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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148846
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】流量制御弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F16K31/06 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050672
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】川島 大治
(72)【発明者】
【氏名】河村 祐一郎
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA05
3H106DA13
3H106DA23
3H106DA31
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD04
3H106DD07
3H106EE34
3H106EE48
3H106FB26
3H106GA30
3H106KK04
3H106KK17
(57)【要約】
【課題】大流量と小流量との切り替えを1つの電磁弁で行えるようにする。
【解決手段】ムービングコアが永久磁石と磁性材料製の磁束通路部とを有し、ステータコアが非磁性材料製の磁束遮断部を有して、第1電極に正電圧を印加した際には、ムービングコアの磁束通路部とステータコアの磁束遮断部以外の部位とが吸引、反発してムービングコアを第1方向に移動させる。コイルの非通電時には、第1弁体は第1弁座に着座すると共に、第2弁体は第2弁座に着座して、流体の流れを止める。第1電極に正電圧を印加した際には、ムービングコアが第1方向に移動して第2弁体が第2弁座より離脱する。そのため、流体は第1弁体の連通通路を流れる。逆に、第1電極に負電圧を印加した際には、ムービングコアが第2方向に移動して第2弁体が第2弁座に着座した状態で第1弁体を第1弁座より離脱する。その結果、流体は第1弁座より流出通路に流出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入する流入通路(161)と、流体を流出する流出通路(164)と、この流出通路と前記流入通路との間に形成される通路室(160)と、この通路室に形成される第1弁座(163)とを有するハウジング(110)と、
前記通路室内に配置され、前記第1弁座と着座離脱すると共に、連通通路とこの連通通路周囲に形成された第2弁座(174)とを有する第1弁体(170)と、
前記通路室内に配置され、前記第2弁座と着座離脱する第2弁体(180)と、
第1電極及び第2電極からの通電により励磁するコイルと(132)、このコイル通電時に磁気回路を形成する円筒状のステータコア(1310)と、このステータコアの内部に配置され前記第2弁体を第1方向とこの第1方向とは反対となる第2方向に移動させるムービングコア(1320)とを有する電磁弁(130)と、
前記第2弁体と前記ムービングコアとの間に配置され、前記ムービングコアを前記第2方向側に付勢する第1バネ(134)と、
前記ムービングコアを挟んでこの第1バネとは反対側に配置され、前記ムービングコアを前記第1方向に付勢する第2バネ(135)と、
前記第1電極と前記第2電極への印加電圧の有無及び正負切替えを制御する制御装置(50)とを備え、
前記ムービングコアは、永久磁石(1321)と、磁性材料製の磁束通路部(1322)とを有し、
前記ステータコアは、前記コイルの非通電時に前記ムービングコアの前記永久磁石と対向する位置に非磁性材料製の磁束遮断部(1313)を有し、
前記コイルの非通電時に、前記第1弁体は前記第1弁座に着座すると共に、前記第2弁体は前記第2弁座に着座し、
前記第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際、前記ムービングコアが前記第1方向に移動して、前記第2弁体が前記第2弁座より離脱し、
前記第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際、前記ムービングコアが前記第2方向に移動して、前記第2弁体が前記第2弁座に着座した状態で前記第1弁体を前記第1弁座より離脱する
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
前記ムービングコアは、前記永久磁石がリング状で、前記磁束通路部が前記永久磁石の内周側に配置されて、樹脂材料によりモールド成形されている
ことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記ムービングコアには、前記第1バネを受ける第1バネ受け部と、前記第2バネを受ける第2バネ受け部とが形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記ステータコアは鉄製で、真鍮製の前記磁束遮断部が円筒状の内周面に固着されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際に、電圧の印加をデューティ比制御し、かつ、前記第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際にも電圧の印加をデューティ比制御する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項6】
前記第1弁座の流路断面積の方が、前記第2弁座の流路断面積より大きい
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の流量制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体の流量を制御する流量制御弁に関し、例えば、キャニスタとスロットルバルブ下流の吸気通路とを連通するパージ通路に配置され、このパージ通路を流れる空気の流量を制御するパージバルブに用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
車両のハイブリッド化に伴い、キャニスタに吸着された蒸発燃料をより短い時間でエンジンの吸気通路に流入させる(パージする)ことが求められている。一方、ハイブリッド化に伴い、パージする際のエンジンの吸気負圧は減少(大気圧に近づく)している。
【0003】
そこで、特許文献1では、電磁弁を2つ用いて、パージ空気の流量の大小を制御していた。ただ、特許文献1では、第1電磁弁と第2電磁弁との2つの電磁弁を用いているため、体格が大きくなると共に、コストも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5717876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記点に鑑みてなされたもので、電磁弁のムービングコアに永久磁石を用いることで、大流量と小流量との切り替えを1つの電磁弁で行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1は、流体を流入する流入通路(161)と流体を流出する流出通路(164)とこの流出通路と流入通路との間に形成される通路室(160)とこの通路室に形成される第1弁座(163)とを有するハウジング(110)と、通路室内に配置され第1弁座と着座離脱すると共に連通通路とこの連通通路周囲に形成された第2弁座(174)とを有する第1弁体(170)と、通路室内に配置され第2弁座と着座離脱する第2弁体(180)とを備えている。
【0007】
本開示の第1は、第1電極及び第2電極からの通電により励磁するコイルと(132)、このコイル通電時に磁気回路を形成する円筒状のステータコア(1310)と、このステータコアの内部に配置され第2弁体を第1方向とこの第1方向とは反対となる第2方向に移動させるムービングコア(1320)とを有する電磁弁と、第2弁体とムービングコアとの間に配置され、ムービングコアを第2方向側に付勢する第1バネ(134)と、ムービングコアを挟んでこの第1バネとは反対側に配置され、ムービングコアを第1方向に付勢する第2バネ(135)と、第1電極と第2電極への印加電圧の有無及び正負切替えを制御する制御装置(50)も備えている。
【0008】
そして、本開示の第1は、ムービングコアが永久磁石(1321)と磁性材料製の磁束通路部(1322)とを有し、ステータコアがコイルの非通電時にムービングコアの永久磁石と対向する位置に非磁性材料製の磁束遮断部(1313)を有している。
【0009】
そして、本開示の第1では、コイルの非通電時に、第1弁体は第1弁座に着座すると共に、第2弁体は第2弁座に着座し、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際、ムービングコアが第1方向に移動して第2弁体が第2弁座より離脱し、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際、ムービングコアが第2方向に移動して第2弁体が第2弁座に着座した状態で第1弁体を第1弁座より離脱するよう構成されている。
【0010】
本開示の第1では、ムービングコアが永久磁石と磁性材料製の磁束通路部とを有し、ステータコアが非磁性材料製の磁束遮断部を有しているので、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際には、ムービングコアの磁束通路部とステータコアの磁束遮断部以外の部位とが吸引、反発してムービングコアを第1方向に移動させることができる。逆に、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際には、ムービングコアの磁束通路部とステータコアの磁束遮断部以外の部位との吸引、反発が逆になり、ムービングコアは第2方向に移動する。
【0011】
本開示の第1では、このムービングコアの第1方向の移動と第2方向の移動とを利用している。まず、コイルの非通電時には、第1弁体は第1弁座に着座すると共に、第2弁体は第2弁座に着座して、流体の流れを止める。第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際には、ムービングコアが第1方向に移動して第2弁体が第2弁座より離脱する。そのため、流体は第1弁体の連通通路を流れる。逆に、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際には、ムービングコアが第2方向に移動して第2弁体が第2弁座に着座した状態で第1弁体を第1弁座より離脱する。その結果、流体は第1弁座より流出通路に流出する。
【0012】
本開示の第2は、ムービングコアに関する。永久磁石をリング状とし、磁束通路部を永久磁石の内周側に配置して、その状態で永久磁石と磁束通路部とを樹脂材料によりモールド成形している。モールド成形により永久磁石と磁束通路部とを適切な位置に保持することができる。
【0013】
本開示の第3も、ムービングコアに関する。ムービングコアには、第1バネを受ける第1バネ受け部と、第2バネを受ける第2バネ受け部とが形成されている。第1バネ受け部及び第2バネ受け部が樹脂成形により一体的に形成される。
【0014】
本開示の第4は、ステータコアに関する。ステータコアを鉄製して、真鍮製の磁束遮断部を円筒状の内周面に固着している。磁束遮断部を適切な位置に形成することができる。
【0015】
本開示の第5は、制御装置に関する。制御装置は、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか一方を印加した際に、電圧の印加をデューティ比制御し、かつ、第1電極に正電圧及び負電圧のいずれか他方を印加した際にも電圧の印加をデューティ比制御している。第1弁体及び第2弁体の着座離脱をデューティ比制御することで、流体の流量を連続的に制御することができる。
【0016】
本開示の第6は、第1弁座の流路断面積の方が、第2弁座の流路断面積より大きいことを規定している。これは、第2弁座は第1弁座に着座する第1弁体に設けられるため、請求項1で規定されている内容でもある。ただ、ムービングコアが第1方向に移動して行う流量制御に比べ、ムービングコアが第2方向に移動して行う流量制御の方が大流量であることを、本開示の第6で明確にしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の流量制御弁が用いられるパージシステムを示す構成図である。
図2】本開示の流量制御弁の閉弁状態での断面図である。
図3図2のIII視の正面図である。
図4】ムービングコアの着磁方向を示す説明図である。
図5】コイル非励磁時のムービングコアとステータコアとの磁極の関係を示す断面図である。
図6】コイル励磁時のムービングコアとステータコアとの磁極の関係を示す断面図である。
図7】本開示の流量制御弁の第2弁座開弁状態での断面図である。
図8】制御装置のデューティ比制御を示す説明図である。
図9】本開示の流量制御弁の第1弁座開弁状態での断面図である。
図10】ステータコア形成工程を説明する断面図である。
図11】ステータコア形成工程を説明する断面図である。
図12】ステータコア形成工程を説明する断面図である。
図13】ステータコア形成工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本開示の流量制御弁がパージバルブ100として用いられる場合の使用態様を示す。燃料タンク10で揮発したガソリンを含むパージ空気は入口側パージ空気通路11を介してキャニスタ13に流入し、キャニスタ13に配置された活性炭にてガソリンを吸着する。キャニスタ13からのガソリンを含むパージ空気は出口側パージ空気通路14を介してエンジン20の吸気管21に供給される。この出口側パージ空気通路14を流れるパージ空気の流量を制御するのがパージバルブ100である。なお、15はORVRバルブで、燃料蒸発ガスが給油口より大気中へ放出されるのを防止し、車両が横転した時には燃料タンクから燃料がタンク外に流出するのを防止する弁である。
【0019】
出口側パージ空気通路14は吸気管21のうちスロットルバルブ25の下流に開口しており、スロットルバルブ25で絞られた吸入空気の負圧により、キャニスタ13からのガソリンを含むパージ空気が吸引される。キャニスタ13には必要に応じ大気に開放する大気開放弁12が設けられている。24は、エンジン20に吸入される空気中の異物を取り除くエアフィルタである。22は、エンジン20のインテークマニホールドで、計量された燃料がエンジンに噴射される。
【0020】
パージバルブ100のオンオフ制御及び流量制御は、制御装置50によりコントロールされる。即ち、キャニスタ13に吸着されたガソリンは燃料タンク10からのガソリンと共にエンジン20に吸入されるため、制御装置50は、最適なエンジン燃焼状態を算出してパージバルブ100の流量を制御する。また、制御装置50は、車速センサ61、車両ECU60からの信号を受けて制御信号をパージバルブ100に出力する。なお、ガソリンにはディーゼルエンジンに用いられる軽油が含まれる。
【0021】
パージバルブ100の構成を、以下の実施形態に関して説明する。図2に示すように、電磁弁130は、ポリブチレンテレフタレートPBT、ポリフェニレンサアルファイドPPSや66ナイロン等の樹脂製のボビン131に多数回巻装されたコイル132を備えている。コイル132の両端は、図3に示すように、コネクタ150に配置された第1電極151及び第2電極152にそれぞれ電気接続している。第1電極151及び第2電極152より駆動電圧を受けてコイル132に通電された際にはコイル132は励磁する。その際の磁気回路を形成するようにコイル132の外側には鉄製のヨーク133が配置され、コイル132の内周側には同じく鉄製のステータコア1310が配置されている。
【0022】
ステータコア1310は円筒形状をしており、内部には円柱形状をしたムービングコア1320が移動可能に配置されている。ステータコア1310の円筒状部1311の中間位置には保持溝1312が形成され、この保持溝1312内に磁束遮断部1313が配置される。磁束遮断部1313は非磁性材料よりなり、本例では真鍮製である。
【0023】
本例では、ステータコア1310を以下のように製造している。まず、図10に示すように、ステータコア1310を第1ステータコア部1310aと第2ステータコア部1310bとの別部材で構成し、間に磁束遮断部1313を介在させる。次いで、図11に示すように、第1ステータコア部1310aと第2ステータコア部1310bとが隣接するように移動させて、間に保持溝1312を形成する。この第1ステータコア部1310aと第2ステータコア部1310bとの移動時に、磁束遮断部1313は保持溝1312に圧入される。
【0024】
その後、図12に示すように、円筒状のステータコア1310の外周をガイド201で保持した状態で、ステータコア1310の内周を、ローラー200を用いてスパロール加工する。このスパロール加工により、真鍮製の磁束遮断部1313が変形して、鉄材料製の第1ステータコア部1310aと第2ステータコア部1310bとの間の保持溝1312を埋める。最後に、図13に示すように、ステータコア1310の表面をメッキ処理して、ステータコア1310を製造する。
【0025】
ムービングコア1320内には、直径5ミリメートル程度のリング状の永久磁石1321が配置されている。また、永久磁石1321の内周側には、永久磁石1321を包み込むように厚さ1ミリメートル程度の磁束通路部1322が配置されている。磁束通路部1322は磁性材料製で、本例では鉄製である。ムービングコア1320は永久磁石1321と磁束通路部1322とを内部に保持した状態でポリブチレンテレフタレートPBT等の樹脂材料によってモールド成形されている。
【0026】
ムービングコア1320の永久磁石1321は、ステータコア1310の磁束遮断部1313と対向する位置に配置されている。より具体的には、図5に示すように、ムービングコア1320の磁束通路部1322の上端1325が、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の上方部位1314と対向する位置に配置されている。また、ムービングコア1320の磁束通路部1322の下端1327は、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の下方部位1315と対向する位置に配置されている。
【0027】
ムービングコア1320には、第1バネ134の端部を保持する第1バネ受け部1323が、図の上面に形成されている。ムービングコア1320の図の下面には、第2バネ135の端部を支持する第2バネ受け部1324が形成されている。
【0028】
ハウジング110はポリブチレンテレフタレートPBT等の樹脂製で、有底円筒状をしている。このハウジング110は、上記電磁弁130の電磁弁ハウジングも兼ねている。そして、上記の第2バネ135の他方の端部は、このハウジング110の底部112に支持されている。
【0029】
ハウジング110は、電磁弁130の上方部に通路室160を形成している。通路室160には、キャニスタ13からのパージ空気が流入する流入通路161が開口している。そのため、この流入通路161には、出口側パージ空気通路14をなすホースが連結される。
【0030】
また、ハウジング110の上端には蓋板111が配置され、蓋板111にはパージ空気を吸気管21のスロットルバルブ25下流に向けて流出する流出通路164が形成されている。この流出通路164にも、出口側パージ空気通路14をなすホースが連結される。通路室160には弁座部材162が円筒状に突出形成されている。そして、弁座部材162の図の下端に、直径が10ミリメートル程度の第1弁座163がリング状に形成されている。
【0031】
また、弁座部材162は流出通路164と連通し、流入通路161から通路室160に流入したパージ空気は、弁座部材162を経て、流出通路164に流れる。流出通路164、弁座部材162、及び第1弁座163は蓋板111と一体に樹脂成形される。円筒形状をしたハウジング110は、蓋板111と溶着して開口部が閉じられる。ハウジングは直径が60ミリメートル程度で、高さも60ミリメートル程度である。
【0032】
通路室160には、第1弁座163と対向する位置に第1弁体170が配置されている。第1弁体170は、PBT等の樹脂製で、内部にパージ空気を通す連通通路171を備える円盤形状をしている。連通通路171は直径4ミリメートル程度の穴である。第1弁体170の外周のうち図の上方側には、第1弁座163に対して着座可能な第1シール部172が配置されている。第1弁体170の外周のうち図の下方側には、通路室160の底面166と当接する緩衝材173が配置されている。なお、通路室160の底面166は、電磁弁130の電磁弁ハウジングの上部でもある。そして、上記の第1バネ134の他方の端部はこの第1弁体170の下面に当接している。
【0033】
第1シール部172は、第1弁体170が第1弁座163に着座して際のシール性を高めるもので、緩衝材173は第1弁体170が通路室160の底面166に当接する際の衝撃を緩和するものである。第1シール部172及び緩衝材173は、共にフッ素ゴム製であり、第1弁体170に接着固定されている。第1弁体170の上面のうち、連通通路171の周囲には第2弁座174が形成されている。
【0034】
この第2弁座174には、第2弁体180の第2シール部181が対向配置されている。第2シール部181もフッ素ゴム製で、第2弁体180の円盤状の頭部182に接着固定されている。第2弁体180は、PBT等の樹脂製で、円盤形状の頭部182と、この頭部182より電磁弁130側に延びるロット183を一体に成形している。第2シール部181は、頭部182に接着されている。ロット183は、第1弁体170の連通通路171を貫通して、その先端184はムービングコア1320の取付穴1328に嵌入している。従って、第2弁体180はロット183を介してムービングコア1320と一体に移動する。なお、ロット183の直径は2ミリメートル程度である。
【0035】
次に、上記構成のパージバルブ100の作動を説明する。ムービングコア1320には永久磁石1321が配置されているので、磁束通路部1322は着磁している。ここで、図4に示すように、リング状をした永久磁石1321の外周側がS極になり内周側がN極になるよう着磁されているとする。この場合には、磁束通路部1322は、図の上端1325及び下端1327がN極に着磁される。ただ、着磁の極性は図4の例には限定されない。図4の例とは逆に、永久磁石1321の外周側がN極になり内周側がS極になるようにしてもよい。そのように着磁されていれば、磁束通路部1322の上端1325及び下端1327はS極に着磁される。いずれにせよ、磁束通路部1322は着磁されている。
【0036】
第1電極151及び第2電極152に電圧が印加されていない状態では、電磁弁130のコイル132に通電されず、コイル132は励磁していない。そのため、ステータコア1310は着磁されていない。一方、ムービングコア1320の磁束通路部1322は、永久磁石1321により着磁されているので、磁力によりムービングコア1320はステータコア1310と最も隣接した位置に保持される。即ち、図5に示すように、ムービングコア1320の磁束通路部1322の上端1325が、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の上方部位1314と対向し、ムービングコア1320の磁束通路部1322の下端1327が、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の下方部位1315と対向する位置に保持される。
【0037】
第1バネ134及び第2バネ135は、この状態を保持するようにムービングコア1320に付勢力を加えている。より具体的には、第2バネ135はハウジング110の底部112に保持されてムービングコア1320を上方(第1方向a)に付勢している。一方、第1バネ134は、第1弁体170とムービングコア1320との間に配置されてムービングコア1320を下方(第2方向b)に付勢している。第1方向aに付勢する第2バネ135の付勢力と第2方向bに付勢する第1バネ134との差が、第1弁座163と第1弁体170のシール力及びムービングコア1320等の重さと釣り合うように設定されている。即ち、ムービングコア1320、第1弁体170、第2弁体180は、第1弁座163をシールした状態で、第1バネ134と第2バネ135により支えられている。換言すれば、ムービングコア1320、第1弁体170、第2弁体180は、第1バネ134と第2バネにより支えられ、ムービングコア1320の永久磁石1321の磁力で第1弁座163が第1シール部172によりシールされている。
【0038】
第1電極151及び第2電極152のいずれかに正電圧を印加すれば、コイル132は励磁し、磁気回路を構成するステータコア1310には磁束が流れる。ただ、ステータコア1310には磁束遮断部1313が設けられているので、上方部位1314と下方部位1315でN極若しくはS極の磁界が発生する。そして、この磁界がムービングコア1320の磁束通路部1322の磁界と吸引、反発する。
【0039】
図6は、磁束遮断部1313の上方部位1314がN極に着磁され、磁束遮断部1313の下方部位1315がS極に着磁された状態を示している。この状態では、ムービングコア1320の磁束通路部1322の上端1325のN極が、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の上方部位1314のN極と反発する。逆に、ムービングコア1320の磁束通路部1322の下端1327のN極は、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の下方部位1315のS極に吸引される。そのため、ムービングコア1320は図の上方(第1方向a)に引き上げられ、第1位置に保持される。
【0040】
逆に、磁束遮断部1313の上方部位1314がS極に着磁され、磁束遮断部1313の下方部位1315がN極に着磁されれば、ムービングコア1320の磁束通路部1322の上端1325のN極は、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の上方部位1314のN極と反発する。そして、ムービングコア1320の磁束通路部1322の下端1327のS極は、ステータコア1310のうち磁束遮断部1313の下方部位1315のS極に吸引される。そのため、ムービングコア1320は図の下方(第2方向b)に引き下げられ、第2位置に保持される。
【0041】
このように、ステータコア1310とムービングコア1320間の磁界による吸引と反発により、ムービングコア1320は移動する。本開示では、第1電極151に正電圧を印加すれば、ムービングコア1320を第1方向aに移動させるように設定している。この設定の下では、第2電極152に正電圧を印加すれば、磁気回路の向きが逆となりムービングコア1320は第2方向に移動する。第1電極151に正電圧を印加するか第2電極152に正電圧を印加するかは、制御装置50によって切り替えられる。
【0042】
ムービングコア1320の第1方向aへの移動は、ロット183を介して第2弁体180に伝達され、図7に示すように、第2シール部181が第2弁座174から離脱する。それにより、通路室160内のパージ空気が、連通通路171より弁座部材162を介して流出通路164に流出する。図5のムービングコア1320が第1方向に最大変位した状態で、流出するパージ空気の流量は1分間で50~60リットル程度である。
【0043】
制御装置50は、電磁弁130をデューティ比制御している。デューティ比制御は、図8に示すように、10ヘルツ(0.1秒)程度の周期の中でどの程度コイル132に通電するかを制御するものである。0.02秒通電し、0.08秒非通電とすればデューティ比は20%であり、0.05秒ずつ通電、非通電を繰り返せばデューティ比は50%となる。従って、第2弁体180は、デューティ比0%のパージ空気を流さない状態から、デューティ比100%の毎分50~60リットルのパージ空気を流す状態まで、パージ空気の流量をリニアに制御することができる。
【0044】
制御装置50が第2電極152に正電圧を印加するよう切り替えると、上記の通り、ムービングコア1320は第2方向に移動する。このムービングコア1320の第2方向の移動もロット183を介して第2弁体180に伝達される。図9がこの状態を示し、この状態では、第2弁体180の第2シール部181は、第1弁体170の第2弁座174に着座している。そのため、第2弁体180の第2方向への移動は第1弁体170に伝達され、第1弁体も第2方向に移動する。その結果、第1弁体170の第1シール部172が第1弁座163から離脱する。
【0045】
第1弁座163は第2弁座174より流路断面積が大きいので、大量のパージ空気を流すことができる。本例では、毎分200リットル程度の流量としている。この第2方向の移動も制御装置によりデューティ比制御される。第1弁体170も、第2弁体180と同様に、デューティ比0%のパージ空気を流さない状態から、デューティ比100%の毎分200リットルのパージ空気を流す状態まで流量をリニアに制御することができる。
【0046】
ただ、パージ空気を流さない状態は、ムービングコア1320の第1方向の移動によって第2弁体180で制御している。第1弁体170が制御するのは、第2弁体180の最大流量(毎分60リットル程度)より多い流量である。これは、第1弁体170のデューティ比の30%程度に相当する。従って、第1弁体170は、デューティ比30%のパージ空気を毎分60リットル程度流す状態から、デューティ比100%の毎分200リットルを流す状態まで流量をリニアに制御する。
【0047】
このように、本開示によれば、毎分60リットル程度以下の小流量時には、ムービングコア1320の移動を第1方向としてデューティ比制御を行うようにしている。そのため、小容量時の制御のリニア性を高めてより正確に制御することができる。また、毎分60リットル程度を超える大流量は、ムービングコア1320の移動を第2方向として、第1弁座163から大量のパージ空気を流すようにしている。そのため、大量のパージ空気を短時間で流すことができる。この際のデューティ比制御のリニア性は小流量時に比べると劣るが、大流量時にはより多くのパージ空気を流すことが求められている。
【0048】
なお、上述の開示で示した材料や大きさは一例であり、要求される性能等に応じて種々変更可能である。従って、毎分60リットル程度や毎分200リットル程度の流量も一例であり、要求性能に応じて変更される。
【0049】
上述の開示では、ムービングコア1320は、永久磁石1321と磁束通路部1322を樹脂モールドしている。これは、ムービングコア1320の成形を容易にし、第1バネ受け部1323、第2バネ受け部1324及び取付穴1328を形成する上で望ましい。ただ、必要に応じ、ムービングコア1320を金属製の永久磁石1321と磁束通路部1322で構成することも可能である。
【0050】
上述の開示では、ステータコア1310の磁束遮断部1313を真鍮製としたが、樹脂等他の非磁性材料を用いることも可能である。また、保持溝1312の部分を空間として非磁性材料を充填させなくても、磁束遮断部1313を構成することは可能である。
【0051】
上述の開示では、制御装置50は電磁弁130をデューティ比制御した。流量を連続的に制御することができ、デューティ比制御は望ましい制御である。ただ、用途に応じては、オンオフ制御とデューティ比制御とを組み合わせてもよく、オンオフ制御のみとすることも可能である。
【0052】
また、パージバルブ100は、本開示の流量制御弁の望ましい使用例であるが、本開示は大流量と小流量との切り替えが行え、かつ、大流量小流量共に流量制御が行える制御弁として広範な用途を有している。
【符号の説明】
【0053】
100 パージバルブ
110 ハウジング
130 電磁弁
1310 ステータコア
1313 磁束遮断部
1320 ムービングコア
1321 永久磁石
1322 磁束通路部
160 通路室
161 流入通路
163 弁座
164 流出通路
170 第1弁体
180 第2弁体
図1
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