(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148954
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】トラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造
(51)【国際特許分類】
B60G 9/04 20060101AFI20220929BHJP
B60G 11/10 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60G9/04
B60G11/10
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050845
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 伸夫
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301CA36
3D301DA04
3D301DA06
3D301DB10
3D301DB12
3D301DB20
3D301DB22
(57)【要約】
【課題】トラニオン式サスペンションの組立作業時間を短縮する。
【解決手段】トラニオン式サスペンションのトラニオンシャフト12は、トラニオンブラケット11から車幅方向外側へ突出し、スプリングシート13を支持する。トラニオンシャフト12のシャフト内周面23は、サイドプレート挿入開口から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状に形成される。サイドプレート15の突出部27の外周面27aは、プレート本体30側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状に形成される。サイドプレート15をトラニオンシャフト12に固定した状態では、サイドプレート15の突出部27の外周面27aは、ボルト16の締結力によって、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23に対して面接触した状態で圧接している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定されるトラニオンブラケットと、
前記トラニオンブラケットに支持されて、前記トラニオンブラケットから車幅方向外側へ突出するトラニオンシャフトと、
前記トラニオンシャフトの外周面に回転可能に支持され、リーフスプリングを支持するスプリング支持部材と、
前記トラニオンシャフトの車幅方向外端部に固定されて、前記トラニオンシャフトに対する前記スプリング支持部材の車幅方向外側への移動を規制するサイドプレートと、
前記サイドプレートを前記トラニオンシャフトへ固定するボルトと、を備え、
前記トラニオンシャフトは、前記トラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置されて車幅方向外側へ開口する円形状のサイドプレート挿入開口と、前記サイドプレート挿入開口側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状のシャフト内周面と、前記シャフト内周面によって区画されるサイドプレート挿入空間と、前記ボルトを車幅方向外側から締結固定可能な雌ねじ部とを有し、
前記サイドプレートは、前記トラニオンシャフトよりも大径に形成されるプレート本体と、前記プレート本体の車幅方向内側面から車幅方向内側へ突出して前記サイドプレート挿入開口から前記サイドプレート挿入空間へ挿入される突出部と、前記トラニオンシャフトの前記雌ねじ部と同軸に配置されて前記サイドプレートを車幅方向に貫通するボルト挿通孔とを有し、
前記サイドプレートの前記突出部は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状の外周面を有し、
前記サイドプレートは、前記ボルトを前記ボルト挿通孔に挿通させて前記トラニオンシャフトの前記雌ねじ部に締結固定することによって、前記トラニオンシャフトに対して固定されたプレート固定状態となり、
前記プレート固定状態では、前記サイドプレートの前記突出部のテーパ状の前記外周面は、前記ボルトの締結力によって、前記トラニオンシャフトのテーパ状の前記シャフト内周面に対して面接触した状態で圧接している
ことを特徴とするトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造であって、
前記トラニオンシャフトの前記雌ねじ部、前記サイドプレートの前記ボルト挿通孔、及び前記ボルトは、それぞれ1つ設けられ、
前記トラニオンシャフトは、前記サイドプレート挿入空間の車幅方向内側を区画する底面部を有し、
前記トラニオンシャフトの前記雌ねじ部は、前記底面部に形成されて前記トラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置される
ことを特徴とするトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トラニオン式サスペンションが記載されている。トラニオン式サスペンションは、サイドメンバに取り付けられるトラニオンブラケットと、トラニオンブラケットのベース部から車幅方向外側に突出するシャフト部に軸支されるスプリングシートと、スプリングシートに支えられるリーフスプリングとを備える。シャフト部の車幅方向外側面の外径側には、サイドプレートを固定するためのボルトが螺合される雌ネジ部が、円周方向に複数箇所、等間隔に設けられている。シャフト部における雌ネジ部よりも内径側には、車幅方向外側面に開口する凹部が設けられており、シャフト部は、少なくとも車幅方向外側面から所定の長さに亘って、中空円筒形状をなしている。サイドプレートは、シャフト部の車幅方向外側面と当接する車幅方向内側面を有する筒部と、筒部の車幅方向外側端から外径側へ延出するフランジ部とを有する。筒部には、サイドプレートをシャフト部に固定するボルトが挿通され、軸方向に貫通する挿通孔が、円周方向において複数箇所に、等間隔で設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の振動時等にリーフスプリングからスプリングシートに対して入力する荷重は、トラニオンブラケットのシャフト部(トラニオンシャフト)を軸としてスプリングシートを回転させる方向に作用するので、スプリングシートからサイドプレートに対して回転方向に力が作用する可能性がある。トラニオンシャフトに対してサイドプレートが回転すると、ボルトに対しても回転方向に力が作用してボルトが緩んでサイドプレートがトラニオンシャフトから外れてしまうおそれがある。このため、車両の振動時等にトラニオンシャフトに対するサイドプレートの回転を確実に防止するために、強い締め付けトルクでボルトを締め付ける必要があり、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して固定する作業に時間が掛かってしまい、これによりトラニオン式サスペンションの組立作業時間が長くなってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、トラニオン式サスペンションの組立作業時間を短縮することが可能なトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様のトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造は、トラニオンブラケットとトラニオンシャフトとスプリング支持部材とサイドプレートとボルトとを備える。トラニオンブラケットは、車体側に固定される。トラニオンシャフトは、トラニオンブラケットに支持されて、トラニオンブラケットから車幅方向外側へ突出する。スプリング支持部材は、トラニオンシャフトの外周面に回転可能に支持され、リーフスプリングを支持する。サイドプレートは、トラニオンシャフトの車幅方向外端部に固定されて、トラニオンシャフトに対するスプリング支持部材の車幅方向外側への移動を規制する。ボルトは、サイドプレートをトラニオンシャフトへ固定する。トラニオンシャフトは、トラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置されて車幅方向外側へ開口する円形状のサイドプレート挿入開口と、サイドプレート挿入開口側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状のシャフト内周面と、シャフト内周面によって区画されるサイドプレート挿入空間と、ボルトを車幅方向外側から締結固定可能な雌ねじ部とを有する。サイドプレートは、トラニオンシャフトよりも大径に形成されるプレート本体と、プレート本体の車幅方向内側面から車幅方向内側へ突出してサイドプレート挿入開口からサイドプレート挿入空間へ挿入される突出部と、トラニオンシャフトの雌ねじ部と同軸に配置されてサイドプレートを車幅方向に貫通するボルト挿通孔とを有する。サイドプレートの突出部は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状の外周面を有する。サイドプレートは、ボルトをボルト挿通孔に挿通させてトラニオンシャフトの雌ねじ部に締結固定することによって、トラニオンシャフトに対して固定されたプレート固定状態となる。プレート固定状態では、サイドプレートの突出部のテーパ状の外周面は、ボルトの締結力によって、トラニオンシャフトのテーパ状のシャフト内周面に対して面接触した状態で圧接している。
【0007】
上記構成では、トラニオンシャフトは、トラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置されて車幅方向外側へ開口する円形状のサイドプレート挿入開口と、サイドプレート挿入開口から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状のシャフト内周面と、シャフト内周面によって区画されるサイドプレート挿入空間とを有する。また、サイドプレートは、プレート本体の車幅方向内側面から車幅方向内側へ突出してサイドプレート挿入開口からサイドプレート挿入空間へ挿入される突出部を有し、突出部は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状の外周面を有する。そして、サイドプレートをトラニオンシャフトに対してボルトによって締結固定したプレート固定状態では、サイドプレートの突出部のテーパ状の外周面は、ボルトの締結力によって、トラニオンシャフトのテーパ状のシャフト内周面に対して面接触した状態で圧接している。このため、トラニオンシャフトに対するサイドプレートの回転を、サイドプレートの突出部の外周面とトラニオンシャフトのシャフト内周面との間の摩擦力によって抑えることができるので、サイドプレートの突出部の外周面とトラニオンシャフトのシャフト内周面とがボルトの締め付け方向と平行に(車幅方向に)延びている場合とは異なり、トラニオンシャフトに対するサイドプレートの回転を確実に防止するために必要なボルトの締め付けトルクを抑えることができる。このように、ボルトの締め付けトルクを抑えることができるので、その分だけ、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して固定する作業(ボルトの締め付け作業)の時間を短縮することができ、これにより、トラニオン式サスペンションの組立作業時間を短縮することができる。
【0008】
また、トラニオンシャフトは、円形状のサイドプレート挿入開口から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状のシャフト内周面を有し、サイドプレートの突出部は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状の外周面を有する。このように、トラニオンシャフトのシャフト内周面及びサイドプレートの突出部の外周面がテーパ状であるので、トラニオンシャフトのシャフト内周面及びサイドプレートの突出部の外周面が複雑な形状(例えば、相互間の回転方向への移動を規制するための係止部等を設けた形状)である場合とは異なり、トラニオンシャフトのサイドプレート挿入空間及びサイドプレートの突出部を容易に形成することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造であって、トラニオンシャフトの雌ねじ部、サイドプレートのボルト挿通孔、及びボルトは、それぞれ1つ設けられる。トラニオンシャフトは、サイドプレート挿入空間の車幅方向内側を区画する底面部を有する。トラニオンシャフトの雌ねじ部は、底面部に形成されてトラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置される。
【0010】
上記構成では、トラニオンシャフトの雌ねじ部は、底面部に形成されてトラニオンシャフトの中心軸と略同軸に配置され、トラニオンシャフトの雌ねじ部、サイドプレートのボルト挿通孔、及びボルトは、それぞれ1つ設けられる。このため、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して1本のボルトによって締結固定するので、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して複数のボルトによって締結固定する場合とは異なり、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して固定する作業(ボルトの締め付け作業)の時間を短縮することができ、これにより、トラニオン式サスペンションの組立作業時間を短縮することができる。
【0011】
また、トラニオンシャフトに対するサイドプレートの回転を、サイドプレートの突出部の外周面とトラニオンシャフトのシャフト内周面との間の摩擦力によって抑えることができるので、トラニオンシャフトの中心軸と略同軸に設けた1本のボルトによってサイドプレートをトラニオンシャフトに対して締結固定しても、トラニオンシャフトに対するサイドプレートの回転を確実に防止することができる。
【0012】
また、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して複数のボルトによって締結固定する場合とは異なり、部品点数を削減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、トラニオン式サスペンションの組立作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサイドプレート取付構造を適用するトラニオン式サスペンションの要部の側面図である。
【
図3】
図2のトラニオンシャフト、サイドプレート、及びボルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示し、一点鎖線CLはトラニオンシャフトの中心軸(軸心)を示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係るサイドプレート取付構造を適用するトラニオン式サスペンション10は、車体フレーム2を有する車両1のサスペンションに適用される。車体フレーム2は、車幅方向両側で前後方向に延びる左右のサイドメンバ3(
図1には、左側のサイドメンバ3が図示されている。)と、車幅方向に延びて左右のサイドメンバ3同士を連結する複数のクロスメンバ(図示省略)とを有する。なお、トラニオン式サスペンション10は、車両1の左右に対称的に設けられ、略同様の構成を有するため、以下では、左側について説明し、右側の説明を省略する。
【0017】
図1及び
図2に示すように、トラニオン式サスペンション10は、車体側のサイドメンバ3に固定されるトラニオンブラケット11と、トラニオンブラケット11から車幅方向外側へ突出するトラニオンシャフト12と、トラニオンシャフト12に支持されるスプリングシート(スプリング支持部材)13と、スプリングシート13に支持されるリーフスプリング14と、トラニオンシャフト12に固定されるサイドプレート15と、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に固定するボルト16と、を備える。
【0018】
トラニオンブラケット11は、車両1の側面視において、略逆三角形状に形成され、上部がサイドメンバ3に固定され、サイドメンバ3から下方へ延びる。トラニオンブラケット11の下端部11aの前後両側には、前後のトルクロッド4の後端部または前端部が接続される。トラニオンブラケット11のうち下端部11aよりも上方且つサイドメンバ3よりも下方の領域には、車幅方向に貫通するシャフト支持孔11bが形成される。
【0019】
図2及び
図3に示すように、トラニオンシャフト12は、車幅方向に延びる棒状の部材であって、トラニオンブラケット11に支持され、スプリングシート13を支持する。トラニオンシャフト12の車幅方向の中間部分には、トラニオンシャフト12の外周面17から径方向の外側へ突出する鍔状部18が形成される。トラニオンシャフト12のうち鍔状部18よりも車幅方向内側の領域19は、トラニオンブラケット11のシャフト支持孔11bに車幅方向外側から挿入されて、トラニオンブラケット11に支持される。鍔状部18の車幅方向内側面は、トラニオンブラケット11の車幅方向外側面に当接する。トラニオンシャフト12のうち鍔状部18よりも車幅方向外側の領域20は、トラニオンブラケット11から車幅方向外側へ突出する。なお、本実施形態では、トラニオンシャフト12をトラニオンブラケット11とは別体に成形し、トラニオンブラケット11に対して取り付けたが、トラニオンシャフト12をトラニオンブラケット11と一体成形(例えば鋳造により一体成形)してもよい。この場合、トラニオンブラケット11の車幅方向外側面から車幅方向外側へ突出する部分をトラニオンシャフトという。また、本実施形態では、車両1の左右の両側に設けられるトラニオンシャフト12としたが、トラニオンシャフトはこれに限定されるものではなく、左右のトラニオンシャフト12の車幅方向内側同士が連結されて車幅方向に長尺に延びる1本のトラニオンシャフトであってもよい。
【0020】
トラニオンシャフト12は、その車幅方向の外端面21に形成されるサイドプレート挿入開口22と、サイドプレート挿入開口22から車幅方向内側へ延びるシャフト内周面23と、シャフト内周面23によって径方向の外側が区画されるサイドプレート挿入空間24と、サイドプレート挿入空間24の車幅方向内側を区画する底面部25と、底面部25に形成される雌ねじ部26とを有する。
【0021】
サイドプレート挿入開口22は、サイドプレート15の後述する突出部27が挿入される開口であって、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸の円形状に形成される。サイドプレート挿入開口22の大きさは、サイドプレート15の後述する突出部27の挿入を許容する大きさに設定される。シャフト内周面23は、サイドプレート挿入開口22から車幅方向内側へ向かうほど先細りする(車幅方向と直交する断面が小径になる)テーパ状に形成される。トラニオンシャフト12のシャフト内周面23は、トラニオンシャフト12の中心軸CLの軸対称に形成される。サイドプレート挿入空間24は、サイドプレート15の後述する突出部27を挿入する空間であって、シャフト内周面23及び底面部25によって区画される。底面部25は、サイドプレート挿入空間24の車幅方向内側に位置する部分であって、その車幅方向外側面が円形状に形成されてサイドプレート挿入空間24の車幅方向内側を区画する。雌ねじ部26は、ボルト16が螺合される部分であって、底面部25の中心部に配置されて、底面部25の車幅方向外側面から車幅方向内側へ向かって形成される。雌ねじ部26は、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に配置される。
【0022】
スプリングシート13は、リーフスプリング14を支持するスプリング支持部材であって、略円筒状に形成され、その内径部分にトラニオンシャフト12の外側領域20を挿入する。スプリングシート13は、トラニオンシャフト12に回転可能に支持される。なお、
図2では、スプリングシート13の内周面とトラニオンシャフト12の外周面17との間に、ブッシュ28を配置している。
【0023】
リーフスプリング14は、前後方向に延びる長さの異なる複数枚の板ばねによって構成される。リーフスプリング14の下面の前後方向の略中央部分は、スプリングシート13の上面に載置される。リーフスプリング14は、Uボルト29等によってスプリングシート13に固定される。
【0024】
サイドプレート15は、トラニオンシャフト12に対する車幅方向外側へのスプリングシート13の移動を規制する部材であって、トラニオンシャフト12の車幅方向外端部に固定される。サイドプレート15は、円板状のプレート本体30と、プレート本体30から車幅方向内側へ突出する突出部27とを有する。プレート本体30は、トラニオンシャフト12の外径よりも大径に形成される。プレート本体30は、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に配置される。トラニオンシャフト12よりも径方向の外側のプレート本体30の外周縁部30aは、スプリングシート13の車幅方向外側面の車幅方向外側に位置する。突出部27は、プレート本体30の車幅方向内側面から車幅方向内側へ突出する部分であって、車幅方向と直交する断面が円形になるように形成され、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に配置される。突出部27の外周面27aは、プレート本体30側(車幅方向外側)から車幅方向内側へ向かうほど先細りする(車幅方向と直交する断面が小径になる)テーパ状(略円錐状)に形成される。突出部27の車幅方向内側には、車幅方向と直交する車幅方向内側面32が設けられる。突出部27の基端側(プレート本体30側)の車幅方向と直交する断面の径(
図3に二点鎖線33で示す位置の径)は、トラニオンシャフト12のサイドプレート挿入開口22の径よりも大径に形成される。トラニオンシャフト12の中心軸CLに沿った断面におけるトラニオンシャフト12の中心軸CLに対する突出部27の外周面27aの傾斜角度は、トラニオンシャフト12の中心軸CLに対するシャフト内周面23の傾斜角度と略同じに設定される。プレート本体30の車幅方向内側への突出部27の突出量(
図3に二点鎖線33で示す位置から突出部27の車幅方向内側面32までの車幅方向の長さ)は、トラニオンシャフト12の車幅方向の外端面21から底面部25までの車幅方向の距離よりも短く設定される。サイドプレート15には、車幅方向に貫通するボルト挿通孔31が形成される。サイドプレート15のボルト挿通孔31は、ボルト16の挿通を許容する大きさに形成され、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に配置される。すなわち、サイドプレート15のボルト挿通孔31は、プレート本体30の中心部及び突出部27の中心部を車幅方向に貫通する。サイドプレート15は、スプリングシート13を取り付けた状態のトラニオンシャフト12に対してボルト16によって固定される。
【0025】
サイドプレート15をトラニオンシャフト12に固定する際には、先ず、サイドプレート15の突出部27を、トラニオンシャフト12のサイドプレート挿入空間24にサイドプレート挿入開口22から挿入し、突出部27の外周面27aを、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23に当接させる。次に、ボルト16を、サイドプレート15のボルト挿通孔31に車幅方向外側から挿入し、トラニオンシャフト12の底面部25の雌ねじ部26に螺合して締め付ける。これにより、サイドプレート15がトラニオンシャフト12に固定されたプレート固定状態となる。プレート固定状態では、サイドプレート15の突出部27の外周面27aは、ボルト16の締結力によって、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23に対して面接触した状態で圧接している。
【0026】
上記構成では、プレート固定状態で、サイドプレート15の突出部27の外周面27aが、ボルト16の締結力によって、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23に対して面接触した状態で圧接している。このため、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を、サイドプレート15の突出部27の外周面27aとトラニオンシャフト12のシャフト内周面23との間の摩擦力によって抑えることができるので、サイドプレート15の突出部27の外周面27aとトラニオンシャフト12のシャフト内周面23とがトラニオンシャフト12の中心軸CLと平行(ボルト16の締め付け方向と平行)に延びている場合とは異なり、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を確実に防止するために必要なボルト16の締め付けトルクを抑えることができる。このように、ボルト16の締め付けトルクを抑えることができるので、その分だけ、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して固定する作業(ボルト16の締め付け作業)の時間を短縮することができ、これにより、トラニオン式サスペンション10の組立作業時間を短縮することができる。
【0027】
また、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して1本のボルト16によって締結固定するので、複数のボルト16によって締結固定する場合とは異なり、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して固定する作業(ボルト16の締め付け作業)の時間を短縮することができ、これにより、トラニオン式サスペンション10の組立作業時間を短縮することができる。
【0028】
従って、本実施形態によれば、トラニオン式サスペンション10の組立作業時間を短縮することができる。
【0029】
また、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を、サイドプレート15の突出部27の外周面27aとトラニオンシャフト12のシャフト内周面23との間の摩擦力によって抑えることができるので、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に設けた1本のボルト16によってサイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して締結固定しても、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を確実に防止することができる。
【0030】
また、1本のボルト16によってサイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して固定するので、サイドプレートをトラニオンシャフトに対して複数のボルトによって締結固定する場合とは異なり、部品点数を削減することができる。
【0031】
また、トラニオンシャフト12は、円形状のサイドプレート挿入開口22から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状のシャフト内周面23を有し、サイドプレート15の突出部27は、車幅方向外側から車幅方向内側へ向かうほど先細りするテーパ状の外周面27aを有する。このように、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23及びサイドプレート15の突出部27の外周面27aがテーパ状であるので、トラニオンシャフト12のシャフト内周面23及びサイドプレート15の突出部27の外周面27aが複雑な形状(例えば、相互間の回転方向への移動を規制するための係止部等を設けた形状)である場合とは異なり、トラニオンシャフト12のサイドプレート挿入空間24及びサイドプレート15の突出部27を容易に形成することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、トラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に設けたボルト16によってサイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して固定したが、ボルト16をトラニオンシャフト12の中心軸CLと同軸に設けなくてもよい。また、本実施形態では、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して1本のボルト16によって固定したが、これに限定されるものではなく、複数本のボルト16によって固定してもよい。この場合、トラニオンシャフト12に複数の雌ねじ部26を設け、サイドプレート15に複数のボルト挿通孔31を設ける。例えば、複数の雌ねじ部26を、トラニオンシャフト12の車幅方向の外端面21のうちサイドプレート挿入開口22の径方向の外側の領域に周方向に離間させて設け、複数のボルト挿通孔31を、サイドプレート15のプレート本体30のうち突出部27よりも径方向の外側の領域に周方向に離間させて設け、サイドプレート15をトラニオンシャフト12に対して複数のボルト16によって固定してもよい。この場合であっても、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を、サイドプレート15の突出部27の外周面27aとトラニオンシャフト12のシャフト内周面23との間の摩擦力によって抑えることができるので、トラニオンシャフト12に対するサイドプレート15の回転を確実に防止するために必要なボルト16の締め付けトルクを抑えることができる。
【0033】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示に係るトラニオン式サスペンションのサイドプレート取付構造は、トラニオン式サスペンションを備える様々な車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:車両
10:トラニオン式サスペンション
11:トラニオンブラケット
12:トラニオンシャフト
13:スプリングシート(スプリング支持部材)
14:リーフスプリング
15:サイドプレート
16:ボルト
22:サイドプレート挿入開口
23:シャフト内周面
24:サイドプレート挿入空間
25:底面部
26:雌ねじ部
27:突出部
27a:突出部の外周面
30:プレート本体
31:ボルト挿通孔