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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148845
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】密閉弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F02M25/08 D
F02M25/08 E
F02M25/08 H
F02M25/08 301H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050671
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 颯
(72)【発明者】
【氏名】木村 潤
【テーマコード(参考)】
3G144
【Fターム(参考)】
3G144BA16
3G144BA28
3G144DA03
3G144EA05
3G144FA04
3G144FA09
3G144FA37
3G144GA03
3G144GA06
3G144GA23
(57)【要約】
【課題】流出するパージ空気の流量が所定流量以上とならないように密閉弁を制御する。
【解決手段】第1電磁弁弁座より第2電磁弁弁座を大口径とし、第1電磁弁をデューティ比制御し第2電磁弁をオンオフ制御として、よりきめ細かくパージ空気の流量を制御する。その上で、燃料タンク内の圧力が閾値以上の場合に第1電磁弁をデューティ比制御し、燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合第2電磁弁を第2ベンチの離脱位置として、燃料タンクの圧力に応じ2つの電磁弁を組み合わせた制御とする。かつ、第1電磁弁のデューティ比制御は、燃料タンク内の圧力が高いほどデューティ比が小さくなるように制御しているので、第1電磁弁弁座を流出するパージ空気の流量が所定値を超えないようにすることができ、キャニスタの処理能力を超える量のパージ空気が流出することを防止できる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガソリン燃料を貯蔵する燃料タンクと、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタと前記燃料タンクの空気空間とを結ぶパージ通路と共に用いられ、前記パージ通路を流れるパージ空気の遮断を行う密閉弁の制御方法であって、
前記密閉弁は、以下の構成を備え、
内部にタンク側収容空間(112)を形成し、前記パージ通路を介して前記燃料タンクと連通するタンク側ハウジング(110)、
内部にキャニスタ側収容空間(122)を形成し、前記パージ通路を介して前記キャニスタと連通するキャニスタ側ハウジング(120)、
このキャニスタ側ハウジングと前記タンク側ハウジングとの間に配置され、前記タンク側収容空間と前記キャニスタ側収容空間とを仕切ると共に、第1電磁弁弁座(132)、及びこの第1電磁弁弁座より大口径の第2電磁弁弁座(134)を開口する仕切ハウジング、
前記タンク側ハウジングの前記タンク側収容空間に配置され、前記第1電磁弁弁座に着座離脱する第1弁体をデューティ比制御する第1電磁弁(200)、
前記タンク側ハウジングの前記タンク側収容空間に配置され、前記第2電磁弁弁座に着座離脱する第2弁体をオンオフ制御する第2電磁弁(250)、
前記制御方法は、
前記燃料タンク内の圧力が閾値以上の場合、前記第1電磁弁をデューティ比制御するとともに、前記第2電磁弁を前記第2弁体の着座位置とし、
前記燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合、前記第2電磁弁を前記第2弁体の離脱位置とし、
前記第1電磁弁のデューティ比制御は、前記第1電磁弁弁座を流出するパージ空気の流量が所定値を超えないよう、前記燃料タンク内の圧力が高いほどデューティ比が小さくなるように制御する
ことを特徴とする密閉弁の制御方法。
【請求項2】
前記第1電磁弁のデューティ比制御は、デューティ比が100%となった状態で、前記燃料タンク内の圧力が閾値となるように制御する
ことを特徴とする請求項1記載の密閉弁の制御方法。
【請求項3】
前記第1電磁弁のデューティ比制御は、前記燃料タンク内の圧力の低下に応じて非連続的にデューティ比を大きくするように制御する
ことを特徴とする請求項1若しくは2に記載の密閉弁の制御方法。
【請求項4】
前記燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合、前記第2電磁弁を前記第2弁体の離脱位置とすると共に、前記第1電磁弁をデューティ比100%の状態で維持する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の密閉弁の制御方法。
【請求項5】
前記燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合、前記第2電磁弁を前記第2弁体の離脱位置とすると共に、前記第1電磁弁をデューティ比0%の状態で維持する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の密閉弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガソリン燃料を貯蔵する燃料タンクと、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタと燃料タンクの空気空間とを結ぶパージ通路と共に用いられ、パージ通路を流れる空気の遮断を行う密閉弁の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクとキャニスタとの間はキャニスタ通路により連通しているが、燃料タンクから蒸発燃料が漏出しないよう、キャニスタ通路を確実にシールすることが求められる。そのため、密閉弁の全閉時にはシール性能が要求される。
【0003】
また、密閉弁の全開時には燃料タンク内の空気を排出すべく所定流量の空気が流れることが求められる。ここで、燃料タンクの内圧が高い状態で密閉弁がキャニスタ通路を全開すると、大量の蒸発燃料がキャニスタに送られ、キャニスタの処理能力を超えてしまう恐れがある。一方で、燃料タンクに燃料を給油する前の待ち時間を短縮するためには、蒸発燃料を含む大量の空気をキャニスタ側に送る必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、燃料タンク内の圧力が高い時には小流量として流量を制限し、燃料タンク内の圧力が低くなると大流量を流すべく電磁弁を2つ用いてして制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-31955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただ、特許文献1では、2つの電磁弁を直列に配置して、2つの電磁弁の開閉のみで流量を切り替えていた。そのため、2つの電磁弁を別々に用いて流量をよりきめ細かく制御することはできていなかった。
【0007】
そこで、本開示は、密閉弁として、ハウジング内に2つの電磁弁を収納するコンパクトな構成としている。その上で、本開示は、密閉弁を流出するパージ空気の流量が所定流量以上とならないように密閉弁を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1は、ガソリン燃料を貯蔵する燃料タンクと、蒸発燃料を吸着するキャニスタと、このキャニスタと燃料タンクの空気空間とを結ぶパージ通路と共に用いられ、パージ通路を流れる空気の遮断を行う密閉弁の制御方法である。
【0009】
そして、本開示の第1に用いる密閉弁は、以下の構成を備えてる。まず、ハウジングとして、内部にタンク側収容空間(112)を形成し、パージ通路を介して燃料タンクと連通するタンク側ハウジング(110)と、内部にキャニスタ側収容空間(122)を形成し、パージ通路を介してキャニスタと連通するキャニスタ側ハウジング(120)と、このキャニスタ側ハウジングとタンク側ハウジングとの間に配置され、タンク側収容空間とキャニスタ側収容空間とを仕切ると共に、第1電磁弁弁座(132)、及びこの第1電磁弁弁座より大口径の第2電磁弁弁座(134)を開口する仕切ハウジングとを備えている。
【0010】
また、本開示の第1に用いる密閉弁は、タンク側ハウジングのタンク側収容空間に配置され、第1電磁弁弁座に着座離脱する第1弁体をデューティ比制御する第1電磁弁(200)と、タンク側ハウジングのタンク側収容空間に配置され、第2電磁弁弁座に着座離脱する第2弁体をオンオフ制御する第2電磁弁(250)とも備えている。
【0011】
本開示の第1の制御方法は、燃料タンク内の圧力が閾値以上の場合、第1電磁弁をデューティ比制御するとともに、第2電磁弁を第2弁体の着座位置とし、燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合、第2電磁弁を第2ベンチの離脱位置とし、第1電磁弁のデューティ比制御は、第1電磁弁弁座を流出するパージ空気の流量が所定値を超えないよう、燃料タンク内の圧力が高いほどデューティ比が小さくなるように制御している。
【0012】
本開示の第1では、ハウジングをタンク側ハウジング、キャニスタ側ハウジング、仕切ハウジングとして、第1電磁弁及び第2電磁弁をタンク側ハウジングに配置しているので、配管の取り回しが不要となり、コンパクトな構成である。かつ、第1電磁弁、第2電磁弁がそれぞれ第1電磁弁弁座及び第2電磁弁弁座を着座離脱するので、独立してパージ空気の流量を制御することができる。
【0013】
また、本開示の第1では、第1電磁弁弁座より、第2電磁弁弁座を大口径とし、第1電磁弁をデューティ比制御し、第2電磁弁をオンオフ制御としているので、よりきめ細かくパージ空気の流量を制御することができる。
【0014】
その上で、本開示の第1では、燃料タンク内の圧力が閾値以上の場合に、第1電磁弁をデューティ比制御し、燃料タンク内の圧力が閾値未満の場合、第2電磁弁を第2ベンチの離脱位置としているので、燃料タンクの圧力に応じ、2つの電磁弁を組み合わせた制御ができている。
【0015】
かつ、本開示の第1では、第1電磁弁のデューティ比制御は、燃料タンク内の圧力が高いほどデューティ比が小さくなるように制御しているので、第1電磁弁弁座を流出するパージ空気の流量が所定値を超えないようにすることができる。これにより、キャニスタの処理能力を超える量のパージ空気が流出することを防止できる。
【0016】
本開示の第2は、第1電磁弁のデューティ比制御を、デューティ比が100%となった状態で、燃料タンク内の圧力が閾値となるように制御している。これにより、燃料タンク内の圧力が閾値以下になるまでの制御を、第1電磁弁のデューティ比制御で対応することができる。
【0017】
本開示の第3は、第1電磁弁のデューティ比制御を、燃料タンク内の圧力の低下に応じて非連続的にデューティ比を大きくするような制御としている。これにより、密閉弁を流出するパージ空気の流量も非連続的となるが、第1電磁弁のデューティ比制御にかかる演算負荷をより少なくすることができる。
【0018】
本開示の第4は、燃料タンク内の圧力が閾値未満に低下した際に、第2電磁弁を第2弁体の離脱位置とすると共に、第1電磁弁をデューティ比100%の状態で維持する。第1電磁弁弁座と第2電磁弁弁座との双方からパージ空気を流すことができる。
【0019】
本開示の第5は、燃料タンク内の圧力が閾値未満に低下した際、第2電磁弁を第2弁体の離脱位置とすると共に、第1電磁弁のデューティ比を、逆に0%の状態で維持する。必要流量を第2電磁弁弁座から供給できれば、第1電磁弁への通電を終了することで、省電力化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の制御方法が用いられるシステムを示す構成図である。
図2】本開示の制御方法が用いられる密閉弁の正面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図2のV-V線に沿う断面図である。る。
図6図2のVI-VI線に沿う断面図である。
図7図6のVII-VII線に沿う断面図である。
図8】本開示の制御方法を示すフローチャートである。
図9】第1電磁弁のデューティ比制御を示すフローチャートである。
図10】経過時間と密閉弁より流出するパージ空気の流量を示す図である。
図11】経過時間と密閉弁より流出するパージ空気の圧力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本開示制御方法が用いられるシステムを示している。密閉弁100は、ガソリンを貯蔵する燃料タンク10の上面の気相空間とキャニスタ20とを連通するパージ通路30に配置される。キャニスタ20は、活性炭により燃料タンク10から流入した空気(パージ空気)に含まれる蒸発燃料を吸着する。キャニスタ20には大気導入口21が開口しており、内部は大気圧である。なお、図示していないが、大気導入口21には大気導入口21を閉じる大気導入弁が配置されている。
【0022】
密閉弁100には正圧側リリーフ孔135及び負圧側リリーフ孔136が形成されている。正圧側リリーフ孔135には燃料タンク10内の圧力が大気圧より所定圧、例えば15キロパスカル程度高くなったときに正圧側リリーフ孔135を開いて、蒸発燃料と空気をキャニスタ20側に流す正圧側リリーフ弁300が配置されている。また、負圧側リリーフ孔136には燃料タンク10内の圧力が大気圧より所定圧、例えば8キロパスカル程度低くなったときに負圧側リリーフ孔136を開いて、空気をキャニスタ20から燃料タンク10側に流して、燃料タンク10内を大気圧とする負圧側リリーフ弁350が配置されている。
【0023】
密閉弁100を通過したパージ空気は入口側のパージ通路30よりキャニスタ20流入する。キャニスタ20に吸着された燃料は、出口側パージ通路40を介して、エンジン50のスロットルバルブ51下流の吸気通路52に供給される。出口側パージ通路40にはパージバルブ41が配置され、パージバルブ41により出口側パージ通路40の開閉、及び出口側パージ通路40を流れる蒸発燃料の量が制御される。
【0024】
60はエンジン50を制御するコントローラで、スロットルバルブ51の開度やエンジン50に供給する燃料量を制御する。パージバルブ41の流量もこのコントローラ60により制御される。
【0025】
燃料タンク10の上面には圧力センサ11が配置され、燃料タンク10内の蒸発燃料及び空気の圧力を測定している。圧力センサ11の信号もコントローラ60に送信される。コントローラ60は、圧力センサ11からの信号や、パージバルブ41の制御状況等に応じて密閉弁100の開閉及び密閉弁100より流出するパージ空気の流量を制御する。
【0026】
密閉弁100は、図2ないし図7に示すようにポリフェニレンスルファイドPPS製のタンク側ハウジング110、キャニスタ側ハウジング120及び仕切ハウジング130を備えている。タンク側ハウジング110には、パージ通路30を介して燃料タンク10と連通するタンク側ポート111、タンク側収容空間112、第1コネクタ113、及び第2コネクタ114が形成されている。
【0027】
キャニスタ側ハウジング120には、パージ通路30を介してキャニスタ20と連通するキャニスタ側ポート121とキャニスタ側収容空間122とが形成されている。仕切ハウジング130には、4ミリメートル程度の径の第1電磁弁通路131の周囲に第1電磁弁弁座132が形成され、15ミリメートル程度の径の第2電磁弁通路133の周囲に第2電磁弁弁座134が形成されている(図3図示)。また、仕切ハウジング130には、径が1ミリメートル程度の正圧側リリーフ孔135及び負圧側リリーフ孔136が開口している(図5図示)。
【0028】
これらのタンク側ハウジング110、キャニスタ側ハウジング120、及び仕切ハウジング130は、タンク側ハウジング110とキャニスタ側ハウジング120とで仕切ハウジング130を挟持するように組付け、接合端面で、溶着される。また、組付けられた状態で、図2の上下方向の大きさは90ミリメートル程度で、左右方向の大きさは80ミリメートル程度である。また、図3の上下方向の大きさは70ミリメートル程度となっている。
【0029】
図3に示すように、タンク側ハウジング110内には、第1電磁弁200と第2電磁弁250とが並列に配置されている。第1電磁弁200は、樹脂製の第1ボビン201に多数回巻装された第1コイル202を備えている。第1コネクタ113に配置された端子より駆動電圧を受けて第1コイル202に通電された際には第1コイル202は励磁する。その際の磁気回路を形成するように第1コイル202の周囲には鉄製の第1ステータコア204が配置されている。
【0030】
第1ステータコア204は円筒形状をしており、内部には鉄製でコップ形状をした第1ムービングコア205が移動可能に配置されている。第1ステータコア204には磁気回路を絞る第1絞り部203が形成されているので、第1ステータコア204と第1ムービングコア205との間に第1磁気ギャップ208が形成され、第1コイル202の励磁時にはこの第1磁気ギャップ208を縮めるべく、第1ムービングコア205は図中上方に吸引される。そして、第1バネ206は第1ムービングコア205を吸引方向と反する方向に付勢している。第1バネ206は第1ムービングコア205と第1バネ受け部材207との間に配置される。
【0031】
第1ムービングコア205の底部には、フッ素ゴム製の第1弁体が焼き付け固定されている。従って、第1弁体210は第1ムービングコア205と一体に移動し、第1コイル202が非励磁時には、第1バネ206の付勢力で、第1電磁弁弁座132に着座している。
【0032】
第2電磁弁250は、この第1電磁弁200と凡そ同じ構造となっている。第2ボビン251、第2コイル252、第2ステータコア254、第2ムービングコア255を備えている。
【0033】
第2ステータコア254にも磁気回路を絞る第2絞り部253が形成されており、第2ステータコア254と第2ムービングコア255との間に第2磁気ギャップ258が形成される。そして、第2コイル252には、第2コネクタに配置された端子から通電する。第2コイル252の励磁時にはこの第2磁気ギャップ258を縮めるべく、第2ムービングコア255は図3で上方に吸引される。第2バネ256は第2ムービングコア255を吸引方向と反する方向に付勢している。そして、第2バネ256は第2ムービングコア255と第2バネ受け部材257との間に配置されている。
【0034】
第2弁体260は、円筒形状をした樹脂製で、第2ムービングコア255の底部に固定されている。この第2弁体260も第2ムービングコア255と一体に移動し、第2コイル252が励磁していない状態では、第2バネ256により、第2電磁弁弁座134側に付勢されている。
【0035】
図2図4、及び図5において、第2電磁弁250下方の空間には、正圧側リリーフ弁300及び負圧側リリーフ弁350が配置されている。仕切ハウジング130に形成された正圧側リリーフ孔135を覆うようにリング状に正圧側リリーフ弁座137が突出形成されており、正圧側リリーフ弁300の正圧側リリーフ弁体301は、この正圧側リリーフ弁座137に着座可能に、キャニスタ側ハウジング120のキャニスタ側収容空間122に配置される。より具体的には、キャニスタ側ハウジング120に円筒状に形成された正圧リリーフガイド125の外周に支持されて、キャニスタ側収容空間122に配置される。そして、正圧側リリーフ弁体301は、正圧側リリーフバネ302により正圧側リリーフ弁座137側に付勢されている。正圧側リリーフバネ302は、正圧リリーフガイド125の内周により保持されている。
【0036】
仕切ハウジング130には、負圧側リリーフ孔136の周囲にも負圧側リリーフ弁座138がリング状に突出形成されている。負圧側リリーフ弁350の負圧側リリーフ弁体351は、この負圧側リリーフ弁座138に着座可能に、タンク側ハウジング110のタンク側収容空間112に配置される。タンク側収容空間112にも、負圧側リリーフガイド115が円筒形状に形成されており、負圧側リリーフ弁体351はこの負圧側リリーフガイド115に摺動自在に支持されている。また、負圧側リリーフ弁体351を閉方向に付勢する負圧側リリーフバネ352も、負圧側リリーフガイド115の内周に保持されている。
【0037】
次に、上記構成よりなる密閉弁100の制御方法を説明する。密閉弁100には、燃料タンク10内の空気や蒸発燃料がキャニスタ20に漏出しないよう燃料タンク10内に閉じ込めておく機能が求められる。このシール機能はエンジン50が運転していない駐車時にも求められる。この密閉時には、第1コイル202及び第2コイル252には通電されていなく、第1ムービングコア205及び第2ムービングコア255はそれぞれ第1バネ206及び第2バネ256の付勢力を受けて、図3の下方に押圧される。
【0038】
その結果、第1ムービングコア205と共に第1弁体210が移動し、第1弁体210は第1バネ206の付勢力を受けて第1電磁弁弁座132側に着座する。第2弁体260も第2ムービングコア255と共に移動し、第2弁体260は第2バネ256の付勢力を受けて第2電磁弁弁座134側に着座する。図3は、第1電磁弁200及び第2電磁弁250の閉弁状態を示す。
【0039】
燃料タンク10は密閉されているので、燃料タンク10内の圧力は外部環境の温度変化を受けて変動する。外部温度が高くなったり、振動を受けたりして、燃料タンク10内の圧力が大気圧以上に上昇すると、タンク側ポート111からタンク側ハウジング110に伝達され、タンク側収容空間112の圧力も大気圧以上となる。一方、キャニスタ20は大気圧の状態であるので、キャニスタ側収容空間122の圧力は大気圧である。そのため、タンク側収容空間112内の圧力は第1弁体210及び第2弁体260をそれぞれ第1電磁弁弁座132と第2電磁弁弁座134側に押圧する方向に作用する。
【0040】
一方、外部温度が低くなったりして、燃料タンク10内の圧力が負圧となると、タンク側収容空間112内の圧力も大気圧以下に低下する。この場合には、第1弁体210及び第2弁体260を第1電磁弁弁座132及び第2電磁弁弁座134から離脱させる方向に作用する。従って、第1バネ206及び第2バネ256の付勢力はこの際のタンク側収容空間112の負圧に打ち勝つ大きさに設定されている。
【0041】
駐車時のように、圧力センサ11やコントローラ60が作動していなく、密閉弁100も作動しない状態で、燃料タンク10内の圧力が所定値以上高くなったり、低くなったりした場合には、正圧側リリーフ弁300や負圧側リリーフ弁350が開いて、燃料タンク10内の圧力が異常に変動するのを抑えている。正圧側リリーフ弁300や負圧側リリーフ弁350は異常変動を抑えるものであるので、正圧側リリーフバネ302の設定圧は密閉弁100に比べて数倍程度高く設定されている。
【0042】
上述のように、タンク側収容空間112は燃料タンク内の圧力と同じであり、キャニスタ側収容空間122はキャニスタ20と同じく略大気圧である。燃料タンク10内の圧力が高くなると大気圧との差圧が正圧側リリーフ弁体301に加わり、差圧が正圧側リリーフバネ302の設定圧以上となると、正圧側リリーフ弁体301が正圧側リリーフ弁座137から離脱する。その結果、正圧側リリーフ孔135を介してタンク側収容空間112とキャニスタ側収容空間122とが連通し、燃料タンク10内の圧力は大気圧に開放されて、大気圧近くまで低下する。図5は正圧側リリーフ弁体301が正圧側リリーフ孔135を開いた状態を示している。
【0043】
逆に、燃料タンク10内の圧力が大気圧以下に下がると、大気圧との差圧が負圧側リリーフ弁体351に加わる。そして、差圧が負圧側リリーフバネ352の設定圧以上となると、負圧側リリーフ弁体351が負圧側リリーフ弁座138から離脱し、正圧側リリーフ孔135を介してタンク側収容空間112とキャニスタ側収容空間122とが連通する。これにより、燃料タンク10内の圧力は大気圧付近に復帰する。図5では、負圧側リリーフ弁体351も負圧側リリーフ孔136を開いている。ただ、実際の運転時に正圧側リリーフ孔135と負圧側リリーフ孔136との双方が開くことは無い。
【0044】
燃料タンク10に給油する際には、燃料タンク10上方部に存在する蒸発燃料を急速にキャニスタ20側に逃がす必要がある。ただ、燃料タンク10内の圧力が高い状態で大量の蒸発燃料がキャニスタ20側に流れたのでは、キャニスタ20の蒸着能力を上回る恐れがある。そこで、図8に示すように、本開示では、密閉弁100に第1電磁弁200と第2電磁弁250の2つの電磁弁を用い、まず、第1電磁弁200のみをデューティ比制御するようにしている。
【0045】
給油口が開かれる等で給油の状態を判断すれば、ステップS100で、密閉弁100の制御を開始する。まず、圧力センサ11からの燃料タンク10内の圧力信号を受信して、密閉弁100より流出するパージ空気の流量を計算する。その上で、第1電磁弁200のデューティ比制御を行う(ステップS120)。この第1電磁弁200のデューティ比制御(ステップS120)については、後述する。
【0046】
第1電磁弁200のデューティ比制御(ステップS120)は、燃料タンク内の圧力が閾値Pshより低くなるまで行う。閾値Psh以下にとしては、例えば、4キロパスカル程度が設定される。ステップS130で、燃料タンク内の圧力が閾値Pshより低くなったことを判断すれば、第1電磁弁200のデューティ比制御を終了し、第2電磁弁250を開く。その後も、燃料タンク10内の圧力を測定し続け(ステップS150)、この燃料タンク10内の圧力が大気圧に近い状態であれば給油中であることを確認する(ステップ160)。給油口が閉じられたりした信号を受けて、ステップS170で給油の終了を判断すると、第2電磁弁250への通電を終了し、第2電磁弁250を閉じる。この第2電磁弁250のオンオフ制御も後述する。第2電磁弁250を閉弁状態とすることで、給油時の制御を終了する(ステップS180)。
【0047】
第1電磁弁200のデューティ比制御(ステップS120)は、以下のように行う。第1コネクタ113より通電すると、第1コイル202が励磁して、第1ステータコア204と第1ムービングコア205との第1磁気ギャップ208が狭くなるよう磁気力が発生する。この力が第1バネ206の付勢力に打ち勝って、第1ムービングコア205が第1ステータコア204側に移動する。この移動に伴い、第1弁体210が第1電磁弁弁座132から離脱し、第1電磁弁通路131を開く。図6はこの第1弁体210の開弁状態を示している。
【0048】
ここで、第1電磁弁通路131は径が4ミリメートル程度と小さくなっているので、タンク側収容空間112からキャニスタ側収容空間122に流れる空気及び蒸発燃料の流れは、この第1電磁弁通路131を流れる際に流通抵抗を受ける。そのため、多量の蒸発燃料が短時間にキャニスタ20に流入することは無い。
【0049】
かつ、第1電磁弁200はデューティ比制御されている。デューティ比制御は所定の周期、例えば10ヘルツ(0.1秒)のうち、第1コイル202に通電する時間の比率を可変するものである。例えば、0.02秒第1コイル202に通電して、0.08秒非通電とすれば、デューティ比は20%となる。0.05秒の通電、非通電を繰り返せば、デューティ比は50%となる。
【0050】
上述の通り、第1電磁弁200のデューティ比制御は、密閉弁100を通過するパージ空気の流量を所定値以下とするように制御している。この所定値はキャニスタ20の能力により異なるが、例えば、毎分30リットル程度の流量以下に抑えるようにしている。密閉弁100を通過するパージ空気の流量は、燃料タンク10内の圧力と第1電磁弁弁座132や第1電磁弁通路131の開口面積により計算できる。換言すれば、燃料タンク10内の圧力とキャニスタ20との差圧と、第1電磁弁200が第1電磁弁弁座132を開いたときのパージ空気の流通抵抗とによって、パージ空気の流量は計算できる。この密閉弁100を通過するパージ空気の流量は、キャニスタ20の処理能力に対応させている。即ち、キャニスタ20の処理能力を上回る量のパージ空気がキャニスタ20に流入することが無いように、第1電磁弁200はデューティ比制御される。
【0051】
このデューティ比制御は、図9に示すように、燃料タンク10内の圧力が閾値Pshまで下がった状態で、デューティ比が100%となるように制御している。例えば、デューティ比を10%ずつ非連続的に高めるとすれば、デューティ比制御開始時の燃料タンク10内の圧力と閾値Pshとを10分割して、圧力P1が10分の1低下しているか否かをステップS200で判断し、その間はデューティ比を10%(n1%)とする(ステップS210)。次いで、圧力P1が10分の1以上低下しているが、10分の2迄ではない領域か否かをステップS220で判断し、その間はデューティ比を20%(n2%)とする(ステップS230)。同様に、圧力P1が10分の2以上低下しているが、10分の3迄ではない領域か否かをステップS240で判断し、その間はデューティ比を30%(n3%)とする(ステップS250)。この判断を繰り返して、圧力P1が10分の9以上低下しているが、閾値迄は低下していない領域となっていることをステップS260で判断し、その間はデューティ比を100%とする(ステップS270)。
【0052】
燃料タンク10内の圧力P1が閾値Psh以下となれば、第1電磁弁200のデューティ比制御を終了して、第2電磁弁250を開く(ステップS140)のは、上述の通りである。圧力センサ11で検出した燃料タンク10内の圧力が閾値Psh以下に下がると、第2電磁弁250にも通電する。第2コネクタ114からの通電により第2コイル252が励磁し、第2ムービングコア255は第2バネ256の付勢力に打ち勝って第2ステータコア254側に吸引される。
【0053】
それに伴い、第2弁体260が第2電磁弁弁座134から離脱し、第2電磁弁通路133が開かれる。第2電磁弁通路133は15ミリメートル程度と大きな径となっており、第2弁体260の外周を回り込んだ空気及び蒸発燃料は、キャニスタ側収容空間122よりキャニスタ20に流入する。この状態では、燃料タンク10内の圧力は閾値Psh以下に低下しているので、第2弁体260が第2電磁弁通路133を大きく開いてもキャニスタ20に処理能力を超える蒸発燃料が流入することは無い。換言すれば、閾値Pshは第2電磁弁250が開いてもキャニスタ20の処理能力を超えることが無いように設定されている。
【0054】
図10に密閉弁100を通過するパージ空気の流量Qと経過時間Tとの関係を示す。図10に示すように、本開示では、給油の開始前にまず第1電磁弁弁座132をデューティ比制御して、常に、キャニスタ20の処理能力Qshを下回る流量Qを流し、燃料タンク10内の圧力が閾値Psh以下に下がってから第2電磁弁弁座134開く。そのため、キャニスタ20にその処理能力Qshを上回らない量の蒸発燃料を早期に送ることができる。
【0055】
図11は、給油前の密閉弁100を通過するパージ空気の圧力と経過時間Tとの関係を示している。図11に示すように、1つの電磁弁でパージ空気の流量を制御する比較例Xに比べて、第1電磁弁200のデューティ比制御と第2電磁弁250のオンオフ制御とを組み合わせた本開示の方が、より短い時間で燃料タンク10内の圧力を下げることができている。
【0056】
給油中は、第1電磁弁200も通電か非通電かのオンオフ制御とする。そして、第1電磁弁200と第2電磁弁250の双方に通電する。そのため、第1電磁弁弁座132と第2電磁弁弁座134とは共に開き、燃料タンク10内の空気及び蒸発燃料は第1電磁弁通路131と第2電磁弁通路133との双方を流れる。これにより、密閉弁100を流れる空気流れに大きな圧力損失が生じることもなく、給油はスムーズに行われる。
【0057】
キャニスタ20に吸着された蒸発燃料は、エンジン50の運転中に、スロットルバルブ51下流の吸気通路52に、吸気負圧を利用して戻される。出口側パージ通路40を流れる蒸発燃料の量はパージバルブ41により制御される。その際に、燃料タンク10上方部の蒸発燃料をキャニスタ20側に流すべく、密閉弁100も所定タイミングで開閉する。パージバルブ41の流量制御や密閉弁100の開閉制御は、コントローラ60によりなされる。
【0058】
この状態では、パージバルブ41より吸気通路52に流れる流量に応じて、第1電磁弁200か第2電磁弁250のいずれかに通電する。パージバルブ41より吸気通路52に流れる流量が少ない場合は、第1電磁弁200をデューティ比制御する。
【0059】
なお、上述したのは、本開示の望ましい例であるが、本開示は種々に変更可能である。上述した材料や大きさは一例であり、求められる性能等に応じて適宜設計すればよい。
【0060】
また、上述の開示では、第1電磁弁200と第2電磁弁250に加え、正圧側リリーフ弁300と負圧側リリーフ弁350も密閉弁100内に組み込んでいる。それにより、正圧側リリーフ弁300と負圧側リリーフ弁350との接続配管が不要となり、装置全体としての小型化が達成できている。ただ、必要に応じて正圧側リリーフ弁300と負圧側リリーフ弁350を密閉弁100の外部に設置することも可能である。
【0061】
また、上述の開示では、燃料タンク10内の圧力が閾値Pshより下がった状態で、第1電磁弁200のデューティ比制御を終了していた。上述の例では、通電(デューティ比を100%)として第1電磁弁弁座132を開いた状態を維持していた。この場合、第1電磁弁弁座132を開いたままとしても、第1電磁弁弁座132と第2電磁弁弁座134の双方から流出するパージ空気の流量がキャニスタ20の処理能力Qshを上回らないように設定している。ただ、第1電磁弁200のデューティ比制御の終了後、非通電(デューティ比を0%)として、第1電磁弁弁座132を閉じる状態としてもよい。第1電磁弁弁座132を閉じる場合は、第2電磁弁弁座134のみから流出するパージ空気の流量がキャニスタ20の処理能力Qshを上回らないように設定する。
【0062】
上述の例では、第1電磁弁200のデューティ比制御を10段階の非連続制御としていたが、非連続の段数を10未満としても良い。その場合には、第1電磁弁200のデューティ比制御に求められる演算負荷をより小さくすることができる。逆に、10段階以上としても良く、更にリニア性を高めて、デューティ比制御を連続的に高めるようにしても良い。その場合には、パージ空気流れの脈動音を低減することができる。
【0063】
上述の例では、燃料タンク10内の圧力P1を測定して、給油中であることを確認していたが、給油スイッチ等の手段で給油口の開閉を判断しているので、給油途中であることの確認は必ずしも必要ではない。
【0064】
また、上述の例では、密閉弁100を通過するパージ空気の流量がキャニスタ20の処理能力Qshを上回らないようにしていた。キャニスタ20の処理能力を充分発揮させる上では必要な制御である。但し、緊急の場合等、別の条件による要請が上回れば、一時的にキャニスタ20の処理能力を上回る流量のパージ空気を流すこともやむを得ない。
【符号の説明】
【0065】
100 密閉弁
110 タンク側ハウジング
112 タンク側収容空間
120 キャニスタ側ハウジング
122 キャニスタ側収容空間
130 仕切ハウジング
200 第1電磁弁
250 第2電磁弁
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
図10
図11