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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148905
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20220929BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K3/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050767
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 景介
(72)【発明者】
【氏名】杉山 智也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宗裕
(72)【発明者】
【氏名】野沢 宜史
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】山岸 義忠
(72)【発明者】
【氏名】北川 勝秀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 創
(72)【発明者】
【氏名】武田 健
【テーマコード(参考)】
5H603
5H604
【Fターム(参考)】
5H603AA03
5H603AA09
5H603BB05
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CB04
5H603CB12
5H603CB18
5H603CB19
5H603CB21
5H603CC03
5H603CC17
5H603CD22
5H603EE10
5H603FA16
5H603FA21
5H604AA05
5H604AA08
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DA14
5H604DB02
5H604PB04
5H604PE06
5H604QB03
5H604QB14
5H604QB15
(57)【要約】
【課題】樹脂部内の薄い樹脂の層が破損することに起因して樹脂部の絶縁性が低下するのを防止することが可能なステータを提供する。
【解決手段】このステータ100は、リード線部23の端部側部分23aと接合する接合部分31と、端部側部分23aとの間に隙間C1が設けられる対向部分32とを含む動力線部30と、リード線部23および動力線部30を覆う浸漬樹脂部40(樹脂部)と、を備える。リード線部23および動力線部30は、それぞれ、浸漬樹脂部40から引き出されるリード線引出部23dおよび動力線引出部33を含む。対向部分32と動力線引出部33との間の動力線部30の部分は、リード線引出部23dおよび動力線引出部33を、径方向における隙間C1の幅W1の最大値よりも大きい距離(L1、L2)だけ離間した状態で浸漬樹脂部40から引き出すためのオフセット部34(引出部離間部)を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットを含むステータコアと、
前記スロットに収容されるスロット収容部と、前記ステータコアの軸方向における端面から突出するコイルエンド部と、外部からの電力が供給されるリード線部と、を含むコイルと、
前記リード線部の端部側部分と接合する接合部分と、前記接合部分と連続して配置され、前記端部側部分との間に隙間が設けられるように前記端部側部分と隣り合うように設けられる対向部分とを含み、前記外部からの電力を前記コイルに供給する動力線部と、
前記リード線部および前記動力線部を覆うように設けられる樹脂部と、を備え、
前記リード線部および前記動力線部は、それぞれ、前記樹脂部から引き出されるリード線引出部および動力線引出部を含み、
前記端部側部分と前記リード線引出部との間の前記リード線部の部分、および、前記対向部分と前記動力線引出部との間の前記動力線部の部分のうち少なくとも一方は、前記リード線引出部および前記動力線引出部を、前記端部側部分と前記対向部分とが対向する方向における前記隙間の幅の最大値よりも大きい距離だけ離間した状態で前記樹脂部から引き出すための引出部離間部を含む、ステータ。
【請求項2】
前記引出部離間部は、前記リード線部には設けられずに、前記動力線部において、前記対向部分および前記動力線引出部に接続されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記リード線部は、前記樹脂部内において前記軸方向に延びるように設けられており、
前記リード線部の前記端部側部分と前記動力線部の前記対向部分とは、径方向に対向するように設けられており、
前記引出部離間部は、前記対向部分から周方向に沿って延びるように設けられる第1部分と、前記第1部分の前記対向部分とは反対側の端部から前記軸方向に延びるとともに前記動力線引出部に接続される第2部分と、を有するオフセット部を含む、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記リード線引出部および前記動力線引出部は、前記オフセット部の前記第1部分により前記周方向の位置がずらされて配置されていることによって、前記周方向において、前記リード線部の前記周方向における幅以上の距離だけ離間している、請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記コイルは、互いに同相の複数の前記リード線部が周方向に隣り合って配置される同相リード線部が、複数の相ごとに設けられるように構成されており、
前記複数の相の各々に対応する前記動力線部は、対応する前記同相リード線部の前記複数のリード線部の各々の前記端部側部分と接合する複数の前記接合部分と、前記複数の接合部分の各々と連続して配置される複数の前記対向部分と、前記複数の対向部分と前記動力線引出部とを接続する前記引出部離間部と、を含み、
前記複数の相の各々において、前記同相リード線部、前記複数の接合部分、および、前記引出部離間部は、共通の前記樹脂部により一体的に覆われており、かつ、前記複数の相の各々に対応する前記共通の樹脂部は、前記ステータコアの径方向外側に突出するとともに互いに同心円周上に一体的に形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記引出部離間部は、前記軸方向から見て、周方向に延びるように配置されているとともに、前記対向部分から、前記動力線部の前記接合部分とは反対側の端部に配置される端子固定部に接近する方向に延びるように設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項7】
前記動力線引出部は、前記軸方向から見て、前記動力線部の前記接合部分とは反対側の端部に配置される端子固定部に設けられ、外部端子が挿入される孔部の中心と、前記動力線引出部とを結ぶ線分に対して、直交するように設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
前記動力線部は、前記接合部分の位置が前記対向部分の位置に対して前記リード線部側にずらされるように形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルのリード線部と接合される動力線部を備えたステータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステータコアと、ステータコアの軸方向端面から突出するコイルエンド部を有する3相コイルと、を備える回転電機ステータが開示されている。また、回転電機ステータは、3相コイルの3つの入力端子部に接合部を介してそれぞれ接続(接合)される動力線と、コイルエンド部と接合部とを一体に固定する樹脂モールドと、を備える。互いに接合される入力端子部と動力線とは、樹脂モールドの内部において径方向に対向して互いに隣り合った(隣接した)状態で配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-68494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の回転電機ステータでは、互いに接合される入力端子部と動力線とが、樹脂モールドの内部において径方向に対向して互いに隣り合った状態で配置されていることによって、入力端子部と動力線との間に微小な隙間が形成される場合がある。この場合、上記微小な隙間には、厚みが小さい樹脂の層が形成される。この厚みが小さい(薄い)樹脂の層は、厚みが小さいことに起因して耐久性が低い。したがって、回転電機の動作中等に上記樹脂の層に応力(ストレス)が加わった場合に、上記樹脂の層が破損するという不都合がある。この場合、樹脂の層が破損することに起因して、樹脂モールド(樹脂部)の絶縁性が低下するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、樹脂部内の薄い樹脂の層が破損することに起因して樹脂部の絶縁性が低下するのを防止することが可能なステータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータは、スロットを含むステータコアと、スロットに収容されるスロット収容部と、ステータコアの軸方向における端面から突出するコイルエンド部と、外部からの電力が供給されるリード線部と、を含むコイルと、リード線部の端部側部分と接合する接合部分と、接合部分と連続して配置され、端部側部分との間に隙間が設けられるように端部側部分と隣り合うように設けられる対向部分とを含み、外部からの電力をコイルに供給する動力線部と、リード線部および動力線部を覆うように設けられる樹脂部と、を備え、リード線部および動力線部は、それぞれ、樹脂部から引き出されるリード線引出部および動力線引出部を含み、端部側部分とリード線引出部との間のリード線部の部分、および、対向部分と動力線引出部との間の動力線部の部分のうち少なくとも一方は、リード線引出部および動力線引出部を、端部側部分と対向部分とが対向する方向における隙間の幅の最大値よりも大きい距離だけ離間した状態で樹脂部から引き出すための引出部離間部を含む。
【0008】
この発明の一の局面によるステータでは、上記のように、リード線引出部および動力線引出部が、引出部離間部により、端部側部分と対向部分との隙間の幅の最大値よりも大きい距離だけ離間した状態で樹脂部から引き出されている。これにより、端部側部分とリード線引出部との間のリード線部の部分と、対向部分と動力線引出部との間の動力線部の部分との間の離間距離を比較的大きくすることができる。その結果、樹脂部内において、端部側部分とリード線引出部との間のリード線部の部分と、対向部分と動力線引出部との間の動力線部の部分との間に薄い樹脂の層が形成されるのを防止することができる。これにより、樹脂部内において形成される薄い樹脂の層の量を低減することができる。その結果、薄い樹脂の層が応力(ストレス)により破損することに起因して樹脂部の絶縁性が低下するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂部内の薄い樹脂の層が破損することに起因して樹脂部の絶縁性が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による回転電機の構成を示す平面図である。
図2】一実施形態によるステータの構成を示す斜視図である。
図3】一実施形態によるステータの浸漬樹脂部の内部の構成を示す正面図である。
図4】一実施形態による浸漬樹脂部をZ2方向側から見た平面図である。
図5】一実施形態による浸漬樹脂部内のリード線部および動力線部を径方向外側から見た正面図である。
図6図5の200-200線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
[本実施形態]
図1図6を参照して、本実施形態によるステータ100の構造について説明する。なお、以下の説明では、ステータ100が備えるステータコア10(図1参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、軸方向(Z方向)の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、径方向(R方向)の内側および外側を、それぞれ、R1側およびR2側とする。
【0013】
図1に示すように、ステータ100は、ロータ110と共に、回転電機120の一部を構成する。回転電機120は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。ロータ110は、ステータ100のR1側において、ステータ100とR方向に対向するように配置されている。すなわち、ステータ100は、インナーロータ型の回転電機120の一部として構成されている。なお、図1では、簡略化のため、後述する動力線部30(図2参照)および浸漬樹脂部40(図2参照)の図示を省略している。
【0014】
ステータ100は、ステータコア10を備える。ステータコア10は、Z方向に沿った中心軸線A(ロータ110の回転軸線)を中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からR1側に突出する複数のティース12と、C方向に隣接するティース12同士の間に形成される複数のスロット13と、を含む。スロット13は、Z方向に延びるように形成されている。スロット13は、Z1側およびZ2側それぞれに開口している。また、スロット13は、Z方向から見て、R1側に開口している。
【0015】
ステータ100は、コイル20を備える。コイル20は、ステータコア10に配置されている。コイル20は、3相(U相、V相およびW相)に対応するように設けられている。コイル20は、複数のセグメント導体が電気的に接続されることにより構成されている。コイル20は、略矩形形状の横断面を有する平角導線(平角導体)である。コイル20は、銅またはアルミニウムにより構成されている。
【0016】
図3に示すように、コイル20は、スロット収容部21(図2参照)と、コイルエンド部22(図2参照)と、リード線部23と、を含む。スロット収容部21は、スロット13内に収容されている。コイルエンド部22は、スロット収容部21と接続されるとともに、ステータコア10のZ方向における端面10aからスロット13の外に突出している。リード線部23は、後述するように、ステータ100の外部からの電力が供給されるように構成されている。リード線部23の端部側部分23a(図6参照)は、コイルエンド部22に対してR2側に設けられている。
【0017】
図4に示すように、コイル20は、複数相(本実施形態では3相)のリード線部23を含む。コイル20は、互いに同相の複数(本実施形態では2つ)のリード線部23が周方向に隣り合って配置される同相リード線部230(図3参照)を含む。同相リード線部230は、複数の相ごとに設けられている。具体的には、それぞれ、U相、V相、およびW相のリード線部23が、それぞれ2つずつ設けられている。
【0018】
また、リード線部23は、コイルエンド部22側(R1側)から径方向外側に延びる径方向部分23b(図6参照)と、径方向部分23bの径方向外側の端部から軸方向(Z1側)に延びる軸方向部分23c(図6参照)とを含む。すなわち、リード線部23はL字状に形成されている。なお、リード線部23は、L字形状以外の形状を有していてもよい。また、リード線部23の端部側部分23aは、リード線部23の軸方向部分23cのZ1側の一部である。なお、端部側部分23aは、図示しない絶縁被膜が剥離された裸導線の部分である。また、軸方向部分23cは、図示しない絶縁被膜により被覆されている。
【0019】
図3および図4に示すように、ステータ100は、外部からの電力をコイル20に供給する動力線部30を備える。動力線部30は、3相のリード線部23の各々に対応するように設けられている。すなわち、動力線部30は、3つ設けられている。なお、外部からの電力とは、たとえば、インバータから供給される電力である。また、動力線部30は、たとえば、バスバー等である。
【0020】
ここで、本実施形態では、リード線部23および動力線部30の各々は、平角導体により形成されている。すなわち、リード線部23および動力線部30の各々の横断面は、矩形形状を有している。また、後述するリード線部23の周方向の幅W2(図5参照)は、後述する動力線部30の接合部分31および対向部分32の周方向の幅W3(図5参照)と略等しい。
【0021】
また、ステータ100は、リード線部23および動力線部30を覆うように設けられる浸漬樹脂部40を備える。浸漬樹脂部40は、ステータコア10の端面10aからコイルエンド部22側(Z1方向側)に設けられるリード線部23および動力線部30が樹脂材(液体状の樹脂材料)に浸漬されることにより形成されている。詳細には、浸漬樹脂部40は、リード線部23および動力線部30が樹脂材に浸漬された状態で、樹脂材を熱硬化させることによって形成されている。なお、浸漬樹脂部40は、円環状のステータコア10の端面10aをZ1側から覆うように円環状(図2参照)に設けられている。また、浸漬樹脂部40は、特許請求の範囲の「樹脂部」の一例である。
【0022】
図5に示すように、浸漬樹脂部40は、リード線部23のうち軸方向部分23cと、動力線部30のうち、後述する接合部分31、対向部分32およびオフセット部34を覆うように設けられている。
【0023】
また、動力線部30は、リード線部23の端部側部分23aと接合する接合部分31を含む。また、動力線部30は、接合部分31と連続して配置される対向部分32を含む。対向部分32は、接合部分31のZ2側において接合部分31と連続して設けられている。また、対向部分32は、リード線部23の端部側部分23aとの間に隙間C1(図6参照)が設けられるように端部側部分23aと隣り合うように設けられている。すなわち、リード線部23の端部側部分23aのうちのZ1側の一部が動力線部30の接合部分31と接合されており、端部側部分23aのうちのZ2側の残りの一部が動力線部30の対向部分32と径方向に対向するように設けられている。
【0024】
ここで、図6に示すように、動力線部30は、接合部分31の位置が対向部分32の位置に対してリード線部23側(R1側)にずらされるように形成されている。具体的には、接合部分31と対向部分32との間には、対向部分32をR2側(リード線部23と離間する方向側)にシフトさせるシフト部32aが設けられている。これにより、対向部分32とリード線部23との間には、後述する隙間C1が形成されている。なお、図6では、裸導体である端部側部分23aと絶縁被膜により被覆されている軸方向部分23cとの間の境界が破線で示されている。
【0025】
また、図5に示すように、リード線部23は、浸漬樹脂部40から引き出されるリード線引出部23dを含む。また、動力線部30は、浸漬樹脂部40から引き出される動力線引出部33を含む。具体的には、リード線引出部23dおよび動力線引出部33の各々は、ステータコア10の端面10a側に設けられる樹脂側端面41から引き出されている。樹脂側端面41は、浸漬樹脂部40の突出樹脂部40b(図2参照)に設けられる、ステータコア10の端面10a側の面である。樹脂側端面41は、軸方向に直交するように延びる面である。なお、リード線引出部23dは、浸漬樹脂部40から引き出されているリード線部23の部分のうち、樹脂側端面41の近傍の部分を意味する。また、動力線引出部33は、浸漬樹脂部40から引き出されている動力線部30の部分のうち、樹脂側端面41の近傍の部分を意味する。
【0026】
図4に示すように、樹脂側端面41は、ステータコア10の端面10a(図3参照)から径方向外側に突出するように設けられている。また、3相のリード線部23の各々に対応する動力線部30の動力線引出部33同士は、径方向において略同じ位置に設けられている。言い換えると、3つの動力線引出部33の各々と中心軸線A(図1参照)との間の径方向における距離(符号付さず)は、互いに略等しい。
【0027】
なお、3相の動力線部30に設けられる後述するオフセット部34(図3参照)同士も、動力線引出部33と同様に、径方向において略同じ位置に設けられている。
【0028】
ここで、本実施形態では、図5に示すように、対向部分32と動力線引出部33との間の動力線部30の部分は、リード線引出部23dおよび動力線引出部33を、端部側部分23aと対向部分32とが対向する方向(本実施形態では径方向)における隙間C1の幅W1(図6参照)の最大値よりも大きい距離(L1、L2)(図4参照)だけ離間した状態で浸漬樹脂部40から引き出すためのオフセット部34を含む。なお、図4では、距離L1およびL2を概略的に図示している。距離(L1、L2)は、リード線引出部23dおよび動力線引出部33との間の最短距離を意味する。なお、オフセット部34は、特許請求の範囲の「引出部離間部」の一例である。
【0029】
言い換えると、リード線引出部23dおよび動力線引出部33は、オフセット部34により、径方向に対向せずにずらされた(オフセットされた)状態で、浸漬樹脂部40から引き出されている。また、距離(L1、L2)は、後述するリード線部23の周方向の幅W2(図5参照)以上の大きさである。
【0030】
複数の相の各々に対応する動力線部30は、対応する同相リード線部230の複数のリード線部23の各々の端部側部分23aと接合する複数の接合部分31と、複数の接合部分31の各々と連続して配置される複数の対向部分32と、複数の対向部分32と動力線引出部33とを接続するオフセット部34と、を含む。
【0031】
複数の相の各々において、同相リード線部230、複数の接合部分31、および、オフセット部34は、共通の浸漬樹脂部40により一体的に覆われており、かつ、複数の相の各々に対応する共通の浸漬樹脂部40は、ステータコア10の径方向外側に突出するとともに互いに同心円周上に一体的に形成されている。具体的には、複数の相の各々に設けられる、同相リード線部230、複数の接合部分31、および、オフセット部34は、浸漬樹脂部40のうちステータコア10の端面10a上に円環状に設けられる円環樹脂部40a(図2参照)の径方向外側に突出して設けられ、軸方向から見て円弧状に形成される単一の突出樹脂部40b(図2参照)に覆われている。突出樹脂部40bは、円環樹脂部40aと一体的に形成されている。なお、円環樹脂部40aは、端面10a上のコイルエンド部22を覆うように設けられている。
【0032】
また、オフセット部34は、動力線部30において、対向部分32および動力線引出部33に接続されている。具体的には、オフセット部34の後述する第1部分34aは、対向部分32に接続されている。また、オフセット部34の後述する第2部分34bは、動力線引出部33に接続されている。また、第1部分34aと第2部分34bとは、互いに接続されている。なお、リード線部23には、オフセット部34のような機能を有する部分は設けられていない。具体的には、リード線部23は、浸漬樹脂部40内において軸方向に沿って直線状に形成されている。
【0033】
図4および図5に示すように、オフセット部34は、軸方向から見て、周方向に延びるように配置されているとともに、対向部分32(図5参照)から、動力線部30の接合部分31(図5参照)とは反対側の端部に配置される端子固定部30a(図4参照)に接近する方向に延びるように設けられている。なお、図4では、簡略化のために、一の相のオフセット部34のみを破線で示しているが、他の相においても同様である。
【0034】
また、図4に示すように、動力線引出部33は、軸方向から見て、端子固定部30aに設けられ、外部端子が挿入される孔部30bの中心Oと、動力線引出部33とを結ぶ線分αに対して、直交するように設けられている。すなわち、動力線引出部33は、線分αに対して角度θだけ傾斜して延びるように設けられている。角度θは、90度である。なお、図4では、簡略化のために、一の相についてのみ角度θが90度となる例を図示しているが、他の相においても同様に構成されている。
【0035】
本実施形態では、オフセット部34は、対向部分32から周方向に沿って延びるように設けられる第1部分34aを有する。また、オフセット部34は、第1部分34aの対向部分32とは反対側の端部34cから軸方向(Z2側)に延びるとともに動力線引出部33に接続される第2部分34bを有する。具体的には、オフセット部34の第1部分34aは、径方向外側から見て、浸漬樹脂部40内のリード線部23(軸方向部分23c)と直交するように延びている。すなわち、オフセット部34は、周方向に延びる第1部分34aと、第1部分34aの端部34cから軸方向に延びる第2部分34bとにより構成されることによって、径方向外側から見て、L字形状を有している。なお、第1部分34aは、径方向外側から見て、浸漬樹脂部40内のリード線部23(軸方向部分23c)と直交せずに交差していてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、オフセット部34の第1部分34aは、軸方向に延びる対向部分32から周方向に湾曲されて設けられている。すなわち、動力線部30には、オフセット部34の第1部分34aと対向部分32とを接続するとともに、径方向外側から見て所定の曲率を有する円弧状に形成された接続部35が設けられている。
【0037】
また、複数のリード線部23のうち同相のリード線部23同士は、共通のオフセット部34の第1部分34aから分岐される複数の接合部分31のうちの1つと接合されている。具体的には、周方向に並んで配置される2つのリード線部23(端部側部分23a)と対向する対向部分32から延びる2つのオフセット部34(第1部分34a)は、互いに共通の方向側(図5では紙面右側)に延びるように設けられている。そして、上記の2つのオフセット部34の第1部分34aは、(紙面右側のリード線部23から右側において)一体的に設けられて共通の第2部分34bに接続されている。
【0038】
なお、オフセット部34の第1部分34aが対向部分32から延びる方向は、上記の構成に限られるものではない。図4に示すように、本実施形態のステータ100では、周方向に並ぶ3つの動力線部30のうちの1つだけ(図4では左端の動力線部30)が、他の2つの動力線部30と比べて、オフセット部34の第1部分34a(図5参照)が対向部分32(図5参照)から延びる方向が異なっている。具体的には、図4の左端の動力線部30の第1部分34aだけが対向部分32から紙面右側に延びるように設けられ、他の2つの動力線部30の第1部分34aは、対向部分32から紙面左側に延びるように設けられている。なお、3つの動力線部30の第1部分34aの各々が延びる方向は、上記の構成に限られるものではない。
【0039】
また、本実施形態では、図5に示すように、リード線引出部23dおよび動力線引出部33は、オフセット部34の第1部分34aにより周方向の位置がずらされて配置されていることによって、周方向において、リード線部23の周方向における幅W2以上の距離(L11、L12)だけ離間している。なお、距離L11は、2つのリード線引出部23dのうち動力線引出部33に近い側のリード線引出部23dと動力線引出部33との間の周方向における距離である。また、距離L12は、2つのリード線引出部23dのうち動力線引出部33に遠い側のリード線引出部23dと動力線引出部33との間の周方向における距離である。
【0040】
具体的には、隙間C1の幅W1(図6参照)の最大値は、たとえば0.5mm程度である。また、リード線部23の周方向における幅W2は、たとえば、2.5mm程度である。すなわち、リード線引出部23dおよび動力線引出部33が周方向において離間されている距離(L11、L12)は、隙間C1の幅W1の最大値の少なくとも5倍以上の大きさを有する。
【0041】
これにより、浸漬樹脂部40内において、オフセット部34の第2部分34bとリード線部23とが、周方向に沿って上記距離(L11、L12)だけ離間して配置される。すなわち、オフセット部34の第2部分34bとリード線部23との間の樹脂の層の周方向に沿った厚み(符号付さず)が、上記距離(L11、L12)に相当する大きさとなる。なお、リード線引出部23dおよび動力線引出部33が離間する距離(L1、L2)は、周方向の距離(L11、L12)に相関のある距離である。
【0042】
また、本実施形態では、浸漬樹脂部40のうちオフセット部34の第1部分34aと樹脂側端面41との間の部分42の軸方向における厚みtは、隙間C1の径方向における幅W1の最大値よりも大きい。すなわち、浸漬樹脂部40内のリード線部23のうち、動力線部30と径方向に隣り合わずに周方向にオフセットされている部分の軸方向の長さL3が、部分42の厚みtに相当するとともに、隙間C1の幅W1の最大値よりも大きい。
【0043】
また、上記の部分42の軸方向における厚みtは、隙間C1の径方向における幅W1の最大値よりも大きく、かつ、リード線部23の周方向における幅W2以上である。すなわち、部分42の厚みtも、リード線引出部23dと動力線引出部33とが周方向に離間する距離(L11、L12)と同様に、隙間C1の幅W1の最大値の少なくとも5倍以上の大きさを有する。
【0044】
[本実施形態の効果]
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0045】
本実施形態では、上記のように、端部側部分(23a)とリード線引出部(23d)との間のリード線部(23)の部分、および、対向部分(32)と動力線引出部(33)との間の動力線部(30)の部分のうち少なくとも一方は、リード線引出部(23d)および動力線引出部(33)を、端部側部分(23a)と対向部分(32)とが対向する方向における隙間(C1)の幅(W1)の最大値よりも大きい距離(L1、L2)だけ離間した状態で樹脂部(40)から引き出すための引出部離間部(34)を含む。これにより、端部側部分(23a)とリード線引出部(23d)との間のリード線部(23)の部分と、対向部分(32)と動力線引出部(33)との間の動力線部(30)の部分(オフセット部(34))との間の離間距離を比較的大きくすることができる。その結果、樹脂部(40)内において、端部側部分(23a)とリード線引出部(23d)との間のリード線部(23)の部分と、対向部分(32)と動力線引出部(33)との間の動力線部(30)の部分との間に薄い樹脂の層が形成されるのを防止することができる。これにより、樹脂部内において形成される薄い樹脂の層の量を低減することができる。その結果、薄い樹脂の層が応力(ストレス)により破損することに起因して樹脂部(40)の絶縁性が低下するのを防止することができる。
【0046】
また、本実施形態では、上記のように、引出部離間部(34)は、動力線部(30)において、対向部分(32)および動力線引出部(33)に接続されている。これにより、動力線引出部(33)を、対向部分(32)から離間した位置に容易に配置することができる。
【0047】
また、本実施形態では、上記のように、引出部離間部(34)は、リード線部(23)には設けられずに、動力線部(30)に設けられている。これにより、引出部離間部(34)が、リード線部(23)および動力線部(30)の両方に設けられている場合に比べて、ステータ(100)の構成を簡略化することができる。また、リード線部(23)および動力線部(30)の両方に引出部離間部(34)を形成する必要がないので、ステータ(100)の製造工程を簡略化することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、リード線部(23)は、樹脂部(40)内において軸方向に延びるように設けられている。また、リード線部(23)の端部側部分(23a)と動力線部(30)の対向部分(32)とは、径方向に対向するように設けられている。また、引出部離間部(34)は、対向部分(32)から周方向に沿って延びるように設けられる第1部分(34a)と、第1部分(34a)の対向部分(32)とは反対側の端部(34c)から軸方向に延びるとともに動力線引出部(33)に接続される第2部分(34b)と、を有するオフセット部(34)を含む。これにより、オフセット部(34)に第1部分(34a)が設けられていることにより、リード線引出部(23d)と動力線引出部(33)とを、周方向にずらして(オフセットさせて)配置することができる。その結果、リード線部(23)と動力線部(30)(オフセット部(34)の第2部分(34b))との間の樹脂の層の周方向における厚みを、周方向におけるずらし量に対応した大きさ分だけ、容易に大きくすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、リード線引出部(23d)および動力線引出部(33)は、オフセット部(34)の第1部分(34a)により周方向の位置がずらされて配置されていることによって、周方向において、リード線部(23)の周方向における幅(W2)以上の距離(L11、L12)だけ離間している。これにより、リード線引出部(23d)および動力線引出部(33)が、リード線部(23)の周方向における幅(W2)よりも小さい距離だけ離間している場合に比べて、リード線部(23)と動力線部(30)(オフセット部(34)の第2部分(34b))との間の樹脂の層の周方向における厚みをより大きくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、リード線引出部(23d)および動力線引出部(33)の各々は、ステータコア(10)の端面(10a)側に設けられる樹脂側端面(41)から引き出されている。また、樹脂部(40)のうちオフセット部(34)の第1部分(34a)と樹脂側端面(41)との間の部分(42)の軸方向における厚み(t)は、隙間(C1)の径方向における幅(W1)の最大値よりも大きい。これにより、樹脂部(40)のうちオフセット部(34)の第1部分(34a)と樹脂側端面(41)との間の部分(42)の厚み(t)が、隙間(C1)の径方向における幅(W1)の最大値以下の場合に比べて、部分(42)の機械的強度を向上させることができる。その結果、上記部分(42)が応力(ストレス)により破損するのを防止することができるので、樹脂部(40)の絶縁性が低下するのを防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、樹脂部(40)のうちオフセット部(34)の第1部分(34a)と樹脂側端面(41)との間の部分(42)の軸方向における厚み(t)は、隙間(C1)の径方向における幅(W1)の最大値よりも大きく、かつ、リード線部(23)の周方向における幅(W2)以上である。これにより、上記部分(42)の厚み(t)がリード線部(23)の周方向における幅(W2)よりも小さい場合に比べて、上記部分(42)が応力(ストレス)により破損するのをより確実に防止することができる。その結果、樹脂部(40)の絶縁性が低下するのをより確実に防止することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、オフセット部(34)の第1部分(34a)は、軸方向に延びる対向部分(32)から周方向に湾曲されて設けられている。これにより、第1部分(34a)が対向部分(32)から直角に曲げられて形成されている場合に比べて、対向部分(32)と第1部分(34a)との接続部分に応力が集中して破損するのを防止することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、コイル(20)は、複数相のリード線部(23)を含む。また、リード線部(23)は、各相ごとに複数設けられている。また、複数のリード線部(23)のうち同相のリード線部(23)同士は、共通のオフセット部(34)の第1部分(34a)から分岐される複数の接合部分(31)のうちの1つと接合されている。これにより、互いに同相の複数のリード線部(23)の各々に接合される接合部分(31)が、互いに別個のオフセット部(34)から延びるように設けられている場合に比べて、オフセット部(34)の個数を低減することができる。その結果、動力線部(30)の構成を簡略化することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、リード線部(23)および動力線部(30)の各々は、平角導体により形成されている。ここで、リード線部(23)および動力線部(30)の両方が平角導体である場合、リード線部(23)および動力線部(30)の少なくとも一方が丸型導体(横断面が円形形状の導体)である場合に比べて、リード線部(23)の端部側部分(23a)と動力線部(30)の対向部分(32)との間の隙間(C1)の幅(W1)が狭い部分が比較的多い。したがって、端部側部分(23a)とリード線引出部(23d)との間のリード線部(23)の部分、および、対向部分(32)と動力線引出部(33)との間の動力線部(30)の部分のうち少なくとも一方が引出部離間部(34)を含むことによって樹脂の薄い層が形成されるのを防止することは、隙間(C1)の幅(W1)が狭い部分が比較的多い上記平角導体を用いる構成において、特に有効である。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、樹脂部(40)は、ステータコア(10)の端面(10a)からコイルエンド部(22)側に設けられるリード線部(23)および動力線部(30)が樹脂材に浸漬されることにより形成された浸漬樹脂部(40)を含む。ここで、リード線部(23)および動力線部(30)が樹脂材に浸漬されることによって、リード線引出部(23d)および動力線引出部(33)は、浸漬樹脂部(40)の共通の面(樹脂側端面(41))から引き出されるように設けられる。この場合、浸漬樹脂部(40)内において、リード線部(23)と動力線部(30)とは比較的近接して配置され易い。したがって、端部側部分(23a)とリード線引出部(23d)との間のリード線部(23)の部分、および、対向部分(32)と動力線引出部(33)との間の動力線部(30)の部分のうち少なくとも一方が引出部離間部(34)を含むことによって樹脂の薄い層が形成されるのを防止することは、リード線部(23)と動力線部(30)とが比較的近接して配置され易い上記浸漬樹脂部(40)を用いる構成において、特に有効である。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、コイル(20)は、互いに同相の複数のリード線部(23)が周方向に隣り合って配置される同相リード線部(230)が、複数の相ごとに設けられるように構成されている。また、複数の相の各々に対応する動力線部(30)は、対応する同相リード線部(230)の複数のリード線部(23)の各々の端部側部分(23a)と接合する複数の接合部分(31)と、複数の接合部分(31)の各々と連続して配置される複数の対向部分(32)と、複数の対向部分(32)と動力線引出部(33)とを接続する引出部離間部(34)と、を含む。また、複数の相の各々において、同相リード線部(230)、複数の接合部分(31)、および、引出部離間部(34)は、共通の樹脂部(40)により一体的に覆われており、かつ、複数の相の各々に対応する共通の樹脂部(40)は、ステータコア(10)の径方向外側に突出するとともに互いに同心円周上に一体的に形成されている。このように構成すれば、同相リード線部(230)、複数の接合部分(31)、および、引出部離間部(34)が、共通の樹脂部(40)により一体的に覆われていることにより、同相リード線部(230)と接合部分(31)との接合箇所の耐震動性を向上させることができるとともに、引出部離間部(34)の耐振動性を向上させることができる。また、同相リード線部(230)の複数の端部側部分(23a)の絶縁性(モータケース等の導電部品に対する絶縁性)を向上させることができる。また、複数の相の各々に対応する共通の樹脂部(40)がステータコア(10)の径方向外側に突出するとともに互いに同心円周上に一体的に形成されていることによって、樹脂部(40)の機械的強度(剛性)を向上させることができるとともに、樹脂部(40)の熱によるストレスや組み立ての際のストレスに対する耐性を向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、引出部離間部(34)は、軸方向から見て、周方向に延びるように配置されているとともに、対向部分(32)から、動力線部(30)の接合部分(31)とは反対側の端部に配置される端子固定部(30a)に接近する方向に延びるように設けられている。このように構成すれば、動力線部(30)の長さを短くすることができるので、動力線部(30)の固有振動数を大きくすることができる。その結果、動力線部(30)の耐振動性を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、動力線引出部(33)は、軸方向から見て、動力線部(30)の接合部分(31)とは反対側の端部に配置される端子固定部(30a)に設けられ、外部端子が挿入される孔部(30b)の中心(O)と、動力線引出部(33)とを結ぶ線分(α)に対して、直交するように設けられている。このように構成すれば、動力線引出部(33)の角部に隣接する樹脂部(40)において応力が集中するのを防止する(応力を分散させる)ことができる。その結果、動力線引出部(33)の角部に隣接する樹脂部(40)が、組み立てストレス、振動ストレス、および熱による膨張(収縮)ストレス等に起因して割れるのを防止することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、動力線部(30)は、接合部分(31)の位置が対向部分(32)の位置に対してリード線部(23)側にずらされるように形成されている。このように構成すれば、リード線部(23)の端部側部分(23a)と軸方向部分(23c)との境界(裸導体部分と絶縁被膜による被覆部分との境界)に動力線部(30)が干渉するのを防止することができるので、動力線部(30)をリード線部(23)に容易に面接触させることができる。その結果、動力線部(30)の位置を安定的に固定することができる。
【0060】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記実施形態では、対向部分32と動力線引出部33との間の動力線部30の部分だけが、オフセット部34(引出部離間部)を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。端部側部分23aとリード線引出部23dとの間のリード線部23の部分が、オフセット部を含んでいてもよい。また、上記動力線部の部分および上記リード線部の部分の両方が、オフセット部を含んでいてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、リード線部23が浸漬樹脂部40(樹脂部)内に軸方向に延びるとともに、リード線部23の端部側部分23aと動力線部30の対向部分32とが径方向に対向する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、リード線部23が浸漬樹脂部40内において径方向に延びるように設けられており、リード線部23の端部側部分23aと動力線部30の対向部分32とが軸方向に対向するように設けられていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、オフセット部34(引出部離間部)の第1部分34aが、周方向に延びるように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1部分34aが、径方向に延びるように設けられていてもよい。この場合、リード線引出部23dと、動力線引出部33とは、径方向に離間した状態で、浸漬樹脂部40(樹脂部)から引き出される。
【0064】
また、上記実施形態では、リード線引出部23dおよび動力線引出部33は、リード線部23の周方向における幅W2以上の距離(L1、L2)だけ離間している例を示したが、本発明はこれに限られない。リード線引出部23dおよび動力線引出部33が離間する距離(L1、L2)は、リード線部23の端部側部分23aと動力線部30の対向部分32との間の隙間C1の幅W1の最大値よりも大きければ、リード線部23の周方向における幅W2よりも小さくてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、リード線引出部23dおよび動力線引出部33は、周方向において、リード線部23の周方向における幅W2以上の距離(L11、L12)だけ離間している例を示したが、本発明はこれに限られない。リード線引出部23dおよび動力線引出部33が周方向に離間する距離(L11、L12)は、周方向において、リード線部23の端部側部分23aと動力線部30の対向部分32との間の隙間C1の幅W1の最大値よりも大きければ、リード線部23の周方向における幅W2よりも小さくてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、オフセット部34の第1部分34aと樹脂側端面41との間の部分42の軸方向における厚みtが、リード線部23の周方向における幅W2以上である例を示したが、本発明はこれに限られない。部分42の軸方向における厚みtは、リード線部23の端部側部分23aと動力線部30の対向部分32との間の隙間C1の幅W1の最大値よりも大きければ、リード線部23の周方向における幅W2よりも小さくてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、リード線部23が各相ごとに2つ設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。リード線部23が、各相ごとに1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、リード線部23および動力線部30の各々が平角導体により形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。リード線部23および動力線部30の各々が、横断面が円形形状の丸型導体により形成されていてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、樹脂部が浸漬樹脂部を含む例を示したが、本発明はこれに限られない。樹脂部は、リード線部23および動力線部30を覆うように設けられる樹脂部であれば、リード線部23および動力線部30を樹脂材に浸漬する方法以外の方法(たとえば射出成型)により形成されてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、同相の2つのリード線部23の各々に対向する対向部分32から延びるオフセット部34(第1部分34a)は、それぞれの対向部分32から同じ方向側に延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。オフセット部34(第1部分34a)は、それぞれの対向部分32から反対方向に延びていてもよい。この場合、動力線引出部33(オフセット部34の第2部分34b)は、周方向において、2つのリード線部23の中央部に配置される。
【符号の説明】
【0071】
10 ステータコア
10a 端面
13 スロット
20 コイル
21 スロット収容部
22 コイルエンド部
23 リード線部
23a 端部側部分
23d リード線引出部
30 動力線部
30a 端子固定部
30b 孔部
31 接合部分
32 対向部分
33 動力線引出部
34 オフセット部(引出部離間部)
34a 第1部分
34b 第2部分
34c 端部
40 浸漬樹脂部(樹脂部)
100 ステータ
230 同相リード線部
C1 隙間
L1、L2 距離(リード線引出部と動力線引出部とが離間する距離)
L11、L12 距離(リード線引出部と動力線引出部とが周方向に離間する距離)
O 中心
α 線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6