(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149075
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20220929BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02P5/46 A
H02K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051028
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平尾 基裕
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和則
(72)【発明者】
【氏名】新谷 宏
(72)【発明者】
【氏名】青崎 義宏
【テーマコード(参考)】
5H572
5H607
【Fターム(参考)】
5H572AA20
5H572BB10
5H572CC01
5H572DD03
5H572DD05
5H572DD07
5H572EE04
5H572GG01
5H572GG04
5H572HA09
5H572HB07
5H572HB09
5H572HC07
5H572JJ03
5H572JJ17
5H572JJ25
5H572KK05
5H572LL22
5H572LL32
5H572PP01
5H607BB01
5H607BB04
5H607BB05
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD16
5H607EE53
5H607FF01
5H607GG01
5H607GG08
5H607HH01
5H607HH08
5H607HH09
5H607JJ05
(57)【要約】
【課題】出力軸の直線運動の開始直後、筒部材の位置ずれが低減するアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータは、出力軸と、出力軸との相対回転が規制された筒部材と、出力軸との相対回転により出力軸を軸方向に移動させるナット部材と、ハウジングと、第1ロータと第1ステータとを有し、第1ロータの回転に連動して筒部材を回転させる第1モータと、第2ロータと第2ステータとを有し、第2ロータに連動してナット部材を回転させる第2モータと、第1モータ及び第2モータを制御する制御部と、を備える。制御部は、第1ロータ及び第2ロータが静止している第1状態から、第1ロータが静止し、第2ロータが回転する第2状態へ遷移する場合、第2ロータの回転により筒部材が連れ回る方向と反対方向の力であって、第2ロータの回転を抑制する力を加える電流を第2モータへ供給する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸と、
前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転が規制された筒部材と、
前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転により前記出力軸を軸方向に移動させるナット部材と、
前記筒部材と前記ナット部材とを回転自在に支持するハウジングと、
第1ロータと、前記第1ロータを回転させる第1ステータとを有し、前記第1ロータの回転に連動して前記筒部材を回転させる第1モータと、
第2ロータと、前記第2ロータを回転させる第2ステータとを有し、前記第2ロータに連動して前記ナット部材を回転させる第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1ロータ及び前記第2ロータが静止している第1状態から、前記第1ロータが静止し、前記第2ロータが回転する第2状態へ遷移する場合、前記第2ロータの回転により前記筒部材が連れ回る方向と反対方向の力であって、前記第1ロータの回転を抑制する力を加える電流を前記第1モータへ供給する
アクチュエータ。
【請求項2】
出力軸と、
前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転が規制された筒部材と、
前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転により前記出力軸を軸方向に移動させるナット部材と、
前記筒部材と前記ナット部材とを回転自在に支持するハウジングと、
第1ロータと、前記第1ロータを回転させる第1ステータとを有し、前記第1ロータの回転に連動して前記筒部材を回転させる第1モータと、
第2ロータと、前記第2ロータを回転させる第2ステータとを有し、前記第2ロータに連動して前記ナット部材を回転させる第2モータと、
前記第1モータ及び前記第2モータを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
要求される前記出力軸の動作に対応する前記筒部材及び前記ナット部材の目標位置を算出し、前記筒部材の目標位置を第1位置指令として生成し、前記ナット部材の目標位置を第2位置指令として生成する指令生成器と、
前記第1位置指令が与えられ、前記第1位置指令を達成するために必要な前記第1モータの第1トルク値を算出し、前記第1トルク値を第1トルク指令として生成する第1位置制御器と、
前記第2位置指令が与えられ、前記第2位置指令を達成するために必要な前記第2モータの第2トルク値を算出し、前記第2トルク値を第2トルク指令として生成する第2位置制御器と、
前記第1位置指令と前記第2位置指令と前記第2トルク指令とが与えられ、前記筒部材の連れ回りにより前記第1ロータに作用する連れ回りトルクを低減するためのカウンタートルク値を算出し、前記カウンタートルク値をカウンタートルク指令として生成する連れ回りトルク演算器と、
前記第1トルク指令と前記カウンタートルク指令とが与えられ、前記第1トルク値と前記カウンタートルク値とを合成した合成トルク値を合成トルク指令として生成する加算器と、
前記合成トルク指令を受け、前記合成トルク値に対応するように前記第1モータに供給する電流を制御する第1電流制御器と、
前記第2トルク指令を受け、前記第2トルク値に対応するように前記第2モータに供給する電流を制御する第2電流制御器と、
を有し、
前記連れ回りトルク演算器は、
前記第1位置指令及び前記第2位置指令に基づいて前記連れ回りトルクが発生するか否かを判定し、
前記連れ回りトルクが発生すると判定した場合、前記第2トルク値に基づいて前記カウンタートルク値を算出する
アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1モータの前記第1ロータの角度を検出する第1角度センサと、
前記第2モータの前記第2ロータの角度を検出する第2角度センサと、
を備え、
前記第1位置制御器は、前記第1角度センサの検出結果に基づき、前記第1ロータの角度が所望の角度となるように新たに前記第1トルク指令を生成するフィードバック制御機能を有し、
前記第2位置制御器は、前記第2角度センサの検出結果に基づき、前記第2ロータの角度が所望の角度となるように新たに前記第2トルク指令を生成するフィードバック制御機能を有する
請求項2に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1のアクチュエータは、回転運動したり、直線運動したりする出力軸を備える装置である。このようなアクチュエータは、ワークを搬送する搬送装置などに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のアクチュエータにおいて、ナット部材の回転により出力軸が直線運動を開始した直後、出力軸が回転し、筒部材が意図せず回転することがある。以下、ナット部材の回転によって筒部材が意図せず回転することを連れ回りと呼ぶ。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、出力軸の直線運動の開始直後、筒部材の位置ずれを低減させることができるアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の第1態様に係るアクチュエータは、出力軸と、前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転が規制された筒部材と、前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転により前記出力軸を軸方向に移動させるナット部材と、前記筒部材と前記ナット部材とを回転自在に支持するハウジングと、第1ロータと、前記第1ロータを回転させる第1ステータとを有し、前記第1ロータの回転に連動して前記筒部材を回転させる第1モータと、第2ロータと、前記第2ロータを回転させる第2ステータとを有し、前記第2ロータに連動して前記ナット部材を回転させる第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記第1ロータ及び前記第2ロータが静止している第1状態から、前記第1ロータが静止し、前記第2ロータが回転する第2状態へ遷移する場合、前記第2ロータの回転により前記筒部材が連れ回る方向と反対方向の力であって、前記第1ロータの回転を抑制する力を加える電流を前記第1モータへ供給する。
【0007】
これによれば、第1状態から第2状態に遷移する際、第2ステータから第2ロータに対し、連れ回り方向と反対方向に回転しようとする。よって、出力軸の直線運動の開始直後、筒部材の位置ずれが低減する。
【0008】
また、本開示の第2態様に係るアクチュエータは、出力軸と、前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転が規制された筒部材と、前記出力軸に貫通され、前記出力軸との相対回転により前記出力軸を軸方向に移動させるナット部材と、前記筒部材と前記ナット部材とを回転自在に支持するハウジングと、第1ロータと、前記第1ロータを回転させる第1ステータとを有し、前記第1ロータの回転に連動して前記筒部材を回転させる第1モータと、第2ロータと、前記第2ロータを回転させる第2ステータとを有し、前記第2ロータに連動して前記ナット部材を回転させる第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータを制御する制御部と、を備える。前記制御部は、要求される前記出力軸の動作に対応する前記筒部材及び前記ナット部材の目標位置を算出し、前記筒部材の目標位置を第1位置指令として生成し、前記ナット部材の目標位置を第2位置指令として生成する指令生成器と、前記第1位置指令が与えられ、前記第1位置指令を達成するために必要な第1モータの第1トルク値を算出し、前記第1トルク値を第1トルク指令として生成する第1位置制御器と、前記第2位置指令が与えられ、前記第2位置指令を達成するために必要な第2モータの第2トルク値を算出し、前記第2トルク値を第2トルク指令として生成する第2位置制御器と、前記第1位置指令と前記第2位置指令と前記第2トルク指令とが与えられ、前記筒部材の連れ回りにより前記第1ロータに作用する連れ回りトルクを低減するためのカウンタートルク値を算出し、前記カウンタートルク値をカウンタートルク指令として生成する連れ回りトルク演算器と、前記第1トルク指令と前記カウンタートルク指令とが与えられ、前記第1トルク値と前記カウンタートルク値とを合成した合成トルク値を合成トルク指令として生成する加算器と、前記合成トルク指令を受け、前記合成トルク値に対応するように前記第1モータに供給する電流を制御する第1電流制御器と、前記第2トルク指令を受け、前記第2トルク値に対応するように前記第2モータに供給する電流を制御する第2電流制御器と、を有する。前記連れ回りトルク演算器は、前記第1位置指令及び前記第2位置指令に基づいて前記連れ回りトルクが発生するか否かを判定する。前記連れ回りトルクが発生すると判定した場合、前記第2トルク値に基づいて前記カウンタートルク値を算出する。
【0009】
連れ回りトルク演算器は、第1ロータに連れ回りトルクが作用すると判定した場合、カウンタートルク指令を生成する。そして、第1ロータは、合成トルク値(カウンタートルク値を含む)に相当するトルクを生成するようになる。この結果、第1ロータには作用する連れ回りトルクは、合成トルクの分だけ相殺される。以上から、出力軸の直線運動の開始直後、筒部材の位置ずれが低減する。
【0010】
一態様に係るアクチュエータの望ましい態様として、前記第1モータの第1ロータの角度を検出する第1角度センサと、前記第2モータの第2ロータの角度を検出する第2角度センサと、を備える。前記第1位置制御器は、前記第1角度センサの検出結果に基づき、前記第1ロータの角度が所望の角度となるように新たに前記第1トルク指令を生成するフィードバック制御機能を有する。前記第2位置制御器は、前記第2角度センサの検出結果に基づき、前記第2ロータの角度が所望の角度となるように新たに前記第2トルク指令を生成するフィードバック制御機能を有する。
【0011】
これによれば、第1角度センサ及び第2角度センサの検出結果に基づき、新たに第1トルク指令及び第2トルク指令が生成される。これにより、目標位置から位置ずれした第1ロータや第2ロータを目標位置に移動させることができ、出力軸の位置精度が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、筒部材の位置ずれが低減し、出力軸の位置精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るアクチュエータを出力軸の中心軸に沿って切った場合の断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のアクチュエータと比較例のアクチュエータに直線運動させた場合、時刻の経過によるスプライン外筒の角度の変化と第1モータの出力トルクの変化を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態2のアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態3のアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態4に係るアクチュエータを出力軸の中心軸に沿って切った場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るアクチュエータを出力軸の中心軸に沿って切った場合の断面図である。
図1に示すように、アクチュエータ1は、第1モータM1と、第2モータM2と、出力軸SFと、スプライン外筒(筒部材)61と、ナット部材51と、制御部100と、を備える。また、実施形態1のアクチュエータ1は、図示しないワークを搬送する搬送装置に利用されている。アクチュエータ1は、出力軸SFの一方の端部に、アーム部80が取り付けられている。アーム部80は、出力軸SFの中心軸AXと直交する方向に延在し、かつワークを把持可能な装置である。そして、出力軸SFの駆動によりアーム部80が移動し、図示しないワークが搬送される。
【0016】
以下、出力軸SFの中心軸AXと平行な方向をZ方向と呼ぶ。また、Z方向のうち、出力軸SFの長さ方向の中央部から視て、アーム部80が取り付けられる方向をZ1方向と呼び、アーム部80が取り付けられていない方向をZ2方向と呼ぶ。
【0017】
第1モータM1及び第2モータM2は、同期電動機である。ただし、本開示において、第1モータM1及び第2モータM2は、ブラシを用いたDCモータや、誘導モータ等であってもよい。第1モータM1は、第1ステータ10と、第1ロータ20と、第1モータハウジング40と、を有する。
【0018】
第1モータハウジング40は、中心軸AXを中心に円筒状を成している。第1モータハウジング40は、Z1方向の端部から径方向外側に延びる取付用フランジ40aと、Z2方向の端部から径方向内側に延びる下底部40bと、を有する。取付用フランジ40aは、固定台STのZ1方向を向く面に重ねられる。取付用フランジ40aは、固定台STに螺合するボルトに締め付けられる。これにより、第1モータハウジング40が固定台STに固定される。
【0019】
下底部40bの径方向内端のZ1方向には、中心軸AXを中心に円筒状を成す第1ステータ保持体11が設けられている。第1ステータ保持体11は、ボルトにより下底部40bに固定される。第1ステータ保持体11のZ1方向の端部には、第1軸受31の内輪が嵌合している。
【0020】
第1ステータ保持体11の外周側には、第1ステータ10が配置されている。第1ステータ10は、第1ロータ20を回転させるための回転磁界を発生させる部品である。第1ステータ10の内周面は、第1ステータ保持体11の外周面に嵌合している。
【0021】
第1ステータ10の外周側には、第1ロータ20が配置されている。第1ロータ20は、第1ロータブラケット21と、第1ロータブラケット21の内周面に固定され、かつ永久磁石を有する第1ロータコア22と、第1ロータコア22のZ1方向に配置される外輪押さえ21aと、を有する。
【0022】
第1ロータコア22は、中心軸AXを中心に円筒状を成している。第1ロータコア22のZ1方向の端部の内周面は、第1軸受31の外輪に嵌合している。よって、第1ロータ20は、第1モータハウジング40に回転自在に支持される。外輪押さえ21aは、環状の部品であり、ボルトにより第1ロータコア22のZ1方向に固定される。第1ロータコア22と外輪押さえ21aとは、第1軸受31の外輪をZ方向から挟持している。よって、第1ロータ20はZ方向に移動しない。
【0023】
外輪押さえ21aのZ1方向には、第1蓋部材111が設けられている。第1蓋部材111は、ボルトにより外輪押さえ21aに固定される。第1蓋部材111の中央部には、貫通孔が設けられている。第1蓋部材111のZ2方向の面は、貫通孔の縁に沿ってZ1方向に凹む凹部112を有する。
【0024】
第1蓋部材111の貫通孔をスプライン外筒61が貫通している。スプライン外筒61は、中心軸AXを中心に円筒状を成している。スプライン外筒61は、第1蓋部材111よりもZ1方向に突出している。スプライン外筒61の内周面は、Z方向に延びる複数の凸部を有するスプライン部(不図示)を有している。スプライン外筒61のZ2方向の端部には、径方向に広がるフランジ62が設けられる。フランジ62は、凹部112に配置されている。フランジ62は、第1蓋部材111にボルトを介して固定される。これにより、スプライン外筒61は、第1蓋部材111を介して第1ロータ20と一体となっている。
【0025】
第2モータM2は、第1モータM1に対してZ2方向に配置される。第2モータM2は、第2ステータ10Aと、第2ロータ20Aと、第2モータハウジング40Aと、を有する。なお、第1モータハウジング40と第2モータハウジング40Aとを併せて単にハウジングと呼ぶ場合がある。
【0026】
第2モータハウジング40Aは、中心軸AXを中心に円筒状を成している。第2モータハウジング40Aは、Z1方向の端部から径方向内側に延びる上底部40Aaを有する。上底部40Aaの中央部には、貫通孔が設けられている。上底部40Aaは、第1モータハウジング40の下底部40bと当接している。上底部40Aaと下底部40bとは、ボルトにより固定されている。
【0027】
上底部40Aaの径方向内端のZ2方向には、中心軸AXを中心に円筒状を成す第2ステータ保持体11Aが設けられている。第2ステータ保持体11Aは、ボルトにより上底部40Aaに締結されている。第2ステータ保持体11AのZ2方向の端部の外周面には、第2軸受32の内輪が嵌合している。
【0028】
第2ステータ保持体11Aの外周側には、第2ステータ10Aが配置されている。第2ステータ10Aは、第2ロータ20Aを回転させるための回転磁界を発生させる部品である。第2ステータ10Aの内周面は、第2ステータ保持体11Aの外周面に嵌合している。第2ステータ10Aの外周側には、第2ステータ10Aが配置されている。
【0029】
第2ロータ20Aは、第2ロータブラケット21Aと、第2ロータブラケット21Aの内周面に固定され、かつ永久磁石を有する第2ロータコア22Aと、を有する。第2ロータブラケット21AのZ2方向の端部の内周面は、第2軸受32の外輪と嵌合している。よって、第2ロータ20Aは、第2モータハウジング40Aに回転自在に支持される。
【0030】
第2ロータブラケット21AのZ2方向には、第1連結ブラケット46と、第2連結ブラケット45と、ナット部材51と、が設けられている。第1連結ブラケット46と、第2連結ブラケット45と、ナット部材51は、それぞれ中心軸AXを中心に円筒状を成している。
【0031】
第1連結ブラケット46は、ボルトにより第2ロータブラケット21Aに締結されている。第1連結ブラケット46と第2ロータブラケット21Aは、第2軸受32の外輪を挟持している。よって、第2ロータ20AはZ方向に移動しない。第2連結ブラケット45は、Z1方向の端部から径方向外側に広がるフランジ45aを有している。フランジ45aは、ボルトを介して第1連結ブラケット46に固定される。
【0032】
ナット部材51は、内周面に図示しない雌ねじを有している。ナット部材51は、Z2方向の端部から径方向外側に延びるフランジ部51aを有する。ナット部材51のフランジ部51aは、第2連結ブラケット45のZ2方向の端面と当接する。ナット部材51は、フランジ部51aがボルトに締結され、第2連結ブラケット45と一体化している。以上から、ナット部材51は、第1連結ブラケット46と第2連結ブラケット45を介して、第2ロータ20Aと一体となっている。
【0033】
第2モータハウジング40Aの下底部40Abは、開口している。第2モータハウジング40Aの下底部40Abは、ナット用ハウジング42及びストッパ用カバー44で覆われる。
【0034】
ナット用ハウジング42は、上端フランジ42aと、上端フランジ42aの内周端からZ2方向に延びる筒状に形成された筒状部42bと、筒状部42bの下端から内周側に延びる底部42cと、を有する。上端フランジ42aは、第2モータハウジング40Aの下底部40Abにボルトを介して固定されている。ストッパ用カバー44は、ナット用ハウジング42の底部42cにボルトを介して固定されている。ナット用ハウジング42の底部42cには、ねじ軸53の小径部532が貫通する貫通孔が設けられている。
【0035】
出力軸SFは、Z1方向寄りに配置されるシャフト63と、Z2方向寄りに配置されるねじ軸53と、を有する。シャフト63は、スプライン外筒61と、第1ステータ保持体11と、第1モータハウジング40の下底部40bと、第2モータハウジング40Aの上底部40Aaと、第2ステータ保持体11Aとを貫通している。一方、ねじ軸53は、ナット部材51を貫通している。
【0036】
シャフト63は、大径部631と、小径部632と、を有する。
【0037】
大径部631の外周面には、中心軸AXの軸線方向に延びるスプライン溝部633が周方向に間隔をおいて複数設けられる。スプライン溝部633は、スプライン外筒61の図示しないスプライン部とスプライン嵌合している。よって、出力軸SFは、Z方向に移動可能にスプライン外筒61に支持される。また、第1モータM1の駆動により第1ロータ20にトルクが発生した場合、スプライン外筒61を介して、第1ロータ20のトルクが出力軸SFに伝達する。
【0038】
大径部631のZ1方向の端面には、Z1方向に突出する突起71が設けられている。そして、突起71には、アーム部80を取り付けるためのアーム取付部材70が設けられている。
【0039】
小径部632は、第2モータハウジング40Aの上底部40Aa及び第2ステータ保持体11Aを貫通している。小径部632のZ2方向の端面には、Z1方向に凹む凹部632aが設けられる。凹部632aの内周面には、図示しない雌ねじが設けられている。
【0040】
ねじ軸53は、ナット部材51の内部を貫通している。ねじ軸53は、大径部531と、小径部532と、を有する。ねじ軸53の大径部531のZ1方向の端面には、Z1方向に突出する細径部531aが設けられる。細径部531aの外周には、図示しない雄ねじが設けられる。細径部531aは、小径部632の凹部632aに挿入されている。また、細径部531aの雄ねじは、凹部632aの雌ねじと螺合している。これにより、シャフト63とねじ軸53とが連結している。
【0041】
大径部531は、雄ねじ部533を有している。大径部531の雄ねじ部533は、図示しない複数のボールを介して、ナット部材51と螺合している。つまり、ナット部材51と、複数のボール(不図示)と、ねじ軸53とは、ボールねじ装置である。
【0042】
小径部532の下端には、環状のストッパ55が挿入されている。ストッパ55は、ナット56により、小径部532から脱落しないように規制されている。ストッパ55の上面には、緩衝部材55aが設けられている。緩衝部材55aは、例えば、弾性体のウレタンゴムである。出力軸SFがZ1方向に所定量移動した場合、緩衝部材55aを介してストッパ55がナット用ハウジング42の底部42cに接触する。よって、出力軸SFは、所定量を超えてZ1方向に移動しないように規制されている。
【0043】
次に、スプライン外筒61及びナット部材51の動作(回転)と、出力軸SFの動作との関係について説明する。
【0044】
(直線運動)
出力軸SFは、スプライン溝部633がスプライン外筒61にスプライン嵌合している。よって、スプライン外筒61が回転しないように保持されている場合、出力軸SFもAX軸回りに回転しない。このような状態で、ナット部材51が回転すると、ナット部材51の図示しない雌ねじが、図示しないボールを介して、出力軸SFの雄ねじをZ1方向又はZ2方向に押圧する。これにより、出力軸SFがZ1方向又はZ2方向に移動する。
【0045】
(回転運動)
スプライン外筒61が回転すると、出力軸SFが回転運動する。このような状態で、ナット部材51がスプライン外筒61と同じ角速度で回転する場合(回転方向が同じであり、かつ回転速度が同じ場合)、ナット部材51は、出力軸SFと供回りする。つまり、ナット部材51の図示しない雌ねじは、出力軸SFの雄ねじをZ方向に押圧しない。このため、出力軸SFはZ方向に移動しない。
【0046】
(螺旋運動)
ナット部材51とスプライン外筒61とが回転するものの、角速度が異なる場合(互いに回転方向が異なる場合や、互いに回転方向が同じ方向であっても回転速度が違う場合)、ナット部材51の図示しない雌ねじは、出力軸SFの雄ねじを押圧する。よって、出力軸SFは、Z1方向又はZ2方向に移動しながら回転する、という螺旋運動を行う。
【0047】
図2は、実施形態1に係るアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。制御部100は、上位制御部(不図示)からの作動指令を受け、その作動指令に対応するように第1モータM1及び第2モータM2の駆動を制御する。制御部100は、演算器と、電流制御器(第1電流制御器141、第2電流制御器142)と、角度センサ(第1角度センサ151、第2角度センサ152)と、電流計測器(第1電流計測器153、第2電流計測器154)と、を備える。
【0048】
なお、実施形態において、出力軸SFとスプライン外筒(筒部材)とは、スプライン嵌合により相対回転が規制されているが、本開示は、これに限定されない。例えば、出力軸SFは、外周面から径方向外側に突出する突起を備える。筒部材は、内周面に軸方向に延びる溝部を備える。そして、突起は、溝部に入り込んでいる。これによれば、出力軸は、筒部材に対し軸方向にスライド可能に支持される一方で、筒部材に相対回転が規制される。
【0049】
演算器は、マイクロコンピュータ(マイコン)等のコンピュータであり、入力インターフェースと、出力インターフェースと、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、内部記憶部と、を含む。演算器は、指令生成器110と、第1位置制御器121と、第2位置制御器122と、連れ回りトルク演算器130と、加算器135と、を備える。
【0050】
なお、実施形態1の上位制御部(不図示)は、アーム部80を用いてワークを搬送する搬送装置の制御部である。上位制御部は、例えば、アーム部80をZ1方向に移動させたり、又はアーム部80を中心軸AXを中心に回転させたりなど、所望の動作を選択する。次に、上位制御部は、所望の動作を実行するため、要求する出力軸SFの動作(直線運動、回転運動、螺旋運動)を選択する。そして、上位制御部は、選択した出力軸SFの要求動作を作動指令として、制御部100の指令生成器110に与える。
【0051】
指令生成器110は、作動指令に対応するスプライン外筒61の目標位置とナット部材51の目標位置とを算出する。なお、スプライン外筒61の目標位置及びナット部材51の目標位置とは、現在ある位置からの変位量(回転量)である。そして、スプライン外筒61の目標位置及びナット部材51の目標位置には、回転方向、回転量(角度)、及び回転速度が含まれる。また、スプライン外筒61の目標位置及びナット部材51の目標位置には、そのまま(回転量がゼロ)という内容も含まれる。指令生成器110は、スプライン外筒61の目標位置を第1位置指令として第1位置制御器121に与える。同様に、指令生成器110は、ナット部材51の目標位置を第2位置指令として第2位置制御器122に与える。
【0052】
具体例を挙げると、作動指令が出力軸SFの直線運動の場合、指令生成器110は、スプライン外筒61の目標位置を、そのまま(スプライン外筒61の回転量がゼロ)、という内容を算出する。そして、その内容を第1位置指令として第1位置制御器121に与える。また、指令生成器110は、ナット部材51を、いずれかの方向に回転させる、という内容を算出する。また、作動指令には出力軸SFがどの程度移動するかも含まれているため、指令生成器110は、ナット部材51の回転する向き以外に、出力軸SFの移動量が所定量となるように、ナット部材51の回転量も算出する。そして、指令生成器110は、算出したナット部材51の目標位置(回転方向及び回転量を含む)を第2位置指令として、第2位置制御器122に与える。なお、作動指令が出力軸SFの回転運動の場合、第1位置指令と第2位置指令は、スプライン外筒61とナット部材51とが同方向であり、かつ同じ速度で回転させる、という内容になる。
【0053】
第1位置制御器121は、第1位置指令を達成するため、言い換えると、スプライン外筒61を目標位置に移動させるため、第1モータM1に要求される第1トルク値を算出する。そして、第1位置制御器121は、第1モータM1に要求される第1トルク値を第1トルク指令として加算器135に与える。同様に、第2位置制御器122は、第2モータ指令を達成するため、第2モータM2に必要な第2トルク値を算出する。そして、第2位置制御器122は、第2モータMに要求される第2トルク値を第2トルク指令として第2電流制御器142に与える。
【0054】
また、第1位置制御器121は、第1角度センサ151から検出結果(第1ロータ20の回転角度)が与えられる。そして、第1位置制御器121は、第1ロータ20の位置ずれが解消される、所望の第1ロータ20の角度となるように、新たな第1トルク指令を生成し、加算器135に与えている。同様に、第2位置制御器122は、第2角度センサ152から与えられる検出結果(第2ロータ20Aの回転角度)に基づいて、所望の第2ロータ20Aの角度となるように、新たな第2トルク指令を生成している。よって、本実施形態の第1位置制御器121及び第2位置制御器122は、第1角度センサ151及び第2角度センサ152の検出結果に基づき、第1ロータ20及び第2ロータ20Aの位置ずれが解消されるように第1トルク指令又は第2トルク指令を生成する、フィードバック制御機能を有している。
【0055】
連れ回りトルク演算器130は、第1位置指令と第2位置指令に基づいて、第1ロータ20に連れ回りトルクが発生するか否かを判定する。言い換えると、連れ回りトルク演算器130は、第1位置指令と第2位置指令に基づいて、出力軸SFの運動が直線運動か否かを判定する。より詳細に説明すると、連れ回りトルク演算器130は、第1位置指令がスプライン外筒61の目標位置をそのまま(スプライン外筒61の回転量がゼロ)という内容であり、かつ第2位置指令がナット部材51を回転させるという内容の場合、スプライン外筒61が連れ回って第1ロータ20に連れ回りトルクが発生する、と判定する。
【0056】
また、連れ回りトルク演算器130は、第1ロータ20に連れ回りトルクが発生すると判定した場合、第2トルク指令に基づいて、連れ回りトルクを低減するためのカウンタートルク値を算出する。なお、連れ回りトルク演算器130が第2トルク指令に基づいてカウンタートルク値を算出する理由は、連れ回りトルクは、第2トルク指令の第2トルク値に比例するからである。つまり、第2トルク指令の第2トルク値が大きいと、ナット部材51に与えられるトルクが大きいため連れ回りトルクも大きい、と推定されるからである。
【0057】
また、連れ回りトルク演算器130によるカウンタートルク値の算出は、第2トルク指令の第2トルク値を参照しながら、所定のマップ(図示せず)を検索することでカウンタートルク値を算出する例が挙げられる。若しくは、第2トルク指令の第2トルク値から所定の計算によりカウンタートルク値を算出したりしてもよく、本開示においてカウンタートルク値の算出方法は特に限定されない。なお、所定のマップは、予め実験することにより導出されたものである。
【0058】
そして、連れ回りトルク演算器130は、カウンタートルク値を算出した後、カウンタートルク値をカウンタートルク指令として、加算器135に与える。なお、連れ回りトルク演算器130は、第1ロータ20に連れ回りトルクが発生しないと判定した場合、カウンタートルク値がゼロ、というカウンタートルク指令を加算器135に与える。
【0059】
加算器135は、第1トルク指令の第1トルク値と、カウンタートルク指令のカウンタートルク値とを合成し、その合成したトルク値を合成トルク指令として第1電流制御器141に与える。
【0060】
第1電流制御器141及び第2電流制御器142は、電界効果トランジスタ(Field effect transistor)等のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路を有する。第1電流制御器141及び第2電流制御器142は、合成トルク指令及び第2トルク指令に対応するように、図示しない電源装置から供給される直流電力を、モータ(第1モータM1、第2モータM2)の駆動用の交流電力に変換する。そして、第1電流制御器141及び第2電流制御器142は、スイッチ素子のON-OFFデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う。
【0061】
なお、第1電流制御器141及び第2電流制御器142は、第1電流計測器153及び第2電流計測器154から、計測結果(第1モータM1及び第2モータM2に供給された電流値)が与えられる。そして、第1電流制御器141及び第2電流制御器142は、計測結果から、第1モータM1及び第2モータM2に供給される電流が、目標となる電流値となるように調整するというフィードバック機能を有している。
【0062】
図1に示すように、第1角度センサ151は、アクチュエータ1の外輪押さえ21aの内周側に配置される。そして、第1角度センサ151は、第1ロータ20の回転角度を検出する。第2角度センサ152は、第1連結ブラケット46の内周側に配置される。第2角度センサ152は、第2ロータ20Aの回転角度を検出する。
【0063】
第1角度センサ151及び第2角度センサ152には、磁気センサや光学センサが用いられる。磁気センサは、磁気の変化を検知するホール素子などを用い、磁気の変化に基づいてロータの回転角度を検知するものである。光学センサは、ロータにスリットを設けるとともにロータとともに回転するスリットを通過する光をフォトダイオードで受光し、受光する光の量の変化に基づいてロータの回転角度を検知するものである。
【0064】
第1電流計測器153は、第1モータM1に供給される電流値を検出する。第2電流計測器154は、第2モータM2に供給される電流値を検出する。第1電流計測器153及び第2電流計測器154電流計測器には、シャント抵抗器や、又はモータの相電流の通電経路周囲の磁束等を検出する非接触式センサや、又はモータドライバを構成する素子等の端子電圧等を検出するセンサが用いられる。
【0065】
そして、第1角度センサ151は、検出結果を第1位置制御器121と第1電流制御器141とに与える。第2角度センサ152は、検出結果を第2位置制御器122と第2電流制御器142と与える。第1電流計測器153は測定結果を第1電流制御器141に与える。第2電流計測器154は測定結果を第2電流制御器142に与える。
【0066】
図3は、実施形態1のアクチュエータと比較例のアクチュエータに直線運動させた場合、時刻の経過によるスプライン外筒の角度の変化と第1モータの出力トルクの変化を示す図である。次に、
図3を参照しながら、実施形態1のアクチュエータ1と、比較例のアクチュエータと、において、出力軸SFが直線運動した場合におけるスプライン外筒61の角度の変化について説明する。最初に、比較例のアクチュエータを説明する。比較例は、連れ回りトルク演算器130と加算器135とを備えていない点で、実施形態1のアクチュエータ1と相違する。また、本欄の説明において、スプライン外筒61の回転方向に関し、一方の回転方向を+θ方向と呼び、他方の回転方向を-θ方向と呼ぶ。また、
図3の下図の縦軸において、+Tは+θ方向へのトルクであり、-Tは-θ方向へのトルクである。また、
図3の横軸は、時刻であり、時刻T0は、第1ロータ20及び第2ロータAが静止している第1状態である。時刻T1は、第1状態から、第1ロータ20が静止し、第2ロータ20Aが回転する第2状態へ遷移し始める時刻を指す。
【0067】
比較例のアクチュエータに関し、時刻T0の時点で、指令生成器110は、作動指令(出力軸の直線運動)を受け、スプライン外筒61の目標位置をそのまま(回転角度がゼロ)、という第1位置指令を生成する。同時に、指令生成器110は、ナット部材51を例えば+θ方向に回転させる、という第2位置指令を生成する。そして、第1位置制御器121は、第1位置指令に基づき、第1ロータ20の回転角度がゼロとなるように、第1トルク指令値を生成する。第2位置制御器122は、第2位置指令に基づき、第2ロータ20Aが+θ方向に回転するように、第2トルク指令を生成する。
【0068】
これにより、時刻T1の時点で、第1ステータ10の回転磁界によるトルクはゼロ、つまり、第1モータM1の出力トルクがゼロ(
図3の下図の時刻T1から時刻T2の間を参照)の状態となる。一方、第2ロータ20Aは、+θ方向に回転し始める。これにより、スプライン外筒61に連れ回り(+θ方向への回転)が発生し(
図3の上図の時刻T1以降を参照)、第1ロータ20が回転する。
【0069】
また、時刻T1の時点において、第1角度センサ151は、第1ロータ20の回転を検出し、その検出結果を第1位置制御器121に与える。そして、第1位置制御器121は、第1ロータ20の回転角度がゼロとなるようにするため、新たに第1トルク指令を生成する。このようなフィードバック制御により、第1ロータ20の回転を検出した時刻T1から数秒経過の時刻T2の時点に、第1モータM1が-θ方向へのトルクを出力し始める(
図3の下図の時刻T2を参照)。
【0070】
なお、時刻T1や時刻T2などのアクチュエータ1の駆動開始直後、ナット部材51と出力軸SFとの間に作用する摩擦は、静摩擦である。よって、スプライン外筒61に作用する連れ回りのトルクが大きい。このため、時刻T2以降、フィードバック制御により第1モータM1が-θ方向へのトルクを出力するようになっているものの、引き続き、スプライン外筒61(第1ロータ20)が+θ方向に回転し、最大回転角度がθ1となる。なお、時刻T2の数秒後あたりから、出力軸SFに対するナット部材51の摩擦が静摩擦から動摩擦に変化する。よって、連れ回りトルクは、スプライン外筒61を+θ方向へ回転させることができない程度の大きさ(略ゼロ)となる。
【0071】
一方、時刻T2以降、第1位置制御器121は、スプライン外筒61(第1ロータ20)が+θ方向に回転し続けているという結果を受け(フィードバックされ)、生成する第1トルク指令のトルク値を次第に大きくし、第1モータM1から出力される-θ方向へのトルクが次第に大きくなる(
図3の下図の時刻T2以降を参照)。この結果、第1ロータ20が-θ方向に回転し始める。
【0072】
そして、時刻T3の時点で、スプライン外筒61に作用する-θ方向への慣性力により、スプライン外筒61は、所定の位置(回転角度がゼロ)を超えてさらに-θ方向へ回転する。この結果を受け、第1位置制御器121は、第1ロータ20が+θ方向へ回転するように、第1ロータ20を+θ方向へ回転させる第1トルク指令を生成する。このように、第1位置制御器121は、第1ロータ20を+θ方向へ回転させる指令と、-θ方向へ回転させる指令と、を交互に生成し、時刻T4の時点で、スプライン外筒61が目標位置(回転角度がゼロ)に復帰する。
【0073】
一方、実施形態1のアクチュエータ1において、時刻T0から時刻T1の間に、連れ回りトルク演算器130は、指令生成器110の生成した第1位置指令(スプライン外筒61の位置はそのまま)と、第2位置指令(ナット部材51を+θ方向に回転させる)を受け、カウンタートルク指令を生成する。これにより、第2モータM2が駆動し始める時刻T1の時点で、第1モータM1は、-θ方向へのトルクを出力する(
図3下図の時刻T1を参照)。つまり、第1モータM1と第2モータM2とが同時に駆動し始める。
【0074】
よって、時刻T1時点、第1ロータ20には、+θ方向への連れ回りトルクと、第1ステータ10から生成された回転磁界による-θ方向へカウンタートルクと、が作用するようになる。これにより、連れ回りトルクは、カウンタートルクの分だけ相殺される。よって、スプライン外筒61(第1ロータ20)は、+θ方向に回転するものの、最大回転角度θ2は、比較例の最大回転角度θ1よりも小さくなり、スプライン外筒61の位置ずれが小さくなる。
【0075】
また、時刻T1の時点において、第1角度センサ151は、スプライン外筒61(第1ロータ20)の回転を検出し、その検出結果を第1位置制御器121に与える。第1位置制御器121は、第1ロータ20の回転角度がゼロとなるように、第1トルク指令を生成する。そして、第1位置制御器121は、第1ロータ20が+θ方向へ回転させる指令と、-θ方向へ回転させる指令と、を交互に生成し、時刻T6の時点で、スプライン外筒61が目標位置(回転角度がゼロ)に復帰する。
【0076】
以上から、実施形態1のアクチュエータ1によれば、出力軸SFの直線運動の開始時(時刻T1の直後)、連れ回りトルクによる第1ロータ20(スプライン外筒61)の最大回転角度が小さい(θ1>θ2)。よって、時刻T2以降に行わるフィードバック制御によってスプライン外筒61が所定位置(目標位置)に復帰するための時間が短い(T4>T6)。
【0077】
連れ回りトルク演算器130は、指令生成器110から第1位置指令及び第2位置指令を受けた場合、カウンタートルク指令を生成する。言い換えると、フィードバック制御により第1位置制御器121が第1トルク指令を生成する時刻(時刻T1以降)よりも前に、連れ回りトルク演算器130がカウンタートルク指令を生成する。以上から、カウンタートルク指令と、フィードバック制御による第1トルク指令と、が重複する可能性がない。
【0078】
以上、実施形態1のアクチュエータ1は、出力軸SFと、出力軸SFに貫通され、出力軸SFとの相対回転が規制された筒部材と、出力軸SFに貫通され、出力軸SFとの相対回転により出力軸SFを軸方向に移動させるナット部材51と、筒部材とナット部材51とを回転自在に支持するハウジングと、第1ロータ20及び第1ステータ10を有し、筒部材にトルクを与える第1モータM1と、第2ロータ20A及び第2ステータ10Aを有し、ナット部材51にトルクを与える第2モータM2と、第1モータM1と第2モータM2との駆動を制御する制御部100と、を備える。制御部100は、指令生成器110と、第1位置制御器121と、第2位置制御器122と、連れ回りトルク演算器130と、加算器135と、第1電流制御器141と、第2電流制御器142と、を有する。指令生成器110は、要求される出力軸SFの動作に対応するスプライン外筒61及びナット部材51の目標位置を算出し、スプライン外筒61の目標位置を第1位置指令として生成し、ナット部材51の目標位置を第2位置指令として生成する。第1位置制御器121は、第1位置指令が与えられ、第1位置指令を達成するために必要な第1モータM1の第1トルク値を算出し、第1トルク値を第1トルク指令として生成する。第2位置制御器122は、第2位置指令が与えられ、第2位置指令を達成するために必要な第2モータM2の第2トルク値を算出し、第2トルク値を第2トルク指令として生成する。連れ回りトルク演算器130は、第1位置指令と第2位置指令と第2トルク指令とが与えられ、筒部材の連れ回りにより第1ロータ20に作用する連れ回りトルクを低減するためのカウンタートルク値を算出し、カウンタートルク値をカウンタートルク指令として生成する。加算器135は、第1トルク指令とカウンタートルク指令とが与えられ、第1トルク値とカウンタートルク値とを合成した合成トルク値を合成トルク指令として生成する。第1電流制御器141は、合成トルク指令を受け、合成トルク値に対応するように第1モータM1に供給する電流を制御する。第2電流制御器142は、第2トルク指令を受け、第2トルク値に対応するように第2モータM2に供給する電流を制御する。連れ回りトルク演算器130は、第1位置指令及び第2位置指令に基づいて連れ回りトルクが発生するか否かを判定し、連れ回りトルクが発生すると判定した場合、第2トルク値に基づいてカウンタートルク値を算出する。
【0079】
上述したアクチュエータによれば、出力軸SFの直線運動の開始直後、スプライン外筒(筒部材)61の位置ずれを小さくすることができる。
【0080】
また、実施形態1のアクチュエータは、第1モータM1の第1ロータ20の角度を検出する第1角度センサ151と、第2モータM2の第2ロータ20Aの角度を検出する第2角度センサ152と、を備える。第1位置制御器121は、第1角度センサ151の検出結果に基づき、第1ロータ20の角度が所望の角度となるように第1トルク指令として生成するフィードバック制御機能を有する。第2位置制御器122は、第2角度センサ152の検出結果に基づき、第2ロータ20Aの角度が所望の角度となるように第2トルク指令として生成するフィードバック制御機能を有する。
【0081】
上述したアクチュエータによれば、位置ずれした第1ロータ20及び第2ロータ20Aを所望の角度に復帰させることができる。また、本実施形態によれば、出力軸SFの直線運動の開始直後、スプライン外筒61の位置ずれが小さく、第1ロータ20を目標位置に復帰させる時間が短い。
【0082】
以上、実施形態1について説明したが、実施形態のアクチュエータの制御部は、トルク値により第1モータ及び第2モータを制御しているが、本開示のアクチュエータはこのようなトルク制御に限定されず、回転速度制御や、位置制御であってもよい。つまり、第1ロータ20及び第2ロータ20Aが静止している第1状態から、第1ロータ20が静止し、第2ロータ20Aが回転する第2状態へ遷移する場合、制御部は、第2ロータ20Aの回転により筒部材(スプライン外筒61)が連れ回る方向と反対方向の力であって、第1ロータ20の回転を抑制する力を加える電流を第1モータM1へ供給すればよい。
【0083】
また、実施形態1の連れ回りトルク演算器130は、第2トルク指令に基づきカウンタートルク値を算出しているが、本開示の連れ回りトルク演算器はこれに限定されない。以下、実施形態2及び実施形態3では、連れ回りトルク演算器130が他の要素を考慮してカウンタートルク値を算出する例を説明する。なお、以下の説明においては、上述した実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0084】
(実施形態2)
図4は、実施形態2のアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。実施形態2に係るアクチュエータ1Aは、制御部100Aにおいて第1角度センサ151の検出結果が連れ回りトルク演算器130Aに与えられる点で、実施形態1のアクチュエータ1と相違する。また、実施形態2に係るアクチュエータ1Aは、制御部100Aにおいて第2角度センサ152の検出結果が連れ回りトルク演算器130Aに与えられる点で、実施形態1のアクチュエータ1と相違する。また、連れ回りトルク演算器130Aは、第1角度センサ151の検出結果と第2角度センサ152の検出結果とを考慮してカウンタートルク値を算出している。
【0085】
(実施形態3)
図5は、実施形態3のアクチュエータの制御部の構成を示すブロック図である。実施形態3に係るアクチュエータ1Bは、制御部100Bが出力軸SFの移動量及び回転量を測定する出力軸用センサ160を備えている点で、実施形態2のアクチュエータ1Aと相違する。出力軸用センサ160は、出力軸SFとの端面にレーザを照射し、出力軸のZ方向の移動距離を計測している。また、出力軸用センサ160は、出力軸SFの端面に付された識別子を画像認識し、回転角度を算出している。そして、出力軸用センサ160は、出力軸SFの移動距離及び回転角度の検出結果を連れ回りトルク演算器130Bに与えている。
【0086】
上述した実施形態2のアクチュエータ1A及び実施形態3のアクチュエータ1Bによれば、予め記憶するマップ(不図示)や所定の計算で算出されるカウンタートルク値を、第1角度センサ151の検出結果等により補正し、各アクチュエータ1の個体差を吸収することが可能となる。次に、実施形態4では、構造が異なるアクチュエータ1Cについて説明する。
【0087】
図6は、実施形態4に係るアクチュエータを出力軸の中心軸に沿って切った場合の断面図である。実施形態4のアクチュエータ1Cは、第1モータM1及び第2モータM2が、中心軸AXと同軸上に配置されていない点で、実施形態1と相違する。また、第1モータM1のトルクは、第1プーリ81を介してスプライン外筒61に伝えられる点で実施形態1と相違する。また、第2モータM2のトルクは、第2プーリ82を介してナット部材51に伝えられる点で実施形態1と相違する。
【0088】
第1プーリ81は、スプライン外筒61と一体化する従動プーリ83と、第1モータM1の出力軸25と一体化する駆動プーリ84と、従動プーリ83及び駆動プーリ84にかけ渡されているベルト85と、を有する。第2プーリ82は、ナット部材51と一体化する従動プーリ86と、第2モータM2の出力軸26と一体化する駆動プーリ87と、従動プーリ86及び駆動プーリ87にかけ渡されているベルト88と、を有する。そして、このような実施形態であっても、実施形態1と同じような効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0089】
1、1A、1B アクチュエータ
10 第1ステータ
10A 第2ステータ
20 第1ロータ
20A 第2ロータ
31 第1軸受
32 第2軸受
40 第1モータハウジング
40A 第2モータハウジング
46 第1連結ブラケット
45 第2連結ブラケット
51 ナット部材
53 ねじ軸
61 スプライン外筒(筒部材)
63 シャフト
100 制御部
110 指令生成器
121 第1位置制御器
122 第2位置制御器
130、130A、130B 連れ回りトルク演算器
135 加算器
141 第1電流制御器
142 第2電流制御器
151 第1角度センサ
152 第2角度センサ
153 第1電流計測器
154 第2電流計測器
160 出力軸用センサ
M1 第1モータ
M2 第2モータ
SF 出力軸