(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148895
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20220929BHJP
F25D 25/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F25D23/02 303H
F25D25/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050748
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】岩上 栄生
(72)【発明者】
【氏名】土田 俊之
【テーマコード(参考)】
3L102
【Fターム(参考)】
3L102JA01
3L102KA09
3L102KB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シンプルな構造でありながら、収納領域の前面を開閉する扉部材を容易に着脱できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】庫内の収納領域の前面の少なくとも一部を開閉する扉部材20と、扉部材20の回転軸となる軸部材32と、扉部材20に形成され、軸部材32が挿入される穴部24Aを囲む周囲部を有する軸受部24と、周囲部24Bの一部に設けられた、軸部材32が通過可能な大きさの切欠部26と、周囲部24Bの外面を囲み、軸受部24が軸部材32の回りを回転可能であるが、軸部材32から離間する方向への移動を拘束する拘束部材34と、を備え、扉部材20が閉鎖回転位置から、収納領域の前面を開放する開放方向に回転移動するとき、所定の回転角度より大きく回転移動したとき、拘束部材34に拘束されることなく、軸部材32が切欠部26を通過するように扉部材20を引き抜いて、扉部材20を軸部材32から取り外すことができる。
【選択図】
図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内の収納領域の前面の少なくとも一部を開閉する扉部材と、
前記扉部材の回転軸となる軸部材と、
前記扉部材に形成され、前記軸部材が挿入される穴部を囲む周囲部を有する軸受部と、
前記周囲部の一部に設けられた、前記軸部材が通過可能な大きさの切欠部と、
前記周囲部の外面を囲み、前記軸受部が前記軸部材の回り回転可能であるが、前記軸部材から離間する方向への移動を拘束する拘束部材と、
を備え、
前記扉部材は、
前記軸部材の軸線周りに、前記収納領域の前面の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖回転位置から、前記収納領域の前面を開放する開放方向に回転移動するとき、
所定の回転角度以内の回転移動では、前記拘束部材により前記軸受部が前記軸部材から離間する方向へ移動するのが拘束され、
前記所定の回転角度よりも大きい角度まで回転移動したとき、前記拘束部材に拘束されることなく、前記軸部材が前記切欠部を通過するように前記扉部材を引き抜いて、前記扉部材を前記軸部材から取り外すことができることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記収納領域が前後に移動可能な引出式の容器内に設けられ、
前記扉部材の回転軸が略左右方向に延び、
前記軸部材及び前記拘束部材が冷蔵庫本体側に固定され、
前記閉鎖回転位置において、前記扉部材の下部が収納位置にある前記容器の前面の上部と近接または接触しており、
前記開放方向が、前記扉部材の前記下部が上方かつ前方へ移動するように回転する方向であることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記容器にカム面が設けられ、前記扉部材に前記カム面と接する摺動部が設けられ、前記容器が収納位置から前方へ引き出されるとき、前記摺動部が前記カム面の上を摺動して、前記閉鎖回転位置から前記所定の回転角度の範囲内で前記扉部材が前記開放方向に回転移動することを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記容器の上方に配置された取り外し可能な部材との干渉により、前記扉部材が前記閉鎖回転位置から前記所定の回転角度より大きく回転移動することがないことを特徴とする請求項2または3に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、庫内の収納領域の前面を開閉する扉部材を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
庫内の収納領域の前面を開閉する扉部材を備えた冷蔵庫が知られている。その中には、引出式のトレイと、トレイの前面を開閉する扉とを有する冷蔵庫が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の冷蔵庫では、トレイを庫内の収納位置から引き出すとき、下方の回転軸により、扉の上側がトレイに対して手前側へ回転して開放するようになっている。これにより、トレイを引き出したときの間口を広くして使い勝手を向上するとともに、収納領域の内容積を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の冷蔵庫では、扉に設けられた軸部がトレイの前側に形成された軸受孔に挿入された回転機構を有し、基本的に扉をトレイから取り外すことができない。よって、扉を外して洗浄することはできず、近年高まっている衛生的な要望に十分応えることができない。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記の課題を解決するものであり、シンプルな構造でありながら、収納領域の前面を開閉する扉部材を容易に着脱できる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の冷蔵庫は、
庫内の収納領域の前面の少なくとも一部を開閉する扉部材と、
前記扉部材の回転軸となる軸部材と、
前記扉部材に形成され、前記軸部材が挿入される穴部を囲む周囲部を有する軸受部と、
前記周囲部の一部に設けられた、前記軸部材が通過可能な大きさの切欠部と、
前記周囲部の外面を囲み、前記軸受部が前記軸部材の回り回転可能であるが、前記軸部材から離間する方向への移動を拘束する拘束部材と、
を備え、
前記扉部材は、
前記軸部材の軸線周りに、前記収納領域の前面の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖回転位置から、前記収納領域の前面を開放する開放方向に回転移動するとき、
所定の回転角度以内の回転移動では、前記拘束部材により前記軸受部が前記軸部材から離間する方向へ移動するのが拘束され、
前記所定の回転角度よりも大きい角度まで回転移動したとき、前記拘束部材に拘束されることなく、前記軸部材が前記切欠部を通過するように前記扉部材を引き抜いて、前記扉部材を前記軸部材から取り外すことができることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、扉部材の軸受部に軸部材が通過可能な大きさの切欠部を有し、軸受部の周囲部を囲む拘束部材により、閉鎖回転位置から所定の回転角度以内の回転移動では、扉部材が軸部材から外れることなく、扉部材を回転させて収納領域の前面を開閉することができる。更に、扉部材を所定の回転角度より大きく回転させることにより、拘束部材で拘束されることなく、軸部材が切欠部を通過するように扉部材を引き抜いて、扉部材を軸部材から取り外すことができ、取り外した扉部材を再び軸部材に取り付けることができる。
本発明では、切欠部及び拘束部材により、特別な部材を付加することなく、扉部材を撓ませることもなく容易に着脱することができる。よって、シンプルな構造でありながら、収納領域の前面を開閉する扉部材を容易に着脱できる冷蔵庫を提供することができる。
【0008】
また、本発明の冷蔵庫では、
前記収納領域が前後に移動可能な引出式の容器内に設けられ、
前記扉部材の回転軸が略左右方向に延び、
前記軸部材及び前記拘束部材が冷蔵庫本体側に固定され、
前記閉鎖回転位置において、前記扉部材の下部が前記容器の前面の上部と近接または接触しており、
前記開放方向が、前記扉部材の前記下部が上方かつ前方へ移動するように回転する方向であることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、引出式の容器が収納位置にあるときは、扉部材により収納容器の前面の上側の空間を閉鎖することができ、容器を手前に引き出す場合には、扉部材が開放方向に回転できるので、扉部材と干渉することなく、容易に容器を引き出すことができる。
【0010】
また、本発明の冷蔵庫では、
前記容器にカム面が設けられ、前記扉部材に前記カム面と接する摺動部が設けられ、前記容器が収納位置から前方へ引き出されるとき、前記摺動部が前記カム面の上を摺動して、前記扉部材が前記開放方向に回転移動することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、カム面及び摺動部により、容器を収納位置から前方へ引き出すと、扉部材が開放方向に回転移動するようになっている。これにより、使用者は容器を引き出すだけで、扉部材が回転して容器が開放されるので、容易に収納物の出し入れを行うことができる。
【0012】
また、本発明の冷蔵庫では、
前記摺動部が前記カム面の上を摺動するとき、前記扉部材が、前記閉鎖回転位置から前記所定の回転角度の範囲内で回転移動することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、容器を前方へ引き出して、扉部材を開放方向に回転移動させるとき、扉部材が軸部材から外れる虞がないので、確実に扉部材を開閉させて、容器の中の収納物の出し入れを行うことができる。
【0014】
また、本発明の冷蔵庫では、
前記容器の上方に配置された取り外し可能な部材との干渉により、前記扉部材が前記閉鎖回転位置から前記所定の回転角度より大きく回転移動することがないことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、容器の上方に配置された部材により、扉部材が着脱可能位置まで回転移動することがないので、通常の使用時において、確実に扉部材を開閉させて、容器の中の収納物の出し入れを行うことができる。更に、容器の上方に配置された部材を一時的に取り外すことにより、扉部材を着脱位置まで回転移動させて、容易に扉部材を着脱することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明により、シンプルな構造でありながら、収納領域の前面を開閉する扉部材を容易に着脱できる冷蔵庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫の内部を示す斜視図である。
【
図2】
図1において、扉部材を外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す野菜収納容器及び扉部材を拡大して示す斜視図ある。
【
図4】
図3の矢印Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図3の矢印Bで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【
図6A】野菜収納容器が収納位置にあり、扉部材が閉鎖回転位置にあるところを模式的に示す側面断面図である。
【
図6B】
図6Aに示す状態から、野菜収納容器が前側に引き出されて、扉部材が解放方向に回転移動した状態を模式的に示す側面断面図である。
【
図6C】
図6Bに示す状態から、更に野菜収納容器が前側に引き出されて、扉部材が更に解放方向に回転移動した状態を模式的に示す側面断面図である。
【
図7】扉部材が上側の部材と干渉して、更に解放方向に回転移動するのが拘束されるところを模式的に示す側面断面図である。
【
図8A】扉部材が閉鎖回転位置から所定の回転角度より大きく回転移動して、着脱回転位置に達したところを模式的に示す側面断面図である。
【
図8B】着脱回転位置において、扉部材が軸部材から取り外されたところを模式的に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下に説明する筆記具は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。本明細書において、冷蔵庫を水平な床面に載置した場合を示し、扉側を前側とし、その反対側を後ろ側とする。上下前後左右の方向を、図面に矢印で示す。
【0019】
(本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫)
図1は、本発明の1つの実施形態に係る冷蔵庫2の内部を示す斜視図である。
図2は、
図1において、扉部材を外した状態を示す斜視図である。
図3は、
図2に示す野菜収納容器及び扉部材を拡大して示す斜視図ある。
図4は、
図3の矢印Aで示す領域を拡大して示す斜視図である。
図5は、
図3の矢印Bで示す領域を拡大して示す斜視図である。
【0020】
図1及び
図2では、冷蔵庫2の前面を開閉する扉が取り除かれて、庫内4が視認可能な状態で示されている。庫内4の中央からやや下にかけて、チルド容器6及び給水タンク8が横並びで配置されている。チルド容器6内には、肉、魚のような生鮮食料品が収納され、通常の冷蔵室よりやや低い温度に保たれている。給水タンク8には、製氷皿に供給される製氷用の水か蓄えられている。ポンプにより、給水タンク8内の水が吸い上げられて、製氷皿へ供給される。
【0021】
チルド容器6及び給水タンク8の下側には、仕切板30(
図3参照)を介して、野菜収納容器10が配置されている。野菜収納容器10は、野菜、果物等を収納するのに適した引出式の容器である。野菜収納容器10内の温度は冷蔵室より少し高い温度に保たれ、湿度も冷蔵室より少し高く保たれている。野菜収納容器10は、底板と、底板を囲む前板、後板及び両側板とから構成され、上面は開口している。野菜収納容器10に収納物の出し入れを行うには、冷蔵庫2の扉をあけて、庫内4内後方の収納位置にある野菜収納容器10を手前に引き出して、上面の開口から収納物の出し入れを行う。収納物の出し入れが終了した後には、野菜収納容器10を後方の収納位置まで押し込んで、冷蔵庫2の扉を閉めることにより元の状態に戻すことができる。
【0022】
図2、
図3に示すように、収納領域である野菜収納容器10の前面の上部10Aと仕切板30の下面との間に空間Sを有する。
図2、
図3では取り外された状態で示されているが、この空間Sを開閉する回転式の扉部材20が配置されている。
【0023】
図5に示すように、冷蔵庫本体に固定された仕切板30の前面の右側に、円筒状の軸部材32が形成されている。同様に、仕切板30の前面の左側にも、円筒状の軸部材32が形成されている。
【0024】
一方、扉部材20では、
図4に示すように、空間Sを覆うように左右に延びた扉本体22の右側に、軸部材32が挿入される円形断面の穴部24A、及び穴部24Aを囲む周囲部24Bを有する軸受部24が形成されている。同様に、扉本体22の左側にも、穴部24A及び周囲部24Bを有する軸受部24が形成されている。
【0025】
軸部材32は左右方向に略水平に延びており、扉部材20は、扉本体22の延存方向に沿った、略左右に延びた水平線を回転中心として、回転移動することができる。周囲部24Bは、回転軸方向から見て、円弧状の外面を有し、周囲部24Bの一部には、切欠部26が設けられている。切欠部26は、軸部材32が通過可能な大きさの幅寸法を有する。よって、切欠部26を有する周囲部24Bは、回転軸方向から見て、略U字形または略C字形の形状を有する。
このような構成の場合、扉部材20を回転移動させると、軸部材32が切欠部26を通過して、軸受部24が軸部材32から外れる虞がある。
【0026】
しかし、
図5に示すように、仕切板30には、回転軸方向から見て、軸部材32の外側に、円弧状の内面を有する拘束部材34が形成されている。この拘束部材34は、軸部材32が挿入された穴部24Aを囲む周囲部24Bの円弧状の外面を囲むように配置されている。このように配置された拘束部材34により、軸受部24が軸部材32の回りを回転可能であるが、軸部材32から離間する方向への移動を拘束するようになっている。これにより、拘束部材34が周囲部24Bの外側を囲む範囲においては、軸受部24が軸部材32から外れる虞なく、確実に扉部材20を回転させることができる。周囲部24Bを囲む拘束部材34は、軸部材32の全周に存在することはなく、拘束部材34で周囲部24Bを囲んでいない回転領域も存在する。この点については、追って詳細に述べる。
【0027】
また、
図4に示すように、扉部材20の左右の端部には、レバー部28が延びており、レバー部28の先端部は、後述する野菜収納容器10に設けられたカム面12と接する摺動部28Aが形成されている。
【0028】
(扉部材の回転機構)
図6Aは、野菜収納容器10が収納位置にあり、扉部材20が閉鎖回転位置にあるところを模式的に示す側面断面図である。
図6Bは、
図6Aに示す状態から、野菜収納容器10が前側に引き出されて、扉部材20が解放方向に回転移動した状態を模式的に示す側面断面図である。
図6Cは、
図6Bに示す状態から、更に野菜収納容器10が前側に引き出されて、扉部材20が更に解放方向に回転移動した状態を模式的に示す側面断面図である。
【0029】
図6A~6C、後述する
図7、
図8A及び
図8Bの何れの図においても、野菜収納容器10の内側から野菜収納容器10の左側の側面を見た側面断面図であり、透光性を有する野菜収納容器10の側面から、カム面12、レバー部28及び摺動部28Aが透けて見えているところを示す。また、各図の(b)は、(a)に示す軸受部24回りを拡大して示している。
【0030】
野菜収納容器10の両側板の外面に設けられたカム面12は、後方に進むにつれて高さが高くなるように形成された曲面部12Aと、概ね水平な平面部12Bとを有する。
図6Aに示すような、野菜収納容器10が収納位置にある状態では、扉部材20が概ね最下点の回転位置にある。このとき、扉本体22の下部22Aが、野菜収納容器10の前面の上部10Aに近接して配置されている。これにより、野菜収納容器10の前面の上側の空間Sを閉鎖することができる。扉本体22の下部22Aが、野菜収納容器10の前面の上部10Aに近接している場合だけでなく、扉本体22の下部22Aが、野菜収納容器10の前面の上部10Aに接している場合もあり得る。このとき、扉部材20の摺動部28Aは、カム面12の曲面部12Aの下側の領域に接している。
【0031】
この状態から、野菜収納容器10を前側に引き出すと、摺動部28Aがカム面12に沿って上側に摺動し、これにより扉部材20が手前側に回転する。つまり、扉部材20の下部22Aが、上方かつ前方へ移動するように回転する。これにより、野菜収納容器10の前面の上方の空間Sが更に開放されるようになる。このような扉部材20の回転方向を開放方向と称する。また、その逆の回転方向を閉鎖方向と称する。
【0032】
図6Bでは、摺動部28Aが、カム面12の曲面部12Aの上側の領域に接している状態を示し、
図6Cでは、摺動部28Aが、カム面12の平面部12Bに接している状態を示す。摺動部28Aがカム面12の曲面部12Aに接している場合には、野菜収納容器10を前側に引き出すにつれて、扉部材20が開放方向に回転する。一方、摺動部28Aが、カム面12の平面部に達した以降では、野菜収納容器10を更に前側に引き出しても、扉部材20はそれ以上回転せず、その回転位置を維持するようになっている。
【0033】
図6A~
図6Cに示す何れの状態においても、(b)に示すように、切欠部26以外の周囲部24Bの外面の少なくとも一部が、拘束部材34の内面に囲まれている。特に、切欠部26の180度反対側の領域の外面の少なくとも一部が、拘束部材34の内面に囲まれている。よって、拘束部材34により、軸受部24が、切欠部26と反対側の軸部材32から離間する方向へ移動するのが拘束されている。これにより、軸受部24が軸部材32から外れる虞なく、確実に扉部材20を回転させることができる。
【0034】
このようにして、野菜収納容器10を引き出すだけで、扉部材20を閉鎖回転位置から開放方向に回転移動させることができる。逆に、前側に引き出された野菜収納容器10を後方の収納位置まで押し込むと、扉部材20にかかる重力により、摺動部28Aがカム面12の上を摺動して、扉部材20が閉鎖方向に回転する。野菜収納容器10が後方の収納位置に戻ると、扉部材20は元の閉鎖回転位置に戻り、扉部材20により、野菜収納容器10の前面の上側の空間Sを閉鎖することができる。
【0035】
<回転防止機構>
図7は、扉部材20が上側の部材と干渉して、更に解放方向に回転移動するのが拘束されるところを模式的に示す側面図である。
図7では、扉部材20の摺動部28Aが、野菜収納容器10のカム面12の平面部12Bに接している回転位置よりも、更に開放方向に回転移動させようとしたところを示す。この場合、仕切板30を介して、野菜収納容器10の上側に配置されたチルド容器6及び給水タンク8の下部に扉部材20の扉本体22が当たって、それ以上、開放方向に回転できなくなっている。この回転位置においても、拘束部材34により、軸受部24が切欠部26と反対側の軸部材32から離間する方向へ移動するのが拘束されている。このように、閉鎖回転位置から所定の回転角度以内の回転移動では、拘束部材34により軸受部24が軸部材32から離間する方向へ移動するのが拘束される。このような所定の回転角度として、70~80度以上取るのが好ましい。
【0036】
<着脱回転位置>
図8Aは、扉部材20が閉鎖回転位置から所定の回転角度より大きく回転移動して、着脱回転位置に達したところを模式的に示す側面図である。
図8Bは、着脱回転位置において、扉部材20が軸部材32から取り外されたところを模式的に示す側面図である。
野菜収納容器10の上側に配置されたチルド容器6及び給水タンク8は、庫外へ取り外すことができる。チルド容器6及び給水タンク8を取り外すと、扉部材20を、所定の回転角度より更に解放回転方向に回転移動することができる。
【0037】
図8Aに示すように、扉部材20が着脱回転位置まで回転移動すると、周囲部24Bの切欠部26の180度反対側の領域の外面が、拘束部材34の内面に囲まれていない。よって、
図8Aの矢印に示すように、拘束部材34に拘束されることなく、軸部材32が切欠部26の中を通過するように、軸受部24を引き抜くことができる。冷蔵庫2の前側に略水平に扉部材20を引き抜くので、冷蔵庫2の他の部材と干渉することなく、容易に扉部材20を取り外すことができる。引き抜いた状態を、
図8Bに示す。これにより、扉部材20だけを取り外して、容易に洗浄することができる。また、洗浄後は、扉部材20を引き抜いた手順と逆の手順で、扉部材20の軸受部24を軸部材32に装着することができる。
【0038】
(全般的記載)
上記の実施形態では、収納領域が、野菜収納容器10内に設けられているが、これに限られるものではない。庫内4に配置されたその他の任意の容器内に収納領域を設けることができる。また、収納領域が容器内ではなく、直接、内箱内に設けられ、扉部材20がその前面を開閉する扉である場合もあり得る。
【0039】
上記の実施形態では、野菜収納容器10の前面の上側の空間を扉部材20で開閉するが、これに限られるものでない。例えば、野菜収納容器10の前面が全て開口されており、扉部材20で前面全体を開閉する場合や、前面のその他の領域に設けられた空間を開閉する場合もあり得る。これに伴い、扉部材20の回転軸は、略左右方向に限られるものではなく、上下方向や斜めの方向の場合もあり得る。
【0040】
上記の実施形態では、野菜収納容器10を引き出したとき、カム機構で扉部材20が開放方向に移動するようになっているが、これに限られるものではない。カム機構を有さず、扉部材20の下部が、野菜収納容器10の側壁の上面に接しながら、野菜収納容器10が引き出される場合もあり得る。
【0041】
以上のように、本発明に係る冷蔵庫2は、庫内4の収納領域の前面の少なくとも一部を開閉する扉部材20と、扉部材20の回転軸となる軸部材32と、扉部材20に形成され、軸部材32が挿入される穴部24Aを囲む周囲部24Bを有する軸受部24と、周囲部24Bの一部に設けられた、軸部材32が通過可能な大きさの切欠部26と、周囲部24Bの外面を囲み、軸受部24が軸部材32の回り回転可能であるが、軸部材32から離間する方向への移動を拘束する拘束部材34とを備える。
【0042】
この場合、扉部材20が収納領域の前面の少なくとも一部を閉鎖する閉鎖回転位置から、収納領域の前面を開放する開放方向に回転移動するとき、
図6A~
図6C、
図7に示すように、所定の回転角度以内の回転移動では、拘束部材34により軸受部24が軸部材32から離間する方向へ移動するのが拘束される。一方、
図8A、
図8Bに示すように、扉部材20が所定の回転角度より大きく回転移動したときには、拘束部材34に拘束されることなく、軸部材32が切欠部26を通過するように扉部材20を引き抜いて、扉部材20を軸部材32から取り外すことができ、取り外した扉部材20を再び軸部材32に取り付けることができる。これにより、扉部材20を洗浄して、容易に元に戻すことができる。
【0043】
以上のように、切欠部26及び拘束部材34により、特別な部材を付加することなく、扉部材20を撓ませることもなく容易に着脱することができる。よって、シンプルな構造でありながら、収納領域の前面を開閉する扉部材20を容易に着脱できる冷蔵庫2を提供することができる。
【0044】
特に、上記の実施形態のように、収納領域が前後に移動可能な引出式の容器10内に設けられている場合には、閉鎖回転位置において、扉部材20の下部22Aが収納位置にある容器10の前面の上部10Aと近接または接触している。また、開放方向が、扉部材20の下部が上方かつ前側へ移動するように回転する方向になっている。これを実現するため、扉部材20の回転軸が略左右方向に延び、軸部材32及び拘束部材34が冷蔵庫本体側(例えば、仕切板30)に固定されている。
【0045】
これにより、引出式の容器10が収納位置にあるときは、扉部材20により容器10の前面の上側の空間を閉鎖することができ、容器10を手前に引き出す場合には、扉部材20が開放方向に回転できるので、扉部材20と干渉することなく、容易に容器10を引き出すことができる。
【0046】
更に、
図6A~
図6Cに示すように、容器10にカム面12が設けられ、扉部材20にカム面12と接する摺動部28Aが設けられている場合には、容器10が収納位置から前方へ引き出されるとき、摺動部28Aがカム面12の上を摺動して、扉部材20が開放方向に回転移動する。
【0047】
このように、カム面12及び摺動部28Aにより、容器10を収納位置から前方へ引き出すと、扉部20材が開放方向に回転移動するようになっている。これにより、使用者は容器10を引き出すだけで、扉部材20が回転して容器10が開放されるので、容易に収納物の出し入れを行うことができる。
【0048】
更に、
図6A~
図6Cに示すように、摺動部28Aがカム面12の上を摺動するとき、扉部材20が、閉鎖回転位置から所定の回転角度の範囲内で回転移動する。よって、容器10を前方へ引き出して、扉部材20を開放方向に回転移動させるとき、扉部材20が軸部材32から外れる虞がないので、確実に扉部材20を開閉させて、容器10の中の収納物の出し入れを行うことができる。
【0049】
また、
図7に示すように、容器10の上方に配置された取り外し可能な部材(例えば、チルド容器6,給水タンク8)との干渉により、扉部材20が閉鎖回転位置から所定の回転角度より大きく回転移動することがないようになっている。つまり、容器10にカム面12が設けられ、扉部材20にカム面12と接する摺動部28Aが設けられ、容器10が収納位置から前方へ引き出されるとき、摺動部28Aがカム面12の上を摺動して、閉鎖回転位置から所定の回転角度の範囲内で扉部材20が開放方向に回転移動する。
【0050】
これにより、容器10の上方に配置された部材(例えば、チルド容器6,給水タンク8)により、扉部材20が着脱可能位置まで回転移動することがないので、通常の使用時において、確実に扉部材20を開閉させて、容器10の中の収納物の出し入れを行うことができる。更に、容器10の上方に配置された部材(例えば、チルド容器6,給水タンク8)を一時的に取り外すことにより、扉部材20を着脱位置まで回転移動させて、容易に扉部材20を着脱することができる。
【0051】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
2 冷蔵庫
4 庫内
6 チルド容器
8 給水タンク
10 野菜収納容器
10A 上部
12 カム面
12A 曲面部
12B 平面部
20 扉部材
22 扉本体
22A 下部
24 軸受部
24A 穴部
24B 周囲部
26 切欠部
28 レバー部
28A 摺動部
30 仕切板
32 軸部材
34 拘束部材
S 空間