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  • 特開-ブラシ及び作業機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149139
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ブラシ及び作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/416 20060101AFI20220929BHJP
   A46B 3/00 20060101ALI20220929BHJP
   A01D 34/90 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A01D34/416
A46B3/00
A01D34/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051150
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 彰司
(74)【代理人】
【識別番号】100112416
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 定信
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 節生
(72)【発明者】
【氏名】白井 健
【テーマコード(参考)】
2B083
3B202
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA01
2B083CA07
2B083CA12
2B083CA13
2B083CB01
2B083HA24
2B083HA53
3B202AB10
3B202AB21
3B202EG00
(57)【要約】
【課題】 除草や苔取り作業等を効率的且つ省力的に行えるブラシであって、ブラシ毛の破断や飛散が防止でき、且つ、対象物に接触した場合に生ずる力に対して十分な強度を有するブラシを提供する。
【解決手段】 ブラシ10は、原動機6に作動上連結される基材15と、該基材15から延出して配設される多数のブラシ毛16と、を備え、ブラシ毛同志の間隙を満たす充填材17によって前記多数のブラシ毛16が一体化されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機に作動上連結される基材と、該基材から延出して配設される多数のブラシ毛と、を備え、ブラシ毛同志の間隙を満たす充填材によって前記多数のブラシ毛が一体化されたブラシ。
【請求項2】
前記充填材が、地面との接触によって生ずる摩擦熱に耐え得る耐熱性を有する、請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記充填材が、地面と衝突しても破損しない耐衝撃性を有する、請求項1又は2に記載のブラシ。
【請求項4】
前記充填材が合成樹脂を主体として形成される、請求項1,2又は3に記載のブラシ。
【請求項5】
前記合成樹脂がシリコーン樹脂である、請求項4に記載のブラシ。
【請求項6】
前記多数のブラシ毛と前記充填材とによって形成されるブラシ部に空隙が形成され、該空隙が形成されることにより、前記ブラシ部に前記ブラシの作動方向に進行する切削面が形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載のブラシ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のブラシと、前記原動機と、前記ブラシの位置を制御するための操作部材と、を備える、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラシに関するものであり、詳しくは、除草や苔取り作業等に用いて好適なブラシに関するものである。本発明はまた、前記ブラシを有する作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石畳やレンガ、タイルなどを敷設した場所には、それらの目地や割れ目から草が生えることがある。このような草の除去作業を人手で行う場合、例えば手鉤状の除草用具や手鎌などを用いて、しゃがんだ姿勢で草取りを行うことになる。人手での除草作業は効率が悪いだけでなく、作業者への負担も大きい。そこで、目地等の除草作業に適する作業機が求められる。
【0003】
また、公園などの公共の場所では、路面に生えた苔で人がすべって転ぶ危険を回避するため、苔の除去が求められる。この場合にも、苔の除去作業を効率的且つ省力的に行える作業機があると便利である。
【0004】
特許文献1には、コンクリート、ブロック、タイルなどで表面仕上げされている道路や歩道などの構造体の目地に生える草を取り除くための目地用草刈機が記載されている(特許文献1の0001段落参照)。この草刈機は、駆動部によって回転駆動されるブラシ部を操作杆の先端に設けた構成である。ブラシ部の一例(比較例1)として、特許文献1の0017段落と図3には、駆動部によって回転駆動される基材の底面に、ブラシ毛として多数のスチールワイヤを配設した構成のブラシ部が掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-191856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、前記のような従来のブラシ部の問題点として、「比較例1では、スチールワイヤが破断し、飛散してしまった。」「金属製線材を撚らずにそのまま基材に配置すると、構造体や地面の石に接触した場合に生じる力に対する強度が不十分となる」等の記載がある(特許文献1の0018段落参照)。
【0007】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたもので、除草や苔取り作業等を効率的且つ省力的に行えるブラシであって、ブラシ毛の破断や飛散が防止でき、且つ、対象物に接触した場合に生ずる力に対して十分な強度を有するブラシを提供しようとするものである。本発明はまた、前記ブラシを有する作業機を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係るブラシは、原動機に作動上連結される基材と、該基材から延出して配設される多数のブラシ毛と、を備え、ブラシ毛同志の間隙を満たす充填材によって前記多数のブラシ毛が一体化されたことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
本発明のブラシによれば、原動機によって基材が駆動されることで、ブラシ毛が作動する。これにより、除草や苔取り作業等が効率的且つ省力的に行える。
【0010】
本発明のブラシにおいては、ブラシ毛同志の間隙を満たす充填材によって多数のブラシ毛が一体化されている。このため、ブラシ毛の破断や飛散が防止できる。加えて、充填材は、ブラシが除去対象物に当たった際に、ブラシ毛がブラシの作動方向の後方へと変形して逃げることを抑止する。このため、対象物に接触した場合に生ずる力に対して十分な強度が得られ、ブラシによる切削性が向上する。さらに、充填材は、ブラシ毛を備えた作業部を交換する際、ブラシ毛から作業者の手指を保護する機能も有する。この手指を保護する効果から、従来公知のベベルブラシやカップブラシや平型ブラシに於いても本発明を適用することにより、より扱いやすいものとすることができる。
【0011】
なお、本発明において、基材の動作態様は、回転運動であっても往復運動であってもよい。回転運動の場合には、縦軸を中心とする回転であってもよいし、横軸を中心とする回転であってもよい。
【0012】
実施の一形態として、前記充填材が、地面との接触によって生ずる摩擦熱に耐え得る耐熱性を有する態様としてもよい(請求項2)。
【0013】
実施の一形態として、前記充填材が、地面と衝突しても破損しない耐衝撃性を有する態様としてもよい(請求項3)。
【0014】
実施の一形態として、前記充填材が合成樹脂を主体として形成される態様としてもよい(請求項4)。
【0015】
実施の一形態として、前記合成樹脂がシリコーン樹脂である態様としてもよい(請求項5)。
【0016】
実施の一形態として、前記多数のブラシ毛と前記充填材とによって形成されるブラシ部に空隙が形成され、該空隙が形成されることにより、前記ブラシ部に前記ブラシの作動方向に進行する切削面が形成される態様としてもよい(請求項6)。この場合、ブラシ部に切削面が形成されることで、ブラシによる除去対象物の切削性が一層向上する。
【0017】
実施の一形態として、前記ブラシと、前記原動機と、前記ブラシの位置を制御するための操作部材と、を備える作業機を提供してもよい(請求項7)。この作業機によれば、前記ブラシと同様の作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の一形態に係るブラシを有する作業機の一例としての、操作桿式刈払機の概略図である。
図2図1中のブラシを斜め上から見た拡大斜視図である。
図3図1中のブラシを斜め下から見た拡大斜視図である。
図4】本発明の他の実施の一形態に係るブラシの概略図であり、(a)は、ロータリードラム式ブラシの斜視図、(b)は、(a)のA矢視図である。
図5】本発明の他の実施の一形態に係るブラシの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
本発明に係るブラシは、石畳やレンガ、タイルなどを敷設した場所での除草作業や、舗装面上での苔取り作業等に用いて好適なものである。図1に示すように、本発明の実施の一形態に係るブラシ10は、作業機の一例として周知の刈払機において、通常の刈刃の交換部品として使用することができる。
【0021】
図1の作業機(草取機)1は、動力発生部2と、操作桿3と、操作ハンドル4と、ブラシ10と、ブラシカバー5と、を備える。動力発生部2は、空冷式2サイクル内燃エンジン等の原動機6を備える。原動機の他の例として、電動モータを挙げることもできる。動力発生部2から前方へ向けて、操作桿3が延び出している。操作桿3は、作業者がブラシ10の位置を制御するための操作部材である。
【0022】
操作桿3上には、一例としてU字状の操作ハンドル4が配設され、操作ハンドル4の一方のグリップ部4aの近傍には、オンオフスイッチ7やスロットルレバー8等の操作部材が配設される。操作桿3内には伝動軸9が挿通され、この伝動軸9は、操作桿3の前端に配設されるギアケース11内の図示しない伝動機構を介して、ブラシ10に作動上連結される。原動機6の回転動力は、伝動軸9と、ギアケース11内の伝動機構とを介して、ブラシ10へと伝達される。ブラシカバー5は、操作桿3の前端部3aに支持され、ブラシ10の後方を覆っている。
【0023】
作業者は、操作桿3上の吊り金具12に掛止する図示しない吊りベルトで動力発生部2を肩から吊り下げて支持し、操作ハンドル4を握ってブラシ10を地面に沿って左右に揺動させながら、ブラシ10の回転によって除草作業や苔取り作業等を行うことができる。ブラシカバー5は、回転するブラシ10から作業者の足を保護すると共に、除去された草や苔等がブラシ10の回転で作業者側へと飛散することを防止する。
【0024】
なお、U字状の操作ハンドル4に代えて、前グリップ部と後グリップ部とが操作桿3の外周上に直接配設された形式の作業機とすることもできる。この操作形態の場合は、ブラシの幅の狭い外周部を目地の中に直接当て一定の深さまで除草作業をすることもでき、除草作業面の傾斜や凹凸に対して柔軟に対応することが出来る。
【0025】
次に、図1のブラシ10について説明する。ブラシ10は、図2及び図3に示すように、原動機6に作動上連結される基材15と、基材15から延出して配設される多数のブラシ毛16と、を備え、ブラシ毛16同志の間隙を満たす充填材17によって多数のブラシ毛16が一体化されている。多数のブラシ毛16と充填材17とで、ブラシ部18が形成される。基材15の中央部には、駆動軸13への取付用の取付孔15aが配設される。ブラシ10は、図1のギアケース11内の駆動軸13に固着され、駆動軸13の回転によって平面内で回転する。これにより、目地の除草や地面の苔取り作業等が効率的且つ省力的に行える。
【0026】
ブラシ10の外径が大きいとブラシ10の周速が速くなるので、地面にある石などを飛散させやすくなる。そこで、一例としてではあるが、ブラシ10の外径を120mm程度とし、伝動機構の減速比も考慮して、最高周速が100km/h以下となるように設定するとよい。このようにすることで、地表面の石の跳ね飛ばしを防止しつつ、作業効率を向上させることができる。
【0027】
基材15と多数のブラシ毛16との結合品は、サビや塗装を削り落とす表面研磨用のブラシとして従来公知のベベルブラシやカップブラシや平型ブラシと同様の態様で作製できる。そのような既成のブラシをそのまま用いて、本実施の一形態のブラシ10を作製してもよい。基材15に対する多数のブラシ毛16の取り付け方法は、カシメや植設等、従来公知の適宜の方法を採用できる。
【0028】
ブラシ毛16としては、除草や苔取り作業への耐性を有するワイヤ又は線材を使用できる。ブラシ毛16の材料は、ステンレスや真鍮等の金属線を使用するのが好ましいが、ナイロン等の合成樹脂の線材を使用することもできる。ブラシ毛16の線径は、切削性や強度等と、作業対象面となるタイル面等の損傷性とを勘案して、適宜に設定すればよい。また、ブラシ毛16は、縮れタイプであってもストレートタイプであってもよい。
【0029】
ブラシ毛16は、公知のカップブラシのように基材15から真下に向けて延びていてもよいし、公知のベベルブラシのように、基材15から下向き斜め外方へ広がるように延びていてもよい。一般に、前者は、広範囲の平面の除草や苔取りを行うのに適し、図2及び図3に示す後者は、凹部のコーナー部分や曲面などの除草や苔取りを行うのに適する。
【0030】
本実施の一形態のブラシ10は、図2に断面を拡大して示すように、ブラシ毛16同志の間隙を満たす充填材17によって多数のブラシ毛16が一体化されている点に特徴を有する。充填材17は、ブラシ毛相互間の隙間を埋め、多数のブラシ毛16を一体に保持する。このため、作業中におけるブラシ毛16の破断や飛散が防止できる。加えて、充填材17は、ブラシ10が草や苔等の除去対象物に当たった際に、ブラシ毛16がブラシ10の作動方向(図2中に矢印で示すブラシ10の回転方向)の後方へと変形して逃げることを抑止する。このため、対象物に接触した場合に生ずる力に対して十分な強度が得られ、ブラシ10による切削性が向上する。さらに、充填材17は、作業部の交換作業の際に、ブラシ毛16から作業者の手指を保護する機能も有する。使用によりブラシ毛16は先端側から摩耗するが、それと同時に充填材17も摩耗するので、ブラシ10の切削性は継続する。
【0031】
除草や苔取り作業を行う際には、ブラシ10が、除去対象物である草や苔だけでなく、地面にも接触する。そこで、多数のブラシ毛16内に充填される充填材17は、地面との接触によって生ずる摩擦熱に耐え得る耐熱性を有することが好ましい。また、充填材17は、地面と衝突しても破損しない耐衝撃性を有することが好ましい。充填材17は、粘り強さや適宜の柔軟性を有することが好ましい。
【0032】
そのような特性を有する充填材17として、合成樹脂を主体として形成される充填材が好適であり、中でも特に、シリコーン樹脂を主体として形成される充填材が好ましい。シリコーン樹脂以外にも、塩化ビニル樹脂(PVC)を採用することもでき、さらに、前記のような特性を付与するための添加剤を添加することで、前記以外の合成樹脂を用いることも可能となる。
【0033】
図2及び図3のブラシ10には、多数のブラシ毛16と充填材17とによって形成されるブラシ部18に空隙19が形成され、この空隙19が形成されることにより、ブラシ部18に、ブラシ10の作動方向に進行する切削面20が形成される。この場合、ブラシ部18に切削面20が形成されることで、ブラシ10による除去対象物の切削性が一層向上する。ブラシ部18の直径は作業幅を決定し作業効率に影響するが、ブラシ部18に空隙19があることで、作業幅を維持しながら、ブラシ10の軽量化にも貢献でき、作業者の疲労の軽減にもつながる。図示例では、ブラシ部18に4つの空隙19を等角度間隔で形成してあるが、空隙19の個数はこれに限定されず、作業性や耐久性等を勘案して適宜に設定できる。
【0034】
図2及び図3のブラシ10においては、ブラシ部18が、各空隙19により上から見て扇形状の4つのブロック(ブラシ部ブロック)Bに分割された形となる。各ブラシ部ブロックBの下端部は、ブラシ10の回転方向に延在する摩擦面21となる。この摩擦面21は、地面に接触して回転することで、地面に生えた草や苔をこそげ落とす。一方、隣り合うブラシ部ブロックB,B間には空隙19があり、この空隙19によって、ブラシ10の径方向に延びる切削面20が形成される。この切削面20は、ブラシ10の回転方向に進行することで、地表面の草や苔などを切断する。このように、図2及び図3のブラシ10は、摩擦面21と切削面20とを共に備えることで、除草や苔取りの確実性の向上に貢献できる。
【0035】
図1図3の例は、縦軸(駆動軸13)を中心として回転運動を行うブラシ10であるが、他の実施の一形態として、横軸を中心として回転運動を行うブラシを採用することもできる。すなわち、図4に示すようなロータリードラム式のブラシ40である。
【0036】
図4のブラシ40は、図1図3のブラシ10の基材15に相当する部材として、原動機6によって回転駆動される横置き式のドラム41を有する。図4(b)に断面を拡大して示すように、ドラム41の周面には多数のブラシ毛16が放射状に配設され、図1図3のブラシと同様に、ブラシ毛16同志の間隙を満たす充填材17によって多数のブラシ毛16が一体化されている。多数のブラシ毛16内に充填材17を設けたことによる作用効果は、前述のものと同じである。
【0037】
図4のブラシ40は、原動機6の動力で横軸42を中心として回転駆動される。これにより、目地の除草や苔取り作業等が効率的且つ省力的に行える。原動機6とドラム41とを作動上連結する伝動機構の一例として、例えば、実開平7-30612号公報に記載のものを挙げることができる。
【0038】
図4のブラシ40も、図1図3のブラシ10と同様に、多数のブラシ毛16と充填材17とによって形成されるブラシ部18に空隙19が形成される。そして、この空隙19の配設により、ブラシ部18に、ブラシ40の作動方向に進行する切削面20が形成される。空隙19と切削面20による作用効果は、前述のものと同じである。
【0039】
図4のブラシ40においては、図4(b)に示すように、ブラシ部18が、各空隙19によりドラム41の軸方向(図4のA矢印方向)から見て扇形状の4つのブロック(ブラシ部ブロック)Bに分割された形となる。各ブラシ部ブロックBの円弧部は、ブラシ40の回転方向に延在する摩擦面21となる。この摩擦面21は、地面Gに接触して回転することで、地面Gに生えた草や苔をこそげ落とす。一方、隣り合うブラシ部ブロックB,B間には空隙19があり、この空隙19によって、ブラシ40の径方向に延びる切削面20が形成される。この切削面20は、ブラシ40の回転方向に進行することで、地表面の草や苔などを切断する。このように、図4のブラシ40も、摩擦面21と切削面20とを共に備えることで、除草や苔取りの確実性の向上に貢献できる。
【0040】
図1図4のブラシ10,40は、回転運動を行うブラシであるが、他の実施の一形態として、地面Gに沿って往復運動を行うブラシを採用することもできる。すなわち、図5に示すようなデッキブラシ式のブラシ50である。
【0041】
図5のブラシ50は、図1図4のブラシ10,40の基材15,41に相当する部材として、原動機6によって往復駆動される矩形状の基材51を有する。図5内に断面を拡大して示すように、基材51の下面には多数のブラシ毛16が配設され、図1図4のブラシ10,40と同様に、ブラシ毛16同志の間隙を満たす充填材17によって多数のブラシ毛16が一体化されている。多数のブラシ毛16内に充填材17を設けたことによる作用効果は、前述のものと同じである。
【0042】
図5のブラシの基材51は、例えば、操作部材としての操作桿3の前端部3aに配設される伝動部ケース52に沿って、前後方向に往復駆動される。図1のものと同様に、原動機6は操作桿3の後端部に配設される。原動機6の回転動力は、操作桿3内に配設される伝動軸9を介して伝動部ケース52に伝動され、伝動部ケース52内でクランク機構等の適宜の動力変換機構によって前後の往復運動に変換されて、基材51に伝達される。図5のブラシ50は、原動機6の動力で前後方向に往復駆動される。これにより、目地の除草や苔取り作業等が効率的且つ省力的に行える。
【0043】
図5のブラシ50も、図1図4のブラシと同様に、多数のブラシ毛16と充填材17とによって形成されるブラシ部18に空隙19が形成される。そして、これらの空隙19の配設により、ブラシ部18に、ブラシ50の作動方向に進行する切削面20(20a,20b)が形成される。空隙19と切削面20による作用効果は、前述のものと同じである。
【0044】
図5のブラシ50においては、ブラシ部18が、各空隙19により、矩形状の前後5つのブロック(ブラシ部ブロック)Bに分割された形となる。各ブラシ部ブロックBの下面は、ブラシ50の作動方向(前後方向)に延在する摩擦面21となる。この摩擦面21は、地面Gに接触して前後に移動することで、地面Gに生えた草や苔をこそげ落とす。一方、前後に隣り合うブラシ部ブロックB,B間には空隙19があり、この空隙19によって、ブラシ50の左右方向(図5では紙面に直角な方向)に延びる切削面20が形成される。この切削面20は、ブラシ50の作動方向に進行することで、地表面の草や苔などを切断する。このように、図5のブラシも、摩擦面21と切削面20とを共に備えることで、除草や苔取りの確実性の向上に貢献できる。
【0045】
なお、図5のブラシ50は、作動方向が前方Fと後方Rとに切り換わるため、空隙19の前後に位置する一対の切削面20a,20bの内の一方(前向きの切削面20a)は、ブラシ50が前方Fへ移動する際に切削面20として機能し、他方(後向きの切削面20b)は、ブラシ50が後方Rへ移動する際に切削面20として機能することとなる。
【0046】
図2図5のブラシ10,40,50において、充填材17で多数のブラシ毛16を一体化させる第一構成と、ブラシ部18に空隙19を設けることで切削面20を形成する第二構成は、共に備わることで相乗的な作用効果を発揮する。但し、第一構成と第二構成は、互いに独立したものとして実施可能であり、その場合にそれぞれの構成が固有の作用効果を奏することは勿論である。
【0047】
図2及び図3のブラシ10は、図1の操作桿式刈払機1の交換部品として使用できるほか、車輪付きの手押式草刈機や自走式の草刈機等、適宜の作業機の構成部品として使用することもできる。この点は、図4及び図5のブラシ40,50も同様である。この場合、ブラシ10,40,50を有する作業機は、ブラシを駆動するための原動機と、ブラシの位置を制御するための操作部材と、を備える作業機である。図1のような操作桿式刈払機1の場合には、操作桿3が操作部材となり、車輪付きの手押式草刈機や自走式の草刈機の場合には、車輪等の移動手段を含む機体フレームが操作部材となる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
3 操作部材(操作桿)
6 原動機
10 ブラシ
15 基材
16 多数のブラシ毛
17 充填材
18 ブラシ部
19 空隙
20 切削面
図1
図2
図3
図4
図5