(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148849
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ステーパイプおよび操作機器の取付けキット
(51)【国際特許分類】
F16B 31/02 20060101AFI20220929BHJP
F24H 15/395 20220101ALI20220929BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F16B31/02 H
F24H1/00 J
H04Q9/00 301D
H04Q9/00 371Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050675
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】福島 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇生
【テーマコード(参考)】
3L122
5K048
【Fターム(参考)】
3L122FA02
5K048BA14
5K048HA01
(57)【要約】
【課題】過度にナットが締め付けられても、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことが可能なステーパイプおよび操作機器の取付けキットを提供する。
【解決手段】ステーパイプ100は、一方の端部に操作機器300は固定される。ステーパイプ100の他方の端部には、ナット200が噛み合わされるネジ部122と、スリット124とが形成される。操作機器300とナット200が壁を挟んだ状態から、所定の強度を超えてナット200が締め付けられると、スリット124が狭まる方向に他方の端部が弾性変形して、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に固定された操作機器を壁の側面に設置するためのステーパイプであって、
他方の端部に形成され、ナットが噛み合わされるネジ部と、
前記他方の端部に形成されたスリットと、を備え、
前記操作機器と前記ナットが前記壁を挟んだ状態から、所定の強度を超えて前記ナットが締め付けられると、前記スリットが狭まる方向に前記他方の端部が弾性変形して、前記ネジ部と前記ナットとの噛み合いが外れる、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項2】
請求項1に記載のステーパイプにおいて、
前記スリットは、前記他方の端部の周方向に複数配置されている、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項3】
請求項2に記載のステーパイプにおいて、
前記複数のスリットは、前記他方の端部の周方向に略均等な間隔で配置されている、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のステーパイプにおいて、
第1パイプと、
前記第1パイプに螺合する第2パイプと、を備え、
前記第1パイプに前記操作機器が設置され、
前記第2パイプに前記ネジ部および前記スリットが形成され、
前記第2パイプに形成された前記ネジ部の終端まで前記ナットが絞められた状態から、さらに前記ナットが締められると、前記ナットの回転に伴い前記第2パイプが回転して、前記第1パイプと前記第2パイプとの間の螺合が進み、前記ステーパイプの全長が短くなる、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項5】
請求項4に記載のステーパイプにおいて、
前記スリットは、少なくとも、前記ネジ部の終端付近の深さまで延びている、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項6】
請求項5に記載のステーパイプにおいて、
前記スリットは、前記ネジ部の終端の深さよりも奥側に延びている、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のステーパイプにおいて、
前記操作機器は、浴室内に設置される給湯装置の操作機器であり、
前記壁は、前記浴室と浴室外との間に存在する壁である、
ことを特徴とするステーパイプ。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のステーパイプと、
前記ナットと、を備える、
ことを特徴とする操作機器の取付けキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面に操作機器を取り付けるためのステーパイプおよび取付けキットに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置では、操作機器(リモコン)を介して、給湯温度等の設定がなされる。操作機器は、リビングルームやキッチンの他、浴室内にも設置される。浴室に対する操作機器の設置は、ステーパイプを用いて行われる。この場合、浴室と浴室外との間の壁を跨ぐように、ステーパイプが配置される。浴室側のスターパイプの端部に操作機器が設置され、浴室外側のステーパイプの端部にナットが設置される。また、操作機器の配線がステーパイプの内部を通されて、浴室外に引き出される。
【0003】
こうして、ステーパイプの両端に操作機器とナットが配置された状態で、浴室外側のナットを締めると、ナットと操作機器との間の距離が短くなっていく。こうして、操作機器とナットとで壁が挟まれた後、さらにナットを締め付けることにより、操作機器の背面が浴室の壁面に押し付けられる。これにより、操作機器が浴室内の壁面に固定される。
【0004】
以下の特許文献1には、この種のステーパイプの固定構造が記載されている。この固定構造では、操作機器側のステーパイプの端部にスリットが設けられる。このスリットが閉じるようにステーパイプの端部を弾性変形させた状態で、当該端部が操作機器背面の収納部に挿入される。その後、当該端部の弾性変形が解除される。これにより、当該端部の先端に設けられたフランジ部が操作機器側の係合部に係合して、ステーパイプの端部が操作機器の背面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような構造では、ステーパイプの端部に設置されたナットの締め付けによって、操作機器が壁面に固定される。しかしながら、ナットの締め付けが強すぎると、操作機器の背面が、ステーパイプによって過度に引っ張られてしまう。これにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じる惧れがある。
【0007】
かかる課題に鑑み、本発明は、過度にナットが締め付けられても、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことが可能なステーパイプおよび操作機器の取付けキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、一方の端部に固定された操作機器を壁の側面に設置するためのステーパイプに関する。この態様に係るステーパイプは、他方の端部に形成され、ナットが噛み合わされるネジ部と、前記他方の端部に形成されたスリットと、を備える。前記操作機器と前記ナットが前記壁を挟んだ状態から、所定の強度を超えて前記ナットが締め付けられると、前記スリットが狭まる方向に前記他方の端部が弾性変形して、前記ネジ部と前記ナットとの噛み合いが外れる。
【0009】
本態様に係るステーパイプによれば、操作機器とナットが壁を挟んだ状態から、所定の強度を超えてナットが締め付けられると、スリットが狭まる方向にステーパイプの他方の端部が弾性変形して、ネジ部とナットとの噛み合いが外れる。このため、作業者がナットを締め付けすぎた場合も、操作機器の背面が、ステーパイプによって過度に引っ張られることが回避され得る。よって、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことができる。
【0010】
本態様に係るステーパイプにおいて、前記スリットは、前記他方の端部の周方向に複数配置され得る。
【0011】
このように、スリットが複数配置されることにより、ステーパイプの他方の端部が弾性変形しやすくなる。よって、ナットが締め付けられすぎた際に、ステーパイプのネジ部とナットとの噛み合いを円滑に外すことができる。よって、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より確実に、防ぐことができる。
【0012】
この場合、前記複数のスリットは、前記他方の端部の周方向に略均等な間隔で配置されることが好ましい。
【0013】
これにより、ナットが締め付けられすぎた際に、ステーパイプの他方の端部を周方向に略均等に弾性変形させることができ、ステーパイプのネジ部とナットとの噛み合いをより円滑に外すことができる。よって、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より一層確実に、防ぐことができる。
【0014】
本態様に係るステーパイプは、第1パイプと、前記第1パイプに螺合する第2パイプと、を備える構成とされ得る。この場合、前記第1パイプに前記操作機器が設置され、前記第2パイプに前記ネジ部および前記スリットが形成される。そして、前記第2パイプに形成された前記ネジ部の終端まで前記ナットが絞められた状態から、さらに前記ナットが締められると、前記ナットの回転に伴い前記第2パイプが回転して、前記第1パイプと前記第2パイプとの間の螺合が進み、前記ステーパイプの全長が短くなる。
【0015】
この構成によれば、第1パイプと第2パイプとの螺合が可能な範囲でステーパイプの長さが可変である。このため、色々な厚みの壁にステーパイプを架けることができる。よって、色々な厚みの壁の壁面に、操作機器を設置することができる。
【0016】
この場合、前記スリットは、少なくとも、前記ネジ部の終端付近の深さまで延びるように形成され得る。
【0017】
こうすると、ネジ部の終端までナットが締められた際に、ナットが螺合する端部の範囲の大半に、スリットが延びることになる。このため、さらにナットが締め付けられて、ナットとネジ部との噛み合い位置に大きな力が掛かった場合に、ナットが螺合する端部の範囲が円滑に弾性変形して、ナットとネジ部との噛み合いが適正に外れ易くなる。よって、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを、確実に、防ぐことができる。
【0018】
この場合、前記スリットは、前記ネジ部の終端の深さよりも奥側に延びていてもよい。
【0019】
こうすると、ネジ部の終端までナットが締められた際に、ナットが螺合する端部の範囲が、より一層、弾性変形しやすくなる。このため、ナットの締め付け過ぎによって、ナットとネジ部との噛み合い位置に大きな力が掛かった場合に、ナットとネジ部との噛み合いをより確実に外すことができる。よって、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より確実に、防ぐことができる。
【0020】
本態様において、たとえば、前記操作機器は、浴室内に設置される給湯装置の操作機器であり、前記壁は、前記浴室と浴室外との間に存在する壁である。
【0021】
この場合、ナットの締め付け過ぎによる不所望な変形や破損を回避しつつ、操作機器を浴室内の壁面に適正に設置することができる。
【0022】
本発明の第2の態様は、操作機器の取付けキットに関する。この態様に係る取付けキットは、上記第1の態様に係るステーパイプと、前記ナットとを備える。
【0023】
本態様に係る操作機器の取付けキットによれば、上記第1の態様に係るステーパイプを備えるため、ナットの締め付け過ぎにより、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことができる。よって、操作機器の取付けにおける作業性を高めつつ、壁面に操作機器を良好に設置することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のとおり、本発明によれば、過度にナットが締め付けられても、操作機器の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことが可能なステーパイプおよび操作機器の取付けキットを提供することができる。
【0025】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、実施形態に係る、操作機器およびその取付けに用いる部品の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、実施形態に係る、第2パイプの構成を示す側面図である。
図2(b)は、実施形態に係る、第2パイプにナットが装着された状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、操作機器にステーパイプとナットが装着された状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る、操作機器とナットが壁を挟んだ状態を模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態に係る、操作機器の取付け時にナットが適正に締め付けられた状態を模式的に示す断面図である。
図5(b)は、実施形態に係る、操作機器の取付け時にナットが過度に締め付けられた状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、それぞれ、変更例に係る、スリットの配置例を示す背面図である。
図6(c)、(d)は、それぞれ、他の変更例に係る、スリットの形成例を示す側面図である。
【
図7】
図7は、さらに他の変更例に係る、操作機器およびその取付けに用いる部品の構成を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すステーパイプを用いて操作機器を壁に設置した状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態では、給湯装置の操作機器(リモコン)を浴室の壁面に設置する場合の構成が示されている。便宜上、各図には、上下左右前後を示す矢印が付記されている。本実施形態では、上下左右前後の方向が、操作機器の上下左右前後の方向に対応している。
【0028】
図1は、操作機器300およびその取付けに用いる部品の構成を示す斜視図である。
【0029】
図1に示すように、操作機器300の取付け構造は、ステーパイプ100と、ナット200と、シール部材400と、壁用治具500とからなっている。ステーパイプ100とナット200は、壁面に操作機器300を取り付けるための取付けキット10を構成する。
【0030】
ステーパイプ100は、第1パイプ110と第2パイプ120とが組み合わされて構成される。第1パイプ110および第2パイプ120は、合成樹脂等の弾性変形可能な材料からなっている。第1パイプ110および第2パイプ120は、前後が開放された円筒形状を有する。第1パイプ110は、第2パイプ120よりもやや長い。また、第1パイプ110の外径は、第2パイプ120の外径よりも大きい。
【0031】
第1パイプ110は、前側端部の外周にネジ部111が形成されている。また、第1パイプ110の内側面には、後端からほぼ全長に亘って、ネジ部112が形成されている。さらに、第1パイプ110の後側端部の外側面に、複数の凹部113が周方向に間欠的に形成されている。第1パイプ110の外形は、凹部113を除いて、一定である。
【0032】
図2(a)は、第2パイプ120の詳細な構成を示す側面図である。
【0033】
第2パイプ120は、前端から後方に向かってネジ部121が形成されている。このネジ部121の後側に、ネジ部121よりも外径が大きい周面部123が形成されている。周面部123の外側面は、円筒面である。さらに、周面部123の後側に、周面部123と同径のネジ部122が形成されている。
【0034】
ネジ部122には、後端から前方に延びる2つのスリット124(
図1参照)が形成されている。各スリット124は、ネジ部122の終端付近の深さまで延びている。また、2つのスリット124は、周方向に略均等な間隔で配置されている。すなわち、2つのスリット124は、周方向に略180°の間隔で配置されている。ネジ部122は、ナット200のネジ部201(
図1参照)と噛み合う。前後方向のネジ部122の幅は、ナット200の厚みと略同じである。
【0035】
図2(b)は、第2パイプ120にナット200が装着された状態を示す側面図である。
【0036】
図2(b)に示すように、ナット200は、ネジ部122の終端まで締められる。ナット200がネジ部122の終端まで締められると、ナット200の前端が周面部123の後端に当接する。これにより、ナット200は、それ以上、締めることができない。その後、ナット200が締め付け方向に回転すると、ナット200とともに、第2パイプ120が一体的に回転する。
【0037】
図1に戻り、ナット200は、合成樹脂等の材料からなっている。正面視におけるナット200の形状は、正六角形である。ナット200の中央には、第2パイプ120のネジ部122に噛み合うネジ部201が形成されている。
【0038】
操作機器300は、浴室に設置されるリモコンである。操作機器300背面の略中央位置に、円形の凹部301が形成されている。凹部301の内径は、第1パイプ110の外形と略同じである。凹部301の内側面には、第1パイプ110のネジ部111と噛み合うネジ部302が形成されている。また、凹部301の中央には、コネクタ303が配置されている。コネクタ303には、操作機器300に対して給電および通信を行うための2心通信線が接続される。凹部301の外周に沿って、一定高さ且つ円環状の縁部304が形成されている。
【0039】
シール部材400は、凹部301に対する水の侵入を防ぐためのものである。シール部材400は、樹脂等により形成された薄いシート状の部材である。シール部材400の中央には、操作機器300側の縁部304の外径と略同径の開口401が形成されている。開口401は、縁部304の外周に嵌まる形状である。シール部材400の前面には、接着層が形成されている。
【0040】
壁用治具500は、筐体510と、板金520とを備える。正面視において、筐体510と板金520は、左右に長い長方形の形状である。筐体510は、背面が開放された箱形状である。板金520は、筐体510の背面に嵌められて、筐体510に装着される。筐体510は、合成樹脂や金属等の剛性が高い材料によって形成される。
【0041】
板金520には、略中央の位置に、前後に貫通する孔521が形成されている。孔521の径は、第2パイプ120のネジ部122および周面部123の外径よりも、僅かに大きい。筐体510にも、孔521と同軸かつ同径の孔511(
図4参照)が形成されている。板金520の背面には、筐体510の背面を塞ぐカバー(図示せず)を装着するための4つのフック522が形成されている。
【0042】
操作機器300を浴室の壁面に設置する際には、浴室と浴室外とを区画する壁に、ステーパイプ100を通すための孔が開けられる。次に、シール部材400の開口401が操作機器300の縁部304に嵌められて、シール部材400が操作機器300の背面に貼り付けられる。さらに、操作機器300のコネクタ303に2心通信線が接続されて、2心通信線が第1パイプ110に通される。そして、第1パイプ110のネジ部111が操作機器300側のネジ部302に噛み合わされて、第1パイプ110が操作機器300の背面に設置される。
【0043】
このとき、作業者は、凹部113を把持して、第1パイプ110のネジ部111を操作機器300のネジ部302に締め付ける。凹部113は、締め付けの際の滑り止めとして機能する。これにより、第1パイプ110が操作機器300の背面に強固に固定される。
【0044】
その後、第1パイプ110のネジ部112に第2パイプ120のネジ部121が噛み合わされて、第1パイプ110と第2パイプ120が一体化される。このとき、2心通信線が、第2パイプ120に通される。この状態で、第2パイプ120が、浴室内から、壁の孔に通される。これにより、第2パイプ120の後端が浴室外に位置づけられる。また、2心通信線が外部に引き出される。
【0045】
浴室外では、第2パイプ120の後端が、壁用治具500の孔511、521に通されて、壁用治具500が、壁の外側面に配置される。これにより、第2パイプ120の後部が、孔521から外部に突出する。この状態で、第2パイプ120のネジ部122にナット200が噛み合わされて、ナット200が締められる。このとき、ナット200の孔に2心通信線が通される。これにより、
図1に示す各部材が一体化される。
【0046】
図3は、操作機器300にステーパイプ100とナット200が装着された状態を示す斜視図である。便宜上、
図3では、壁用治具500の図示が省略されている。また、2心通信線の図示も省略されている。
【0047】
上記のように、ナット200が第2パイプ120後端のネジ部122の終端まで締められた後、さらにナット200が締められると、ナット200とともに第2パイプ120が一体的に回転する。これにより、第2パイプ120のネジ部121と第1パイプ110のネジ部112との噛み合いが進み、ナット200の前面と操作機器300の背面との間の距離L1が縮まる。そして、この距離L1が、壁の厚みに対応する距離になると、ナット200と操作機器300とが、壁用治具500を介して、壁を挟む状態になる。
【0048】
図4は、操作機器300とナット200が壁600を挟んだ状態を模式的に示す側面図である。便宜上、
図4では、壁600の壁面付近の範囲のみが図示され、その他の壁600の範囲の図示が省略されている。図示が省略された壁600の範囲には、ステーパイプ100が図示されている。また、壁用治具500は、左右方向中央位置の断面が示されている。
【0049】
図4に示す状態では、壁用治具500の前面と操作機器300の背面との距離L0が、壁600の厚みと同じになっている。この状態から、さらにナット200が締められると、ナット200とともに第2パイプ120が回転して、ステーパイプ100が短くなる。これにより、ナット200の前面と操作機器300の背面との距離L1が縮まり、ステーパイプ100によって操作機器300が後方に引っ張られる。その結果、操作機器300の背面が壁600の側面に押し付けられ、操作機器300が壁600に固定される。
【0050】
このとき、作業者は、操作機器300の背面が壁600の側面に適度な強さで押し付けられるように、ナット200の締め付けを調整する。しかしながら、作業者は、操作機器300がどの程度、壁600の側面に押し付けられているかを適正に判断することが困難なため、予期せずナット200を締め付け過ぎる場合がある。ナット200が締め付けられ過ぎると、操作機器300の背面がステーパイプ100によって過度に引っ張られて、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が起こり得る。
【0051】
本実施形態では、このような問題を回避するために、上記のように、第2パイプ120の端部に、スリット124が形成されている。
【0052】
図5(a)、(b)は、スリット124の作用を示す図である。
図5(a)は、操作機器300の取付け時にナット200が適正に締め付けられた状態を模式的に示す断面図である。
図5(b)は、操作機器300の取付け時にナット200が過度に締め付けられた状態を模式的に示す断面図である。
【0053】
図5(a)の状態から、さらに、ナット200が締められると、ネジ部122とネジ部201との間に、ネジ溝の傾斜に沿った力が掛かる。この力によって、
図5(b)に示すように、スリット124が狭まる方向、すなわち、径が小さくなる方向に、第2パイプ120の端部が弾性変形する。これにより、ナット200が過度に締め付けられた場合には、この弾性変形により、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れる。
【0054】
このように、ナット200が所定の強度を超えて締め付けられても、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れて、操作機器300の背面が過度に引っ張られることが回避される。よって、ナット200の過度な締め付けにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことができる。
【0055】
ナット200の過度の締め付けにより、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れた場合、ネジ部122は、自身の弾性復帰により、締め付けが緩む位置で、再度、ナット200側のネジ部201に噛み合う。したがって、作業者は、その状態においてナット200の締め付けが弱いと判断した場合、操作機器300が適正な引っ張り力で固定されるように、再度、ナット200の締め付けを行えばよい。
【0056】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0057】
図5(a)、(b)に示したように、操作機器300とナット200とにより壁600が挟まれた状態から、所定の強度を超えてナット200が締め付けられると、スリット124が狭まる方向にステーパイプ100のナット200側の端部が弾性変形して、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れる。このため、作業者がナット200を締め付けすぎた場合も、操作機器300の背面が、ステーパイプ100によって過度に引っ張られることが回避され得る。よって、ナット200の締め付け過ぎにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを防ぐことができる。
【0058】
図1に示したように、スリット124は、ナット200側の端部の周方向に2つ配置されている。このように、スリット124が2つ配置されることにより、ステーパイプ100のナット200側の端部が弾性変形しやすくなる。よって、ナット200が締め付けられすぎた際に、ステーパイプ100のネジ部122とナット200との噛み合いを円滑に外すことができる。よって、ナット200の締め付け過ぎにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より確実に、防ぐことができる。
【0059】
図1に示したように、2つのスリット124は、ナット200側の端部の周方向に略均等な間隔で配置されている。これにより、ナット200が締め付けられすぎた際に、ステーパイプ100のナット200側の端部を周方向に略均等に弾性変形させることができ、ステーパイプ100のネジ部122とナット200との噛み合いをより円滑に外すことができる。よって、ナット200の締め付け過ぎにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より一層確実に、防ぐことができる。
【0060】
図1に示したように、ステーパイプ100は、第1パイプ110と、第1パイプ110に螺合する第2パイプ120と、を備える。第1パイプ110に操作機器300が設置され、第2パイプ120にネジ部122およびスリット124が形成される。第2パイプ120に形成されたネジ部122の終端までナット200が絞められた状態から、さらにナット200が締められると、ナット200の回転に伴い第2パイプ120が回転して、第1パイプ110と第2パイプ120との間の螺合が進み、ステーパイプ100の全長が短くなる。このように、第1パイプ110と第2パイプ120との螺合が可能な範囲でステーパイプ100の長さが可変であるため、色々な厚みの壁600にステーパイプ100を架けることができる。よって、色々な厚みの壁600の壁面に、操作機器300を設置することができる。
【0061】
図1および
図2(a)、(b)に示したように、スリット124は、ネジ部122の終端付近の深さまで延びるように形成されている。この構成によれば、ネジ部122の終端までナット200が締められた際に、ナット200が螺合する端部の範囲の大半に、スリット124が延びることになる。このため、さらにナット200が締め付けられて、ナット200とネジ部122との噛み合い位置に大きな力が掛かった場合に、
図5(b)に示したように、ナット200が螺合する端部の範囲が円滑に弾性変形して、ナット200とネジ部122との噛み合いが適正に外れ易くなる。よって、ナット200の締め付け過ぎにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを、確実に、防ぐことができる。
【0062】
<変更例>
上記実施形態では、ステーパイプ100のナット200側の端部に2つのスリット124が周方向に均等な間隔で設けられたが、当該端部に設けられるスリット124の数および配置方法は、これに限られるものではない。
【0063】
たとえば、
図6(a)に示すように、端部にスリット124が1つだけ設けられてもよく、あるいは、
図6(b)に示すように、4つのスリット124が端部に設けられてもよい。
【0064】
但し、
図6(a)に示すように、スリット124が1つだけ設けられる場合は、上記実施形態のようにスリット124が2つ設けられる場合に比べて、ステーパイプ100の端部が弾性変形しにくくなる。他方、
図6(b)に示すように、スリット124が4つ設けられる場合は、上記実施形態のようにスリット124が2つ設けられる場合に比べて、ステーパイプ100の端部が弾性変形しやすくなる。よって、ステーパイプ100が弾性変形しやすい材質である場合は、
図6(a)のように、スリット124の数を減少させ、ステーパイプ100が弾性変形しにくい材質である場合は、
図6(b)のように、スリット124の数を増加させればよい。スリット124の数は、過度にナット200が締め付けられた際に端部が弾性変形してネジ部122とナット200との噛み合いが適正に外れるよう、ステーパイプ100の材質を考慮して、設定されればよい。
【0065】
なお、端部に3つ以上のスリット124を設ける場合も、たとえば、
図6(b)に示すように、周方向に略均等な間隔でスリット124を配置することが好ましい。これにより、ナット200が締め付けられすぎた際に、ステーパイプ100のナット200側の端部を周方向に略均等に弾性変形させることができ、ステーパイプ100のネジ部122とナット200との噛み合いを円滑に外すことができる。
【0066】
また、上記実施形態では、ネジ部122の終端付近の深さまでスリット124が延びていたが、スリット124の深さは、これに限られるものではない。たとえば、
図6(c)、(d)に示すように、スリット124が、ネジ部122の終端の深さよりも奥側に延びていてもよい。
【0067】
こうすると、ネジ部122の終端までナット200が締められた際に、ナット200が螺合する端部の範囲が、より一層、弾性変形しやすくなる。このため、ナット200の締め付け過ぎによって、ナット200とネジ部122との噛み合い位置に大きな力が掛かった場合に、ナット200とネジ部122との噛み合いをより確実に外すことができる。よって、ナット200の締め付け過ぎにより、操作機器300の背面に不所望な変形や破損が生じることを、より確実に、防ぐことができる。
【0068】
但し、スリット124が深くなるほど、スリット124が狭まる方向に端部が弾性変形しやすくなる。このため、より緩やかなナット200の締め付けにより、ネジ部122とナット200との噛み合いが外れやすくなる。他方、ナット200は、操作機器300の背面が適切な力で壁面に押し付けられるまで、ネジ部122との噛み合いが外れることなく締め付けられる必要がある。よって、スリット124の深さは、操作機器300の背面が適切な力で壁面に押し付けられつつ、過度にナット200が締め付けられた際にネジ部122とナット200との噛み合いが適正に外れるように、設定されればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ステーパイプ100が、第1パイプ110と第2パイプ120とによって構成されたが、ステーパイプ100の構成は、これに限られるものではない。
【0070】
たとえば、
図7に示すように、ステーパイプ100が、1つのパイプによって構成されてもよい。この場合、ステーパイプ100は、合成樹脂などの弾性変形可能な材料で一体形成される。また、ステーパイプ100の前側の端部の外周に、操作機器300のネジ部302と噛み合うネジ部101が形成され、ステーパイプ100の後側の端部の外周にナット200と噛み合うネジ部102が形成される。ネジ部102が形成される幅W1は、上記実施形態においてネジ部122が形成される幅よりも広い。ナット200側の端部には、2つのスリット103が形成されている。スリット103は、ネジ部102の終端付近の深さまで延びている。
【0071】
図8は、
図7に示すステーパイプ100を用いて操作機器300を壁600に設置した状態を模式的に示す図である。
【0072】
図8に示すように、この構成例においても、ナット200と操作機器300とによって壁600が挟まれる。ナット200が締め付けられると、ナット200と操作機器300との間の距離L1が縮まる。これにより、操作機器300の背面が壁600の側面に押し付けられて、操作機器300が壁600の側面に固定される。この構成では、ネジ部102の幅W1の範囲で、壁600の厚みの変化に対応可能である。
【0073】
この場合も、ナット200が過度に締め付けられると、スリット103が狭まる方向にステーパイプ100の端部が弾性変形して、ネジ部102とナット200との噛み合いが外れる。これにより、ナット200の過度な締め付けによって、操作機器300の背面が不所望に変形または破損することを回避できる。
【0074】
上記実施形態と同様、
図7および
図8の構成例においても、スリット103の数、配置および深さは、適宜変更可能である。
【0075】
また、上記実施形態では、第1パイプ110のネジ部111を操作機器300のネジ部302に噛み合わせることによって、第1パイプ110の端部が操作機器300の背面に取り付けられたが、第1パイプ110の端部を操作機器300の背面に取り付ける方法は、これに限られるものではない。たとえば、上記特許文献1のように、フランジと係合部とを係合させることにより、第1パイプ110の端部が操作機器300の背面に固定されてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、第1パイプ110の内部に第2パイプ120が入り込む構成であったが、第2パイプ120の内部に第1パイプ110が入り込むように、ステーパイプ100が構成されてもよい。この場合、第2パイプ120の外径は、第1パイプ110より大きく設定される。また、第1パイプ110の後部外側面にネジ部が形成され、第2パイプ120の前部内側面に、第1パイプ110側のネジ部と噛み合うネジ部が形成される。
【0077】
また、壁用治具500の構成も、上記実施形態の構成に限られるものではない。たとえば、筐体510が省略されて、板金520のみにより、壁用治具500が構成されてもよい。
【0078】
また、壁面に固定される操作機器300は、浴室に設置される給湯装置用のリモコンに限られるものではなく、所定厚みの壁に設置される他の種類の操作機器であってもよい。操作機器300が水の侵入が起こり得ない環境下で使用される操作機器である場合、シール部材400は省略されてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、取付けキット10の最小単位として、ステーパイプ100およびナット200が、取付けキット10に含められたが、ステーパイプ100およびナット200以外の他の部材が、さらに、取付けキット10に含まれてもよい。たとえば、シール部材400や壁用治具500が取付けキット10に含まれてもよい。
【0080】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0081】
10 取付けキット
100 ステーパイプ
110 第1パイプ
120 第2パイプ
102、122 ネジ部
103、124 スリット
200 ナット
300 操作機器
600 壁