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  • 特開-静的破砕方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149104
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】静的破砕方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 19/18 20060101AFI20220929BHJP
   C04B 2/02 20060101ALI20220929BHJP
   C04B 22/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B02C19/18 D
C04B2/02
C04B22/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051089
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 有平
【テーマコード(参考)】
4D067
【Fターム(参考)】
4D067CD01
4D067GA02
4D067GA06
(57)【要約】
【課題】静的破砕剤の対応温度、番手及び温度環境によらず、具体的には、例えば高温対応番手製品を低温環境下で用いた場合においても、所定の時間内にコンクリート等の被破砕物を破砕することができる静的破砕方法を提供する。
【解決手段】静的破砕剤を用いる被破砕物の静的破砕方法であって、被破砕物に孔を設け、前記孔の内部に、遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤と電極を配置し、前記静的破砕剤に、2mA/cm3以上の電流を通電することを特徴とする静的破砕方法。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静的破砕剤を用いる被破砕物の静的破砕方法であって、
被破砕物に孔を設け、
前記孔の内部に、遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤と電極を配置し、
前記静的破砕剤に、2mA/cm3以上の電流を通電することを特徴とする静的破砕方法。
【請求項2】
前記静的破砕剤が、炭素系粒子を含むことを特徴とする請求項1記載の静的破砕方法。
【請求項3】
前記静的破砕剤が、電解質を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の静的破砕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静的破砕剤を用いた静的破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主に建設・土木分野で、コンクリート構造物や岩石の取崩しや撤去の際に、周囲環境を考慮し、爆破や衝撃等の動的手段ではなく、刳り抜かれた複数の小孔に充填して膨張亀裂を生じさせる静的破砕手段が採用されることがある。水和反応膨張性を有する静的破砕剤を被破砕物であるコンクリート構造物や岩石に孔が穿たれた後、孔内に水で混練された静的破砕剤が充填されることが提案されている。即ち、孔内に充填された静的破砕剤の水和反応による膨張現象によって、岩石や鉄筋コンクリート構造物は破砕される(特許文献1)。
しかしながら、上記手法において一般的な静的破砕剤の亀裂発生時間の目安が12~24時間、速効型の場合1~3時間と広く 、工程管理が困難、低温環境下(5℃程度)での静的破砕剤の破砕遅延、端境期の番手選定が困難といった問題が挙げられる。
この問題を解決する目的で、特許文献2では、破砕物の孔に充填された混練物を孔の開口部側から加熱(加熱源:酸化カルシウム、アルミン酸塩、焼ドロマイト、またはその他の水和反応により発熱する物質、ガスバーナ、トーチバーナ、電熱線、たき火等からの発生熱のうちの1種類以上からなるものを利用)する工法が提案されている。
また、特許文献3では孔内に断熱性を有する素材からなる筒体もしくは中空多角体を配置し該筒体内に混練物を充填して、混練物の反応熱の放散を減少せしめて反応を促進させ、非破壊物を破砕させることを特徴とする断熱材を利用した破砕工法が提案されている。
さらに、特許文献4では被破砕体に設けた孔内の中央部に、内部に流体を流通させることのできる温度調整管を設置し、該温度調整管の周囲に静的破砕剤を充填し、該温度調整管の周囲に流体を流通させることにより静的破砕剤の反応時間を制御することを特徴とする工法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-141387号公報
【特許文献2】特開昭60-161751号公報
【特許文献3】特開昭60-164595号公報
【特許文献4】特開昭61-17673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2の場合、加温範囲が孔の開口部の接触している部分のみの加温となり、混練物全体を上面からのみの加温となっており、孔内の混練物が均一に加温されるまでに時間がかかり、温度調整や任意のタイミングでの被破砕物の破砕が困難であるという問題がある。また、特許文献3の場合、保温だけでは混練物が十分に発熱するまでの時間がかかり、温度調整や任意のタイミングでの被破砕物の破砕が困難であるという問題がある。さらに、特許文献4の場合、冷水や温水を循環させるため、配管やポンプやコンプレッサー等の大がかりな準備が必要となる。また、静的破砕剤の充填孔内に円形状の管を埋設しているため、静的破砕剤の充填量が減り破砕効果が低減する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決すべく、種々検討を重ねた結果、一定量の電気を通電し遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤に生ずる化学反応によって効率的に被破砕物を破砕させることが可能であることを見出し、以て前記課題が解消できる知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕静的破砕剤を用いる被破砕物の静的破砕方法であって、被破砕物に孔を設け、前記孔の内部に、遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤と電極を配置し、前記静的破砕剤に、2mA/cm3以上の電流を通電することを特徴とする静的破砕方法。
〔2〕前記静的破砕剤が、炭素系粒子を含む〔1〕の静的破砕方法。
〔3〕前記静的破砕剤が、電解質を含む〔1〕又は〔2〕の静的破砕方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明における静的破砕方法によれば、静的破砕剤の対応温度、番手及び温度環境によらず、具体的には、例えば高温対応番手製品を低温環境下で用いたにおいても、所定の時間内にコンクリート等の被破砕物を破砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明による破砕方法を表す概念図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の静的破砕方法は、遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤を用いる被破砕物の静的破砕方法であって、孔内に充填された静的破砕剤にその体積あたり2mA/cm3以上の電流を通電することを特徴とする。本発明における被破砕物は、一般的に静的破砕方法による破砕が可能な脆性物体であれば特に限定されるものではなく、例えば、コンクリート構造物、岩石、岩盤などが挙げられる。以下に、詳細な静的破砕方法を記す。
【0009】
<静的破砕方法>
まず、被破砕物に孔が設けられる。孔の大きさや孔間隔は、被破砕物の岩質、節理、鉄筋量、自由面の状態に応じて適宜選択される。一般的には、孔径は30~80mm、孔間隔は30~60cm程度とされることが多いが、必要に応じて事前に試験破砕を行って決定される。孔を設ける方法は特に限定されないが、コアドリル等を用いるのが一般的である。
【0010】
次いで、設けられた孔の内部に、静的破砕剤と電極とを配置する。一般的には、孔内に静的破砕剤混錬物を充填した後、孔内に電極を設置するのが容易であるが、特にこの順序限定されることはない。このとき、孔内に充填された静的破砕剤に効率的に通電できるように、電極は孔の先端部近傍まで挿入されることが好ましい。
【0011】
静的破砕剤を被破砕物に設けられた孔内に充填する場合、水と練り混ぜた状態(混練物)で充填される。この混練物は孔が完全に埋まるように、むしろ少しあふれる程度に充填されることが好ましい。水の配合量は、静的破砕剤100質量部に対して、15~35質量部が好ましく、18~32質量部がより好ましい。練混ぜは手練りまたはハンドミキサ等の機械練りを用いて行うことができ、1分以内に終了することが望ましい。
【0012】
本発明で使用される電極は、一般に使用されている電極材料であれば使用可能であり、例えば、鉄、銅、炭素等が挙げられるが、本発明で用いる遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤は強いアルカリ性を示すため、こうした液性で溶解の著しい亜鉛、アルミニウム等は適さない。本発明に用いる電極としては、銅、炭素が好ましい。電極は、孔内に挿入するため、棒状または帯状の形態が好ましい。電極は、陽極と負極が相互に一定の距離をおいて、孔内に配置される。電極は、配線を介して、外部電源装置に接続される。
【0013】
静的破砕剤と電極を設置後、電極間に電圧を印可し、通電を行う。この際の通電量は、2mA/cm3以上である。孔内に充填された静的破砕剤の単位体積あたり2mA以上の電流を通電することにより、電気化学的反応により生じたイオン濃度変化から、静的破砕剤の水和を促進させ、水和反応による膨張圧を早期に発現させることができる。これにより、被破砕物を短時間で破砕させることができる。また、低温環境下においても、環境温度の影響を受けることなく破砕することができる。2mA以下では、電気化学的反応によるイオン濃度変化が不十分であり、よって効率的に被破砕物を破砕することができない。
【0014】
<静的破砕剤>
本発明の静的破砕方法において使用する静的破砕剤は、遊離生石灰を主成分とするものである。遊離生石灰は、結晶質のCaOである。遊離生石灰の含有量は例えばコンクリート硬化体に膨張亀裂を生じさせる膨張力を発現できるような量であれば良く、特に限定されるものではない。好ましくは、より高い膨張力を安定して発現できる可能性があることから、静的破砕剤中の遊離生石灰含有率は30~80質量%以上が好ましく、35~75質量%以上がより好ましい。
【0015】
本発明に使用される遊離生石灰は、石灰石等の石灰質原料を焼成して得られる。または、石灰質原料を主成分とし、これにシリカ質原料、アルミナ質原料、フェライト系原料、硫酸塩原料等の1種または2種以上を混合して焼成されるものである。焼成後は、遊離生石灰を主成分とする塊状物(クリンカ)として得られるが、これを粗砕または粉砕、分級して得られた粉粒状のものが使用される。
【0016】
本発明における静的破砕剤には、所定の通電量を得るために必要な印加電圧をより低く抑えるため、さらに炭素系粒子が含まれることが好ましい。炭素系粒子としては、カーボンブラック(ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン、炭素繊維などが挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。炭素系粒子の含有量としては、静的破砕剤中、0.1~3.0質量%が好ましく、0.5~1.5質量%がより好ましい。
【0017】
また、本発明における静的破砕剤には、同様に所定の通電量を得るために必要な印加電圧をより低く抑えるため、電解質が含まれることが好ましい。本発明における電解質とは、水に溶け、電離して陰イオンと陽イオンを生じる物質であればよく、特に限定されるわけではないが、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、過炭酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩及び塩化物等の無機塩類が挙げられる。これらの中から選ばれる1種または2種以上が好ましい。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸鉄、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸鉄等が挙げられる。無機塩類の含有量としては、静的破砕剤中、0.05~1.5質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。
【0018】
本発明による静的破砕方法によれば、従来技術のガスバーナ、電熱線などによる加熱手法に比べ、静的破砕剤の過度の発熱による突沸・噴出の危険性が少なく、速やかに、均一かつ効率的に静的破砕剤の膨張圧を発現させることができる効果を有する。
【実施例0019】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0020】
<静的破砕剤の調製>
遊離生石灰を主成分とする静的破砕剤として、太平洋パワーブライスターH練混ぜタイプ(太平洋マテリアル株式会社製、適用温度範囲25~35℃)、太平洋パワーブライスターM練混ぜタイプ(太平洋マテリアル株式会社製、適用温度範囲15~25℃)を使用した。これらの静的破砕剤は、適用温度範囲において1時間~3時間程度で被破砕物にひび割れを発生させることができるものである。
これらの静的破砕剤に炭素系粒子又は/および電解質を添加して静的破砕剤を調製した。炭素系粒子としては、黒鉛(伊藤黒鉛株式会社製)を使用した。また、電解質としては、硫酸鉄(II)七水和物(関東化学株式会社製)を使用した。調製した静的破砕剤の配合を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
<静的破砕剤を用いたコンクリートの破砕試験>
調製した静的破砕剤を使用してコンクリートの破砕試験を行った。被破砕物として、円柱状コンクリートを準備し、この円柱状コンクリートに孔(充填孔)を開け、供試体とした。この孔内に電極として銅棒を設置した。各供試体の寸法、および銅棒の寸法を表2に示す。
調製した各種静的破砕剤100質量部に対して水20質量部を加え混錬した静的破砕剤混練物を孔内に充填した。充填直後に電極間に電圧を印可し通電した。試験環境温度は、適用温度範囲25~35℃であるパワーブライスターHを用いて調製した静的破砕剤については10℃、適用温度範囲15~25℃であるパワーブライスターMを用いて調製した静的破砕剤については5℃と、適用温度範囲より低い環境温度で試験を実施した。
試験水準及び試験結果を表3に示す。通電量が1mA/cm3以下の試験水準9~12ではコンクリート供試体を破砕できなかったが、2mA/cm3以上の試験水準1~8では、いずれもコンクリート供試体を破砕することができた。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【符号の説明】
【0025】
1 被破砕物
2 静的破砕剤
3 電極
4 電源装置
5 配線

図1