(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149145
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電子楽器、方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/053 20060101AFI20220929BHJP
G10H 1/32 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G10H1/053 C
G10H1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051161
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博毅
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478CC03
5D478CC25
5D478CC37
5D478DA16
5D478LL00
(57)【要約】
【課題】演奏操作子を備えた電子楽器に関し、演奏モードに応じてホイールコントローラ等の演奏操作子による音響効果を付加する方向を自動的に反転させる。
【解決手段】加速度センサ301の変位の検出結果に基づいて、第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モード(
図3(a)の通常モード)と、第1方向への動きに応じて第2音響効果を付与し、第2方向への動きに応じて第1音響効果を付与する第2モード(
図3(b)のスタンディングモード)との切替え処理が実行される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に動く演奏操作子であって、動作方向に応じた音響効果を付与するための演奏操作子と、
電子楽器の変位を検出するためのセンサと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記変位の検出結果に基づいて、前記第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理、
を実行する電子楽器。
【請求項2】
前記切換え処理において、前記演奏操作子の操作に応じて取得される演奏パラメータの極性を反転させる、
請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】
前記演奏操作子は、ピッチの上げ下げを指定するためのピッチベンドホイールを含み、
前記第1モードと前記第2モードで、前記ピッチベンドホイールにおける前記ピッチを上げる方向と下げる方向が反転する、
請求項1又は2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記演奏操作子は、音量の大小を指定するための音量操作子を含み、
前記第1モードと前記第2モードで、前記音量操作子における前記音量を上げる方向と下げる方向が反転する、
請求項1乃至3の何れかに記載の電子楽器。
【請求項5】
前記第1方向は、鍵の手前側から奥側に向かう方向であり、
前記第2方向は、前記鍵の奥側から手前側に向かう方向である、
請求項1乃至4の何れかに記載の電子楽器。
【請求項6】
鍵盤を含み、
前記第1のモード又は前記第2のモードは、電子楽器が設置面上に配置され前記鍵盤が略水平状態となる通常モード及び前記略水平状態とは異なる状態となるスタンディングモードの何れかを含む、
請求項1乃至5の何れかに記載の電子楽器。
【請求項7】
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記変位を示す値が閾値を上回る場合に、前記通常モードから前記スタンディングモードに切り替え、
前記変位を示す値が前記閾値を下回る場合であっても変位が継続している場合は、前記スタンディングモードと判断する、
請求項6に記載の電子楽器。
【請求項8】
音高を指定する音高指定操作子を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記音高指定操作子の操作を非検出の場合に、前記第1モードと前記第2モードとの切替え処理を実行する、
請求項1乃至7の何れかに記載の電子楽器。
【請求項9】
電子楽器が、
変位の検出結果に基づいて、演奏操作子の第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記演奏操作子の前記第1方向とは反対の第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理を実行する、
方法。
【請求項10】
電子楽器を制御する少なくとも1つのプロセッサに、
変位の検出結果に基づいて、演奏操作子の第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記演奏操作子の前記第1方向とは反対の第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏操作子を備えた電子楽器、方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データの値を可変させるためのデータ可変手段と、データ可変手段におけるデータの値の増加方向を指定する増加方向指定手段と、データ可変手段からの出力値と増加方向指定手段における指定内容とに基づいてデータの値を算出する演算手段とを有するデータ入力装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、演奏者は現在の演奏モードが通常モードであるかスタンディングモードであるかを判断してデータの値の増加方向を自身で手動で指定する必要があり、操作が面倒であった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、演奏モードに応じてホイールコントローラ等の演奏操作子による音響効果を付加する方向を自動的に反転させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
態様の一例の電子楽器は、第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に動く演奏操作子であって、動作方向に応じた音響効果を付与するための演奏操作子と、電子楽器の変位を検出するためのセンサと、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記変位の検出結果に基づいて、前記第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理、を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、演奏モードに応じてホイールコントローラ等の演奏操作子による音響効果を付加する方向を自動的に反転させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】通常モードとスタンディングモードの説明図である。
【
図2】一実施形態における電子鍵盤楽器の外観例を示す図である。
【
図5】一実施形態における電子鍵盤楽器を制御するシステムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図6】一実施形態におけるメイン処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】一実施形態におけるピッチベンドホイール処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図8】一実施形態におけるモジュレーションホイール処理の詳細例を示すフローチャートである。
【
図9】一実施形態における加速度センサ処理の詳細例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。電子鍵盤楽器等の電子楽器において、
図1(a)に示されるように、演奏者110が、電子鍵盤楽器100を通常のスタンド102やデスクトップ(図示せず)上のポジション(以下「通常モード」)で使用する場合と、
図1(b)に示されるように、演奏者110が、電子鍵盤楽器100をストラップ103を使って肩から掛けて、ショルダキーボードのポジション(以下「スタンディングモード」)で使用する場合の、両方で使用できるものがある。これらの中には、演奏者から見て電子鍵盤楽器100が備える操作子を前後に回転させてピッチベンド効果をかけるホイールコントローラ101を搭載しているものもある。
【0010】
演奏者110は、
図1(a)の通常モードで電子鍵盤楽器200をスタンド102上等に置いて演奏する際には、ホイールコントローラ101を自分側から見て奥側に回転させることで例えば楽音のピッチを上昇させるのが一般的である。一方、演奏者110は、
図1(b)のスタンディングモードでショルターキーボードとして演奏する場合には、ホイールコントローラ101を自分側から見て手前側に回転させることでピッチを上昇させることが望ましいと考えられる。これは、スタンディングモードでは、
図1(b)に示されるように、演奏者110の例えば左手の位置が、ギターのネックを握って弦を押し上げるのと同様に、電子鍵盤楽器100の背面側からホイールコントローラ101を弦に見立てて手前に押し上げる行為がピッチが上昇するイメージと一致するからである。
【0011】
これを実現するために、本実施例における電子鍵盤楽器200は、演奏者110の演奏形態が通常モード(第1モード)及びスタンディングモード(第2モード)のいずれであるかを検出し、検出結果に応じてホイールコントローラ101の設定を切り替える処理を実行する。
【0012】
図2は、一実施形態(以下「本実施形態」と記載)における電子鍵盤楽器200の外観例を示す図である。電子鍵盤楽器200は、演奏者が楽音を演奏する鍵盤206の他、パネル上には機器の状態を表示するLCD(Lyquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)209、各種操作を行うパネルスイッチ207、208、発音中の楽音の音高に変化を与える演奏操作子であるピッチベンドホイール201、発音中の楽音の音色に変化を与える演奏操作子であるモジュレーションホイール202、現在のピッチベンドホイール201及びモジュレーションホイール202の回転方向の極性を表示するディレクションインジケータ203が具備される。また、本体の両脇にはスタンディングモードでのショルダ演奏を行うために使用する
図1のストラップ103を固定するストラップピン204、205が具備されている。
【0013】
本実施形態の動作について、以下に説明する。
図3及び
図4は、本実施形態の動作説明図である。本実施形態では、
図1説明した通常モードとスタンディングモードの2つの演奏スタイルに合わせて、演奏操作子である
図2のピッチベンドホイール201及びモジュレーションホイール202によるピッチ及び音色の音響効果を付与する方向の極性を自動的に切り替えることができる。
【0014】
図3(a)は通常モード(第1モード)時における電子鍵盤楽器200(以下「キーボード」と記載)の設置状態を示す図、
図3(b)はスタンディングモード(第2モード)時におけるキーボードの設置状態を示す図である。
【0015】
本実施形態では、演奏者110(
図1)側から見たキーボードの前後回転方向の傾きを、
図3(a)又は(b)に示される加速度センサ301によって検出している。この加速度センサ301の検出した加速度センサ出力値に基づいて算出されるキーボード角度に応じて、
図3(a)の通常モードと
図3(b)のスタンディングモードが自動的に切り替えられる。
【0016】
水平面302とのキーボードの鍵盤206(
図2)の面との角度303(以下「キーボード角度」と記載)は、
図3(a)の通常モードでは概ね0°であり、
図3(b)のスタンディングモードでは概ね30°から90°の範囲である。場合によっては、演奏者110がキーボードの鍵盤206の面を更に前方向に傾けて演奏する場合もあり得て、その場合にはスタンディングモードでのキーボード角度は150°近くになる場合がある。キーボード角度が150°を超えて360°までの間は、キーボードが実質的に裏返しになるため現実的ではないが、この場合のモードは便宜的に通常モードとする。
【0017】
図3(a)又は(b)で、「UP」と表記された方向に演奏者110がピッチベンドホイール201又はモジュレーションホイール202(
図2参照)を回転させると、ピッチが上昇し又はモジュレーション効果の深さが増大する第1音響効果が付加される。「UP」と表記された方向と逆の方向に演奏者110がピッチベンドホイール201又はモジュレーションホイール202(
図2参照)を回転させると、ピッチが下降し又はモジュレーション効果の深さが減少する第2音響効果が付加される。
図3(a)の通常モード時と
図3(b)のスタンディングモード時とでは、ピッチベンドホイール201又はモジュレーションホイール202の回転方向と「UP」方向の関係が反転していることがわかる。
【0018】
図3(c)は、加速度センサ301の正規化出力値に対するキーボード角度の関係を示すグラフである。縦軸は、加速度センサ301の出力を内部処理により-100%から100%の範囲に正規化した値(以下「加速度センサ出力値」と記載)を示す軸である。横軸は、キーボードの地表面に平行な水平面302に対するキーボードの鍵盤206の面の角度303であるキーボード角度を示す軸である。加速度センサ301としては、本実施例では2軸の加速度センサとして説明するが、1軸以上の加速度センサが用いられればよい。
図3(c)において、X軸センサ出力対キーボード角度特性310x及びY軸センサ出力対キーボード角度特性310yは夫々、加速度センサ301におけるX軸及びY軸の各加速度センサ出力値に対するキーボード角度の関係をプロットしたグラフである。
【0019】
ここで、加速度センサ301におけるX軸加速度センサ出力値の検出座標軸であるX軸は、例えば
図3(a)又は
図3(b)に示されるように、加速度センサ301のセンサ重心を原点として、鍵盤206を含む平面に平行で鍵盤206が並ぶ方向に対して鉛直な、鍵盤206側から見てキーボードの奥行き方向304と同じ方向を正の方向としている。
【0020】
従って、キーボード角度303が0°のときは、X軸加速度センサ出力値の検出軸であるX軸は、
図3(a)に示されるように、地球の重心に向かう方向に垂直で鍵盤206を含む平面に平行な方向の成分のみとなる。このため、重力以外の外力が加わっていないと仮定すれば、
図3(c)において、キーボード角度303が0°のときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310の値は、ほぼ「0」(
図3(c)では0%)となる。
【0021】
次に、キーボード角度303が90°のときは、X軸加速度センサ出力値の検出軸であるX軸は、
図3(b)に示されるように、地球の重心に向かう方向と一致する。このため、重力以外の外力が加わっていないと仮定すれば、
図3(c)において、キーボード角度303が90°のときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310の値は、ほぼ最大値(
図3(c)では「100%」)となる。
【0022】
従って、キーボード角度が0°から90°に変化するときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310xは、重力加速度の成分が徐々に増加することにより、
図3(c)に示されるように、値「0」(0%)から最大値(100%)まで直線的に増加する特性となる。
【0023】
続いて、キーボード角度303が180°のときは、X軸加速度センサ出力値の検出軸であるX軸は、再び地球の重心に向かう方向に垂直で鍵盤206を含む平面に平行な方向の成分のみとなる。このため、重力以外の外力が加わっていないと仮定すれば、
図3(c)において、キーボード角度303が180°のときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310の値は、ほぼ「0」(
図3(c)では0%)となる。
【0024】
従って、キーボード角度が90°から180°に変化するときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310xは、重力加速度の成分が徐々に減少することにより、
図3(c)に示されるように、最大値(100%)から値「0」(0%)まで直線的に減少する特性となる。
【0025】
更に続いて、キーボード角度303が270°のときは、X軸加速度センサ出力値の検出軸であるX軸は、地球の重心に向かう方向と真逆の空に向かう方向と一致する。このため、重力以外の外力が加わっていないと仮定すれば、
図3(c)において、キーボード角度303が270°のときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310の値は、地球の重力加速度を打ち消すほぼ最小値(
図3(c)では「-100%」)となる。
【0026】
従って、キーボード角度が180°から270°に変化するときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310xは、重力加速度を打ち消す成分が徐々に増加することにより、
図3(c)に示されるように、値「0」(0%)から最小値(-100%)まで直線的に減少する特性となる。
【0027】
そして、キーボード角度303が360°のときは、X軸加速度センサ出力値の検出軸であるX軸は、再び地球の重心に向かう方向に垂直で鍵盤206を含む平面に平行な方向の成分のみとなる。このため、重力以外の外力が加わっていないと仮定すれば、
図3(c)において、キーボード角度303が360°のときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310の値は、ほぼ「0」(
図3(c)では0%)となる。
【0028】
従って、キーボード角度が270°から360°に変化するときのX軸センサ出力対キーボード角度特性310xは、重力加速度を打ち消す成分が徐々に減少することにより、
図3(c)に示されるように、最小値(-100%)から値「0」(0%)まで直線的に増加する特性となる。
【0029】
一方、加速度センサ301におけるY軸加速度センサ出力値の検出座標軸であるY軸は、例えば
図3(a)又は
図3(b)に示されるように、加速度センサ301のセンサ重心を原点として、X軸(鍵盤206を含む平面)に対して垂直、かつ鍵盤206が並ぶ方向に対して垂直な方向であって、
図3(a)に示されるキーボード角度303が0°の通常モードにおいて地球の重心に向かう方向と同じ方向を正の方向としている。
【0030】
従って、
図3(c)において、キーボード角度303が0°から360°まで変化するときのY軸センサ出力対キーボード角度特性310yは、上述したX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに対して位相が90°進んだ特性となる。
【0031】
図3(c)のグラフにより、加速度センサ301からの信号に基づいて得られる加速度センサ出力値からキーボード角度を算出することができる。
【0032】
具体的には、X軸加速度センサ出力値が正の値を取る場合に、Y軸加速度センサ出力値の符号が正であるならば、
図3(b)において、キーボード角度が0°から90°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、X軸加速度センサ出力値からキーボード角度への変換を行うことができる。
【0033】
また、X軸加速度センサ出力値が正の値を取る場合に、Y軸加速度センサ出力値の符号が負であるならば、
図3(b)において、キーボード角度が90°から180°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、X軸加速度センサ出力値からキーボード角度への変換が行うことができる。
【0034】
一方、X軸加速度センサ出力値が負の値を取る場合に、Y軸加速度センサ出力値の符号が負であるならば、
図3(b)において、キーボード角度が180°から270°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、X軸加速度センサ出力値からキーボード角度への変換が行うことができる。
【0035】
更に、X軸加速度センサ出力値が負の値を取る場合に、Y軸加速度センサ出力値の符号が正であるならば、
図3(b)において、キーボード角度が270°から360°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、X軸加速度センサ出力値からキーボード角度への変換が行うことができる。
【0036】
例えば、X軸センサ出力対キーボード角度特性310xの加速度センサ出力値が
図3(c)のモード切替基準閾値311(正の値)に等しく、Y軸センサ出力対キーボード角度特性310yの値の符号が正であれば、キーボード角度が0°から90°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、キーボード角度は30°であると算出される。
【0037】
また、X軸センサ出力対キーボード角度特性310xの加速度センサ出力値が
図3(c)のモード切替基準閾値311(正の値)に等しく、Y軸センサ出力対キーボード角度特性310yの値の符号が負であれば、キーボード角度が90°から180°の間のX軸センサ出力対キーボード角度特性310xに基づいて、キーボード角度は150°であると算出される。
【0038】
図3(c)で、加速度センサ出力値が、キーボード角度=30°又は150°に対応する加速度センサ出力値のモード切替え基準値313をそれより下側の値から増加して超えた場合に、
図3(c)に示される通常モード領域311からスタンディングモード領域312に移行したと判定され、モードが
図3(a)の通常モードから
図3(b)のスタンディングモードに切り替えられる。
【0039】
逆に、加速度センサ出力値が、キーボード角度=30°又は150°に対応する加速度センサ出力値のモード切替え基準値313をそれより上側の値から減少して下回った場合に、
図3(c)に示されるスタンディングモード領域312から通常モード領域311に戻ったと判定され、モードが
図3(b)のスタンディングモードから
図3(a)の通常モードに切り替えられる。
【0040】
図4(a)は、通常モードと判定されるキーボード角度(水平面302に対するキーボードの鍵盤206の面の角度303)の範囲を示す図である。
図3(c)に示したように、キーボード角度が0°から30°の範囲では、キーボードは通常モードにあると判定される。また、図示していないが、前述したように、キーボード角度が150°から360°の範囲にある場合も、便宜上キーボードは通常モードにあると判定される。
【0041】
図4(b)は、キーボード角度の時間的な変化とモードの変化との関係を示すグラフである。横軸は、時間[秒]である。縦軸は、キーボード角度[°]である。時間対キーボード角度特性401は、加速度センサ出力値に基づいて算出されるキーボード角度の、時間の進行に対する変化をプロットした例である。
【0042】
図4(b)に示されるように、原則的には、加速度センサ出力値を介して検出されるキーボード角度(
図3(c)参照)が、30°から150°の範囲内にあれば、キーボード角度はスタンディングモード領域312にあると判定される。キーボード角度が30°から150°の範囲外にあれば、キーボード角度は通常モード領域311にあると判定される。
【0043】
但し、以下に示すように、細かい振動や一時的な動作によって、その切替えが不用意に発生しないような工夫がなされている。
【0044】
(1)加速度センサ出力値にローパスフィルタリングなどの平滑化処理を施すことで、その出力値に基づくキーボード角度が閾値の例えば30°や150°を一瞬だけ越えても、切替えは発生しないようにする。
【0045】
(2)第1のモードから第2のモードに遷移する際と第2のモードから第1のモードに戻る際の閾値が、異なるヒステリシス特性を持つようにする。即ち、
図4(b)に示されるように、スタンディングモードと通常モードの境界となるキーボード角度30°と150°に夫々、±h°(hは正の角度値)のヒステリシス領域402及び403を設ける。
【0046】
そして、例えば通常モードからスタンディングモードに移行する場合には、キーボード角度が、「30°」又は「150°」(
図3(c)のモード切替え基準値313に対応)ぴったりではなく、「(30+h)°」(30°以下から増加する場合)又は「(150-h)°」(150°以上から減少する場合)になった場合に、通常モードからスタンディングモードへの移行が発生したと判定される。
【0047】
例えば、
図4(b)で、時間対キーボード角度特性401として示されるように、キーボード角度が「(30+h)°」を超えた時刻t1において、キーボード角度が通常モード領域311からスタンディングモード領域312(
図3(c)参照)に移行したと判定される。
【0048】
また、例えばスタンディングモードから通常モードに移行する場合には、キーボード角度が「(30-h)°」(30°以上から減少する場合)又は「(150+h)°」(150°以下から増加する場合)になった場合に、スタンディングモードから通常モードに移行し得る状態になったと判定される。
【0049】
例えば
図4(b)で、時間対キーボード角度特性401として示されるように、キーボード角度が「(30-h)°」を下回った時刻t2において、キーボード角度が通常モード領域311からスタンディングモード領域312(
図3(c)参照)に移行し得る状態になったと判定される。
【0050】
但し、上記(2)により通常モードからスタンディングモードに移行し得る状態になったと判定された場合であっても、その後の例えばキーボード角度の検出時刻毎のキーボード角度の値の1検出時刻前の値からの変位404が所定の差分値Δ以上の状態で継続している場合には、演奏者110が例えば
図1(b)に示されるようにキーボード(電子鍵盤楽器200)をスタンディングモードで例えば激しく動かしながら演奏しているような場合であるため、スタンディングモードが継続していると判定される。
【0051】
逆に、上記(2)により通常モードからスタンディングモードに移行し得る状態において、変位404が差分値Δを下回ったら、演奏者110が例えば
図1(a)に示されるようにキーボードをスタンド102上に置いて演奏し始めたような場合であるため、スタンディングモードから通常モードに移行したと判定される。
【0052】
例えば、
図4(b)で、時間対キーボード角度特性401として示されるように、キーボード角度が通常モード領域311からスタンディングモード領域312に移行し得る状態になったと判定された時刻t2以降t3までの区間では、加速度センサ301の検知時刻毎に算出されるキーボード角度の各変位404はある程度の変化幅を維持している。従って、時刻t2からt3までの区間はスタンディングモードの区間と判定される。そして、時刻t3以降で、上記各変位404の値が所定の差分値Δを下回ったと判定される。従って、時刻t1から時刻t3までの区間がスタンディングモード区間、時刻t3以降が通常モードの区間と判定される。
【0053】
このようにスタンディングモード実行時に加速度センサ301の検出値が通常モード領域311に含まれるとしても、通常モードに切り替えず、スタンディングモードを継続する場合がある。
【0054】
(3)演奏操作子がホームポジション(操作停止の状態)にない場合、即ち操作中はモードの切替えを行わないようにする。
【0055】
以上の動作を実現するための本実施形態の詳細な構成及び動作について、以下に説明する。
図5は、本実施形態における
図2の電子鍵盤楽器200を制御するシステムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0056】
図5において、CPU(中央演算処理装置)501と、読取り専用のメモリであるROM(リードオンリーメモリ)502と、読み書きが可能なメモリであるRAM(ランダムアクセスメモリ)503と、A/D(アナログ/デジタル)コンバータ群504と、キースキャナ505と、I/O(入力/出力)インタフェース506と、LCDコントローラ507と、音源LSI508が、システムバス512によって相互に接続されている。
【0057】
A/Dコンバータ群504は、
図2のピッチベンドホイール201、モジュレーションホイール202、及び
図3の加速度センサ301の各アナログ出力を、特には図示しない個別のA/Dコンバータによって、デジタルデータであるピッチベンドホイールポジション値、モジュレーションホイールポジション値、及び加速度センサ出力値に変換する。
【0058】
キースキャナ505は、
図2の鍵盤206の全てのキーの演奏状態を監視し、押鍵状態に変化が生じたときのキー番号と、押下速度又は離鍵速度を検出する。
【0059】
I/Oインタフェース506は、パネルスイッチ207、208におけるスイッチの設定状態を検出し、CPU501に通知する。また、CPU501からの指示に従って、
図2のディレクションインジケータ203の表示を制御する。
【0060】
ROM502は、CPU501がRAM503にロードして実行する制御プログラム、及びその他の定数データ等を記憶する。
【0061】
RAM503は、ROM502から転送される制御プログラムや、プログラム実行時の各種変数データなどを記憶する。
【0062】
LCDコントローラ507は、CPU501からの制御に従って、各種情報を
図2のLCD209に表示させる。
【0063】
CPU501は、ROM502からRAM503にロードされた制御プログラムに従って、加速度センサ301からA/Dコンバータ群504を介して入力する加速度センサ出力値を正規化し(
図3(c)参照)、例えば
図3(c)のX軸及びY軸の各センサ出力対キーボード角度特性310x及び310yに基づいて正規化後の加速度センサ出力値に対応するキーボード角度を算出する。そして、CPU501は、算出したキーボード角度に基づいて、
図2のピッチベンドホイール201又はモジュレーションホイール202の回転極性を制御する。
【0064】
また、CPU501は、I/Oインタフェース506を介して
図2のディレクションインジケータ203において、上記回転極性のUP方向に対応する方向の矢印ランプを点灯させる。
【0065】
更に、CPU501は、キースキャナ505を介して入力する押鍵状態の変化に基づくキー番号と押鍵/離鍵速度に基づいて、音源LSI508への楽音出力データの発音/消音指示等を行う。
【0066】
音源LSI(LSI:大規模集積回路)508は、CPU201からの指示に従って楽音出力データを発生する。
【0067】
D/Aコンバータ509は、音源LSI508が発生したデジタルの楽音出力データをアナログの楽音出力信号に変換する。この楽音出力信号は、アンプ510を介してスピーカ511から放音される。
【0068】
上述のハードウェア構成を有する本実施形態のソフトウェア処理について、以下に詳細に説明する。まず、以下のソフトウェア処理において使用される変数データ(以下単に「変数」と記載)について説明する。これらの変数は、
図5のRAM503に記憶される。
・Mode変数:現在の演奏モード
(値「0」:通常モード、値「1」:スタンディングモード)
・PitWheelPos変数:ピッチベンドホイール201の現在位置
(値「-1.0」:最手前位置、値「0.0」:中央位置、
値「+1.0」:最奥位置)
・ModWheelPos変数:モジュレーションホイール202の現在位置
(値「0.0」~値「+1.0」)
・変数v、変数d、変数a、変数a0:値を格納する一時変数
【0069】
次に、以下のソフトウェア処理において使用される定数データ(以下単に「定数」と記載)について説明する。これらの変数は、
図5のROM502に記憶される。
・ModeThresholdMax変数:モード切替上限角度閾値
・ModeThresholdMin変数:モード切替下限角度閾値
・ModeHysteresys変数:モード切替ヒステリシス幅
・Delta変数:変位閾値
【0070】
図6は、本実施形態におけるメイン処理の例を示すフローチャートである。この処理は、CPU501が、ROM502に記憶されている制御プログラムをRAM503にロードして実行する処理である。
【0071】
電源投入後、まずCPU501は、RAM503等の初期化処理を実行する(ステップS601)。その後、CPU501は、電源が切断(パワーオフ)されたと判定するまで(ステップS610の判定がYESとなるまで)、ステップS610の判定をNOとして、ステップS602からS609の一連の処理を繰り返し実行するメインループ処理を実行する。
【0072】
メインループ処理において、CPU501はまず、パネルスイッチ処理を実行する(ステップS602)。この処理では、CPU501は、
図5のI/Oインタフェース506を介して、
図2のパネルスイッチ207、208の設定状態を読み込んで、各種ユーザーインタフェイス処理を実行する。
【0073】
メインループ処理において、CPU501は次に、LCD処理を実行する(ステップS603)。この処理では、CPU501は、現在の表示状態を判断して、LCDコントローラ507を介してLCD209への表示を制御する。
【0074】
メインループ処理において、CPU501は次に、
図5のキースキャナ505を介して、
図2の鍵盤206において押鍵又は離鍵が発生したか否かを判定する(ステップS604)。
【0075】
ステップS604の判定がYESになった場合、CPU501は、演奏処理を実行する(ステップS605)。この処理では、CPU501は、キースキャナ505を介して入力したキー番号及び押鍵又は離鍵速度による発音指示又は消音指示を音源LSI508に対して発行する。
【0076】
ステップS604の判定がNOの場合には、CPU501は、上記ステップS605の演奏処理はスキップする。
【0077】
その後、メインループ処理において、CPU501は、ピッチベンドホイール処理を実行する(ステップS606)。この処理では、CPU501は、ピッチベンドホイール201が出力するアナログ信号値をA/Dコンバータ群504を介してピッチベンドホイールポジション値として読み込み、その値の変化に応じて後述する制御処理を実行する。ピッチベンドホイール処理の詳細については、
図7のフローチャートを用いて後述する。
【0078】
メインループ処理において、CPU501は続いて、モジュレーションホイール処理を実行する(ステップS607)。この処理では、CPU501は、モジュレーションホイール202が出力するアナログ信号値をA/Dコンバータ群504を介してモジュレーションホイールポジション値として読み込み、その値の変化に応じて後述する制御処理を実行する。モジュレーションホイール処理の詳細については、
図8のフローチャートを用いて後述する。
【0079】
メインループ処理において、CPU501はその後、加速度センサ処理を実行する(ステップS608)。この処理では、CPU501は、加速度センサ301が出力するアナログのセンサ出力信号をA/Dコンバータ群504を介してデジタルの加速度センサ出力値として読み込み、更にその加速度センサ出力値を正規化し(
図3(c)参照)、例えば
図3(c)のX軸及びY軸の各センサ出力対キーボード角度特性310x及び310yに基づいて正規化後の加速度センサ出力値に対応するキーボード角度を算出する。そして、CPU501は、算出したキーボード角度に基づいて、
図2のピッチベンドホイール201又はモジュレーションホイール202の回転極性を制御する。加速度センサ処理の詳細は、
図9のフローチャートを用いて後述する。
【0080】
メインループ処理において、CPU501は最後に、音源定常処理を実行する(ステップS609)。この処理では、CPU501は、音源LSI508が生成している楽音出力データに対して、音高、音色、音量などのエンベロープの定期的処理を実行する。
【0081】
図7は、
図6のステップS606のピッチベンドホイール処理の詳細例を示すフローチャートである。CPU501はまず、演奏者110(
図1参照)による
図2のピッチベンドホイール201の操作量のアナログ値をA/Dコンバータ群504を介してデジタル値のピッチベンドホイールポジション値として読み込む。そして、CPU501は、そのピッチベンドホイールポジション値を変数vに格納する(以上、ステップS701)。
【0082】
次に、CPU501は、変数vの値がピッチベンドホイール201の現在値を表すPitWheelPos変数の値と等しいか否かを判定する(ステップS702)。
【0083】
ステップS702の判定がYESならば、ピッチベンドホイール201に対する制御は必要ないので、そのまま
図7のフローチャートで示される
図6のステップS606のピッチベンドホイール処理を終了する。
【0084】
ステップS702の判定がNOならば、CPU501は、ステップS701で変数vにセットした最新のピッチベンドホイールポジション値を、PitWheelPos変数に格納する(ステップS703)。
【0085】
次に、CPU501は、現在のモードを示すMode変数の値が1であるか、即ち、現在のモードがスタンディングモードであるか否かを判定する(ステップS704)。
【0086】
ステップS704の判定がNO、即ち現在のモードが通常モードであると判定した場合、CPU501は、ステップS703でPitWheelPos変数に格納した最新のピッチベンドホイールポジション値を、そのまま極性を変更せずに変数dに格納する(ステップS705)。
【0087】
一方、ステップS704の判定がYES、即ち現在のモードがスタンディングモードであると判定した場合、CPU501は、ステップS703でPitWheelPos変数に格納した最新のピッチベンドホイールポジション値を、極性を変更して(マイナスを付加して)、変数dに格納する(ステップS706)。
【0088】
最後に、CPU501は、変数dに格納された値に基づいて、音源LSI508に対して、現在発音中の楽音出力データのピッチを指示するピッチベンド処理を実行する(ステップS707)。
【0089】
ピッチベンドホイール201の位置情報は、値「0」を中央値として、値「-1.0」から値「+1.0」の値を取るが、
図7のステップS705とS706の処理により、通常モードではピッチベンドホイール201の回転がマイナス方向でピッチを下げ、プラス方向でピッチを上げ、スタンディングモードでは、その逆となる。これにより、通常モードとスタンディングモードとでピッチベンドホイール201をUPしたときのピッチの増減の極性が反転され、
図3(a)及び(b)で説明した各モードに適切なピッチベンドホイール201の回転極性の制御が実現される。
【0090】
図8は、
図6のステップS607のモジュレーションホイール処理の詳細例を示すフローチャートである。CPU501はまず、演奏者110(
図1参照)による
図2のモジュレーションホイール202の操作量のアナログ値をA/Dコンバータ群504を介してデジタル値のモジュレーションホイールポジション値として読み込む。そして、CPU501は、そのモジュレーションホイールポジション値を変数vに格納する(以上、ステップS801)。
【0091】
次に、CPU501は、変数vの値がモジュレーションホイール202の現在値を表すModWheelPos変数の値と等しいか否かを判定する(ステップS802)。
【0092】
ステップS802の判定がYESならば、モジュレーションホイール202に対する制御は必要ないので、そのまま
図8のフローチャートで示される
図6のステップS607のモジュレーションホイール処理を終了する。
【0093】
ステップS802の判定がNOならば、CPU501は、ステップS801で変数vにセットした最新のモジュレーションホイールポジション値を、ModWheelPos変数に格納する(ステップS803)。
【0094】
次に、CPU501は、現在のモードを示すMode変数の値が1であるか、即ち、現在のモードがスタンディングモードであるか否かを判定する(ステップS804)。
【0095】
ステップS804の判定がNO、即ち現在のモードが通常モードであると判定した場合、CPU501は、ステップS803でModWheelPos変数に格納した最新のモジュレーションホイールポジション値を、そのまま変数dに格納する(ステップS805)。
【0096】
一方、ステップS804の判定がYES、即ち現在のモードがスタンディングモードであると判定した場合、CPU501は、値1からステップS803でModWheelPos変数に格納した最新のモジュレーションホイールポジション値を減算して得られる値を、変数dに格納する(ステップS806)。
【0097】
最後に、CPU501は、変数dに格納された値に基づいて、音源LSI508に対して、現在発音中の楽音出力データに対してモジュレーション効果処理を指示する(ステップS807)。この結果、例えば、楽音出力データに対して変数dの値に応じた深さのLFO(低周波発振)などのモジュレーション効果がかかる。
【0098】
モジュレーションホイール202の位置情報は、値「0.0」から値「+1.0」の値を取るが、
図8のステップS805とS806により、通常モードではモジュレーションホイールポジション値が「0」でモジュレーション効果の深さがゼロ、「+1.0」でモジュレーション効果の深さが最大となり、スタンディングモードでは、その逆となる。これにより、通常モードとスタンディングモードとでモジュレーションホイール202をUPしたときの効果の深さのかかり方の極性が反転され、
図3(a)及び(b)で説明した各モードに適切なモジュレーションホイール202の回転極性の制御が実現される。
【0099】
図9は、
図6のステップS608の加速度センサ処理の詳細例を示すフローチャートである。CPU501はまず、加速度センサ301が出力するアナログの出力信号をA/Dコンバータ群504を介してデジタルの加速度センサ出力値として読み込み、変数vに格納する(ステップS901)。
【0100】
次に、CPU501は、ステップS901で変数vに格納された加速度センサ出力値を正規化し(
図3(c)参照)、例えば
図3(c)のX軸及びY軸の各センサ出力対キーボード角度特性310x及び310yに基づいて正規化後の加速度センサ出力値に対応するキーボード角度を算出し、算出結果を再び変数vに格納する(ステップS902)。
【0101】
続いて、CPU501は、変数vの値にローパスフィルタをかけて平滑化した値を変数aに格納する(前述した(1)の処理を参照)(ステップS903)。
【0102】
次に、CPU501は、ピッチベンドホイール201の現在値を格納するPitWheelPos変数の値が停止位置に対応する値「0.0」であるか否かを判定する(ステップS904)。
【0103】
ピッチベンドホイール201が現在操作中でステップS904の判定がNOならば、現在のモードを変更すべきではないため、CPU501は、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0104】
ピッチベンドホイール201が現在停止中でステップS904の判定がYESならば、続いてCPU501は、現在のモードを示すMode変数の値が1であるか、即ち、現在のモードがスタンディングモードであるか否かを判定する(ステップS905)。
【0105】
ステップS905の判定がNO、即ち現在のモードが通常モードであると判定した場合、CPU501は、モジュレーションホイール202の現在値を示すModWheelPos変数の値が通常モードにおいてモジュレーションホイール202の停止位置に対応する値「0.0」に等しいか否かを判定する(ステップS906)。
【0106】
モジュレーションホイール202が現在操作中でステップS906の判定がNOならば、現在のモードを変更すべきではないため、CPU501は、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0107】
モジュレーションホイール202が現在停止中でステップS906の判定がYESならば、CPU501は、ステップS903で変数aにセットされている加速度センサ301の出力に基づいて算出されたキーボード角度の値aが、ヒステリシス幅を考慮した下記のスタンディングモードへの移行条件を満たすか否かを判定する(ステップS907)。
a<ModeThresholdMax-ModeHysteresys
かつ
a>ModeThresholdMin+ModeHysteresys
【0108】
これは、前述した(2)の説明において、通常モードからスタンディングモードへの移行条件が、ヒステリシス幅を考慮した「(30+h)°」又は「(150-h)°」であったことに対応する。この例の場合、ModeThresholdMin=30°、ModeThresholdMax=150°、ModeHysteresys=h°である。
【0109】
いずれもキーボード角度の値a(変位を示す値)が閾値を上回る(又は下回る)場合に、通常モードからスタンディングモードに切り替える。
【0110】
ステップS907の判定がNOならば、CPU501は、通常モードを維持したまま、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0111】
ステップS907の判定がYESならば、CPU501は、現在のモードを示すMode変数に、スタンディングモードを示す値「1」をセットする(ステップS908)。これにより、現在のモードが通常モードからスタンディングモードに切り替わる。このMode変数の値は、前述したように、ピッチベンドホイール処理(
図7のステップS704)又はモジュレーションホイール処理(
図8のステップS804)で判定される。
【0112】
その後、CPU501は、I/Oインタフェース506を介して
図2のディレクションインジケータ203において、スタンディングモードのUP方向(
図3(b)参照)に対応する下矢印の方向ランプを点灯させる(ステップS909)。
【0113】
最後に、CPU501は、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0114】
一方、前述したステップS905の判定がYES、即ち現在のモードがスタンディングモードであると判定した場合、CPU501は、モジュレーションホイール202の現在値を示すModWheelPos変数の値がスタンディングモードにおいてモジュレーションホイール202の停止位置に対応する値「1.0」に等しいか否かを判定する(ステップS910)。
【0115】
モジュレーションホイール202が現在操作中でステップS910の判定がNOならば、現在のモードを変更すべきではないため、CPU501は、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0116】
モジュレーションホイール202が現在停止中でステップS910の判定がYESならば、CPU501は、ステップS903で変数aにセットされている加速度センサ301の出力に基づいて算出されたキーボード角度の値aが、ヒステリシス幅を考慮した下記の通常モードへの移行条件を満たすか否かを判定する(ステップS911)。
a>ModeThresholdMax+ModeHysteresys
又は
a<ModeThresholdMin-ModeHysteresys
【0117】
これは、前述した(2)の説明において、スタンディングモードから通常モードへの移行条件が、ヒステリシス幅を考慮した「(30-h)°」又は「(150+h)°」であったことに対応する。この例の場合、ModeThresholdMin=30°、ModeThresholdMax=150°、ModeHysteresys=h°である。
【0118】
ステップS911の判定がNOならば、CPU501は、スタンディングモードを維持したまま、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0119】
ステップS911の判定がYESならば、CPU501は、変数a0にセットされている前回のキーボード角度(ステップS915参照)からステップS903で変数aにセットされた最新のキーボード角度までの変位|a0-a|の値がDelta変数にセットされている所定の変位閾値よりも小さいか否かを判定する(ステップS912)。これは、
図4(b)で説明した変位404の判定に対応する。ここで、
図4(b)で説明した差分値ΔがDelta変数の値に対応している。
【0120】
すなわち変位を示す値が閾値を下回る(又は上回る)場合(ステップS911:YES)であっても変位が継続(ステップS912:NO)している場合は、スタンディングモードを継続する(スタンディングモードと判断する)。
【0121】
ステップS912の判定がNOならば、CPU501は、スタンディングモードを維持したまま、ステップS915に移行し、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0122】
この状態は、例えば
図4(b)の時刻t2から時刻t3までの区間に対応する。
【0123】
ステップS912の判定がYESならば、CPU501は、現在のモードを示すMode変数に、通常モードを示す値「0」をセットする(ステップS913)。これにより、現在のモードがスタンディングモードから通常モードに切り替わる。このMode変数の値は、前述したように、ピッチベンドホイール処理(
図7のステップS704)又はモジュレーションホイール処理(
図8のステップS804)で判定される。
【0124】
この状態は、例えば
図4(b)の時刻t3以降の区間に対応する。
【0125】
その後、CPU501は、I/Oインタフェース506を介して
図2のディレクションインジケータ203において、通常モードのUP方向(
図3(a)参照)に対応する上矢印の方向ランプを点灯させる(ステップS914)。
【0126】
最後に、CPU501は、ステップS903で変数aに設定された現在のキーボード角度の値を次回の処理のために変数a0にセットし、その後、
図9のフローチャートで示される
図6のステップS608の加速度センサ処理を終了する。
【0127】
以上説明したようにして、上述の実施形態によれば、通常モード又はスタンディングモードなどの演奏モードに応じて、ホイールコントローラ等の演奏操作子による音響効果を付加する方向を自動的に反転させることが可能となる。
【0128】
上述の実施形態において、演奏操作子は、ピッチベンドホイール201とモジュレーションホイール202であったが、演奏操作子は演奏者から見て前後に操作するリボンコントローラのようなタッチデバイスであってもよい。
【0129】
以上の実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1方向及び前記第1方向とは反対の第2方向に動く演奏操作子であって、動作方向に応じた音響効果を付与するための演奏操作子と、
電子楽器の変位を検出するためのセンサと、
少なくとも1つのプロセッサと、
を備え、前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記変位の検出結果に基づいて、前記第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理、
を実行する電子楽器。
(付記2)
前記切換え処理において、前記演奏操作子の操作に応じて取得される演奏パラメータの極性を反転させる、
付記1に記載の電子楽器。
(付記3)
前記演奏操作子は、ピッチの上げ下げを指定するためのピッチベンドホイールを含み、
前記第1モードと前記第2モードで、前記ピッチベンドホイールにおける前記ピッチを上げる方向と下げる方向が反転する、
付記1又は2に記載の電子楽器。
(付記4)
前記演奏操作子は、音量の大小を指定するための音量操作子を含み、
前記第1モードと前記第2モードで、前記音量操作子における前記音量を上げる方向と下げる方向が反転する、
付記1乃至3の何れかに記載の電子楽器。
(付記5)
前記第1方向は、鍵の手前側から奥側に向かう方向であり、
前記第2方向は、前記鍵の奥側から手前側に向かう方向である、
付記1乃至4の何れかに記載の電子楽器。
(付記6)
鍵盤を含み、
前記第1のモード又は前記第2のモードは、電子楽器が設置面上に配置され前記鍵盤が略水平状態となる通常モード及び前記略水平状態とは異なる状態となるスタンディングモードの何れかを含む、
付記1乃至5の何れかに記載の電子楽器。
(付記7)
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記変位を示す値が閾値を上回る場合に、前記通常モードから前記スタンディングモードに切り替え、
前記変位を示す値が前記閾値を下回る場合であっても変位が継続している場合は、前記スタンディングモードと判断する、
付記6に記載の電子楽器。
(付記8)
音高を指定する音高指定操作子を含み、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記音高指定操作子の操作を非検出の場合に、前記第1モードと前記第2モードとの切替え処理を実行する、
付記1乃至7の何れかに記載の電子楽器。
(付記9)
電子楽器が、
変位の検出結果に基づいて、演奏操作子の第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記演奏操作子の前記第1方向とは反対の第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理を実行する、
方法。
(付記10)
電子楽器を制御する少なくとも1つのプロセッサに、
変位の検出結果に基づいて、演奏操作子の第1方向への動きに応じて第1音響効果を付与し、前記演奏操作子の前記第1方向とは反対の第2方向への動きに応じて第2音響効果を付与する第1モードと、前記第1方向への動きに応じて前記第2音響効果を付与し、前記第2方向への動きに応じて前記第1音響効果を付与する第2モードと、の切替え処理、
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0130】
100、200 電子鍵盤楽器
101 ホイールコントローラ
102 スタンド
103 ストラップ
110 演奏者
201 ピッチベンドホイール
202 モジュレーションホイール
203 ディレクションインジケータ
204、205 ストラップピン
206 鍵盤
207、208 パネルスイッチ
209 LCD
301 加速度センサ
302 水平面
303 角度
310x X軸センサ出力対キーボード角度特性
310y Y軸センサ出力対キーボード角度特性
311 通常モード領域
312 スタンディングモード領域
313 モード切替え基準値
401 時間対キーボード角度特性
402、403 ヒステリシス幅
404 変位
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 A/Dコンバータ群
505 キースキャナ
506 I/Oインタフェース
507 LCDコントローラ
508 音源LSI
509 D/Aコンバータ
510 アンプ
511 スピーカ
512 システムバス