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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148876
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220929BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050723
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶彦
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033BA31
2H033BA32
2H033CA44
2H033CA57
2H270LA25
2H270LA70
2H270MA34
2H270MG02
2H270QB07
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】定着不良が生じたり、定着装置の異常が発生したりすることがなく、定着装置が無用に交換されるのを防止することができるようにする。
【解決手段】加熱体を備えた第1の定着部材、及び第1の定着部材と対向させて配設された第2の定着部材を備えた定着装置と、定着部材の温度を検出するサーモパイルTPと、サーモパイルTPによる第1の定着部材の検出温度を読み込み、検出温度の温度上昇傾きを算出する定着処理部Pr2と、温度上昇傾きが基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れが発生している旨を通知する通知処理部Pr3とを有する。第1の定着部材の温度を精度良く検出することができ、定着不良が生じたり、定着装置の異常が発生したりすることがなくなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)加熱体を備えた第1の定着部材、及び該第1の定着部材と対向させて配設された第2の定着部材を備えた定着装置と、
(b)前記第1の定着部材と対向させて装置本体に配設され、第1の定着部材の温度を検出するサーモパイルと、
(c)該サーモパイルによる第1の定着部材の検出温度を読み込み、検出温度の温度上昇傾きを算出する定着処理部と、
(d)前記温度上昇傾きが基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れが発生している旨を通知する通知処理部とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
(a)前記サーモパイルは、第1の定着部材から放射された赤外線を受けて熱起電力を発生させるサーモパイル素子を備え、
(b)前記定着処理部は、前記温度上昇傾きが基準値より小さい場合において、第1の定着部材から放射される赤外線の量が少なくなる要因が画像形成装置に一時的に発生した場合に、サーモパイルに汚れが発生していないと判断する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成装置に一時的に発生する、赤外線の量が少なくなる要因は、画像形成装置における交流電源のAC入力の低下である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成装置に一時的に発生する、赤外線の量が少なくなる要因は、媒体に発生するジャムである請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成装置に一時的に発生する、赤外線の量が少なくなる要因は、画像形成装置の周囲の気温である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
(a)前記定着処理部は、加熱体の制御を開始するたびに前記温度上昇傾きを算出する傾き追跡処理部を有し、
(b)該傾き追跡処理部は、算出した温度上昇傾きの移動平均値を算出し、該移動平均値が基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れがわずかに発生したと判断する請求項1~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、カラーのプリンタは、プリンタの本体、すなわち、装置本体内にブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニットを備え、該各画像形成ユニットに、感光体ドラム、帯電ローラ、現像ローラ、供給ローラ等が配設される。そして、各画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面がLEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラによって現像されて各色のトナー像が形成され、該各色のトナー像が、転写ローラによって用紙に重ねて転写される。続いて、定着装置としての定着器において各色のトナー像が用紙に定着させられることにより、用紙にカラーの画像が形成される。
【0003】
ところで、前記定着器は定着ローラ及びバックアップローラを備え、定着ローラ内に配設されたヒータによって定着ローラが加熱され、前記トナー像が、定着ローラによって溶融させられ、バックアップローラによって加圧されるようになっている。
【0004】
そして、定着器内にサーミスタが、装置本体内における定着器の近傍にサーモパイルが配設され、サーミスタ及びサーモパイルによって検出された温度、すなわち、検出温度に基づいて定着器の温度制御が行われるとともに、検出温度の差に基づいてサーモパイルに異常が発生したかどうかが判断される(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-33599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、サーモパイルのレンズ等に汚れが付着してサーモパイル汚れが発生すると、定着器の温度を精度良く検出することができなくなり、定着不良が生じたり、定着器の異常が発生したりしてしまう。その場合、無用に定着器を交換することになる。
【0007】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、定着不良が生じたり、定着装置の異常が発生したりすることがなく、定着装置が無用に交換されるのを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために、本発明の画像形成装置においては、加熱体を備えた第1の定着部材、及び該第1の定着部材と対向させて配設された第2の定着部材を備えた定着装置と、前記第1の定着部材と対向させて装置本体に配設され、第1の定着部材の温度を検出するサーモパイルと、該サーモパイルによる第1の定着部材の検出温度を読み込み、検出温度の温度上昇傾きを算出する定着処理部と、前記温度上昇傾きが基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れが発生している旨を通知する通知処理部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置においては、加熱体を備えた第1の定着部材、及び該第1の定着部材と対向させて配設された第2の定着部材を備えた定着装置と、前記第1の定着部材と対向させて装置本体に配設され、第1の定着部材の温度を検出するサーモパイルと、該サーモパイルによる第1の定着部材の検出温度を読み込み、検出温度の温度上昇傾きを算出する定着処理部と、前記温度上昇傾きが基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れが発生している旨を通知する通知処理部とを有する。
【0010】
この場合、サーモパイルによる第1の定着部材の検出温度が読み込まれ、検出温度の温度上昇傾きが算出され、該温度上昇傾きが基準値より小さい場合に、サーモパイル汚れが発生している旨が通知されるので、定着不良が生じたり、定着装置の異常が発生したりすることがなくなる。
【0011】
その結果、定着装置が無用に交換されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
図3】本発明の第1の実施の形態におけるサーモパイルの概念図である。
図4】本発明の第1の実施の形態における定着ローラのサーミスタによる検出温度及びサーモパイルによる検出温度の推移の例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第3の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
図8】本発明の第3の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
図9】本発明の第3の実施の形態における傾き追跡処理のサブルーチンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0014】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【0015】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の筐体、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体であり、該装置本体Bdの下部に媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に配設されたスタッカSt1に媒体としての用紙Pが積載される。そして、前記用紙カセット11の前端に隣接させて、用紙Pを1枚ずつ分離させて給紙するための給紙機構が配設される。
【0016】
該給紙機構は、回転させられて用紙Pを用紙カセット11から繰り出すホッピングローラ12、及び用紙Pの重送を防止する図示されない分離部材から成り、用紙Pは、ホッピングローラ12によって繰り出され、分離部材によって1枚ずつ分離させられて媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に給紙される。該用紙搬送路Rt1には、用紙Pの斜行を矯正する第1の搬送部材としてのレジストローラ対14、及び用紙Pを搬送する第2の搬送部材としての搬送ローラ対15が配設され、該搬送ローラ対15より下流側に画像形成部Q1が配設される。
【0017】
該画像形成部Q1は、装置本体Bdに対してそれぞれ着脱自在に配設されたブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニット(イメージドラムユニット)16Bk、16Y、16M、16C、該各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの像担持体としての感光体ドラム31の上方において、筐体Csの頂壁を構成する上面カバーによって支持され、感光体ドラム31と対向させて配設された露光装置としてのLEDヘッド22、及び画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの下方に配設された転写ユニットu1から成る。
【0018】
前記各LEDヘッド22は、感光体ドラム31の表面を露光して潜像としての静電潜像を形成する。
【0019】
また、前記転写ユニットu1は、第1の転写用のローラとしての駆動ローラR1、第2の転写用のローラとしての従動ローラR2、駆動ローラR1と従動ローラR2との間に走行自在に張設されたベルト部材としての転写ベルト17、該転写ベルト17の上方走行部を介して前記感光体ドラム31と対向させて回転自在に配設され、感光体ドラム31との間に転写ニップ(転写部)を形成し、該転写ニップにおいて転写ベルト17の裏面から転写バイアスが加えられる転写部材としての転写ローラ21、前記従動ローラR2の近傍において、転写ベルト17の下方走行部と対向させて配設され、転写ベルト17に付着したトナーを除去するクリーニング装置51等を備える。該クリーニング装置51は、転写ベルト17と当接させて配設され、転写ベルト17に付着したトナーを掻き取る第1のクリーニング部材としてのクリーニンドブレード52、及び掻き取ったトナーを収容する廃棄現像剤収容部としての廃トナーボックス53を備える。
【0020】
画像形成部Q1に供給された用紙Pは、前記転写ベルト17が走行させられるのに伴って搬送され、各感光体ドラム31と各転写ローラ21との間の転写ニップを通過し、このとき、各転写ローラ21によって、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて感光体ドラム31上に形成された各色の現像剤像としてのトナー像が用紙Pに順次重ねて転写され、カラーのトナー像が形成される。
【0021】
用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側に定着装置としての定着器18が配設される。
【0022】
該定着器18は、定着器18の外装を構成するハウジングHs、該ハウジングHs内において回転自在に配設された第1の定着部材としての定着ローラ45、該定着ローラ45内に配設された加熱体としてのハロゲンヒータHt、前記ハウジングHs内において定着ローラ45と対向させて配設された第1の温度検出部としてのサーミスタTS、前記ハウジングHs内において前記定着ローラ45と対向させて、かつ、当接させて回転自在に配設された第2の定着部材としてのバックアップローラ47、ハウジングHs外において、定着ローラ45の表面から放射される赤外線を受光して定着ローラ45の温度を検出する、非接触の温度センサから成る第2の温度検出部としてのサーモパイルTP等を備える。
【0023】
該サーモパイルTPは、集積回路から成る後述されるIC81(図3)を内蔵するので、過剰な熱を受けることがないように、装置本体Bdにおける前記ハウジングHs外の、用紙搬送路Rt1より上方におけるハウジングHsの入口側において、定着ローラ45の長手方向における中央部と対向させて配設される。
【0024】
画像形成部Q1から送られた用紙P上のカラーのトナー像が、定着ローラ45とバックアップローラ47との間に形成される定着ニップにおいて、定着ローラ45によって加熱され、バックアップローラ47によって加圧されて用紙Pに定着させられることにより、用紙Pにカラーの画像が形成される。
【0025】
前記用紙搬送路Rt1における定着器18より下流側に第3の搬送部材としての搬送ローラ対19が、該搬送ローラ対19より下流側に第4の搬送部材としての排出ローラ対20が配設される。カラーの画像が形成された用紙Pは、定着器18から排出され、搬送ローラ対19によって搬送された後、排出ローラ対20によって装置本体Bd外に排出され、筐体Csの頂壁に形成されたスタッカSt2にフェースダウンで積載される。
【0026】
次に、前記画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cについて説明する。なお、画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cはいずれも同じ構造を有するので、画像形成ユニット16Bkについて説明し、画像形成ユニット16Y、16M、16Cについては説明を省略する。
【0027】
前記画像形成ユニット16Bkは、用紙Pの幅方向に延在させて配設された画像形成ユニット16Bkの本体、すなわち、ユニット本体37、及び該ユニット本体37に対して着脱自在に配設された現像剤収容部としてのトナーカートリッジ41を備え、該トナーカートリッジ41内にブラックの現像剤としての図示されないトナーが収容される。
【0028】
そして、前記画像形成ユニット16Bkは、ユニット本体37内に、前記感光体ドラム31、該感光体ドラム31に当接させて回転自在に配設され、感光体ドラム31が時計回り方向に回転させられるのに伴って、感光体ドラム31の回転方向と逆の方向、すなわち、反時計回り方向に回転させられて、感光体ドラム31の表面を一様に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ32、感光体ドラム31に当接させて回転自在に配設され、反時計回り方向に回転させられてトナーを感光体ドラム31上の静電潜像に付着させ、静電潜像を現像する現像剤担持体としての現像ローラ33、該現像ローラ33に当接させて回転自在に配設され、トナーを現像ローラ33に供給するとともに、摩擦帯電させる供給部材としての供給ローラ34、トナー像の転写後に感光体ドラム31に残留したトナーを掻き取り、廃トナーとして除去する第2のクリーニング部材としてのクリーニングブレード35、ユニット本体37内のトナーがユニット本体37外に漏れるのを防止するシール部材36等を備える。
【0029】
前記用紙搬送路Rt1における搬送ローラ対15と画像形成部Q1との間に第1の媒体検出部としての書出センサs1が配設され、該書出センサs1は用紙搬送路Rt1における用紙Pの有無を検出する。書出センサs1の検出信号は、LEDヘッド22によって感光体ドラム31を露光するタイミング及び転写ローラ21に高電圧を印加するタイミングの基準となる。
【0030】
また、前記用紙搬送路Rt1における定着器18と搬送ローラ対19との間に第2の媒体検出部としての出口センサs2が配設され、該出口センサs2は用紙搬送路Rt1における用紙Pの有無を検出する。出口センサs2の検出信号に基づいて、用紙搬送路Rt1における定着器18より下流側でジャム、すなわち、出口ジャムが発生したかどうかが判断され、また、用紙Pに対するすべての画像形成プロセスが終了したかどうか、すなわち、印刷が終了したかどうかが判断される。
【0031】
次に、プリンタ10の制御装置について説明する。
【0032】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0033】
図において、10はプリンタ、60は制御部、62は不揮発性メモリから成る第1の記憶部としてのROM、63は揮発性メモリから成る第2の記憶部としてのRAM、64はハードディスク等から成る第3の記憶部としての記憶装置、65は操作・表示部としての操作パネルである。
【0034】
前記制御部60は、図示されないCPU、入出力ポート、計時部としてのタイマ、計数部としてのカウンタ等を備え、ROM62に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM62には、前記プログラムのほかに、各種の設定値等が記録される。RAM63には、外部機器としての図示されないホストコンピュータから送信された印刷データのほかに、各種の処理を行うためのデータが一時的に記録される。また、記憶装置64には、サーモパイル汚れが発生したかどうかを判断するための後述される基準値ρaが記録される。
【0035】
前記操作パネル65は、操作者がプリンタ10への指示を入力するためのスイッチ、キー等から成る操作部65a、及びプリンタ10の状態を画像、文字等で表示するためのLCD等から成る表示部65bを備える。操作パネル65がタッチパネルによって形成される場合、表示部65bは操作部としても機能する。
【0036】
また、66はホストコンピュータとプリンタ10との間の通信を行うインタフェース部、67は各LEDヘッド22に各色の画像データを供給するLEDヘッドインタフェース部、68は、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの現像ローラ33、供給ローラ34等及び各転写ローラ21にバイアス電圧を印加する高圧発生部、M1は、前記ホッピングローラ12、レジストローラ対14、搬送ローラ対15等を回転させる搬送用の駆動部としての搬送モータ、M2は、感光体ドラム31を回転させることによって、現像ローラ33、供給ローラ34等を回転させる画像形成用の駆動部としてのIDモータ、M3は、駆動ローラR1を回転させることによって転写ベルト17を走行させる転写用の駆動部としてのベルトモータ、M4は、前記搬送ローラ対19及び排出ローラ対20を回転させるとともに、バックアップローラ47を回転させることによって定着ローラ45を回転させる排出用・定着用の駆動部としての定着モータである。
【0037】
そして、s1は書込センサ、s2は出口センサ、s3は、プリンタ10が配設された環境、すなわち、プリンタ10の周囲の気温、湿度等を検出する環境センサ、TPはサーモパイル、TSはサーミスタ、70は、ハロゲンヒータHtに電力を供給する電力供給部である。
【0038】
前記制御部60は、印刷処理部Pr1、定着処理部Pr2、通知処理部Pr3等を有する。
【0039】
前記印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、画像形成部Q1において画像を形成する。そのために、印刷処理部Pr1は、ホストコンピュータからインタフェース部66を介してPDL等で記述された印刷データを受信すると、該印刷データを編集し、ビットマップデータから成る画像データに変換し、LEDヘッドインタフェース部67を介して各LEDヘッド22に送り、感光体ドラム31を露光する。また、印刷処理部Pr1は、高圧発生部68に指示を送り、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの現像ローラ33、供給ローラ34等にバイアス電圧を印加し、感光体ドラム31に各色のトナー像を形成するとともに、各転写ローラ21にバイアス電圧を印加し、トナー像を用紙Pに転写する。
【0040】
前記定着処理部Pr2は、定着ローラ45の温度が、用紙カセット11に収容された用紙Pの用紙サイズ、厚さ等の印刷条件に応じた目標温度になるように、電力供給部70によるハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を行う。
【0041】
また、定着処理部Pr2は、サーミスタTSによる定着ローラ45の検出温度Ts、及びサーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpを取得し、検出温度Ts、Tpを比較し、比較結果に基づいて、サーモパイルTPに異常が発生したかどうかを判断し、サーモパイルTPに異常が発生した場合にハロゲンヒータHtの動作を停止させる。
【0042】
さらに、前記定着処理部Pr2は、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpを読み込み、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出し、該温度上昇傾きρが基準値ρaより小さいかどうかを判断し、温度上昇傾きρが基準値ρaより小さい場合に、サーモパイル汚れが発生していると判断し、プリンタ10の動作を停止させる。
【0043】
前記通知処理部Pr3は、通知処理を行い、サーモパイル汚れが発生した場合、ローラ汚れが発生した場合等に操作者にその旨を通知する。
【0044】
次に、前記サーモパイルTPについて説明する。
【0045】
図3は本発明の第1の実施の形態におけるサーモパイルの概念図である。
【0046】
図において、TPはサーモパイル、71は、定着ローラ45から放射される赤外線Rfを受け、赤外線Rfの入射エネルギーに比例した熱起電力を発生させるサーモパイル素子、72は、断熱材から成り、サーモパイル素子71を支持するベース、73は該ベース72を支持する基板、75は該基板73上においてサーモパイル素子71を包囲して配設された金属製のサーモパイル缶である。該サーモパイル缶75は、サーモパイル素子71を包囲するために、所定の形状、本実施の形態においては、円筒状の形状を有する側壁ps、及び該側壁psの縁部を包囲するように配設された端壁ptを備え、該端壁ptに、定着ローラ45から放射された赤外線Rfを受けるための、円形の形状を有する開口h1が形成される。
【0047】
前記赤外線Rfは、開口h1に配設された集光部材としてのレンズ78によって集光され、サーモパイル缶75内においてサーモパイル素子71に集束させられる。そのために、レンズ78として、外側が凸面を有し、内側が平面を有する凸レンズが使用される。
【0048】
温度を検出する対象物が、定着ローラ45のように高温である場合、サーモパイル缶75及びレンズ78が対流及び輻射によって加熱され、温度が高くなるので、サーモパイル缶75の内面から赤外線Rcが、レンズ78の内面から赤外線Rrが放射され、サーモパイル素子71は、定着ローラ45から放射された赤外線Rfだけでなく赤外線Rc、Rrを受けることになり、サーモパイル素子71が発生させる熱起電力は、赤外線Rc、Rrの分だけ高くなる。
【0049】
そこで、ベース72上にIC81及び第3の温度検出部としてのサーミスタTCが配設され、基板73と接続される。サーミスタTCによってサーモパイルTP自体の温度が検出され、IC81は、サーミスタTCによって検出された温度に基づいて演算処理を行い、赤外線Rc、Rrの分を調整して電気信号を生成し、サーモパイル検出信号Sg1として制御部60に送る。制御部60において、サーモパイル検出信号Sg1は図示されないA/Dコンバータで数値化され、定着処理部Pr2はサーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpを取得する。
【0050】
また、サーミスタTCによって検出されたサーモパイルTP自体の温度は、サーミスタ検出信号Sg2として制御部60に送られる。そして、制御部60において、サーミスタ検出信号Sg2は、サーモパイル検出信号Sg1と同様にA/Dコンバータで数値化され、定着処理部Pr2はサーモパイルTPの環境温度を取得する。
【0051】
なお、基板73の一端に形成されたコネクタ82と制御部60とはラインLn1~Ln4によって接続され、ラインLn1によってサーモパイルTPに電源電圧+Vccが印加され、ラインLn2によってサーモパイルTPがGNDに接続(接地)され、ラインLn3によってサーモパイル検出信号Sg1が制御部60に送られ、ラインLn4によってサーミスタ検出信号Sg2が制御部60に送られる。
【0052】
次に、プリンタ10の動作について説明する。
【0053】
ホストコンピュータから印刷データを受信すると、印刷処理部Pr1は、印刷データを編集し、画像データに変換する。
【0054】
また、定着処理部Pr2は、定着器18においてサーモパイルTPの検出温度Tpに応じて、電力供給部70によるハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を行う。そして、検出温度Tpが目標温度に到達すると、印刷処理部Pr1は印刷処理を開始する。
【0055】
すなわち、印刷処理部Pr1は、ホッピングローラ12を回転させて用紙カセット11から用紙Pを繰り出し、分離部材によって1枚ずつ分離させて用紙搬送路Rt1に給紙し、レジストローラ対14によって斜行を矯正した後、搬送ローラ対15によって画像形成部Q1に供給する。
【0056】
また、印刷処理部Pr1は、各LEDヘッド22に画像データを送り、感光体ドラム31を露光して静電潜像を形成するとともに、高圧発生部68に指示を送り、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの現像ローラ33、供給ローラ34等にバイアス電圧を印加し、感光体ドラム31に各色のトナー像を形成する。そして、印刷処理部Pr1は、転写ユニットu1において転写ベルト17を走行させ、各転写ローラ21にバイアス電圧を印加して、画像形成部Q1に送られ、転写ベルト17によって搬送される用紙Pに各色のトナー像を順次転写し、カラーのトナー像を形成する。
【0057】
カラーのトナー像が転写された用紙Pが定着器18に送られると、定着器18は、用紙P上のトナー像を、定着ローラ45によって加熱し、バックアップローラ47によって加圧して用紙Pに定着させ、用紙Pにカラーの画像を形成する。カラーの画像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対19によって搬送され、排出ローラ対20によって装置本体Bd外に排出され、スタッカSt2に積載される。
【0058】
ところで、サーモパイルTPにおいて、レンズ78にトナー等の汚れが付着する現象、すなわち、サーモパイル汚れが発生すると、レンズ78を透過する赤外線Rfの量が少なくなり、サーモパイルTPは、定着ローラ45の温度を、実際の定着ローラ45の温度、すなわち、実温度Trより低く検出(誤検出)してしまう。
【0059】
次に、サーモパイルTPの検出温度Tpの推移について説明する。
【0060】
図4は本発明の第1の実施の形態における定着ローラのサーミスタによる検出温度及びサーモパイルによる検出温度の推移の例を示す図である。なお、図において、横軸に、プリンタ10において印刷の動作が開始されてからの経過時間を、縦軸に、サーミスタTSによる検出温度Ts及びサーモパイルTPによる検出温度Tpを採ってある。
【0061】
図において、L1はサーミスタTSによる検出温度Tsの推移を示す線、L2はサーモパイル汚れが発生していない場合のサーモパイルTPによる検出温度Tpの推移を示す線、L3はサーモパイル汚れが発生している場合のサーモパイルTPによる検出温度Tpの推移を示す線である。
【0062】
定着ローラ45の目標温度Teを175〔℃〕としたとき、サーモパイル汚れが発生していない場合は、サーミスタTSによる検出温度Tp及びサーモパイルTPによる検出温度Tpは、それぞれの熱時定数による検出時間に差があるので立ち上がりの速度が異なるが、いずれも、目標温度Teに到達して飽和状態になる。そのとき、実温度Trはほぼ目標温度Teになる。したがって、目標温度Teで印刷処理が行われる。
【0063】
これに対して、サーモパイル汚れが発生している場合は、サーモパイルTPによる検出温度Tpが目標温度Teに到達して飽和状態になるが、サーミスタTSによる検出温度Tsは目標温度Teに到達しても飽和状態にならず、目標温度Teより高い温度、例えば、200〔℃〕で飽和状態になる。そのとき、実温度Trもほぼ200〔℃〕になる。したがって、目標温度Teより高い温度で印刷処理が行われることになる。その結果、ホットオフセット等の定着不良が発生したり、高温エラー等の定着器18の異常が発生したりすることがある。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、サーモパイル汚れが発生しているかどうかを判断し、サーモパイル汚れが発生している場合に、表示部65bにその旨を表示し、操作者にサーモパイルTPのレンズ78に付着した汚れを除去するように促すようにしている。
【0065】
次に、サーモパイル汚れが発生したときの制御部60の動作について説明する。
【0066】
図5は本発明の第1の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【0067】
まず、定着処理部Pr2はハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する(ステップS1)。
【0068】
次に、定着処理部Pr2は、サーモパイルTPから送られたサーモパイル検出信号Sg1を読み込むことによってサーモパイルTPの検出温度Tpを取得し、該検出温度Tpが十分に低く、閾値Tη、本実施の形態においては、35〔℃〕未満であるかどうかによって、検出温度が高くなる際の傾き、すなわち、温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する(ステップS2)。
【0069】
サーモパイルTPの検出温度Tpが35〔℃〕未満である場合、35〔℃〕未満の状態からハロゲンヒータHtの加熱を開始すると、その後、図4に示されるように、検出温度Tpは線型に推移することが知られているので、定着処理部Pr2は、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができると判断する。そして、定着処理部Pr2は、ハロゲンヒータHtの加熱を開始し、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する(ステップS3)。
【0070】
ハロゲンヒータHtへの電力の供給を開始してからの、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpが第1の温度Tm1、例えば、50〔℃〕に到達したときの経過時間をτ1とし、第2の温度Tm2、例えば、100〔℃〕に到達したときの経過時間をτ2としたとき、検出度温度Tpの温度上昇傾きρは、
ρ=(Tm2-Tm1)/(τ2-τ1)
になる。
【0071】
続いて、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生しているかどうかを判断するための基準値ρaを記憶装置64から読み出し、基準値ρaから温度上昇傾きρを減算した値を表す差分Δρ1
Δρ1=ρa-ρ
を算出し、差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する(ステップS4)。
【0072】
なお、前記基準値ρaは、プリンタ10を設置し、使用を開始した稼働初期に、温度上昇傾きρを複数回、例えば、5〔回〕算出し、算出した温度上昇傾きρi(i=1、2、…、5)の平均値であり、記憶装置64に記録される。
【0073】
前記閾値ε1は、温度上昇傾きρの値が0.6〔℃/秒〕程度ばらつくことを考慮して、1.0〔℃/秒〕にされる。
【0074】
差分Δρ1が閾値ε1以上である場合、図4の線L1、L3で示されるように、サーモパイルTPによる検出温度Tpが目標温度Tに到達して飽和状態になるが、サーミスタTSによる検出温度Tsは目標温度Teに到達しても飽和状態にならないことが想定されるので、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生したと判断し(ステップS5)、プリンタ10の動作を停止させる(ステップS6)。
【0075】
また、通知処理部Pr3は、通知処理を行い(ステップS7)、表示部65bに、サーモパイル汚れが発生している旨を表示し、操作者に通知する。
【0076】
前記検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかの判断(ステップS2)において、検出温度TPが35〔℃〕以上であり、検出度温度の温度上昇傾きρを算出することができないと判断した場合、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生しているかどうかの判断を行うことなく処理を終了する。
【0077】
また、差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかの判断(ステップS4)において、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合、図4の線L2、L3で示されるように、サーミスタTSによる検出温度Tp及びサーモパイルTPによる検出温度Tpは、いずれも、目標温度Teに到達して飽和状態になることが想定されるので、定着処理部Pr2は、定着器18の異常が発生していないと判断する(ステップS8)。
【0078】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 定着処理部Pr2はハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する。
ステップS2 定着処理部Pr2は温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する。温度上昇傾きρを算出することができる場合はステップS3に進み、温度上昇傾きρを算出することができない場合は処理を終了する。
ステップS3 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する。
ステップS4 定着処理部Pr2は差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する。差分Δρ1が閾値ε1以上である場合はステップS5に進み、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合はステップS8に進む。
ステップS5 定着処理部Pr2はサーモパイル汚れが発生したと判断する。
ステップS6 定着処理部Pr2はプリンタ10の動作を停止させる。
ステップS7 通知処理部Pr3は通知処理を行い、処理を終了する。
ステップS8 定着処理部Pr2は定着器18の異常が発生していないと判断し、処理を終了する。
【0079】
このように、本実施の形態においては、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpが読み込まれ、検出温度Tpの温度上昇傾きρが算出され、該温度上昇傾きρが基準値ρaより小さい場合に、サーモパイル汚れが発生したと判断されるので、定着ローラ45の温度を精度良く検出することができる。したがって、定着不良が生じたり、定着器18の異常が発生したりすることがなくなる。
【0080】
その結果、定着器18が無用に交換されるのを防止することができる。
【0081】
ところで、プリンタ10に電力を供給する交流電源のAC入力が一時的に低下すると、ハロゲンヒータHtに印加される電圧が低くなり、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpの立上りが一時的に低くなる。また、印刷処理が行われているときに、例えば、定着器18より下流側で出口ジャムが発生した場合、出口ジャムを解除するのに伴い、用紙P上の未定着のトナー像のトナーが定着ローラ45に付着することがあり、それにより、定着ローラ45から放射される赤外線Rfの量が少なくなり、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpの立上りが一時的に低くなる。
【0082】
このように、サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpの立上りが一時的に低くなったときに、サーモパイル汚れが誤って検出されると、プリンタ10の動作が無用に停止させられてしまう。
【0083】
そこで、サーモパイル汚れが誤って検出されることがなく、プリンタ10の動作が無用に停止させられることがないようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0084】
図6は本発明の第2の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【0085】
本実施の形態において、印刷処理部Pr1は、第2の媒体検出部としての出口センサs2の検出信号に基づいて、媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1における定着装置としての定着器18より下流側で出口ジャムが発生したかどうかを判断し、出口ジャムが発生すると、計時部としてのタイマの計時時刻を参照し、出口ジャムが発生した時刻を読み込み、出口ジャムが発生した旨及び発生した時刻を第3の記憶部としての記憶装置64に記録する。また、定着処理部Pr2は、第2の温度検出部としてのサーモパイルTPによる第1の定着部材としての定着ローラ45の検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出すると、前記タイマの計時時刻を参照し、温度上昇傾きρを算出した時刻を読み込み、温度上昇傾きρを算出した旨及び算出した時刻を記憶装置64に記録する。
【0086】
まず、定着処理部Pr2は加熱体としてのハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する(ステップS11)。
【0087】
次に、定着処理部Pr2は、サーモパイルTPから送られたサーモパイル検出信号Sg1を読み込むことによってサーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpを取得し、該検出温度Tpが閾値Tη、本実施の形態においては、35〔℃〕未満であるかどうかによって、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する(ステップS12)。
【0088】
サーモパイルTPによる定着ローラ45の検出温度Tpが35〔℃〕未満である場合、定着処理部Pr2は、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができると判断し、ハロゲンヒータHtの加熱を開始し、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する(ステップS13)。
【0089】
続いて、定着処理部Pr2は、記憶装置64から基準値ρaを読み出し、基準値ρaと温度上昇傾きρとの差分Δρ1を算出し、差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する(ステップS14)。
【0090】
差分Δρ1が閾値ε1以上である場合、定着処理部Pr2は、記憶装置64を参照し、前回、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出してから、今回、プリンタ10の電源がオンにされたり、プリンタ10がスリープモードから復帰したりして、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出するまでの間に、サーモパイル素子71(図3)が受ける赤外線Rfの量が少なくなる要因として出口ジャムが発生したかどうかを判断する(ステップS15)。
【0091】
出口ジャムが発生した場合、出口ジャムを解除する際に、媒体としての用紙P上の未定着の現像剤像としてのトナー像の現像剤としてのトナーが定着ローラ45に付着し、その結果、定着ローラ45から放射される赤外線Rfの量が少なくなり、検出温度Tpの温度上昇傾きρが小さくなる可能性が高いので、検出温度Tpの温度上昇傾きρが安定するまで待機する。
【0092】
そのために、定着処理部Pr2は、複数回、本実施の形態においては、3〔回〕、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出し、算出した温度上昇傾きρj(j=1、2、3)の平均値を、温度上昇傾きρが一時的に小さくなったかどうかを判断するための比較値ρbとして設定する(ステップS16)。
【0093】
次に、定着処理部Pr2は、比較値ρbから温度上昇傾きρを減算して差分Δρ2
Δρ2=ρb-ρ
を算出し、差分Δρ2が閾値ε1未満であるかどうかを判断する(ステップS17)。
【0094】
この場合、前記第1の実施の形態と同様に、閾値ε1は、温度上昇傾きρの値が0.6〔℃/秒〕程度ばらつくことを考慮して、1.0〔℃/秒〕にされる。
【0095】
差分Δρ2が閾値ε1未満である場合、定着処理部Pr2は、検出温度Tpの温度上昇傾きρが小さくなった要因が、出口ジャムを解除したときに飛散したトナーが定着ローラ45に付着した、ローラ汚れであると判断する(ステップS18)。
【0096】
続いて、定着処理部Pr2は、出口ジャムを解除したときに飛散したトナーがサーモパイルTPのレンズ78にも付着していると判断し、通知処理部Pr3は、通知処理を行い(ステップS19)、表示部65bに、サーモパイルTPのレンズ78にわずかに汚れが付着している旨を表示し、操作者にサーモパイルTPのレンズ78に付着した汚れを除去するように促す。
【0097】
前記検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかの判断(ステップS12)において、検出温度TPが35〔℃〕以上であり、検出度温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができないと判断した場合、定着処部Pr1は、サーモパイル汚れが発生しているかどうかの判断を行うことなく処理を終了する。
【0098】
また、前記差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかの判断(ステップS14)において、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合、図4の線L2、L3で示されるように、サーミスタTSによる検出温度Tp及びサーモパイルTPによる検出温度Tpは、いずれも、目標温度Teに到達して飽和状態になることが想定されるので、定着処理部Pr2は、定着器18の異常が発生していないと判断する(ステップS20)。
【0099】
そして、出口ジャムが発生したかどうかの判断(ステップS15)において、出口ジャムが発生していない場合、定着処理部Pr2は、前記サーモパイル素子71が受ける赤外線Rfの量が少なくなる要因が、交流電源のAC入力の一時的な低下であると判断する(ステップS21)。
【0100】
さらに、前記差分Δρ2が閾値ε1未満であるかどうかの判断(ステップS17)において、差分Δρ2が閾値ε1以上である場合、図4の線L1、L3で示されるように、サーモパイルTPによる検出温度Tpが目標温度Teに到達して飽和状態になるが、サーミスタTSによる検出温度Tsは目標温度Teに到達しても飽和状態にならないことが想定されるので、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生したと判断し(ステップS22)、画像形成装置としてのプリンタ10の動作を停止させる(ステップS23)。
【0101】
また、通知処理部Pr3は、通知処理を行い(ステップS24)、表示部65bにサーモパイル汚れが発生している旨を表示する。
【0102】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 定着処理部Pr2はハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する。
ステップS12 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する。検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができる場合はステップS13に進み、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができない場合は処理を終了する。
ステップS13 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する。
ステップS14 定着処理部Pr2は差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する。差分Δρ1が閾値ε1以上である場合はステップS15に進み、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合はステップS20に進む。
ステップS15 定着処理部Pr2は出口ジャムが発生したかどうかを判断する。出口ジャムが発生した場合はステップS16に進み、出口ジャムが発生していない場合はステップS21に進む。
ステップS16 定着処理部Pr2は比較値ρbを設定する。
ステップS17 定着処理部Pr2は差分Δρ2が閾値ε1未満であるかどうかを判断する。差分Δρ2が閾値ε1未満である場合はステップS18に進み、差分Δρ2が閾値ε1以上である場合はステップS22に進む。
ステップS18 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρが小さくなった要因がローラ汚れであると判断する。
ステップS19 通知処理部Pr3は通知処理を行い、処理を終了する。
ステップS20 定着処理部Pr2は定着器18の異常が発生していないと判断し、処理を終了する。
ステップS21 定着処理部Pr2は交流電源のAC入力の一時的な低下であると判断し、処理を終了する。
ステップS22 定着処理部Pr2はサーモパイル汚れが発生したと判断する。
ステップS23 定着処理部Pr2はプリンタ10の動作を停止させる。
ステップS24 通知処理部Pr3は通知処理を行い、処理を終了する。
【0103】
このように、本実施の形態においては、プリンタ10において、交流電源のAC入力が低下したり、用紙Pにジャムが発生したりして、定着ローラ45から放射される赤外線Rfの量が少なくなる要因がプリンタ10に一時的に発生した場合は、サーモパイル汚れが発生したと判断されないので、サーモパイル汚れが誤って検出されることがなくなり、定着器18が無用に交換されることがなくなる。しかも、定着ローラ45から放射される赤外線Rfの量が少なくなる要因が発生していない場合に、サーモパイル汚れが発生したと判断されるので、サーモパイル汚れが発生したかどうかを精度良く判断することができる。
【0104】
本実施の形態においては、出口ジャムが発生した場合に、サーモパイル汚れが発生したことを想定し、温度上昇傾きρが一時的に小さくなったかどうかを判断するために、差分Δρ2が閾値ε1未満であるかどうかを判断するようにしているが、出口ジャム以外に、サーモパイル汚れが発生したことが想定される事象が発生した場合に、温度上昇傾きρが一時的に小さくなったかどうかを判断するために、温度上昇傾きρの平均値及び温度上昇傾きρの差分が閾値未満であるかどうかを判断するようにすることができる。
【0105】
また、本実施の形態においては、出口ジャムの発生、及びAC入力の低下をサーモパイル素子71が受ける赤外線の量が少なくなる要因としているが、環境センサs3によって検出されたプリンタ10の周囲の気温の低下を、赤外線の量が少なくなる要因とすることもできる。
【0106】
ところで、前記第1、第2の実施の形態においては、差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかの判断(ステップS4、S14)において、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合、定着処理部Pr2は、定着器18の異常が発生していないと判断するようになっているが、仮に、サーモパイルTPのレンズ78にわずかでも汚れが付着していた状態で、長期間にわたりプリンタ10を使用していると、汚れの付着量が多くなり、サーモパイル汚れが発生することが考えられる。
【0107】
そこで、長期間にわたりプリンタ10を使用している場合に、温度上昇傾きρを追跡し、サーモパイル汚れが発生するのを防止することができるようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。なお、第1、第2の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0108】
図7は本発明の第3の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0109】
図において、60は制御部、Pr2は定着処理部であり、該定着処理部Pr2は傾き追跡処理部Pr11を備える。
【0110】
定着処理部Pr2は、加熱体としてのハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始し、第2の温度検出部としてのサーモパイルTPの検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出するたびに、直近の複数回分、本実施の形態においては、10〔回〕分の温度上昇傾きρk(k=1、2、…、10)を第3の記憶部としての記憶装置64に記録する。なお、新たに温度上昇傾きρkが記録されると、最も古い温度上昇傾きρkは記憶装置64から消去される。
【0111】
また、前記傾き追跡処理部Pr11は、傾き追跡処理を行い、記憶装置64から直近の10〔回〕分の温度上昇傾きρkを読み出し、温度上昇傾きρkの移動平均値Aρkを算出することによって温度上昇傾きρを追跡する。
【0112】
次に、制御部60の動作について説明する。
【0113】
図8は本発明の第3の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャート、図9は本発明の第3の実施の形態における傾き追跡処理のサブルーチンを示す図である。
【0114】
まず、定着処理部Pr2はハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する(ステップS31)。
【0115】
次に、定着処理部Pr2は、サーモパイルTPによる第1の定着部材としての定着ローラ45の検出温度Tpを取得し、検出温度Tpが閾値Tη、本実施の形態においては、35〔℃〕未満であるかどうかによって、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する(ステップS32)。
【0116】
サーモパイルTPの検出温度Tpが35〔℃〕未満である場合、定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する(ステップS33)。
【0117】
続いて、定着処理部Pr2は、記憶装置64から基準値ρaを読み出し、該基準値ρaと温度上昇傾きρとの差分Δρ1を算出し、該差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する(ステップS34)。
【0118】
差分Δρ1が閾値ε1以上である場合、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生したと判断し(ステップS35)、画像形成装置としてのプリンタ10の動作を停止させる(ステップS36)。
【0119】
また、通知処理部Pr3は、通知処理を行い(ステップS37)、表示部65bに、サーモパイル汚れが発生している旨を表示する。
【0120】
前記検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかの判断(ステップS32)において、検出温度TPが35〔℃〕以上であり、検出度温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができないと判断した場合、定着処理部Pr2は、サーモパイル汚れが発生しているかどうかの判断を行うことなく処理を終了する。
【0121】
また、差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかの判断(ステップS34)において、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合、定着処理部Pr2の傾き追跡処理部Pr11は、傾き追跡処理を行う(ステップS38)。
【0122】
すなわち、傾き追跡処理部Pr11は、記録装置64から直近の10〔回〕分の温度上昇傾きρkを読み出し、該温度上昇傾きρkの移動平均値Aρkを算出する(ステップS38-1)。
【0123】
次に、傾き追跡処理部Pr11は、前回の移動平均値をAρk(n-1)とし、今回の移動平均値をAρk(n)としたとき、今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)より小さいかどうかを判断する(ステップS38-2)。
【0124】
今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)より小さい場合、傾き追跡処理部Pr11は、温度上昇傾きρが小さくなる傾向にあると判断し、記憶装置64から基準値ρaを読み出し、基準値ρaから今回の移動平均値Aρk(n)を減算した値を表す差分Δρ3
Δρ3=ρa-Aρk(n)
を算出し、差分Δρ3が閾値ε3以上であるかどうかを判断する(ステップS38-3)。
【0125】
なお、本実施の形態において、前記閾値ε3は0.8〔℃/秒〕にされる。
【0126】
差分Δρ3が閾値ε3以上である場合、傾き追跡処理部Pr11は、温度上昇傾きρが小さくなる傾向にあるので、サーモパイル汚れがわずかに発生したと判断する(ステップS38-4)。そして、前記通知処理部Pr3は、表示部65bに、サーモパイル汚れがわずかに発生した旨を表示し、操作者にサーモパイルTPのレンズ78に付着した汚れを除去するように促す。
【0127】
また、今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)以上である場合、及び差分Δρ3が閾値ε3未満である場合、傾き追跡処理部Pr11は、温度上昇傾きρが小さくなる傾向がないので、定着装置としての定着器18の異常が発生していないと判断する(ステップS38-5)。
【0128】
次に、図8のフローチャートについて説明する。
ステップS31 定着処理部Pr2はハロゲンヒータHtへの電力の供給の制御を開始する。
ステップS32 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができるかどうかを判断する。検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができる場合はステップS33に進み、検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出することができない場合は処理を終了する。
ステップS33 定着処理部Pr2は検出温度Tpの温度上昇傾きρを算出する。
ステップS34 定着処理部Pr2は差分Δρ1が閾値ε1以上であるかどうかを判断する。差分Δρ1が閾値ε1以上である場合はステップS35に進み、差分Δρ1が閾値ε1未満である場合はステップS38に進む。
ステップS35 定着処理部Pr2はサーモパイル汚れが発生したと判断する。
ステップS36 定着処理部Pr2はプリンタ10の動作を停止させる。
ステップS37 通知処理部Pr3は通知処理を行い、処理を終了する。
ステップS38 傾き追跡処理部Pr11は傾き追跡処理を行い、処理を終了する。
【0129】
次に、図9のフローチャートについて説明する。
ステップS38-1 傾き追跡処理部Pr11は温度上昇傾きρkの移動平均値Aρkを算出する。
ステップS38-2 傾き追跡処理部Pr11は今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)より小さいかどうかを判断する。今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)より小さい場合はステップS38-3に進み、今回の移動平均値Aρk(n)が前回の移動平均値Aρk(n-1)以上である場合はステップS38-5に進む。
ステップS38-3 傾き追跡処理部Pr11は差分Δρ3が閾値ε3以上であるかどうかを判断する。差分Δρ3が閾値ε3以上である場合はステップS38-4に進み、差分Δρ3が閾値ε3未満である場合はステップS38-5に進む。
ステップS38-4 傾き追跡処理部Pr11はサーモパイル汚れがわずかに発生したと判断し、リターンする。
ステップS38-5 傾き追跡処理部Pr11は定着器18の異常が発生していないと判断し、リターンする。
【0130】
このように、本実施の形態においては、記憶装置64から直近の10〔回〕分の温度上昇傾きρkが読み出され、該温度上昇傾きρkの移動平均値Aρkが算出され、温度上昇傾きρが追跡されるので、温度上昇傾きρの傾向を監視することができ、サーモパイル汚れが発生するのを防止することができる。
【0131】
前記各実施の形態においては、第1の定着部材として定着ローラ45が使用されるようになっているが、第1の定着部材として、加熱体としてのプレートヒータ、プレートヒータを保持する保持部材、プレートヒータに当接させて走行自在に配設された定着ベルト等から成る定着ユニット等を使用することもできる。
【0132】
前記各実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0133】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0134】
10 プリンタ
18 定着器
45 定着ローラ
47 バックアップローラ
Bd 装置本体
Ht ハロゲンヒータ
Pr2 定着処理部
Pr3 通知処理部
TP サーモパイル
Tp 検出温度
ρ 温度上昇傾き
ρa 基準値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9