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特開2022-149110圃場センサシステム及び圃場管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149110
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】圃場センサシステム及び圃場管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/00 20060101AFI20220929BHJP
   E02B 13/02 20060101ALI20220929BHJP
   G01F 23/56 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
A01G25/00 501F
E02B13/02 C
G01F23/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051101
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
(72)【発明者】
【氏名】平井 一禎
【テーマコード(参考)】
2F013
【Fターム(参考)】
2F013BG20
2F013CB10
(57)【要約】
【課題】複数のパラメータを測定する測定部同士が干渉しない圃場センサシステムを提供する。
【解決手段】圃場センサシステム100は、圃場に設置され、圃場パラメータを測定する圃場センサシステム100であって、筒状の第1保護部20と、前記第1保護部20の周囲を覆う筒状の第2保護部30と、前記第1保護部20内に配置され、第1の圃場パラメータを測定する第1パラメータ測定部10と、前記第1保護部20と前記第2保護部30との間に配置され、第2の圃場パラメータを測定する第2パラメータ測定部40と、と備えていることを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設置され、圃場パラメータを測定する圃場センサシステムであって、
筒状の第1保護部と、
前記第1保護部の周囲を覆う筒状の第2保護部と、
前記第1保護部内に配置され、第1の圃場パラメータを測定する第1パラメータ測定部と、
前記第1保護部と前記第2保護部との間に配置され、第2の圃場パラメータを測定する第2パラメータ測定部と、と備えていることを特徴とする、
圃場センサシステム。
【請求項2】
前記第1パラメータ測定部が、水位を測定することを特徴とする、
請求項1に記載の圃場センサシステム。
【請求項3】
前記第1保護部が、前記圃場の地面に対して地上から地下に向けて交差するように配置され、
前記圃場の地下において、前記第1保護部を軸直方向に貫通する第1貫通穴が、少なくとも1つ設けられていることを特徴とする、
請求項2に記載の圃場センサシステム。
【請求項4】
前記圃場の地上において、前記第1保護部を貫通する第2貫通穴及び前記第2保護部を貫通する貫通穴が少なくとも1つずつ設けられ、
前記第2保護部の外壁には、地上から地下にかけて連結穴が設けられていることを特徴とする、
請求項2又は3に記載の圃場センサシステム。
【請求項5】
前記第1保護部及び前記第2保護部が、樹脂部材からなることを特徴とする、
請求項2から4のいずれか1項に記載の圃場センサシステム。
【請求項6】
前記第2保護部には、前記圃場の地上における接地高さに、鍔部が設けられていることを特徴とする、
請求項2から5のいずれか1項に記載の圃場センサシステム。
【請求項7】
前記鍔部は、固定貫通穴を備えていることを特徴とする、
請求項6に記載の圃場センサシステム。
【請求項8】
前記鍔部の下面には、溝が設けられていることを特徴とする、
請求項6又は7に記載の圃場センサシステム。
【請求項9】
前記第1保護部の、前記圃場の最大水位よりも高い位置に、エア抜き部を備えることを特徴とする、
請求項2から8のいずれか1項に記載の圃場センサシステム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の圃場センサシステムを用いて、圃場管理者がバルブ開閉を操作する圃場管理システムであって、
前記圃場センサシステムからの測定情報を送信する測定情報送信部と、
前記測定情報送信部から送信された前記測定情報を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記測定情報を保管する情報記憶部と、
前記情報記憶部に保管された前記測定情報と、前記圃場管理者による前記バルブ開閉の操作情報と、を用いて給水計画を演算する演算部と、
前記演算部が演算した前記給水計画を、自動給水機に送信する制御情報送信部と、
前記制御情報送信部から前記給水計画を受信して、バルブ開閉を行う自動給水機と、
を備えることを特徴とする、
圃場管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場センサシステム及び圃場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田、畑等の圃場に、液面センサ装置が用いられることがある。例えば、この水位の測定について、使用者が被接地体の表面から液面センサまでの高さを容易に認識することができる液面センサが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-211361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場に給水する際、上述の液面センサによって圃場の水位を確認し、自動給水栓によって給水することがある。その際、圃場の水位のほか、圃場内の水のph濃度、農薬濃度、水温、気温、湿度等のパラメータを、前記自動給水栓を開閉する際の判断材料としたい旨の要望がある。しかしながら、前記従来の液面センサにおいては筐体の内部をフロートが移動するフロートセンサが用いられている。このため、筐体内においては上述のパラメータを測定するセンサを配置する空間がなく、設置した場合はフロートセンサと干渉するおそれがある旨の課題があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、複数のパラメータを測定する測定部同士が干渉しない圃場センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る圃場センサシステムは、圃場に設置され、圃場パラメータを測定する圃場センサシステムであって、筒状の第1保護部と、前記第1保護部の周囲を覆う筒状の第2保護部と、前記第1保護部内に配置され、第1の圃場パラメータを測定する第1パラメータ測定部と、前記第1保護部と前記第2保護部との間に配置され、第2の圃場パラメータを測定する第2パラメータ測定部と、と備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、第2保護部が第1保護部の周囲を覆うように設けられ、第1パラメータ測定部は第1保護部内に配置され、第2パラメータ測定部は第1保護部と第2保護部との間に配置されている。これにより、第1パラメータ測定部と第2パラメータ測定部とが干渉することを防ぐことができる。
【0008】
また、前記第1パラメータ測定部が、水位を測定することを特徴としてもよい。
【0009】
この発明によれば、第1パラメータ測定部が、水位を測定する。これにより、第1保護部の内部において、水位を測定することができる。よって、周囲の風などに影響されることなく、水位を測定することができる。
【0010】
また、前記第1保護部が、前記圃場の地面に対して地上から地下に向けて交差するように配置され、前記圃場の地下において、前記第1保護部を軸直方向に貫通する第1貫通穴が、少なくとも1つ設けられていることを特徴としてもよい。
【0011】
この発明によれば、地下において、第1保護部を軸直方向に貫通する第1貫通穴が、少なくとも1つ設けられている。これにより、地下に位置する第1保護部の内部に水を移動させることができる。よって、圃場における水位を地下においても測定することができる。
【0012】
また、前記圃場の地上において、前記第1保護部を貫通する第2貫通穴及び前記第2保護部を貫通する貫通穴が少なくとも1つずつ設けられ、前記第2保護部の外壁には、地上から地下にかけて連結穴が設けられていることを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、第2保護部の外壁に、地上から地下にかけて連結穴が設けられている。これにより、第2保護部の内部において、地上から地下にかけて連結穴を介して水を移動させやすくすることができる。つまり、第2保護部を介して、第1保護部の内部が水で満たされやすくすることができる。よって、第1保護部の内部においてより正確な水位を測定することができる。
【0014】
また、前記第1保護部及び前記第2保護部が、樹脂部材からなることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、第1保護部及び第2保護部が、樹脂部材からなる。つまり、第1保護部及び第2保護部は、簡易な工具で切断することができる。よって、施工現場にて高さ調整を容易に行うことができる。
【0016】
また、前記第2保護部には、前記圃場の地上における接地高さに、鍔部が設けられていることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、圃場の地上における接地高さに、鍔部が設けられている。これにより、地面との当たり面を確保することができる。よって、圃場において圃場センサシステムが自立しやすくすることができる。
【0018】
また、前記鍔部は、固定貫通穴を備えていることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、鍔部は固定貫通穴を備えている、これにより、固定貫通穴に固定部材を設けることで、圃場センサシステムを田面に確実に固定することができる。
【0020】
また、前記鍔部の下面には、溝が設けられていることを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、鍔部の下面には、溝が設けられている。これにより、圃場の地上に位置する水が、溝を介して第2保護部材の内部に移動しやすくすることができる。つまり、第2保護部を介して、より第1保護部の内部が水で満たされやすくすることができる。よって、第1保護部の内部においてより正確な水位を測定することができる。
【0022】
また、前記第1保護部の、前記圃場の最大水位よりも高い位置に、エア抜き部を備えることを特徴としてもよい。
【0023】
この発明によれば、第1保護部の、圃場の最大水位よりも十分高い位置に、エア抜き部を備える。これにより、第1保護部の内部が水で満たされても、第1保護部の内部の気圧を大気圧と同じにすることができる。よって、より正確な水位を測定することができる。
【0024】
また、本発明に係る圃場管理システムは、前記圃場センサシステムを用いて、圃場管理者がバルブ開閉を操作する圃場管理システムであって、前記圃場センサシステムからの測定情報を送信する測定情報送信部と、前記測定情報送信部から送信された前記測定情報を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記測定情報を保管する情報記憶部と、前記情報記憶部に保管された前記測定情報と、前記圃場管理者による前記バルブ開閉の操作情報と、を用いて給水計画を演算する演算部と、前記演算部が演算した前記給水計画を、自動給水機に送信する制御情報送信部と、前記制御情報送信部から前記給水計画を受信して、バルブ開閉を行う自動給水機と、を備えることを特徴とする。
【0025】
この発明によれば、演算部が演算した給水計画によって、自動給水機のバルブ開閉を行う。これにより、圃場管理者が逐一操作を行うことなく、圃場への給水計画を管理することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、複数のパラメータを測定する測定部同士が干渉しない圃場センサシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る圃場管理システムを示す概要図である。
図2】本発明の一実施形態に係る圃場センサシステムを示す概要図である。
図3図2に示す圃場センサシステムの断面図である。
図4図3に示すIII部の拡大図である。
図5図3に示すIV部の拡大図である。
図6】本発明の一実施形態に係る自動給水栓の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る圃場管理システム1000及び圃場センサシステム100を説明する。
図1に示す圃場管理システム1000は、圃場(例えば、水田)への給水量を管理するために用いられる。圃場管理システム1000は、圃場センサシステム100と、測定情報送信部200と、システム制御部300と、自動給水栓400と、を備える。
【0029】
圃場センサシステム100は、複数の圃場パラメータを測定する。圃場センサシステム100は、主に圃場の水位及びその他のパラメータ(例えば、水位、圃場における水のph濃度、農薬濃度、水温、気温、湿度など)を測定する。図2及び図3に示すように、圃場センサシステム100は、第1パラメータ測定部10と、第1保護部20と、第2保護部30と、第2パラメータ測定部40と、を備える。
【0030】
第1保護部20は、筒状の部材である。第1保護部20は、圃場の地面Gに対して地上から地下に向けて交差するように配置されている。ここで、第1保護部20は、前記筒状の軸方向が地面Gに対して垂直に設けられていることが好ましい。また、第1保護部20の上端は、圃場の最大水位よりも十分(例えば、圃場の最大水位よりも20%程度)高い位置に設けられていることが好ましい。圃場の最大水位は、圃場の氾濫時ではなく、圃場で通常、作農している場合における最大水位を意味する。圃場の最大水位は、例えば、圃場における外堀高さを参照して推定することができる。
第1保護部20には、第1貫通穴21と、第2貫通穴22と、が設けられている。また、第1保護部20の上端には蓋部20Tと、第1保護部20の下端には底部20Bと、が取付けられている。
【0031】
第1貫通穴21は、圃場の地下において、第1保護部20の外壁を軸直方向に貫通する穴である。第2貫通穴22は、圃場の地上において、第1保護部20の外壁を軸直方向に貫通する穴である。第2貫通穴22は、第1貫通穴21よりも上方に位置する。第2貫通穴22は、第1貫通穴21よりも上下方向に小さい。第1貫通穴21及び第2貫通穴22は、それぞれ第1保護部20の外壁において少なくとも1つずつ設けられている。また、第1貫通穴21及び第2貫通穴22には、第1保護部20の内部に泥などが侵入することを防ぐ不図示のフィルターを備えていてもよい。
【0032】
圃場管理システム1000を圃場に設置した時、第1保護部20の内部には、この第1貫通穴21及び第2貫通穴22を通して水が流入する。第1貫通穴21から第1保護部20には地下水が流入する。第2貫通穴22から第1保護部20には地上の水が流入する。また、第1保護部20の上端部には、第1保護部20の空気を抜くためのエア抜き部20eが設けられている(後述する)。これにより、圃場において、第1保護部20の内部に流入した水と、圃場における第1保護部20の外に位置する水の水面の高さは、常に同じになる。つまり、圃場センサシステム100は、このように第1保護部20の内部に流入した水位を測定することにより、圃場の水位を検知する。
【0033】
蓋部20Tは、図5に示すように、筒状の第1保護部20の上端を覆うように設けられている。このとき、蓋部20Tと第1保護部20との取付けは、溶接や接着などによらず、互いを嵌め込むことによってされる(着脱可能である)ことが好ましい。これにより、着脱を容易とし、例えば、第1保護部20にゴミが溜まった場合等の手入れを容易とする。
【0034】
また、蓋部20Tには、第1パラメータ測定部10のシャフト部11が貫通する穴(シャフト穴)が設けられている。また、蓋部20Tを貫通したシャフト部11の上端には、測定情報送信部200が設けられている(詳細は後述する)。
更に、蓋部20Tには、第1保護部20の内部の空気を抜くためのエア抜き部20eが設けられている。ここで、上述のように、蓋部20Tは第1保護部20の上端を覆うように設けられている。つまり、エア抜き部20eは、第1保護部20の、前記圃場の最大水位よりも十分高い位置に設けられていることが好ましい。これにより、第1保護部20の内部の圧力を、常に大気圧と同じとする。
【0035】
エア抜き部20eは、シャフト部11と蓋部20Tに設けられたシャフト穴との間の隙間であってもよいし、蓋部20Tの上面に設けられる空気穴であってもよいし、第1保護部20と蓋部20Tとの間に設けられた隙間であってもよい。本実施形態において、エア抜き部20eは、シャフト部11と蓋部20Tに設けられたシャフト穴との間の隙間であるとする。
底部20Bは、筒状の第1保護部20の下端を覆うように設けられている。これにより、第1保護部20の内部に圃場の地下における泥が侵入することを防ぐ。
【0036】
第2保護部30は、筒状の部材である。図3に示すように、第2保護部30は、第1保護部20の周囲を覆うように設けられる。第2保護部30には、貫通穴31と、連結穴32と、鍔部33と、が設けられている。
貫通穴31は、図4に示すように、圃場の地上において、第2保護部30を軸直方向に貫通する穴である。貫通穴31の開口面積は、第2貫通穴22の開口面積よりも大きく、貫通穴31は、第2貫通穴22を外部に露出させている。これにより、貫通穴31は、圃場管理システム1000を圃場に設置した時、第2保護部30の内部に水を流入させる役割を有する。第2保護部30の内部に流入した水は、第1保護部20の第1貫通穴21を介して第1保護部20の内部に流入する。このとき、貫通穴31には、泥などの進入を防ぐ不図示のフィルターを備えていてもよい。
貫通穴31は、第2保護部30の外壁の周方向において、本実施形態のように、第1保護部20の第1貫通穴21と対応した位置に設けられていてもよいし、位置をずらして設けられていてもよい。
【0037】
鍔部33は、第2保護部30において、圃場の地上における接地高さにおいて、第2保護部30の軸直方向の平面に設けられた平板状の形状である。図2に示すように、この部位の下面が地面Gと接することで、地面Gとの当たり面を確保し、圃場センサシステム100が自立しやすくする役割を有する。鍔部33は、第2保護部30の下端に設けられている。鍔部33には、溝部33gと、固定貫通穴33hと、が設けられている。
【0038】
溝部33gは、鍔部33の下面に設けられた溝である。溝部33gは、圃場の地面付近の水を第2保護部30の内部に流入させやすくする役割を有する。このため、溝部33gは、図4に示すように、鍔部33の下面において、軸直方向の内側から外側にかけて直線状に途切れることなく設けられていることが好ましい。溝部33gは、鍔部33の下面において少なくとも1つ設けられる。あるいは、間隔をあけて複数設けられていてもよい。鍔部33の下面の上下方向の位置(溝部33gの上下方向の位置)は、第1貫通穴21の上下方向の位置と同等である。なお、鍔部33の上面は、第2貫通穴22よりも下方に位置している。
【0039】
固定貫通穴33hは、鍔部33の上面から下面にかけて貫通するように設けられた穴である。この固定貫通穴33hを用いて、例えば、ペグや杭等をはじめとした固定部材を地面Gに打ち込むように設けることで、第2保護部30を地面Gに確実に固定する役割を有する。すなわち、圃場センサシステム100を地面Gに確実に固定する役割を有する。
【0040】
連結穴32は、図4に示すように、第2保護部30の内周面において、地上側に設けられた貫通穴31と、地面側に設けられた溝部33gと、を連結する形状である。これにより、第2保護部30の内部において、地上と地下との間を、連結穴32を介して水を移動させやすくする。これにより、第1保護部20の内部を水で満たされやすくする役割を有する。このため、第2保護部30における貫通穴31と溝部33gは、第2保護部30の周方向において、第2保護部30の貫通穴31と対応した位置に設けられていることが好ましい。
【0041】
ここで、第1保護部20及び第2保護部30は、施工現場である圃場において設置高さの調整を行うことがある。設置高さの調整は、第1保護部20及び第2保護部30を適宜切断することによって行う。このため、第1保護部20及び第2保護部30は、簡易な工具で切断することができることが好ましい。本実施形態において、第1保護部20及び第2保護部30には、塩化ビニルやポリプロピレン等をはじめとした樹脂部材が好適に用いられる。
【0042】
次に、圃場センサシステム100によって測定される圃場パラメータについて説明する。上述のように、圃場センサシステム100によって、例えば、圃場における水位、水のph濃度、農薬濃度、水温、気温、湿度などが測定される。
圃場センサシステム100は圃場パラメータを測定するセンサ装置として、第1パラメータ測定部10と、第2パラメータ測定部40と、を備える。本実施形態における上記パラメータの測定について、第1パラメータ測定部10は、第1の圃場パラメータとして特に水位を測定するものとし、第2パラメータ測定部40は、第2の圃場パラメータとしてその他のパラメータを測定するものとする。
【0043】
第1パラメータ測定部10は、圃場の水位を測定する。図3に示すように、第1パラメータ測定部10は、第1保護部20の内部に位置している。第1パラメータ測定部10は、シャフト部11と、フロート部12と、を備える。
上述のように、シャフト部11は、第1保護部20の軸方向に沿って設けられた棒状の部材である。シャフト部11には、フロート部12が設けられる。また、図5に示すように、シャフト部11の上端は、第1保護部20の上端に設けられた蓋部20Tのシャフト穴を貫通し、ナットNによって固定されている。
【0044】
フロート部12は、シャフト部11に設けられ、シャフト部11の表面を摺動する。フロート部12は、浮力を有する部材である。この浮力によって、フロート部12は、第1保護部20の内部の水面に浮かぶ。また、第1保護部20の水位が変化した時、水面の高さに合わせて、シャフト部11に沿って移動する。第1パラメータ測定部10は、このフロート部12の位置を検知することにより、圃場の水位を測定する。
【0045】
第2パラメータ測定部40は、上述の圃場パラメータにおける水位以外のものを測定する。つまり、本実施形態における第2パラメータ測定部40には、例えば、温度計、湿度計、濃度測定器等が用いられる。あるいは、これらの測定機器を適宜組み合わせて配置してもよい。
【0046】
図3に示すように、第2パラメータ測定部40は、第2保護部30の貫通穴31において、第1保護部20と第2保護部30の境界に配置されている。あるいは、第1保護部20と第2保護部30との間において、貫通穴31よりも上方の空間に配置されもよい。このような配置とすることで、第1保護部20の内部に位置している第1パラメータ測定部10と、上述の位置に配置された第2パラメータ測定部40とが物理的に干渉することを防ぐ。
【0047】
また、上述のように第1パラメータ測定部10と第2パラメータ測定部40との干渉を防ぐことができる配置となっていれば、第1パラメータ測定部10及び第2パラメータ測定部40によって任意の圃場パラメータを測定してもよい。例えば、上述の構成と異なるものを採用して、第1パラメータ測定部10によって水位以外のパラメータを測定してもよいし、第2パラメータ測定部40によって水位を測定してもよい。
【0048】
測定情報送信部200は、圃場センサシステム100が測定した圃場パラメータについての情報を、システム制御部300の受信部310に向けて送信する(後述する)。このとき、測定情報送信部200と受信部310とは、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。本実施形態において、測定情報送信部200は、圃場センサシステム100における第1パラメータ測定部10のシャフト部11の上端に設けられる。測定情報送信部200は、第1パラメータ測定部10、第2パラメータ測定部40に接続されている。
【0049】
システム制御部300は、本実施形態に係る圃場管理システム1000を制御する。システム制御部300は、受信部310と、情報記憶部320と、演算部330と、制御情報送信部340と、を備える。
受信部310は、測定情報送信部200から送信された測定情報と、圃場管理者によるバルブ開閉の操作情報を受信する。ここで、圃場管理者によるバルブ開閉の操作情報とは、本実施に係る圃場管理システム1000を備えた圃場の管理者が、自己の判断に基づいて決定する情報であって、特に圃場への給水量に関する情報である。受信部310によって受信された各情報は、情報記憶部320に保存、保管される。
【0050】
情報記憶部320は、受信部310が受信した測定情報を保存、保管する。情報記憶部320に保存された情報は、演算部330による演算のパラメータとして用いられる。
演算部330は、情報記憶部320に保管された測定情報と、圃場管理者によるバルブ開閉の操作情報と、を用いて給水計画を演算する。
ここで、給水計画とは、演算部330によって決定される、自動給水栓400のバルブ開閉量である。情報記憶部320に保管された測定情報とは、上述の各圃場パラメータである。圃場管理者によるバルブ開閉の操作情報とは、圃場管理者による圃場への給水量に関する情報である。これらの情報に基づき、演算部330は、給水計画を決定する。
【0051】
制御情報送信部340は、演算部330が演算した給水計画を、自動給水機の通信部410に送信する。自動給水栓400は、この給水計画を受信して、本体部420に備えられたバルブを開閉する。
自動給水栓400は、上述の給水計画に基づき、圃場に給水する。自動給水栓400は、通信部410と、本体部420と、を備える。
【0052】
通信部410は、制御情報送信部340が送信した給水計画を受信する。このとき、制御情報送信部340と通信部410とは、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
本体部420は、例えば、川あるいは人工的に備えられた水路と、圃場との間に設けられる。また、本体部420は、不図示のバルブを備える。この状態において前記バルブを開閉することによって、圃場に給水する。本体部420には、例えば、用水を吐出する開口部の軸方向に移動する弁体を備えた一般的な農業用バルブの他、開口部の軸方向に対して弁体が水圧により上下するエアダスバルブ(登録商標、積水化学工業株式会社)や、図6に示すような、開口部421aの軸方向と直交する方向に移動する板状の弁体421bを備えたスライドゲート421が好適に用いられる。また、バルブ開閉には、例えば、サーボモータが好適に用いられる。
【0053】
なお、本実施形態における圃場管理システム1000は、例えば、1ha以上の大規模な圃場や、あるいは、個人によって管理されている複数の水田等に好適に用いられる。
このとき、圃場管理システム1000における圃場センサシステム100と、自動給水栓400は、複数設けられていてもよい。この複数の圃場センサシステム100によって測定された測定情報を、1つのシステム制御部300に集約して演算に用いて、決定された給水計画を、複数の自動給水栓400に一律に適用してもよい。あるいは、複数設けられた自動給水栓400ごとに給水計画を決定してもよい。
【0054】
なお、圃場管理者によって決定される給水量は、以下の条件を判断することによって決定されることが好ましい。すなわち、例えば、あらかじめ決定した定時ごとの給水に対して、水温が一定より高い場合、あるいは水位が設定よりも低い場合は、定時でなくとも給水を開始するとしてもよい。また、上述の給水によって水位が上昇して一定の水位に達した時、給水を停止するとしてもよい。
【0055】
このような条件において、圃場管理者が決定する圃場への給水量は、複数の圃場において一律に反映させてもよいし、圃場ごとに給水量を決定してもよい。
あるいは、圃場管理システム1000における各通信媒体をクラウドと連携してもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る圃場センサシステム100によれば、第2保護部30が第1保護部20の周囲を覆うように設けられ、第1パラメータ測定部10は第1保護部20内に配置され、第2パラメータ測定部40は第1保護部20と第2保護部30との間に配置されている。これにより、第1パラメータ測定部10と第2パラメータ測定部40とが干渉することを防ぐことができる。
【0057】
また、第1パラメータ測定部10が、水位を測定する。これにより、第1保護部20の内部において、水位を測定することができる。よって、周囲の風などに影響されることなく、水位を測定することができる。
【0058】
また、地下において、第1保護部20を軸直方向に貫通する第1貫通穴21が、少なくとも1つ設けられている。これにより、地下に位置する第1保護部20の内部に水を移動させることができる。よって、圃場における水位を地下においても測定することができる。
【0059】
また、第2保護部30の外壁に、地上から地下にかけて連結穴32が設けられている。これにより、第2保護部30の内部において、地上から地下にかけて連結穴32を介して水を移動させやすくすることができる。つまり、第2保護部30を介して、第1保護部20の内部が水で満たされやすくすることができる。よって、第1保護部20の内部においてより正確な水位を測定することができる。
【0060】
また、第1保護部20及び第2保護部30が、樹脂部材からなる。つまり、第1保護部20及び第2保護部30は、簡易な工具で切断することができる。よって、施工現場にて高さ調整を容易に行うことができる。
【0061】
また、圃場の地上における接地高さに、鍔部33が設けられている。これにより、地面Gとの当たり面を確保することができる。よって、圃場において圃場センサシステム100が自立しやすくすることができる。
【0062】
また、鍔部33は固定貫通穴33hを備えている、これにより、固定貫通穴33hに固定部材を設けることで、圃場センサシステム100を田面に確実に固定することができる。
【0063】
また、鍔部33の下面には、溝が設けられている。これにより、圃場の地上に位置する水が、溝を介して第2保護部材の内部に移動しやすくすることができる。つまり、第2保護部30を介して、より第1保護部20の内部が水で満たされやすくすることができる。よって、第1保護部20の内部においてより正確な水位を測定することができる。
【0064】
また、第1保護部20の、圃場の最大水位よりも十分高い位置に、エア抜き部20eを備える。これにより、第1保護部20の内部が水で満たされても、第1保護部20の内部の気圧を大気圧と同じにすることができる。よって、より正確な水位を測定することができる。
【0065】
また、演算部330が演算した給水計画によって、自動給水機のバルブ開閉を行う。これにより、圃場管理者が逐一操作を行うことなく、圃場への給水計画を管理することができる。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、圃場が山などの傾斜部に設けられ、水面が圃場の地面Gに対して平行でない場合は、第1保護部20の軸方向が水面に対して直角になるように設けてもよい。
また、圃場の最大水位よりも十分高い位置に設けることができれば、エア抜き部20eは、蓋部20Tに設けられていなくてもよい。
【0067】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 第1パラメータ測定部
20 第1保護部
20e エア抜き部
21 第1貫通穴
22 第2貫通穴
30 第2保護部
31 貫通穴
32 連結穴
33 鍔部
33h 固定貫通穴
40 第2パラメータ測定部
100 圃場センサシステム
200 測定情報送信部
310 受信部
320 情報記憶部
330 演算部
340 制御情報送信部
1000 圃場管理システム
G 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6