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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148751
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】等速自在継手のブーツ固定方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/84 20060101AFI20220929BHJP
   F16D 3/205 20060101ALI20220929BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20220929BHJP
   F16J 3/04 20060101ALI20220929BHJP
   F16J 15/52 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16D3/84 V
F16D3/84 R
F16D3/205 M
F16B2/08 G
F16J3/04 C
F16J15/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050556
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】此本 武美
【テーマコード(参考)】
3J022
3J043
3J045
【Fターム(参考)】
3J022EA31
3J022EC17
3J022EC22
3J022ED22
3J022ED29
3J022FB12
3J022GA03
3J022GB52
3J043AA03
3J043AA16
3J043CB13
3J043DA06
3J043DA09
3J043FA04
3J043FB04
3J045AA10
3J045BA02
3J045CB16
3J045CB17
3J045EA03
(57)【要約】
【課題】薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有するブーツの大径端部をブーツバンドで外側継手部材の外周に固定するに際し、固定部におけるシール性を確保する。
【解決手段】外側継手部材2の外周にブーツ20を嵌合させる工程と、ブーツバンド100をブーツ20の外周に周回させる工程と、ブーツバンド100を縮径させてブーツ20を締め付ける工程とを有する。ブーツバンド100のうち、ブーツバンド100を縮径させる際に内径向きの押圧力が加わる部位(耳部111)を、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のブーツに設けられた、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する大径端部を、ブーツバンドを用いて外側継手部材の外周に固定するための方法であって、
前記外側継手部材の外周に前記ブーツの大径端部を嵌合させる工程と、前記ブーツバンドを前記ブーツの大径端部の外周に周回させる工程と、前記ブーツバンドを縮径させて前記ブーツの大径端部を締め付ける工程とを有し、
前記ブーツバンドのうち、前記ブーツバンドを縮径させる際に内径向きの押圧力が加わる部位を、前記ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配することを特徴とする等速自在継手のブーツの固定方法。
【請求項2】
筒状のブーツに設けられた、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する大径端部を、長手方向一部にΩ形状の耳部を有するブーツバンドを用いて外側継手部材の外周に固定するための方法であって、
前記外側継手部材の外周に前記ブーツの大径端部を嵌合させる工程と、前記ブーツバンドを前記ブーツの大径端部の外周に周回させる工程と、前記耳部を周方向両側から加締めることで前記ブーツバンドを縮径させて前記ブーツの大径端部を締め付ける工程とを有し、
前記耳部を前記ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配した状態で、前記耳部を加締めて前記ブーツバンドを縮径させることを特徴とする等速自在継手のブーツの固定方法。
【請求項3】
筒状のブーツに設けられた、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する大径端部を、長手方向に離間した一対の工具爪を有するブーツバンドを用いて外側継手部材の外周に固定するための方法であって、
前記外側継手部材の外周に前記ブーツの大径端部を嵌合させる工程と、前記ブーツバンドを前記ブーツの大径端部の外周に周回させる工程と、前記一対の工具爪を互いに接近させることで前記ブーツバンドを縮径させて前記ブーツの大径端部を締め付ける工程とを有し、
前記一対の工具爪を前記ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配した状態で、前記一対の工具爪を互いに接近させて前記ブーツバンドを縮径させることを特徴とする等速自在継手のブーツの固定方法。
【請求項4】
筒状のブーツに設けられた、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する大径端部を、帯板状部材の両端を接合してリング状としたバンド本体と、前記バンド本体に固定された円弧状のレバーとを有するブーツバンドを用いて外側継手部材の外周に固定するための方法であって、
前記外側継手部材の外周に前記ブーツの大径端部を嵌合させる工程と、前記ブーツバンドのバンド本体を前記ブーツの大径端部の外周に周回させる工程と、前記レバーの一端を支点として前記レバーを折り返すことで前記バンド本体を縮径させて前記ブーツの大径端部を締め付ける工程とを有し、
前記レバーの一端を前記ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配した状態で、前記レバーを折り返して前記バンド本体を縮径させることを特徴とする等速自在継手のブーツの固定方法。
【請求項5】
前記外側継手部材を支持部材で下方から支持し、前記支持部材の上端に設けた凸面を前記外側継手部材の外周面に設けられた凹部に嵌合させた状態で、前記ブーツバンドで前記ブーツの大径端部を締め付ける請求項1~4の何れか1項に記載の等速自在継手のブーツの固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、等速自在継手のブーツ固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸間で回転動力を等速で伝達するものであり、例えば自動車や各種産業機械などの動力伝達系に組み込まれる。等速自在継手は、カップ状の外側継手部材と、外側継手部材の内部空間に配置された内側継手部材とを備え、通常は外側継手部材の内部空間にグリース等の潤滑剤を充填した状態で使用される。この潤滑剤の外部漏洩や継手内部への異物侵入を防止するため、外側継手部材の開口部に、ゴムや樹脂等の弾性材料で形成された筒状のブーツが設けられる。ブーツの一端は外側継手部材に固定され、ブーツの他端は、内側継手部材に連結されたシャフトに固定される。
【0003】
ブーツの一端および他端にそれぞれ設けられる円筒部は、その外周面をブーツバンドと称される締結部材で締め付けることによって取付対象に固定されるのが一般的である。ブーツバンドとしては、(1)オメガタイプ(特許文献1参照)、(2)ロープロファイルタイプ(特許文献2参照)、(3)ワンタッチタイプ(特許文献3参照)等が知られている。以下、各ブーツバンドについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0004】
(1)オメガタイプのブーツバンド(図10~13参照)
オメガタイプのブーツバンド100は、金属製の帯板部材101からなる。帯板部材101の長手方向一方(図10、11の右側)の端部領域110には、耳部111と、係合孔112、113、114と、凹部115とが形成される。耳部111は、帯板部材101の一部を曲げて形成され、周方向に離間した一対の脚部111aと、一対の脚部111aの端部同士を連結する頂部111bとを有する側面視Ω形状を成している。凹部115は、例えば、帯板部材101に長手方向に延びる一対のスリットを形成し、このスリットの間(残部)を凸形状に起こすことによって形成される。帯板部材101の長手方向他方(図10、11の左側)の端部領域120には、突起121、122、123と、長手方向に延びる幅寸法一定の延在部124とが設けられる。
【0005】
ブーツバンド100を締め付ける際には、図12に示すように、ブーツバンド100をリング状にして両端部領域110、120を重ね合わせ、一方の端部領域110の係合孔112、113、114に、他方の端部領域120の突起121、122、123をそれぞれ嵌合する(両者をブーツバンド100の長手方向で係合させる)。また、一方の端部領域110に設けられた凹部115に、他方の端部領域120に設けられた延在部124が入り込んで、幅方向(外側継手部材2の軸心方向)で係合する。この状態で、図13に示すように、耳部111を周方向両側から工具T1で加締めて塑性変形させる。これにより、リング状の帯板部材101(ブーツバンド100)が縮径し、その径方向内側に配置されたブーツに縮径方向の締め付け力が付与され、その結果、ブーツ20が外側継手部材に対して固定される。
【0006】
(2)ロープロファイルタイプのブーツバンド(図14~17参照)
ロープロファイルタイプのブーツバンド200は、金属製の帯板部材201からなる。帯板部材201の長手方向一方(図14、15の右側)の端部領域210には、第1の工具爪211と、係合孔212、213と、凹部214とが形成される。凹部214は、例えば、帯板部材201に長手方向に延びる一対のスリットを形成し、このスリットの間(残部)を凸形状に起こすことによって形成される。帯板部材201の長手方向他方(図14、15の左側)の端部領域220には、第2の工具爪221と、仮止めフック222と、係合爪223、224と、長手方向に延びる幅寸法一定の延在部225とが形成される。
【0007】
ブーツバンド200を締め付ける際には、図16に示すように、ブーツバンド200をリング状にして両端部領域210、220を重ね合わせ、一方の端部領域210の係合孔212に、他方の端部領域220の第2の工具爪221及び仮止めフック222を差し込む。この状態で、図17に示すように、第1の工具爪211及び第2の工具爪221に工具T2を引っ掛け、工具爪211、221の間の距離が短くなるように引き寄せてリング状のブーツバンド200を縮径させる。これにより、係合爪223、224がそれぞれ係合孔212、213に入り込んで係合し、縮径状態を保持した締め付け状態となる。
【0008】
(3)ワンタッチタイプのブーツバンド(図18、19参照)
ワンタッチタイプのブーツバンド300は、図18に示すように、金属製の帯板の両端部の内側面同士を接合したリング状のバンド本体301と、バンド本体301の一端の外側面に接合された円弧板状のレバー302とを有する。バンド本体301には、折り返し後のレバー302を保持する止め具303が設けられる。止め具303は、バンド本体301と一体又は別体に形成され、バンド本体301の幅方向両端から外径向きに立ち上がった一対の側部を有する。
【0009】
ブーツバンド300を締結する際には、リング状のバンド本体301の内周に被締結部材を配した状態で、レバー302の端部を支点として折り返すことにより、バンド本体301を縮径させて、被締結部材を締め付け固定する(図19参照)。折り返したレバー302は、バンド本体301に重ね合わせ、止め具303の一対の側部の間に嵌まり込ませて保持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-84306号公報
【特許文献2】特許第4403728号公報
【特許文献3】特開2020-41661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、摺動式の等速自在継手の一種であるトリポード型等速自在継手では、図20に示すように、外側継手部材2の内周面の周方向複数箇所に、軸方向に延びる3本のトラック溝5が形成され、外側継手部材2の外周面は、隣接するトラック溝5の間に凹部2aを有する非真円形状を成している。この外側継手部材2に嵌合するブーツ20の大径端部21の内周面は、外側継手部材2の外周面に倣った非真円形状を成している。その結果、ブーツ20の大径端部21に、厚肉部21Lと薄肉部21Sとが周方向で交互に形成される。
【0012】
例えば、上記(1)オメガタイプのブーツバンド100を用いて、トリポード型等速自在継手の外側継手部材2とブーツ20とを固定する場合、図21に示すように、工具T1で耳部111を周方向両側から加締める。このとき、工具T1が耳部111から外れないように、工具T1を内径向きに押し付けながら耳部111の加締め作業を行う。具体的には、工具T1を、耳部111の各脚部111aの内径端(耳部111とその周方向両側に隣接する領域との境界)に当接させ、一対の脚部111aを、互いに接近する側に向けて内径側に傾斜した方向の力Fで押し込む(図中の矢印参照)。この工具T1による押圧力Fの半径方向の分力(内径向きの押圧力)により、ブーツ20が半径方向に圧縮される(図21では、ブーツ20の外周面のうち、工具T1の押圧力で変形した領域を平坦面で表している)。このように、ブーツの周方向一部が圧縮変形した状態で、ブーツと外側継手部材とが固定されると、ブーツの変形部分においてシール性が悪化するおそれがある。
【0013】
上記(2)のロープロファイルタイプのブーツバンド200を用いてトリポード型等速自在継手の外側継手部材とブーツとを固定する場合も、工具をブーツバンド200に内径向きに押し付けながら、工具爪211、221の締め付け作業を行う。このため、上記と同様の不具合が生じ得る。
【0014】
上記(3)のワンタッチタイプのブーツバンド300を用いてトリポード型等速自在継手の外側継手部材とブーツとを固定する場合、レバー302を折り返す際の支点となるレバー302の端部に、内径向きの押圧力が発生する。このため、上記と同様の不具合が生じ得る。
【0015】
そこで、本発明は、ブーツバンドを用いて、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する筒状のブーツを外側継手部材の外周に固定するに際し、固定部におけるシール性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するためになされた本発明は、筒状のブーツに設けられた、薄肉部及び厚肉部を周方向で交互に有する大径端部を、ブーツバンドを用いて外側継手部材の外周に固定するための方法であって、
前記外側継手部材の外周に前記ブーツの大径端部を嵌合させる工程と、前記ブーツバンドを前記ブーツの大径端部の外周に周回させる工程と、前記ブーツバンドを縮径させて前記ブーツの大径端部を締め付ける工程とを有し、
前記ブーツバンドのうち、前記ブーツバンドを縮径させる際に内径向きの押圧力が加わる部位を、前記ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配することを特徴とする。
【0017】
このように、本発明は、ブーツバンドを締め付ける前に、ブーツバンドと外側継手部材とを周方向で位置合わせすることを特徴とする。すなわち、工具やレバーでブーツバンドを縮径させて締め付ける際に、ブーツバンドのうち、内径向きの押圧力が加わる部位(工具が当接する部位や、レバーの支点)を、ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配する。これにより、内径向きの押圧力がブーツの薄肉部に加わるため、ブーツの半径方向の変形量を抑えることができ、ブーツの変形に起因するシール性の低下を防止できる。
【0018】
ブーツバンドとしては、例えば、長手方向一部にΩ形状の耳部を有し、耳部を工具で周方向両側から加締めることでブーツバンドを縮径させてブーツを締め付ける、いわゆるオメガタイプのブーツバンドを使用できる。この場合、ブーツバンドを締め付ける際に、ブーツバンドの耳部をブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配することで、内径向きの押圧力によるブーツの変形を抑えることができる。
【0019】
ブーツバンドとしては、例えば、長手方向に離間した一対の工具爪を有し、工具で一対の工具爪を互いに接近させることでブーツバンドを縮径させてブーツを締め付ける、いわゆるロープロファイルタイプのブーツバンドを使用できる。この場合、ブーツバンドを締め付ける際に、ブーツバンドの一対の工具爪をブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配することで、内径向きの押圧力によるブーツの変形を抑えることができる。
【0020】
ブーツバンドとしては、帯板状部材の両端を接合してリング状としたバンド本体と、一端がバンド本体に接触し、他端がバンド本体から離間した状態でバンド本体に固定された円弧状のレバーとを有し、レバーの一端を支点としてレバーを折り返すことでブーツバンドを縮径させてブーツを締め付ける、いわゆるワンタッチタイプのブーツバンドを使用できる。この場合、レバーを折り返してブーツバンドを締め付ける際に支点となるレバーの一端を、ブーツの大径端部の薄肉部の周方向領域内に配することで、支点に加わる内径向きの押圧力によるブーツの変形を抑えることができる。
【0021】
上記のブーツ固定方法において、外側継手部材を支持部材で下方から支持し、支持部材の上端に設けた凸面を外側継手部材の外周面に設けられた凹部に嵌合させた状態で、ブーツバンドでブーツの大径端部を締め付けることが好ましい。これにより、外側継手部材を安定的に支持することができると共に、外側継手部材を支持部材にセットする作業が容易化される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、ブーツバンドを締め付ける際の内径向きの押圧力によるブーツの変形が抑えられるため、ブーツの変形に起因するシール性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】トリポード型等速自在継手の軸方向断面図である。
図2】上記トリポード型等速自在継手の軸直交方向断面図(図1のY-Y断面図)である。
図3】オメガタイプのブーツバンドを有するトリポード型等速自在継手の軸直交方向断面図であり、ブーツバンドを締め付ける前の状態を示す。
図4図3のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す断面図である。
図5】ロープロファイルタイプのブーツバンドを有するトリポード型等速自在継手の軸直交方向断面図であり、ブーツバンドを締め付ける前の状態を示す。
図6図5のブーツバンドを締め付けている途中の状態を示す断面図である。
図7図5のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す断面図である。
図8】ワンタッチタイプのブーツバンドを有するトリポード型等速自在継手の軸直交方向断面図であり、ブーツバンドを締め付ける前の状態を示す。
図9図8のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す断面図である。
図10】オメガタイプのブーツバンドの側面図である。
図11図10のブーツバンドの平面図である。
図12図10のブーツバンドを丸めた状態の側面図であり、締め付ける前の状態を示す。
図13図12のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す側面図である。
図14】ロープロファイルタイプのブーツバンドの側面図である。
図15図14のブーツバンドの平面図である。
図16図14のブーツバンドを丸めた状態の側面図であり、締め付ける前の状態を示す。
図17図16のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す側面図である。
図18】ワンタッチタイプのブーツバンドの側面図であり、締め付ける前の状態を示す。
図19図18のブーツバンドを締め付けた後の状態を示す側面図である。
図20図10のブーツバンドでブーツと外側継手部材を固定した状態を示す軸直交方向断面図である。
図21図20の耳部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るトリポード型等速自在継手1は、カップ状の外側継手部材2と、内側継手部材としてのトリポード部材3と、転動体である3個のローラ4とを備えている。
【0026】
外側継手部材2の内周面には、3本のトラック溝5が円周方向等間隔に形成されている。各トラック溝5は、周方向で互いに対向する一対のローラ案内面5aを有する。各ローラ案内面5aは、外側継手部材2の軸方向に沿って直線状に伸び、その軸方向に直交する断面において円弧状に形成されている。
【0027】
トリポード部材3は、円筒状のボス部6と、ボス部6から半径方向に突出する3つの脚軸7とを有している。ボス部6の中心孔6aには、シャフト10の端部がスプライン嵌合により結合される。また、シャフト10は、止め輪11によってボス部6に対して抜け止めされる。各脚軸7には、複数の針状ころ8を介してローラ4が回転可能に装着されている。ローラ4が、外側継手部材2の各トラック溝5内に1つずつ配置され、ローラ4がトラック溝5のローラ案内面5aに沿って移動することで、トリポード部材3は外側継手部材2に対して角度変位及び軸方向変位を許容しながら回転トルクを伝達することができる。
【0028】
外側継手部材2とシャフト10との間には、継手内への異物侵入防止や継手内に封入されたグリースの漏洩防止を目的として筒状のブーツ20が取り付けられている。ブーツ20は、外側継手部材2の外周面に装着される大径端部21と、シャフト10の外周面に装着される小径端部22と、大径端部21と小径端部22とをつなぐ蛇腹部23とで構成されている。ブーツ20の大径端部21及び小径端部22は、ブーツバンドによってそれぞれ外側継手部材2の外周面及びシャフト10の外周面に締め付け固定される。ブーツ20の大径端部21に装着されるブーツバンドとしては、例えば、図10~13に示すオメガタイプのブーツバンド100を使用することができる。尚、ブーツバンド100の詳細については、上述した通りである。また、ブーツ20の小径端部22に装着されるブーツバンド100’は、上記のブーツバンド100と長手方向寸法(周長)が異なるだけであり、基本的に同様の構成を有する。
【0029】
図2に示すように、外側継手部材2の外周面は、隣接するトラック溝5の周方向間に凹部2aが形成され、薄肉化が図られている。ブーツ20の大径端部21の内周面には、外側継手部材2の外周面の凹部2aに対応する位置に凸部21aが形成される。その結果、ブーツ20の大径端部21のうち、凸部21aの周方向領域には、半径方向の肉厚が相対的に厚い厚肉部21Lが形成され、凸部21aの間の周方向領域には、半径方向の肉厚が相対的に薄い薄肉部21Sが形成される。ブーツ20と外側継手部材2との間のシール性を向上させるため、外側継手部材2の外周面のうち、凹部2aを除く領域(大径部)には、ブーツ20が食い込むことにより係合する周方向の溝部9が形成されている。ブーツ20がブーツバンド100によって締め付けられた状態では、ブーツ20の大径端部21の内周面の周方向全域が、外側継手部材2の外周面に接触する。
【0030】
ブーツバンド100によるブーツ20と外側継手部材2との固定に、本発明の固定方法が適用される。以下、ブーツ20の固定方法の手順を説明する。
【0031】
まず、ブーツ20の内周にシャフト10を挿入した状態で、シャフト10の端部に、トリポード部材3及びローラ4を一体化したアッセンブリを固定する。その後、ローラ4を外側継手部材2のトラック溝5に嵌合させながら、トリポード部材3及びローラ4を外側継手部材2の内周に配する。そして、ブーツ20の大径端部21を外側継手部材2の外周面に嵌合させる。このとき、図2に示すように、ブーツ20の大径端部21の内周面の凸部21aを外側継手部材2の外周面の凹部2aに位置合わせして、ブーツ20の大径端部21を外側継手部材2の開口端部の外周面に嵌合させる。
【0032】
次に、図3に示すように、外側継手部材2を支持部材30で下方から支持した状態(図1参照)で、ブーツ20の大径端部21の外周にブーツバンド100を周回させる。具体的には、ブーツバンド100の帯板部材101をリング状に丸めて、帯板部材101の長手方向他方の端部領域120の外径側に、帯板部材101の長手方向一方の端部領域110を重ねる。このとき、外径側の端部領域110に設けられた係合孔112、113、114に、内径側の端部領域120に設けられた突起121、122、123が入り込んで、これらが長手方向で係合する。また、外径側の端部領域110に設けられた凹部115に、内径側の端部領域120に設けられた延在部124が入り込んで、これらが幅方向(外側継手部材2の軸心方向)で係合する。尚、図3、4では、等速自在継手1の内部部品(トリポード部材3、ローラ4等)及びシャフト10の図示を省略している(後述する図5~9も同様)。
【0033】
このとき、ブーツバンド100の耳部111全体が、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されるように、ブーツバンド100とブーツ20との周方向の位置合わせを行う。図示例では、耳部111が、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域Rの略中央(薄肉部21Sの周方向中央線Cと重なる位置)に配される。このとき、ブーツ20の厚肉部21Lが下端に配されるため、これと嵌合する外側継手部材2の外周面の凹部2aが下端に配される。この凹部2aに、支持部材30の上端に設けられた凸面を嵌合させることで、外側継手部材2を安定的に支持することができる。また、外側継手部材2を支持部材30の上に載置する際、外側継手部材2の凹部が支持部材30の凸面でガイドされながら嵌合し、外側継手部材2が所定の位相(何れかのトラック溝5の周方向中央が支持部材30の真上に配された状態)で位置決めされる。この場合、作業者は、外側継手部材2の支持部材30に対する位置精度をそれ程気にすることなく、外側継手部材2を支持部材20の上に載置するだけで外側継手部材2が自然に位置決めされるため、作業が容易化される。また、外側継手部材2を支持部材30にセットする際の位置精度が緩和されることで、この作業を自動機で行うことも可能となる。
【0034】
この状態で、耳部111を工具T1で周方向両側から加締めて、リング状に丸めたブーツバンド100の帯板部材101を縮径させる(図4参照)。具体的には、工具T1で、耳部111の一対の脚部111aを互いに接近する側に押し込むことで、一対の脚部111aを変形させる。これにより、ブーツバンド100でブーツ20の大径端部21が外径から締め付けられ、この締め付け力でブーツ20が外側継手部材2に固定される。
【0035】
こうして工具T1で耳部111を加締める際に、工具T1による内径向きの押圧力がブーツ20に加わる。このとき、上記のように耳部111がブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されていることで、工具T1による内径向きの押圧力がブーツ20の薄肉部21Sに加わる。このため、図21のようにブーツ20の厚肉部21Lが内径向きに押圧される場合と比べて、ブーツ20の変形量(圧縮量)を抑えることができる。これにより、ブーツ20の変形に起因するブーツ20と外側継手部材2との間のシール性の低下を防止できる。
【0036】
本発明は上記の実施形態に限られない。以下、本発明の他の実施形態を説明するが、上記の実施形態と同様の点については重複説明を省略する。
【0037】
ブーツ20と外側継手部材2とを固定するブーツバンドは、上記に限らず、例えば図14~17に示すロープロファイルタイプのブーツバンド200を使用できる。この場合、図5に示すように、外側継手部材2を支持部材30で下方から支持した状態で、ブーツ20の大径端部21の外周にブーツバンド200を周回させる。具体的には、ブーツバンド200の帯板部材201をリング状に丸めて、帯板部材201の長手方向一方の端部領域210を、帯板部材201の長手方向他方の端部領域220の外径側に重ねる。このとき、外径側の端部領域210に設けられた係合孔212に、内径側の端部領域220に設けられた第2の工具爪221と仮止めフック222が入り込んで、係合孔212と仮止めフック222とが長手方向で係合する。また、外径側の端部領域210に設けられた凹部214に、内径側の端部領域220に設けられた延在部225が入り込んで、これらが幅方向(外側継手部材2の軸心方向)で係合する。
【0038】
こうして係合孔212と仮止めフック222とを係合させてブーツバンド200を仮止めした状態で、ブーツバンド200の第1の工具爪211と第2の工具爪221が、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されるように、ブーツバンド200とブーツ20との周方向の位置合わせを行う。図示例では、両工具爪211、221の周方向間に、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向中央線Cが配されるように、ブーツ20に対するブーツバンド200の周方向位置を調整する。
【0039】
この状態で、第1の工具爪211及び第2の工具爪221に工具T2を周方向両側から係合させて、両工具爪211、221を互いに接近させることにより、リング状に丸めたブーツバンド200の帯板部材201を縮径させる(図6、7参照)。これにより、ブーツバンド200でブーツ20の大径端部21が外径から締め付けられ、この締め付け力でブーツ20が外側継手部材2に固定される。
【0040】
こうして工具T2で工具爪211、221を互いに接近させる際に、工具T2による内径向きの押圧力がブーツ20に加わる。このとき、上記のように両工具爪211、221がブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されていることで、工具T2による内径向きの押圧力がブーツ20の薄肉部21Sに加わる。このため、ブーツ20の厚肉部21Lが内径向きに押圧される場合と比べて、ブーツ20の変形量(圧縮量)を抑えることができる。これにより、ブーツ20の変形に起因するブーツ20と外側継手部材2との間のシール性の低下を防止できる。
【0041】
ブーツ20と外側継手部材2とを固定するブーツバンドは、上記に限らず、例えば図18、19に示すワンタッチタイプのブーツバンド300を使用できる。この場合、図8に示すように、外側継手部材2を支持部材30で下方から支持した状態で、ブーツバンド300のリング状のバンド本体301の内周にブーツ20の大径端部21を配することで、ブーツ20の外周にブーツバンド300のバンド本体301を周回させる。このとき、ブーツバンド300のレバー302の一端302a(折り返し時に支点となる端部)が、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されるように、ブーツバンド300とブーツ20との周方向の位置合わせを行う。図示例では、レバー302の一端302aが、ブーツ20の薄肉部21Sの周方向中央線C上に配される。
【0042】
この状態で、レバー302を折り返すことにより、リング状のバンド本体301を縮径させる(図9参照)。これにより、ブーツバンド300でブーツ20の大径端部21が外径から締め付けられ、この締め付け力でブーツ20が外側継手部材2に固定される。
【0043】
このとき、折り返し時の支点となるレバー302の一端302aが、バンド本体301の折り返し部301aを内径向きに押圧するため、ブーツ20に内径向きの押圧力が加わる。このとき、上記のようにレバー302の一端302aがブーツ20の薄肉部21Sの周方向領域R内に配されていることで、レバー302の端部302aからの押圧力がブーツ20の薄肉部21Sに加わる。このため、ブーツ20の厚肉部21Lが内径向きに押圧される場合と比べて、ブーツ20の変形量(圧縮量)を抑えることができる。これにより、ブーツ20の変形に起因するブーツ20と外側継手部材2との間のシール性の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0044】
1 トリポード型等速自在継手
2 外側継手部材
3 トリポード部材(内側継手部材)
5 トラック溝
10 シャフト
20 ブーツ
21 大径端部
21L 厚肉部
21S 薄肉部
22 小径端部
23 蛇腹部
100 ブーツバンド(オメガタイプ)
111 耳部
200 ブーツバンド(ロープロファイルタイプ)
211、221 工具爪
300 ブーツバンド(ワンタッチタイプ)
301 バンド本体
302 レバー
F 押圧力
T1、T2 工具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21