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特開2022-149065積層セラミック電子部品及び回路基板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149065
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051014
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】財満 知彦
(72)【発明者】
【氏名】笹木 隆
(72)【発明者】
【氏名】松下 邦博
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF02
5E001AH01
5E001AH07
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG28
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】実装の際に半田にボイドが発生しにくい積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、端部外部電極と、を具備する。上記セラミック素体は、相互に直交する第1軸、第2軸、及び第3軸にそれぞれ垂直な主面、端面、及び側面と、上記主面、上記端面、及び上記側面を接続する頂部と、上記第1軸方向に積層された複数の内部電極と、を有する。上記端部外部電極は、上記頂部上に位置する角部と、上記端面を覆い、上記端面から上記主面及び上記側面に延出するベース部と、上記ベース部から厚み方向に突出する突出部と、を有する。上記突出部は、上記主面上に位置し、上記角部から上記第2軸方向及び上記第3軸方向に延びるL字状の主面突出部を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交する第1軸、第2軸、及び第3軸にそれぞれ垂直な主面、端面、及び側面と、前記主面、前記端面、及び前記側面を接続する頂部と、前記第1軸方向に積層された複数の内部電極と、を有するセラミック素体と、
前記頂部上に位置する角部と、前記端面を覆い、前記端面から前記主面及び前記側面に延出するベース部と、前記ベース部から厚み方向に突出する突出部と、を有する端部外部電極と、
を具備し、
前記突出部は、前記主面上に位置し、前記角部から前記第2軸方向及び前記第3軸方向に延びるL字状の主面突出部を含む
積層セラミック電子部品。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記主面突出部の前記ベース部からの突出量は3μm以上50μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記主面突出部の前記ベース部からの突出量が5μm以上30μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記突出部は、前記端面に沿って前記主面突出部から前記第1軸方向に延びる端面突出部を更に含む
積層セラミック電子部品。
【請求項5】
請求項4に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記端面突出部の前記ベース部からの突出量が3μm以上50μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記突出部は、前記側面に沿って前記主面突出部から前記第1軸方向に延びる側面突出部を更に含む
積層セラミック電子部品。
【請求項7】
請求項6に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記側面突出部の前記ベース部からの突出量が3μm以上50μm以下である
積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品であって、
前記セラミック素体の前記第2軸方向の中央部に前記主面及び前記側面に沿って設けられ、前記主面上の厚みが、前記ベース部よりも大きく、前記主面突出部よりも小さい中央外部電極を更に具備する
積層セラミック電子部品。
【請求項9】
積層セラミック電子部品と、接続電極を有する実装基板と、を具備し、
前記積層セラミック電子部品は、
相互に直交する第1軸、第2軸、及び第3軸にそれぞれ垂直な主面、端面、及び側面と、前記主面、前記端面、及び前記側面を接続する頂部と、前記第1軸方向に積層された複数の内部電極と、を有するセラミック素体と、
前記頂部上に位置する角部と、前記端面を覆い、前記端面から前記主面及び前記側面に延出するベース部と、前記ベース部から厚み方向に突出する突出部と、を有し、前記実装基板の前記接続電極に半田を介して接続される端部外部電極と、
を含み、
前記突出部は、前記主面上に位置し、前記角部から前記第2軸方向及び前記第3軸方向に延びるL字状の主面突出部を含む
回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極を備えた積層セラミック電子部品及び回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
半田を用いて積層セラミックコンデンサを実装する際に、半田に空気が混入することでボイドが発生することがある。これにより、積層セラミックコンデンサの放熱が滞りやすくなり、またボイドを起点とするクラックが生じやすくなる。このため、半田にボイドが発生することを防止する技術が求められる。
【0003】
特許文献1には、実装の際に半田に混入した空気が外部に抜けやすくなるように構成された積層セラミックコンデンサが開示されている。具体的に、この積層セラミックコンデンサでは、溶融状態の半田から外部電極に作用する表面張力によって回転を生じさせることで、溶融状態の半田からの空気の放出を促進する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-43272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半田にボイドが発生することを防止するために、上記のように半田に混入した空気を溶融状態のうちに放出させることも有効であるが、そもそも半田に空気を混入させないことが更に有効であると考えられる。つまり、積層セラミックコンデンサを実装する際に、半田への空気の混入を抑制可能な技術が求められる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、実装の際に半田にボイドが発生しにくい積層セラミック電子部品及び回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、端部外部電極と、を具備する。
上記セラミック素体は、相互に直交する第1軸、第2軸、及び第3軸にそれぞれ垂直な主面、端面、及び側面と、上記主面、上記端面、及び上記側面を接続する頂部と、上記第1軸方向に積層された複数の内部電極と、を有する。
上記端部外部電極は、上記頂部上に位置する角部と、上記端面を覆い、上記端面から上記主面及び上記側面に延出するベース部と、上記ベース部から突出する突出部と、を有する。
上記突出部は、上記主面上に位置し、上記角部から上記第2軸方向及び上記第3軸方向に延びるL字状の主面突出部を含む。
上記主面突出部の上記ベース部からの突出量は3μm以上50μm以下であることが好ましい。
上記主面突出部の上記ベース部からの突出量は5μm以上30μm以下であることが好ましい。
上記突出部は、上記端面に沿って上記主面突出部から上記第1軸方向に延びる端面突出部を更に含んでもよい。
上記端面突出部の上記ベース部からの突出量は3μm以上50μm以下であることが好ましい。
上記突出部は、上記側面に沿って上記主面突出部から上記第1軸方向に延びる側面突出部を更に含んでもよい。
上記側面突出部の上記ベース部からの突出量は3μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0008】
この構成では、端部外部電極の角部に突出部を設けることで、実装の際に半田が角部を起点としてその周囲に順次濡れ広がる。このように、端部外部電極における半田が濡れ広がる際の流れを予め規定することで、端部外部電極に濡れ広がる過程での半田への空気の混入が効果的に抑制されるため、半田にボイドが発生しにくくなる。
特に、端部外部電極にL字状の主面突出部を設けることで、端部外部電極における実装基板の接続電極と対向する領域において、空気がより混入しにくい流れで半田を濡れ広がらせることができる。これにより、端部外部電極と実装基板の接続電極との間の半田による接続がボイドによって阻害されにくくなる。
【0009】
上記積層セラミック電子部品は、上記セラミック素体の上記第2軸方向の中央部に上記主面及び上記側面に沿って設けられ、上記主面上の厚みが、上記ベース部よりも大きく、上記主面突出部よりも小さい中央外部電極を更に具備してもよい。
この積層セラミック電子部品では、3端子型の構成において、上記の効果を有効に得つつ、実装基板の接続電極に対する中央外部電極の半田を介した良好な接続が得られる。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る回路基板は、積層セラミック電子部品と、接続電極を有する実装基板と、を具備する。
上記積層セラミック電子部品は、セラミック素体と、端部外部電極と、を含む。
上記セラミック素体は、相互に直交する第1軸、第2軸、及び第3軸にそれぞれ垂直な主面、端面、及び側面と、上記主面、上記端面、及び上記側面を接続する頂部と、上記第1軸方向に積層された複数の内部電極と、を有する。
上記端部外部電極は、上記頂部上に位置する角部と、上記端面を覆い、上記端面から上記主面及び上記側面に延出するベース部と、上記ベース部から突出する突出部と、を有し、上記実装基板の上記接続電極に半田を介して接続される。
上記突出部は、上記主面上に位置し、上記角部から上記第2軸方向及び上記第3軸方向に延びるL字状の主面突出部を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の目的は、実装の際に半田にボイドが発生しにくい積層セラミック電子部品及び回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図2】上記積層セラミックコンデンサの図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3】上記積層セラミックコンデンサの図1のB-B'線に沿った断面図である。
図4A】上記積層セラミックコンデンサの実装過程を示す側面図である。
図4B】上記積層セラミックコンデンサが実装された回路基板の側面図である。
図5A】上記積層セラミックコンデンサを底面側から示す図である。
図5B】上記積層セラミックコンデンサを側面側から示す図である。
図5C】上記積層セラミックコンデンサを端面側から示す図である。
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
図7】ステップS02で得られるセラミック素体の斜視図である。
図8A】ステップS31を示す図である。
図8B】ステップS31を示す図である。
図8C】ステップS31を示す図である。
図8D】ステップS31を示す図である。
図8E】ステップS31を示す図である。
図8F】ステップS31を示す図である。
図9A】ステップS32を示す図である。
図9B】ステップS32を示す図である。
図9C】ステップS32を示す図である。
図10】他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図11】他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの図10のC-C'線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
図面には、適宜相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。X軸、Y軸、及びZ軸は全図において共通である。
【0014】
[積層セラミックコンデンサ10の基本構成]
図1~3は、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。図2は、積層セラミックコンデンサ10の図1のA-A'線に沿った断面図である。図3は、積層セラミックコンデンサ10の図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0015】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1端部外部電極13aと、第2端部外部電極13bと、を備える。セラミック素体11の外面は、X軸に垂直な第1及び第2端面E1,E2と、Y軸に垂直な第1及び第2側面S1,S2と、Z軸に垂直な第1及び第2主面M1,M2と、を有する。
【0016】
セラミック素体11は、略直方体状であり、8つの頂部11a(図7等参照)を有する。つまり、セラミック素体11の頂部11aは、端面E1,E2、側面S1,S2、及び主面M1,M2を接続している。セラミック素体11は面取りされ、各頂部11aが丸みを帯びた曲面で構成されていることが好ましい。
【0017】
積層セラミックコンデンサ10では、第1端部外部電極13aがセラミック素体11の第1端面E1を覆い、第2端部外部電極13bがセラミック素体11の第2端面E2を覆っている。端部外部電極13a,13bは、セラミック素体11を挟んでX軸方向に対向し、積層セラミックコンデンサ10の端子として機能する。
【0018】
端部外部電極13a,13bは、セラミック素体11の端面E1,E2から主面M1,M2及び側面S1,S2に沿ってX軸方向内側にそれぞれ延出している。これにより、端部外部電極13a,13bでは、図2に示すX-Z平面に平行な断面、及びX-Y平面に平行な断面がいずれもU字状となっている。
【0019】
第1端部外部電極13aはセラミック素体11の第1端面E1側の4つの頂部11aを覆い、第2端部外部電極13bはセラミック素体11の第2端面E2側の4つの頂部11aを覆っている。つまり、端部外部電極13a,13bはそれぞれ、セラミック素体11の頂部11a上に位置する4つの角部Kを含む。
【0020】
端部外部電極13a,13bは、高い導電性を有する材料によって形成される。具体的に、端部外部電極13a,13bは、例えば、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、及びSn(錫)の少なくとも1つの元素を主成分とする金属や合金で形成することができる。
【0021】
端部外部電極13a,13bは、例えば、導電性金属ペーストを焼き付けた下地層と、下地層上に湿式メッキ法で形成したメッキ層と、で構成することができる。一例として、下地層は、Ni、Cu、Pd、Agのいずれか1つを主成分することができる。また、メッキ層は、Ni、Cu、Sn、Pd、Agのいずれか1つを主成分とする単層又は複層構造に形成することができる。
【0022】
セラミック素体11は、誘電体セラミックスで形成されている。セラミック素体11は、誘電体セラミックスに覆われた複数の第1内部電極12a及び複数の第2内部電極12bを有する。複数の内部電極12a,12bは、いずれもX-Y平面に沿って延びるシート状であり、Z軸方向に沿って交互に配置されている。
【0023】
セラミック素体11には、内部電極12a,12bがセラミック層を挟んでZ軸方向に対向する対向領域が形成されている。第1内部電極12aは、対向領域から第1端面E1に引き出され、第1端部外部電極13aに接続されている。第2内部電極12bは、対向領域から第2端面E2に引き出され、第2端部外部電極13bに接続されている。
【0024】
このような構成により、積層セラミックコンデンサ10では、第1端部外部電極13aと第2端部外部電極13bとの間に電圧が印加されると、内部電極12a,12bの対向領域において複数のセラミック層に電圧が加わる。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、端部外部電極13a,13b間の電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0025】
セラミック素体11では、内部電極12a,12b間の各セラミック層の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。誘電体セラミックスは、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とすることができる。なお、ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含んでもよい。ペロブスカイト構造を有するセラミック材料としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含む材料が挙げられる。具体的には、例えば、Ba1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)が挙げられる。
【0026】
なお、誘電体セラミックスは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O)、ジルコン酸バリウム(BaZrO)、酸化チタン(TiO)などの組成系でもよい。
【0027】
[端部外部電極13a,13bの詳細構成]
積層セラミックコンデンサ10では、端部外部電極13a,13bがそれぞれ、ベース部131と、突出部132と、を有する。ベース部131は、セラミック素体11の表面に沿って概ね平坦に形成されている。突出部132は、ベース部131よりも厚く形成され、ベース部131から厚み方向に突出している。
【0028】
より詳細に、各端部外部電極13a,13bのベース部131は、セラミック素体11の端面E1,E2を覆い、端面E1,E2からそれぞれ主面M1,M2及び側面S1,S2に延出している。また、各端部外部電極13a,13bの突出部132は、セラミック素体11の各頂部11a上に位置する角部Kを構成する。
【0029】
各端部外部電極13a,13bでは、突出部132が、第1側面S1側の位置と第2側面S2側の位置との2ヶ所に分けて設けられている。つまり、端部外部電極13a,13bに設けられた4ヶ所の突出部132はそれぞれ、セラミック素体11におけるZ軸方向に並ぶ2つの頂部11aとこれらをZ軸方向に接続する稜部とを一括して覆っている。
【0030】
突出部132は、主面M1,M2上に位置する主面突出部132mと、側面S1,S2上に位置する側面突出部132sと、端面E1,E2上に位置する端面突出部132eと、を含む。主面突出部132mはZ軸方向に突出し、側面突出部132sはY軸方向に突出し、端面突出部132eはX軸方向に突出している。
【0031】
各主面突出部132mは、角部KからX軸方向及びY軸方向に沿ってそれぞれ延び、X-Y平面に沿ったL字状の平面形状を有する。なお、各主面突出部132mの平面形状は、主面M1,M2における頂部11aを含む隅部のL字状の輪郭に沿った形状であれば、厳密には「L」の字体と異なる見た目であってもL字状であるものとする。
【0032】
側面突出部132s及び端面突出部132eは、それぞれ側面S1,S2及び端面E1,E2に沿ってZ軸方向に延び、端部外部電極13a,13bのZ軸方向に延びる4つの稜部を構成する。側面突出部132s及び端面突出部132eはそれぞれ、Z軸方向に対向する一対の主面突出部132mを側面S1,S2及び端面E1,E2に沿って接続する。
【0033】
つまり、各側面突出部132sは、対応する主面突出部132mから連続して設けられ、対応する主面突出部132mとX軸方向の寸法がほぼ等しい。同様に、各端面突出部132eは、対応する主面突出部132mから連続して設けられ、対応する主面突出部132mとY軸方向の寸法がほぼ等しい。
【0034】
図4Aは、積層セラミックコンデンサ10を用いた回路基板100の製造過程を示す側面図である。回路基板100は、半田Hを介して積層セラミックコンデンサ10が実装される実装基板110を有する。実装基板110は、X-Y平面に沿って延びる基材111と、基材111上に設けられた接続電極112と、を有する。
【0035】
実装基板110では、積層セラミックコンデンサ10の端部外部電極13a,13bに対応する2つの接続電極112が設けられ、各接続電極112上にそれぞれ半田Hが配置される。積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11の第2主面M2を実装基板110と対向させ、端部外部電極13a,13bの位置を接続電極112上の位置に合わせた状態で、実装基板110上に載置される。
【0036】
積層セラミックコンデンサ10が載置された実装基板110をリフロー炉などで加熱することで、接続電極112上の半田Hを溶融させる。これにより、溶融状態の半田Hは、実装基板110の接続電極112、及び積層セラミックコンデンサ10の端部外部電極13a,13bの表面に沿って濡れ広がる。
【0037】
具体的に、半田Hは、接続電極112と端部外部電極13a,13bとの間に濡れ広がり、更に端部外部電極13a,13bをZ軸方向上方に濡れ上がる。そして、半田Hを室温に戻して凝固させることで、図4Bに示すように、積層セラミックコンデンサ10が実装基板110に半田Hを介して接続された回路基板100が得られる。
【0038】
回路基板100では、半田Hにボイドが存在すると、積層セラミックコンデンサ10と実装基板110との間で接続強度の低下や接続抵抗の上昇が生じる。また、ボイドが存在する半田Hでは、ボイドを起点としてクラックが発生しやすく、積層セラミックコンデンサ10と実装基板110との間での接続不良が発生しやすくなる。
【0039】
更に、半田Hでは、ボイドの存在によって熱抵抗が増大する。このため、積層セラミックコンデンサ10では、半田Hにボイドが存在することで、放熱性が不充分となり、使用時に過度に温度上昇することがある。これにより、積層セラミックコンデンサ10では、機能の低下や損傷の発生などの問題が生じやすくなる。
【0040】
これに対し、積層セラミックコンデンサ10では、端部外部電極13a,13bの突出部132の作用によって、溶融状態の半田Hが端部外部電極13a,13bに濡れ広がる過程で空気が混入しにくくなる。これにより、積層セラミックコンデンサ10を用いた回路基板100では、半田Hにボイドが発生しにくくなる。
【0041】
図5A~5Cは、溶融状態の半田Hが端部外部電極13a,13bに濡れ広がる際の流れを、矢印を用いて模式的に示している。端部外部電極13a,13bでは、積層セラミックコンデンサ10の底面を構成する第2主面M2上において接続電極112に向けてZ軸方向下方に突出した主面突出部132mを起点として半田Hが濡れ広がる。
【0042】
半田Hが濡れ広がる起点として主面突出部132mを設けることで、端部外部電極13a,13b上で濡れ広がる半田Hに所定の流れを形成することができる。これにより、半田Hが端部外部電極13a,13b上の不特定の様々な位置から一斉に濡れ広がる際に生じやすい空気の取り込みを防止することができる。
【0043】
図5Aは、積層セラミックコンデンサ10を実装基板110と対向する底面を構成する第2主面M2側から示している。各端部外部電極13a,13bの主面M2上の領域では、半田Hが、Y軸方向両側の主面突出部132mからベース部131にX軸及びY軸方向の内側に向けて濡れ広がる。
【0044】
このとき、端部外部電極13a,13bの第2主面M2上の領域では、X軸及びY軸方向の四隅にそれぞれ離間してL字状の主面突出部132mが配置されている。緻密な金属で形成された各主面突出部132mは、昇温しやすく、半田Hと充分に接することで蓄熱しやすいため、半田Hを迅速に溶融させて濡れ広がりの起点となる。このため、端部外部電極13a,13bの第2主面M2上の領域では、半田HにX軸及びY軸方向の外側に向けた流れが生じにくい。このため、端部外部電極13a,13b上において半田Hが空気を取り込むことなくスムーズに濡れ広がる。
【0045】
このように、回路基板100では、半田Hにおける積層セラミックコンデンサ10と実装基板110との接続状態に最も大きく影響する端部外部電極13a,13bと接続電極112とに挟まれた部分にボイドが発生しにくい。これにより、半田Hにボイドが発生することによる接続信頼性や放熱性の低下を効果的に防止することができる。
【0046】
なお、端部外部電極13a,13bでは、L字状の主面突出部132mにおけるX軸方向に延びる部分の長さをY軸に沿った部分の長さよりも大きくすることで、半田HのY軸方向の濡れ広がりを制御しやすくなる。また、L字状の主面突出部132mにおけるY軸方向に延びる部分の長さをX軸に沿った部分の長さよりも大きくすることで、半田HのX軸方向の濡れ広がりを制御しやすくなる。
【0047】
図5Bは、積層セラミックコンデンサ10を第2側面S2側から示している。各端部外部電極13a,13bの側面S1,S2上の領域では、半田Hが、Y軸方向両側の主面突出部132mから側面突出部132sに沿ってZ軸方向上方に濡れ上がりつつ、X軸方向の内側のベース部131に濡れ広がる。
【0048】
図5Cは、積層セラミックコンデンサ10を第1端面E1側から示している。各端部外部電極13a,13bの端面E1,E2上の領域では、半田Hが、Y軸方向両側の主面突出部132mから端面突出部132eに沿ってZ軸方向上方に濡れ上がりつつ、Y軸方向の内側のベース部131に濡れ広がる。
【0049】
このように、端部外部電極13a,13bの側面S1,S2上及び端面E1,E2上のいずれの領域においても、半田Hに所定の流れを形成することができる。これにより、端部外部電極13a,13bの周囲に濡れ上がった半田Hにもボイドが形成されにくくなるため、接続信頼性や放熱性の低下を更に効果的に防止することができる。
【0050】
なお、端部外部電極13a,13bの形状は、半田Hの適切な流れを形成可能なように適宜決定可能である。
【0051】
例えば、端部外部電極13a,13bの主面M1,M2上の部分について、ベース部131の厚みは、10μm以上110μm以下であることが好ましく、一例として50μmとすることができる。また、主面突出部132mの厚みは、13μm以上160μm以下であることが好ましく、一例として80μmとすることができる。更に、主面突出部132mのベース部131からの突出量は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましい。
【0052】
また、端部外部電極13a,13bの側面S1,S2上の部分について、ベース部131の厚みは、10μm以上110μm以下であることが好ましく、一例として50μmとすることができる。また、側面突出部132sの厚みは、13μm以上160μm以下であることが好ましく、一例として80μmとすることができる。更に、側面突出部132sのベース部131からの突出量は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましい。
【0053】
更に、端部外部電極13a,13bの端面E1,E2上の部分について、ベース部131の厚みは、15μm以上125μm以下であることが好ましく、一例として60μmとすることができる。また、端面突出部132eの厚みは、18μm以上175μm以下であることが好ましく、一例として90μmとすることができる。更に、端面突出部132eのベース部131からの突出量は、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることが更に好ましい。
【0054】
なお、端部外部電極13a,13bにおける各面(主面M1,M2、側面S1,S2、及び端面E1,E2)上の各部分の厚みは、例えば、各面に垂直な方向から見たときに各部分の占める2次元領域の重心となる位置で測定することができる。
【0055】
加えて、X軸方向の寸法が1370μmで、Y軸方向の寸法が800μmの積層セラミックコンデンサ10における主面突出部132mでは、X軸方向の寸法が100μm以上250μm以下であることが好ましく、Y軸方向の寸法が50μm以上250μm以下であることが好ましい。
【0056】
[積層セラミックコンデンサ10の製造方法]
図6は、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10の製造方法の一例を示すフローチャートである。図7~9Cは、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、図6に沿って、図7~9Cを適宜参照しながら説明する。
【0057】
(ステップS01:セラミック素体作製)
ステップS01では、未焼成のセラミック素体11を作製する。未焼成のセラミック素体11は、複数のセラミックシートをZ軸方向に積層して熱圧着することにより得られる。セラミックシートに予め所定のパターンの導電性金属ペーストを印刷しておくことにより、内部電極12a,12bを配置することができる。
【0058】
セラミックシートは、セラミックスラリーをシート状に成形した未焼成の誘電体グリーンシートである。セラミックシートは、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックスラリーの成分は、所定の組成のセラミック素体11が得られるように調整される。
【0059】
(ステップS02:焼成)
ステップS02では、ステップS01で得られた未焼成のセラミック素体11を焼成する。これにより、セラミック素体11が焼結し、図7に示すセラミック素体11が得られる。セラミック素体11の焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。セラミック素体11の焼成条件は、適宜決定可能である。
【0060】
(ステップS03:端部外部電極形成)
ステップS03では、ステップ02で得られたセラミック素体11に端部外部電極13a,13bを形成する。これにより、図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10が完成する。ステップS03には、ステップS31、ステップS32、ステップS33、及びステップS34の4つの工程が含まれる。
【0061】
(ステップS31:第1下地層形成)
ステップS31では、セラミック素体11に、端部外部電極13a,13bの下地層を構成する第1下地層L1を形成する。第1下地層L1は、端部外部電極13a,13bの突出部132に対応する位置に設けられる。ステップS31における第1下地層L1の形成には、導電性金属ペーストPを用いる。
【0062】
図8A図8Fは、ステップS31においてセラミック素体11に第1下地層L1を形成する過程を示している。まず、図8Aに示すように、間隔をあけて2ヶ所に配置した導電性金属ペーストPに、セラミック素体11の第2側面S2を浸漬させる。これにより、セラミック素体11の第2側面S2に導電性金属ペーストPが付着することで、図8Bに示すように、第1下地層L1の一部としての中間体膜L1aが形成される。
【0063】
そして、同様に、図8Cに示すように、セラミック素体11の第1側面S1を導電性金属ペーストPに浸漬することで、セラミック素体11の第1側面S1にも第1下地層L1の一部としての中間体膜L1aが形成される。これにより、セラミック素体11の表面における4ヶ所に中間体膜L1aが形成される。
【0064】
次に、図8Dに示すように、間隔をあけて2ヶ所に配置した導電性金属ペーストPに、セラミック素体11の第1端面E1を浸漬させる。これにより、セラミック素体11の第1端面E1に導電性金属ペーストPが付着するとともに、中間体膜L1aを構成する導電性金属ペーストPと一体となって、図8Eに示すように、L字状の第1下地層L1が形成される。
【0065】
そして、同様に、図8Fに示すように、セラミック素体11の第2端面E2を導電性金属ペーストPに浸漬することで、第2端面E2側においてもL字状の第1下地層L1が形成される。これにより、セラミック素体11の表面における4ヶ所に第1下地層L1が形成される。
【0066】
なお、ステップS31の条件は、適宜決定可能である。例えば、導電性金属ペーストPの粘度は、320PSとすることができる。セラミック素体11の導電性金属ペーストPへの浸漬時間は、1.5秒とすることができる。また、浸漬後における第1下地層L1は、所定の条件で乾燥させることができる。
【0067】
(ステップS32:第2下地層形成)
ステップS32では、第1下地層L1が形成されたセラミック素体11に、第1下地層L1とともに端部外部電極13a,13bの下地層を構成する第2下地層L2を形成する。第2下地層L2は、端部外部電極13a,13bの全体にわたって設けられる。ステップS32における第2下地層L2の形成にも、導電性金属ペーストPを用いる。
【0068】
図9A~9Cは、ステップS32においてセラミック素体11に第2下地層L2を形成する過程を示している。まず、図9Aに示すように、セラミック素体11を第1端面E1側から第1下地層L1が沈む位置まで導電性金属ペーストPに浸漬させ、セラミック素体11及び第1下地層L1上に導電性金属ペーストPを付着させる。
【0069】
これにより、図9Bに示すように、セラミック素体11の第1端面E1側を第1下地層L1の上から被覆する第2下地層L2が形成される。セラミック素体11に形成された下地層L1,L2では、第2下地層L2のみの部分がベース部131に対応し、下地層L1,L2が重なっている部分が突出部132に対応する。
【0070】
そして、同様に、図9Cに示すように、セラミック素体11を第2端面E2側から第1下地層L1が沈む位置まで導電性金属ペーストPに浸漬させることで、第2端面E2側にも第1端面E1側と同様に第2下地層L2が形成される。これにより、端部外部電極13a,13bのベース部131及び突出部132の外形が得られる。
【0071】
なお、ステップS32の条件は、適宜決定可能である。例えば、導電性金属ペーストPの粘度は、320PSとすることができる。セラミック素体11の導電性金属ペーストPへの浸漬時間は、1.5秒とすることができる。また、浸漬後における第2下地層L2は、所定の条件で乾燥させることができる。
【0072】
(ステップS33:焼き付け)
ステップS33では、セラミック素体11に形成された下地層L1,L2を加熱処理により焼き付ける。なお、ステップS31,S32をステップS02の前に実施することで、ステップS02でのセラミック素体11の焼成とステップS33の下地層L1,L2の焼き付けとを1回の加熱処理で行うこともできる。
【0073】
(ステップS34:メッキ層形成)
ステップS34では、セラミック素体11に焼き付けられた下地層L1,L2上に湿式メッキ処理によってメッキ層を形成する。これにより、端部外部電極13a,13bが完成する。湿式メッキ処理によって均一な厚みのメッキ層が形成されるため、端部外部電極13a,13bには上記のような下地層L1,L2の形状が維持される。
【0074】
(変形例)
上述した製造方法は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ10の構成が得られる限りにおいて様々に変更可能である。例えば、端部外部電極13a,13bの形成方法は、ベース部131及び突出部132を形成可能であれば、上記のような第1及び第2下地層L1,L2を形成する手法に限定されない。
【0075】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0076】
例えば、端部外部電極13a,13bの突出部132は、少なくとも主面突出部132mを含んでいればよく、側面突出部132s及び端面突出部132eの少なくとも一方を含んでいなくてもよい。この場合にも、半田Hにボイドが発生することによる接続信頼性や放熱性の低下を抑制することができる。また、突出部132は、X軸及びY軸方向の四隅のすべてに設けられていることが好ましいが、少なくとも一隅に設けられていればよい。
【0077】
また、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサは、2端子型に限定されず、3端子型に構成することもできる。図10,11は、3端子型の積層セラミックコンデンサ10aを示している。積層セラミックコンデンサ10aは、セラミック素体11のX軸方向の中央部に設けられた中央外部電極14が設けられている。
【0078】
中央外部電極14は、セラミック素体11の主面M1,M2及び側面S1,S2に沿って全周にわたって設けられている。積層セラミックコンデンサ10aでは、第1内部電極12aがいずれも端部外部電極13a,13bに接続され、第2内部電極12bがいずれも中央外部電極14に接続されている。
【0079】
積層セラミックコンデンサ10aでは、中央外部電極14の主面M1,M2上の厚みが、主面突出部132mの主面M1,M2上の厚みよりも小さいことが好ましい。これにより、実装時における上記のような主面突出部132mを起点とする半田Hの流れの形成が中央外部電極14の存在によって妨げられにくくなる。
【0080】
また、積層セラミックコンデンサ10aでは、中央外部電極14の主面M1,M2上の厚みが、ベース部131の主面M1,M2上の厚みよりも大きいことが好ましい。これにより、積層セラミックコンデンサ10aでは、実装の際に実装基板110の接続電極112上の半田Hに対して中央外部電極14をより確実に接触させることができる。
【0081】
なお、3端子型の積層セラミックコンデンサ10aは、中央外部電極14がセラミック素体11の主面M1,M2及び側面S1,S2に沿って全周にわたって設けられている構成に限定されない。例えば、積層セラミックコンデンサ10aでは、中央外部電極14がセラミック素体11の主面M1,M2上においてY軸方向に離間していてもよい。
【0082】
更に、本発明は、積層セラミックコンデンサのみならず、端部外部電極を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。本発明を適用可能な積層セラミック電子部品としては、積層セラミックコンデンサ以外に、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0083】
10…積層セラミックコンデンサ
11…セラミック素体
11a…頂部
12a,12b…内部電極
13a,13b…端部外部電極
131…ベース部
132…突出部
132m…主面突出部
132s…側面突出部
132e…端面突出部
M1,M2…主面
S1,S2…側面
E1,E2…端面
K…角部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図10
図11