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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148747
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】バッチ式熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/40 20060101AFI20220929BHJP
   F27D 5/00 20060101ALI20220929BHJP
   F27B 9/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F27B9/40
F27D5/00
F27B9/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050551
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 浩平
(72)【発明者】
【氏名】有馬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 紀久
【テーマコード(参考)】
4K050
4K055
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA07
4K050BA16
4K050CA09
4K050CC06
4K050CF04
4K050CF14
4K050CG22
4K050EA03
4K055AA06
4K055NA04
(57)【要約】
【課題】被処理物が炉体に接触することを回避する。
【解決手段】バッチ式熱処理炉は、天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、昇降床に設けられており、処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、処理テーブルに載置された被処理物の基準載置状態からのずれを検出するセンサと、を備えている。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と、側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっている。昇降床が第2位置に位置するときに、炉体内に処理テーブルの上面が露出した状態となる。センサは、昇降床が第1位置に位置するときに、処理テーブルに載置された被処理物のずれを検出するように配置されている。センサは、昇降床が第1位置に位置し、かつ、駆動装置が処理テーブルを回転させた状態で、被処理物のずれを検出する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、
前記昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、
前記昇降床に設けられており、前記処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、
前記処理テーブルに載置された前記被処理物の基準載置状態からのずれを検出するセンサと、を備えており、
前記昇降床は、前記側壁の下端を開放する第1位置と、前記側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっており、
前記昇降床が前記第2位置に位置するときに、前記炉体内に前記処理テーブルの上面が露出した状態となり、
前記センサは、前記昇降床が前記第1位置に位置するときに、前記処理テーブルに載置された前記被処理物のずれを検出するように配置されており、
前記センサは、前記昇降床が前記第1位置に位置し、かつ、前記駆動装置が前記処理テーブルを回転させた状態で、前記被処理物のずれを検出する、バッチ式熱処理炉。
【請求項2】
前記処理テーブルは、
平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、
平面視したときに前記第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えており、
平面視したときに、前記第2の回転テーブルの中心の位置は、前記第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあり、
前記駆動装置は、前記第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、前記第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、を備えており、
前記センサは、前記昇降床が前記第1位置に位置し、かつ、前記第1駆動部が前記第1の回転テーブルを回転させると共に前記第2駆動部が前記第2の回転テーブルを回転させた状態で、前記第2の回転テーブル上に載置された前記被処理物のずれを検出する、請求項1に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項3】
前記被処理物は、上下方向に複数重ねて前記処理テーブルに載置可能である、請求項1又は2に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項4】
前記センサは、前記処理テーブルを平面視したときに、前記被処理物が所定位置より前記処理テーブルの外周側にずれていることを検出するように配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項5】
前記センサは、高さ方向の所定範囲における前記被処理物のずれを検出するように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッチ式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物(例えば、セラミックコンデンサ、セラミック圧電素子、セラミック抵抗などの積層セラミック部品等)を熱処理するためのバッチ式熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に、被処理物を熱処理するバッチ式熱処理炉が開示されている。特許文献1のバッチ式熱処理炉は、天井壁と側壁と昇降床を備える炉体と、昇降床に設けられる処理テーブルと、処理テーブルを回転駆動する駆動装置を備えている。被処理物は、処理テーブルに載置される。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と側壁の下端を閉じる第2位置との間を移動可能となっている。バッチ式熱処理炉内に被処理物を配置する際には、まず、昇降床を第1位置に移動させ、処理テーブル上に被処理物を載置する。そして、被処理物が載置された処理テーブル(すなわち、昇降床)は、第1位置から第2位置に移動される。これにより、被処理物は炉体内に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-77001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバッチ式熱処理炉では、処理テーブルに被処理物を載置した状態で、昇降床が第1位置から第2位置に移動される。このとき、被処理物が予め定めされた基準載置状態からずれた状態で処理テーブルに載置されていると、昇降床を第1位置から第2位置に移動する際に、被処理物が炉体に接触する。このため、このような被処理物のずれは、作業者が目視で確認することによって修正される。しかしながら、被処理物が、昇降床を第1位置から第2位置に移動する際には炉体に接触しない程度に僅かにずれていることがある。このような僅かなずれは、被処理物を炉体内に配置する際には影響を与えないものの、熱処理中に処理テーブルが回転することによってずれが大きくなり、熱処理中に炉体への接触を引き起こすことがある。このような僅かなずれは、作業者が目視で確認することは難しかった。
【0005】
本明細書は、被処理物が炉体に接触することを回避する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示するバッチ式熱処理炉は、天井壁と側壁と昇降床とを備える炉体と、昇降床に対して回転可能に配置され、被処理物が載置可能な処理テーブルと、昇降床に設けられており、処理テーブルを回転駆動する駆動装置と、処理テーブルに載置された被処理物の基準載置状態からのずれを検出するセンサと、を備えている。昇降床は、側壁の下端を開放する第1位置と、側壁の下端を閉じる第2位置と、の間を移動可能となっている。昇降床が第2位置に位置するときに、炉体内に処理テーブルの上面が露出した状態となる。センサは、昇降床が第1位置に位置するときに、処理テーブルに載置された被処理物のずれを検出するように配置されている。センサは、昇降床が第1位置に位置し、かつ、駆動装置が処理テーブルを回転させた状態で、被処理物のずれを検出する。
【0007】
上記のバッチ式熱処理炉では、昇降床が第1位置に位置するときに処理テーブルを回転させ、センサが被処理物の基準載置状態からのずれを検出する。このため、熱処理中に処理テーブルを回転させることによって被処理物が炉体に接触することを事前に検出することができる。また、処理テーブルを回転させた状態で位置ずれを検出する。このため、例えば、検出センサを固定配置したとしても、処理テーブルの全周にわたってずれを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る熱処理炉の概略構成を示す断面図(昇降床が下降した状態)。
図2】実施例に係る熱処理炉の概略構成を示す断面図(昇降床が上昇した状態)。
図3】処理テーブルが設置された熱処理炉の横断面図(図2のIII-III断面図)。
図4】昇降床に処理テーブルが設置された状態を示す側面図(ただし、駆動装置(20,22)の図示を省略)。
図5】昇降床に処理テーブルが設置された状態を示す平面図(図4において上方から処理テーブル及び昇降床を見た図)。
図6】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されていない状態を示す図)。
図7】処理テーブルと駆動機構とを連結する連結部の概略構成を示す概略図(処理テーブルと駆動機構が連結されている状態を示す図)。
図8】処理テーブルが設置された昇降床が床面近傍の位置にある状態を示す平面図(図1のVIII-VIII断面図)。
図9】処理テーブルが設置された昇降床が床面近傍の位置にあるときの架台を示す断面図。
図10】実施例に係る熱処理炉の制御系の構成を示すブロック図。
図11】被処理物の基準載置状態からのずれを検出する処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示するバッチ式熱処理炉では、処理テーブルは、平面視すると円形状を有しており、その中心を通って上下方向に伸びる第1の軸線の回りに回転可能に構成されている第1の回転テーブルと、平面視したときに第1の回転テーブルの内側に配置され、その中心を通って上下方向に伸びる第2の軸線の回りに回転可能に構成されている少なくとも1つの第2の回転テーブルと、を備えていてもよい。平面視したときに、第2の回転テーブルの中心の位置は、第1の回転テーブルの中心の位置とは異なる位置にあってもよい。駆動装置は、第1の回転テーブルを回転駆動する第1駆動部と、第2の回転テーブルを回転駆動する第2駆動部と、を備えていてもよい。センサは、昇降床が第1位置に位置し、かつ、第1駆動部が第1の回転テーブルを回転させると共に第2駆動部が第2の回転テーブルを回転させた状態で、第2の回転テーブル上に載置された被処理物のずれを検出してもよい。このような構成によると、処理テーブルが第1の回転テーブルと第2の回転テーブルを備えることによって、被処理物は熱処理中に公転(第1の回転テーブルの回転に伴って第1の軸線周りに回転)及び自転(第2の回転テーブルの回転に伴って第2の軸線周りに回転)し、第2の回転テーブルに載置された被処理物を均一に熱処理することができる。また、センサは、昇降床が第1位置に位置し、かつ、第1の回転テーブルと第2の回転テーブルを回転させた状態で、第2の回転テーブル上に載置された被処理物のずれを検出する。このため、熱処理中に第1の回転テーブルと第2の回転テーブルを回転させることによって被処理物が炉体に接触するか否かを事前に検出することができる。
【0011】
本明細書に開示するバッチ式熱処理炉では、被処理物は、上下方向に複数重ねて処理テーブルに載置可能であってもよい。このような構成によると、一度の多くの被処理物を熱処理できる。一方で、複数の被処理物を上下方向に重ねると、被処理物がずれる可能性が高くなる。センサによって被処理物のずれを検出するため、被処理物を重ねることで基準載置状態からずれ易い場合であっても、被処理物のずれを事前に検出することができる。
【0012】
本明細書に開示するバッチ式熱処理炉では、センサは、処理テーブルを平面視したときに、被処理物が所定位置より処理テーブルの外周側にずれていることを検出するように配置されていてもよい。このような構成によると、処理テーブルの回転によって、被処理物が処理テーブルの外周側に崩れることを事前に回避することができる。
【0013】
本明細書に開示するバッチ式熱処理炉では、センサは、高さ方向の所定範囲における被処理物のずれを検出するように配置されていてもよい。このような構成によると、高さ方向の所定範囲に亘って被処理物のずれを検出できる。このため、より確実に被処理物のずれを検出できる。
【実施例0014】
図面を参照して、本実施例に係る熱処理炉10について説明する。熱処理炉10は、バッチ式の熱処理炉であり、被処理物Wに熱処理をするために用いられる。図1、2に示すように、熱処理炉10は、架台16と、炉体11と、処理テーブル30と、を備えている。
【0015】
架台16は、炉体11の下方に位置しており、炉体11を支持している。炉体11を架台16で支持することで、炉体11の下方に処理テーブル30の着脱作業を行う作業空間が形成されている。架台16は、複数のフレーム材によって構成されており、その上端には4つのフレーム材によって上枠が形成されている(図8参照)。上枠には、センサ40(図8~10に図示)が設置されている。なお、センサ40については後で詳述する。
【0016】
図1、2に示すように、炉体11は、耐火物によって構成されており、円筒状の側壁14と、円板状の天井壁12を備えている。側壁14は、その下端部が架台16に固定されており、その上端部が天井壁12まで伸びている。天井壁12は、側壁14の上端部に当接し、側壁14の上端の開口部を閉じている。天井壁12の中央には、図示しない排気口が形成されている。
【0017】
炉体11は、昇降床18をさらに備えている。昇降床18は、平面視すると方形状の箱形に形成されており、その内部に処理テーブル30を回転駆動する駆動装置(20,22)が収容されている。駆動装置(20,22)は、駆動源22と駆動機構20を備えている。駆動源22は、処理テーブル30を回転駆動するための汎用のモータ(すなわち、サーボ機能のないモータ)である。駆動源22で発生した駆動力は、駆動機構20を介して処理テーブル30(詳細には、主炉床34及び副炉床36のそれぞれ)に伝達される。
【0018】
図4~7に示すように、処理テーブル30は、主炉床34と、主炉床34に設置された4つの副炉床36と、を備えている。主炉床34は、上端に位置する小径部33と、小径部33の下方に位置する大径部32と、を有している。小径部33と大径部32は、円板状の外形状を有しており、その中心軸が同一直線上に位置するように一体化されている。大径部32の下面の中心には、駆動機構20と係合可能とされる凹所34aが形成されている。昇降床18に処理テーブル30が取付けられると、主炉床34(小径部33と大径部32)は、その中心軸(すなわち、小径部33と大径部32の中心を通って上下方向に伸びる線)が炉体11の軸線に一致するようになっている。
【0019】
副炉床36は、円板状の形状を有しており、主炉床34に対して回転可能に設置されている。具体的には、主炉床34には、その上端面(小径部33)から下端面(大径部32)までを貫通する貫通孔が形成されており、その貫通孔内に副炉床36が回転可能に配置されている。すなわち、副炉床36のそれぞれは、その軸線(すなわち、副炉床36の中心を通って上下方向に伸びる線)周りに回転可能となっている。本実施例では、4つの副炉床36が周方向に等間隔を空けて設置されている(すなわち、4つの副炉床36は、周方向に90°間隔で設置されている。)。4つの副炉床36のそれぞれは、その下端に後述する駆動機構20と係合可能な係合面36aを有している(図6、7参照)。4つの副炉床36の軸線のそれぞれは、主炉床34の軸線と平行であり、主炉床34の軸線から等距離に配置されている。主炉床34の上面と副炉床36の上面は面一となっており、副炉床36の上面には被処理物Wが載置可能となっている。
【0020】
主炉床34と副炉床36のそれぞれは、回転方向及び回転速度の変更停止が可能となっている。副炉床36の上面に被処理物Wが載置されるため、主炉床34が回転することで被処理物Wはいわゆる公転し、副炉床36が回転することで被処理物Wはいわゆる自転をすることになる。各炉床34,36の回転方向は任意に設定することができる。例えば、図3に示すように、主炉床34及び副炉床36がともに反時計回りに回転してもよいし、主炉床34及び副炉床36がともに時計回りに回転してもよい。あるいは、主炉床34が時計回りに回転する一方で副炉床36が反時計回りに回転してもよいし、主炉床34が反時計回りに回転する一方で副炉床36が時計回りに回転してもよい。主炉床34及び副炉床36の回転速度及び回転方向を適宜制御することで、副炉床36上に載置された被処理物Wを均一に加熱することができる。
【0021】
図6、7に示すように、駆動機構20は、主炉床34の凹所34aに連結される第1連結部46と、副炉床36の下面に連結される第2連結部44を備えている。第1連結部46には、図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46の下端には円板状の支持板48が固定されている。支持板48は、主炉床34の下面に当接し、主炉床34を支持する。第2連結部44の下面には第2駆動軸42が固定されている。第2駆動軸42は支持板48の図示しない貫通孔を貫通しており、その下端に図示しない伝達部材(チェーン等)を介して駆動源22の回転駆動力が伝達される。第1連結部46及び第2連結部44のそれぞれに駆動源22の回転駆動力が伝達されることで、主炉床34は回転(自転)し、それに伴って副炉床36は自転及び公転することになる。
【0022】
第1連結部46に処理テーブル30(主炉床34)の凹所34aが連結され、第2連結部44に処理テーブル30(副炉床36)の係合面36aが連結されることで、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられる。これによって、処理テーブル30が駆動機構20の支持板48の上面に載置され、処理テーブル30が駆動機構20に支持される。駆動機構20に処理テーブル30が取付けられると、図1、2に示すように、昇降床18の上方に処理テーブル30が支持される。ここで、昇降床18は、架台16に設けられた昇降装置24によって、炉体11の下端近傍の位置(請求項でいう第2位置の一例)と、床面近傍の位置(請求項でいう第1位置の一例)との間を昇降可能となっている。昇降床18が床面近傍の位置に位置決めされると、側壁14の下端が開放されると共に、駆動機構20に処理テーブル30が着脱可能となる(図1に示す状態)。
【0023】
また、駆動機構20に処理テーブル30が取付けられた状態で昇降床18が炉体11の下端近傍の位置に位置決めされると、処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じる(図2に示す状態)。処理テーブル30が側壁14の下端開口部を閉じると、処理テーブル30と炉体11によって、被処理物Wを熱処理する炉内空間26が形成される。図2、3に示すように、炉内空間26には主炉床34の上面及び副炉床36の上面が露出しており、副炉床36の上面に載置された被処理物Wが炉内空間26に収容される。なお、炉内空間26には、図示しないヒータ50(図10に図示)とガス供給装置52(図10に図示)が配設されている。ヒータ50により被処理物Wが加熱され、ガス供給装置52によって炉内空間26の雰囲気が制御される。
【0024】
被処理物Wを処理テーブル30(詳細には、副炉床36)の上面に載置する作業は、作業者によって行われる。具体的には、処理テーブル30は、熱処理炉10の外部に取り出され、作業者は、熱処理炉10の外部で処理テーブル30の副炉床36の上面に被処理物Wを載置する。被処理物Wとしては、セラミックコンデンサ、セラミック圧電素子、セラミック抵抗などの積層セラミック部品等が挙げられる。被処理物Wは、平板状のセッターに載置して副炉床36の上面に載置される。セッターは、上下方向に重ねることができるように構成されている。以下、本実施例では、熱処理する部品等と、その熱処理する部品等を載置したセッターを合わせた全体を「被処理物W」という。被処理物Wは、上下方向に重ねて副炉床36の上面に載置される。これにより、一度に多くの被処理物Wを熱処理できる。副炉床36の上面に被処理物Wが載置された処理テーブル30は、搬送台車(図示は省略)を用いて架台16内の所定の位置に搬送され、駆動機構20に接続される。
【0025】
ここで、架台16に設置されるセンサ40について説明する。被処理物Wは、作業者によって副炉床36の上面に上下方向に重ねて載置されるため、1の被処理物Wの上に他の被処理物Wを重ねる際に、他の被処理物Wが下の被処理物Wに対してずれて載置されることがある。すると、ずれて重ねられた状態の複数の被処理物Wの軸線は、複数の被処理物Wが上下方向に正確に重ねられている状態(以下、基準載置状態ともいう)の軸線に対してずれることがある。このように上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれた状態で昇降床18を上昇させると、被処理物Wが炉体11に接触する虞がある。また、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wが昇降床18を上昇させた際に炉体11に接触するほどにはずれていなかったとしても、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wが僅かにずれた状態のまま熱処理炉10で熱処理すると、熱処理の際に主炉床34及び副炉床36が回転すると、重ねられた複数の被処理物Wの軸線のずれが大きくなることがある。すると、熱処理中に上下方向に重ねられた複数の被処理物Wが荷崩れし、炉体11の内壁面に接触する虞がある。上下方向に重ねられた複数の被処理物Wのずれが大きい場合には、作業者が目視によって認識することができるが、ずれが僅かである場合には、作業者が目視によって認識することは難しい。そこで、センサ40を用いて、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する。
【0026】
図8、9に示すように、センサ40は、架台16の上枠から垂下された板材に取り付けられている。センサ40は、発光部と受光部を備える光学式のセンサであり、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出可能に設置されている。具体的には、センサ40は、小径部33の外周より外側に位置する被処理物Wを検出するように設置されている。すなわち、図8に示すように、センサ40は、処理テーブル30を平面視したときに、小径部33の外周の接線と略一致するように光路が設定され、被処理物Wが光路を遮るか否かを検出する。センサ40は、その光路が架台16の上枠の側面と平行となるように設置されている。本実施例では、4つのセンサ40が設置されており、処理テーブル30を平面視すると、1つのセンサ40の光路に対して、平行な光路を有する1つのセンサ40が配置されていると共に、直交する光路を有する2つのセンサ40が配置されている。
【0027】
また、図9に示すように、センサ40は、処理テーブル30を側方からみたときに、その光路が斜めになるように設置されている。具体的には、センサ40(詳細には、センサ40の発光部)は、架台16の上枠から垂下された板材の内壁面の上端近傍(炉体11に近い位置)に設置され、センサ40の発光部が設置された位置より低い位置であって、かつ、処理テーブル30上に載置される被処理物Wの上端より低い位置に向かって光を出力する。センサ40の受光部は、センサ40の発光部の光軸上に設置される。したがって、センサ40の受光部は、処理テーブル30上に載置される被処理物Wの上端より低い位置に設置される。センサ40をこのように設置することにより、センサ40は、高さ方向における検出可能な範囲に幅をもたせることができる。なお、処理テーブル30を側方からみたときにセンサ40から出力される光の角度は、特に限定されない。例えば、センサ40は、架台16の内壁面の上端近傍から下端近傍に向かって光を出力してもよい。また、被処理物Wを検出可能であれば(すなわち、センサ40の光路が被処理物Wの上端より低い位置を通れば)、センサ40は略水平に光を出力してもよい。また、本実施例では、センサ40は架台16に固定されているが、このような構成に限定されない。例えば、センサは移動可能に設置されていてもよく、被処理物Wの載置状態(例えば、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wの高さ等)に応じてセンサの位置を変更できるように構成されていてもよい。また、センサは、光学式のセンサに限定されるものではなく、被処理物Wが小径部33の外周より外側に位置するか否かを検出できるものであれば、センサの種類は特に限定されない。
【0028】
図10に示すように、熱処理炉10は制御部54をさらに備えている。制御部54は、例えば、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成されている。制御部54は、センサ40に接続されており、センサ40からの検出信号が入力される。制御部54は、入力される指示や検出信号に基づいて、熱処理炉10の各部の動作を制御する。すなわち、制御部54は、昇降装置24を制御することで昇降床18を昇降させ、駆動装置(20、22)を制御することで処理テーブル30の回転を制御し、ヒータ50とガス供給装置52を制御することで炉内温度及び炉内雰囲気を制御する。
【0029】
次に、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する処理について説明する。作業者によって処理テーブル30(詳細には、副炉床36)上に複数の被処理物Wが上下方向に重ねて載置されると、被処理物Wを載置した処理テーブル30は、昇降床18上に設置される。被処理物Wを載置した処理テーブル30が昇降床18上に設置されると、図11に示すように、制御部54は、駆動装置(20、22)を制御して主炉床34と副炉床36を回転させる(S12)。すなわち、昇降床18を上昇させて処理テーブル30上の被処理物Wを炉体11内に移動する前に、制御部54は、架台16に設けられる作業空間内で主炉床34と副炉床36を回転させる。被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する処理では、制御部54は、主炉床34が1回転するまで、主炉床34と副炉床36を回転させる。
【0030】
次いで、制御部54は、主炉床34と副炉床36の回転中にセンサ40によって被処理物Wを検出したか否かを判定する(S14)。センサ40は、小径部33の外周より外側に位置する被処理物Wを検出するように設置されている。上述したように、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれていると、主炉床34と副炉床36の回転によってそのずれが大きくなる。また、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wが、副炉床36上に載置されたときに処理テーブル30の中心に向かってずれていると、ずれた被処理物Wは、主炉床34と副炉床36の回転によって処理テーブル30の外側に向かって突出する。このため、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれている場合、主炉床34と副炉床36を回転させることで、センサ40の発光部から出射された光が受光部で検出できないため、受光部で光を検出したか否かで被処理物Wの傾きを検出することができる。
【0031】
センサ40が被処理物Wを検出した場合(ステップS14でYES)、制御部54は、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれていると判断する。そして、制御部54は、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれていることを作業者に報知する(S16)。報知方法は特に限定されるものではなく、例えば、制御部54は、作業者が熱処理炉10を操作するためのインターフェース装置(図示は省略)にその旨を表示することによって報知してもよいし、異常を報知するためのブザーやランプ等の報知手段(図示は省略)によって報知してもよい。
【0032】
一方、主炉床34が1回転するまでの間にセンサ40が被処理物Wを検出しなかった場合(ステップS14でNO)、制御部54は、上下方向に重ねられた複数の被処理物Wがずれていないと判断する。そして、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する処理を終了する。
【0033】
本実施例では、昇降床18を上昇させて処理テーブル30上の被処理物Wを炉体11内に移動する前に、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する。このため、被処理物Wを炉体11内に配置する前に被処理物Wのずれを検出することができる。また、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する処理は、主炉床34と副炉床36を回転させながら実行される。このため、被処理物Wの全周にわたって被処理物Wが基準載置状態からずれているか否かを検出することができる。被処理物Wが基準載置状態からずれている場合は、熱処理中に処理テーブル30を回転させることによってずれが大きくなることがある。被処理物Wの基準載置状態からの僅かなずれを事前に検出することができるため、熱処理中に被処理物Wが荷崩れすることを回避することができる。
【0034】
なお、本実施例では、被処理物Wの基準載置状態からのずれを検出する処理では、主炉床34が1回転するまでの間にセンサ40が被処理物Wを検出するか否かを検出したが、このような構成に限定されない。主炉床34が1回転より多く回転する間(例えば、主炉床34が2回転する間等)にセンサ40が被処理物Wを検出するか否かを検出してもよいし、主炉床34が1回転より少なく回転する間(例えば、主炉床34が180度回転する間や、90度回転する間等)にセンサ40が被処理物Wを検出するか否かを検出してもよい。また、本実施例では、架台16内にセンサ40を4つ設置していたが、このような構成に限定されない。架台16内に設置するセンサ40は、4つより少なくてもよいし、4つより多くてもよい。
【0035】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
W 被処理物
10 熱処理炉
11 炉体
12 天井壁
14 側壁
16 架台
18 昇降床
20 駆動機構
22 駆動装置
24 昇降装置
26 炉内空間
28 開口
30 処理テーブル
32 大径部
33 小径部
34 主炉床
36 副炉床
40 センサ
42 第2駆動軸
44 第2連結部
46 第1連結部
48 支持板
50 ヒータ
52 ガス供給装置
54 制御部
図1
図2
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図5
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図9
図10
図11