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特開2022-148883複素関数のグラフ化方法、プログラム、情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148883
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】複素関数のグラフ化方法、プログラム、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/16 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G06F17/16 N
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050733
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 博和
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB43
5B056CC03
(57)【要約】
【課題】正確な情報の読み取りが容易な複素関数のグラフ表現を提供する。
【解決手段】サーバ装置20が、複素関数を示す数式情報に基づいて、数式情報が示す複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、数式情報に基づいて、第1の変数と、第2の変数と、第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、第1の表示情報と第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、
前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、
をコンピュータが行うことを特徴とする複素関数のグラフ化方法。
【請求項2】
請求項1に記載のグラフ化方法において、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記第1の3次元グラフの前記第3の変数に対応する軸と前記第2の3次元グラフの前記第4の変数に対応する軸が重なるように、前記表示部に表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
【請求項3】
請求項2に記載のグラフ化方法において、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記表示部に異なる色で表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のグラフ化方法において、さらに、
前記表示部に表示された第1のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)コンポーネントの入力領域へ入力された情報を、前記数式情報として取得する処理を備え、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記第1のGUIコンポーネントと関連付けられた第2のGUIコンポーネントのグラフ描画領域内に表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
【請求項5】
請求項4に記載のグラフ化方法において、
前記第1のGUIコンポーネントと前記第2のGUIコンポーネントの各々は、前記表示部における描画位置を調整可能な付箋を模したGUIコンポーネントである
ことを特徴とするグラフ化方法。
【請求項6】
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、
前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する生成部と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する出力部と、を備える
ことを特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、複素関数のグラフ化方法、プログラム、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、学校教育へのICT(Information and Communication Technology)機器の導入が進んでいる。これに伴い、コンピュータ上で動作する様々な学習用のアプリケーションも盛んに開発されている。
【0003】
例えば、非特許文献1で示される数学向けのアプリケーションを用いることで、様々な関数のグラフを表示することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】GeoGebraホームページ[Online],[令和3年3月13日検索],インターネット<URL:https://www.geogebra.org/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複素関数をグラフで表現する場合、複素関数へ入力する複素数の実部及び虚部と複素関数から出力される複素数の実部及び虚部に対応する計4変数の関係を可視化する必要がある。一般に、関数は2次元又は3次元グラフで可視化されるが、2次元又は3次元グラフが示す2次元又は3次元の座標情報だけでは複素関数を表現し切れない。
【0006】
このため、2次元又は3次元グラフを着色し、座標情報に加えて色情報(例えば、色相、明度)を用いることで、複素関数をグラフで表現する方法が従来から提案されている。この方法によれば、少なくとも1変数に色情報を割り当てることで、4変数の関係を可視化することが可能となる。
【0007】
しかしながら、人間にとって、色情報から変数の値を読み取ることは、座標情報から変数の値を読み取る場合のように容易なことではない。このため、色情報を用いて4変数の関係が可視化されたグラフから複素関数の正確な情報を読み取ることは難しく、複素関数のグラフ表現の更なる改善が期待されている。
【0008】
以上のような実情を踏まえ、本発明の一側面に係る目的は、正確な情報の読み取りが容易な複素関数のグラフ表現を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る方法は、コンピュータが行う複素関数のグラフ化方法であって、複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、をコンピュータに実行させる。
【0011】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する生成部と、前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様によれば、正確な情報の読み取りが容易な複素関数のグラフ表現を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】システム1の構成を例示した図である。
図2】クライアント端末10の物理構成を例示したブロック図である。
図3】サーバ装置20の物理構成を例示したブロック図である。
図4】サーバ装置20の機能構成を例示したブロック図である。
図5】クライアント端末10に表示されるアプリケーション画面の一例を示した図である。
図6】サーバ装置20で行われる複素関数のグラフ化処理のフローチャートの一例である。
図7】グラフ付箋の作成手順を説明するための図である。
図8】数式付箋の作成手順を説明するための図である。
図9】数式処理を説明するための図である。
図10】表示情報の生成手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、システム1の構成を例示した図である。図2は、クライアント端末10の物理構成を例示したブロック図である。図3は、サーバ装置20の物理構成を例示したブロック図である。図1から図3を参照しながら、システム1の構成について説明する。
【0015】
システム1は、例えば、利用者からの入力に応じてさまざまな数学的演算を行い、グラフや数表などを用いて演算結果を表示するシステムであり、特に、複素関数をグラフ表示する機能を有している。システム1は、図1に示すように、ネットワーク30を介して接続された、クライアント端末10と、サーバ装置20と、を含んでいる。ネットワーク30は、例えば、インターネットである。
【0016】
クライアント端末10は、表示装置を備えた情報処理装置であり、システム1の利用者によって操作される。クライアント端末10は、例えば、利用者の入力に応じてサーバ装置20へ要求を送信し、要求に対するサーバ装置20からの応答に基づいてアプリケーション画面上に種々の情報を表示する。
【0017】
クライアント端末10は、図1に示すように、ノート型のコンピュータ10aであってもよく、タブレット型のコンピュータ10bであってもよく、スマートフォン型のコンピュータ10cであってもよい。また、クライアント端末10はモバイル端末に限らず、例えば、据え置き型のコンピュータであってもよい。
【0018】
クライアント端末10は、特に限定しないが、例えば、図2に示すように、プロセッサ11と、記憶装置12と、入力装置13と、表示装置14と、通信装置15を備えている。
【0019】
プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含む電気回路であり、記憶装置12に記憶されているプログラム12aを実行する。なお、プロセッサ11には、GPU(Graphics processing unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)などが含まれてもよい。
【0020】
記憶装置12は、例えば、任意の半導体メモリであり、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。また、記憶装置12は、磁気記憶装置、光学記憶装置、その他の種類の記憶装置を含んでもよい。記憶装置12には、プロセッサ11によって実行されるプログラム12aが記憶されている。なお、記憶装置12に記憶されているプログラム12aは、例えば、ネットワーク30及び通信装置15を介してサーバ装置20からダウンロードされたアプリケーションプログラムである。
【0021】
入力装置13は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含んでいるが、マイクなどの音声入力装置を含んでもよく、他の種類の入力装置を含んでもよい。表示装置14は、クライアント端末10の表示部の一例であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイなどである。通信装置15は、例えば、Wi-Fi(登録商標)モジュールなどの無線通信装置であるが、有線通信装置であってもよい。
【0022】
サーバ装置20は、クライアント端末10からの要求を処理して処理結果をクライアント端末10へ送信する情報処理装置である。サーバ装置20は、単一の装置として構成されてもよく、例えば、Webサーバ装置、アプリケーションサーバ装置、データベースサーバ装置などを含む複数の装置の集合であってもよい。また、サーバ装置20は、分散コンピューティングシステムとして構成されてもよい。
【0023】
サーバ装置20は、特に限定しないが、例えば、図3に示すように、プロセッサ21と、記憶装置22と、入力装置23と、表示装置24と、通信装置25を備えている。
【0024】
プロセッサ21は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含む電気回路であり、記憶装置22に記憶されているプログラム22aを実行する。なお、プロセッサ21には、GPU(Graphics processing unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)などが含まれてもよい。
【0025】
記憶装置22は、例えば、任意の半導体メモリであり、RAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含んでいる。また、記憶装置22は、磁気記憶装置、光学記憶装置、その他の種類の記憶装置を含んでもよい。記憶装置22には、プロセッサ21によって実行されるプログラム22aが記憶されている。また、記憶装置22には、クライアント端末10に配布され、クライアント端末10で実行されるプログラム12aが記憶されていてもよい。
【0026】
入力装置23は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどを含んでいるが、マイクなどの音声入力装置を含んでもよく、他の種類の入力装置を含んでもよい。表示装置24は、サーバ装置20の表示部の一例であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイなどである。通信装置25は、無線通信装置であっても有線通信装置であってもよい。
【0027】
以上のように構成されたシステム1では、まず、利用者がクライアント端末10にインストールされたWebブラウザを起動して所定のURLを入力する。これにより、クライアント端末10は、サーバ装置20が配布したプログラム12aを記憶装置12へダウンロードして実行する。プログラム12aは、例えば、Webブラウザ上で動作するアプリケーションプログラムである。その後、プログラム12aを実行することによりWebブラウザに表示されるアプリケーション画面上で、利用者が種々の操作を行うことで、クライアント端末10は、サーバ装置20へ要求を送信し、さらに、サーバ装置20から応答に基づいてアプリケーション画面を更新する。
【0028】
具体的には、例えば、利用者がアプリケーション画面上で数式を入力することで、クライアント端末10は、サーバ装置20へ数式情報を送信して数式によって表される関数のグラフ化を要求する。サーバ装置20は、要求に基づいて数学的演算を行い、関数のグラフを表示するための情報を含む応答を、クライアント端末10へ送信する。これを受けて、クライアント端末10は、アプリケーション画面上に関数のグラフを表示する。
【0029】
図4は、サーバ装置20の機能構成を例示したブロック図である。図5は、クライアント端末10に表示されるアプリケーション画面の一例を示した図である。以下、図4及び図5を参照しながら、複素関数をグラフ化する機能について説明する。
【0030】
サーバ装置20は、図4に示すように、入力部110と、生成部120と、出力部130と、を備えている。また、生成部120は、取得部121と、数式処理部122と、表示情報生成部123を備えている。なお、サーバ装置20は、図4に示す機能部とは異なる機能部を備えてもよい。
【0031】
入力部110は、クライアント端末10からの数式情報を含む要求を受信する。入力部110は、例えば、通信装置25によって実現される。サーバ装置20が複素関数をグラフ化する場合、数式情報には、複素関数の数式の情報が含まれている。
【0032】
生成部120は、複素関数を示す数式情報に基づいて、複素関数のグラフを表示装置14に表示させる表示情報を生成する。より具体的には、生成部120は、複素関数を示す数式情報に基づいて、2つの3次元グラフ(第1の3次元グラフと第2の3次元グラフ)を表示装置14に表示させる表示情報を生成する。生成部120は、例えば、記憶装置22に記憶されているプログラム22aをプロセッサ21が実行することによって実現される。
【0033】
生成部120では、取得部121が要求に含まれている数式情報を取得し、数式処理部122が数式情報に対して数学的な演算処理を行い、表示情報生成部123が演算結果に基づいて表示情報を生成する。
【0034】
取得部121は、クライアント端末10の表示装置14に表示された第1のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)コンポーネントの入力領域へ入力された情報を、数式情報として取得する。第1のGUIコンポーネントは、表示装置14における描画位置を調整可能な付箋を模したGUIコンポーネントであってもよく、例えば、図5に示す数式付箋F1である。
【0035】
数式処理部122は、取得部121で取得した数式情報が示す複素関数を、その複素関数からの出力である複素数の実部を示す関数(以降、実部関数と記す。)と、その複素関数からの出力である複素数の虚部を示す関数(以降、虚部関数と記す。)に分解する。
【0036】
実部関数は、複素数の入力に対して複素関数の実部を返す関数である。つまり、複素関数へ入力する複素数の実部及び虚部と複素関数から出力される実部とに対応する計3変数で表現可能である。従って、実部関数は3次元グラフで表現することができる。また、虚部関数は、複素数の入力に対して複素関数の虚部を返す関数である。つまり、複素関数へ入力する複素数の実部及び虚部と複素関数から出力される虚部とに対応する計3変数で表現可能である。従って、虚部関数も実部関数と同様に、3次元グラフで表現することができる。
【0037】
表示情報生成部123は、数式処理部122で得られた実部関数と虚部関数に基づいて、2つの3次元グラフを表示装置14に表示させる表示情報を生成する。なお、2つの3次元グラフの一方は、実部関数をグラフ化した第1の3次元グラフであり、複素関数へ入力する複素数(第1の複素数)の実部を示す第1の変数と、第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、複素関数から出力される複素数(第2の複素数)の実部を示す第3の変数と、の関係を示している。2つの3次元グラフの他方は、虚部関数をグラフ化した第2の3次元グラフであり、複素関数へ入力する複素数(第1の複素数)の実部を示す第1の変数と、第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、複素関数から出力される複素数(第2の複素数)の虚部を示す第4の変数と、の関係を示している。
【0038】
即ち、生成部120では、数式情報に基づいて、第1の3次元グラフの第1の表示情報と第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成し、第1の表示情報と第2の表示情報を含む表示情報を生成する。
【0039】
出力部130は、生成部120が生成した表示情報を出力する。より具体的には、出力部130は、表示情報を含む応答をクライアント端末10へ送信する。出力部130は、例えば、通信装置25によって実現される。
【0040】
以上のようにサーバ装置20が構成されることで、サーバ装置20から表示情報を受信したクライアント端末10は、表示情報に基づいて、図5に示すように、表示装置14に複素関数のグラフ(3次元グラフ2と3次元グラフ3を重ねた3次元グラフ4)を表示することができる。
【0041】
図5には、アプリケーションのウィンドウW内に数式付箋F1とグラフ付箋G1が表示されている様子が示されている。第1のGUIコンポーネントである数式付箋F1の入力領域内には、複素関数を示す数式(w=1/z、ここで、w、zはともに複素数)が表示されている。また、数式付箋F1と関連付けられた第2のGUIコンポーネントであるグラフ付箋G1のグラフ描画領域内には、実部関数を示す3次元グラフ2と虚部関数を示す3次元グラフ4が表示され、それによって1つの複素関数が3次元グラフ4としてグラフ化されている。即ち、サーバ装置20から出力された表示情報は、3次元グラフ2と3次元グラフ3を、数式付箋F1と関連付けられたグラフ付箋G1のグラフ描画領域内に表示させる情報である。
【0042】
このように、システム1によれば、複素関数を示す数式を入力するだけで、4変数のそれぞれに座標情報を割り当てることで4変数の関係を可視化した複素関数のグラフ(2つの3次元グラフ)を表示することができる。従って、変数の値は座標情報としてグラフから読み取ることができるため、ユーザは、表示されたグラフから複素関数の正確な情報を読み取ることができる。
【0043】
図6は、サーバ装置20で行われる複素関数のグラフ化処理のフローチャートの一例である。図7は、グラフ付箋の作成手順を説明するための図である。図8は、数式付箋の作成手順を説明するための図である。図9は、数式処理を説明するための図である。図10は、表示情報の生成手順を説明するための図である。以下、図6から図10を参照しながら、複素関数のグラフ化方法について具体的な説明する。
【0044】
サーバ装置20では、例えば、プロセッサ21がプログラム22aを実行することで、図6に示すグラフ化処理を開始する。図6に示すグラフ化処理が開始されると、サーバ装置20は数式情報を取得する(ステップS1)。
【0045】
ステップS1の処理がサーバ装置20で行われる前には、クライアント端末10では、サーバ装置20とやりとりすることで、以下の処理が行われる。まず、クライアント端末10はサーバ装置20上で動作するWebアプリケーションにアクセスすることで、Webブラウザ上にアプリケーション画面を表示する。この状態では、画面上には上述した数式付箋F1及びグラフ付箋G1のような付箋オブジェクトを一切表示されていない。
【0046】
その後、クライアント端末10のユーザが、アプリケーション画面上の任意の領域を押下すると、図7に示すメニューリストMが表示される。メニューリストM上には、例えば、メニューM1~M5の5つがリストされている。ユーザがメニューM1を押下すると、図7に示すように、グラフ付箋G1が作成され、アプリケーション画面上に表示される。このとき、グラフ付箋G1には、グラフは表示されておらず、2次元グラフ用に2軸のみが表示される。
【0047】
次に、ユーザがグラフ付箋G1を押下すると、グラフ付箋G1上に複数のメニュー(メニューGM1、GM2、GM3、GM4)が表示される。これらのそれぞれは、異なる種類の付箋オブジェクトを作成するためのメニューである。ユーザが左から2番目に配置されているメニューGM2を押下すると、図8に示すように、複素関数用の数式付箋F1が作成され、アプリケーション画面上にグラフ付箋G1と関連付けて表示される。このときにも、グラフ付箋G1には、グラフは表示されていないが、2次元グラフ用の2軸に代えて3次元グラフ用に3軸が表示される。なお、付箋オブジェクト間の関連付けは、関連する付箋オブジェクト間をつなぐ線を表示することによって表現されている。
【0048】
数式付箋F1が表示され、ユーザが数式付箋F1に複素関数を示す数式を入力すると、ステップS1において、通信装置25がクライアント端末10から数式付箋F1に入力された情報を受信し、プロセッサ21が受信した情報を数式情報として取得する。以降では、数式w=1/zが入力された場合を例に説明する。w、zはそれぞれ複素変数である。
【0049】
数式情報が取得されると、プロセッサ21は、数式情報に対して数式処理を行う(ステップS2)。ここでは、図9に示すように、プロセッサ21を構成する数式処理エンジンEが、数式情報(w=1/z)が示す複素関数から、実部関数(u=x/(x^2+y^2))と虚部関数(v=-y/(x^2+y^2))を算出する。なお、u、vは、複素変数wの実部、虚部であり、x、yは、複素変数zの実部、虚部である。
【0050】
数式処理が完了すると、プロセッサ21は、表示情報を生成する(ステップS3)。ここでは、図10に示すように、プロセッサ21は、実部関数の3次元グラフ2と、虚部関数の3次元グラフ3を作成する。さらに、プロセッサ21は、3次元グラフ2と3次元グラフ3を、3次元グラフ2のu軸(出力軸)と3次元グラフ3のv軸(出力軸)が重なるように合成した合成3次元グラフ4を作成する。このように、3次元グラフ上の1軸をu軸とv軸で共有することで、x軸、y軸がそれぞれ割り当てられる2軸と合計した直交座標系の3軸で、4変数を表現することができる。このため、一つの直交座標系内に2つの3次元グラフを重ねて表示することが可能であり、実部と虚部の関係を容易に把握することが可能となる。また、u軸とv軸で同じ軸を共有することで実部と虚部の大小関係も容易に把握することが可能となる。
【0051】
プロセッサ21は、このようにして作成された合成3次元グラフ4を表示装置14で表示させるために必要な情報を、表示情報として作成する。表示情報は、例えば、画像形式の情報であってもよい。ただし、表示情報は、クライアント端末10のプログラム12aによって合成3次元グラフ4を復元できればよいため、画像形式に限らない。合成3次元グラフ4を復元可能な画像形式以外の情報であってもよい。換言すると、表示情報は、第1の3次元グラフを表示装置14に表示させる第1の表示情報と、第2の3次元グラフを表示装置14に表示させる第2の表示情報を含んでいればよい。なお、第1の表示情報と第2の表示情報は、表示情報に分離可能に含まれてもよく、表示情報に混然一体となって分離不能に含まれていてもよい。
【0052】
表示情報は、3次元グラフ2と3次元グラフ3を、表示装置14に異なる色で表示させる情報であることが望ましく、プロセッサ21は、表示情報を、表示装置14に異なる色で2つのグラフを表示させる情報として作成することが望ましい。これにより、表示情報に基づいて3次元グラフ2と3次元グラフ3が表示された場合に、実部と虚部の違いを一目で把握することが可能となる。
【0053】
表示情報の生成が完了すると、サーバ装置20は、表示情報を出力する(ステップS4)。ここでは、例えば、通信装置25がクライアント端末10へ表示情報を送信する。これにより、図5に示すように、複素関数を示す2つの3次元グラフがアプリケーション画面上に表示され、図6に示す処理が終了する。
【0054】
上述した実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、上述の実施形態の各種変形形態および代替形態を包含するものとして理解されるべきである。例えば、各実施形態は、その趣旨および範囲を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できることが理解されよう。また、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより、種々の実施形態が実施され得ることが理解されよう。更には、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除して、または実施形態に示される構成要素にいくつかの構成要素を追加して種々の実施形態が実施され得ることが当業者には理解されよう。即ち、複素関数のグラフ化方法、プログラム、情報処理装置は、特許請求の範囲の記載を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0055】
上述した実施形態では、Webアプリケーションとして複素関数のグラフ化機能を提供する例を示したが、当該機能を実現する態様は、Webアプリケーションに限定されない。また、複素関数のグラフは、サーバ装置20の表示装置24に表示されてもよく、ユーザは、入力装置23を操作することで数式情報をサーバ装置20へ入力してもよい。また、表示情報の出力は、表示装置に向けて行われるものに限られず、例えば、印刷装置などの他の出力装置に向けて行われてもよい。さらに、表示情報の出力は、出力装置に向けて行われるものに限られず、記憶装置に向けて行われてもよい。記憶装置に記憶された表示情報を任意のタイミングで読み出して表示装置に表示することで、ユーザが複素関数の正確な情報を読み取ることを可能としてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態では、2つの3次元グラフを重ねて表示する例を示したが、2つの3次元グラフは必ずしも重ねて表示される必要はない。例えば、グラフ付箋G1内のグラフ表示領域内に並んで表示されてもよい。また、互いに関連付けられた2つのグラフ付箋のグラフ表示領域内に1つずつ表示されてもよい。この場合も座標情報から変数の値を把握可能であり、複素関数のグラフから正確な情報の読み取りが可能である。
【0057】
また、上述した実施形態では、ある付箋オブジェクトから取得した数式情報を用いて2つの3次元グラフを作成し、そのある付箋オブジェクトと関連付けられた別の付箋オブジェクト内に2つの3次元グラフを表示する例を示した。このような構成は、付箋オブジェクト同士が線などで関連付けられているため、3次元グラフがどの数式(複素関数)を可視化したものであるかを容易に把握可能である。また、付箋オブジェクトは表示領域内での配置の調整が容易であるので、例えば、学校教育などの現場で、教師が生徒に注目してほしいオブジェクトを動かして見やすい位置に移動させるなどの使い方が可能である。ただし、数式情報の入力を受け付けるGUIコンポーネントは付箋オブジェクトに限らず、また、2つの3次元グラフを表示するGUIコンポーネントも付箋オブジェクトに限らない。それぞれ画面上の所定の領域に固定されたGUIコンポーネントであってもよい。
【0058】
本明細書において、“Aに基づいて”という表現は、“Aのみに基づいて”を意味するものではなく、“少なくともAに基づいて”を意味している。即ち、“Aに基づいて”はAに加えてBに基づいてもよい。
【0059】
本明細書において、名詞を修飾する“第1の”、“第2の”などの用語は、名詞で表現される要素の量又は順序を限定するものではない。これらの用語は、2つ以上の要素間を区別するために用いられ、それ以下でもそれ以上でもない。従って、“第1の”と“第2の”要素が特定されていることは、“第1の”要素が“第2の”要素に先行することを意味するものではなく、また、“第3の”要素の存在を否定するものでもない。
【0060】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、
前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、
をコンピュータが行うことを特徴とする複素関数のグラフ化方法。
[付記2]
付記1に記載のグラフ化方法において、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記第1の3次元グラフの前記第3の変数に対応する軸と前記第2の3次元グラフの前記第4の変数に対応する軸が重なるように、前記表示部に表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
[付記3]
付記2に記載のグラフ化方法において、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記表示部に異なる色で表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
[付記4]
付記1乃至付記3のいずれか1つに記載のグラフ化方法において、さらに、
前記表示部に表示された第1のグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)コンポーネントの入力領域へ入力された情報を、前記数式情報として取得する処理を備え、
前記表示情報は、前記第1の3次元グラフと前記第2の3次元グラフを、前記第1のGUIコンポーネントと関連付けられた第2のGUIコンポーネントのグラフ描画領域内に表示させる情報である
ことを特徴とするグラフ化方法。
[付記5]
付記4に記載のグラフ化方法において、
前記第1のGUIコンポーネントと前記第2のGUIコンポーネントの各々は、前記表示部における描画位置を調整可能な付箋を模したGUIコンポーネントである
ことを特徴とするグラフ化方法。
[付記6]
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、
前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する、処理と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する処理と、
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
[付記7]
複素関数を示す数式情報に基づいて、前記数式情報が示す前記複素関数へ入力する第1の複素数の実部を示す第1の変数と、前記第1の複素数の虚部を示す第2の変数と、前記複素関数から出力される第2の複素数の実部を示す第3の変数と、の関係を示す第1の3次元グラフの第1の表示情報を生成し、前記数式情報に基づいて、前記第1の変数と、前記第2の変数と、前記第2の複素数の虚部を示す第4の変数と、の関係を示す第2の3次元グラフの第2の表示情報を生成する生成部と、
前記第1の表示情報と前記第2の表示情報を含む表示情報を出力する出力部と、を備える
ことを特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0061】
1 システム
2-4 3次元グラフ
10 クライアント端末
10a コンピュータ
10b コンピュータ
10c コンピュータ
11、21 プロセッサ
12、22 記憶装置
12a、22a プログラム
13、23 入力装置
14、24 表示装置
15、25 通信装置
20 サーバ装置
30 ネットワーク
110 入力部
120 生成部
121 取得部
122 数式処理部
123 表示情報生成部
130 出力部
G1 グラフ付箋
F1 数式付箋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10