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特開2022-148996係止具セットデバイスおよび発泡成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022148996
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】係止具セットデバイスおよび発泡成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/22 20060101AFI20220929BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 44/02 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 44/34 20060101ALI20220929BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20220929BHJP
   B29K 105/04 20060101ALN20220929BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B29C39/22
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/02
B29C44/34
B29C44/12
B29K105:04
B29L31:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050905
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219705
【氏名又は名称】東海興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜口 英作
(72)【発明者】
【氏名】守谷 芳則
【テーマコード(参考)】
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD07
4F204AD19
4F204AG20
4F204AH26
4F204AJ08
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F204EK27
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD07
4F214AD19
4F214AG20
4F214AH26
4F214AJ08
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD13
4F214UD17
4F214UD27
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】成形型内の所定位置に係止具を簡単にセット可能な係止具セットデバイス、及び、当該係止具セットデバイスを用いた発泡成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】係止具セットデバイス30は、係止具(クリップ15)を保持及び保持解除すべく作動可能な保持部(左右一対のチャック材50)と、保持部に保持される係止具を押圧するための押圧部42と、外力を付与するための作用部41と、作用部からの外力に基づいて前記保持部の作動と前記押圧部による押圧動作とを連動させる連動機構(40,43,50,51,60,S1,S2等)とを備える。保持部に係止具が保持された状態で作用部に外力が付与されるとき、連動機構は、保持部に係止具の保持を解除させると共に、それに連動して押圧部に係止具を成形型10に向けて押圧させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形品の成形型に係止具をセットするための係止具セットデバイスであって、
係止具を保持及び保持解除すべく作動可能な保持部と、
前記保持部に保持される係止具を押圧するための押圧部と、
外力を付与するための作用部と、
前記作用部からの外力に基づいて、前記保持部の作動と前記押圧部による押圧動作とを連動させる連動機構と、
を備え、
前記保持部に係止具が保持された状態で前記作用部に外力が付与されるとき、前記連動機構は、前記保持部に係止具の保持を解除させると共に、それに連動して前記押圧部に係止具を成形型に向けて押圧させることを特徴とする、係止具セットデバイス。
【請求項2】
前記保持部は、係止具を間に挟んで保持するための一対の挟持部材を有しており、これら一対の挟持部材は、前記作用部に外力が付与されることで互いに離間して係止具の保持を解除することを特徴とする、請求項1に記載の係止具セットデバイス。
【請求項3】
前記連動機構は、外力伝達用の棒部を備えており、
前記棒部の一端側に前記作用部が設けられ、前記棒部の他端側に前記押圧部が設けられ、前記棒部の一部に前記保持部が作動連結されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の係止具セットデバイス。
【請求項4】
前記係止具セットデバイスは、係止具供給体と連結可能に構成され、
前記係止具供給体は、前記係止具セットデバイスの保持部に対し複数の係止具を一つずつ連続的に供給可能に構成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の係止具セットデバイス。
【請求項5】
前記係止具供給体の内部には、係止具の形状に対応した横断面形状を有する係止具供給路が形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の係止具セットデバイス。
【請求項6】
保持部、押圧部、作用部および連動機構を備えてなる請求項1に記載の係止具セットデバイスを用いて、一つ以上の係止具を具備した発泡成形品を製造する方法であって、当該方法は、
係止具が係合可能な被係止部を有してなる成形型を準備する工程と、
前記係止具セットデバイスの保持部に係止具を保持させる工程と、
前記成形型の被係止部に前記係止具セットデバイスを近接配置して被係止部に係止具をセットする工程であって、
前記係止具セットデバイスの前記作用部に外力を付与することで、前記保持部に係止具の保持を解除させると共に、前記押圧部に係止具を前記成形型に向けて押圧させ、狙った被係止部に対し係止具をセットする、工程と、
係止具の被係止部へのセット完了後に、前記係止具セットデバイスを前記成形型から離れる方向に移動させる工程と、
前記係止具セットデバイスの移動後に、前記成形型に発泡性原料を供給して、係止具を一体的に具備してなる発泡成形品を成形する工程と、
を備えることを特徴とする発泡成形品の製造方法。
【請求項7】
前記係止具セットデバイスには、係止具供給手段から複数の係止具を一つずつ連続的に供給可能となっており、前記係止具セットデバイスの保持部が保持していた係止具を保持解除した後に、当該保持部に対して前記係止具供給手段から次の係止具を供給することを特徴とする、請求項6に記載の発泡成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持した係止具を発泡成形品の成形型にセットするための係止具セットデバイス、及び、当該係止具セットデバイスを用いて一つ以上の係止具を具備した発泡成形品を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用シートや居室用ソファー等のパッドとして用いられる発泡樹脂成形品(例えばポリウレタンフォーム製品)には、表皮材等を後付け又は外付けするための係止具としてのクリップを発泡樹脂成形時に予め埋設するものが知られている。特許文献1(特開2016-10939号公報)には、そのような表皮材係止用クリップを予め埋設するタイプの発泡樹脂成形品の製造方法が開示されている。
【0003】
特許文献1の方法は、クリップ(12)をクリップ設置用治具(10)に仮止めする仮止め工程と、クリップが仮止めされたクリップ設置用治具を、成形型(16)にクリップが定められた位置に位置するように設置する治具設置工程と、成形型に発泡樹脂を注入し発泡樹脂成形品(18)を成形する成形工程と、発泡樹脂成形品を脱型した後、発泡樹脂成形品からクリップ設置用治具(10)を取り除く治具除去工程とを備える(同文献の要約、段落0020参照)。なお、クリップ(12)の好ましい形態は、同文献の図2,5に示されるように、平板状の基部(12a)から突設された一対の係止部(12b,12b)が対向配置されると共に、両係止部が互いに接近及び離間する方向に弾性変形可能になっているものである(同文献の段落0029,0030参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-10939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記治具除去工程に関し、特許文献1の段落0034は、発泡樹脂成形品(18)からクリップ設置用治具(10)を取り除くための二つの具体的なやり方に言及する。一つ目のやり方は、脱型直後の発泡樹脂成形品から「クリップ設置用治具10をそのまま外方に引き出す」というものであり、二つ目のやり方は、「係止部12b,12bを互いに離反する方向に開いておき、クリップ設置用治具10を引き抜く」というものである。
【0006】
しかし、上記一つ目のやり方による場合でも、対をなす係止部(12b,12b)が弾性変形しにくく、係止部同士が接近している状態でクリップ設置用治具を強引に外方に引き出す場合には、係止部間からクリップ設置用治具を離脱させることが困難であるばかりか、無理に引き抜くと発泡樹脂成形品を損傷するおそれがある。また、上記二つ目のやり方による場合、対をなす係止部を互いに離反する方向に開いておくという事前の操作が必要となり、この操作自体が大変手間であり作業性が良くない。それゆえ、特許文献1の発泡樹脂成形品の製造方法とは異なる発想の新手法が求められている。
【0007】
本発明の目的は、成形型内の所定位置に係止具を簡単にセットすることができる係止具セットデバイスと、この係止具セットデバイスを用いて一つ以上の係止具を具備した発泡成形品を製造する発泡成形品の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、発泡成形品の成形型に係止具をセットするための係止具セットデバイスであって、
係止具を保持及び保持解除すべく作動可能な保持部と、
前記保持部に保持される係止具を押圧するための押圧部と、
外力を付与するための作用部と、
前記作用部からの外力に基づいて、前記保持部の作動と前記押圧部による押圧動作とを連動させる連動機構と、
を備え、
前記保持部に係止具が保持された状態で前記作用部に外力が付与されるとき、前記連動機構は、前記保持部に係止具の保持を解除させると共に、それに連動して前記押圧部に係止具を成形型に向けて押圧させることを特徴とする、係止具セットデバイスである。
【0009】
請求項1の発明によれば、保持部に係止具が保持された状態にある係止具セットデバイスを成形型内の所定位置に配置すると共に作用部に外力を付与することで、保持部による係止具の保持が解除されると同時に(ないしは同期して)、当該係止具が押圧部によって成形型に向けて押圧され、その結果、成形型内の所定位置に係止具を簡単にセットすることができる。特に、押圧部が係止具を成形型に向けて積極的に押圧するメカニズムであるため、係止具を成形型の所定位置に安定的にセット(又は係止)することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の係止具セットデバイスにおいて、
前記保持部は、係止具を間に挟んで保持するための一対の挟持部材を有しており、これら一対の挟持部材は、前記作用部に外力が付与されることで互いに離間して係止具の保持を解除することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、保持部が一対の挟持部材を具備することで、係止部の保持および保持解除が容易になる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の係止具セットデバイスにおいて、
前記連動機構は、外力伝達用の棒部を備えており、
前記棒部の一端側に前記作用部が設けられ、前記棒部の他端側に前記押圧部が設けられ、前記棒部の一部に前記保持部が作動連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明によれば、請求項1又は2の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、連動機構に備えられた棒部を介して作用部と押圧部とを直接的に関連付けると共に、当該棒部を介して外力を保持部に伝達することで、保持部と押圧部との同時的又は同期的な連動関係を簡潔な構造で実現することができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の係止具セットデバイスにおいて、前記係止具セットデバイスは、係止具供給体と連結可能に構成され、
前記係止具供給体は、前記係止具セットデバイスの保持部に対し複数の係止具を一つずつ連続的に供給可能に構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明によれば、請求項1~3の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、係止具セットデバイスの使用時に、係止具供給体から当該デバイスに対して係止具が連続的に供給されることで、一つの係止具を保持解除した後の(空の)保持部に対する次の係止具の供給(補充)が迅速化し、成形型内の複数箇所に係止具を連続的にセットしていく際の作業性が向上する。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4に記載の係止具セットデバイスにおいて、
前記係止具供給体の内部には、係止具の形状に対応した横断面形状を有する係止具供給路が形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、係止具供給体の内部に形成された係止具供給路が、供給対象物たる係止具の形状に対応した横断面形状を有することで、係止具供給路内を移動中に各係止具が姿勢を意に反して反転させてしまう等の不都合な事態を防止することができる。
【0018】
請求項6の発明は、保持部、押圧部、作用部および連動機構を備えてなる請求項1に記載の係止具セットデバイスを用いて、一つ以上の係止具を具備した発泡成形品を製造する方法であって、当該方法は、
係止具が係合可能な被係止部を有してなる成形型を準備する工程と、
前記係止具セットデバイスの保持部に係止具を保持させる工程と、
前記成形型の被係止部に前記係止具セットデバイスを近接配置して被係止部に係止具をセットする工程であって、
前記係止具セットデバイスの前記作用部に外力を付与することで、前記保持部に係止具の保持を解除させると共に、前記押圧部に係止具を前記成形型に向けて押圧させ、狙った被係止部に対し係止具をセットする、工程と、
係止具の被係止部へのセット完了後に、前記係止具セットデバイスを前記成形型から離れる方向に移動させる工程と、
前記係止具セットデバイスの移動後に、前記成形型に発泡性原料を供給して、係止具を一体的に具備してなる発泡成形品を成形する工程と、
を備えることを特徴とする発泡成形品の製造方法である。
【0019】
請求項6の発明によれば、保持部に係止具が保持された状態にある係止具セットデバイスを成形型の(狙った)被係止部に近接配置すると共に係止具セットデバイスの作用部に外力を付与することで、保持部による係止具の保持が解除されると同時に(ないしは同期して)、当該係止具が押圧部によって成形型に向けて押圧され、その結果、成形型の狙った被係止部に係止具を簡単にセットすることができる。特に、押圧部が係止具を成形型に向けて積極的に押圧する方式であるため、係止具を成形型の狙った被係止部に安定的にセット(又は係止)することができる。
【0020】
更に特許文献1の方法との対比において、本発明の方法は以下のような利点を有する。即ち、本発明の方法では、発泡成形よりも前の段階で、係止具セットデバイスに外力を付与することで保持部から係止具を保持解除でき、発泡成形品の中に係止具セットデバイスの痕跡を残すことがない。つまり、特許文献1におけるような、発泡成形品の成形後に発泡成形品中に埋設された係止具からクリップ設置用治具を取り除くといった厄介な事後的作業を必要としない。また、特許文献1の方法では、成形型上でのクリップ(係止具)の配置に合わせた専用のクリップ設置用治具を作製する必要がある。これに対し本発明の方法は、本発明に係る係止具セットデバイスを用いて成形型に係止具を一つずつセットしていく方式であるため、係止具の配置(又は配置設計の変更)に応じてセット用工具又はデバイスを作り変える(又は交換する等の)必要がなく、汎用性に優れている。
【0021】
請求項7の発明は、請求項6に記載の発泡成形品の製造方法において、
前記係止具セットデバイスには、係止具供給手段から複数の係止具を一つずつ連続的に供給可能となっており、前記係止具セットデバイスの保持部が保持していた係止具を保持解除した後に、当該保持部に対して前記係止具供給手段から次の係止具を供給することを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明によれば、請求項6の発明の効果に加えて更に次のような効果を奏する。即ち、係止具セットデバイスの保持部が一つの係止具を保持解除して空の状態(係止具の非保持状態)になった場合でも、その保持部には係止具供給手段から次の係止具が供給(補充)されるため、成形型内の複数箇所に係止具を連続的にセットする際の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の係止具セットデバイスによれば、成形型内の所定位置に係止具を簡単にセットすることができる。
本発明の発泡成形品の製造方法によれば、本発明に係る係止具セットデバイスを用いることで、一つ以上の係止具を具備した発泡成形品を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】発泡成形品の成形型(下型)を上から見た平面図。
図2図1に示す成形型のフランジ部の一部拡大斜視図。
図3図1に示す成形型(クリップ装着後の下型)の平面図。
図4】係止具としてのクリップを示し、(A)はクリップの下面側から見た斜視図、(B)はクリップの正面図、(C)はクリップ装着時の概略断面図。
図5】(A)は係止具供給体と連結された係止具セットデバイスの全体斜視図、(B)はB-B線での係止具供給体の横断面図。
図6】係止具セットデバイスの筐体を示す図(前側から見た正面図)。
図7】係止具セットデバイスの筐体内に収められる各種部品を分解状態で示す図。
図8】係止具セットデバイス(初期又は待機状態)の縦断面図。
図9図8の状態に対応する係止具セットデバイス及び係止具供給体の側面図。
図10】係止具セットデバイス(押圧状態)の縦断面図。
図11図10の状態に対応する係止具セットデバイス及び係止具供給体の側面図。
図12】(A)は筐体における縦溝の概略図、(B)及び(C)は縦溝の作用を説明する説明図。
図13図13及び図14は係止具セットデバイスの一連の動作を示し、図13は前半の動作状態(ア)、(イ)、(ウ)を示す図。
図14図14は後半の動作状態(ウ)、(エ)、(オ)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0026】
[発泡成形品の成形型とクリップ]
図1~3は、発泡成形品の成形用金型の一構成要素である下型10(以下、単に「成形型」という)を示す。この成形型10は例えば車両用シートのウレタンフォーム製クッションパッドの製造を意図したものである。この成形型10には、クッションパッドに溝を形成するための突条部11(以下「フランジ」と呼ぶ)が突設されている。また、そのフランジ11の複数箇所には被係止部12が予め固定されている。この被係止部12は、係止具としてのクリップ15を係止させるための部位又は部材である。被係止部12の両側面には、クリップ15の一部を係合させるための係合凹部13が設けられている(図2図4(C)参照)。被係止部12は、成形型10とは異なる金属からなる(例えば成形型がアルミ、被係止部がステンレス鋼)。なお、図1はクリップ装着前の成形型10を示し、図3はそれぞれの被係止部12にクリップ15を装着(セット)した後の成形型10を示す。
【0027】
図4は、係止具としてのクリップ15の一典型例を示す。図4(A)及び(B)に示すように、クリップ15は、合成樹脂製の板状小片として構成されている。クリップ15は概ね板状の基部16を備え、その上面16a側は概ね平らに形成されている。クリップ15はまた、基部16の下面16b側に突設された合計4つの係止脚17を備えている。これら4つの係止脚17にあっては、2つの係止脚17が相対向して一対をなしており、基部16の下面側には、かかる一対の係止脚17が二組存在している。各組の相対向する係止脚17は互いに接近離間する方向に弾性変位可能であり、両係止脚17の間に対象物(本例では被係止部12の一部)を挟着可能となっている。図4(C)に示すように、クリップ15を成形型の被係止部12に装着(セット)するとき、各組の対向する係止脚17の先端部が、それぞれ対応する被係止部12の係合凹部13に係合することで、被係止部12に対するクリップ15の装着(セット)が完了する。
【0028】
[係止具セットシステムの概要]
図5図9及び図11に示すように、成形型10に係止具としてのクリップ15を装着(セット)するための係止具セットシステムは少なくとも、係止具供給体20と、係止具セットデバイス30とを備えている。係止具供給体20は、係止具セットデバイス30に連結されて当該デバイス30にクリップ15を連続供給するための係止具供給手段または係止具搬送設備である。係止具セットデバイス30は、成形型の各被係止部12に個別に作用して各被係止部12にクリップ15を一つずつセットするための可動デバイスである。この係止具セットデバイス30は、現場の作業者によって手動で操作されるほか、自動制御されたロボットアームによる操作も可能である。
【0029】
[係止具供給体]
図5図9及び図11に示すように、係止具供給体20は長尺なパイプ状の構造物であって、斜めに傾斜した状態で配置され、係止具供給体20の上端(図示略)側と下端22側との間には高低差が設定されている。係止具供給体20の上端側には、図示しないクリップフィーダー(係止具の貯蔵・配給装置)が設けられ、係止具供給体20の下端側は係止具セットデバイス30に連結されている。具体的には、係止具供給体の下端22は、差込みプラグに類する嵌入部22として構成されており、これを係止具セットデバイス30側のソケットに類する嵌合凹部31に嵌入することで両者(20,30)が着脱自在に連結される。
【0030】
係止具供給体20の内部には、滑り台形式の係止具供給路23が形成されている。この係止具供給路23を介して、前述のクリップフィーダーから係止具セットデバイス30に向けて複数のクリップ15が搬送される。その際、複数のクリップ15は係止具供給路23に沿って一列に並ぶと共に、係止具供給路23を滑り下りるように連続搬送される。従って、係止具セットデバイス30は係止具供給体20からクリップ15を一つずつ順番に受け取ることができる。
【0031】
なお、図5(B)に示すように、係止具供給路23の横断面形状は、概ね半円形状をなしている。この半円形状の水平辺に対応する係止具供給路の天井面24は、その幅寸法がクリップ15の幅よりもやや大きく設定されている。また、上記半円形状の円弧に対応する係止具供給路の湾曲底面25と、前記天井面24との間の距離(間隔)も、クリップ15の基部16およびその下面側に突出した係止脚17を無理なく収め得るように設定されている。つまり、係止具供給路23の横断面形状、係止具供給路の天井面24の幅寸法、および係止具供給路の湾曲底面25と天井面24との間の距離は、クリップ15の正面視での形状および寸法に対応して設定されている。このため、クリップ15が係止具供給路23内を移動中も、クリップ15は常に正立姿勢(即ちクリップ15の上面が係止具供給路の天井面24と対面する姿勢)を保つことができ、搬送中にクリップ15が姿勢を180°反転させて倒立姿勢となることがない。よって、いずれのクリップ15も、正立姿勢を保ったまま係止具セットデバイス30に供給される。
【0032】
他方、係止具セットデバイス30の内部には、係止具供給体20の係止具供給路23の延長上に位置して当該係止具供給路23と連続した通路を構築する内部連絡路32が設けられている。この内部連絡路32は、係止具供給体の係止具供給路23を、後述する係止具セットデバイス30の保持部に連絡するものである。
【0033】
[係止具セットデバイス]
図5(A),図6図12は、係止具セットデバイス30の一実施形態を示す。係止具セットデバイス30は、当該デバイス30のケーシングを構成する筐体60と、その筐体内に組み付けられる各種部材とを備える。
【0034】
図7は、筐体60内に組み付けられる各種部材を分解状態で示す。図7に示すように、係止具セットデバイス30は、棒部としてのプッシュロッド40と、左右一対の挟持部材としてのチャック材50と、主コイルバネS1と、前後一対の副コイルバネS2(一方のみ図示)と、計3本の作動軸(主作動軸43および副作動軸51)とを備えている。
【0035】
プッシュロッド40は、垂直方向に延びる棒状の部材である。プッシュロッド40の上端部には円盤状の作用部41が設けられ、この作用部41は外部から当該デバイス30に外力を付与するための入力手段である。円盤状の作用部41の直下には、プッシュロッド40の周りに巻回される形で主コイルバネS1が配設されている。他方、プッシュロッド40の下端部には押圧部42が設けられている。この押圧部42は、プッシュロッド40の本体下端部を中心として前後方向(図7の紙面と直交する方向)に延びる細長な厚板形状をなしており、後述する保持部に保持されるクリップ15の上面を押圧するための部位である。更に、プッシュロッド40の中程でやや下端寄りの位置には、当該プッシュロッド40を前後方向に貫通する主作動軸43が設けられている。この主作動軸43は、外力の付与に伴うプッシュロッド40の下動および外力の解除に伴うプッシュロッド40の上動に基づいて、チャック材50を作動させる作動軸又は動力伝達軸として機能する。
【0036】
左右一対のチャック材50は、プッシュロッド40を間に挟んで左右対称な形状をなす点を除いて等価な挟持部材である。それゆえ説明の便宜上、一方のチャック材に着目して説明するが、その説明は他方のチャック材にも当てはまるものである。
チャック材50は、クリップ15の前後長にほぼ匹敵する前後長を有すると共に(図5参照)、図7の正面視で略「く」の字型のレバー形状をなしている。図7に示すように、チャック材50の上端寄り位置には、当該チャック材を前後方向(図7の紙面と直交する方向)に貫通する副作動軸51が設けられている。この副作動軸51は、前記主作動軸43と平行な関係にあり、チャック材50が回動するときの回動中心軸として機能する。
【0037】
図7に示すように、チャック材50の上端部には、前後一対の突片部52(一つのみ図示)が設けられ、それぞれの突片部52にはプッシュロッド40と対向して係合凹部53が形成されている。この係合凹部53は、副作動軸51よりもやや高い位置に位置しており、主作動軸43に係合してプッシュロッド40の動きをチャック材50に伝達する働きをする。
【0038】
チャック材50の高さ方向中程で且つ副作動軸51よりも低い位置には、図7で見て鋭角状をなすチャック部54が形成されている。一方のチャック材50のチャック部54と他方のチャック材50のチャック部54は、互いに水平方向に向き合っており、これら二つのチャック部54が協働して一つのクリップ15を挟み付けることで、両者間にクリップ15を把持可能となっている。
【0039】
更に、チャック材50には、副作動軸51より下で且つチャック部54よりも上の高さ位置で、且つチャック材50の前後方向での前寄り及び後寄りの各位置において、前後一対のバネ受承凹部55(図7では一つのみ図示)が形成されている。各バネ受承凹部55はプッシュロッド側に開口しており、一方のチャック材50の前後のバネ受承凹部55は、他方のチャック材50の前後のバネ受承凹部55とそれぞれ対向する。バネ受承凹部55は、副コイルバネS2の一端部を受け入れて同バネを保持するためのバネ座を提供する。
【0040】
係止具セットデバイス30では、二つの等価な副コイルバネS2が用いられ、これら副コイルバネS2は、チャック材50の前寄り及び後寄りにそれぞれ配設されている(図11参照、図7では一つのみ図示)。副コイルバネS2は、左右のチャック材50間に架設されて両者に付勢力を及ぼす。即ち、自然長からの圧縮状態にある副コイルバネS2は、左右のチャック材50を互いに離間させるべく作用する。
【0041】
図6,8,10は、係止具セットデバイス30の筐体60を示す。
筐体60の内部には、筐体の上面側に開口した上収納室61と、筐体の底面側に開口した下収納室62とが区画形成されると共に、上収納室61と下収納室62との間にあって両収納室を分離する隔壁部63には、プッシュロッド用の挿通孔64が形成されている。上収納室61には主コイルバネS1が直立状態で収容され、上収納室61の底壁部分(つまり隔壁部63)は、直立した主コイルバネS1を支えるバネ座を提供する。
【0042】
他方、下収納室62は、プッシュロッド40の下半部分、左右のチャック材50、三本の作動軸(43,51)および二つの副コイルバネS2を収納するための略直方体形状の内部収納空間である。この下収納室62を区画する左右の内壁65にはそれぞれ、垂直方向(上下方向)に延びる垂直ガイド面66が形成されると共に、各垂直ガイド面66の下側には、垂直ガイド面66と連続する傾斜規制面67が形成されている。これらの面(66,67)は、対応するチャック材50の背部56に接触してチャック材50の動作をガイド又は規制する。
【0043】
また、図6に示すように、下収納室62を区画する前後の内壁(図6では紙面と直交方向の手前側が「前」、奥側が「後」となる)の各々には、三つの縦溝(71,72)が形成されている。なお、図12は三つの縦溝(71,72)の相関関係を概念的に示す。
図6,8,10,12(特に図12)に示すように、中央縦溝71は主作動軸43に対応しており、前後の内壁の中央縦溝71に対し、主作動軸43の前端部及び後端部がそれぞれ係入される。また、中央縦溝71の左右に位置する二つのサイド縦溝72は二本の副作動軸51に対応しており、前後の内壁のサイド縦溝72に対し、対応する副作動軸51の前端部及び後端部がそれぞれ係入される。
【0044】
中央縦溝71は主作動軸43の可動範囲を画定する。即ち、中央縦溝の上端71aは、主作動軸43(ひいてはプッシュロッド40)の垂直方向に沿った上下動の上死点位置を画定し、中央縦溝の下端71bは同じく上下動の下死点位置を画定する。同様に、サイド縦溝72は副作動軸51の可動範囲を画定すると共に、サイド縦溝の上端72aは、副作動軸51(ひいてはチャック材50)の垂直方向に沿った上下動の上死点位置を画定し、サイド縦溝の下端72bは同じく上下動の下死点位置を画定する。従って、中央縦溝71の溝長L1は、主作動軸43(ひいてはプッシュロッド40)の上下動のストロークを規定し、サイド縦溝72の溝長L2は、副作動軸51(ひいてはチャック材50)の上下動のストロークを規定する。そして本実施形態では、中央縦溝71の溝長L1はサイド縦溝72の溝長L2よりも大きく設定されている(L2<L1、図12(A)参照)。
【0045】
図9に示すように、筐体60の底面側の前端位置には、ストッパ部69が下方に向けて突設されている。ストッパ部69は、係止具供給路23および内部連絡路32を経て筐体60の底面側に辿り着いたクリップ15を停止及び位置決めする規制部として働く。
以上で、係止具セットデバイス30を構成する各構成要素の個別説明を終わる。
【0046】
図8及び図10は、筐体60内に各種部材を組み付けて係止具セットデバイス30を完成させたときの断面図であり、図8は係止具セットデバイス30の初期状態(つまり待機時または未使用時の状態)を示し、図10は係止具セットデバイス30の押圧状態(使用中の一状態)を示す。ちなみに、図9図8に対応するシステム全体(初期状態)の概略側面を示し、図11図10に対応するシステム全体(押圧状態)の概略側面を示す。
【0047】
図8に示すように、初期状態では、上収納室61内に主コイルバネS1が直立状態で収納・支持される。主コイルバネS1の上に円盤状の作用部41が載置されることで、挿通孔64に挿通されたプッシュロッド40は、筐体60内に上下動可能に保持(又は浮上懸架)される。このとき、プッシュロッド40の主作動軸43は下収納室62内にあり、主作動軸43の両端部が、下収納室62の前後内壁の中央縦溝71の上端71a、即ち上下動ストロークの上死点位置に配置される(図12(B)参照)。
また、左右のチャック材50はその上半部分が下収納室62内に収められる。図8の初期状態では、各チャック材50の係合凹部53がプッシュロッド40の主作動軸43に係合すると共に、各チャック材の背部56が下収納室62の垂直ガイド面66に接触する。その結果、左右のチャック材50は図8に示すような姿勢(直立的姿勢)をとると共に、各チャック材50の副作動軸51の両端部が、下収納室62の前後内壁のサイド縦溝72の上端72a、即ち上下動ストロークの上死点位置に配置される(図12(B)参照)。
更に、直立的姿勢を強いられた左右のチャック材50のバネ受承凹部55間に架設された副コイルバネS2は、強制圧縮された状態にあり、それぞれの副コイルバネS2には、左右のチャック材50を互いに離間させようとする反発力が蓄力されている。
【0048】
なお、図8及び図9に示す初期状態では、プッシュロッド40の押圧部42の下面の高さと、左右のチャック部54の高さがほぼ水平に揃う。また、左右のチャック部54間の間隔が最小化されると共に、この最小の間隔がクリップ15の幅寸法にほぼ一致する。そして当該初期状態では、プッシュロッドの押圧部42の直下には、それぞれの下端部が最接近した状態にある左右のチャック材50と、筐体前端のストッパ部69とによって三方を囲まれたクリップ保持領域が確保されている。このクリップ保持領域に進入・配置されたクリップ15は、左右のチャック材50(のチャック部54)により、両側を挟まれる恰好で保持される。つまり、左右一対の挟持部材としてのチャック材50は、係止具(15)を保持及び保持解除すべく作動可能な保持部を構成する。
【0049】
次に、係止部セットデバイス30の基本的な動作態様を図10及び図11を参照しつつ説明する。プッシュロッドの作用部41を上から下に向けて押圧すると、主作動軸43を含むプッシュロッド40全体が下動すると共に、主コイルバネS1は圧縮されて元の状態に戻ろうとする復元力が蓄力される。プッシュロッド40の下動に伴い、主作動軸43が中央縦溝71内を上死点位置(71a)から下動すると共に、係合凹部53を介して左右のチャック材50を下に押す。これに同期して、チャック材50が垂直ガイド面66に沿って下動すると共に、副作動軸51がサイド縦溝72内を上死点位置(72a)から下動する。溝長L2は溝長L1よりも短いので、副作動軸51の方が先に下死点位置(72b)に到達する(図12(C)参照)、その一方で、主作動軸43はまだ下死点位置(71b)には到達しない(図12(C)の仮想線位置を参照)。
但し、副作動軸43が下死点位置(72b)に到達するまでには、「各チャック材の背部56が垂直ガイド面66に当たることでチャック材50の直立的姿勢を維持しようとする現状維持のモーメント」よりも、「副コイルバネS2が左右のチャック材50を離間させようとするモーメント」の方が優勢となり、その結果、副コイルバネS2の付勢力によって左右のチャック材50は、それぞれの下端部が互いに遠ざかって開く方向に回動(又は傾動)する。すると、左右のチャック部54間の距離は、クリップ15の幅寸法よりも大きくなるため、もはや両チャック部54によるクリップ15の保持は不可能になる。
【0050】
副作動軸51が下死点位置(72b)に到達したところで副作動軸51(及びチャック材50)は下動できなくなるが、図12(C)に仮想線で示す主作動軸43には、二つの溝長の差(L1-L2)に相当する余長ストロークの分だけ更に下動する余地がある。それゆえ、プッシュロッド作用部41の最後の一押しにより、主作動軸43は図12(C)の仮想線位置から実線位置まで下動し得る。この最後の一押しの過程で、図10に示すように、主作動軸43は、両チャック材の突片部52を更に下に押して、両チャック材50にそれぞれの副作動軸51を中心とした更なる開き回動(即ち、より大きく傾いた姿勢への移行)を促す。但し、各チャック材50の更なる開き回動も、チャック材の背部56が筐体60の傾斜規制面67に当接することで制限される。なお、主作動軸43が中央縦溝71内を上死点位置から下死点位置まで移動する間、プッシュロッド40は溝長L1に相当するストロークを終始下動し続け、これに呼応してプッシュロッド下端の押圧部42が、筐体60の底面側から下方に向けて必要量突出することになる。この押圧部42の下方突出が、当該係止具セットデバイス30の保持部に保持されたクリップ15を成形型10の被係止部12にセットするための押圧作用(押圧力)を生み出す。
【0051】
その後、図10及び図11の状態から、プッシュロッドの作用部41を押している外力を解除すると、主コイルバネS1に蓄積された復元力によって、主作動軸43を含むプッシュロッド40の全体が図8及び図9の初期状態に復帰する。この復帰過程では、主作動軸43の上動に追従して、両チャック材50も開いた回動姿勢から直立的姿勢を取り戻しつつ上動して初期状態に復帰する。主作動軸43も副作動軸51も共にそれぞれの縦溝の上死点位置に再び配置され、副コイルバネS2も再び圧縮された状態となる。かくして、当該係止具セットデバイス30は、図8及び図9の初期状態を取り戻し、次のセット動作に備えスタンバイ状態となる。
【0052】
以上、図6~12を参照して説明したように、係止具セットデバイス30において、筐体60の内部形態(61~67,71,72等)並びに筐体60に組み付けられる各種部材(40,43,50,51,S1,S2等)は、作用部41からの外力に基づいて保持部の作動と押圧部による押圧動作とを連動させる連動機構を構成する。
【0053】
次に、係止具セットデバイス30の具体的な使用方法を、つまり、係止具セットデバイス30を用いてクリップ15を具備した発泡樹脂成形品を製造する方法を、図13及び図14に示した一連の状態図(ア)~(オ)を参照しつつ説明する。なお、当該方法の実施に際しては事前に、図1及び図2に示したような成形型10が準備される。
【0054】
最初に、初期状態にある係止具セットデバイス30の保持部によってクリップが保持される。具体的には、クリップ15がクリップフィーダーから係止具供給路23および内部連絡路32を経て、係止具セットデバイス30の底面側に位置するクリップ保持領域(左右のチャック材50及びストッパ部69によって囲まれた領域)に搬送される。このクリップ保持領域に滑るように進入したクリップ15は、ストッパ部69に当たって停止すると共に、最接近状態にある左右のチャック部54間に挿入配置され、これらのチャック部54によって挟まれる恰好で保持される(図13(ア)並びに当該(ア)と等価な状態を示す図8及び図9参照)。
【0055】
クリップ15を保持した係止具セットデバイス30は、成形型10上の狙った被係止部12と対向配置され(図13(ア)参照)、その被係止部12に向けて接近される。図13(イ)に示すように係止具セットデバイス30が被係止部12に近接配置されたところで、左右のチャック材50の下端部が被係止部12に対しそれを間に挟むように配置されると共に、クリップ15の二つの係止脚17の先端(図13では下端)が、被係止部12の上端に接する直前の位置(又はほぼ接する位置)に達する。そして、この図13(イ)の状態で、作用部41を上から下に向けて押す。
【0056】
すると図13(ウ)に示すように、プッシュロッド40の下動に連動して、左右のチャック材50が下動すると共にそれにほぼ同期して両チャック材50が互いに離間するように開き動作する。チャック材50の開き動作の初期段階では主として、副コイルバネS2の付勢力が開き動作の駆動力となるが、チャック材50の開き動作の最終段階では、前述した「最後の一押し」時の主作動軸43によるチャック材突片部52の押下げが開き動作の駆動力となる。両チャック材50が開き動作することで左右のチャック部54が離間し、クリップ15の保持が解除される。また、クリップ15が保持解除される過程を通して、プッシュロッド40は下動し続けると共に、プッシュロッド下端の押圧部42がクリップ15を上から下に押圧する。この押圧によるクリップ15の強制的押下げに伴い、被係止部12の先端部(上端部)によってクリップの両係止脚17がその弾性に抗して押し広げられ、最終的にはクリップの両係止脚17が被係止部12の係合凹部13に係合して、被係止部12に対するクリップ15の係止(つまりセット)が完了する。
ちなみに、図10及び図11図13(ウ)の状態と等価な状態を示す。また、図13(ウ)と図14(ウ)は同じ状態(最押圧状態)を示す。
【0057】
その後、作用部41に対する外力を解除すると、主コイルバネS1の復元力によりプッシュロッド40が初期配置(図13(ア)及び図14(オ)参照)に向けて上動する。
【0058】
図14(エ)は、図14(ウ)の最押圧状態から図14(オ)の再度の初期状態に向かう途中の状態を示す。図14(エ)の途中状態では、プッシュロッド40と共にチャック材50も上動するが、この上動の初期過程(図14の(ウ)から少なくとも(エ)に到る過程)では、副コイルバネS2の付勢作用によって両チャック材50の開き姿勢がそのまま維持される。このため、チャック材50が上動時にクリップ15に引っ掛ってクリップ15を被係止部12から離脱させるといった不都合を生じない。
【0059】
図14(エ)から(オ)は、プッシュロッド40及びチャック材50の上動の後期過程を示す。図14(エ)及び(オ)から見て取れるように、当該上動の後期過程にほぼタイミングを合わせて、係止具セットデバイス30が成形型10の被係止部12から離れるべく上方向に移動される。そして、チャック材50の下端部が被係止部12よりも十分上方に離れるまでの間に、主作動軸43及び副作動軸51がそれぞれの上死点位置(図12(B)参照)に向けて引き戻されると共に、両チャック材の背部56が垂直ガイド面66に沿って上方に摺動する過程で両チャック材50が副コイルバネS2の付勢力に打ち勝って直立的姿勢を取り戻す(図14(オ)並びに当該(オ)と等価な状態を示す図8及び図9参照)。こうして、係止具セットデバイス30は再び初期状態を取り戻し、次のクリップのセット作業が可能になる。
【0060】
成形型としての下型10の全ての被係止部12にクリップ15をセットしたら、下型に上型を合体させて成形空間を形成し、そこへ発泡性ポリウレタン樹脂等の発泡性原料を供給するなど、常法に従った処理又は加工を適宜施すことで、所期の発泡樹脂成形品を得ることができる。
【0061】
本実施形態によれば、一対のチャック材50にクリップ15が保持された状態にある係止具セットデバイス30を成形型10の狙った被係止部12に近接配置すると共に、係止具セットデバイスの作用部41に外力を付与することで、チャック材50によるクリップ15の保持が解除されると同時に、当該クリップ15が押圧部42によって成形型10に向けて押圧され、その結果、成形型10の狙った被係止部12にクリップ15を簡単にセットすることができる。特に、押圧部42がクリップ15を成形型10に向けて積極的に押圧する方式であるため、クリップ15を狙った被係止部12に安定的にセット(又は係止)することができる。
【0062】
[変更例]
係止具セットデバイス30に係止具としてのクリップ15を供給するための係止具供給手段は、上述の係止具供給体20(図5等)に限定されるものではなく、係止具装填カセット(図示略)が採用されてもよい。係止具装填カセットとは、所定数のクリップ15が積層状態で装填されたカセットケース形式のクリップ貯蔵具である。係止具装填カセットは、例えばバネ仕掛けによって当該カセット内からクリップ15を一つずつ外に押し出し可能としてもよい。係止具セットデバイス30に連結された係止具装填カセット内のクリップ15を使い果たしたときには、空になった係止具装填カセットを新しい別の係止具装填カセットに交換することで、係止具セット作業を遅滞なく継続することができる。空になった係止具装填カセットには、適宜クリップを補充できる。係止具装填カセットは、頻繁に交換する必要がある反面、サイズを小型化でき、作業現場での貯蔵・保守・管理が容易であるという利点がある。
【符号の説明】
【0063】
10 下型(成形型)
12 被係止部
15 クリップ(係止具)
20 係止具供給体
23 係止具供給路
30 係止具セットデバイス
40 プッシュロッド(棒部)
41 作用部
42 押圧部
43 主作動軸
50 チャック材(保持部を構成する一対の挟持部材)
51 副作動軸
54 チャック材のチャック部
60 筐体
S1 主コイルバネ
S2 副コイルバネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14