(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148888
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】センサデバイス取り付け構造及び直動機器異常判断システム
(51)【国際特許分類】
G01M 13/028 20190101AFI20220929BHJP
【FI】
G01M13/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050740
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】柳野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
(72)【発明者】
【氏名】松村 恵介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聡志
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AB11
2G024BA27
2G024CA13
2G024DA06
2G024FA01
2G024FA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】直動機器の直動部品へのセンサデバイスの取り付けを簡単な構成で行うことができる直動機器異常判断システムを提供する。
【解決手段】直動機器の直動部品に、直動部品の形状(外形、輪郭)に応じた形状を有するブラケット58を取り付け、直動部品の振動を検出するセンサデバイス60をブラケット58に取り付ける。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動機器の直動部品に、前記直動部品の形状に応じた形状を有するブラケットを取り付け、前記直動部品の振動を検出するセンサデバイスを前記ブラケットに取り付けたことを特徴とするセンサデバイス取り付け構造。
【請求項2】
前記ブラケットは、前記直動部品の直動方向の端面に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項3】
前記ブラケットは、前記直動部品の直動方向から見た場合、前記直動部品の前記端面の外縁から外方に出ないことを特徴とする請求項2に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項4】
前記センサデバイスは、前記直動部品の直動方向から見た場合、前記直動部品の前記端面の外縁から外方に出ないことを特徴とする請求項2または3に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項5】
前記直動機器はボールねじであり、前記直動部品は前記ボールねじのねじ部に沿って直動するナットであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項6】
前記ねじ部の長手方向における前記ブラケットの寸法は、前記ねじ部の不完全ねじ部の寸法以下であることを特徴とする請求項5に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項7】
前記センサデバイスは検出した前記振動のデータを無線送信する送信部を有し、前記センサデバイスの筐体の少なくとも1つの面は、前記無線送信の電波経路を確保できる方向に向けられていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項8】
前記ブラケットの形状は前記直動部品の形状に応じて変更可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項9】
前記ブラケットは前記直動部品に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項10】
前記センサデバイスへの給電は、前記センサデバイスの筐体内に設けられたバッテリから行うか、前記センサデバイスの自己発電により行うか、外部給電により行うことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項11】
前記ブラケットは凹部を有し、前記センサデバイスは前記凹部に収容されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項12】
前記ブラケットは上部に水平面を有し、前記センサデバイスは前記水平面に取り付けられることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項13】
前記直動機器は、マシニングセンタのワーク載置テーブルを直動させる機器であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のセンサデバイス取り付け構造により直動機器の直動部品にブラケットを介して取り付けられたセンサデバイスと、
前記センサデバイスが検出した振動に基づいて、前記直動機器の異常を判断する異常判断装置と、
を有する直動機器異常判断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサデバイス取り付け構造と、当該構造を利用した直動機器異常判断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等の機械設備には、ボールねじ、リニアガイド、転がり軸受、モータ等の装置が装備されている。機械設備を長時間使用すると摩耗や損傷が発生し、ボールねじ等の直動案内装置(直動機器)のスムーズな回転、摺動ができなくなる。直動案内装置の異常判断を行う異常診断システムが特許文献1に開示されている。特許文献1のシステムでは、ボールねじの円筒部(ナット)の外周面に取付穴を形成し、センサモジュール及び無線モジュールを有するセンサデバイスを当該取付穴に埋設している。センサモジュールが検出した振動や温度は、無線モジュールにより異常診断装置に送信され、異常判断装置は受信した振動等に基づいてボールねじの異常/正常の診断を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、センサデバイスを取り付けるために、ボールねじのナットに取付穴を形成するという加工が必要になる。つまり、センサデバイスを取り付けるために専用のナットを準備しなければならない。また、当該取付穴の加工コストも嵩む。
本発明は上記課題を解決すべく、直動機器の直動部品へのセンサデバイスの取り付けを簡単な構成で行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一つの態様によれば、直動機器の直動部品に、前記直動部品の形状に応じた形状を有するブラケットを取り付け、前記直動部品の振動を検出するセンサデバイスを前記ブラケットに取り付けたことを特徴とするセンサデバイスの取り付け構造が提供される。
【0006】
このような構造を採用することにより、直動機器の直動部品にブラケットを取り付け、センサデバイスを前記ブラケットに取り付ければよいので、直動部品に大きな加工を施す必要はなく、センサデバイスを直動部品に容易に取り付けることができる。
【0007】
好ましくは、前記ブラケットは、前記直動部品の直動方向の端面に取り付けられる。好ましくは、前記ブラケットは、前記直動部品の直動方向から見た場合、前記直動部品の前記端面の外縁から外方に出ない。また、好ましくは、前記センサデバイスも、前記直動部品の直動方向から見た場合、前記直動部品の前記端面の外縁から外方に出ない。
前記直動機器はボールねじであり、前記直動部品は前記ボールねじのねじ部に沿って直動するナットであってよい。好ましくは、前記ねじ部の長手方向における前記ブラケットの寸法は、前記ねじ部の不完全ねじ部の寸法以下である。
前記センサデバイスは検出した前記振動のデータを無線送信する送信部を有してよい。好ましくは、前記センサデバイスの筐体の少なくとも1つの面は、前記無線送信の電波経路を確保できる方向に向けられている。
【0008】
好ましくは、前記ブラケットの形状は前記直動部品の形状に応じて変更可能である。前記ブラケットは前記直動部品に着脱可能に取り付けられてよい。
前記センサデバイスへの給電は、前記センサデバイスの筐体内に設けられたバッテリから行うか、前記センサデバイスの自己発電により行うか、外部給電により行ってよい。
前記ブラケットは凹部を有し、前記センサデバイスは前記凹部に収容されてよい。あるいは、前記ブラケットは上部に水平面を有し、前記センサデバイスは前記水平面に取り付けられてもよい。
前記直動機器は、マシニングセンタのワーク載置テーブルを直動させる機器であってよい。
【0009】
本発明の他の態様によれば、上記したセンサデバイス取り付け構造により直動機器の直動部品にブラケットを介して取り付けられたセンサデバイスと、前記センサデバイスが検出した振動に基づいて、前記直動機器の異常を判断する異常判断装置と、を有する直動機器異常判断システムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、直動機器の直動部品へのセンサデバイスの取り付けを簡単な構成で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る異常診断システムの概略図である。
【
図4】
図4は
図3の直動機器を異なる方向から見た斜視図である。
【
図5】
図5は
図4の直動機器とこれに付随する要素の概略側面図である。
【
図6】
図6は送電デバイスとセンサデバイスの構成を示す図である。
【
図10】
図10はセンサデバイスをセンサ用ブラケットに取り付ける構成の変形例を説明する図である。
【
図11】
図11はセンサ用ブラケットの変形例を示す図である。
【
図12】
図12はセンサデバイスを
図11のセンサ用ブラケットに取り付ける構成の説明する図である。
【
図13】
図13(a)はセンサ用ブラケットの他の変形例を示す正面図であり、
図13(b)はその斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更及び修正等をすることが可能である。
【0013】
本発明の実施形態に係る異常診断システム(直動機器異常判断システム)10を
図1~
図9に基づいて説明する。
図1は、異常診断システム10の概略図である。本実施形態の異常診断システム10は、マシニングセンタ20と、異常診断装置80とを有する。マシニングセンタ20と異常診断装置80は無線(例えば、無線LAN)で通信可能に接続されているとする。異常診断装置80は、例えば、パーソナルコンピュータである。本実施形態の異常診断システム10では、マシニングセンタ20の特定の直動部品(後述する)の振動を検出して、検出結果を異常判断装置80に送信し、当該検出結果からマシニングセンタ20の直動機器が正常であるか異常であるかを判断する。
図2は、
図1のマシニングセンタ20を矢印A方向から見た斜視図であり、マシニングセンタ20のテーブル34と、テーブル近傍の部品とを示している。
【0014】
図1のマシニングセンタ20は、立型のマシニングセンタであり、工作機械の一例である。マシニングセンタ20は、ベッド22と、ベッドに立設されたコラム24とを有する。コラム24には、上下方向(Z軸方向)に移動可能な主軸頭26が取り付けられている。主軸頭26は第1ボールねじ(図示せず)により上下方向に移動される。主軸頭26には工具28が取り付けられている。工具28は、例えば、ドリル等の回転工具である。工具28は主軸頭26内のスピンドルモータ(図示せず)により回転駆動される。コラム24には、マシニングセンタ20を制御する制御装置30が取り付けられている。第1ボールねじは直動機器の一例である。図示しないが、第1ボールねじは、ねじ部と、これを回転駆動するモータと、ねじ部の両端を支持する軸受とを有する。
図1において、コラム24が延びる方向(垂直方向)をZ軸方向と称し、水平方向のうち紙面に垂直な方向をX軸方向と称し、X軸方向と直交する水平方向をY軸方向と称する。
ベッド22の上には、Y軸方向に移動可能なサドル32が設けられている。サドル32の上には、X軸方向に移動可能なテーブル34が設けられている。テーブル34の上には、工具28により機械加工されるワークWが載置される。
【0015】
図2に示すように、ベッド22の上部両脇には、Y軸方向に延びる2本の平行なガイド部23が固定されており、ガイド部23の上には、Y軸方向に移動可能なサドル32が設けられている。サドル32の下には、第2ボールねじ40が設けられている。サドル32は、第2ボールねじ40によりY軸方向に移動される。第2ボールねじ40は、ねじ部41と、これを回転駆動するモータ42と、ねじ部41の両端を支持する軸受43とを有する。
サドル32の上部両脇には、X軸方向に延びる2本の平行なガイド部33が固定されており、ガイド部33の上には、X軸方向に移動可能なテーブル34が設けられている。テーブル34の下には、第3ボールねじ50が設けられている。テーブル34は、第3ボールねじ50によりX軸方向に移動される。第3ボールねじ50は、ねじ部51と、これを回転駆動するモータ52と、ねじ部51の両端を支持する軸受53、53とを有する。
テーブル34は、所定の厚さを有する矩形状を呈している。本実施形態では、テーブル34に開口部35が形成されている。開口部35は、第3ボールねじ50にブラケット58(
図8)を介してセンサデバイス60(
図8)を取り付ける際に作業者の手及び工具が入る入口となる。尚、開口部35は必要に応じて、蓋部材(図示せず)により閉じられてよい。また、
図2ではテーブル34上のワークWは省略している。
【0016】
第2ボールねじ40と第3ボールねじ50により、テーブル34はX軸方向とY軸方向に移動でき、第1ボールねじにより工具28(または主軸頭26)はZ軸方向に移動できる。第1ボールねじのモータ、第2ボールねじ40のモータ42及び第3ボールねじ50のモータ52は、ワークWの加工プログラムに従って、制御装置30により制御される。
第1ボールねじ、第2ボールねじ40及び第3ボールねじ50は、ほぼ同一の構造を有するので、以下の記載においては、第3ボールねじ50について説明する。また、第3ボールねじ50は、単に、「ボールねじ50」と称する。
【0017】
図3はボールねじ50の斜視図である。
図3ではモータ52と軸受53、53が省略されている。
図3に示すように、ねじ部51には、テーブル34を支持する支持部54と、ナット56と、センサ用ブラケット(以下、「ブラケット」と称する)58と、センサデバイス60とが設けられている。ナット56は、直動機器であるボールねじ50の直動部品である。ブラケット58は、耐久性の観点から、金属製であることが好ましい。ブラケット58は、ナット56の直動方向(X軸方向)の端面に取り付けられている。ブラケット58の外周曲面は、ナット56の外周曲面とほぼ同じである。センサデバイス60は、ブラケット58に組み込まれるように設けられており、ナット56の直動方向から見た場合、ナット56の輪郭(上記した端面の外縁)から外方に出ていない。
ブラケット58は、ボルト59によりナット56に固定されている。ボルト59による固定を解除すれば、ブラケット58はナット56から取り外すことができるので、ブラケット58はナット56に着脱可能に取り付けられている。
【0018】
ねじ部51の右端51aは、モータ52に接続される部分である。ねじ部51の右端51aの横の部分51bは、軸受53により支持される被軸受部である。ねじ部51の左端51bも、軸受53により支持される被軸受部である。尚、ねじ部51の右端51aは、以下の記載において第1端部と称される場合もある。センサデバイ60はセンサユニットと称してもよいし、センサと称してもよい。
【0019】
図4は
図3のボールねじ50の左右を逆にして示した図である。
図5は
図4のボールネジ50の側面図であり、
図5ではモータ52及び軸受53(53a)、53(53b)が示されている。尚、説明の都合上、モータ52に近い軸受53を第1軸受53aと称し、モータ52から遠い軸受53を第2軸受53bと称する。
モータ52の出力軸52aは、カップリング55を介してねじ部51の第1端部51aに接続されている。第1軸受53aと第2軸受53bの間において、ねじ部51の両端近傍には、ねじとして機能しない不完全ねじ部51c、51cが形成される。不完全ねじ部51cと51cの間が完全ねじ部51dになる。完全ねじ部51dは、ナット58がねじ部51の長手方向(X軸方向)に移動できる範囲を規定する部分である。完全ねじ部51dの長さは、ねじ部有効長さと称されることもある。図中、T1はブラケット58の厚さ(X軸方向の寸法)と、ナット56のフランジ部56cの厚さとの合計を示している。T1の値は、不完全ねじ部51cの長さ以下であることが好ましい。
【0020】
図5に示すように、第1軸受53aの近傍には、送電デバイス70と受信デバイス72が設けられている。送電デバイス70は、ナット56がねじ部51の所定の範囲(または位置)に停止している間に、センサデバイス60に電力を送る(電力供給する)。所定の範囲は、本実施形態では、第1軸受53aに近い方の不完全ねじ部51cの範囲である。送電デバイス70はセンサデバイス60とは別のデバイスであり、両者は隔てられているので、この電力供給はワイヤレス給電である。符号54bは、支持部54の天板部であり、符号54dは、支持部54の第2軸受53b側の面である。
図2では、送電デバイス70と受信デバイス72の図示は省略している。
【0021】
受信デバイス72は、センサデバイス60から信号(センサデバイス60の検出データ)を受信する。受信デバイス72は、センサデバイス60の正面69a(
図8)に向くように設置される。ナット56がねじ部51に沿ってX軸方向に移動する際に、センサデバイス60と受信デバイス72の間には、何も存在しない。従って、センサデバイス60から受信デバイス72に信号を送る際に、信号伝搬(電波送信)の障害になる物は無い。受信デバイス72は、センサデバイス60から受け取った信号を異常判断装置80に送信する。
【0022】
図6は送電デバイス70とセンサデバイス60の構成を示す図である。
送電デバイス70は、送電コイル71を有しており、送電コイル71からセンサデバイス60に送電を行う。
センサデバイス60は、筐体69と、筐体69内に設けられた電源基板61及び制御基板65を有する。筐体69は直方体の部材である(
図10参照)。筐体69の材質は、電波の減衰を抑えるために、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)等の樹脂であることが好ましい。尚、筐体69の材質は、金属でもよいが、金属製にする場合には、電波を通すために電波通過孔(例えば、樹脂製)を筐体69に設ける。
電源基板61は、受電コイル62とDCDCコンバータ63とを実装している。制御基板65は、加速度センサ66と、マイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と称する)67と、無線モジュール68とを実装している。マイコンは、CPU(Central Processing Unit)、メモリ等を備える。尚、
図6では電源基板61と制御基板65は分離して描かれているが、1つの基板に統合してもよい。
【0023】
受電コイル62は、送電コイル71からの電力を受け取り、当該電力を蓄積する。受電コイル62は電力を蓄積するので、蓄電池として機能する。電力を蓄積した受電コイル62は、DCDCコンバータ63に当該電力(直流)を入力する。DCDCDCコンバータ63は、入力された直流電力を所定の電圧に変換して、制御基板65用のDC電源を生成する。そして、DCDCコンバータ63は、DC電源を制御基板65に供給する。制御基板65に設けられた加速度センサ66、マイコン67及び無線モジュール68は、DC電源を使用して動作する。
【0024】
本実施形態のセンサデバイス60は、ボールねじ50のナット56の振動を検出するデバイスである。つまり、加速度センサ66が、ナット56の動きの加速度を振動として検出することにより、センサデバイス60がナット56の振動を検出する。ナット56の振動を検出(診断)する際、例えば、ナット56を
図5の位置イ(つまり、完全ねじ部51の一端)から位置ロに向かって移動させて(加速)、所定時間が経過したならば(定速)、ナット56を停止する(減速、停止)。ナット56の加速、定速、減速、停止の流れを状態診断用動作パターンと称する。加速度センサ66は、ナット56が移動している間のナット56の振動を検出・計測する。
図5のイの位置は、状態診断用動作パターンの原点である。状態診断用動作パターンは、振動検出のアプリケーションに応じて設定される。尚、状態診断用動作パターンの原点は、システム10のユーザが入力してもよいし、予めマイコン67に入力・設定しておいてもよい。同様に、ナット56の振動を検出する「所定時間」も、システム10のユーザが入力してもよいし、予めマイコン67に設定しておいてもよい。また、所定時間経過した時点でナット56を停止せずに、ナット56は移動させたままで、ナット56の振動検出だけを停止してもよい。状態診断用動作パターンの原点は位置イに限定されず、位置イから位置ロの間の位置であればよい。
【0025】
加速度センサ66により検出されたナット56の加速度検出値(振動データ)は、マイコン67に入力され、マイコン67のメモリに記憶される。無線モジュール(送信部)68は、マイコン67のCPUの制御の下で、マイコン67のメモリに記憶された振動データ(送信データ)を受信デバイス72に無線送信する。受信デバイス72は、振動データを異常判断装置80に送信する。
【0026】
異常判断装置80は、受信デバイス72から振動データを受信すると、当該振動データに基づいて、ボールねじ50のナット56の振動が正常であるか異常であるかを判定する。例えば、加速度センサ66は、毎日定時に同じ状態診断用動作パターンでナット56の振動を計測(検出)し、当該計測データを受信デバイス72を介して異常判断装置80に送信する。従って、異常判断装置80は、ナット56の振動データ(振動曲線)を複数蓄積することができる。そして、異常判断装置80は、例えば、ナット56の平均な振動曲線(基準曲線)から乖離した振動曲線があれば、当該振動曲線を異常な振動であると判断できる。つまり、異常判断装置80は、異常な振動曲線を見つけることにより、ナット56の振動が異常であると判断することができる。尚、ナット56の振動が異常であるか否の判断は、異常判断装置80の表示部84(
図7)に表示されたナット56の振動曲線を、異常判断装置80のユーザが見て行ってもよい。
図7は、異常判断装置80の構成を示すブロック図である。異常判断装置80は、入力部81、制御部82、記憶部83、表示部84、無線通信部85及びバス86を有する。
入力部81は、ボタン、スイッチ、マウス、タッチパネル等からなり、ユーザは入力部81を介して各種入力等を行う(例えば、状態診断用動作パターンの原点や異常判断に用いる所定時間、基準値、閾値等を入力する)。ユーザは、異常判断装置80を操作する際に、入力部81を使用する。入力部81は、操作部と称することもできる。
【0027】
制御部82は、1つまたは複数のCPUやMPUにより構成され、異常判断装置80の各部81及び83~85の動作を制御する。制御部82は、センサデバイス60(受信デバイス72)から受信した信号(振動データ、振動曲線)を処理して、異常判断を行う(異常判断処理を実行する)。例えば、制御部82は、受信した振動データを基準値(基準曲線)と比較して、基準値との差の大きさに基づいて異常判断を行う(例えば、基準値との差が閾値を超えた場合に異常であると判断する)。制御部82は、記憶部83に記憶される制御プログラムを実行することにより異常判断装置80を制御したり、ボールねじ50の異常判断処理を実行する。MPUはMircoprosessor Unitの略である。
【0028】
記憶部83は、HDD、ROM、RAM、ICメモリカード等により構成され、制御部82が実行する制御プログラムや制御部82が使用する基準値等の各種情報を記憶する。記憶部83はセンサデバイス60から受信した振動データを記憶することができる。HDDはHard Disk Driveの略である。ROMはRead Only Memoryの略である。RAMはRandom Access Memoryの略である。ICはIntegrated Circuitの略である。
【0029】
表示部84は、液晶ディスプレイなどからなり、各種データ、数値、文字および画像等の表示を行う。表示部84は、センサデバイス60から受信した振動データ(振動曲線)を、基準値(基準曲線)と共に表示することができる。また、表示部84は、制御部82による異常診断(異常判断)の結果を表示することができる。制御部82がボールねじ50は異常であると判断した場合、表示部84は、例えば、アラートメッセージを表示する。尚、表示部84はスピーカ等の音声出力部を備えてもよい。制御部82がボールねじ50は異常であると判断した場合、音声出力部は、例えば、アラート音を出力する。
無線通信部85は、受信デバイス72との無線通信を行う。より詳しくは、無線通信部85は、加速度センサ66が検出した振動のデータを受信デバイス72を介して受信する。バス86は、各部(81~85)を接続している。
このようにして、本実施形態のシステム10によれば、マシニングセンタ20のテーブル34をX軸方向に動作させる際のボールねじ50の状態を監視することができる。
【0030】
図8は
図4のボールねじ50の要部展開図である。4本のボルト59(59a、59a、59b、59b)のうち、上の2本のボルト59aは、ブラケット58及びナット56を通過して支持部54の雌ネジ54a部に螺合される。ブラケット58には、2本のボルト59aが通過する2つの孔58aが形成されている。また、ナット56にも、2つの孔58aに対応する位置に2つの孔56aが形成されている。同様に、4本のボルト59のうち、下の2本のボルト59bは、ブラケット58の孔58bとナット56の孔56bを通過して、支持部54の雌ネジ部54eに螺合される。ボルト59を締める作業は、
図2のテーブル34の開口部35から作業者が手を入れて行う。支持部54は天板部54bと、天板部54bの下に位置する本体部54cとからなる。本体部54cはC字を右に90度回転したような形状(あるいは、逆U字形状)をしており、その底部は開放されている。ナット56はフランジ部56cと、フランジ部56cからねじ部51の長手方向に延びる本体部56dとからなる。本体部56dの内部には、ボールねじ50のボール(図示せず)が収容されている。本体部56dは円筒形状を有しており、支持部54の本体部54cに形成されている円筒形穴に嵌合する。ナット56のフランジ部56cには、周方向に6つの孔が形成されている。6つの孔のうちの、上の2つが孔56aであり、中段の2つが孔56bである。孔56a、56b、58a、58bは通し孔である。符号56fは、ナット56がセンサ用ブラケット58と接触する面を指している。
【0031】
ブラケット58の中央上部には凹部58cが形成されており、センサデバイス60は凹部58cに収容される。ブラケット58は凹部58cにセンサデバイス60を収容するので、センサデバイス用ハウジングと称してもよい。本実施形態では、センサデバイス60の筐体69の少なくとも1つの面(面69aの反対側の面)が接着剤で凹部58cに固定される。センサデバイス60をブラケット58に固定することにより、センサデバイス60はブラケット58に一体化される。センサデバイス60がブラケット58に一体化されると、ナット56からブラケット58を介して加速度センサ66に伝達される振動に対するノイズが小さくなり、振動減衰も小さくなるので、センサデバイス60は、ナット56の振動をより正確に検出することができる。
【0032】
センサデバイス60がブラケット58の凹部58cに収容された状態において、センサデバイス60の筐体69のX軸方向の面69aがX軸方向に露出するようになっている。
図5から分かるように、面69aと受信デバイス72の間には障害物等がない。この構造により、センサデバイス60から受信デバイス72へ送られる電波の経路が確保されることになる。つまり、センサデバイス60の面69aは、電波経路を確保できる方向に向けられている。
図8の符号T2はセンサデバイス60の厚さ(X軸方向の寸法)である。
【0033】
センサデバイス60がブラケット58の凹部58cに収容・固定された状態で、センサデバイス60をX軸方向から見た場合、センサデバイス60は、ナット56のフランジ部56cの外縁から外方に出ていない。X軸方向で見た場合、ブラケット58の形状(輪郭)は、ナット56の形状(輪郭)に応じた形状である。より詳しくは、X軸方向で見た場合、ブラケット58の輪郭は、ナット56のフランジ部56cの輪郭とほぼ同じである。従って、本実施形態では、センサデバイス60がブラケット58の凹部58cに収容・固定された状態で、センサデバイス60をX軸方向から見た場合、センサデバイス60は、ブラケット58の輪郭(外縁)から外方に出ていない。尚、ブラケット58の凹部58cに収容されたセンサデバイス60をX軸方向から見た場合、センサデバイス60がブラケット58の輪郭から外方に出ないような構成にすることが望ましいが、ボールねじ50の動作を妨げなければ、センサデバイス60の形状、ブラケット58の形状及び凹部58cの形状は、任意の形状でよい。
【0034】
図9はブラケット58を第1軸受53aからX軸方向に沿って見た図である。ブラケット58は、C字を右に90度回転したような形状(逆U字形状)をしており、その底部中央は開放されている。ブラケット58のC字曲線は、
図4及び
図8から分かるように、ナット56のフランジ部56cの外周面にほぼ沿った曲線である。
ブラケット58の中央部にはX軸方向に窪む凹部58cが形成されている。凹部58cは、センサデバイス60設置用溝と称してもよい。センサデバイス60の幅L1(
図10)と凹部58cの幅L2はほぼ等しい。センサデバイス60の幅L1はセンサデバイス60の筐体69のY軸方向の寸法である。
【0035】
凹部58cの両側には肉厚部58d、58dが形成されている。肉厚部58d、58dの間の部分を薄肉部58eと称する。薄肉部58e及び凹部58cの下の空間38は、ブラケット58がボールねじ50のねじ部51に係合する部位である。ブラケット58は逆U字形状を呈しているので、ボールねじ50に後付けすることができる。ブラケット58をボールねじ50に取り付ける際、センサデバイス60を予めブラケット58に固定し、その後、ブラケット58をボールねじ50に取り付けてもよいし、ブラケット58をボールねじ50に取り付けた後にセンサデバイス60をブラケット58に取り付けてもよい。
図4及び
図5から分かるように、センサデバイス60をブラケット58の凹部58cに取り付けた状態において、センサデバイス60はX軸方向においてブラケット58の肉厚部58dから突出しない。つまり、センサデバイス60の厚さT2は凹部58cの深さ(X軸方向の寸法)以下である。センサデバイス60がX軸方向においてブラケット58から突出しないので、ボールねじ50及びボールねじ50近傍の部品等の設計を変更しなくても、センサデバイス60とブラケット58をボールねじ50に取り付けることができる。センサデバイス60はブラケット58の薄肉部58eに設置されるので、肉厚部58dに設置する場合と比較して、ナット56により近い位置に設けられることになり、ナット56からの振動をより正確に検出することができる。
【0036】
ブラケット58の厚さT3(
図10)は、好ましくは、不完全ねじ部51cの長さ(例えば、10mm~20mm程度)以下にする。ブラケット58の厚さT3を不完全ねじ部51cの長さ以下にすれば、ナット56の可動範囲を減ずることがないからである。不完全ねじ部51cの上部及び下部は、設計上デッドスペースとなる空間であるので、当該デッドスペースにブラケット58(つまり、センサデバイス60)を位置させることができる。
【0037】
尚、
図8ではセンサデバイス60はブラケット58の凹部58cに接着剤で固定されているとしたが、センサデバイス60の取り付け方はこれに限定されない。例えば、
図10(a)に示すように、センサデバイス60の筐体69に2つの孔69bを形成し、孔69bに対応する雌ネジ孔58fを、ブラケット58の薄肉部58eに形成し、センサデバイス60をボルト57によりブラケット58に固定してもよい。
さらに、
図10(b)に示すように、ブラケット58の凹部58cと、センサデバイス60の筐体69との間に樹脂64を設けてもよい。つまり、
図10(b)では、ボルト57と樹脂64により、センサデバイス60をブラケット58に固定する。樹脂64は、筐体69が凹部58cと接触する3つの面に設けられる。筐体69と凹部58cが接触する面の全てに樹脂64が設けられるので、センサデバイス60とブラケット58の一体化が強化される。樹脂64は接着剤として機能する。
【0038】
図11はセンサ用ブラケットの変形例を示す図である。
図11のブラケット90は、
図9のブラケット58と同様に、全体的には、C字を右に90度回転したような形状をしており、その底部中央は開放されているが、ブラケット58と比較すると、薄肉部58eが無く(つまり凹部58cが無く)、また、上部が水平に削られている。
図11の破線91は、X軸方向で見た場合のナット56の輪郭(フランジ部56cの外周)を示している。センサデバイス60は、ブラケット90の上部水平面90aに取り付けられる(例えば、接着剤により固定される)。
図11において、
図9と共通する部位には、同じ参照符号を付けている。
【0039】
図11では、センサデバイス60がブラケット90の上部水平面90aに接着剤により固定されるとしたが、センサデバイス60の固定方法はこれに限定されない。
図12は、センサデバイス60を
図11のブラケット90に取り付ける他の方法の説明する図である。
図12は
図10に対応する図である。
図12(a)に示すように、センサデバイス60の筐体69に孔69bを形成し、ブラケット90の上部水平面90aに雌ネジ孔90bを形成し、センサデバイス60をボルト57によりブラケット90の上部水平面90aに固定してもよい。センサデバイス60を上部水平面90aに設置した場合、X軸方向から見て、センサデバイス60の筐体69がナット56の輪郭91を超えないようにする。
さらに、
図12(b)に示すように、ブラケット90の上部水平面90aと、センサデバイス60の筐体69との間に樹脂64を設けてもよい。樹脂64は接着剤として機能する。つまり、
図12(b)では、ボルト57と樹脂64により、センサデバイス60をブラケット90に固定する。
【0040】
図13(a)は、
図9に示したセンサ用ブラケット58の変形例(センサ用ブラケット158)を示す正面図であり、
図13(b)はその斜視図である。
図14はセンサ用ブラケット158をナット56に取り付けた状態を示す正面図である。
図13及び
図14に示すように、センサ用ブラケット158は、センサ用ブラケット158の後に位置するナット56の孔56b、56bが見えるように、下部を削除している。符号58hは、センサ用ブラケット158の下面を指している。センサ用ブラケット158を
図13のような構造にすることで、ボルト59bはセンサ用ブラケット158を通過すること無く、ナット56を支持部54に締結することができる。その結果、例えば、センサデバイス60やブラケット158が破損して交換が必要になった場合、ナット56と支持部54の締結は維持したまま当該交換を行うことができる。センサ用ブラケット158の下面58hの曲面58h1は、ボルト59bの頭部を逃がすための曲面である。
【0041】
図9~
図14に示したように、センサデバイス60の形状(すなわち、筐体69の形状)を変更せずに、ブラケット58、90の形状を変更することにより、センサデバイス60の設置位置を変えることができる。また、図示したボールねじ50の形状とは異なる形状のボールねじにセンサデバイス60を取り付ける場合にも、センサデバイス60の形状は変えることなく、ブラケット58、90の形状を変えることにより対応することができる。
【0042】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、ブラケット58を介してセンサデバイス60をボールねじ50のナット56に取り付けるので、ボールねじ50のナット56へのセンサデバイス60の取り付けを簡単な構成で行うことができる。本実施形態でナット56へ施す加工は、孔56a、56bを形成する加工だけである。よって、ナット56に大きな加工を必要としない。
また、本実施形態では、センサデバイス60と受信デバイス72の間に他の部品や部材が存在しないので、センサデバイス60から受信デバイス72への無線(電波)の送信に悪影響を生じさせる物体はない。特許文献1のようにセンサユニットをナットの凹部(取付穴)に設けると、センサユニット近傍の部品や部材が無線モジュールからの電波送信に悪影響を及ぼす可能性がある。
センサデバイス60はブラケット58を介してナット56に取り付けられているので、加速度センサ66は振動源であるナット56に近い位置に設置されている。従って、加速度センサ66はナット56の振動(加速度)を正確に検出することができる。例えば、センサデバイス60を支持部54に取り付ける場合と比較すると、本実施形態ではナット56から加速度センサ66までの距離を短くすることができるので加速度センサ66の検出精度(SN比)を高くすることができる。
【0043】
図10(a)の構造を採用すると、センサデバイス60を交換する場合、センサデバイス60の取り付けねじ57を外して、センサデバイス60をねじ部51の長手方向に引き出すだけでよいので、交換作業がし易い。センサデバイス60の交換作業は、不完全ねじ部51dの周囲空間を使用して行うので、センサデバイス60の交換作業のための空間を確保するために、ボールねじ50等の設計を変更する必要はない。
【0044】
センサデバイス60の筐体69は、ブラケット58に取り付けられる(ブラケット58を介してナット56に取り付けられる)ので、ナット56のサイズや形状が変わっても、ブラケット58を変えることにより、同じ筐体69を使用することができる。つまり、筐体69は、ナット56に直接取り付けられるのではないので、ナット56が変わっても、同一の筐体69を採用できる。ナットが変わった場合は、センサデバイス60の筐体69は変えずに、ブラケット58の形状(孔の位置や大きさを含む)を変える。ブラケット58の形状を変えることにより、様々な形状・サイズのボールねじに、同一形状のセンサデバイス60を取り付けることができる。
【0045】
センサデバイス60の筐体69は制御基板65の近傍に位置する部材なので、センサデバイス60の無線電波特性に影響を及ぼす部材である。筐体69のサイズや形状を変更すると、制御基板65の無線電波特性も変わってしまう可能性がある。よって、同一の筐体69を使用することにより、センサデバイス60の無線電波特性を維持することができる。もしセンサデバイス60をナットに直接固定しようとすると、ナットの種類に応じてセンサデバイス60の筐体69の形状を変更する(設計変更する)ことになる。ナットの種類毎に筐体69の設計変更をするのは、非効率である。また、ナットの設計変更によりナットを削る等の加工をすると、ナットの耐久性が下がる可能性がある。本実施形態では、そのような可能性は生じない。
【0046】
また、各国の法制度によっては、センサデバイス60の内部回路(電源基板61、制御基板65)が同一でも筐体69の形状が異なると、新たに電波認証を取得する必要がある場合がある。本実施形態のようにセンサデバイス60の筐体69の形状を変えないとすれば、電波認証は一度取得するだけでよいことになる。
【0047】
図10(b)及び
図12(b)の構造では、樹脂64は、筐体69と凹部58cが接触する面の全てに設けられるので、センサデバイス60とブラケット58は隙間なく一体化され、センサデバイス60へ伝達されるナット56の振動の減衰が抑制することができる。尚、樹脂64は他の材質の接着剤または緩衝材に置換してもよい。
【0048】
上記した実施形態では、マシニングセンタ20と異常判断装置80は無線で接続されるとしたが、有線で接続されてもよい。また、ブラケット58、90をボールねじ50から取り外す場合(交換する場合)には、ブラケット58、90とセンサデバイス60とを一体で取り外してよい。
ブラケット58及びセンサデバイス60をボールねじ50(ねじ部51)に取り付ける順序は、例えば、ブラケット58をねじ部51に取り付けた後にセンサデバイス60をブラケット58に取り付けてもよいし、センサデバイス60をブラケット58に取り付けた後にブラケット58をねじ部51に取り付けてもよい。後者の場合、センサデバイス60とブラケット58を一体化したものをねじ部51に取り付けることになる。つまり、センサデバイス60とブラケット58が一体になっているものをねじ部51に取り付けることは、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
上記した実施形態では、マシニングセンタ20のテーブル34をX軸方向に動作させる際のボールねじ50の状態監視(異常判断)について説明をしたが、テーブル34をY軸方向に動作させる際の第2ボールねじ40の状態監視や主軸頭26をZ軸方向に動作させる際のボールねじの状態監視も、上記した実施形態と同様な手法で行うことができる。
【0050】
上記した実施形態では、受信デバイス72は、センサデバイス60の正面69aに面するように設置されるとしたが、受信デバイス72の設置位置はこれに限定されない。センサデバイス60からの信号を受信できる位置に設置されるのであれば、センサデバイス60の正面69aに対向しなくてもよい。
上記した実施形態では、異常判断装置80はマシニングセンタ20とは別の装置であり、異常判断装置80は、センサデバイス60の振動データを受信デバイス72経由で受信したが、異常判断装置80はマシニングセンタ20の制御装置30に組み込んでもよい。この場合、受信デバイス72は制御装置30に有線または無線で接続され、センサデバイス60の振動データは、受信デバイス72から制御装置30に送信される。
【0051】
センサデバイス60(つまり、ブラケット58)の取り付け位置は、
図5の構成では、支持部54の左側であるが、支持部54の右側においてもブラケット58の取り付けスペースが確保できるならば、ブラケット58を支持部54の右側(例えば、面54d)に取り付けてもよい。
上記した実施形態では、ブラケット58、90の形状は逆U字形状としたが、O字状でもよい(ドーナツ型)。この場合、ブラケット58、90の中央には孔が形成されるので、当該孔にネジ部51が通ることになる。
ブラケット58、90のサイズ及び形状、凹部58cの形状及び位置、孔58a、58bの形状、数及び位置等は、ナット56の形状に合わせて適宜変更してよい。また、孔58a、58bは、座繰り孔でもよい。
上記した実施形態では、送電デバイス70からセンサデバイス60への給電はワイヤレス給電により行ったが、給電の方法はこれに限定されない。例えば、センサデバイス60は筐体69内にバッテリ(例:ボタン電池)を備えてもよい。この場合、送電デバイス70は省略してよい。あるいは、センサデバイス60は自己発電(例:振動発電)により制御基板65に給電してもよい。この場合も、送電デバイス70を省略してよい。
【符号の説明】
【0052】
10…異常診断システム(異常判断システム)
20…マシニングセンタ
30…制御装置
40…第2ボールねじ
50…第3ボールねじ
51…ねじ部
52…モータ
54…支持部
56…ナット
58…ブラケット
60…センサデバイス
64…樹脂
66…加速度センサ
80…異常判断装置
90…ブラケット