(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148963
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】直動装置およびアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/24 20060101AFI20220929BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20220929BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20220929BHJP
F16B 7/14 20060101ALI20220929BHJP
F16B 3/00 20060101ALI20220929BHJP
H02K 7/06 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
F16H25/24 G
F16H25/20 Z
F16H25/22 Z
F16B7/14 Z
F16B3/00 J
F16B3/00 F
H02K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050856
(22)【出願日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祥太
(72)【発明者】
【氏名】藤本 岳
【テーマコード(参考)】
3J039
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB01
3J062AB22
3J062AB24
3J062BA12
3J062BA21
3J062BA22
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD57
3J062CD65
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607EE52
(57)【要約】
【課題】出力軸との結合を解除可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】一態様に係る直動装置は、ねじ軸と、前記ねじ軸の回転運動を前記ねじ軸の軸方向の直線運動に変換するナットと、前記ナットで変換された直線運動に基づいて軸力を出力する出力軸を前記ナットに結合する結合部材と、前記ナットと前記出力軸との結合を解除可能な解除部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸と、
前記ねじ軸の回転運動を前記ねじ軸の軸方向の直線運動に変換するナットと、
前記ナットで変換された直線運動に基づいて軸力を出力する出力軸を前記ナットに結合する結合部材と、
前記ナットと前記出力軸との結合を解除可能な解除部材とを備えることを特徴とする直動装置。
【請求項2】
前記解除部材は、前記ナットと前記出力軸との結合を可逆的に解除可能であることを特徴とする請求項1に記載の直動装置。
【請求項3】
前記結合部材は、前記ねじ軸の軸方向と直交する方向に前記出力軸を貫通して前記ナットに対して抜き差し可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の直動装置。
【請求項4】
前記解除部材は、前記結合を解除した後に前記結合を復帰可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項5】
前記結合部材は、コッタまたはキーであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項6】
前記コッタは、前記ナットおよび前記出力軸に対し、前記出力軸の周方向に周方向隙間を備え、
前記キーは、前記ナットおよび前記出力軸に対し、前記出力軸の軸方向に軸方向隙間を備えることを特徴とする請求項5に記載の直動装置。
【請求項7】
前記解除部材は、前記結合部材を前記ナットから引き抜き可能な電磁石であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項8】
前記電磁石と前記結合部材との間に設けられ、前記ナットと前記出力軸との結合位置で前記結合部材を抑える弾性部材をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の直動装置。
【請求項9】
前記電磁石は、
巻線と、
前記巻線が巻回された鉄心を備え、
前記鉄心は、前記ナットからの前記結合部材の抜き出しの妨げにならない位置まで前記弾性部材内に延伸されていることを特徴とする請求項8に記載の直動装置。
【請求項10】
前記解除部材は、雄ねじが形成された回転軸を有するモータを備え、
前記回転軸は、前記ねじ軸の軸方向と直交する方向に沿って配置され、
前記結合部材は、前記雄ねじと噛み合い可能な雌ねじが形成された開口部を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項11】
前記解除部材は、前記結合部材を前記ナットから引き抜き可能なアクチュエータであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項12】
ねじ軸と、
前記ねじ軸の回転運動を前記ねじ軸の軸方向の直線運動に変換するナットと、
前記ナットで変換された直線運動に基づいて軸力を出力する出力軸を前記ナットに結合する結合部材と、
前記結合部材が前記ナットの凹部に収容される方向に前記結合部材を可逆的に押圧可能な押圧部とを備え、
前記結合部材は、前記ねじ軸の軸方向にかかる力に基づいて、前記ナットの凹部に収容された状態から前記ねじ軸の軸方向に移動し、前記ナットの凹部から抜け出し可能なように、前記結合部材および前記凹部の形状が設定されることを特徴とする直動装置。
【請求項13】
前記結合部材は、先端に向かう方向に窄まる形状を有し、前記凹部は、前記結合部材の形状に対応した形状を有することを特徴とする請求項12に記載の直動装置。
【請求項14】
前記結合部材の先端の形状は楔形であることを特徴とする請求項13に記載の直動装置。
【請求項15】
前記結合部材および前記凹部の形状は、前記出力軸の径方向の軸周りに回転対称であることを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項16】
前記押圧部は、
前記結合部材の後端側に設けられた空間に密閉可能な圧力媒体と、
前記空間内に密閉された前記圧力媒体を解放する解放部とを備えることを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項17】
前記押圧部は、前記結合部材の後端側に設けられたばねであることを特徴とする請求項11から15のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項18】
前記結合部材は、前記ナットまたは前記出力軸のいずれか少なくとも一方に対し、前記出力軸の径方向に隙間を備えることを特徴とする請求項12から17のいずれか1項に記載の直動装置。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の直動装置と、
前記出力軸とを備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項20】
前記出力軸は、前記結合を解除可能な位置に前記解除部材を収納する収納部を備えることを特徴とする請求項19に記載のアクチュエータ。
【請求項21】
前記収納部は、前記出力軸に設けられた開口部であることを特徴とする請求項20に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動装置およびアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
入力トルクから軸方向の軸力を得るアクチュエータとして、回転運動を直線運動に変換するボールねじを用いた技術がある。このアクチュエータでは、ねじ軸の回転運動をナットの直線運動に変換し、ナットに結合された出力軸から軸力が取り出される。特許文献1には、アクチュエータのナットと出力軸との結合に伝達要素を用いた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナットと出力軸との結合に伝達要素を用いたアクチュエータにおいて、動力伝達系が固着した場合、その固着による影響を回避するために、アクチュエータと出力軸との結合を解除することが望ましい。
そこで、本発明は、コッタを用いた出力軸との結合を解除可能な直動装置およびアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る直動装置によれば、ねじ軸と、前記ねじ軸の回転運動を前記ねじ軸の軸方向の直線運動に変換するナットと、前記ナットで変換された直線運動に基づいて軸力を出力する出力軸を前記ナットに結合する結合部材と、前記ナットと前記出力軸との結合を解除可能な解除部材とを備える。
【0006】
これにより、動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じてナットの動きが拘束された場合においても、出力軸の動きがナットを介して拘束されるのを防止することができ、動力伝達系の固着状態または高負荷状態などによる影響を回避することができる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記解除部材は、前記ナットと前記出力軸との結合を可逆的に解除可能である。
【0008】
これにより、動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じてナットの動きが拘束された場合においても、直動装置を破壊することなく、出力軸の動きがナットを介して拘束されるのを防止することができる。このため、出力軸からの軸力の出力先の動作が出力軸を介して拘束されるのを防止することができ、動力伝達系の固着状態または高負荷状態などによる影響を回避することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材は、前記ねじ軸の軸方向と直交する方向に前記出力軸を貫通して前記ナットに対して抜き差し可能である。
【0010】
これにより、結合部材の抜き差しに基づいて、ナットと出力軸を結合したり、ナットと出力軸との結合を解除したりすることができ、ナットと出力軸との結合を解除するために、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いる必要がなくなる。このため、アクチュエータの大型化および高価格化を抑制しつつ、ナットと出力軸を結合することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記解除部材は、前記結合を解除した後に前記結合を復帰可能である。
【0012】
これにより、ナットと出力軸との結合を解除した後に、結合部材およびナットを交換することなく、直動装置を正常に動作させることができる。このため、アクチュエータのメンテナンス性の低下を抑制しつつ、ナットと出力軸との結合を解除することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材は、コッタまたはキーである。
【0014】
これにより、結合部材の抜き差しに基づいて、ナットと出力軸を結合したり、ナットと出力軸との結合を解除したりすることが可能となる。
【0015】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記コッタは、前記ナットおよび前記出力軸に対し、前記出力軸の周方向に周方向隙間を備え、前記キーは、前記ナットおよび前記出力軸に対し、前記出力軸の軸方向に軸方向隙間を備える。
【0016】
これにより、出力軸にコジリが作用した場合においても、その作用を周方向隙間および軸方向隙間で吸収させることができ、ボールねじにコジリが作用しにくくすることができる。このため、直動装置と出力軸の組立時などにミスアライメントが発生した場合においても、直動装置が用いられるアクチュエータの高寿命化を図ることができる。
【0017】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記解除部材は、前記結合部材を前記ナットから引き抜き可能な電磁石である。
【0018】
これにより、電磁石に流す電流を制御することで、ナットと出力軸を結合したり、ナットと出力軸との結合を解除したりすることができる。このため、ナットと出力軸との結合を解除するために、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いる必要がなくなり、アクチュエータの構成の複雑化を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記電磁石と前記結合部材との間に設けられ、前記ナットと前記出力軸との結合位置で前記結合部材を抑える弾性部材をさらに備える。
【0020】
これにより、ナットと出力軸との結合時に結合部材がナットから抜け出すのを防止しつつ、ナットから結合部材を引き抜くことができ、ナットと出力軸との結合を可逆的に解除することができる。
【0021】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記電磁石は、巻線と、前記巻線が巻回された鉄心を備え、前記鉄心は、前記ナットからの前記結合部材の抜き出しの妨げにならない位置まで前記弾性部材内に延伸されている。
【0022】
これにより、直動装置を大型化することなく、電磁石の吸引力を増大させることができ、ナットと出力軸との結合の解除の効率性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記解除部材は、雄ねじが形成された回転軸を有するモータを備え、前記回転軸は、前記ねじ軸の軸方向と直交する方向に沿って配置され、前記結合部材は、前記雄ねじと噛み合い可能な雌ねじが形成された開口部を備える。
【0024】
これにより、モータの回転運動に基づいて、回転軸の軸方向に結合部材を直線運動させることができ、モータの回転方向を切り替えることで、ナットと出力軸を結合したり、ナットと出力軸との結合を解除したりすることができる。このため、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、ナットと出力軸との結合を解除することができる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記解除部材は、前記結合部材を前記ナットから引き抜き可能なアクチュエータである。
【0026】
これにより、アクチュエータを動作させることで、ナットと出力軸を結合したり、ナットと出力軸との結合を解除したりすることができ、ナットと出力軸との結合を解除することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、ねじ軸と、前記ねじ軸の回転運動を前記ねじ軸の軸方向の直線運動に変換するナットと、前記ナットで変換された直線運動に基づいて軸力を出力する出力軸を前記ナットに結合する結合部材と、前記結合部材が前記ナットの凹部に収容される方向に前記結合部材を可逆的に押圧可能な押圧部とを備え、前記結合部材は、前記ねじ軸の軸方向にかかる力に基づいて、前記ナットの凹部に収容された状態から前記ねじ軸の軸方向に移動し、前記ナットの凹部から抜け出し可能なように、前記結合部材および前記凹部の形状が設定される。
【0028】
これにより、結合部材を押圧することで、ナットと出力軸を結合させることが可能となるとともに、動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じて軸方向の力が出力軸にかかることで、結合部材を軸方向に移動させ、結合部材を凹部から抜け出させることができる。このため、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いることなく、ナットと出力軸との結合を解除することができ、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、動力伝達系の固着などによる影響を回避することができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材は、先端に向かう方向に窄まる形状を有し、前記凹部は、前記結合部材の形状に対応した形状を有する。
【0030】
これにより、結合部材に対し、出力軸の軸方向に力がかかったときに、出力軸の径方向にも力がかかるようにすることができる。このため、出力軸の軸方向への結合部材の移動に伴って結合部材を凹部から抜け出させることができ、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、ナットと出力軸との結合を解除することができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材の先端の形状は楔形である。
【0032】
これにより、結合部材に対し、出力軸の軸方向に力がかかったときに、出力軸の径方向にも力がかかるようにすることが可能となるとともに、結合部材の構成の複雑化を抑制することができ、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、ナットと出力軸との結合を解除することができる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材および前記凹部の形状は、前記出力軸の径方向の軸周りに回転対称である。
【0034】
これにより、結合部材に対し、出力軸の軸方向に力がかかったときに、出力軸の径方向にも力がかかるようにすることが可能となるとともに、結合部材の加工の簡単化を図ることができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記押圧部は、前記結合部材の後端側に設けられた空間に密閉可能な圧力媒体と、前記空間内に密閉された前記圧力媒体を解放する解放部とを備える。
【0036】
これにより、結合部材の後端側に設けられた空間に圧力媒体を導入することで、結合部材を押圧することができ、ナットと出力軸を結合させることが可能となるとともに、その空間から圧力媒体を解放することで、出力軸の軸方向への結合部材の移動を可能とし、動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じて結合部材が軸方向に移動されることで、結合部材を凹部から抜け出させることができる。このため、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いることなく、ナットと出力軸との結合を解除することができ、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、動力伝達系の固着などによる影響を回避することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記押圧部は、前記結合部材の後端側に設けられたばねである。
【0038】
これにより、結合部材の後端側に圧縮されたばねを設けることで、結合部材を押圧することができ、ナットと出力軸を結合させることが可能となるとともに、出力軸の軸方向への結合部材が移動されることで、ばねをさらに圧縮させながら結合部材を凹部から抜け出させることができる。このため、動力伝達系の固着状態などを検出する検出器、外部から動力を供給する動力部および固着状態などの検出結果に基づいて動力を制御する制御部を設けることなく、ナットと出力軸との結合を解除することができ、アクチュエータの構成の複雑化を抑制しつつ、動力伝達系の固着などによる影響を回避することができる。
【0039】
また、本発明の一態様に係る直動装置によれば、前記結合部材は、前記ナットまたは前記出力軸のいずれか少なくとも一方に対し、前記出力軸の径方向に隙間を備える。
【0040】
これにより、出力軸にコジリが作用した場合においても、その作用を結合部材との間の隙間で吸収させることができ、ボールねじにコジリが作用しにくくすることができる。このため、直動装置と出力軸の組立時などにミスアライメントが発生した場合においても、直動装置が用いられるアクチュエータの高寿命化を図ることができる。
【0041】
また、本発明の一態様に係るアクチュエータによれば、上述したいずれかの直動装置と、前記出力軸とを備える。
【0042】
これにより、動力伝達系が固着した場合においても、直動装置を破壊することなく、出力軸からの軸力の出力先の動作が出力軸を介して拘束されるのを防止することができ、動力伝達系の固着状態または高負荷状態などによる影響を回避することができる。
【0043】
また、本発明の一態様に係るアクチュエータによれば、前記出力軸は、前記結合を解除可能な位置に前記解除部材を収納する収納部を備える。
【0044】
これにより、解除部材を出力軸内に収納することが可能となり、出力軸から解除部材が突出するのを防止することができる。このため、アクチュエータの取り扱いおよび設置の困難性の増大を防止しつつ、ナットと出力軸との結合を解除可能なアクチュエータを構成することができる。
【0045】
また、本発明の一態様に係るアクチュエータによれば、前記収納部は、前記出力軸に設けられた開口部である。
【0046】
これにより、出力軸の構成の複雑化を抑制しつつ、解除部材を出力軸内に収納することが可能となるとともに、アクチュエータへの解除部材の取り付けを容易化することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の一つの態様によれば、コッタを用いた出力軸との結合を解除可能な直動装置およびアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るアクチュエータの構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、第1実施形態に係るアクチュエータのナットと出力軸との結合状態を示す斜視図、
図2(b)は、ナットと出力軸との結合状態を示す断面図、
図2(c)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を示す斜視図、
図2(d)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(a)は、第2実施形態に係るアクチュエータのナットと出力軸との結合状態を示す断面図、
図3(b)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係るアクチュエータの電磁石の鉄心の構成例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態に係るアクチュエータの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)は、第5実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図6(b)は、
図6(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、第5実施形態に係るナットと出力軸との結合の解除時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図7(b)は、
図7(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8(a)は、第6実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図8(b)は、
図8(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9(a)は、第6実施形態に係るナットと出力軸との結合の解除時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図9(b)は、
図9(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【
図10】
図10(a)は、第7実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図10(b)から
図10(d)は、
図10(a)のナットと出力軸との結合の解除時のコッタの動きを拡大して示す断面図である。
【
図12】
図12は、第8実施形態に係るコッタとナットとの間の隙間の一例を示す側面図である。
【
図13】
図13は、第9実施形態に係るコッタと出力軸との間の隙間の一例を示す側面図である。
【
図14】
図14(a)は、第10実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図14(b)から
図14(d)は、
図14(a)のナットと出力軸との結合の解除時のコッタの動きを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。また、以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。
【0050】
図1は、第1実施形態に係るアクチュエータの構成を示す斜視図である。
図1において、アクチュエータEA1は、回転運動に基づいて、軸方向に軸力を出力する。アクチュエータEA1は、ねじ軸1、ナット2、出力軸3およびコッタ4を備える。ねじ軸1およびナット2は、直動装置を構成するボールねじとして用いることができる。ねじ軸1は、モータなどの駆動源から発生された回転力に基づいて回転運動を行う。ナット2は、ねじ軸1の回転運動をねじ軸1の軸方向の直線運動に変換する。出力軸3は、ナット2で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。出力軸3の形状は、例えば、円筒状である。このとき、出力軸3の内周面は、ナット2の外周面に沿うように構成することができる。ナット2は、ねじ軸1の外周面と出力軸3の内周面との間に設けることができる。
【0051】
コッタ4は、出力軸3をナット2に結合する結合部材として用いられる。コッタ4は、ねじ軸1の軸方向と直交する方向に出力軸3を貫通してナット2に対して抜き差し可能である。コッタ4は、ナット2に挿入された場合、出力軸3側に突出した状態でナット2にて支持される。コッタ4は、ナット2から出力軸3への軸力伝達部材として用いることができる。
【0052】
ねじ軸1は、ねじ溝1mを備える。ねじ溝1mは、ねじ軸1の外周面に螺旋状に設けられる。ナット2は、ねじ溝2mを備える。ねじ溝2mは、ねじ溝1mに対向するようにナット2の内周面に螺旋状に設けられる。このとき、ねじ溝1m、2mは、ねじ軸1とナット2との間に螺旋状のボール転動路を形成する。
【0053】
ねじ軸1、ナット2および出力軸3の材料は、剛体であれば特に限定されるものでなく、例えば、鉄またはアルミニウム合金などの金属でもよく、セラミックなどの非金属であってもよい。コッタ4の材料は、鉄またはフェライトなどの磁性体である。各ねじ溝1m、2mの断面形状は、例えば、円弧上であってもよいし、ゴシックアーク状であってもよい。
【0054】
ねじ軸1の一端は、ギア13に接続されている。ギア13は、軸受11を介して回転自在にハウジング12に支持されるとともに、ギア固定ナット14にて軸方向に固定されている。軸受11は、例えば、アンギュラ玉軸受である。
【0055】
モータなどの駆動源から発生された回転力は、ギア13を介してねじ軸1に入力され、ねじ軸1が回転される。ねじ軸1が回転すると、ねじ軸1とナット2との間のボールが不図示のボール循環器を介してボール転動路を循環しつつ、ナット2が直動運動する。そして、ナット2の直動運動に基づく軸力は、コッタ4を介して出力軸3に伝達され、出力軸3を介して出力される。
【0056】
アクチュエータEA1は、例えば、車両などの制振装置に用いることができる。例えば、鉄道車両の制振装置の場合、車体と台車との間にアクチュエータEA1を設置することができる。そして、車体の振動と逆位相の軸力を出力軸3から出力させることにより、車体の振動を低減することができる。
【0057】
アクチュエータEA1は、ナット2と出力軸3との結合を可逆的に解除可能である。ここで、アクチュエータEA1は、ナット2と出力軸3との結合を可逆的に解除可能な解除部材として、電磁石5を備える。電磁石5は、コッタ4をナット2から引き抜き可能である。電磁石5は、鉄心5Aおよび巻線5Bを備える。巻線5Bは、鉄心5Aに巻回されている。鉄心5Aの材料は、透磁率が高い材料が好ましく、例えば、純鉄、珪素鋼またはフェライトなどを用いることができる。
【0058】
アクチュエータEA1は、バネ6および軸受7をさらに備える。バネ6は、ナット2と出力軸3との結合位置でコッタ4を抑える弾性部材として用いられる。バネ6は、電磁石5とコッタ4との間に設けられる。バネ6は、スプリング、板バネまたは皿バネなどのコッタ4を抑える弾性部材であれば特に限定されない。バネ6の代わりにゴムを用いるようにしてもよい。電磁石5およびバネ6は、出力軸3内に収納することができる。ここで、電磁石5およびバネ6を出力軸3内に収納可能とするために、電磁石5およびバネ6の収納位置の出力軸3の厚みを厚くするようにしてもよい。また、バネ6が縮んだ状態でナット2からコッタ4を引き抜き可能なように、電磁石5とコッタ4との間の間隔を設定することができる。
【0059】
軸受7は、出力軸3を内包するハウジングに対して直線運動自在に出力軸3を支持する。軸受7は、例えば、滑り軸受である。軸受7は、出力軸3の外周面に固定することができる。このとき、軸受7は、電磁石5上に配置するようにしてもよい。軸受7の材料は、例えば、樹脂である。軸受7を電磁石5上に配置することで、電磁石5およびバネ6が出力軸3から抜け出るのを防止することができる。
【0060】
ここで、モータ、ギアまたは直動部品などの動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じてナット2の動きが拘束されたものとする。このとき、動力伝達系の固着状態または高負荷状態が検出されると、電磁石5に電流を流すことにより、バネ6を圧縮しながら、コッタ4がナット2から引き抜かれる位置までコッタ4を電磁石5に引き寄せることができる。コッタ4がナット2から引き抜かれると、ナット2の直動運動に基づく軸力は、コッタ4を介して出力軸3に伝達できなくなり、出力軸3の動きがナット2を介して拘束されるのを防止することができる。このため、出力軸3からの軸力の出力先の動作が出力軸3を介して拘束されるのを防止することができ、動力伝達系の固着状態または高負荷状態などによる影響を回避することができる。
【0061】
例えば、鉄道車両の車体と台車との間にアクチュエータEA1が設置されているものとする。このとき、動力伝達系が固着すると、アクチュエータEA1が常に突っ張った状態になり、台車の振動がアクチュエータEA1を介して車体にそのまま伝達され、鉄道車両の乗り心地が低下する。このとき、電磁石5に電流を流し、コッタ4をナット2から引き抜くことにより、ナット2と出力軸3との結合を解除する。これにより、動力伝達系が固着した場合においても、台車の振動がアクチュエータEA1を介して車体にそのまま伝達されるのを防止することができ、鉄道車両の乗り心地を改善することができる。
【0062】
また、電磁石5の電磁力に基づいてナット2からコッタ4を引き抜くことで、ナット2と出力軸3との結合を解除することができる。このため、ナット2と出力軸3との結合を解除するために、ナット2またはコッタ4を破壊する必要がなくなり、アクチュエータEA1のメンテナンス性の低下を抑制することができる。
【0063】
また、電磁石5に流れる電流を切ることにより、ナット2と出力軸3との結合を復帰可能である。このため、ナット2と出力軸3との結合を解除した場合においても、ナット2およびコッタ4を交換することなく、アクチュエータEA1を正常動作に復帰させることができる。
【0064】
さらに、ナット2と出力軸3との結合にコッタ4を用いることにより、コッタ4の抜き差しに基づいて、ナット2と出力軸3を結合したり、ナット2と出力軸3との結合を解除したりすることができ、ナット2と出力軸3との結合を解除するために、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いる必要がなくなる。このため、アクチュエータEA1の大型化および高価格化を抑制しつつ、ナット2と出力軸3を結合することができる。
【0065】
以下、電磁石5を用いたナット2と出力軸3との結合の解除動作について、詳細に説明する。
図2(a)は、第1実施形態に係るアクチュエータのナットと出力軸との結合状態を示す斜視図、
図2(b)は、ナットと出力軸との結合状態を軸方向に切断して示す断面図、
図2(c)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を示す斜視図、
図2(d)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を軸方向に切断して示す断面図である。
【0066】
図2(a)および
図2(b)において、ナット2は、凹部2Aを備える。凹部2Aは、コッタ4の先端部を収容する。凹部2Aの平面形状は、コッタ4の先端の平面形状に対応させることができる。凹部2Aは、ナット2の外周面上に設けることができる。
【0067】
出力軸3は、貫通孔3Aおよび開口部3B~3Dを備える。貫通孔3Aおよび開口部3B~3Dは、出力軸3の側面に設けることができる。このとき、貫通孔3Aおよび開口部3B~3Dを介してコッタ4の先端部を凹部2Aに収容可能である。貫通孔3Aは、コッタ4の後端部を収容する。開口部3Bは、電磁石5とコッタ4の間にバネ6を収容する。開口部3Cは、出力軸3の径方向にコッタ4と間隔を空けて電磁石5を収容する。開口部3Dは、電磁石5を覆うように軸受7を収容する。
【0068】
コッタ4と間隔を空けて電磁石5を出力軸3内に支持するために、開口部3B、3C間に段差を設けるようにしてもよい。そして、ケース8に収容された電磁石5を開口部3B、3C間の段差に設置することで、コッタ4と間隔を空けて電磁石5を出力軸3内に支持することができる。
【0069】
ナット2と出力軸3との結合状態では、コッタ4の後端部が貫通孔3A内に突出した状態で凹部2Aに嵌め込まれる。そして、コッタ4は、凹部2Aから抜け出さないようにバネ6にて押圧される。このとき、バネ6は、コッタ4と電磁石5との間で圧縮途中の状態に維持される。すなわち、ナット2と出力軸3との結合状態では、バネ6は、コッタ4を押圧しつつ、さらに縮むことが可能な状態に維持される。
【0070】
ナット2と出力軸3との結合状態において、動力伝達系が固着し、ナット2の動きが拘束されたものとする。このとき、動力伝達系の固着状態が検出され、電磁石5に電流を流すと、バネ6が圧縮されながら、コッタ4が電磁石5に引き寄せられる。そして、
図2(c)および
図2(d)に示すように、コッタ4がナット2から引き抜かれ、コッタ4の先端部が貫通孔3A内に至ると、出力軸3は、ナット2の拘束から解放される。
【0071】
ここで、電磁石5を収容する収容部として、出力軸3に開口部3Cを設けることにより、出力軸3の構成の複雑化を抑制しつつ、電磁石5を出力軸3内に収納することが可能となるとともに、アクチュエータEA1への電磁石5の取り付けを容易化することができる。
【0072】
また、開口部3B、3C間に段差を設けることにより、バネ6を開口部3B内に収容した後、電磁石5を開口部3B、3C間の段差に設置することで、コッタ4と間隔を空けて電磁石5を出力軸3内に支持することが可能となる。このため、出力軸3の構成の複雑化を抑制しつつ、ナット2と出力軸3との結合を可逆的に解除可能となるとともに、アクチュエータEA1へのバネ6と電磁石5の取り付けを容易化することができる。
【0073】
図3(a)は、第2実施形態に係るアクチュエータのナットと出力軸との結合状態を軸方向に切断して示す断面図、
図3(b)は、ナットと出力軸との結合の解除状態を軸方向に切断して示す断面図である。
図3(a)および
図3(b)において、このアクチュエータは、
図2(b)および
図2(d)の電磁石5の代わりに電磁石5´を備える。電磁石5´は、
図2(b)および
図2(d)の鉄心5Aの代わりに鉄心5A´を備える。鉄心5A´は、巻線5Bからコッタ4側に突出し、ナット2からのコッタ4の抜き出しの妨げにならない位置までバネ6内に延伸されている。
【0074】
これにより、アクチュエータを大型化することなく、電磁石5´の吸引力を増大させることができ、ナット2と出力軸3との結合の解除の効率性を向上させることができる。
【0075】
図4は、第3実施形態に係るアクチュエータの電磁石の鉄心の構成例を円周方向に切断して示す断面図である。
図4において、このアクチュエータは、
図2(b)および
図2(d)の電磁石5の代わりに電磁石5´´を備える。電磁石5´´は、
図2(b)および
図2(d)の鉄心5Aの代わりに鉄心5A´´を備える。出力軸3を円周方向において、鉄心5A´´の外周面は、軸受7の内周面に沿うように構成される。例えば、鉄心5A´´の外周面の曲率は、軸受7の内周面の曲率と等しくすることができる。
【0076】
これにより、アクチュエータを大型化することなく、鉄心5A´´と軸受7との接触面積を増大させることができ、軸受7の装着時に電磁石5´´が円周方向に抜けるのを防止することができる。
【0077】
図5は、第4実施形態に係るアクチュエータの構成を示す斜視図である。
図5において、このアクチュエータEA2は、
図1のナット2および出力軸3の代わりにナット2´および出力軸3´を備える。また、このアクチュエータEA2は、
図1のアクチュエータEA1にキー4´、電磁石5´およびバネ6´が追加されている。
【0078】
ナット2´は、ねじ軸1の回転運動をねじ軸1の軸方向の直線運動に変換する。出力軸3´は、ナット2´で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。ここで、ナット2´と出力軸3´との結合には、コッタ4だけでなく、キー4´も用いられる。キー4´は、出力軸3´の円周方向にコッタ4と間隔を空けて配置することができる。
【0079】
キー4´は、出力軸3をナット2に結合する結合部材として用いられる。キー4´は、ねじ軸1の軸方向と直交する方向に出力軸3を貫通してナット2に対して抜き差し可能である。キー4´は、ナット2に挿入された場合、出力軸3側に突出した状態でナット2にて支持される。キー4´の材料は、鉄またはフェライトなどの磁性体である。キー4´は、ナット2に対する出力軸3の回り止め部材として用いることができる。
【0080】
このとき、コッタ4の長手方向は出力軸3の円周方向に設定されるのに対し、キー4´の長手方向は出力軸3の軸方向に設定することができる。また、コッタ4の先端が収納されるナット2´の凹部は、コッタ4にかかる軸力を受けるように構成されるのに対し、キー4´の先端が収納されるナット2´の凹部は、キー4´にかかる回転力を受けるように構成される。例えば、コッタ4の先端が収納されるナット2´の凹部は、円周方向に沿ってナット2´に設けられた溝であってもよいし、キー4´の先端が収納されるナット2´の凹部は、軸方向に沿ってナット2´に設けられた溝であってもよい。
【0081】
このアクチュエータEA2も、
図1のアクチュエータEA1と同様に、モータなどの駆動源から発生された回転力は、ギア13を介してねじ軸1に入力され、ねじ軸1が回転される。ねじ軸1が回転すると、ねじ軸1とナット2´との間のボールが不図示のボール循環器を介してボール転動路を循環しつつ、ナット2´が直動運動する。そして、ナット2´の直動運動に基づく軸力は、コッタ4´を介して出力軸3´に伝達され、出力軸3´を介して出力される。
【0082】
このアクチュエータEA2は、ナット2´と出力軸3´との結合を可逆的に解除可能である。ここで、このアクチュエータEA2は、ナット2´と出力軸3´との結合を可逆的に解除可能な解除部材として、
図1の電磁石5に加え、電磁石5´を備える。また、このアクチュエータEA2は、ナット2´と出力軸3´との結合位置でキー4´を抑える弾性部材として、バネ6´を備える。バネ6´は、電磁石5´とキー4´との間に設けられる。バネ6´は、スプリング、板バネまたは皿バネなどのキー4´を抑える弾性部材であれば特に限定されない。電磁石5´およびバネ6´は、出力軸3´内に収納することができる。ここで、電磁石5´およびバネ6´を出力軸3´内に収納可能とするために、電磁石´5およびバネ6´の収納位置の出力軸3´の厚みを厚くするようにしてもよい。また、バネ6´が縮んだ状態でナット2´からキー4´を引き抜き可能なように、電磁石5´とキー4´との間の間隔を設定することができる。
【0083】
ここで、モータ、ギアまたは直動部品などの動力伝達系の固着状態または負荷状態などに応じてナット2´の動きが拘束されたものとする。このとき、動力伝達系の固着状態または高負荷状態が検出され、電磁石5、5´に電流を流すと、バネ6、6´が圧縮されながら、コッタ4およびキー4´がナット2´から引き抜かれる位置までコッタ4およびキー4´を各電磁石5、5´に引き寄せることができる。コッタ4およびキー4´がナット2´から引き抜かれると、ナット2´の運動は、コッタ4およびキー4´を介して出力軸3´に伝達できなくなり、出力軸3´の動きがナット2´を介して拘束されるのを防止することができる。このため、出力軸3´の接続先の動作が出力軸3´を介して拘束されるのを防止することができ、動力伝達系の固着状態または高負荷状態などによる影響を回避することができる。
【0084】
また、電磁石5、5´の電磁力に基づいてコッタ4およびキー4´をナット2´から引き抜くことで、ナット2´と出力軸3´との結合を解除することができる。このため、ナット2´と出力軸3´との結合を解除するために、ナット2を破壊したり、コッタ4およびキー4´を破壊したりする必要がなくなり、アクチュエータEA2のメンテナンス性の低下を抑制することができる。
【0085】
また、電磁石5、5´に流れる電流を切ることにより、ナット2´と出力軸3´との結合を復帰可能である。このため、ナット2´と出力軸3´との結合を解除した場合においても、ナット2´、コッタ4およびキー4´を交換することなく、アクチュエータEA2を正常動作に復帰させることができる。
【0086】
さらに、ナット2´と出力軸3´との結合にコッタ4およびキー4´を用いることにより、コッタ4およびキー4´の抜き差しに基づいて、ナット2´と出力軸3´を結合したり、ナット2´と出力軸3´との結合を解除したりすることができ、ナット2´と出力軸3´との結合を解除するために、把持機構またはクラッチ機構などの複雑な構成を用いる必要がなくなる。このため、アクチュエータEA2の大型化および高価格化を抑制しつつ、ナット2´と出力軸3´を結合することができる。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0088】
例えば、上述した実施形態では、ナットと出力軸との結合時にコッタまたはキーを抑えるために、バネを用いた例を示したが、コッタまたはキーを抑えられれば、バネを用いた構成に限定されない。例えば、コッタまたはキーを永久磁石(例えば、ネオジム磁石)で構成するか、またはコッタまたはキーの表面に永久磁石を埋め込んだり、貼り付けたりするようにしてもよい。そして、ナットと出力軸との結合時には、電磁石と永久磁石との間に反発力が働くようにすることで、コッタまたはキーをナット内に抑え、ナットと出力軸との結合の解除時には、電磁石と永久磁石との間に吸引力を働かせることで、コッタまたはキーがナットから引き抜かれるようにしてもよい。
【0089】
図6(a)は、第5実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図6(b)は、
図6(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図、
図7(a)は、第5実施形態に係るナットと出力軸との結合の解除時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図7(b)は、
図7(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【0090】
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)および
図7(b)において、アクチュエータEA3は、
図1のアクチュエータEA1の出力軸3、コッタ4、電磁石5およびバネ6の代わりに、出力軸13、コッタ4Aおよびモータ21を備える。
【0091】
出力軸13は、ナット2で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。出力軸13は、貫通孔13Aおよび開口部13C、13Dを備える。貫通孔13Aおよび開口部13C、13Dは、出力軸13の側面に設けることができる。このとき、貫通孔13Aおよび開口部13C、13Dを介してコッタ4Aの先端部を凹部2Aに収容可能である。貫通孔13Aは、コッタ4Aの後端部を収容する。開口部13Cは、出力軸13の径方向にコッタ4Aと間隔を空けてモータ21を収容する。開口部13Dは、モータ21を覆うように軸受7を収容する。
【0092】
コッタ4Aは、出力軸13をナット2に結合する結合部材として用いられる。コッタ4Aは、ねじ軸1の軸方向と直交する方向に出力軸13を貫通してナット2に対して抜き差し可能である。コッタ4Aは、出力軸13の径方向に形成された開口部KAを備える。開口部KAは、出力軸13の径方向に貫通する貫通孔であってもよい。開口部KAは、モータ21の回転軸JAの外周面に形成された雄ねじと噛み合い可能な雌ねじを備える。
【0093】
アクチュエータEA3は、ナット2と出力軸13との結合を可逆的に解除可能である。ここで、アクチュエータEA3は、ナット2と出力軸13との結合を可逆的に解除可能な解除部材として、モータ21を備える。モータ21は、コッタ4Aを凹部2Aに挿入したり、凹部2Aから引き抜いたりすることができる。モータ21は、雄ねじが形成された回転軸JAを有する。モータ21の回転軸JAは、コッタ4Aの開口部KAに挿入される。このとき、回転軸JAの雄ねじと開口部KAの雌ねじが噛み合わされ、回転軸JAの回転運動がコッタ4Aの直線運動に変換される。
【0094】
ここで、モータ21は、回転軸JAの回転方向を切り替えることで、
図6(a)および
図6(b)に示すように、コッタ4Aを凹部2Aに挿入したり、
図7(a)および
図7(b)に示すように、コッタ4Aを凹部2Aから引き抜いたりすることができる。このため、回転軸JAの回転方向を切り替えることで、ナット2と出力軸13とを結合させたり、ナット2と出力軸13との結合を解除することができる。この結果、ナット2と出力軸13との結合を解除するために、ナット2またはコッタ4Aを破壊する必要がなくなり、動力伝達系の固着状態が解消された後、アクチュエータEA3を交換することなく、アクチュエータEA3を正常動作に復帰させることができる。また、モータ21を設置するスペースを出力軸13に確保することで、ナット2と出力軸13との結合を解除させることができ、アクチュエータEA3の構成の複雑化および大型化を抑制しつつ、動力伝達系の固着状態による影響を回避させることができる。
【0095】
図8(a)は、第6実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図8(b)は、
図8(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図、
図9(a)は、第6実施形態に係るナットと出力軸との結合の解除時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図9(b)は、
図9(a)のコッタの部分を拡大して示す断面図である。
【0096】
図8(a)、
図8(b)、
図9(a)および
図9(b)において、アクチュエータEA4は、
図1のアクチュエータEA1の出力軸3、コッタ4、電磁石5およびバネ6の代わりに、出力軸23、コッタ4Bおよびアクチュエータ31を備える。
【0097】
出力軸23は、ナット2で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。出力軸23は、貫通孔23Aおよび開口部23C、23Dを備える。貫通孔23Aおよび開口部23C、23Dは、出力軸23の側面に設けることができる。このとき、貫通孔23Aおよび開口部23C、23Dを介してコッタ4Bの先端部を凹部2Aに収容可能である。貫通孔23Aは、コッタ4Bの後端部を収容する。開口部23Cは、出力軸23の径方向にコッタ4Bと間隔を空けてアクチュエータ31を収容する。開口部23Dは、アクチュエータ31を覆うように軸受7を収容する。
【0098】
コッタ4Bは、出力軸23をナット2に結合する結合部材として用いられる。コッタ4Bは、ねじ軸1の軸方向と直交する方向に出力軸23を貫通してナット2に対して抜き差し可能である。
【0099】
アクチュエータEA4は、ナット2と出力軸23との結合を可逆的に解除可能である。ここで、アクチュエータEA4は、ナット2と出力軸23との結合を可逆的に解除可能な解除部材として、アクチュエータ31を備える。アクチュエータ31は、出力軸JBを有する。アクチュエータ31の出力軸JBは、コッタ4Bに結合される。アクチュエータ31は、出力軸23の径方向に出力軸JBを直線運動させ、コッタ4Bを凹部2Aに挿入したり、凹部2Aから引き抜いたりすることができる。アクチュエータ31は、油圧アクチュエータであってもよいし、空圧アクチュエータであってもよいし、電動アクチュエータであってもよい。
【0100】
ここで、アクチュエータ31は、出力軸JBを前進させることで、
図8(a)および
図8(b)に示すように、コッタ4Bを凹部2Aに挿入したり、出力軸JBを後退させることで、
図9(a)および
図9(b)に示すように、コッタ4Bを凹部2Aから引き抜いたりすることができる。このため、出力軸JBの進行方向を切り替えることで、ナット2と出力軸23とを結合させたり、ナット2と出力軸23との結合を解除することができる。この結果、ナット2と出力軸23との結合を解除するために、ナット2またはコッタ4Bを破壊する必要がなくなり、動力伝達系の固着状態が解消された後、アクチュエータEA4を交換することなく、アクチュエータEA4を正常動作に復帰させることができる。また、アクチュエータ31を設置するスペースを出力軸23に確保することで、ナット2と出力軸23との結合を解除させることができ、アクチュエータEA4の構成の複雑化および大型化を抑制しつつ、動力伝達系の固着状態による影響を回避させることができる。
【0101】
なお、上述したアクチュエータEA1~EA4において、特開2012-42050号公報に開示されているように、コッタは軸力伝達要素、キーは回転力伝達要素として用いることができる。このとき、コッタの軸方向両端面はナットおよび出力軸と接し、コッタの周方向両端面はナットおよび出力軸との間に周方向隙間を有してもよい。また、キーの周方向両端面はナットおよび出力軸と接し、キーの軸方向両端面はナットおよび出力軸との間に軸方向隙間を有してもよい。
【0102】
これにより、出力軸にコジリが作用した場合においても、その作用を周方向隙間および軸方向隙間で吸収させることができ、ボールねじにコジリが作用しにくくすることができる。このため、直動装置と出力軸の組立時などにミスアライメントが発生した場合においても、直動装置が用いられるアクチュエータの高寿命化を図ることができる。
【0103】
図10(a)は、第7実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図10(b)から
図10(d)は、
図10(a)のナットと出力軸との結合の解除時のコッタの動きを拡大して示す断面図である。
【0104】
図10(a)および
図10(b)から
図10(d)において、アクチュエータEA5は、
図1のアクチュエータEA1のナット2、出力軸3、コッタ4、電磁石5およびバネ6の代わりに、ナット42、出力軸43およびコッタ4Cを備える。
【0105】
ナット42は、ねじ軸1の回転運動をねじ軸1の軸方向の直線運動に変換する。ナット42は、
図2(b)の凹部2Aの代わりに凹部42Aを備える。凹部42Aは、ねじ軸1の軸方向にコッタ4Cにかかる力に基づいて、ナット42の凹部42Aに収容された状態からコッタ4Cがねじ軸1の軸方向に移動し、ナット42の凹部42Aから抜け出し可能なような形状に設定される。このとき、コッタ4Cに対して、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにするために、ナット42の凹部42Aは、傾斜面MAを備えることができる。また、凹部42Aの形状は、コッタ4Cの先端の形状に対応するように設定される。例えば、コッタ4Cの先端の形状が円錐状である場合、凹部42Aの形状はすり鉢状に形成することができる。
【0106】
出力軸43は、ナット42で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。出力軸43は、貫通孔43Aおよび開口部23Dを備える。貫通孔43Aおよび開口部23Dは、出力軸43の側面に設けることができる。このとき、貫通孔43Aおよび開口部23Dを介してコッタ4Cの先端部を凹部42Aに収容可能である。貫通孔43Aは、コッタ4Cの後端部を収容する。このとき、貫通孔43Aの高さは、コッタ4Cが凹部42Aに収容されたときに、コッタ4Cの後端側に空間43Cが形成されるように設定される。空間43Cの高さは、コッタ4Cを凹部42Aから抜け出させるのに必要な高さに設定することができる。開口部23Dは、軸受7が空間43C上に位置するように軸受7を収容する。
【0107】
コッタ4Cは、出力軸43をナット42に結合する結合部材として用いられる。コッタ4Cは、ねじ軸1の軸方向と直交する方向に出力軸43を貫通してナット42に対して抜き差し可能である。コッタ4Cは、ねじ軸1の軸方向にコッタ4Cにかかる力に基づいて、ナット42の凹部42Aに収容された状態からコッタ4Cがねじ軸1の軸方向に移動し、ナット42の凹部42Aから抜け出し可能なような形状に設定される。このとき、コッタ4Cに対して、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにするために、コッタ4C先端部は、傾斜面MCを備えることができる。例えば、コッタ4Cの形状は、先端に向かう方向に窄まる形状を有することができ、凹部42Aは、コッタ4Cの形状に対応した形状を有することができる。このとき、コッタ4Cの傾斜面MCは、凹部42Aの傾斜面MAに接することができる。
【0108】
アクチュエータEA5は、ナット42と出力軸43との結合を可逆的に解除可能である。ここで、アクチュエータEA5は、ナット42と出力軸43とを結合させるために、空間43Cに密閉可能な圧力媒体PBを備える。圧力媒体PBは、オイルなどの液体であってもよいし、空気などの気体であってもよい。アクチュエータEA5は、ナット42と出力軸43との結合を解除させるために、圧力媒体PBを解放可能である。アクチュエータEA5は、圧力媒体PBを解放させる解放部として、配管52および制御弁53を備える。配管52は、空間51に接続されるとともに、出力軸43の外部に引き出される。制御弁53は、配管52の通路を閉じたり、開いたりする。
【0109】
ここで、
図10(b)に示すように、制御弁53が配管52の通路を開き、圧力媒体PBを空間43Cに導入した後、制御弁53が配管52の通路を閉じることにより、圧力媒体PBを空間43C内に密閉することができる。このとき、圧力媒体PBはコッタ4Cを押圧し、コッタ4Cの先端を凹部42Aに収容させることにより、ナット42と出力軸43とを結合させることができる。
【0110】
そして、動力伝達系が固着し、アクチュエータEA5が常に突っ張った状態になったものとする。このとき、制御弁53が配管52の通路を開くことにより、空間43C内に密閉された圧力媒体PBが解放され、コッタ4Cの後端部にかかる押圧力が低減される。そして、
図10(c)および
図10(d)に示すように、コッタ4Cに対し、出力軸43の軸方向に力がかかると、傾斜面MA,MCを介して出力軸43の径方向にも力がかかる。このため、出力軸43の軸方向へのコッタ4Cの移動に伴ってコッタ4Cを凹部42Aから抜け出させることができ、ナット42と出力軸43との結合を解除することができる。この結果、ナット42と出力軸43との結合を解除するために、ナット42またはコッタ4Cを破壊する必要がなくなり、動力伝達系の固着状態が解消された後、アクチュエータEA5を交換することなく、アクチュエータEA5を正常動作に復帰させることができる。また、コッタ4Cを凹部42Aから抜け出させるのに必要な空間43Bを出力軸43に確保することで、ナット42と出力軸43との結合を解除させることができ、アクチュエータEA5の構成の複雑化および大型化を抑制しつつ、動力伝達系の固着状態による影響を回避させることができる。
【0111】
図11(a)は、
図10(a)のコッタの構成の一例を示す斜視図、
図11(b)は、
図10(a)のコッタの構成のその他の例を示す斜視図である。
図11(a)において、コッタ4Dは、傾斜面MDを備える。傾斜面MDは、コッタ4Dに対して、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにすることができる。このとき、コッタ4Dの先端の形状は、楔形とすることができる。
【0112】
これにより、コッタ4Dに対し、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにすることが可能となり、ナット42と出力軸43との結合を解除することが可能となるともに、コッタ4Dに傾斜面MCを設けるという簡易な加工でナット42と出力軸43との結合の解除を可能とすることができ、アクチュエータEA5の構成の複雑化を抑制し、アクチュエータEA5の大型化およびコストアップを抑制することができる。
【0113】
図11(b)において、コッタ4Eは、傾斜面MEを備える。傾斜面MEは、コッタ4Eに対して、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにすることができる。このとき、コッタ4Eの先端の形状は、出力軸43の径方向の軸周りに回転対称とすることができ、例えば、円錐形とすることができる。
【0114】
これにより、コッタ4Eに対し、出力軸43の軸方向に力がかかったときに、出力軸43の径方向にも力がかかるようにすることが可能となり、ナット42と出力軸43との結合を解除することが可能となるともに、簡易な加工でコッタ4Eに傾斜面MEを設けることができ、アクチュエータEA5の構成の複雑化を抑制し、アクチュエータEA5の大型化およびコストアップを抑制することができる。
【0115】
図12は、第8実施形態に係るコッタとナットとの間の隙間の一例を示す側面図である。
図12において、アクチュエータEA6は、
図10(a)のアクチュエータEA5のコッタ4Cの代わりに、コッタ4Fを備える。コッタ4Fの後端側には、段差HCが設けられている。また、出力軸43の貫通孔43Aには、段差HCを受け止め可能な段差DAが設けられている。そして、コッタ4Fは、段差HC、DAが互いに接触したときに、コッタ4Fの傾斜面MCと凹部42Aの傾斜面MAとの間に隙間Ccがあるように構成することができる。
【0116】
これにより、出力軸43にコジリが作用した場合においても、その作用を傾斜面MA、MC間の隙間Ccで吸収させることができ、ボールねじにコジリが作用しにくくすることができる。このため、直動装置と出力軸43の組立時などにミスアライメントが発生した場合においても、直動装置が用いられるアクチュエータEA6の高寿命化を図ることができる。
【0117】
図13は、第9実施形態に係るコッタと出力軸との間の隙間の一例を示す側面図である。
図13(a)および
図13(b)において、アクチュエータEA7は、
図10(a)のアクチュエータEA5のコッタ4Cの代わりに、コッタ4Gを備える。コッタ4Gの後端側には、段差HCが設けられている。また、出力軸43の貫通孔43Aには、段差HCを受け止め可能な段差DAが設けられている。そして、コッタ4Gは、コッタ4Gの傾斜面MCと凹部42Aの傾斜面MAが互いに接触したときに、段差HC、DAとの間に隙間Cdがあるように構成することができる。
【0118】
これにより、出力軸43にコジリが作用した場合においても、その作用を段差HC、DA間の隙間Cdで吸収させることができ、ボールねじにコジリが作用しにくくすることができる。このため、直動装置と出力軸43の組立時などにミスアライメントが発生した場合においても、直動装置が用いられるアクチュエータEA7の高寿命化を図ることができる。
【0119】
図14(a)は、第10実施形態に係るナットと出力軸との結合時のアクチュエータの構成を示す断面図、
図14(b)から
図14(d)は、
図14(a)のナットと出力軸との結合の解除時のコッタの動きを拡大して示す断面図である。
図14(a)および
図14(b)から
図14(d)において、アクチュエータEA8は、
図10のアクチュエータEA5の出力軸43および圧力媒体PBの代わりに、出力軸63およびばね61を備える。
【0120】
出力軸63は、ナット4で変換された直線運動に基づいて軸力を出力する。出力軸63は、貫通孔63Aを備える。貫通孔63Aは、出力軸63の側面に設けることができる。このとき、貫通孔63Aを介してコッタ4Cの先端部を凹部42Aに収容可能である。貫通孔63Aは、コッタ4Cの後端部を収容する。このとき、貫通孔63Aの高さは、コッタ4Cが凹部42Aに収容されたときに、コッタ4Cの後端側に空間63Cが形成されるように設定される。空間63Cの高さは、コッタ4Cを凹部42Aから抜け出させるのに必要な高さに設定することができる。
【0121】
アクチュエータEA8は、ナット42と出力軸63との結合を可逆的に解除可能である。ここで、アクチュエータEA8は、ナット42と出力軸63とを結合させるために、コッタ4Cを押圧するばね61を備える。
ばね61は、
図14(b)に示すように、空間63C内に設置され、コッタ4Cの後端面に接するように配置することができる。このとき、ばね61の圧縮力は、アクチュエータEA8の正常動作時にナット42の接触面MAとコッタ4Cの接触面MCとの接触状態が維持されるように設定することができる。また、ばね61は、ナット42と出力軸63との結合時の収縮圧態から、コッタ4Cが凹部42Aから完全に抜けるまでにさらに収縮可能なように構成することができる。
【0122】
そして、動力伝達系が固着し、アクチュエータEA8が常に突っ張った状態になったものとする。このとき、
図14(c)および
図14(d)に示すように、コッタ4Cに対し、出力軸63の軸方向に力がかかると、傾斜面MA,MCを介して出力軸63の径方向にも力がかかる。このため、出力軸63の軸方向へのコッタ4Cの移動に伴ってコッタ4Cを凹部42Aから抜け出させることができ、ナット42と出力軸63との結合を解除することができる。このため、ナット42と出力軸63との結合を解除するために、ナット42またはコッタ4Cを破壊する必要がなくなり、動力伝達系の固着状態が解消された後、アクチュエータEA8を交換することなく、アクチュエータEA8を正常動作に復帰させることができる。また、ナット42と出力軸63との結合を解除するために、動力伝達系の固着状態などを検出する検出器、外部から動力を供給する動力部および固着状態などの検出結果に基づいて動力を制御する制御部を設ける必要がなくなり、アクチュエータEA8の構成の複雑化を抑制しつつ、動力伝達系の固着などによる影響を回避させることができる。さらに、コッタ4Cを凹部42Aから抜け出させるのに必要な空間63Cを出力軸63に確保することで、ナット42と出力軸63との結合を解除させることができ、アクチュエータEA8の構成の複雑化および大型化を抑制しつつ、動力伝達系の固着状態による影響を回避させることができる。
【符号の説明】
【0123】
1 ねじ軸、2 ナット、3 出力軸、4 コッタ、5 電磁石、5A 鉄心、5B 巻線、6 バネ、7、11 軸受、12 ハウジング、13 ギア、14 ギア固定ナット