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特開2022-149018空気調和機及び空気調和機の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149018
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】空気調和機及び空気調和機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20220929BHJP
   F24F 11/41 20180101ALI20220929BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20220929BHJP
【FI】
F25B47/02 510F
F25B47/02 510H
F25B47/02 510K
F25B47/02 550P
F24F11/41
F24F11/41 250
F24F11/41 220
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021050935
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】井上 和宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊太郎
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA36
3L260DA09
(57)【要約】
【課題】昇華除霜により、ベースヒータの消費電力抑制、機器の凍結による破損を防止する。また、昇華除霜を行う専用の装置部品を要さず、コスト増大が抑えられた空気調和機を提供する。
【解決手段】空気調和機は、冷媒回路と、室外ファンと、制御部とを具備する。冷媒回路は、圧縮機、室内熱交換器、減圧器、及び室外熱交換器に冷媒を循環させ、圧縮機から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を有する。室外ファンは、室外熱交換器に室外空気を送風する。制御部は、室外熱交換器が暖房運転時に着霜したと判定した場合、冷媒回路における冷媒の流れ方向を切り替え室外熱交換器の除霜運転を開始する。制御部は、室外空気の温度が氷点より低い場合に、室外熱交換器に流れる冷媒の温度を室外空気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度に設定し、室外熱交換器に付着した霜の昇華除霜を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換器、減圧器、及び室外熱交換器に冷媒を循環させ、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を有する冷媒回路と、
前記室外熱交換器に室外空気を送風する室外ファンと、
前記室外熱交換器が暖房運転時に着霜したと判定した場合、前記冷媒回路における前記冷媒の前記流れ方向を切り替え前記室外熱交換器の除霜運転を開始する制御部と
を具備し、
前記制御部は、前記室外空気の温度が氷点より低い場合に、前記室外熱交換器に流れる前記冷媒の温度を前記室外空気の前記温度より高く、且つ、氷点より低い温度に設定し、前記室外熱交換器に付着した霜の昇華除霜を行う
空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載された空気調和機であって、
前記制御部は、前記圧縮機の回転数及び前記室外ファンの回転数の少なくともいずれかを制御して、前記室外熱交換器に流れる前記冷媒の温度を前記室外空気の前記温度より高く、且つ、氷点より低い温度に設定する
空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2に記載された空気調和機であって、
前記制御部は、前記室外空気の温度が予め定められた氷点より低い温度である閾値未満の場合に、前記室外熱交換器に流れる前記冷媒の温度を前記室外空気の前記温度より高く、且つ、氷点より低い温度になるように制御する
空気調和機。
【請求項4】
圧縮機、室内熱交換器、減圧器、及び室外熱交換器に冷媒を循環させ、前記圧縮機から吐出される前記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を有する冷媒回路と、前記室外熱交換器に室外空気を送風する室外ファンとを具備する空気調和機において、前記室外熱交換器が暖房運転時に着霜したと判定した場合、前記冷媒回路における前記冷媒の前記流れ方向を切り替え前記室外熱交換器の除霜運転を開始する際に、
前記室外空気の温度が氷点より低い場合に、前記室外熱交換器に流れる前記冷媒の温度を前記室外空気の前記温度より高く、且つ、氷点より低い温度に制御し、前記室外熱交換器に付着した霜の昇華除霜を行う空気調和機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜運転が可能な空気調和機及び空気調和機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な除霜は、冷却装置の熱交換器に付着した霜を、氷点以上に加熱し、融解により霜取りを行う。これに対し、霜を氷点未満に保って昇華現象を利用して霜取りをおこなう方法を昇華除霜という。この方法は、除霜時の融解水が発生しないので、機器の凍結による破損防止や凍結防止ヒータの消費電力の削減につながる。
【0003】
冷却装置の熱交換器に付着した霜を昇華除霜する技術として、加熱された噴流空気を熱交換器に衝突させて霜を昇華除霜するものがある(例えば、特許文献1参照)。または、熱源となる加熱昇温装置を設け、加熱された冷媒を熱交換器に供給して熱交換器の昇華除霜を行う技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-118302号公報
【特許文献2】国際公開2017/175411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、冷却面を加熱するヒータ、空気を噴出する噴出装置が必要になる。また、特許文献2に係る技術においても冷媒を加熱する加熱昇温装置が必要になる。したがって、これまではこれらの装置部品を追加し、複雑な構成にしなければ昇華除霜を行うことができず、なおかつコスト増大を招いてしまう。
【0006】
また、上記の技術は、利用側の温湿度範囲の変動幅が比較的狭い冷凍装置に関する技術であり、上記の技術を、温湿度範囲の変動幅が広い空気調和機にそのまま適用させることは難しい。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、外気の温湿度範囲の変動幅が広い空気調和機でも昇華除霜を可能にし、その制御方法を提供することにある。また、昇華除霜によって融解水を生じさせないことで、ベースヒータの消費電力を削減したり、凍結による機器の破損を防止したりすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る空気調和機は、冷媒回路と、室外ファンと、制御部とを具備する。
上記冷媒回路は、圧縮機、室内熱交換器、減圧器、及び室外熱交換器に冷媒を循環させ、上記圧縮機から吐出される上記冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器を有する。
上記室外ファンは、上記室外熱交換器に室外空気を送風する。
上記制御部は、上記室外熱交換器が暖房運転時に着霜したと判定した場合、上記冷媒回路における上記冷媒の上記流れ方向を切り替え上記室外熱交換器の除霜運転を開始する。
上記制御部は、上記室外空気の温度が氷点より低い場合に、上記室外熱交換器に流れる上記冷媒の温度を上記室外空気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度に設定し、上記室外熱交換器に付着した霜の昇華除霜を行う。
【0009】
このような空気調和機であれば、室外熱交換器の昇華除霜が可能となる。
【0010】
上記空気調和機においては、上記制御部は、上記圧縮機の回転数及び上記室外ファンの回転数の少なくともいずれかを制御して、上記室外熱交換器に流れる上記冷媒の温度を上記室外空気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度になるように制御してもよい。
【0011】
このような空気調和機であれば、室外熱交換器の昇華除霜が確実に行われる。
【0012】
上記空気調和機においては、上記制御部は、上記室外空気の温度が予め定められた氷点より低い温度である閾値未満の場合に、上記室外熱交換器に流れる上記冷媒の温度を上記室外空気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度になるように制御してもよい。
【0013】
このような空気調和機であれば、室外熱交換器の昇華除霜がより確実に行われる。
【0014】
本発明の一形態に係る空気調和機の制御方法では、上記空気調和機において、上記室外熱交換器が暖房運転時に着霜したと判定した場合、上記冷媒回路における上記冷媒の上記流れ方向を切り替え上記室外熱交換器の除霜運転を開始する際に、上記室外空気の温度が氷点より低い場合に、上記室外熱交換器に流れる上記冷媒の温度を上記室外空気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度に制御し、上記室外熱交換器に付着した霜の昇華除霜が行われる。
【0015】
このような空気調和機の制御方法であれば、室外熱交換器の昇華除霜を行う空気調和機の制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上述べたように、本発明によれば、昇華除霜を行うことが可能な空気調和機及びその制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の空調調和器の概要を示すブロック構成図である。
図2】本実施形態の暖房運転から除霜運転に切り替えるときのフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付す場合があり、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。また、以下に示す数値は例示であり、この例に限らない。
【0019】
(空気調和機の概要)
図1は、本実施形態の空調調和器の概要を示すブロック構成図である。
【0020】
空気調和機1は、例えば、ヒートポンプ装置等の空気調和機であって、室内機2と、室外機3とを具備する。室内機2は、室内熱交換器4と、室内ファン21とを有する。室外機3は、室外熱交換器5と、圧縮機6と、減圧器(膨張弁)7と、流路切替器(四方弁)8と、制御部10と、室外ファン20とを有する。制御部10は、室外機3に配置されてもよく、室内機2に配置されてもよく、室内機2及び室外機3のそれぞれに機能を分けて分割して配置されてもよい。
【0021】
空気調和機1では、圧縮機6、室内熱交換器4、減圧器7、及び室外熱交換器5に配管9を通じて冷媒を循環させる冷媒回路1cが形成されている。冷媒回路1cは、圧縮機6から吐出される冷媒の流れ方向を切り替える流路切替器(四方弁)8を含む。室外熱交換器5には、室外ファン20によって室外機3に取り込まれた空気(室外空気、以下、外気とする)が送風され、室外熱交換器5を流れる冷媒と熱交換を行う。室内熱交換器4には、室内ファン21によって室内機2に取り込まれた空気(室内空気)が送風され、室内熱交換器4を流れる冷媒と熱交換を行う。
【0022】
また、暖房運転時、室外熱交換器5の入口となる配管9の位置には、冷媒の温度を検出する温度センサ25が設けられ、室外熱交換器5の出口となる配管9の位置には、冷媒の温度を検出する温度センサ26が設けられる。本実施形態では、暖房運転時、この室外熱交換器5の入口における配管9の温度を「配管温度」と呼称する。さらに、空気調和機1には、室外熱交換器5の周辺の外気の温度を測定する温度センサ27が設けられる。
【0023】
次に、空気調和機1における、暖房運転、冷房運転、及び除霜運転を説明する。暖房運転、冷房運転、及び除霜運転は、制御部10によって制御されている。
【0024】
暖房運転時には、流路切替器8が破線ラインに切り替えられ、室外機3の圧縮機6から吐出された高温高圧の冷媒が流路切替器8を介して室内機2の室内熱交換器4に流入する。室内熱交換器4(凝縮器)で室内空気と熱交換した高圧のガス冷媒は、室内空気に熱を放出し凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の減圧器7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり室外熱交換器5へ流入する。室外熱交換器5(蒸発器)で外気と熱交換した冷媒は外気から熱を受けて気化する。その後、低圧の冷媒は、流路切替器8を介して圧縮機6に吸入され圧縮される。冷媒回路における、この冷媒の流れを暖房サイクルとする。
【0025】
冷房運転時には、流路切替器8が実線ラインに切り替えられ、室外機3の圧縮機6から吐出した高温高圧の冷媒が流路切替器8を介して室外熱交換器5に流入する。室外熱交換器5(凝縮器)で外気と熱交換した高圧のガス冷媒は外気に熱を放出し凝縮して液化する。その後、高圧の液冷媒は、室外機3の減圧器7を通過することによって減圧され、低温低圧の気液二相冷媒となり、室内機2の室内熱交換器4へ流入する。室内熱交換器4(蒸発器)では室内空気と熱交換した冷媒は室内空気から熱を受けて気化する。その後、低圧のガス冷媒は、流路切替器8を介して圧縮機6に吸入され圧縮される。冷媒回路における、この冷媒の流れを冷房サイクルとする。
【0026】
空気調和機1では、暖房運転及び冷房運転のほかに、暖房運転時に室外熱交換器5に発生した霜を取り除く除霜運転が行われる。本実施形態では、外気の温度が氷点より高い場合、室外ファン20を停止、及び、圧縮機6が外気温等の条件によって決まる一定の回転数で回転し、霜を融解させて除霜を行う。また、外気の温度が氷点未満の場合、室外ファン20を運転させながら、あるいは、圧縮機6の回転数を変えながら、霜を昇華させて除霜を行う。制御部10は、室外熱交換器5が暖房運転時に着霜した場合に、冷媒回路1cにおける冷媒の流れ方向を切り替え、室外熱交換器5の除霜運転を開始することができる。
【0027】
例えば、除霜運転時には、制御部10によって、冷媒回路1cが冷房サイクルとされ、圧縮機6から吐出される高温の冷媒が室外熱交換器5に向かうように流路切替器8が切り替えられる。室外熱交換器5に高温の冷媒が流入すると、外気の温度が氷点より高い場合、室外熱交換器5に付着した霜は水となって融解する。一方、外気の温度が氷点未満ならば、室外熱交換器5に付着した霜は水の状態を経ずに水蒸気となって昇華する。これにより、室外熱交換器5に付着した霜が取り除かれる。空気調和機1では、暖房運転が選択されると、暖房運転の実行により室外熱交換器5に付着した霜を取り除くために経過時間とともに暖房運転から除霜運転に切り替わり、その後、暖房運転と除霜運転とが交互に繰り返される。
【0028】
(昇華除霜)
本実施形態では、空気調和機1の除霜運転を行うとき、外気の温度が氷点より低い場合において昇華除霜方式を採用する。
【0029】
一般的なリバース除霜方式では、暖房運転での冷媒回路1cにおける冷媒の流れの向きが切り替えられ、冷房サイクルとされる。そして、室外熱交換器5を氷点以上に維持するために室外ファン20を停止、及び、圧縮機6が外気温等の条件によって決まる一定の回転数で回転して、室外熱交換器5に高温の冷媒を流入させて室外熱交換器5に付着した霜を融解する。
【0030】
本実施形態では、外気の温度が氷点より低い場合、リバース除霜方式と同様に冷媒回路1cを冷房サイクルとし、外気の温度より高く、且つ、氷点(0℃)より低い温度の冷媒を室外熱交換器5に流すことで昇華除霜を行う。ここで、リバース除霜方式と同様に室外ファン20を停止し、圧縮機6を外気温等の条件によって決まる一定の回転数にすると、圧力が上がり、冷媒の温度が上昇し氷点を越えてしまう場合がある。そこで圧力の上昇を抑えるために、昇華除霜においては、圧縮機6の回転数及び室外ファン20の回転数の少なくともいずれか一方を制御することにより冷媒温度が外気の温度より高く、且つ、氷点より低くなるように制御される。
【0031】
例えば、制御部10は、温度センサ27で検出した外気の温度が氷点より低い場合に、室外熱交換器5に流れる冷媒の温度を外気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度になるように制御し、室外熱交換器5に付着した霜の昇華除霜を行う。ここで、制御部10は、圧縮機6の回転数または室外ファン20の回転数を制御して、室外熱交換器5に流れる冷媒の温度を外気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度になるように制御する。
【0032】
このような空気調和機1であれば、昇華除霜を行うことができる。また昇華除霜を行うための専用の装置や部品を要さない。これにより、昇華除霜が実行可能な空気調和機であっても空気調和機のコスト増大が抑えられる。
【0033】
また、空気調和機1では、暖房運転時、室外熱交換器5は蒸発器として機能し、室内熱交換器4は凝縮器として機能する。これにより、暖房運転時には、凝縮器(室内熱交換器4)によって冷却された冷媒が蒸発器(室外熱交換器5)に流入する。ここで、冷媒回路1cが暖房サイクルのまま、すなわち、室外熱交換器5を蒸発器のまま霜を昇華させるには、室外熱交換器5において冷媒温度を外気の露点(外気が結露する温度)よりも高く、外気の温度以下の温度に設定しなければならない。
【0034】
例えば、外気の温度が-5.0℃で、湿度RH80%のとき、外気の露点は-7.6℃となる。この条件では、室外熱交換器5の温度が-7.6℃以下の時に室外熱交換器5が着霜する。このとき、室外熱交換器5は、蒸発器として機能し、冷媒が外気から熱を奪うことにより外気と冷媒とが熱交換をすることから、室外熱交換器5の温度は、-5.0℃より低くなくてはならない。これにより、蒸発器のまま室外熱交換器5の昇華除霜を行うには、室外熱交換器5の温度を-7.6℃より高く-5.0℃未満の温度差2.6℃の温度範囲に制御することが要される。また、蒸発器における室外熱交換器5の温度は、外気温や、その時に必要とされる能力にも起因するため、簡単に上げることができない。
【0035】
従って、冷却装置で採用されているような、蒸発器の昇華除霜を行う方法を空気調和機に取り入れると、上記のような狭い温度範囲での制御が必要になり、温度制御が困難になる。また、暖房サイクルのまま、上記の狭い温度範囲に冷媒温度を保つためには、温度センサのみならず、湿度センサが必要になる。
【0036】
これに対して、本実施形態では、除霜運転を暖房サイクルでなく冷房サイクルで行うため、蒸発器(室内熱交換器4)で熱を吸収した冷媒を凝縮器(室外熱交換器5)に流入させることができる。ここで、室外熱交換器5は、凝縮器として機能し、冷媒が外気に熱を放出することにより外気と冷媒とが熱交換をすることから、室外熱交換器5の温度は、外気の温度-5.0℃より高くなくてはならない。このため、室外熱交換器5に流入させる冷媒の温度を-5.0℃より高く氷点未満の温度差5.0℃の温度範囲といった広い範囲で制御できる。ここで、氷点未満とするのは、確実に水の融解を防止し霜を昇華させるためである。
【0037】
さらに、水の昇華熱は融解熱に比べて大きいため、昇華除霜は、霜を融解する一般的なリバース除霜に比べると除霜時間が長くかかる。その除霜時間を短縮するための1つの方法として、昇華除霜をおこなう熱交換器の冷媒流量を増やす方法が考えられる。この場合、昇華除霜運転では、室外熱交換器5における、冷媒の圧力または冷媒の温度が必要以上に上昇する場合がある。
【0038】
本実施形態では、昇華除霜運転中に制御部10が圧縮機6の回転数及び室外ファン20の回転数の少なくともいずれか一方を制御する。これにより、室外熱交換器5における、冷媒の圧力を規定値以下に保つ、または冷媒の温度が必要以上に上昇することがなく、外気の温度以上氷点未満の温度範囲内に適切に調整される。さらに、室外ファン20を回転させることで室外熱交換器5に付着した霜に風が当たり、霜の昇華が促進される。これにより、短時間での昇華除霜が可能になる。
【0039】
また、昇華除霜を採用すれば、室外熱交換器5において霜が融解した融解水が発生しない。これにより、昇華除霜時には、融解水が室外熱交換器5で凍結して生じる機器の破損が防止される。また、凍結防止のために室外熱交換器5内に設置されたヒータ装置を動作させる必要がない。これにより、空気調和機1の消費電力が抑えられる。
【0040】
図2は、本実施形態の暖房運転から除霜運転に切り替えるときのフローチャートの一例である。図2に示すフローチャートに従って、制御部10は、空気調和機1を制御する。
【0041】
制御部10によって空気調和機1の動作が開始されると、暖房運転が開始される(ステップS10)。次に、温度センサ25によって配管温度Tが測定される(ステップS20)。
【0042】
次に、制御部10によって、室外熱交換器5の除霜運転開始条件が成立しているかの判断がされる。例えば、除霜運転開始条件として、制御部10によって、配管温度Tが第1温度T以下であるかの判断がされる(ステップS30)。第1温度Tとしては、例えば、-10℃が用いられ、配管温度Tが-10℃よりも高ければ(NO)、除霜運転開始条件が成立していないとして、ステップS20からステップS30までのルーチンが繰り返される。
【0043】
一方、配管温度Tが第1温度T(例えば、-10℃)以下であれば(YES)、除霜運転開始条件が成立しているとしてステップS40に進む。そして、温度センサ27によって室外熱交換器5の周辺の外気の温度Tが測定される(ステップS40)。
【0044】
次に、制御部10は、温度センサ27で検出した外気の温度Tが予め定められた氷点より低い温度である温度、例えば、氷点(1気圧のもとでは0℃)未満に設定された閾値(例えば、-5℃)未満であるかの判断を行う(ステップS50)。
【0045】
ここで、外気の温度Tが閾値未満であれば(YES)、制御部10は、室外熱交換器5の昇華除霜運転を開始する(ステップS60)。ここで、昇華除霜運転時刻tは、0(分)とされる。一方、外気の温度Tが閾値以上であれば(NO)、制御部10は、室外熱交換器5の昇華除霜運転を開始せずに、室外熱交換器5のリバース除霜運転が開始される(ステップS61)。
【0046】
室外熱交換器5のリバース除霜運転及び昇華除霜運転では、暖房運転での冷媒回路1cにおける冷媒の流れの向きが流路切替器8によって切り替えられ冷房サイクルとされる。但し、リバース除霜運転では、室外ファン20が停止及び圧縮機6が外気温等の条件によって決まる一定の回転数で回転する。一方、室外熱交換器5の昇華除霜運転が開始された場合は、圧縮機6の回転数及び室外ファン20の回転数の少なくともいずれか一方の初期値が設定される(ステップS70)。ここで設定されるそれぞれの初期値は予め実験等によって決定された値である。
【0047】
次に、昇華除霜運転では、室外ファン20の回転数及び圧縮機6の回転数の少なくともいずれか一方が調整されて、室外熱交換器5に流れる冷媒の温度が外気の温度Tより高く、且つ、氷点より低い温度に制御される(ステップS80)。これにより、室外熱交換器5に付着した霜の昇華除霜が行われる。具体的には室外熱交換器5に付着した霜のうち、室外熱交換器5と接する部分の霜が昇華することで室外熱交換器5と霜の間の付着力が弱まり、霜が剥離または剥落することで、室外熱交換器5から霜が除去される。このとき、霜の剥離または剥落を促進するため、室外熱交換器5には機械的な振動や室外ファン20による送風などの外力が加えられてもよい。
【0048】
例えば、ステップS80の段階では、外気の温度Tが氷点よりもさらに低い温度(例えば、-5℃)の条件下にある。そして、室外熱交換器5に流入した冷媒の温度が室外ファン20の回転数及び圧縮機6の回転数の少なくともいずれか一方が調整されることにより外気の温度Tより高く、且つ、氷点より低い温度に設定される。なお、室外熱交換器5に流入した冷媒の温度は、冷房サイクルで室外熱交換器5の入口となる温度センサ26によって測定される。
【0049】
このように、外気の温度Tが閾値よりも低い環境下で、室外熱交換器5に流入した冷媒の温度が外気の温度Tより高く、且つ、氷点より低い温度に設定されることで、室外熱交換器5の昇華除霜が確実かつ迅速に行われる。また、氷点よりも低い閾値を設けることにより、室外熱交換器5に流入した冷媒の温度範囲(外気温度以上氷点未満)がより広い範囲で制御可能になる。
【0050】
昇華除霜運転中は、冷媒の温度Tが外気の温度Tより高く、且つ、水の融点未満氷点より低い温度(T<T<0℃)になるように、室外ファン20の回転数及び圧縮機6の回転数の少なくともいずれか一方が調整される。
【0051】
次に、昇華除霜運転時間tが計測される(ステップS90)。続いて、制御部10によって、昇華除霜運転時間tが昇華除霜運転終了条件が成立しているか否かの判断がされる(ステップS100)。昇華除霜運転時間tが昇華除霜運転終了条件となる経過時間tであれば(ステップS100:YES)、昇華除霜運転が終了する。一方、昇華除霜運転時間tが経過時間tでなければ(ステップS100:NO)、冷媒の温度Tが外気の温度Tより高く、且つ、氷点より低い温度になるようにステップS80からステップS100までのルーチンが繰り返される。
【0052】
経過時間tは、霜が昇華によってなくなる時間を予め実験、シミュレーション等によって求めておく。経過時間tは、制御部10に記憶される。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、空気調和機1に限らず、制御部10が実行するすべての制御方法も提供される。一例として、室外熱交換器5が暖房運転時に着霜したと判定された場合、冷媒回路1cにおける冷媒の流れ方向を切り替え室外熱交換器5の除霜運転を開始する場合に、外気の温度が氷点より低い場合に、室外熱交換器5に流れる冷媒の温度を外気の温度より高く、且つ、氷点より低い温度に設定し、室外熱交換器5に付着した霜の昇華除霜を行う制御方法が提供される。また、各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…空気調和機
1c…冷媒回路
2…室内機
3…室外機
4…室内熱交換器
5…室外熱交換器
6…圧縮機
7…減圧器
8…流路切替器
9…配管
10…制御部
20…室外ファン
21…室内ファン
25、26、27…温度センサ
図1
図2