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特開2022-148808角度検出装置、角度検出システム、パークロックシステム、およびペダルシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148808
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】角度検出装置、角度検出システム、パークロックシステム、およびペダルシステム
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/12 20060101AFI20220929BHJP
   G01D 5/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01D5/12 A
G01D5/14 F
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050626
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓史
(72)【発明者】
【氏名】石川原 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】守屋 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】大山 俊彦
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA21
2F077JJ01
2F077JJ08
2F077JJ23
2F077TT21
2F077VV02
(57)【要約】
【課題】高い検出精度を発現することのできる角度検出装置を提供する。
【解決手段】磁気検出素子と、第1の方向に沿って着磁されており、磁気検出素子に印加される磁場を形成する磁石と、第1の方向と直交する面に沿って磁気検出素子を取り囲むように設けられた第1の磁気シールドとを備える。磁石と、磁気検出素子とは、第1の方向に沿った回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、
第1の方向に沿って着磁されており、前記磁気検出素子に印加される磁場を形成する磁石と、
前記第1の方向と直交する面に沿って前記磁気検出素子を取り囲むように設けられた第1の磁気シールドと
を備え、
前記磁石と、前記磁気検出素子とは、前記第1の方向に沿った回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている
角度検出装置。
【請求項2】
前記磁石は、前記回転軸の周囲に設けられている
請求項1に記載の角度検出装置。
【請求項3】
前記回転軸の周囲に互いに離間して配置される複数の前記磁石を備える
請求項1または請求項2に記載の角度検出装置。
【請求項4】
前記磁気検出素子は、前記第1の方向と直交する面に沿った面内方向において、前記回転軸と一致する位置に配置され、または、前記磁石と前記回転軸との間の位置に配置されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項5】
前記複数の磁石の各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じである
請求項3記載の角度検出装置。
【請求項6】
前記複数の磁石と前記回転軸との各々の距離は、互いに実質的に等しい
請求項4または請求項5記載の角度検出装置。
【請求項7】
前記磁気検出素子から見て前記磁石と反対側に設けられた第2の磁気シールドをさらに備える
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項8】
前記第1の磁気シールドおよび前記第2の磁気シールドは一体化されている
請求項7に記載の角度検出装置。
【請求項9】
前記第1の磁気シールドと前記回転軸との第1の距離は、
前記磁石と前記回転軸との第2の距離よりも長い
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項10】
前記磁石の少なくとも一部は、前記第1の方向と直交する面に沿った面方向において前記第1の磁気シールドと重なり合うように設けられている
請求項9に記載の角度検出装置。
【請求項11】
前記第1の方向において前記磁気検出素子と前記磁石との間に配置されたヨークをさらに備え、
前記磁石および前記ヨークと、前記磁気検出素子とは、前記回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項12】
前記ヨークは、前記第1の方向において前記磁石と重なり合う位置にある
請求項11に記載の角度検出装置。
【請求項13】
前記ヨークは、前記磁石と接するように設けられている
請求項11または請求項12に記載の角度検出装置。
【請求項14】
前記第1の方向の前記磁石の寸法は、前記第1の方向の前記ヨークの寸法よりも大きい
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項15】
前記ヨークは、前記回転軸と直交する面において、前記回転軸を中心とする円の円周方向に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有する
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項16】
前記ヨークは、前記回転軸と直交する面に沿って前記回転軸から遠ざかるほど前記第1の方向の寸法が増大する部分を含む
請求項15記載の角度検出装置。
【請求項17】
前記ヨークは、前記回転軸に対して傾斜すると共に前記回転軸と直交する面に対しても傾斜する傾斜面を含む
請求項15または請求項16記載の角度検出装置。
【請求項18】
前記回転軸の周囲において互いに離間して配置された複数の前記ヨークを備える
請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項19】
前記複数のヨークの各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じである
請求項18記載の角度検出装置。
【請求項20】
前記複数のヨークと前記回転軸との各々の距離は、互いに実質的に等しい
請求項18または請求項19記載の角度検出装置。
【請求項21】
前記複数のヨークとして、前記回転軸を挟んで対向するように配置された第1のヨークおよび第2のヨークを有する
請求項18から請求項20のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項22】
前記磁気検出素子は、前記第1の方向に沿った感度軸を有する
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項23】
前記磁気検出素子を複数備える
請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項24】
前記複数の磁気検出素子は、前記第1の方向と直交する面に沿って互いに異なる位置に設けられている
請求項23記載の角度検出装置。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の角度検出装置と、
前記磁石を支持する第1の支持体と、
前記磁気シールドを支持する第2の支持体と
を備える
角度検出システム。
【請求項26】
請求項25に記載の前記角度検出システムを有する
パークロックシステム。
【請求項27】
請求項25に記載の前記角度検出システムを有する
ペダルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気検出素子を備えた角度検出装置、角度検出装置システム、パークロックシステム、およびペダルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、例えば内燃機関のスロットルバルブ開度を検出するスロットル開度センサ等に好適な角度検出装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の角度検出装置では、回転する磁界発生手段が発生する磁束の変化を、スピンバルブ型巨大磁気抵抗効果素子(SV-GMR素子)を用いて検出するようにしている。
【0003】
また、磁気の検出を行う磁気検出素子と、その磁気検出素子の動作に必要な磁界を形成するためのマグネットと、それら磁気検出素子およびマグネットを覆う磁気シールドカバーとを備えた磁気検出型エンコーダが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-208252号公報
【特許文献2】特開2015-169439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、角度検出装置に対しては、小型軽量化を実現しつつ、角度検出精度のさらなる向上が求められている。
【0006】
したがって、小型軽量でありながら、高い検出精度を発現することのできる角度検出装置を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様としての角度検出装置は、磁気検出素子と、第1の方向に沿って着磁されており、磁気検出素子に印加される磁場を形成する磁石と、第1の方向と直交する面に沿って磁気検出素子を取り囲むように設けられた第1の磁気シールドとを備える。磁石と、磁気検出素子とは、第1の方向に沿った回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている。
【0008】
本発明の一実施態様としての角度検出装置では、第1の磁気シールドが磁気検出素子を取り囲むように設けられているので、磁気検出素子が外乱磁場から遮蔽される。また、磁石が第1の方向に沿って着磁されているので、磁石が形成する磁場の磁束が第1の磁気シールドに吸収されにくい。このため、磁石が形成する磁場が効果的に磁気検出素子に印加される。また、磁石が第1の方向に沿って着磁されているので、例えば第1の方向と直交する面方向に磁石が着磁されている場合と比較して高い磁束密度の磁場が磁気検出素子に印加される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様としての角度検出装置によれば、第1の磁気シールドにより磁気検出素子が外乱磁場から遮蔽されるので、高い角度検出精度を得ることができる。また、第1の方向に磁石が着磁されているので、磁石が形成する磁場が効果的に磁気検出素子に印加することができ、磁石の小型化および磁石の軽量化が可能である。したがって、本発明の一実施態様としての角度検出装置によれば、小型軽量でありながら高い検出精度を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施の形態に係る角度検出システムの全体構成例を表す概略斜視図である。
図1B図1Aに示した角度検出装置の分解斜視図である。
図2図1に示した角度検出装置のうちの磁場発生モジュールの平面模式図である。
図3図1に示した角度検出装置の断面図である。
図4】第1の参考例としての角度検出装置の断面図である。
図5図1Aに示した本発明の一実施の形態の角度検出装置と、図4に示した角度検出装置との検出角度誤差を比較した特性図である。
図6A】第2の参考例としての角度検出装置の磁束密度分布の一例を表す説明図である。
図6B図6Aの角度検出装置に用いられる環状磁石の構成例を表す斜視図である。
図6C図1Aに示した本発明の一実施の形態の角度検出装置の磁束密度分布の一例を表す説明図である。
図7】実験例1-1~1-5の角度検出装置における、磁気検出素子と回転軸との位置ずれに起因する検出角度誤差を表す特性図である。
図8A】実験例1-2の角度検出装置におけるヨークの外観を模式的に表す斜視図である。
図8B】実験例1-3の角度検出装置におけるヨークの外観を模式的に表す斜視図である。
図9A】実験例2-1の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図9B】実験例2-1の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図10A】実験例2-2の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図10B】実験例2-2の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図11A】実験例2-3の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図11B】実験例2-3の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図12A】実験例2-4の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図12B】実験例2-4の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図13A】実験例2-5の角度検出装置の、環状磁石の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図13B】実験例2-5の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図14】実験例4-1の角度検出装置の断面図である。
図15A】本発明の角度検出装置を適用した第1の適用例としてのパークロックシステムの第1の模式図である。
図15B】本発明の角度検出装置を適用した第1の適用例としてのパークロックシステムの第2の模式図である。
図16A】本発明の角度検出装置を適用した第2の適用例としてのペダルシステムの第1の模式図である。
図16B】本発明の角度検出装置を適用した第2の適用例としてのペダルシステムの第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1. 一実施の形態
2. 実験例
3. 適用例
4. その他の変形例
【0012】
<1.一実施の形態>
[角度検出システム100の構成]
最初に、図1Aから図3を参照して、本発明における一実施の形態としての角度検出システム100の構成について説明する。
【0013】
図1Aは、角度検出システム100の全体構成例を表す斜視図である。図1Bは、角度検出システム100を構成する角度検出装置10(後述)の分解斜視図である。図2は、角度検出システム100のうちの磁場発生モジュール2(後述)の、回転軸J1(後述)と直交する面内における相互の位置関係を説明するための平面模式図である。なお、本出願でいう直交とは、完全な直交である90°で交わること、という概念に加え、ほぼ直交(例えば90°±5°程度で交わること)という概念も含むものである。したがって、図2に示した平面模式図は、回転軸J1に対して90°から多少ずれた角度の平面を表すものであってもよい。図2では、センサモジュール1(後述)のうちのセンサチップ11(後述)から磁場発生モジュール2を眺めた様子を表している。ただし、図2では、センサモジュール1に含まれる磁気検出素子41(後述)の輪郭、磁気シールド12(後述)の断面、および磁場発生モジュール2を支持する支持体4(後述)の輪郭についてもそれぞれ実線または破線で記載している。図3は、角度検出装置10の、回転軸J1に沿った断面を表す断面図である。ただし、図3には、支持体4についても併せて記載している。角度検出システム100は、例えば回転動作を行う回転部材の回転角を検出する装置であり、例えば自動車等に搭載される内燃機関のスロットルバルブ開度を検出するスロットル開度センサとして適用可能である。
【0014】
図1Aに示したように、角度検出システム100は、例えば角度検出装置10と支持体3と支持体4とを備えている。角度検出装置10は、例えば、センサモジュール1と、磁場発生モジュール2とを備えている。センサモジュール1は、例えば支持体3により支持されており、磁場発生モジュール2は、例えば支持体4により支持されている。磁場発生モジュール2は、例えば磁場発生部20とヨーク部30とを備えている。磁場発生部20は、センサモジュール1において検出される検出対象磁場を形成する磁場発生部材を有しており、センサモジュール1に対して回転軸J1を中心として例えば回転方向R1へ回転可能に設けられている。センサモジュール1は、後述するように、複数の磁気検出素子を有している。それら複数の磁気検出素子は、例えば磁場発生部材の形成する検出対象磁場の強度や検出対象磁場の向きなどを検出する。ヨーク部30は、回転軸方向において磁場発生部20とセンサモジュール1との間であって検出対象磁場の影響が及ぶ磁場影響領域に配置され、磁場発生部20と一体に回転可能に設けられている。
【0015】
(センサモジュール1)
センサモジュール1は、例えばセンサチップ11と、磁気シールド12と、端子部13と、ホルダ14と、回路基板15とを有している。センサチップ11は、例えば回転軸J1の上に配置されている。センサチップ11の、回転軸J1と直交する面内の中心位置CPは、回転軸J1と一致しているとよい。センサチップ11は、図2に示したように、複数の磁気検出素子として例えば磁気検出素子41を有している。磁気検出素子41は、例えば磁場発生部材の形成する検出対象磁場の強度を検出する。磁気検出素子41は、例えばホール素子などの、磁場の強度を検出可能な素子である。磁気検出素子41は、例えば回転軸J1と直交する面に沿った感度軸を有している。すなわち、磁気検出素子41がホール素子である場合、磁気検出素子41は回転軸J1と直交する面に沿った磁場強度を検出できる。なお、磁気検出素子41は、回転軸J1と直交する面内において、中心位置CPにあるとよい。
【0016】
磁気シールド12は、例えば図3に示したように、第1シールド部分121と、第2シールド部分122とを有している。第1シールド部分121と、第2シールド部分122とは、互いに一体化されているとよい。磁気シールド12は、第1シールド部分121と第2シールド部分122とが一括形成されることで一体化したものであってもよい。また、磁気シールド12は、第1シールド部分121と第2シールド部分122とがそれぞれ個別に形成されたものを接着剤等で一体化したものであってもよい。また、第1シールド部分121と、第2シールド部分122とは、一体化されていなくとも、互いに磁気的に繋がったものであればよい。第1シールド部分121および第2シールド部分122は、例えばパーマロイ(NiFe)などの軟質強磁性材料により構成され得る。
【0017】
第1シールド部分121は、回転軸J1の方向と直交する面に沿ってセンサチップ11を取り囲むように設けられている。第1シールド部分121は、例えば略円筒状の形状を有する。但し、第1シールド部分121の内面および外面の平面形状は、円に限定されるものではなく、楕円形状や多角形状であってもよい。また、第1シールド部分121は、ヨーク部30の一部もしくは全部、および磁石21,22の一部もしくは全部をも、回転軸方向と直交する面に沿って取り囲むように設けられていてもよい。
【0018】
第2シールド部分122は、センサチップ11から見て磁場発生モジュール2と反対側に設けられている。第2シールド部分122は、例えば回転軸J1と直交する面に沿って延在する円板状の部材である。第2シールド部分122には、ホルダ14が取り付けられている。ホルダ14は、突起部14Tを有している。突起部14Tが、第2シールド部分122に設けられている開口12K1に圧入されることで、ホルダ14が第2シールド部分122に固定されるようになっている。ホルダ14には、端子部13が立設しており、第2シールド部分122に設けられている開口12K2を貫いている。端子部13は、例えば本体131とリード132とを含んでいる。本体131はホルダ14と一体化されたものであってもよい。ホルダ14の、第2シールド部分122と反対側の面には回路基板15が取り付けられている。回路基板15には、リード132の端部が接続されている。さらに、回路基板15の、ホルダ14と反対側にはセンサチップ11が設けられている。センサチップ11からの信号は回路基板15と、リード132とを介して外部へ取り出すことができるようになっている。なお、第1シールド部分121に開口12K2を設け、その開口12K2を回転軸J1と直交する方向に貫くように端子部13を設けるようにしてもよい。但し、第1シールド部分121に開口12K2を設けるよりも第2シールド部分122に開口12Kを設けるようにしたほうが、磁気シールド12によるセンサチップ11に対する磁場の遮蔽効果を高めることができる。
【0019】
(磁場発生部20)
磁場発生部20は、例えば磁場発生部材としての磁石21および磁石22を有している。磁石21および磁石22は、いずれも、略立方体形状または略直方体形状などの、基本的に平面のみを有する形状を有しているとよい。磁石21および磁石22は、回転軸J1の周囲に互いに離間して配置されている。例えば、磁石21と回転軸J1との距離が磁石22と回転軸J1との距離と等しくなっているとよい。ここでいう磁石21と回転軸J1との距離、および磁石22と回転軸J1との距離とは、例えば図2に示したように、例えば回転軸J1と直交する面における、磁石21の幾何学的な中心位置P21と回転軸J1との距離21D、および磁石22の幾何学的な中心位置P22と回転軸J1との距離22Dである。磁気検出素子41は、回転軸J1と直交する面に沿った面内方向において、回転軸J1の位置と一致する位置に配置されているとよい。また、磁石21および磁石22における各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じであるとよい。磁石21および磁石22は、例えば回転軸J1を挟んで対向するように、回転軸J1に対して回転対称の位置に設けられているとよい。また、図3に示したように、磁石21および磁石22は、いずれも回転軸方向に着磁されている。磁石21および磁石22の各々の構成材料としては、例えばNdFeBなどのネオジム系磁石材料のほか、SmCoなどの希土類磁石材料が挙げられる。
【0020】
(ヨーク部30)
ヨーク部30は、例えば回転軸J1の周囲において互いに離間して配置されたヨーク31およびヨーク32を有している。ヨーク31およびヨーク32は、例えば、回転軸J1と直交する断面において、回転軸J1を中心として回転する方向、すなわち回転方向R1に沿って円弧状に湾曲した平面形状をそれぞれ有する。回転軸J1からみた円弧状のヨーク31,32の中心角は、例えば磁気検出素子41の位置と、磁石21の位置と、磁石22の位置と、磁気シールド12の位置との組み合わせなどにより決定される。
【0021】
ヨーク31,32は、それぞれ、回転軸J1と直交する面に沿って回転軸J1から遠ざかるほど回転軸方向の高さ寸法が増大する部分を含んでいる。具体的には、ヨーク31では、例えば回転軸J1と対向する内側の端面の高さ寸法31H1が最も小さく、回転軸J1と反対側である外側の端面の高さ寸法31H2が最も大きい。ヨーク31では、その上面S31が傾斜面となっている。傾斜面である上面S31は、回転軸J1に対して傾斜していると共に回転軸J1と直交する面に対しても傾斜している。なお、図1Bおよび図3に示した例ではヨーク31の上面S31が傾斜面となっているが、ヨーク31の下面、すなわち、磁石21と対向する面が傾斜面となっていてもよい。但し、ヨーク31のうちの磁石21と対向する面が傾斜面である場合、磁石21の上面、すなわち、磁石21のうちのヨーク31と対向する面もヨーク31の傾斜面に沿った傾斜面となっているとよい。いずれにせよ、ヨーク31と磁石21とが、それらの間に隙間が生じないように、互いに密接した状態となっているとよい。同様に、ヨーク32では、例えば回転軸J1と対向する内側の端面の高さ寸法32H1が最も小さく、回転軸J1と反対側である外側の端面の高さ寸法32H2が最も大きい。ヨーク32では、その上面S32が傾斜面となっている。傾斜面である上面S32は、回転軸J1に対して傾斜していると共に回転軸J1と直交する面に対しても傾斜している。なお、図1Bおよび図3に示した例ではヨーク32の上面S32が傾斜面となっているが、ヨーク32の下面、すなわち、磁石22と対向する面が傾斜面となっていてもよい。但し、ヨーク32のうちの磁石22と対向する面が傾斜面である場合、磁石22の上面、すなわち、磁石22のうちのヨーク32と対向する面もヨーク32の傾斜面に沿った傾斜面となっているとよい。いずれにせよ、ヨーク32と磁石22とが、それらの間に隙間が生じないように、互いに密接した状態となっているとよい。
【0022】
ヨーク31およびヨーク32は、例えば回転軸J1を挟んで対向するように、回転軸J1に対して回転対称の位置に設けられているとよい。ヨーク31およびヨーク32は、それぞれ、例えば回転軸方向において磁石21および磁石22と重なり合う位置にある。また、図3に示したように、ヨーク31およびヨーク32は、それぞれ、磁石21および磁石22と接するように設けられている。なお、ヨーク31およびヨーク32は、それぞれ、磁石21および磁石22から離間して配置されていてもよい。但し、ヨーク31およびヨーク32は、それぞれ、磁石21および磁石22と磁気的に繋がっていることが好ましい。また、例えばヨーク31と回転軸J1との距離がヨーク32と回転軸J1との距離と等しくなっているとよい。ここでいうヨーク31と回転軸J1との距離、およびヨーク32と回転軸J1との距離とは、例えば図2に示したように、例えば回転軸J1と直交する面における、ヨーク31の幾何学的な中心位置P31と回転軸J1との距離31D、およびヨーク32の幾何学的な中心位置P32と回転軸J1との距離32Dである。なお、本実施の形態の磁場発生モジュール2では、ヨーク31の中心位置P31が磁石21の中心位置P21と一致していると共にヨーク32の中心位置P32が磁石22の中心位置P22と一致しており、すなわち距離21D,22D,31D,32Dが全て一致している場合を例示している。したがって、磁気検出素子41は、回転軸J1と直交する面に沿った面内方向において、回転軸J1上に位置する。さらに、ヨーク31およびヨーク32における各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じであるとよい。したがって、例えば高さ寸法31H1と高さ寸法32H1とが互いに実質的に同じであり、高さ寸法31H2と高さ寸法32H2とが互いに実質的に同じであるとよい。また、回転軸J1に対する傾斜面S31の傾斜角度と、回転軸J1に対する傾斜面S32の傾斜角度とが互いに実質的に同じであるとよい。ここで、回転軸方向における磁石21の高さ寸法21Hは、回転軸方向におけるヨーク31の高さ寸法31H2よりも大きい。同様に、回転軸方向における磁石22の高さ寸法22Hは、回転軸方向におけるヨーク32の高さ寸法32H2よりも大きい。ヨーク31およびヨーク32の各々の構成材料としては、例えばNiFeなどの軟磁性材料が挙げられる。
【0023】
先に述べたように、角度検出装置10では、第1シールド部分121が、ヨーク部30の一部もしくは全部、および磁石21,22の一部もしくは全部をも、回転軸J1と直交する面に沿って取り囲むように設けられているとよい。その場合、図3に示したように、角度検出装置10では、第1シールド部分121の内面IS121と回転軸J1との距離121Dは、磁石21の外面OS21と回転軸J1との距離21D2よりも長くなっている。また、第1シールド部分121の内面IS121と回転軸J1との距離121Dは、ヨーク31の外面OS31と回転軸J1との距離31D2よりも長くなっている。なお、図3では、距離21D2と距離31D2とが一致している構成例を示している。同様に、距離121Dは、磁石22の外面OS22と回転軸J1との距離22D2よりも長くなっている。距離121Dは、ヨーク32の外面OS32と回転軸J1との距離32D2よりも長くなっている。なお、図3では、距離22D2と距離32D2とが一致している構成例を示している。さらに、図3に示したように、磁石21,22の各々の少なくとも一部は、回転軸J1の方向と直交する面に沿った面方向において、第1シールド部分121と重なり合うように設けられているとよい。
【0024】
(支持体4)
支持体4は、磁石21および磁石22を支持するための部材であり、例えば円板状の形状を有している。支持体4は、例えばその中央に取付穴4Kを有しており、ねじなどによって回転体に取り付け可能に構成されている。角度検出システム100が、上述したスロットル開度センサとして適用される場合、支持体4は例えば回転体であるスロットルバルブの回転シャフトに連結され、支持体3は例えば内燃機関のフレーム等に固定されることとなる。ヨーク31およびヨーク32は、例えば磁石21および磁石22に固定される。ただし、ヨーク31およびヨーク32は、支持体4に直接固定されずに間接的に固定されるようになっていてもよい。いずれにせよ、磁場発生部20およびヨーク部30は支持体4と一体となって回転方向R1に回転可能に設けられている。
【0025】
[角度検出システム100の動作]
角度検出システム100では、支持体4が取り付けられた回転体(例えばスロットルバルブの回転シャフト)が回転すると、支持体4、磁場発生部20およびヨーク部30は一体となって回転方向R1に回転する。これに伴い、センサモジュール1のセンサチップ11を通過する検出対象磁場(磁束)の向きが周期的に変化することとなる。その結果、センサチップ11における磁気検出素子41では、磁場発生モジュール2の回転角度に応じて正弦曲線を描くように変化する強度の磁場(磁束)が検出される。したがって、磁気検出素子41において検出される磁場(磁束)の値から磁場発生モジュール2が固定された回転体の回転角度を求めることができる。
【0026】
[角度検出システム100の作用効果]
上記実施の形態の角度検出システム100の角度検出装置10は、センサモジュール1と、磁場発生モジュール2とを備えている。センサモジュール1は、センサチップ11と磁気シールド12とを有する。センサチップ11は、磁気検出素子41を含む。磁気シールド12は、磁気検出素子41を取り囲むように設けられている。磁場発生モジュール2は、磁場発生部20とヨーク部30とを有する。磁場発生部20は、磁石21,22とヨーク31,32とを含む。磁石21,22は、磁気検出素子41に印加される磁場を形成するようになっている。ヨーク31,32は、回転軸方向において磁気検出素子41と磁石21,22との間に配置されている。
【0027】
このように、角度検出装置10は、磁気シールド12を有するので、磁気検出素子41が磁気ノイズキャンセル機能を有しないものであっても、例えば図4に示した第1の参考例としての角度検出装置110Aのように磁気シールド12に相当する構成要素を設けない場合と比較して、角度検出精度が向上する。すなわち、角度検出装置10によれば、センサモジュール1と、磁場発生モジュール2との相対角度の変化を高い精度で検出することができる。磁場発生部20が発生する磁場以外の不要な外乱磁場を磁気シールド12が遮蔽し、磁気検出素子41に及ぶ外乱磁場を低減するからである。特に、本実施の形態の角度検出装置10では、磁気シールド12が、第1シールド部分121および第2シールド部分122が連結された構造を有する。このため、回転軸J1と直交する面内方向に沿った外乱磁場を第1シールド部分121により遮蔽し、回転軸J1に沿った回転軸方向の外乱磁場を第2シールド部分122により遮蔽することができる。よって、磁気検出素子41に及ぶ外乱磁場の強度を極めて小さくすることができる。なお、センサチップ11から見て第2シールド部分122と反対側は磁気シールド12の開口となっているが、その開口には磁気検出素子41に印加する磁場を生成する磁石21,22が設けられている。よって、磁気シールド12の開口から進入してセンサチップ11に及ぶ外乱磁場の影響は十分に小さく低減できる。なお、図4は、第1の参考例としての角度検出装置110Aの断面図であり、本実施の形態の角度検出装置10の断面図である図3に対応するものである。但し、磁気検出素子41が磁気ノイズキャンセル機能を有するなど、外乱磁場の影響を低減するための他の対策が講じられている場合は、磁気シールド12を設けなくともよい。
【0028】
図5は、回転軸J1に対して直交する面内に3000A/mの外乱磁場を付与しつつ角度検出を行った際の、本実施の形態の角度検出装置10と第1の参考例としての角度検出装置110A(図4)との検出角度誤差を比較した結果の一例である。図5では、横軸がセンサチップ11に対する磁場発生モジュール2の回転角度[deg.]を示し、縦軸が、センサチップ11により検出される角度の誤差[deg.]を示す。曲線C10が本実施の形態の角度検出装置10の角度誤差を表し、曲線C110Aが第1の参考例の角度検出装置110Aの角度誤差を表している。図5に示したように、第1の参考例としての角度検出装置110Aでは、およそ±4[deg.]程度の角度誤差を生じるところ、本実施の形態の角度検出装置10では±0.5[deg.]以内の角度誤差に抑えることができている。したがって、磁気シールド12を設けることは、外乱磁場による角度検出誤差を低減するのに極めて有効である。
【0029】
さらに、角度検出装置10では、磁石21,22が回転軸J1の方向に沿って着磁されている。このため、例えば磁石21,22が回転軸J1と直交する面内方向に沿って着磁されている場合と比較して、磁石21,22が形成する磁場の磁束が磁気シールド12(のうちの特に第1シールド部分121)に吸収されるのを回避しやすい。例えば図6Aに示した第2の参考例としての角度検出装置110Bは、磁石21,22の代わりに、直交する面内方向に沿って着磁された環状磁石200を有している。なお、環状磁石200の組成および体積は、磁石21,22の組成および合計の体積と同じとする。図6Aは、第2の参考例としての角度検出装置110Bの磁束密度分布を模式的に表した図である。また、図6Bに、図6Aの角度検出装置に用いられる環状磁石の構成例を拡大して示す。環状磁石200の中央には開口200Kが設けられている。図6Aの角度検出装置110Bでは、環状磁石200により発生した磁場の磁束の一部が磁気シールド12に吸収されてしまいやすい。図6Aでは、曲線Lv1で囲んだレベル1の領域が最も高い磁束密度を有することを表す。以下、曲線Lv2で囲んだレベル2の領域、曲線Lv3で囲んだレベル3の領域、曲線Lv4で囲んだレベル4の領域の順に徐々に磁束密度が低くなることを表している。図6Aに示したように、第2の参考例としての角度検出装置110Bでは、磁気シールド12のほぼすべてがレベル1の領域となっている。また、角度検出装置110Bでは、センサチップ11に及ぶ磁界の磁束密度がレベル4未満であることがわかる。
【0030】
これに対し、図6Cは、本実施の形態の角度検出装置10の磁束密度分布を模式的に表している。図6Cに示したように、本実施の形態の角度検出装置10では、磁石21,22が回転軸J1の方向に沿って着磁されていることから、磁気シールド12がレベル3の領域もしくはレベル4の領域となっており、磁石21,22が形成する磁場のうち磁気シールド12に吸収される成分が抑えられていることがわかる。また、角度検出装置10では、センサチップ11に及ぶ磁界の磁束密度がレベル4であることがわかる。したがって、本実施の形態の角度検出装置10によれば、磁石21,22が形成する磁場を効果的に磁気検出素子41に印加することができることがわかる。一例として、同じ材料により形成した磁石21,22をセンサチップ11に対して同じ距離に配置し、センサチップ11に対して同じ強度の磁束密度を印加すると仮定した場合、第2の参考例としての角度検出装置110Bでは本実施の形態の角度検出装置10に比べて磁石21,22の体積が約2.84倍となる。本実施の形態の角度検出装置10では、磁気シールド12を設けることで約20%の磁束密度の低下が生じるところ、第2の参考例としての角度検出装置110Bでは磁気シールド12を設けることで約62%の磁束密度の低下が生じる。
【0031】
以上のことから、磁石21,22の形成磁場を検出する磁気検出素子41が配置される位置での有効磁束密度の低下を抑制しつつ、外乱磁場の影響を小さくすることができると言える。さらに、磁石21,22が回転軸方向に沿って着磁されているので、例えば回転軸J1と直交する面方向に磁石21,22が着磁されている場合と比較して高い磁束密度の磁場を磁気検出素子41に印加することができる。
【0032】
また、本実施の形態の角度検出装置10では、磁石21,22と一体に回転可能に設けられたヨーク31,32を備えるようにした。このため、例えばヨークを設けない場合と比較して、角度検出精度が向上する。
【0033】
さらに、本実施の形態の角度検出装置10では、ヨーク31,32が、回転軸J1と直交する面において、回転軸J1を中心とする円の円周方向に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有するうえ、回転軸J1と直交する面に沿って回転軸J1から遠ざかるほど回転軸J1に沿った高さ寸法が増大する部分を含むようにしている。このため、例えば磁気検出素子41を含むセンサチップ11と磁石21,22およびヨーク31,32との相対的な位置にずれが生じた場合であっても、磁気検出素子41による検出角度誤差への影響が及びにくくなっている。これは、ヨークが回転軸J1を中心とする円の円周方向に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有さない場合、あるいは、ヨークが回転軸J1と直交する面に沿って回転軸J1から遠ざかるほど回転軸J1に沿った高さ寸法が増大する部分を含まない場合と比較して、本実施の形態の角度検出装置10では、回転軸J1の近傍において磁束密度が一定の空間領域が広がるためである。
【0034】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、ヨーク31,32がそれぞれ回転軸方向において磁石21,22と重なり合う位置に配置されている場合、ヨーク31,32がそれぞれ回転軸方向において磁石21,22と重なり合わない位置にある場合と比較して、ヨーク31,32の集磁効果が向上し、センサチップ11の近傍領域における検出対象磁場の強度分布、すなわち磁束密度の分布のばらつきが低減される。その結果、角度検出精度がより向上する。
【0035】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、ヨーク31,32がそれぞれ回転軸方向において磁石21,22と接するように配置されている場合、ヨーク31,32がそれぞれ磁石21,22と離間して配置されている場合と比較して、ヨーク31,32の集磁効果が向上し、センサチップ11の近傍領域における検出対象磁場の強度分布、すなわち磁束密度の分布のばらつきが低減される。その結果、角度検出精度がより向上する。
【0036】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、回転軸方向における磁石21,22の高さ寸法21H,22Hが、それぞれ、回転軸方向におけるヨーク31,32の高さ寸法31H2,32H2よりも大きくなるようにすると、磁石21,22の体積とヨーク31,32の体積とのバランスを良好に保つことができる。このため、より高い強度の検出対象磁場を効果的にセンサチップ11に供給しつつ、全体として特に回転軸方向の寸法を縮小化するのに有利となる。
【0037】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、磁石21および磁石22が回転軸方向に着磁されていると、回転軸方向に沿った感度軸を有する磁気検出素子41に対して回転軸方向に沿った検出対象磁場を効果的に付与することができる。
【0038】
また、本実施の形態の角度検出装置10によれば、磁石21および磁石22は、いずれも略立方体形状または略直方体形状を有するようにしたので、例えば円弧状をなす磁石と比較して、磁石21および磁石22を作製する際の加工性に優れ、例えば量産性の面で有利である。
【0039】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、磁場発生部20が回転軸J1の周囲において互いに離間して配置された一組の磁石21および磁石22を有するようにした場合、磁場発生部20が1つの磁石のみを有する場合と比較して、角度検出精度を損なわずに磁石21および磁石22の合計の体積を低減することができ、軽量化を図ることができる。
【0040】
また、本実施の形態の角度検出装置10において、磁石21の材料、形状および大きさと磁石22の材料、形状および大きさとをそれぞれ互いに実質的に同じにすれば、それらが互いに異なる場合と比較して、角度検出精度をより向上させることができる。さらに、距離21Dと距離22Dとが一致するようにすれば、距離21Dと距離22Dとが異なる場合と比べて、角度検出精度をより向上させることができる。センサモジュール1に付与される検出対象磁場の、磁場発生モジュール2の回転角度に起因するばらつきが低減されるからである。
【0041】
また、本実施の形態の角度検出装置10のように、ヨーク31,32が回転軸J1と直交する面において、回転方向R1に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有するようにした場合、ヨーク31,32が例えば直線状に延在する平面形状を有する場合と比較して、角度検出精度をより向上させることができる。センサモジュール1に付与される検出対象磁場の、磁場発生モジュール2の回転角度に起因するばらつきが低減されるからである。
【0042】
また、ヨーク部30が、回転軸J1の周囲において互いに離間して配置されたヨーク31およびヨーク32を有するようにした場合、例えばヨーク31とヨーク32とが繋がって1つの円環状をなす場合と比較して、軽量化を図ることができる。
【0043】
また、ヨーク31およびヨーク32が、回転軸J1に対して回転対称の位置に設けられるようにすれば、それらが回転対称の位置にない場合と比較して、角度検出精度をより向上させることができる。さらに、距離31Dと距離32Dとが一致するようにすれば、距離31Dと距離32Dとが異なる場合と比べて、角度検出精度をより向上させることができる。これらはいずれも、センサモジュール1に付与される検出対象磁場の、磁場発生モジュール2の回転角度に起因するばらつきが低減されるからである。
【0044】
<2.実験例>
次に、図1に示した上記実施の形態の角度検出装置10について、ヨーク31,32の形状と、検出角度誤差との関係について調べた。
【0045】
(実験例1-1)
上記実施の形態の角度検出装置10について、回転軸J1と直交する面内での磁気検出素子41の中心位置CPが、回転軸J1の位置から0mm~1.0mmの範囲でずれたときの検出角度誤差を調べた。その結果を図7に示す。ここでは、磁石21,22が形成する磁場以外の外部磁場を印加しないようにして磁場発生モジュール2の回転動作を行った際のセンサモジュール1が検出する磁場発生モジュール2の回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。また、磁石21および磁石22はネオジム磁石(ネオジム、 鉄、 ホウ素を主成分とする希土類磁石とし、磁石21および磁石22の各々の寸法は6.0mm×2.5mm×5.0mmとし、距離21Dおよび距離22Dは4.75mmとした。また、円弧状のヨーク31,32の各々の材質はSPCC(普通鋼)とし、ヨーク31,32の中心角はそれぞれ90°とし、ヨーク31,32の高さ寸法31H1,32H1は0.5mmとし、ヨーク31,32の高さ寸法31H2,32H2はそれぞれ2.5mmとした。さらに、回転軸方向におけるヨーク31,32と磁気検出素子41との距離は1mmとした。
【0046】
(実験例1-2)
ヨーク31,32を含むヨーク部30の代わりに、図8Aに示したヨーク31A,32Aを含むヨーク部30Aを用いるようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7に示す。ヨーク31A,32Aは、円環状部材の一部分をなすような平面形状を有するものの、回転軸方向において実質的に一定の高さ寸法を有する軟質強磁性体である。なお、ヨーク31A,32Aの組成および体積は、ヨーク31,32の組成および体積と同じとした。
【0047】
(実験例1-3)
ヨーク31,32を含むヨーク部30の代わりに、図8Bに示したヨーク31B,32Bを含むヨーク部30Bを用いるようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7に示す。ヨーク31B,32Bは、傾斜面S31B,S32Bを有するものの、回転軸J1と直交する面内方向において湾曲せずに直線状に延在する、略三角柱状の軟質強磁性体である。なお、ヨーク31B,32Bの組成および体積は、ヨーク31,32の組成および体積と同じとした。
【0048】
(実験例1-4)
ヨーク31,32を用いないようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7に示す。
【0049】
(実験例1-5)
図6Aに示したように回転軸J1と直交する面内方向に着磁された環状磁石200を用いるようにしたこと、およびヨーク31,32を用いないようにしたこと、を除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7に示す。
【0050】
図7に示したように、各実験例では、いずれも、回転軸J1の位置に対する中心位置CPの軸ずれ量[mm]が大きくなるほど検出角度誤差が増大することが確認された。しかしながら、本実施の形態の角度検出装置10に対応する実験例1-1では、他の実験例1-2~1-5と比較して、十分に検出角度誤差が低減されることが確認できた。
【0051】
(実験例2-1)
続いて、上記実施の形態で説明した図3の角度検出装置10について、磁石21,22が生成する磁場のうち、図3に紙面左右方向、すなわち磁石21と磁石22とが対向する方向の磁場成分の磁束密度分布をシミュレーションによって求めた。なお、磁気検出素子41は、磁石21と磁石22とが対向する方向の磁場の強度を検出するようになっている。図9Aは、実験例2-1としての角度検出装置10の、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図9Aでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32との間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図9Bは、実験例2-1としての角度検出装置10についての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図9Aおよび図9Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【0052】
(実験例2-2)
次に、ヨーク部30を図8Aに示したヨーク部30Aに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10Aについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図10Aは、実験例2-2としての角度検出装置10Aの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図10Bでは、磁石21およびヨーク31Aと磁石22およびヨーク32Aとの間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図10Bは、実験例2-2としての角度検出装置10Aについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図10Aおよび図10Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【0053】
(実験例2-3)
次に、ヨーク部30を図8Bに示したヨーク部30Bに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10Bについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図11Aは、実験例2-3としての角度検出装置10Bの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図11Aでは、磁石21およびヨーク31Bと磁石22およびヨーク32Bとの間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図11Bは、実験例2-3としての角度検出装置10Bについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図11Aおよび図11Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【0054】
(実験例2-4)
次に、ヨーク31,32を有しないことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10Cについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図12Aは、実験例2-4としての角度検出装置10Cの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図12Aでは、磁石21と磁石22との間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図12Bは、実験例2-4としての角度検出装置10Cについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図12Aおよび図12Bでは、磁石21と磁石22とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【0055】
(実験例2-5)
次に、図6Bに示した環状磁石200を用いるようにしたこと、およびヨーク31,32を有しないこと、を除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置110Bについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図13Aは、実験例2-5としての角度検出装置110Bの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図13Aでは、環状磁石200の開口200Kの近傍の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図13Bは、実験例2-5としての角度検出装置110Bについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図13Aおよび図13Bでは、環状磁石200の径方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【0056】
図9A~13Bに示したように、実験例2-1(図9A,9B)では、他の実験例2-2~2-5と比較して、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分につき、センサチップ11の近傍にほぼ同等の磁束密度の領域がより広く確保できていることが確認できた。図9Bと、図10B,11B,12B,13Bとの比較から、実験例2-1(図9B)では、他の実験例2-2~2-5と比較して、センサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルの向きがX軸方向に揃っている。したがって、センサチップ11の中心位置CPが磁石21,22の位置およびヨーク31,32の位置に対して多少ずれたとしても、実験例2-1(図9B)では、他の実験例2-2~2-5と比較してセンサチップ11で検出される角度の誤差がより小さく抑えられることがわかった。
【0057】
また、実験例2-1(図9A)では、センサチップ11が、曲線Lv4で囲んだレベル4の領域に含まれている。よって、他の実験例2-2~2-5(図10B,11B,12B,13B)と比較して、磁石21,22の形成する磁場が効果的にセンサチップ11に付与されていることが確認できた。なお、図9A,10A,11A,12A,13Aでは、曲線Lv1で囲んだレベル1の領域が最も高い磁束密度を有することを表す。以下、曲線Lv2で囲んだレベル2の領域、曲線Lv3で囲んだレベル3の領域、曲線Lv4で囲んだレベル4の領域の順に徐々に磁束密度が低くなることを表している。また、図9A,10A,11A,12A,13Aに示したレベル1(Lv1)~レベル4(Lv4)がそれぞれ意味する磁束密度の値は、図9A,10A,11A,12A,13Aの全てにおいて共通している。
【0058】
実験例2-3(図11A)では、センサチップ11の周辺領域は曲線Lv4で囲んだレベル4の領域に含まれているが、センサチップ11の中央領域はレベル4よりも低い磁束密度の領域に含まれている。実験例2-3(図11A)では、磁石21と磁石22との中間点近傍において少し磁束密度が低下する傾向があるためである。したがって、実験例2-1(図9A)と比較すると、実験例2-3(図11A)では、中心位置CPの軸ずれ量の増大に伴う検出角度誤差が大きくなりやすいことが確認できた。
【0059】
また、実験例2-4(図12A)では、センサチップ11がレベル4よりも低い磁束密度の領域に含まれている。さらに、実験例2-4(図12A)では、磁石21と磁石22との間の空間領域での磁束密度分布に比較的大きなばらつきがあることが確認できた。
【0060】
また、実験例2-5(図13A)では、センサチップ11がレベル4よりも低い磁束密度の領域に含まれている。さらに、実験例2-5(図13A)では、磁石21と磁石22との間の空間領域での磁束密度分布の平坦性が十分に得られないことが確認できた。
【0061】
このように、本実施の形態の角度検出装置10に対応する実験例2-1(図9A)では、ヨーク31,32が、回転軸J1と直交する面において、回転軸J1を中心とする円の円周方向に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有するうえ、回転軸J1と直交する面に沿って回転軸J1から遠ざかるほど回転軸J1に沿った高さ寸法が増大する部分を含むようにしている。このため、センサチップ11の位置が磁石21,22の位置およびヨーク31,32の位置に対してずれた場合であっても、センサチップ11による検出角度誤差が低く抑えられることがわかった。さらに、上記のような形状のヨーク31,32を有することにより、磁石21,22の形成磁場が効率的にセンサチップ11に印加されることから、磁石21,22の小型化・軽量化に資することが確認できた。
【0062】
(実験例3-1)
続いて、上記実施の形態で説明した図3の角度検出装置10について、磁石21,22が生成する磁場とは別に、図3に紙面奥行き、すなわち磁石21と磁石22との対向方向と直交する方向に25mTの外乱磁場を付与し、その影響を調べた。具体的には、その外乱磁場を印加しない場合を基準としたときの、センサチップ11に印加される外乱磁場の方向の磁場の増分ΔBy[mT]、および検出角度誤差ΔAE[deg.]を調べた。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
(実験例3-2)
ヨーク部30を図8Aに示したヨーク部30Aに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10A(図10A)について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0065】
(実験例3-3)
ヨーク部30を図8Bに示したヨーク部30Bに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10B(図11A)について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0066】
(実験例3-4)
ヨーク31,32を有しないことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10C(図12A)について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0067】
(実験例4-1)
磁気シールド12が第1シールド部分121のみからなることを除き、すなわち、円筒状の磁気シールド12Aを有することを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10D(図14)について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0068】
(実験例5-1)
磁気シールド12を有しないことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10(図9A)の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0069】
(実験例5-2)
磁気シールド12を有しないことを除き、他は角度検出装置10A(図10A)の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0070】
(実験例5-3)
磁気シールド12を有しないことを除き、他は角度検出装置10B(図11A)の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0071】
(実験例5-4)
ヨーク31,32および磁気シールド12を有しないことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【0072】
表1に示したように、実験例3-1においてセンサチップ11に印加される外乱磁場の方向の磁場の増分ΔBy[mT]、および検出角度誤差ΔAE[deg.]を最も低減できることが確認できた。また、実験例3-1~3-4と実験例5-1~5-4との比較から、ヨークの有無に関わらず、およびヨークの形状に関わらず、磁気シールドを設けることにより、センサチップ11に印加される外乱磁場の方向の磁場の増分ΔBy[mT]、および検出角度誤差ΔAE[deg.]を効果的に低減できることが確認できた。さらに、円筒状の磁気シールド12Aであっても、磁気シールドを全く設けない場合よりもセンサチップ11に印加される外乱磁場の方向の磁場の増分ΔBy[mT]、および検出角度誤差ΔAE[deg.]を十分に低減できることが確認できた。
【0073】
<3.適用例>
(第1の適用例)
図15Aおよび図15Bは、上記実施の形態で説明した角度検出システム100を有するパークロックシステム200を表す模式図である。パークロックシステム200は、例えば自動車等の車両に搭載され、運転者が車両を駐車場などに駐車する際にシフトレバーをパーキングモードにすることで車両の移動を抑止する機構である。図15Aはロックされていないロック解除状態を表し、図15Bは、ロック状態を表す。パークロックシステム200は、例えば筐体201の内部に設けられたモータ202と、シャフト203と、レバー204と、ロッド205と、係合部206と、ギヤ歯207を有するパーキングギヤ208とを備える。シャフト203は例えば紙面に垂直の方向に延在しており、モータ202により回転可能に設けられている。シャフト203の端部には上記実施の形態の角度検出システム100が設けられており、シャフト203の回転角度を検出するようになっている。紙面に平行に延びるレバー204の基端はシャフト203に固定され、モータ202の駆動により紙面に沿って旋回するようになっている。レバー204の先端にはロッド205の基端が取り付けられており、レバー204の旋回により、紙面左右方向にロッド205が移動するようになっている。ロッド205の先端に設けられた係合部206は、ギヤ歯207と係合および離脱可能になっている。このパークロックシステム200では、図15Aに示したロック解除状態から図15Bに示したロック状態に移行することにより、パーキングギヤ208の回転が制限される。具体的には、モータ202の回転によりシャフト203およびレバー204が紙面において右回転すると、ロッド205が紙面右方向へスライドし、係合部206がギヤ歯207と係合し、パーキングギヤ208がロックされる。反対に、図15Bに示したロック状態から図15Aに示したロック解除状態に移行することにより、パーキングギヤ208の回転の制限が解除される。具体的には、モータ202の回転によりシャフト203およびレバー204が紙面において左回転すると、ロッド205が紙面左方向へスライドし、係合部206がギヤ歯207から離間し、パーキングギヤ208のロックが解除される。ここで、上記実施の形態の角度検出システム100によりシャフト203の回転角度を検出することで、パーキングギヤ208がロック状態にあるか、ロック解除状態にあるかを高い精度で判別することができるようになっている。
【0074】
(第2の適用例)
図16Aおよび図16Bは、上記実施の形態で説明した角度検出システム100を有するペダルシステム300を表す模式図である。図16Aはペダル303のパッド303B(後述)が操作されていない初期状態を表し、図16Bは、パッド303Bが操作されている踏み込み状態を表す。
【0075】
ペダルシステム300は、例えば、筐体301と、筐体301に固定されたシャフト302と、シャフト302が挿通される軸受け部303Aを含み、軸受け部303Aにおいてシャフト302を中心として回動可能に設けられたペダル303と、例えば引張ばねなどの付勢部材304とを備えている。
【0076】
ペダル303は、例えば運転者の足により操作されるパッド303Bと、パッド303Bと軸受け部303Aとをつなぐアーム303Cと、軸受け部303Aを挟んでアーム303Cと反対側に設けられたレバー303Dとを含んでいる。レバー303Dは付勢部材304と接続されており、筐体301の壁部301Wに近づくように付勢部材304により付勢されるようになっている。
【0077】
軸受け部303Aの近傍に設けられた角度検出システム100は、シャフト302を回転中心としたアーム303Cの回転角度を正確に検出し、回転角度に応じた電圧信号(比例信号)を制御装置305に送信するようになっている。制御装置305はこの電圧信号を解析し、電圧信号に応じたスロットルバルブ開度となるように、スロットルバルブの開閉動作の制御を行うようになっている。
【0078】
このペダルシステム300では、図16Aに示した初期状態においてパッド303Bが運転者により踏み込まれることにより、ペダル303がシャフト302を中心として紙面において左回転し、図16Bに示した踏み込み状態へ移行する。その際、スロットルバルブの開度が上昇する。反対に、運転者がパッド303Bの踏み込み量を下げる、あるいは踏み込みをやめることにより、図16Bに示した踏み込み状態から図16Aに示した初期状態に向かうこととなる。その際、スロットルバルブの開度は低下する。
【0079】
このように、ペダルシステム300では、上記実施の形態の角度検出システム100によりアーム303Cの回転角度を正確に検出できるので、スロットルバルブ開度を高い精度で調節することができる。
【0080】
<5.その他の変形例>
以上、実施の形態およびいくつかの変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、磁気検出素子として垂直ホール素子を例示して説明したが、本発明の磁気検出素子は、磁場を検出する機能を有する素子であればよく、例えば異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)やスピンバルブ型の巨大磁気抵抗効果(GMR)素子、トンネル磁気抵抗効果(TMR)素子等の磁気抵抗効果素子(MR素子)等をも含む概念である。GMR素子やTMR素子などのMR素子を用いる場合、回転軸J1と直交する面内における磁場の向きや強度の変化を検出することとなる。本発明では、回転軸方向における磁場強度分布(磁束密度分布)のばらつきを低減できるだけでなく、回転軸と直交する面内における磁場強度分布(磁束密度分布)のばらつきをも低減できるので、MR素子等の、回転軸J1と直交する面内における磁場の向きや強度の変化を検出する磁気検出素子の適用も可能であると考えられる。また、各構成要素の寸法や各構成要素のレイアウトなどは例示であってこれに限定されるものではない。
【0081】
また、上記実施の形態および変形例では、磁気検出素子41を含むセンサチップ11が固定され、ヨーク部30および磁場発生部20が一体に回転するように設けられている場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、例えば磁石およびヨークが固定され、磁気検出素子が回転軸を中心として回転可能に設けられていてもよい。あるいは、磁石およびヨークと、磁気検出素子との双方が同じ回転軸を中心として回転可能に設けられていてもよい。
【0082】
また、上記実施の形態等では、角度検出装置10のセンサモジュール1が1つの磁気検出素子41を有する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の角度検出装置は、例えば2以上の磁気検出素子を有するようにしてもよい。その場合、2以上の磁気検出素子の全てを回転軸上に配置してもよいし、2以上の磁気検出素子の全てもしくは一部を回転軸の周囲に配置するようにしてもよい。すなわち、2以上の磁気検出素子は、回転軸の周囲であって、回転軸に沿った回転軸方向と直交する面内において互いに異なる位置に設けられていてもよい。2以上の磁気検出素子の各々から等距離にある中心位置は、例えば回転軸の位置と一致していることが望ましい。2以上の磁気検出素子を回転軸の周囲に配置する場合、磁気検出素子は、回転軸と直交する面に沿った面内方向において、磁石と回転軸との間に位置するとよい。
【0083】
また、上記実施の形態等では、角度検出装置10の磁場発生部20が2つの磁石を有する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の角度検出装置は、例えば磁場発生部材を1つのみ有するようにしてもよいし、3以上の磁場発生部材を有するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0084】
100…角度検出システム、10…角度検出装置、1…センサモジュール、2…磁場発生モジュール、3,4…支持体、11…センサチップ、12…磁気シールド、13…端子部、14…ホルダ、15…回路基板、20…磁場発生部、21,22…磁石、30…ヨーク部、31,32…ヨーク、41~43…磁気検出素子。





図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
【手続補正書】
【提出日】2022-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気検出素子と、
第1の方向に沿って着磁されており、前記磁気検出素子に印加される磁場を形成する磁場発生部材と、
前記第1の方向と直交する面に沿って前記磁気検出素子を取り囲むように設けられた第1の磁気シールドと
を備え、
前記磁場発生部材と、前記磁気検出素子とは、前記第1の方向に沿った回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている
角度検出装置。
【請求項2】
前記磁場発生部材は、前記回転軸の周囲に設けられている
請求項1に記載の角度検出装置。
【請求項3】
前記回転軸の周囲に互いに離間して配置される複数の前記磁場発生部材を備える
請求項1または請求項2に記載の角度検出装置。
【請求項4】
前記磁気検出素子は、前記第1の方向と直交する面に沿った面内方向において、前記回転軸と一致する位置に配置され、または、前記磁場発生部材と前記回転軸との間の位置に配置されている
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項5】
前記複数の磁場発生部材の各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じである
請求項3記載の角度検出装置。
【請求項6】
前記複数の磁場発生部材と前記回転軸との各々の距離は、互いに実質的に等しい
請求項4または請求項5記載の角度検出装置。
【請求項7】
前記磁気検出素子から見て前記磁場発生部材と反対側に設けられた第2の磁気シールドをさらに備える
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項8】
前記第1の磁気シールドおよび前記第2の磁気シールドは一体化されている
請求項7に記載の角度検出装置。
【請求項9】
前記第1の磁気シールドと前記回転軸との第1の距離は、
前記磁場発生部材と前記回転軸との第2の距離よりも長い
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項10】
前記磁場発生部材の少なくとも一部は、前記第1の方向と直交する面に沿った面方向において前記第1の磁気シールドと重なり合うように設けられている
請求項9に記載の角度検出装置。
【請求項11】
前記第1の方向において前記磁気検出素子と前記磁場発生部材との間に配置されたヨークをさらに備え、
前記磁場発生部材および前記ヨークと、前記磁気検出素子とは、前記回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項12】
前記ヨークは、前記第1の方向において前記磁場発生部材と重なり合う位置にある
請求項11に記載の角度検出装置。
【請求項13】
前記ヨークは、前記磁場発生部材と接するように設けられている
請求項11または請求項12に記載の角度検出装置。
【請求項14】
前記第1の方向の前記磁場発生部材の寸法は、前記第1の方向の前記ヨークの寸法よりも大きい
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項15】
前記ヨークは、前記回転軸と直交する面において、前記回転軸を中心とする円の円周方向に沿って円弧状に湾曲した平面形状を有する
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項16】
前記ヨークは、前記回転軸と直交する面に沿って前記回転軸から遠ざかるほど前記第1の方向の寸法が増大する部分を含む
請求項15記載の角度検出装置。
【請求項17】
前記ヨークは、前記回転軸に対して傾斜すると共に前記回転軸と直交する面に対しても傾斜する傾斜面を含む
請求項15または請求項16記載の角度検出装置。
【請求項18】
前記回転軸の周囲において互いに離間して配置された複数の前記ヨークを備える
請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項19】
前記複数のヨークの各々の材料、形状および大きさは、互いに実質的に同じである
請求項18記載の角度検出装置。
【請求項20】
前記複数のヨークと前記回転軸との各々の距離は、互いに実質的に等しい
請求項18または請求項19記載の角度検出装置。
【請求項21】
前記複数のヨークとして、前記回転軸を挟んで対向するように配置された第1のヨークおよび第2のヨークを有する
請求項18から請求項20のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項22】
前記磁気検出素子は、前記第1の方向と直交する面に沿った感度軸を有する
請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項23】
前記磁気検出素子を複数備える
請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の角度検出装置。
【請求項24】
複数の前記磁気検出素子は、前記第1の方向と直交する面に沿って互いに異なる位置に設けられている
請求項23記載の角度検出装置。
【請求項25】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の角度検出装置と、
前記磁場発生部材を支持する第1の支持体と、
前記第1の磁気シールドを支持する第2の支持体と
を備える
角度検出システム。
【請求項26】
請求項25に記載の前記角度検出システムを有する
パークロックシステム。
【請求項27】
請求項25に記載の前記角度検出システムを有する
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、磁気検出素子を備えた角度検出装置、角度検出システム、パークロックシステム、およびペダルシステムに関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一実施態様としての角度検出装置は、磁気検出素子と、第1の方向に沿って着磁されており、磁気検出素子に印加される磁場を形成する磁場発生部材と、第1の方向と直交する面に沿って磁気検出素子を取り囲むように設けられた第1の磁気シールドとを備える。磁場発生部材と、磁気検出素子とは、第1の方向に沿った回転軸を中心として相対的に回転可能に設けられている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の一実施態様としての角度検出装置では、第1の磁気シールドが磁気検出素子を取り囲むように設けられているので、磁気検出素子が外乱磁場から遮蔽される。また、磁場発生部材が第1の方向に沿って着磁されているので、磁場発生部材が形成する磁場の磁束が第1の磁気シールドに吸収されにくい。このため、磁場発生部材が形成する磁場が効果的に磁気検出素子に印加される。また、磁場発生部材が第1の方向に沿って着磁されているので、例えば第1の方向と直交する面内方向に磁場発生部材が着磁されている場合と比較して高い磁束密度の磁場が磁気検出素子に印加される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一実施態様としての角度検出装置によれば、第1の磁気シールドにより磁気検出素子が外乱磁場から遮蔽されるので、高い角度検出精度を得ることができる。また、第1の方向に磁場発生部材が着磁されているので、磁場発生部材が形成する磁場が効果的に磁気検出素子に印加することができ、磁場発生部材の小型化および磁場発生部材の軽量化が可能である。したがって、本発明の一実施態様としての角度検出装置によれば、小型軽量でありながら高い検出精度を発現することができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
図1A】本発明の一実施の形態に係る角度検出システムの全体構成例を表す概略斜視図である。
図1B図1Aに示した角度検出装置の分解斜視図である。
図2図1Aおよび図1Bに示した角度検出装置のうちの磁場発生モジュールの平面模式図である。
図3図1Aおよび図1Bに示した角度検出装置の断面図である。
図4】第1の参考例としての角度検出装置の断面図である。
図5図1Aに示した本発明の一実施の形態の角度検出装置と、図4に示した角度検出装置との検出角度誤差を比較した特性図である。
図6A】第2の参考例としての角度検出装置の磁束密度分布の一例を表す説明図である。
図6B図6Aの角度検出装置に用いられる環状磁石の構成例を表す斜視図である。
図6C図1Aに示した本発明の一実施の形態の角度検出装置の磁束密度分布の一例を表す説明図である。
図7】実験例1-1~1-5の角度検出装置における、磁気検出素子と回転軸との位置ずれに起因する検出角度誤差を表す特性図である。
図8A】実験例1-2の角度検出装置におけるヨークの外観を模式的に表す斜視図である。
図8B】実験例1-3の角度検出装置におけるヨークの外観を模式的に表す斜視図である。
図9A】実験例2-1の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図9B】実験例2-1の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図10A】実験例2-2の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図10B】実験例2-2の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図11A】実験例2-3の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図11B】実験例2-3の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図12A】実験例2-4の角度検出装置の、一対の磁石の対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図12B】実験例2-4の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図13A】実験例2-5の角度検出装置の、環状磁石の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。
図13B】実験例2-5の角度検出装置の、回転軸と直交する平面での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。
図14】実験例4-1の角度検出装置の断面図である。
図15A】本発明の角度検出装置を適用した第1の適用例としてのパークロックシステムの第1の模式図である。
図15B】本発明の角度検出装置を適用した第1の適用例としてのパークロックシステムの第2の模式図である。
図16A】本発明の角度検出装置を適用した第2の適用例としてのペダルシステムの第1の模式図である。
図16B】本発明の角度検出装置を適用した第2の適用例としてのペダルシステムの第2の模式図である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
図1Aに示したように、角度検出システム100は、例えば角度検出装置10と支持体3と支持体4とを備えている。角度検出装置10は、例えば、センサモジュール1と、磁場発生モジュール2とを備えている。センサモジュール1は、例えば支持体3により支持されており、磁場発生モジュール2は、例えば支持体4により支持されている。磁場発生モジュール2は、例えば磁場発生部20とヨーク部30とを備えている。磁場発生部20は、センサモジュール1において検出される検出対象磁場を形成する磁場発生部材を有しており、センサモジュール1に対して回転軸J1を中心として例えば回転方向R1へ回転可能に設けられている。センサモジュール1は、後述するように、磁気検出素子を有している。この磁気検出素子は、例えば磁場発生部材の形成する検出対象磁場の強度や検出対象磁場の向きなどを検出する。ヨーク部30は、回転軸方向において磁場発生部20とセンサモジュール1との間であって検出対象磁場の影響が及ぶ磁場影響領域に配置され、磁場発生部20と一体に回転可能に設けられている。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
(センサモジュール1)
センサモジュール1は、例えばセンサチップ11と、磁気シールド12と、端子部13と、ホルダ14と、回路基板15とを有している。センサチップ11は、例えば回転軸J1の上に配置されている。センサチップ11の、回転軸J1と直交する面内の中心位置CPは、回転軸J1と一致しているとよい。センサチップ11は、図2に示したように、上記磁気検出素子として例えば磁気検出素子41を有している。磁気検出素子41は、例えば磁場発生部材の形成する検出対象磁場の強度を検出する。磁気検出素子41は、例えばホール素子などの、磁場の強度を検出可能な素子である。磁気検出素子41は、例えば回転軸J1と直交する面に沿った感度軸を有している。すなわち、磁気検出素子41がホール素子である場合、磁気検出素子41は回転軸J1と直交する面に沿った磁場強度を検出できる。なお、磁気検出素子41は、回転軸J1と直交する面内において、中心位置CPにあるとよい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
[角度検出システム100の作用効果]
上記実施の形態の角度検出システム100の角度検出装置10は、センサモジュール1と、磁場発生モジュール2とを備えている。センサモジュール1は、センサチップ11と磁気シールド12とを有する。センサチップ11は、磁気検出素子41を含む。磁気シールド12は、磁気検出素子41を取り囲むように設けられている。磁場発生モジュール2は、磁場発生部20とヨーク部30とを有する。磁場発生部20は、磁石21,22を含む。ヨーク部30は、ヨーク31,32を含む。磁石21,22は、磁気検出素子41に印加される磁場を形成するようになっている。ヨーク31,32は、回転軸方向において磁気検出素子41と磁石21,22との間に配置されている。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
図5は、回転軸J1に対して直交する面内に3000A/mの外乱磁場を付与しつつ角度検出を行った際の、本実施の形態の角度検出装置10と第1の参考例としての角度検出装置110A(図4)との検出角度誤差を比較した結果の一例である。図5では、横軸がセンサチップ11に対する磁場発生モジュール2の回転角度[deg.]を示し、縦軸が、センサチップ11により検出される角度の誤差[deg.]を示す。曲線C10が本実施の形態の角度検出装置10の角度誤差を表し、曲線C110Aが第1の参考例の角度検出装置110Aの角度誤差を表している。図5に示したように、第1の参考例としての角度検出装置110Aでは、およそ±4[deg.]程度の角度誤差を生じるところ、本実施の形態の角度検出装置10では±0.5[deg.]以内の角度誤差に抑えることができている。したがって、磁気シールド12を設けることは、外乱磁場による検出角度誤差を低減するのに極めて有効である。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
さらに、角度検出装置10では、磁石21,22が回転軸J1の方向に沿って着磁されている。このため、例えば磁石21,22が回転軸J1と直交する面内方向に沿って着磁されている場合と比較して、磁石21,22が形成する磁場の磁束が磁気シールド12(のうちの特に第1シールド部分121)に吸収されるのを回避しやすい。例えば図6Aに示した第2の参考例としての角度検出装置110Bは、磁石21,22の代わりに、回転軸J1と直交する面内方向に沿って着磁された環状磁石200を有している。なお、環状磁石200の組成および体積は、磁石21,22の組成および合計の体積と同じとする。図6Aは、第2の参考例としての角度検出装置110Bの磁束密度分布を模式的に表した図である。また、図6Bに、図6Aの角度検出装置に用いられる環状磁石の構成例を拡大して示す。環状磁石200の中央には開口200Kが設けられている。図6Aの角度検出装置110Bでは、環状磁石200により発生した磁場の磁束の一部が磁気シールド12に吸収されてしまいやすい。図6Aでは、曲線Lv1で囲んだレベル1の領域が最も高い磁束密度を有することを表す。以下、曲線Lv2で囲んだレベル2の領域、曲線Lv3で囲んだレベル3の領域、曲線Lv4で囲んだレベル4の領域の順に徐々に磁束密度が低くなることを表している。図6Aに示したように、第2の参考例としての角度検出装置110Bでは、磁気シールド12のほぼすべてがレベル1の領域となっている。また、角度検出装置110Bでは、センサチップ11に及ぶ磁界の磁束密度がレベル4未満であることがわかる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
以上のことから、本実施の形態の角度検出装置10によれば、磁石21,22の形成磁場を検出する磁気検出素子41が配置される位置での有効磁束密度の低下を抑制しつつ、外乱磁場の影響を小さくすることができると言える。さらに、磁石21,22が回転軸方向に沿って着磁されているので、例えば回転軸J1と直交する面内方向に磁石21,22が着磁されている場合と比較して高い磁束密度の磁場を磁気検出素子41に印加することができる。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
(実験例1-1)
上記実施の形態の角度検出装置10について、回転軸J1と直交する面内での磁気検出素子41の中心位置CPが、回転軸J1の位置から0mm~1.0mmの範囲でずれたときの検出角度誤差を調べた。その結果を図7曲線C1-1で示す。ここでは、磁石21,22が形成する磁場以外の外部磁場を印加しないようにして磁場発生モジュール2の回転動作を行った際のセンサモジュール1が検出する磁場発生モジュール2の回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。また、磁石21および磁石22はネオジム磁石(ネオジム、 鉄、 ホウ素を主成分とする希土類磁石とし、磁石21および磁石22の各々の寸法は6.0mm×2.5mm×5.0mmとし、距離21Dおよび距離22Dは4.75mmとした。また、円弧状のヨーク31,32の各々の材質はSPCC(普通鋼)とし、ヨーク31,32の中心角はそれぞれ90°とし、ヨーク31,32の高さ寸法31H1,32H1は0.5mmとし、ヨーク31,32の高さ寸法31H2,32H2はそれぞれ2.5mmとした。さらに、回転軸方向におけるヨーク31,32と磁気検出素子41との距離は1mmとした。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
(実験例1-2)
ヨーク31,32を含むヨーク部30の代わりに、図8Aに示したヨーク31A,32Aを含むヨーク部30Aを用いるようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7曲線C1-2で示す。ヨーク31A,32Aは、円環状部材の一部分をなすような平面形状を有するものの、回転軸方向において実質的に一定の高さ寸法を有する軟質強磁性体である。なお、ヨーク31A,32Aの組成および体積は、ヨーク31,32の組成および体積と同じとした。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
(実験例1-3)
ヨーク31,32を含むヨーク部30の代わりに、図8Bに示したヨーク31B,32Bを含むヨーク部30Bを用いるようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7曲線C1-3で示す。ヨーク31B,32Bは、傾斜面S31B,S32Bを有するものの、回転軸J1と直交する面内方向において湾曲せずに直線状に延在する、略三角柱状の軟質強磁性体である。なお、ヨーク31B,32Bの組成および体積は、ヨーク31,32の組成および体積と同じとした。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
(実験例1-4)
ヨーク31,32を用いないようにしたことを除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7曲線C1-4で示す。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
(実験例1-5)
図6Aに示したように回転軸J1と直交する面内方向に着磁された環状磁石200を用いるようにしたこと、およびヨーク31,32を用いないようにしたこと、を除き、他は実験例1-1と同様にして回転角度の誤差をシミュレーションにより求めた。その結果を図7曲線C1-5で示す。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
(実験例2-1)
続いて、上記実施の形態で説明した図3の角度検出装置10について、磁石21,22が生成する磁場のうち、図3紙面左右方向、すなわち磁石21と磁石22とが対向する方向の磁場成分の磁束密度分布をシミュレーションによって求めた。なお、磁気検出素子41は、磁石21と磁石22とが対向する方向の磁場の強度を検出するようになっている。図9Aは、実験例2-1としての角度検出装置10の、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図9Aでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32との間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図9Bは、実験例2-1としての角度検出装置10についての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図9Aおよび図9Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
(実験例2-2)
次に、ヨーク部30を図8Aに示したヨーク部30Aに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10Aについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図10Aは、実験例2-2としての角度検出装置10Aの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図10では、磁石21およびヨーク31Aと磁石22およびヨーク32Aとの間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図10Bは、実験例2-2としての角度検出装置10Aについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図10Aおよび図10Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
(実験例2-3)
次に、ヨーク部30を図8Bに示したヨーク部30Bに代替したことを除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置10Bについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図11Aは、実験例2-3としての角度検出装置10Bの、磁石21と磁石22との対向方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図11Aでは、磁石21およびヨーク31Bと磁石22およびヨーク32Bとの間の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図11Bは、実験例2-3としての角度検出装置10Bについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図11Aおよび図11Bでは、磁石21およびヨーク31と磁石22およびヨーク32とが対向する方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
(実験例2-5)
次に、図6Bに示した環状磁石200を用いるようにしたこと、およびヨーク31,32を有しないこと、を除き、他は図3などに示した角度検出装置10の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置110Bについて、上記実験例2-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。図13Aは、実験例2-5としての角度検出装置110Bの、環状磁石200の径方向の磁場成分の磁束密度分布を模式的に表すコンター図である。なお、図13Aでは、環状磁石200の開口200Kの近傍の空間領域についての磁束密度分布を示しており、他の空間領域についての磁束密度分布は記載を省略している。また、図13Bは、実験例2-5としての角度検出装置110Bについての、回転軸J1と直交する平面に沿ったセンサチップ11の近傍での磁束密度のベクトルを模式的に表す説明図である。なお、図13Aおよび図13Bでは、環状磁石200の径方向をX軸方向とし、回転軸J1の方向をZ軸方向とし、X軸方向およびZ軸方向と直交する方向をY軸方向としている。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
(実験例5-1)
磁気シールド12を有しないことを除き、他は角度検出装置10(図9A)の構成と実質的に同じ構成を有する角度検出装置について、上記実験例3-1と同様の条件下で同様の評価を実施した。その結果を表1に併せて示す。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0073
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0073】
<3.適用例>
(第1の適用例)
図15Aおよび図15Bは、上記実施の形態で説明した角度検出システム100を有するパークロックシステム210を表す模式図である。パークロックシステム210は、例えば自動車等の車両に搭載され、運転者が車両を駐車場などに駐車する際にシフトレバーをパーキングモードにすることで車両の移動を抑止する機構である。図15Aはロックされていないロック解除状態を表し、図15Bは、ロック状態を表す。パークロックシステム210は、例えば筐体201の内部に設けられたモータ202と、シャフト203と、レバー204と、ロッド205と、係合部206と、ギヤ歯207を有するパーキングギヤ208とを備える。シャフト203は例えば紙面に垂直の方向に延在しており、モータ202により回転可能に設けられている。シャフト203の端部には上記実施の形態の角度検出システム100が設けられており、シャフト203の回転角度を検出するようになっている。紙面に平行に延びるレバー204の基端はシャフト203に固定され、モータ202の駆動により紙面に沿って旋回するようになっている。レバー204の先端にはロッド205の基端が取り付けられており、レバー204の旋回により、紙面左右方向にロッド205が移動するようになっている。ロッド205の先端に設けられた係合部206は、ギヤ歯207と係合および離脱可能になっている。このパークロックシステム210では、図15Aに示したロック解除状態から図15Bに示したロック状態に移行することにより、パーキングギヤ208の回転が制限される。具体的には、モータ202の回転によりシャフト203およびレバー204が紙面において右回転すると、ロッド205が紙面右方向へスライドし、係合部206がギヤ歯207と係合し、パーキングギヤ208がロックされる。反対に、図15Bに示したロック状態から図15Aに示したロック解除状態に移行することにより、パーキングギヤ208の回転の制限が解除される。具体的には、モータ202の回転によりシャフト203およびレバー204が紙面において左回転すると、ロッド205が紙面左方向へスライドし、係合部206がギヤ歯207から離間し、パーキングギヤ208のロックが解除される。ここで、上記実施の形態の角度検出システム100によりシャフト203の回転角度を検出することで、パーキングギヤ208がロック状態にあるか、ロック解除状態にあるかを高い精度で判別することができるようになっている。