(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149123
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】配線シート
(51)【国際特許分類】
H05B 3/03 20060101AFI20220929BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05B3/03 ZNM
H05B3/20 337
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051121
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
(72)【発明者】
【氏名】勝田 祐馬
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA05
3K034AA12
3K034BB01
3K034BB13
3K034CA02
3K034CA15
3K034CA32
3K092QA03
3K092QB02
3K092QB14
3K092QC02
3K092QC16
3K092QC25
3K092QC42
3K092RF02
3K092RF08
3K092RF19
3K092RF22
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】温度ムラを抑制できる配線シートを提供すること。
【解決手段】複数の導電性線状体21が間隔をもって配列された疑似シート構造体2と、導電性線状体21に直接的に接触する一対の電極4とを備える配線シート100であって、電極4は、それぞれ給電部5が設けられた金属ワイヤー41を備え、電極4は、配線シート100の平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を備える、配線シート100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体と、前記導電性線状体に直接的に接触する一対の電極とを備える配線シートであって、
前記電極は、それぞれ給電部が設けられた金属ワイヤーを備え、
前記電極は、前記配線シートの平面視において、前記給電部が設けられた金属ワイヤーよりも内側に、金属ワイヤーを備える、
配線シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記金属ワイヤーは、金めっきされている、
配線シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
前記電極を構成する金属ワイヤーのうち、隣り合う金属ワイヤー同士の間隔は、0.5mm以上15mm以下である、
配線シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記電極を構成する金属ワイヤーのうち、最も外側にある金属ワイヤーと、最も内側にある金属ワイヤーとの間隔は、3mm以上30mm以下である、
配線シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記一対の電極を構成する金属ワイヤーは、前記配線シートの平面視において、線対称である、
配線シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記電極を構成する金属ワイヤーは、前記配線シートの平面視において、疑似シート構造体の一方の端部から出発し、疑似シート構造体の反対側の端部まで到達したところで折り返す構造を有する、
配線シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線シートに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有するシート状導電部材(以下、「導電性シート」とも称する)は、発熱装置の発熱体、発熱するテキスタイルの材料、ディスプレイ用保護フィルム(粉砕防止フィルム)等、種々の物品の部材に利用できる可能性がある。
発熱体の用途に用いるシートとして、例えば、特許文献1には、一方向に延びた複数の線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有する導電性シートが記載されている。そして、複数の線状体の両端に、一対の電極が設けられることで、発熱体として用いることができる配線シートが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
配線シートに用いられる電極としては、通常、金属箔又は銀ペーストを用いている。しかしながら、配線シートの電極部分のフレキシブル性の観点から、金属箔又は銀ペーストに代えて、金属ワイヤーを用いることが検討されている。一方で、電極として、金属ワイヤーを用いた場合には、電極の抵抗値が比較的に大きくなる。そのため、発熱部分である線状体の抵抗値との差が小さくなり、本来であれば無視できるはずの電極の抵抗値が無視できなくなってしまう。その結果、配線シートに電流を流して発熱させた際に、温度ムラが発生する場合があることが分かった。
【0005】
本発明の目的は、温度ムラを抑制できる配線シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体と、前記導電性線状体に直接的に接触する一対の電極とを備える配線シートであって、前記電極は、それぞれ給電部が設けられた金属ワイヤーを備え、前記電極は、前記配線シートの平面視において、前記給電部が設けられた金属ワイヤーよりも内側に、金属ワイヤーを備える、配線シートが提供される。
【0007】
本発明の一態様に係る配線シートにおいて、前記金属ワイヤーは、金めっきされていることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る配線シートにおいて、前記電極を構成する金属ワイヤーのうち、隣り合う金属ワイヤー同士の間隔は、0.5mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る配線シートにおいて、前記電極を構成する金属ワイヤーのうち、最も外側にある金属ワイヤーと、最も内側にある金属ワイヤーとの間隔は、3mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る配線シートにおいて、前記一対の電極を構成する金属ワイヤーは、前記配線シートの平面視において、線対称であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る配線シートにおいて、前記電極を構成する金属ワイヤーは、前記配線シートの平面視において、疑似シート構造体の一方の端部から出発し、疑似シート構造体の反対側の端部まで到達したところで折り返す構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、温度ムラを抑制できる配線シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
【
図3】本発明の第二実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
【
図4】本発明の第三実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
【
図5】比較例1で得られたシート状ヒーターを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0015】
(配線シート)
本実施形態に係る配線シート100は、
図1及び
図2に示すように、基材1と、疑似シート構造体2と、樹脂層3と、一対の電極4とを備えている。具体的には、配線シート100は、基材1上に樹脂層3が積層され、樹脂層3上に疑似シート構造体2が積層されている。疑似シート構造体2は、複数の導電性線状体21が間隔をもって配列されている。一対の電極4は、それぞれ給電部5が設けられた金属ワイヤー41を備えている。
【0016】
本実施形態においては、電極4が、配線シート100の平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を備えることが必要である。
ここで、「給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側」とは、導電性線状体21の端部側を外側として、その反対側のことをいう。
【0017】
給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を備えることで、温度ムラを抑制できる理由は、以下の通りであると本発明者らは推察する。
すなわち、電極4が、1本の金属ワイヤー41のみであるとすると、発熱部分である導電性線状体21の抵抗値と、電極4の抵抗値の差が小さくなり、本来であれば無視できるはずの電極4の抵抗値が無視できなくなってしまう。その結果、配線シート100に電流を流して発熱させた際に、温度ムラが発生する場合がある。この理由は、給電部5から遠位にある導電性線状体21には、この導電性線状体21までの電極4の抵抗の影響が大きくなる。そのため、配線シート100に電流を流して発熱させた際に、この導電性線状体21を流れる電流が比較的に小さくなり、他の導電性線状体21と比較して、温度が低くなるものと本発明者らは推察する。
これに対し、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、別の金属ワイヤー41を設けた場合には、この別の金属ワイヤー41にも電流が流れるので、結果として、電極4の抵抗値を低くできる。このようにして、温度ムラを抑制できるものと本発明者らは推察する。
【0018】
(基材)
基材1は、疑似シート構造体2を直接的または間接的に支持できる。基材1としては、例えば、合成樹脂フィルム、紙、金属箔、不織布、布及びガラスフィルム等が挙げられる。また、基材1は、伸縮性基材であることが好ましい。基材1が伸縮性基材であれば、疑似シート構造体2を基材1上に設けた場合でも、配線シート100の伸縮性を確保できる。
伸縮性基材としては、合成樹脂フィルム、不織布、及び布等を用いることができる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。その他、伸縮性基材としては、これらの架橋フィルム及び積層フィルム等が挙げられる。
また、不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブロー不織布、及びスパンレース不織布等が挙げられる。布としては、例えば、織物及び編物等が挙げられる。伸縮性基材としての紙、不織布、及び布はこれらに限定されない。
伸縮性基材の厚さは特に限定されない。伸縮性基材の厚さは、10μm以上10mm以下であることが好ましく、15μm以上3mm以下であることがより好ましく、50μm以上1.5mm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
(疑似シート構造体)
疑似シート構造体2は、複数の導電性線状体21が、互いに間隔をもって配列された構造を有する。すなわち、疑似シート構造体2は、複数の導電性線状体21が、互いに間隔をもって、平面又は曲面を構成するように配列された構造体である。導電性線状体21は、配線シート100の平面視において、一方向に延び、直線又は波形状を成している。そして、疑似シート構造体2は、導電性線状体21が、導電性線状体21の軸方向と直交する方向に、複数配列された構造としている。
なお、導電性線状体21は、配線シート100の平面視において、波形状を成していることが好ましい。波形状としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波、及びのこぎり波等が挙げられる。疑似シート構造体2が、このような構造であれば、導電性線状体21の軸方向に、配線シート100を伸張した際に、導電性線状体21の断線を抑制できる。
【0020】
導電性線状体21の体積抵抗率は、1.0×10-9Ω・m以上1.0×10-3Ω・m以下であることが好ましく、1.0×10-8Ω・m以上1.0×10-4Ω・m以下であることがより好ましい。導電性線状体21の体積抵抗率を上記範囲にすると、疑似シート構造体2の面抵抗が低下しやすくなる。
導電性線状体21の体積抵抗率の測定方法は、次の通りである。導電性線状体21の両端に銀ペーストを塗布し、端部からの長さ40mmの部分の抵抗を測定し、導電性線状体21の抵抗値を求める。そして、導電性線状体21の断面積(単位:m2)を上記の抵抗値に乗じ、得られた値を上記の測定した長さ(0.04m)で除して、導電性線状体21の体積抵抗率を算出する。
【0021】
導電性線状体21の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形状、楕円形状、又は円形状等を取り得るが、樹脂層3との馴染み等の観点から、楕円形状、円形状であることが好ましい。
導電性線状体21の断面が円形状である場合には、導電性線状体21の太さ(直径)D(
図2参照)は、5μm以上75μm以下であることが好ましい。シート抵抗の上昇抑制と、配線シート100を発熱体として用いた場合の発熱効率及び耐絶縁破壊特性の向上との観点から、導電性線状体21の直径Dは、8μm以上60μm以下であることがより好ましく、12μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。
導電性線状体21の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径Dと同様の範囲にあることが好ましい。
【0022】
導電性線状体21の直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体2の導電性線状体21を観察し、無作為に選んだ5箇所で、導電性線状体21の直径を測定し、その平均値とする。
【0023】
導電性線状体21の間隔L(
図2参照)は、0.3mm以上50mm以下であることが好ましく、0.5mm以上30mm以下であることがより好ましく、0.8mm以上20mm以下であることがさらに好ましい。
導電性線状体21同士の間隔が上記範囲であれば、導電性線状体がある程度密集しているため、疑似シート構造体の抵抗を低く維持し、配線シート100を発熱体として用いる場合の温度上昇の分布を均一にする等の、配線シート100の機能の向上を図ることができる。
【0024】
導電性線状体21の間隔Lは、デジタル顕微鏡を用いて、疑似シート構造体2の導電性線状体21を観察し、隣り合う2つの導電性線状体21の間隔を測定する。
なお、隣り合う2つの導電性線状体21の間隔とは、導電性線状体21を配列させていった方向に沿った長さであって、2つの導電性線状体21の対向する部分間の長さである(
図2参照)。間隔Lは、導電性線状体21の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う導電性線状体21同士の間隔の平均値である。
【0025】
導電性線状体21は、特に制限はないが、金属製のワイヤーを含む線状体(以下「金属ワイヤー線状体」とも称する)であることがよい。金属製のワイヤーは高い熱伝導性、高い電気伝導性、高いハンドリング性、汎用性を有するため、導電性線状体21として金属ワイヤー線状体を適用すると、疑似シート構造体2の抵抗値を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。また、配線シート100(疑似シート構造体2)を発熱体として適用したとき、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、上述したように直径が細い線状体を得られやすい。
なお、導電性線状体21としては、金属ワイヤー線状体の他に、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体が挙げられる。
【0026】
金属ワイヤー線状体は、1本の金属製のワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属製のワイヤーを撚った線状体であってもよい。
金属製のワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属製のワイヤーは、金、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。特に、タングステン及びモリブデン並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むワイヤーが、細くて高強度であり、低い体積抵抗率の導電性線状体21とする観点から好ましい。
金属製のワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属製のワイヤーも挙げられる。金属製のワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属製のワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属製のワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
金属製のワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(例えば、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、グラフェン及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0027】
カーボンナノチューブを含む線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国特許出願公開第2013/0251619号明細書(日本国特開2012-126635号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。また、カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと他の導電性材料が複合された線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。
【0028】
複合線状体としては、例えば、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、及び、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、及び、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0029】
導電性線状体21は、糸に導電性被覆が施された線状体であってもよい。糸としては、ナイロン、ポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、メッキや蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、疑似シート構造体2の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0030】
(樹脂層)
樹脂層3は、樹脂を含む層である。この樹脂層3により、疑似シート構造体2を直接または間接的に支持できる。また、樹脂層3は、接着剤を含む層であることが好ましい。樹脂層3に疑似シート構造体2を形成する際に、接着剤により、導電性線状体21の樹脂層3への貼り付けが容易となる。また、樹脂層3は、伸縮性を有することが好ましい。このような場合には、配線シート100の伸縮性を確保できる。
【0031】
樹脂層3は、乾燥又は硬化可能な樹脂からなる層であってもよい。これにより、疑似シート構造体2を保護するのに十分な硬度が樹脂層3に付与され、樹脂層3は保護膜としても機能する。また、硬化又は乾燥後の樹脂層3は、耐衝撃性を有し、衝撃による樹脂層3の変形も抑制できる。
【0032】
樹脂層3は、短時間で簡便に硬化することができる点で、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線硬化性であることが好ましい。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
【0033】
樹脂層3の接着剤は、熱により硬化する熱硬化性のもの、熱により接着するいわゆるヒートシールタイプのもの、湿潤させて貼付性を発現させる接着剤等も挙げられる。ただし、適用の簡便さからは、樹脂層3が、エネルギー線硬化性であることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0034】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等)、環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート、及びイタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0035】
エネルギー線硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0036】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。さらに、後述する熱可塑性樹脂と組み合わせてもよく、組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0037】
樹脂層3は、粘着剤(感圧性接着剤)から形成される粘着剤層であってもよい。粘着剤層の粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくともいずれかであることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0038】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0039】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、アクリル系重合体の単量体成分に由来する官能基として、これらの架橋剤と反応する水酸基やカルボキシル基等をアクリル系共重合体に導入することができる。
【0040】
樹脂層3が粘着剤から形成される場合、樹脂層3は、粘着剤の他に、さらに上述したエネルギー線硬化性樹脂を含有していてもよい。また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基と反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基の両方を一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により重合可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外の場合においても、アクリル系重合体以外の重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0041】
樹脂層3に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノキシ樹脂、アミン系化合物、酸無水物系化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール系硬化触媒を使用した硬化に適すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物を使用することが好ましく、特に、優れた硬化性を示すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの混合物、又はエポキシ樹脂と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物からなる群から選択される少なくとも1種との混合物を使用することが好ましい。
【0042】
樹脂層3に用いられる湿気硬化性樹脂としては、特に限定されず、湿気でイソシアネート基が生成してくる樹脂であるウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0043】
エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる場合、光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることが好ましい。光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることで、架橋構造が形成され、疑似シート構造体2を、より強固に保護することが可能になる。
【0044】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、2-クロロアントラキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0045】
熱重合開始剤としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩(ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、及びペルオキソ二硫酸カリウム等)、アゾ系化合物(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、及び有機過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、及びクメンヒドロパーオキサイド等)等が挙げられる。
【0046】
これらの重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、1質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
【0047】
樹脂層3は、硬化性でなく、例えば、熱可塑性樹脂組成物からなる層であってもよい。そして、熱可塑性樹脂組成物中に溶剤を含有させることで、熱可塑性樹脂層を軟化させることができる。これにより、樹脂層3に疑似シート構造体2を形成する際に、導電性線状体21の樹脂層3への貼り付けが容易となる。一方で、熱可塑性樹脂組成物中の溶剤を揮発させることで、熱可塑性樹脂層を乾燥させ、固化させることができる。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリイミド及びアクリル樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化アルキル系溶媒及び水等が挙げられる。
【0049】
樹脂層3は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材を含有することで、硬化後の樹脂層3の硬度をより向上させることができる。また、樹脂層3の熱伝導性が向上する。
【0050】
無機充填材としては、例えば、無機粉末(例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、金属、及び窒化ホウ素等の粉末)、無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
樹脂層3には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0052】
樹脂層3の厚さは、配線シート100の用途に応じて適宜決定される。例えば、接着性の観点から、樹脂層3の厚さは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0053】
(電極)
電極4は、導電性線状体21に電流を供給するために用いられる。電極4は、導電性線状体21に直接的に接触する。そして、電極4は、導電性線状体21の両端部に電気的に接続されて配置される。
電極4は、それぞれ給電部5が設けられた金属ワイヤー41を備えている。そして、電極4は、配線シートの平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、別の金属ワイヤー41を備えている。別の金属ワイヤー41の本数は、1本以上であればよく、2本以上であることが好ましく、3本以上であることがより好ましい。
また、一対の電極4において金属ワイヤー41は、一方の電極4に用いた金属ワイヤー41の本数と、他方の電極4に用いた金属ワイヤー41の本数が異なっていてもよい。ただし、温度ムラの抑制の観点から、一方の電極4に用いた金属ワイヤー41の本数と、他方の電極4に用いた金属ワイヤー41の本数は、同じであることが好ましい。また、同様の観点から、一対の電極4を構成する金属ワイヤー41は、配線シート100の平面視において、線対称であることが好ましい。
また、金属ワイヤー41は、配線シート100の平面視において、波形状を成していることが好ましい。波形状としては、例えば、正弦波、矩形波、三角波、及びのこぎり波等が挙げられる。電極4が、このような構造であれば、電極4の軸方向に、配線シート100を伸張した際に、電極4の断線を抑制できる。
【0054】
金属ワイヤー41の金属としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)が挙げられる。また、金属ワイヤー41は、金、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよい。ただし、金属ワイヤー41は、金めっきされていることが好ましい。このような場合、金属ワイヤー41と導電性線状体21との接触抵抗を抑えられるため、電極4での発熱を抑制できる。
【0055】
金属ワイヤー41の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形状、楕円形状、又は円形状等を取り得るが、楕円形状、又は円形状であることが好ましい。
金属ワイヤー41の断面が円形状である場合には、金属ワイヤー41の太さ(直径)は、5μm以上1000μm以下であることが好ましく、20μm以上500μm以下であることがより好ましく、50μm以上300μm以下であることがさらに好ましい。
金属ワイヤー41の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径と同様の範囲にあることが好ましい。
【0056】
隣り合う金属ワイヤー41同士は、接していてもよいが、接していないことが好ましい。
隣り合う金属ワイヤー41同士の間隔は、0.5mm以上15mm以下であることが好ましく、1mm以上10mm以下であることがより好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。隣り合う金属ワイヤー41同士の間隔が前記下限以上であれば、隣り合う金属ワイヤー41同士での通電を確実に防止できる。隣り合う金属ワイヤー41同士の間隔が前記上限以下であれば、より効果的に温度ムラを抑制できる。
【0057】
電極4を構成する金属ワイヤー41のうち、最も外側にある金属ワイヤー41と、最も内側にある金属ワイヤー41との間隔は、3mm以上30mm以下であることが好ましく、5mm以上20mm以下であることがより好ましい。この間隔が上記範囲であれば、金属ワイヤー41の本数等を調整しやすい。
【0058】
(給電部)
給電部5は、配線シート100に電圧を印加する部分である。電極4が露出しており、電気的に接続できるようになっている場合には、電極4のいずれかの箇所を、給電部5とすることができる。
また、電源(図示なし)を電極4と接続しやすくするために、給電部5を、別途、設けてもよい。この場合、給電部5の材質としては、電極4の材質と同じものを用いることができる。また、電極4が短絡等を防止するための絶縁材料により覆われている場合には、その絶縁材料の一部を除去した部分を、給電部5としてもよい。
【0059】
(配線シートの製造方法)
本実施形態に係る配線シート100の製造方法は、特に限定されない。配線シート100は、例えば、次の工程により、製造できる。
まず、基材1の上に、樹脂層3の形成用組成物を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、樹脂層3を作製する。次に、樹脂層3上に、導電性線状体21を配列しながら配置して、疑似シート構造体2を形成する。例えば、ドラム部材の外周面に基材1付きの樹脂層3を配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、樹脂層3上に導電性線状体21を螺旋状に巻き付ける。その後、螺旋状に巻き付けた導電性線状体21の束をドラム部材の軸方向に沿って切断する。これにより、疑似シート構造体2を形成すると共に、樹脂層3に配置する。そして、疑似シート構造体2が形成された基材1付きの樹脂層3をドラム部材から取り出し、シート状導電部材が得られる。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、導電性線状体21の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、疑似シート構造体2における隣り合う導電性線状体21の間隔Lを調整することが容易である。
次に、一対の電極4(2本の金属ワイヤー41)を、シート状導電部材の疑似シート構造体2における導電性線状体21の両端部に、貼り合わせる。続いて、一対の電極4を構成する金属ワイヤー41のうち、配線シート100の平面視において、最も外側にある金属ワイヤー41に、それぞれ給電部5を設けて、配線シート100を作製できる。
【0060】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態においては、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、別の金属ワイヤー41を設けている。そのため、配線シート100に電流を流して発熱させた際に、この別の金属ワイヤー41にも電流が流れる。結果として、電極4の抵抗値を低くでき、配線シート100の温度ムラを抑制できる。
【0061】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は本実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
第二実施形態においては、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を設ける方法が、第一実施形態とは異なっている。
以下の説明では、第一実施形態との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略又は簡略化する。第一実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0062】
本実施形態に係る配線シート100Aは、
図3に示すように、基材1と、疑似シート構造体2と、樹脂層3と、一対の電極4とを備えている。一対の電極4は、それぞれ給電部5が設けられた金属ワイヤー41を備えている。
そして、この金属ワイヤー41は、配線シート100Aの平面視において、疑似シート構造体2の一方の端部にある給電部5から出発し、疑似シート構造体2の反対側の端部に到達したところで折り返している。また、折り返した後の金属ワイヤー41は、疑似シート構造体2の反対側の端部から出発し、疑似シート構造体2の一方の端部まで到達している。
本実施形態においては、電極4は、1本の金属ワイヤー41からなるが、上記のようにして、配線シート100Aの平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を備える構成としている。
【0063】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)に加え、下記作用効果(2)を奏することができる。
(2)本実施形態によれば、電極4が1本の金属ワイヤー41からなるにも拘わらず、配線シート100Aの平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を備える構成とできる。
【0064】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は本実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
第三実施形態においては、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、金属ワイヤー41を設ける方法が、第一実施形態とは異なっている。
以下の説明では、第一実施形態との相違に係る部分を主に説明し、重複する説明については省略又は簡略化する。第一実施形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略又は簡略化する。
【0065】
本実施形態に係る配線シート100Bは、
図4に示すように、基材1と、疑似シート構造体2と、樹脂層3と、一対の電極4とを備えている。一対の電極4は、それぞれ給電部5が設けられた金属ワイヤー41を備えている。
そして、この金属ワイヤー41は、配線シート100Bの平面視において、疑似シート構造体2の一方の端部にある給電部5から出発し、疑似シート構造体2の反対側の端部に到達したところで折り返している。また、折り返した後の金属ワイヤー41は、疑似シート構造体2の反対側の端部から出発し、疑似シート構造体2の一方の端部に到達したところで折り返しており、以降、同様に、端部で折り返している。
本実施形態において、折り返しの回数は3回であるが、これに限定されない。折り返しの回数としては、上限は特に限定されないが、通常10回以下であり、3回以上7回以下が好ましく、3回以上5回以下がより好ましい。折り返し回数が多いほど、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、より多くの金属ワイヤー41を設けられる。
本実施形態においては、電極4は、1本の金属ワイヤー41からなるが、上記のようにして、配線シート100Bの平面視において、給電部5が設けられた金属ワイヤー41よりも内側に、複数の金属ワイヤー41を備える構成としている。
【0066】
(第三実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)、及び前記第二実施形態における作用効果(2)を奏することができる。
【0067】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態では、配線シート100は、基材1を備えているが、これに限定されない。例えば、配線シート100は、基材1を備えていなくてもよい。このような場合には、樹脂層3により、配線シート100を被着体に貼り付けて使用できる。
前述の実施形態では、配線シート100は、樹脂層3を備えているが、これに限定されない。例えば、配線シート100は、樹脂層3を備えていなくてもよい。このような場合には、基材1として編物を用い、導電性線状体21を基材1中に編み込むことで、疑似シート構造体2を形成してもよい。
【実施例0068】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0069】
[実施例1]
厚み50μmのPETフィルム上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製の「PK」)を厚み20μmに塗布し、粘着シートを作製した。導電性線状体として、金めっきタングステンワイヤー(直径25μm、トクサイ社製の「Au(0.1)-TWG」)を準備した。次に、外周面がゴム製のドラム部材に上記粘着シートを、感圧接着剤層の表面が外側を向き、しわのないように巻きつけ、円周方向における上記粘着シートの両端部を両面テープで固定した。ボビンに巻き付けた導電性線状体を、ドラム部材の端部付近に位置する粘着シートの感圧接着剤層の表面に付着させた上で、ワイヤーを繰り出しながらドラム部材で巻き取り、少しずつドラム部材をドラム軸と平行な方向に移動させていき、導電性線状体が等間隔でらせんを描きながらドラム部材に巻きつくようにした。導電性線状体は等間隔に30本設けられ、間隔は10mmであった。
次に、電極として、2本の金属ワイヤー(金めっき銅線、直径150μm、トクサイ社製の「C1100-H AuP」)を準備した。次に、2本の金属ワイヤーを間隔10mmで、導電性線状体の延びる方向と直交する方向で、電極間距離が200mmとなるよう、導電性線状体の両端部に載せ、電極を取り付けた。その後、電極付きフィルムの導電性線状体を配置した粘着面に、厚み50μmのPETフィルムを貼り合わせて、シート状ヒーターを作製した。なお、通電の際の2箇所の給電部は、シート状ヒーターの平面視において、最も外側にある金属ワイヤーに、それぞれ設けた。
【0070】
[実施例2]
電極として、4本の金属ワイヤーを準備し、4本の金属ワイヤーを間隔2.5mmで取り付けた以外は、実施例1と同様にして、シート状ヒーターを作製した。
【0071】
[実施例3]
電極を
図3に示すような構成とした以外は、実施例1と同様にして、シート状ヒーターを作製した。
すなわち、実施例3では、電極を次のようにして設けた。金属ワイヤーは、シート状ヒーターの平面視において、疑似シート構造体の一方の端部から出発し、疑似シート構造体の反対側の端部に到達したところで折り返している。また、折り返した後の金属ワイヤーは、疑似シート構造体の反対側の端部から出発し、疑似シート構造体の一方の端部まで到達させた。ここで、金属ワイヤーの間隔は10mmとした。そして、通電の際の2箇所の給電部は、金属ワイヤーの出発した部分に、それぞれ設けた。
【0072】
[実施例4]
電極を
図4に示すような構成とした以外は、実施例1と同様にして、シート状ヒーターを作製した。
すなわち、実施例4では、電極を次のようにして設けた。金属ワイヤーは、シート状ヒーターの平面視において、疑似シート構造体の一方の端部から出発し、疑似シート構造体の反対側の端部に到達したところで折り返している。また、折り返した後の金属ワイヤーは、疑似シート構造体の反対側の端部から出発し、疑似シート構造体の一方の端部まで到達したところで折り返しており、以降、同様に、端部で折り返した。ここで、折り返しの回数は3回とし、金属ワイヤーの間隔は2.5mmとした。そして、通電の際の2箇所の給電部は、金属ワイヤーの出発した部分に、それぞれ設けた。
【0073】
[比較例1]
通電の際の2箇所の給電部を、シート状ヒーターの平面視において、最も内側にある金属ワイヤーに、それぞれ設けた以外は、実施例1と同様にして、シート状ヒーターを作製した。
なお、
図5は、比較例1で得られたシート状ヒーターを示す概略図である。
【0074】
[比較例2]
通電の際の2箇所の給電部を、シート状ヒーターの平面視において、最も内側にある金属ワイヤーに、それぞれ設けた以外は、実施例2と同様にして、シート状ヒーターを作製した。
【0075】
[温度差評価]
シート状ヒーターに3.5Aの電流を流して、発熱させた後に、シート状ヒーターの表面から150mmの位置からサーモグラフィーカメラ(FLIR社製の「FLIR C2」)を用いて、シート状ヒーターの温度分布を測定した。この際の放射率を0.95と設定して測定した。そして、シート状ヒーターの給電部側の末端に位置する導電性線状体の温度と、給電部側の反対側の末端に位置する導電性線状体との温度の差を、温度差(単位:℃)とした。この温度差が小さいほど、温度ムラが抑制されていることを示す。得られた結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
表1に示す結果から、シート状ヒーターの平面視において、給電部が設けられた金属ワイヤーよりも内側に、金属ワイヤーを設けた場合(実施例1~4)は、温度ムラを抑制できることが確認された。
これに対し、シート状ヒーターの平面視において、給電部が設けられた金属ワイヤーよりも外側に、金属ワイヤーを設けた場合(比較例1及び2)は、温度ムラを抑制できないことが分かった。