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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149114
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】水冷服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
A41D13/005 106
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051106
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】橘高 薫
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、衣服本体に配管される水流出管の損傷を抑制することを目的とする。
【解決手段】衣服本体1と、この衣服本体1の内面側、あるいは外面側の少なくとも一方の面において、この衣服本体1の上下方向に配管された水流出管4と、水流出管4に、水供給状態で連結された水供給連結体5と、この水供給連結体5に、その水流出口9が接続されるとともに、その水流入口10には、ポンプ11を介して水が供給される水供給管8とを備えている。水流出管4は、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有するとともに、長手方向の複数個所において、衣服本体1に位置決めされ、衣服本体1は、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する左右方向の伸縮率よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、
この衣服本体の内面側、あるいは外面側の少なくとも一方の面において、この衣服本体の上下方向に配管された水流出管と、
前記水流出管に、水供給状態で連結された水供給連結体と、
この水供給連結体に、その水流出口が接続されるとともに、その水流入口には、水供給手段から水が供給される水供給管と、を備え、
前記水流出管は、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有するとともに、その長手方向の複数個所において、前記衣服本体に位置決めされた構成とし、
前記衣服本体は、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する左右方向の伸縮率よりも小さい構成とした水冷服。
【請求項2】
前記水流出管の一端は、前記衣服本体の上方に配置され、前記水流出管の他端は、前記衣服本体の上方から下方へと引き下げられた状態からUターンをして、前記衣服本体の上方に配置され、前記水流出管の一端と、前記水流出管の他端に、水供給部を水供給状態で連結した構成とし、
前記水流出管の一端からUターン部直前部分までの寸法、および、この水流出管のUターン部後から前記水流出管の他端までの寸法は、いずれも、この水流出管のUターン部における寸法よりも長くした請求項1に記載の水冷服。
【請求項3】
前記衣服本体に、複数本の前記水流出管を、左右方向に間隔を空けて設けた請求項1、または2に記載の水冷服。
【請求項4】
前記水流出管は、中空糸膜によって構成した請求項1~3のいずれか一つに記載の水冷服。
【請求項5】
前記水流出管を、糸により弾性変形させて管径を絞った状態で、前記衣服本体に位置決めした請求項4に記載の水冷服。
【請求項6】
前記衣服本体の生地を、前記左右方向の幅を250mm、前記上下方向の長さを500mmの縦長形状の試験片としたとき、
この試験片は、上端と下端をクランプ有効幅140mmのクランプ具でクランプして前記上下方向に対して9kgの引張荷重を加えた場合に、上下方向の伸び率が、前記水流出管が引張破断する伸び率よりも小さい生地である請求項5に記載の水冷服。
【請求項7】
前記衣服本体の生地を、前記左右方向の幅を250mm、前記上下方向の長さを500mmの縦長形状の試験片としたとき、
この試験片は、上端と下端をクランプ有効幅140mmのクランプ具でクランプして前記上下方向に対して19kgの引張荷重を加えた場合に、上下方向の伸び率が、前記水流出管が引張破断する伸び率よりも小さい生地である請求項5に記載の水冷服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服本体に水流出管を配置し、この水流出管の水流出孔を介して流出する水で衣服本体を濡らし、その水を蒸発させ、その時の気化熱で身体を冷却する水冷服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の水冷服としては、下記特許文献1に示されたものが提案されている。
すなわち、肩の上に貯水用のバッグを装着し、このバッグに、送水用のパイプの一端を接続し、次に、このパイプの中部を衣服本体部分に蛇行させ、その後、このパイプの他端を前記バッグに接続した構成となっている。
また、パイプにはポンプが介在され、このポンプを駆動することで、前記バッグ内の水を、パイプの一端、中部、他端、バッグ内へと循環させる構成となっている。
パイプには小孔部が設けられており、この小孔部からパイプ内の水が衣服本体へと流出し、衣服本体を濡らし、その水を蒸発させ、その時の気化熱で、身体を冷却することが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-20140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例では、バッグ内の水を、パイプの小孔部から衣服本体へと流出させ、衣服本体を濡らし、その水を蒸発させ、その時の気化熱で、身体を冷却することが出来る。
つまり、使用者の発汗を前提とすることなく、身体の冷却をすることが出来るものとなる。
【0005】
しかしながら、パイプに小孔部を設けているので、その分、このパイプは引張強度が弱くなり、身体への脱着時に損傷する虞がある。
特に、使用後には衣服本体は濡れた状態となっているので、腕、肘が衣服本体に絡みつき、この衣服本体を脱ぐ時に、この衣服本体に必要以上に伸ばす力が加わってしまう事もあり、この衣服本体に取り付けたパイプが損傷してしまう虞がある。
また、衣服本体の装着時でも、同じように腕、肘で、衣服本体に必要以上に伸ばす力を加えてしまうと、パイプが損傷してしまう虞もある。
【0006】
さらに、上記従来例では、パイプの適宜の個所に1箇所の小孔部を設けているが、このような状態ではその小孔部から勢いよく水が流出するので、流出水を分散させるために、パイプの長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を設けた場合には、さらに引張強度が弱くなり、パイプの損傷が現実的なものとなる。
【0007】
そこで、本発明は、衣服本体に配管される水流出管の損傷を抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために本発明の水冷服は、衣服本体と、この衣服本体の内面側、あるいは外面側の少なくとも一方の面において、この衣服本体の上下方向に配管された水流出管と、前記水流出管に、水供給状態で連結された水供給連結体と、この水供給連結体に、その水流出口が接続されるとともに、その水流入口には、水供給手段から水が供給される水供給管と、を備え、前記水流出管は、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有するとともに、長手方向の複数個所において、前記衣服本体に位置決めされた構成とし、衣服本体は、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する横方向の伸縮率よりも小さい構成とした。
また、前記水流出管の一端は、前記衣服本体の上方に配置され、前記水流出管の他端は、前記衣服本体の上方から下方へと引き下げられた状態からUターンをして、前記衣服本体の上方に配置され、前記水流出管の一端と、前記水流出管の他端に、水供給部を水供給状態で連結した構成とし、前記水流出管の一端からUターン部直前部分までの寸法、および、この水流出管のUターン部後から前記水流出管の他端までの寸法は、いずれも、この水流出管のUターン部における寸法よりも長くした。
さらに、前記衣服本体に、複数本の前記水流出管を、左右方向に間隔を空けて設けた。
また、前記水流出管は、中空糸膜によって構成した。
さらに、前記中空糸膜よりなる水流出管を、糸により、この水流出管を弾性変形により管径を絞った状態で、前記衣服本体に位置決めした。
また、前記衣服本体は、前記左右方向の幅を250mm、前記上下方向の長さを500mmの縦長形状の試験片とし、この試験片の上端と下端を、それぞれ、クランプ有効幅140mmのクランプ具でクランプし、前記上下方向に対して9kgの引張荷重を加えた場合に、この試験片の前記上下方向の伸び率が、前記水流出管が引張破断する伸び率よりも小さい、生地により構成されたものとした。
さらに、前記衣服本体は、前記左右方向の幅を250mm、前記上下方向の長さを500mmの縦長形状の試験片とし、この試験片の上端と下端を、それぞれ、クランプ有効幅140mmのクランプ具でクランプし、前記上下方向に対して19kgの引張荷重を加えた場合に、この試験片の上下方向の伸び率が、前記水流出管が引張破断する伸び率よりも小さい、生地により構成されたものとした。
【発明の効果】
【0009】
以上の本発明は、衣服本体と、この衣服本体の内面側、あるいは外面側の少なくとも一方の面において、この衣服本体の上下方向に配管された水流出管と、前記水流出管に、水供給状態で連結された水供給連結体と、この水供給連結体に、その水流出口が接続されるとともに、その水流入口には、水供給手段から水が供給される水供給管と、を備え、前記水流出管は、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有するとともに、長手方向の複数個所において、前記衣服本体に位置決めされた構成とし、衣服本体は、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直行する左右方向の伸縮率よりも小さい構成としたので、衣服本体に配管される水流出管の損傷を抑制することができる。
【0010】
すなわち、本発明では、衣服本体の上下方向に配管された水流出管には、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を設け、水をじわりと衣服本体に供給し、衣服本体での気化が促進される構成としたが、その反面、水流出管の引張強度は弱くなってしまう。
そこで、本発明では、衣服本体を、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する左右方向の伸縮率よりも小さい構成としたので、水流出管に過大な引張力が加わりにくくなり、その結果として、衣服本体に配管される水流出管の損傷を抑制することができる。
【0011】
また、衣服本体はその上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する左右方向の伸縮率よりも小さい構成としたが、この衣服本体の着脱時には、衣服本体に縦方向の力が加わった場合でも、その時には、衣服本体が左右方向に伸びることで、衣服本体の着脱性の悪化も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる水冷服の正面図
図2】同背面図
図3】同一部拡大斜視図
図4】同水冷服の引張試験を示す平面図
図5】同水冷服の引張試験を示す平面図
図6】同水冷服の引張試験を示す写真
図7】同水冷服の引張試験を示す写真
図8】同水冷服の引張試験を示す写真
図9】同水冷服の引張試験を示す写真
図10】同水冷服の引張試験結果を示す図
図11】同水冷服の引張試験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
図1図2において、1は衣服本体で、前身頃2と後身頃3の、それぞれの外表面側には、水流出管4が、上下方向に配管されている。
水流出管4は、長手方向に直交する部分に複数の水流出孔が設けられた中空糸膜によって構成されている。
前身頃2においても、後身頃3においても、水流出管4の一端側は、衣服本体1の上方に配置され、他端は、前記衣服本体1の上方から下方へと、緩やかな蛇行状態で引き下げられ、その後、衣服本体1の下方部においてUターンをし、再び、前記衣服本体1の上方に配置され、これら水流出管4の一端と、他端に、水供給連結体5の水供給部6が水供給状態で連結されている。
この状態で、水流出管4は、衣服本体1の上下方向に配管された状態となっている。
つまり、水流出管4の一端からUターン部14の直前部分までの(蛇行に沿った道のりではない)直線距離の寸法(図1における符号d1)、および、この水流出管4のUターン部14後から他端までの(蛇行に沿った道のりではない)直線距離の寸法(図1における符号d2)は、いずれも、この水流出管4のUターン部14における左右方向の(湾曲した道のりではない)直線距離の寸法(図1における符号d3)よりも長くしており、全体的には、水流出管4は、衣服本体1の上下方向に配管された状態となっているのである。
【0014】
図1図2の配管状態で、中空糸膜よりなる水流出管4は、図3の様に、糸7により、この水流出管4を弾性変形により管径を絞った状態で、衣服本体1に、複数個所において位置決めされている。
【0015】
また、水供給連結体5も糸止めにより衣服本体1に位置決めされ、この水供給連結体5には、水供給管8の水流出口9が接続されている。
水供給管8は、衣服本体1の側方において上下方向に配管され、その上方の4か所の水流出口9が、図1図2に示すように水供給連結体5に水供給状態で連結されている。
また、水供給管8の下方側の水流入口10には、水供給手段として用いたポンプ11を介して水容器12が連結される。
つまり、ポンプ11を駆動すれば、水容器12内の水が、水供給管8の水流入口10、水供給管8、水供給管8の水流出口9、水供給連結体5、水供給連結体5の水供給部6、水流出管4の一端と他端、水流出管4、水流出管4の長手方向に直交する部分に設けた複数の水流出孔を介して、衣服本体1に、じわりと流出し、衣服本体1を濡らすことになる。
そして、衣服本体1からの水の蒸発が、その時の気化熱で、身体の冷却につながるのである。
【0016】
なお、水流出管4は、前身頃2においても、後身頃3においても、図1図2に示すように、複数本が、左右方向に間隔を設けた状態で、それぞれを、衣服本体1の上下方向に配管された状態となっているので、衣服本体1の広い面積で冷却作用が発揮される。
また、水容器12は、水供給管8の水流入口10に着脱自在となっているので、水の補給を簡単に行うことが出来る。
さらに、ポンプ11の駆動量を調整すれば、水流出管4の水流出孔から衣服本体1に流出する水量を調整することが出来る。
この場合のポンプ11の駆動量調整は、ポンプ11の間欠的な駆動によっても行える。
【0017】
本実施形態の特徴は、水流出管4が、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有するとともに、その長手方向の複数個所において、衣服本体1に位置決めされた構成において、衣服本体1として、その上下方向の伸縮率が、この上下方向に直交する左右方向の伸縮率よりも小さい構成としたことである。
【0018】
衣服本体1は、素肌に密着させることにより、高い冷却効果を得ることができる。したがって、衣服本体1を構成する生地は、肌触りが良くて収縮率の高い、カットソーに分類されるニット生地が最適である。また、吸水速乾性能を高めるにはポリエステルを主体とした生地が良い。しかし、ポリエステル自体は疎水性で吸水性が無いため、他の吸水性の良いアセテート繊維や綿などを5~20%織り込んだ複合繊維としたものや、ポリエステル繊維の断面に特徴を持たせて親水性を高めたものや、ポリエステル生地に化学処理を施して親水性を高めたものなどにより最適な吸水速乾性能を得ることができる。生地を素肌に密着させるには、組成にポリウレタン繊維を5%程度編み込み、さらに伸縮性を高めて、コンプレッション下着と呼ばれる素肌に密着させる機能下着も存在する。
【0019】
このような前提に立って、本実施形態では、衣服本体1としては、上下方向の伸び率が25%、左右方向の伸び率が42%の生地によって構成した。
生地の伸び率とは、JIS L 1096で規定されているように、幅50mm×長さ300mmの試験片に14.7N(1.5kg)の荷重を加えた時の伸びにより、設定されている。
このように上下方向が、左右方向に比較し、伸びにくい衣服本体1に、水流出管4を上下方向に配管し、糸7で位置決めし、実使用時における水流出管4の引張破断を防止しようとしている。
【0020】
本実施形態で使用した水流出管4は、その長手方向に直交する部分に複数の水流出孔を有する中空糸膜によって構成されており、長手方向に、実測で、36%以上伸ばすと、引張破断が発生する。
【0021】
図4は、前記衣服本体1を構成する生地を用い、上下方向への引張荷重を加える実験を示すものである。
この実験で用いる試験片は、前記衣服本体1の左右方向の幅が250mm、前記上下方向の長さが500mmの縦長形状の試験片としている。また、試験片には水流出管4が、実施の形態と同様に配置されている。
この縦長形状の試験片の上端と下端を、それぞれ、クランプ有効幅140mmのクランプ具13でクランプし、前記上下方向に対して引張荷重を加えた場合に、この試験片の伸びと、それに配置している水流出管4の状態を確認する。
【0022】
図6図7は、その実験を撮影した写真である。
図6は、引っ張る前の状態である。
図7は引張荷重をかけた状態で、水流出管4にも引張荷重が加わった状態が理解できる。
図10は縦長形状の試験片に縦方向の引張荷重をかけたときに、試験片が、どの程度伸びるかを示した図である。
図10のA線は、本実施形態品(上下方向の伸び率が25%、左右方向の伸び率が42%)に対して、引張荷重を変化させた時の伸び率を示している。
【0023】
本実施形態で用いた水流出管4は、実測で36%の引張伸び率状態で破断することが事前に測定されているので、上記縦長形状の試験片に、何キロの引張荷重をかけると、その伸びが36%に届くかを観察した。
その結果、本実施形態では、9kgの引張荷重が加わるまでは、試験片は36%の伸びにまでは到達しないことが分かった。
つまり、本実施形態では、衣服本体1は、上下方向の伸び率が25%、左右方向の伸び率が42%であって、上下方向に伸びにくい生地を用いているので、引張荷重が9kgまでは、水流出管4の破断が発生しないものとなった。
【0024】
実使用状態で衣服本体1に加わる引張荷重は、使用者の体格、体力、使用状況などによって異なるが、上記JIS L 1096(1.5kgの引張荷重)からも理解されるように、数キロ程度の荷重しか想定されておらず、1.5kgを大きく上回る上記9kgの引張荷重でも、水流出管4の破断が発生しないということは、大いに評価されるものとなる。
【0025】
本実験では、クランプ有効幅を140mmに設定しているので、JIS L 1096に換算すると荷重値は50÷140=0.357、すなわち35.7%に相当する。
したがって9kg×0.357=3.21kgの荷重値に換算することができる。
【0026】
なお、図5は、前記衣服本体1を構成する生地を用い、左右方向への引張荷重を加える実験を示すものである。
この実験で用いる試験片も、前記衣服本体1の左右方向の幅が250mm、前記上下方向の長さが500mmの縦長形状の試験片としている。
この縦長形状試験片の左側端と右側端を、それぞれ、クランプ有効幅140mmのクランプ具13でクランプし、前記左右方向に対して引張荷重を加えた場合に、この縦長形状試験片の伸びと、それに配置している水流出管4の状態を確認する。
【0027】
図8図9は、その実験を撮影した写真である。
図8は、引っ張る前の状態である。
図9は左右方向の引張荷重をかけた状態で、水流出管4が湾曲した状態が理解できる。
図11は試験片に左右方向の引張荷重をかけたときに、縦長形状の試験片が、左右方向に、どの程度伸びるかを示した図である。
図11のA線は、本実施形態品(上下方向の伸び率が25%、左右方向の伸び率が42%)の試験片に対して、左右方向の引張荷重を変化させた時の伸び率を示している。
この試験片に左右方向の引張荷重を加えた場合、図9のごとく、試験片が左右に伸び、その結果として、上下方向に配管した水流出管4の長手方向の伸びも発生し、試験片の左右方向の伸び率が113~114%で、水流出管4のUターン部14が、長手方向に破断することがわかった。一方で、Uターン部14以外の水流出管4は破断しなかった。なお、水流出管4は、蛇行して配管されていることから、上下方向に対して交差した斜め方向に伸びているため、試験片が左右方向に伸ばされれば、水流出管4は、自身の長手方向(上下方向に対して交差した斜め方向)に伸びる。
【0028】
しかし、左右方向の引張荷重が9kgでは、まだ試験片は100%の伸びにまで至っておらず、この左右方向も9kgまでの引張荷重では、水流出管4のUターン部14が破断しないことが確認された。
【0029】
結論として、本実施形態においては、縦方向の引張荷重、左右方向の引張荷重が、それぞれ9kgまでは、水流出管4が、長手方向に破断しないものとなった。
【0030】
なお、本実施形態では、衣服本体1の外表面側に、水流出管4を、上下方向に配管したが、衣服本体1の内表面側に、水流出管4を、上下方向に配管しても良い。また、水流出管4が、衣服本体1の内表面側及び外表面側に配管されていてもよい。ただし、衣服本体1の内表面側に、水流出管4を、上下方向に配管する場合には、水流出管4の身体側を、肌触りの良い布で覆う事が好ましい。
【0031】
(実施の形態2)
本実施形態2では、衣服本体1としては、上下方向の伸び率が12%、左右方向の伸び率が28%の生地を用いて、衣服本体1を構成することとした。
このような生地は、実施の形態1で使用した生地を染め工程の前に、適度に引き伸ばした状態で約180℃の熱を加えて定着させる工程(プリセット処理)を施せば得られる。
この実施の形態2の衣服本体1に用いた生地よりなる試験片(左右方向の幅が250mm、前記上下方向の長さが500mmの縦長形状)で、図4図5の引張荷重試験を行った。
【0032】
図10のB線は、本実施形態品(上下方向の伸び率が12%、左右方向の伸び率が28%)に対して、上下方向の引張荷重を変化させた時の伸び率を示している。
【0033】
本実施形態で用いた水流出管4は、実測で36%の引張伸び率状態で破断することが事前に測定されているので、上記試験片に、何キロの引張荷重をかけると、その伸びが36%に届くかを観察した。
その結果、本実施形態では、19kgの引張荷重までは、試験片が36%の伸びにまでは到達しないことが分かった。
つまり、本実施形態では、衣服本体1は、上下方向の伸び率が12%、左右方向の伸び率が28%であって、上下方向に伸びにくい生地を用いているので、引張荷重が19kgまでは、水流出管4が長手方向に破断しないものとなった。
【0034】
図11のB線は、本実施形態品(上下方向の伸び率が12%、左右方向の伸び率が28%)に対して、左右方向の引張荷重を変化させた時の伸び率を示している。
この試験片に左右方向の引張荷重を加えた場合、図9のごとく、試験片が左右に伸び、その結果として、上下方向に配管した水流出管4の長手方向の伸びも発生し、試験片の左右方向の伸び率が113~114%で、水流出管4のUターン部14が、破断することがわかった。
【0035】
しかし、左右方向の引張荷重が19kgでは、まだ試験片は114%の伸びにまで至っておらず、この左右方向も19kgまでの引張荷重では、水流出管4のUターン部14が、破断しないことが確認された。
【0036】
結論として、本実施形態においては、縦方向の引張荷重、左右方向の引張荷重が、それぞれ19kgまでは、水流出管4が、破断しないことが確認された。
【0037】
なお、左右方向の幅が250mm、前記上下方向の長さが500mmの縦長形状の試験片で得られた荷重値19kgは、JIS L 1096に換算すると、19kg×0.357=6.78kgに相当する。
つまり、水流出管4の破断を、実用上、十分に防止できるものとなった。
【0038】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明の水冷服は、気温の高い場所などで効果的な身体冷却を行う事ができる。
【符号の説明】
【0039】
1 衣服本体
2 前身頃
3 後身頃
4 水流出管
5 水供給連結体
6 水供給部
7 糸
8 水供給管
9 水流出口
10 水流入口
11 ポンプ(水供給手段)
12 水容器
13 クランプ具
14 Uターン部
d1 寸法
d2 寸法
d3 寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11