向上し、工期の短縮化及び費用の低減を図ることができる。なお、走行台車200をセンターラインの終端部に載置する作業員、ターゲット700をセンターラインの始端部に載置する作業員、及びコントローラ600を操作する作業員は、同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
また、路面マーキング作業において、作業者が連続して中腰になって作業をしたり、「しゃがむ」及び「立つ」を何度も繰り返したりする必要がなく、作業者の身体的な負担を軽減することができる。そして、作業者の負担が軽減することから、作業者が周囲の状況に注意を払う余裕が生まれ、安全性を向上させることもできる。
【0035】
さらに、カメラ300及びマーキング装置400が走行台車200に対してアーム250を介して横方向にオフセットした位置に配置されているため、走行台車200がセンターライン上を走行する必要がなく、供用工事の場合には、隣接する車線を走行する車両にとって邪魔にならない。また、供用車線際での作業が減り、作業者の安全性を向上させることができる。
【0036】
ここで、図10を参照し、路面RSに描かれた既設のセンターラインを基準として、2つの連続するセンターライン間にラインを描く方法について説明する。
【0037】
第1の工程として、作業者が、路面RSに対してラインを描き始める開始位置、即ち、一方のセンターラインCL1の終端部に走行台車200を設置する。このとき、作業者は、走行台車200に搭載されたカメラ300及びマーキング装置400がセンターラインCL1の幅方向の中心に位置するように、走行台車200を路面RSに設置する。
【0038】
第2の工程として、作業者が、路面RSに対してラインを描き終わる終了位置、即ち、他方のセンターラインCL2の始端部にターゲット700を載置する。このとき、作業者は、ターゲット700の発光体730がセンターラインCL2の幅方向の中心に位置するように、ターゲット700を路面RSに載置する。
【0039】
第3の工程として、作業者が、走行台車200に対して有線ケーブルCBを介して接続されたコントローラ600のボタンを操作する。すると、走行台車200が走行を開始して、2つの連続するセンターラインCL1及びCL2の間にラインLNが描かれ始める。このとき、作業者は、コントローラ600のボタンを操作しながら走行台車200に追従して歩行する。ここで、第1の工程、第2の工程及び第3の工程を行う作業者は、同一であっても異なっていてもよい。
【0040】
走行台車200の走行に際し、カメラ300によって撮像された前方画像中のターゲット700の発光体730が左右方向の中心に近づくように、左右一対の前輪220を回転駆動する電動モータ240が個別に制御されて操舵が行われる。従って、一方のセンターラインCL1の終端部と他方のセンターラインCL2の始端部とを結んだ仮想線に対して、走行台車200が左右方向に角度をもって走行していれば、その角度と反対側に走行台車200が操舵され、仮想線に沿って走行台車200が走行する。そして、走行台車200がターゲット700に近接すると、走行台車200が自動的に停止して路面マーキング作業が中止される。
【0041】
第4の工程として、走行台車200が停止したら、コントローラ600を操作する作業員は、ボタンの操作を中止する。これによって、2つの連続するセンターラインCL1及びCL2の間にラインLNが描かれ、その後、必要に応じて、次のラインを描く位置に走行台車200を搬送して設置し、上記の第1の工程から第3の工程を順次繰り返す。
【0042】
要するに、上記の路面マーキング装置100を使用し、走行台車200を設置した第1の地点からターゲット700を載置した第2の地点に向けて、走行台車200を走行させつつマーキング装置400によって路面RSにラインを描く。
【0043】
ところで、ラインLNを描く路面RSが、図11に示すような、比較的小さな曲率を持つ曲路である場合、2つの連続する一方のセンターラインCLの終端部から他方のセンターラインCLの始端部に直線的にラインLNを描くと、そのラインLNの幅方向のずれが許容誤差を超えてしまう可能性がある。これに対応するため、1回の制御サイクルにおいて、左右一対の前輪220を回転駆動する電動モータ240による走行台車200の操舵角を、曲路の曲率半径に応じた角度に制限するようにしてもよい。この場合、走行台車200の操舵角は、例えば、走行台車200の所定箇所に取り付けられた制御盤(図示せず)を使用して任意に設定したり、コントローラ600を使用して任意に設定したりすることができる。そして、走行台車200の操舵角を制限することで、2つの連続するセンターラインCL間を円弧で結んだ仮想線を多角形で近似することが可能となり、路面RSに描かれるラインLNの幅方向のずれを許容範囲内に収めることができる。
【0044】
図12図14は、路面マーキング装置100の第2実施形態を示している。なお、以下の説明においては、第1実施形態の路面マーキング装置100と同様な構成について、重複説明を避けることを目的として、同一符号を付すことでその説明を省略又は簡潔にする。必要があれば、第1実施形態の路面マーキング装置100の説明を参照されたい。
【0045】
路面マーキング装置100は、第1実施形態と同様に、自走可能な走行台車200と、走行台車200の前方を撮像するカメラ300と、路面RSにラインを描くマーキング装置400と、電子制御装置500と、ボタンが取り付けられたコントローラ600と、走行台車200の前方の路面RSに載置されるターゲット700と、を備えている。
【0046】
カメラ300は、走行台車200の車体210の上面前部に取り付けられた架台210Bに対して、走行台車200の左右方向の中心位置に取り付けられている。このとき、カメラ300は、走行台車200の前後方向に延びる中心線と一致するように、その撮像範囲の左右方向の中心線が一致するように配置されている。
【0047】
マーキング装置400は、車体210の後部においてその左右方向の中央に配置されたホルダ256に取り付けられている。このとき、マーキング装置400は、走行台車200の前後方向に延びる中心線上に位置するように取り付けられている。従って、カメラ300及びマーキング装置400は、走行台車200の前後方向に延びる中心線上に夫々位置することとなる。
【0048】
このような路面マーキング装置100は、走行台車200の前後方向に延びる中心線上に、カメラ300及びマーキング装置400が配置されている。このため、ライン描画開始位置に走行台車200を容易に設置することができ、これによって設置に要する時間を短縮することもできる。なお、アーム250による作用及び効果を除き、第2実施形態の路面マーキング装置100による作用及び効果は、第1実施形態の作用及び効果と同様であるので、その説明は省略する。必要であれば、第1実施形態による路面マーキング装置100の作用及び効果を参照されたい。
【0049】
なお、当業者であれば、様々な上記実施形態の技術的思想について、その一部を省略したり、その一部を適宜組み合わせたり、その一部を周知技術に置換したりすることで、新たな実施形態を生み出せることを容易に理解できるであろう。
【0050】
その一例を挙げると、走行台車200は、左右一対の前輪220及び1つの後輪230に限らず、操舵可能及び走行可能という条件を満たす限りにおいて、任意数の前輪220及び後輪230を備えていてもよい。また、走行台車200は、その左方に位置するセンターライン間にラインを描くことができるように、アーム250が左方に延びていたり、アーム250が走行台車200の左方及び右方に差し替えることができるように構成されていたりしてもよい。
【0051】
アーム250は、走行台車200とカメラ300及びマーキング装置400との距離(オフセット量)を任意に変更可能なように、第1のアーム部材252及び第2のアーム部材254の少なくとも一方が軸方向にスライドしてもよい。アーム250は、上記の構成に限らず、走行台車200の前後方向から見て、下方に向けて屈曲するL字形状をなしていたり、走行台車200の側方に向けて一直線に延びる単純な形状をなしていたりしてもよい。
【0052】
ターゲット700は、画像処理によって周囲の背景と区別可能であれば、例えば、3つ以上の発光体を有する構成、特有な形状を有する構成、特有な波長の不可視光を発光する構成などであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 路面マーキング装置
200 走行台車
250 アーム
300 カメラ
400 マーキング装置
500 電子制御装置
600 コントローラ
700 ターゲット
730 発光体
740 背板
RS 路面
図1
図2
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