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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149154
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】マスク用耳掛け部材、及びマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220929BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220929BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A41D13/11 H
A62B18/08 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051173
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】氏家 広大
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】伸縮性の調整がより容易なマスク用耳掛け部材を提供する。
【解決手段】環状シート状のマスク用耳掛け部材であって、平面視で、マスクの上下方向に対応する第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とを有し、第1表面材と、前記第1表面材と反対側に配置された第2表面材と、前記第1表面材と前記第2表面材との間に、前記前記第1方向に離間し且つそれぞれ前記第2方向に沿って延在する複数の伸縮性紐材とを備え、前記伸縮性紐材が、伸長状態で前記第1表面材及び前記第2表面材にそれぞれ接着されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状シート状のマスク用耳掛け部材であって、平面視で、マスクの上下方向に対応する第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とを有し、
第1表面材と、
前記第1表面材と反対側に配置された第2表面材と、
前記第1表面材と前記第2表面材との間に、前記前記第1方向に離間し且つそれぞれ前記第2方向に沿って延在する複数の伸縮性紐材とを備え、
前記伸縮性紐材が、伸長状態で前記第1表面材及び前記第2表面材にそれぞれ接着されている、マスク用耳掛け部材。
【請求項2】
前記第1表面材及び第2表面材が不織布から構成されている、請求項1に記載のマスク用耳掛け部材。
【請求項3】
前記伸縮性紐材が、前記第1方向に振幅を有する波状に延在している、請求項1又は2に記載のマスク用耳掛け部材。
【請求項4】
四角環の形状を有し、前記四角環の上辺及び下辺にそれぞれ相当する上辺部及び下辺部を有し、
前記第1方向で見て、前記上辺部の延在範囲に相当する上端部領域と、前記下辺部の延在範囲に相当する下端部領域と、前記上端部領域と前記下端部領域との間の中央領域とを有し、
前記複数の伸縮性紐材の太さ、伸長率、及び配置間隔の1以上が、前記上端部領域及び前記下端部領域の少なくとも一方と、前記中央領域とで異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載のマスク用耳掛け部材。
【請求項5】
マスク用本体と、
前記マスク用本体の外面に接合された、請求項1から4のいずれか一項に記載のマスク用耳掛け部材とを有する、マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク用耳掛け部材、及びマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
顔に装着するマスクとして、装着者の顔を少なくとも部分的に覆うマスク本体と、マスク本体にそれぞれ結合された一対の耳掛け部材、すなわちマスク本体をその装着位置に保持するために装着者の各耳に掛けることのできる一対の部材とを備えたものがよく知られている。
【0003】
上記のマスクの耳掛け部材は紐状であることが多いが、マスクの装着中に耳に掛かる負担を軽減して快適な装着感を得るため、シート状の耳掛け部材(耳掛け部)も検討されている。例えば、特許文献1には、両方の耳掛け部が接続部で互いに接続された状態で同一平面上に延在する単一シート状の耳掛けシートを備えたマスクが記載されている。また、特許文献1には、耳掛け部材の素材として、伸縮性又は伸長性の不織布、伸縮ホットメルト接着剤不織布等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5762803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、マスクは、老若男女の様々な使用者によって使用されている。そのため、使用者の顔の大きさ、サイズ、所望の装着感等に応じた様々なマスクを製造する必要が生じている。しかしながら、特許文献1に記載されているような伸縮性不織布等からなる耳掛け部材の場合、耳掛け部材の伸縮性を広い範囲で調整することができず、使用者の様々な要望に応えられない場合がある。よって、伸縮性をより容易に調整できるマスク用耳掛け部材が求められている。
【0006】
上記に鑑みた本発明の一態様は、伸縮性の調整がより容易なマスク用耳掛け部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、環状シート状のマスク用耳掛け部材であって、平面視で、マスクの上下方向に対応する第1方向と、前記第1方向に直交する第2方向とを有し、第1表面材と、前記第1表面材と反対側に配置された第2表面材と、前記第1表面材と前記第2表面材との間に、前記前記第1方向に離間し且つそれぞれ前記第2方向に沿って延在する複数の伸縮性紐材とを備え、前記伸縮性紐材が、伸長状態で前記第1表面材及び前記第2表面材にそれぞれ接着されている。
【0008】
上記第一の態様では、耳掛け部材の伸縮性を、複数の伸縮性紐材を用いることで得ている。そのため、伸縮性紐材(例えば糸ゴム)の材料、太さを適宜選択することで、且つ/又は伸縮性紐材の配置、伸長率等を適宜選択することで、耳掛け部材に任意の伸縮性を付与できる。そのため、使用者の要望に応じた様々なマスク用耳掛け部材を、比較的容易に製造できる。
【0009】
また、伸縮性紐材が、耳掛け部材の全体にわたって設けられており、耳掛け部材の、装着時に装着者の耳の後方に配置される耳後方配置部にも設けられている。これにより、耳掛け部材の、装着時にマスク本体から耳に向かって延びる上辺部及び下辺部のみならず、耳後方配置部もある程度の横方向D2の伸縮性を有することができるので、快適な装着感を高めることができる。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記第1表面材及び第2表面材が不織布から構成されている。
【0011】
上記第二の態様によれば、耳掛け部材における表面材として不織布を用いるので、肌触りのよい耳掛け部材を得ることができる。
【0012】
本発明の第三の態様では、前記伸縮性紐材が、前記第1方向に振幅を有する波状に延在している。
【0013】
上記第三の態様によれば、波状に配置された伸縮性紐材により、より高い伸長性、すなわち、同じ引張力で比較した場合、自然状態に対する伸長長さをより長くすることができる。
【0014】
本発明の第四の態様では、四角環の形状を有し、前記四角環の上辺及び下辺にそれぞれ相当する上辺部及び下辺部を有し、前記第1方向で見て、前記上辺部の延在範囲に相当する上端部領域と、前記下辺部の延在範囲に相当する下端部領域と、前記上端部領域と前記下端部領域との間の中央領域とを有し、前記複数の伸縮性紐材の太さ、伸長率、及び配置間隔の1以上が、前記上端部領域及び前記下端部領域の少なくとも一方と、前記中央領域とで異なる。
【0015】
上記第四の態様によれば、縦方向で見て、耳掛け部材の領域によって伸縮挙動を異ならせることができる。例えば、上端部領域及び下端部領域に配置された伸縮性紐材の太さをより太く、中央領域に配置された伸縮性紐材の太さをより細くすることで、装着時に耳掛け部材が引っ張られた時に上端部領域及び下端部領域で生じる引張応力を、中央領域で生じる引張応力よりも大きくできる。上端部領域及び下端部領域は、耳掛け部材の、装着時に横方向D2に大きく引っ張られる上辺部及び下辺部にそれぞれ対応している。上辺部及び下辺部における引張応力が大きいと、マスク本体が耳の方へより強く引っ張られるため、マスク本体を顔により密着させることができる。一方、耳掛け部材の中央領域に対応する耳後方配置部にも、当該部分が耳のカーブに沿って変形できるよう横方向D2の伸縮性があることが好ましいが、伸縮性部材が太いと装着感を損ねる場合がある。よって、中央領域の伸縮性紐材の太さがより細くなっていることで、耳後方配置部を柔軟に保つことができる。
【0016】
本発明の第五の態様では、マスク用本体と、前記マスク用本体の外面に接合された、上記第一から第四のいずれか態様によるマスク用耳掛け部材とを有する。
【0017】
上記第五の態様によれば、上記第一から第四のいずれかの態様が奏する効果と同様の効果を奏するマスクを提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、伸縮性の調整がより容易なマスク用耳掛け部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一形態によるマスクを外面側(外側)から見た平面図である。
図2図1に示すマスクの内面側(顔側)から見た平面図である。
図3図1のI-I線断面図である。
図4】一対の耳掛け部材がそれぞれ側方へ開かれた後の平面図である。
図5図4のII-II線断面図である。
図6図1の耳掛け部材のみの平面図である。
図7図6のIII-III線断面の拡大図を示す。
図8図6のIV-IV線断面の拡大図を示す。
図9】耳掛け部材の変形例を示す図である。
図10】耳掛け部材の別の変形例を示す図である。
図11】耳掛け部材のさらに別の変形例を示す図である。
図12】耳掛け部材における伸縮性紐材の変形例を示す平面図である。
図13】本発明の別形態によるマスクを外面側(外側)から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳説する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0021】
(マスクの基本構成)
本形態におけるマスクは、装着者の顔、より具体的には装着者の少なくとも鼻及び口を覆うことのできるマスクであってよい。本形態によるマスクは、異物が顔に到達することを防止したり、装着者から発生する飛沫が飛散することを防止したりする機能を有し得るものであって、衛生マスク又はサージカルマスクとも呼ばれる。本形態は、使い捨てのマスクとして好適に使用されるが、洗濯等によって繰り返し使用可能なマスクとして使用されてもよい。
【0022】
図1に、マスク1の平面図を示す。図1は、マスク1を外面側、すなわち装着時に顔に対向せず外部に露出させる側から見た図である。また、図2に、マスクを内面側(顔側)から見た平面図を示す。図3には、図1のI-I線断面図を示す。
【0023】
図1に示すように、本形態によるマスク1は、装着時に装着者の顔の正面に配置され、装着者の主として鼻及び口を覆うことができるマスク本体10と、マスク本体10に結合された一対の耳掛け部材20a、20aとを備えている。マスク本体10は、装着時に装着者の顔の上下方向に対応する縦方向(第1方向)D1と、縦方向(第1方向)D1に直交する方向であり、装着時に装着者の顔の左右方向に対応する方向である横方向(第2方向)D2とを有する。図1の形態では、マスク本体10は、横方向D2に長辺を有する長方形の平面視形状を有するが、マスク本体10の平面視形状は図示のものに限られない。
【0024】
図1及び図2に示すように、マスク本体10は、縦方向D1に並んで配置された複数の襞(プリーツ)によって形成されるプリーツ構造15を有している。プリーツ構造15の襞は、マスク本体10を構成するシートを、横方向D2に沿った折り線にて複数回折ることによって形成され得る。そして、複数の襞は、マスク本体10の側部(横方向D2端部)で固定されている。そのため、マスク1の使用時には、プリーツ構造15の横方向D2中央の部分を縦方向D1に広げることができ、これにより、マスク本体10の横方向D2中央が、マスク1の外面側に突出するように湾曲して、顔の立体形状に適合するような形状に変形し得る。プリーツ構造15の具体的な構成は特に限定されず、マスク本体に形成される公知の構成であってよい。
【0025】
図1図3に示すように、一対の耳掛け部材20a、20aは、マスク本体10の外面に配置されている。図1に示すように、耳掛け部材20aはそれぞれ、平面視で環状(若しくは閉じた帯状)であってよい。装着時には、耳掛け部材20aの環の内側、すなわち耳掛け部材20aの中央の開口29に装着者の耳が入るようにして、耳掛け部材20aを耳に掛けることができる。上記環の形状は、特に限定されないが、後述のように四角環状であると好ましい。しかし、環の形状は、円形又は楕円形、三角環状、その他の多角環形状であってもよい。
【0026】
一対の耳掛け部材20a、20aは、横方向D2中央で互いに分離可能に結合した1枚のシート状の耳掛け部材(耳掛け部材シート)20として構成されていてよい。本明細書において、「シート状」又は「シート」とは、長さ及び幅が厚さに比べて大きく、一平面上に延在する又は延在可能な形状を指す。よって、本形態における一対の耳掛け部材20a、20aは、紐状又は糸状の耳掛け部材とは異なっている。一対の耳掛け部材20a、20aが耳掛け部材シート20として構成されていることで、マスク装着時に耳掛け部材20aを耳に掛けた時に、耳掛け部材20aが耳たぶの裏面に面で接触できるので、耳及び耳の周辺部分に掛かる負担を軽減して、違和感や痛みを低減でき、快適な装着感を得ることができる。
【0027】
一対の耳掛け部材20a、20aの分離可能な結合部28の結合形式は特に限定されないが、使用者の通常の力で引っ張ることによって分離可能な結合であることが好ましい。例えば図1に示すように、不連続な切込み(カット部)を入れてミシン目として形成されていてよい。また、結合部28は、ミシン目ではなく、シートの厚みを小さくすること又はその他の手段によって、一対の耳掛け部材20a、20aの境界を脆弱化したり、応力が掛かりやすくしたりすることによっても形成できる。なお、図1に示すように、一対の耳掛け部材20a、20aの構成は、結合部28を通る縦方向D1に沿った線を対称線とする線対称となっていてよい。
【0028】
マスク本体10は、複数の層が積層されてなる多層構造を有していてよい。例えば、異物(塵、花粉、細菌、ウィルス等)を捕集する機能が高められた中間層を、外側層及び内側層で挟んだ3層を少なくとも含む構造であってよい。マスク本体10を構成する各層は、不織布、織物、編物等の繊維含有層を含むことが好ましく、不織布を含むことがより好ましい。不織布としては、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、エアスルー不織布、ポイントボンド不織布等が挙げられる。また、中間層には、細い繊維を含み得るメルトブローン不織布が用いられることが好ましい。また、繊維含有層を構成する繊維は樹脂繊維であると好ましく、樹脂繊維の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。外側層及び内側層の目付は、15~50g/mであってよい。異物捕集性の高い中間層の目付は、10~100g/mであると好ましく、15~50g/mであるとより好ましい。
【0029】
一対の耳掛け部材20a、20aは、マスク本体10の外面の両側部(横方向D2の両端部)にそれぞれ結合されている。耳掛け部材20a、20aは、伸縮性を有する。本明細書において、「伸縮性を有する」とは、引っ張ること(引張力を加えること)によって引っ張られた方向の長さを大きくすることができ、引っ張ることをやめること(引張力を解除すること)によって、長さが元に戻るか又はほぼ元に戻る性質を有することを指す。さらに、「伸縮性」と言う場合、所定の力で引っ張った場合に材料がどの程度伸びるかという特性、及び/又は所定長さに伸長させた場合に材料にどの程度の引張応力が生じるかという特性を指す。
【0030】
なお、図1図3に示す例では、一対の耳掛け部材20a、20aはそれぞれ、補助材30、30を介してマスク本体10の両側部に結合されている。補助材30、30は、マスク1の縦方向D1に沿って延在するシート状の部材であってよい。そして、補助材30、30は、マスク本体10の横方向D2の両端部とそれぞれ、外側接合部50、50で接合されている。また、補助材30、30は、耳掛け部材シート20の横方向D2の両端部とそれぞれ、内側接合部60、60で接合されている。外側接合部50、50、及び内側接合部60、60はともに、ヒートシール、超音波シール、接着剤等の接合手段によって接合されていてよい。しかしながら、本形態では、補助材30とマスク本体10との外側接合部50のため、及び補助材30と耳掛け部材シート20との内側接合部60のためにそれぞれ最適な結合形式を選択でき、耳掛け部材シート20とマスク本体10とを直接接合させた場合に比べてより堅牢なマスク1が得られる。補助材30は伸縮性を有していてよいが、耳掛け部材シート20の伸縮性よりも小さいことが好ましい。
【0031】
(マスクの使用方法)
以下に、図1図3に示す本形態のマスク1の使用方法について説明する。本形態によるマスク1の使用を開始する際には、使用者は、マスク1の装着前に、一対の耳掛け部材20a、20a同士の分離可能な結合部28を解除して、耳掛け部材20a、20aを互いに分離させる。より具体的には、使用者は、一対の耳掛け部材20a、20aをそれぞれの手で摘まんで若しくは把持して、互いに反対方向に引張ることができる。これにより、まず、分離可能な結合部28の結合を解除できる。その後、耳掛け部材20a、20aのマスク本体10に接合されていない部分を横方向D2側方へ展開する。その際、使用者は、一対の耳掛け部材20a、20aをそれぞれ把持したまま、横方向D2外方へ(側方へ)それぞれ開くことができる。
【0032】
図4に、図1のマスク1の一対の耳掛け部材20a、20aを側方に展開した後の図を示す。また、図5に、図4のII-II線断面図を示す。図4及び図5に示すように、一対の耳掛け部材20a、20aを開くと、耳掛け部材20a、20aが裏返され、それまでマスク本体10に対向していた面が露出する。そして、マスク本体10の外面のほぼ全体も露出する。
【0033】
一対の耳掛け部材20a、20aは、マスク本体10の外面側に配置されていても、内面側に配置されていてもよいが、図1~5に示すようにマスク1の外面側に配置されていることが好ましい。一対の耳掛け部材20a、20aがマスク本体10の外面側に配置されていると、一対の耳掛け部材20a、20a同士の分離を解除して横方向D2外方へ開く際に、マスク本体10の内面に触れる可能性を低減できるか又はその可能性をなくすことができ、衛生的観点から好ましい。
【0034】
本形態によるマスク1は、実際には次のように使用できる。例えば、マスク本体10の外面を上にしてマスク1が置かれている状態で、使用者が一対の耳掛け部材20a、20aをそれぞれ手で把持して横方向D2外方へ開いた後、一対の耳掛け部材20a、20aを把持したままマスク1を他人(装着者)の顔へと移動させることができる。マスク本体10をその他人の顔の所望の位置へ配置した後、持ち方を変えることなく、一対の耳掛け部材20a、20aをそれぞれ、他人の耳に掛けることができる。よって、本形態によるマスク1は、例えば子供、病人等の、マスクを自らで装着することが困難である人にマスクを装着させる場合に、好適に使用することができる。
【0035】
さらに、図1に示すように、一対の耳掛け部材20a、20aには、一対の耳掛け部材20a、20aを互いに分離して横方向D2外方に開く際に使用者が摘まむことができる摘み部25、25が形成されていてよい。摘み部25、25は、平面視でマスク本体10の端縁から、好ましくはマスク1の下端(又はマスク本体10の下端)から突出していると好ましい。摘み部25、25がマスク本体10の端縁から突出していることで、マスク本体10自体に、すなわちマスク本体10の外面及び内面のどちらにも触れずに又はほとんど触れずに、使用者が両手で摘み部25、25を摘まむこともできる。そして、使用者は、マスク本体10に触れずに又はほとんど触れずに一対の耳掛け部材20a、20aを分離・展開させることができる。よって、使用者が手指の衛生に十分な配慮ができない状況であっても、良好な衛生状態のマスク1を自らに又は他人に装着できる。なお、摘み部25がマスク本体10の端縁から突出している場合、突出した部分の縦方向D1の最大の長さは、5~20mmであると好ましく、8~15mmであるとさらに好ましい。
【0036】
また、耳掛け部材20aが摘み部25、25を有することで、使用者は、耳掛け部材20aを装着者の耳に掛ける時又は掛けた後に、摘み部25、25を持って耳掛け部の調整を容易に行うこともできる。すなわち、摘み部25、25を持って、耳掛け部材20aを、耳に対して相対的に耳掛け部材20aの周方向にずらして位置調整を行うこと、或いは耳掛け部材20aを後側に向かって引っ張ったり緩めたりして耳掛け部材20aの張り具合を調整することが可能である。
【0037】
さらに、一対の耳掛け部材20a、20aがマスク本体10の内面(顔側の面)でなく、外面の両側部にそれぞれ結合されていることにより、マスク1の装着時、すなわち耳掛け部材20a、20aを側方に開いて耳に掛けている状態では(図4及び図5)、マスク本体10の両側部は、耳掛け部材20aによって外面側から顔に向かって押さえられる。これにより、マスク本体10の両側部においてマスク本体10と顔との隙間を小さくすることができ、マスクの機能、例えば異物を遮断する機能、装着者が発した飛沫を飛散させない機能等を向上できる。また、本体の両側部の内面側(顔側)に耳掛け部材20aが配置されていないことで、装着中に、マスク本体10の両側部において耳掛け部材20aが装着者の顔に直接接触しないため、違和感も低減される。
【0038】
なお、マスク本体10には、マスク本体10の外面及び内面の区別を可能にするマーク18を、エンボス加工、印刷、縫込み等によって形成してもよい。マーク18は、使用者が目視で認識できるものであれば、その形態は限定されない。マーク18は、図1等に示すように、文字であってもよいし、数字、記号、図形、ロゴ等であってもよい。
【0039】
(耳掛け部材)
図6に、図1のマスク1のうち、一対の耳掛け部材20a、20a(耳掛け部材シート20)のみを示す。上述のように、耳掛け部材20a(又は耳掛け部材シート20)は伸縮性を有するが、この耳掛け部材20aの伸縮性は、図6に示すように、環状シート状の耳掛け部材20aの全体にわたって、縦方向D1に離間して配置された複数の伸縮性紐材9、9、…によって得られている。複数の伸縮性紐材9、9、…はそれぞれ横方向D2に沿って延在しており、これにより、耳掛け部材20aの横方向D2の伸縮性を得ることができる。伸縮性紐材9、9、…の延在方向は、横方向D2に対して平行であることが好ましいが、横方向D2に対して略平行、すなわち横方向D2に対して±10°程度、好ましくは±5°程度傾斜した方向であってもよい。また、伸縮性紐材9、9、…の縦方向D1での配置間隔L(ピッチ)は、1~10mm程度であってよい。
【0040】
伸縮性紐材9は、例えば紐状又は糸状の弾性材料(糸ゴム等)であってよい。伸縮性紐材9の太さは、好ましくは200~1500dtex、より好ましくは400~1000dtexであってよい。また、伸縮性紐材9の断面の形状は円形であってよいが、楕円、正方形、長方形等の四角形、その他の多角形であってもよい。また、なお、伸縮性紐材9としては、伸長引張試験機によって測定される最大伸長率が自然長の150%~1000%となるような材料を用いることができる。
【0041】
図7に、図6のIII-III線断面の部分拡大図を、図8に、図6のIV-IV線断面(伸縮性紐材9の中心線を通る断面図)の部分拡大図を示す。図8(a)には、伸縮性紐材9が外力T、Tによって横方向D2外方に引っ張られている状態、図8(b)には、外力が掛かっていない状態(自然状態)を示す。なお、図8(a)は、耳掛け部材20aの製造工程において、伸縮性紐材9が伸長状態で第1表面材2と第2表面材3とに接着された状態を示す図でもある。また、図8(b)は、製造工程において、図8(a)に示す状態から、伸縮性紐材9の伸長を解除した(伸縮性紐材9の引張りをやめた)後の状態も示す。
【0042】
耳掛け部材20a(耳掛け部材シート20)の製造をより具体的に説明すると、伸縮性紐材9、9、…を所定の伸長率で伸長させた状態で、伸縮性紐材9の一方の側に第1表面材2を配置し、他方の側に第2表面材3を配置し、伸縮性紐材9を第1表面材2及び第2表面材3のそれぞれに、接着部6、6、…で間欠的に接着させる(図8(a))。ここで、所定の伸長率(自然状態の長さLnに対する伸長状態の長さLe、すなわちLe/Ln×100(%))は、好ましくは100~400%、より好ましくは150~300%であってよい。伸縮性紐材9と表面材2、3との接着は、接着剤、縫込み等によって形成できる。また、伸縮性紐材9が配置されていない部分においては、第1表面材2と第2表面材3とが直接接合されていてよい。
【0043】
上述の伸縮性紐材9と表面材2、3との接着後、伸縮性紐材9の伸長を解いて伸縮性紐材9を自然状態にすると、第1表面材2及び第2表面材3には柔軟性の高い材料が使用されているため、第1表面材2及び第2表面材3の、接着部6、6、…以外の部分は、伸縮性紐材9から離れる方向に盛り上がり、耳掛け部材20aには、縦方向D1に沿って延在する小さな皺が横方向D2に複数並んで形成される(図8(b))。このような複数の皺(ギャザー)を有する伸縮性シート状体の構成は、公知の伸縮性ギャザーと同様に形成することができる。耳掛け部材20aの実際の製造においては、複数の伸縮性紐材9、9、…が第1表面材2及び第2表面材3に挟まれてなる接合体が形成された後、一対の耳掛け部材20a、20aの形状に打ち抜くことができる。
【0044】
耳掛け部材20aの表面に上述のような多数の皺が形成されていることで、耳掛け部材20aの表面が肌に接した時、耳掛け部材20aの素材が肌の全面に接触するのではなく、耳掛け部材20aと肌との間に空間が形成されるので、肌にべったり張り付くような感覚を低減でき、装着感を向上させることができる。
【0045】
第1表面材2及び第2表面材3は柔軟性を有する材料であればよく、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1表面材2及び第2表面材3は、繊維構造体であると好ましい。繊維構造体としては、不織布、織物、編物等が挙げられ、このうち不織布は、肌触り、通気性が良く、装着感の向上に寄与するため、好ましい。不織布としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられる。このうち、毛羽立ちがなく、強度の高いスパンボンド不織布、柔らかさのあるエアスルー不織布等が好ましい。また、不織布に含まれる繊維は樹脂繊維であってよく、樹脂繊維の樹脂の種類として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等が挙げられる。第1表面材2又は第2表面材3が不織布である場合、不織布の目付は、好ましくは5~50g/m、より好ましくは8~25g/mであってよい。
【0046】
このように、本形態による耳掛け部材20aは、複数の伸縮性紐材9、9、…を用いて構成された伸縮性の部材である。そのため、伸縮性紐材9の伸縮性、すなわち所定の力で引っ張った場合に紐材がどの程度伸びるか、或いは所定長さに伸長させた場合に紐材にどの程度の引張応力が生じるかは、伸縮性紐材9の太さや材質を変更することで、容易に、また広範に調整できる。そのため、本形態による耳掛け部材20aの伸縮性の調整は、伸縮性不織布等を用いて構成された耳掛け部材と比べて、耳掛け部材20a又は耳掛け部材シート20の伸縮性の調整が容易である。よって、使用前の状態(自然状態)では短いが、マスク1装着時には長い長さを確保できる耳掛け部材20aが望まれている場合、例えば、伸縮性紐材9、9、…の製造時の伸長率(表面材に接着する時の伸縮性紐材の自然状態長さに対する長さ)を大きくすることで、引張り時に長く伸ばすことができる耳掛け部材20aを得ることができる。また、マスク本体10を顔により密着させたい場合には、例えば、太さの太い(dtex数の大きい)伸縮性紐材9、9、…を用いることで、耳掛け部材20aを引っ張った際により大きな引張応力が生じるようにでき、耳掛け部材20a、20aがマスク本体10を所定位置に押さえる機能を向上させることができる。また、伸縮性紐状9を特にゴム等の弾性素材で形成した場合には、伸縮性不織布等と比較して、顕著な伸縮性を実現できる。
【0047】
さらに、耳掛け部材20a、20a(耳掛け部材シート20)における複数の伸縮性紐材9、9、…の構成は、耳掛け部材20a、20a(耳掛け部材シート20)全体にわたって同じであってもよいし、耳掛け部材20a、20a(耳掛け部材シート20)の領域によって部分的に異ならせてもよい(後述)。その場合、例えば縦方向D1で見て、上方、中央、下方の領域で、伸縮性紐材9、9、…の太さ、製造時の伸長率、配置(間隔)等を異ならせてもよい。
【0048】
本形態による耳掛け部材20aは環状であり、好ましくは、図6に示すような四角環状、好ましくは矩形環状であってよい。四角環状は、環の周方向に沿って見た時、方向が大きく変わる位置が4つ認識される形状である。図6に示すように、1つの四角環状の耳掛け部材20aは、四角環の上辺に対応する上辺部23、及び四角環の下辺に対応する下辺部26を有していてよい。上辺部23及び下辺部26は、装着時に、主としてマスク本体10から耳へと横方向D2に伸ばされる部分である。さらに、耳掛け部材20aは、装着時に装着者の耳の後方に接して配置される耳後方配置部24と、その大部分がマスク本体10に接合される基部22とを有していてよい。耳後方配置部24は、耳掛け部材シート20における横方向D2の中央側で、上辺部23と下辺部26との間に縦方向D1に沿って延在する部分であり、基部22は、耳掛け部材シート20における横方向D2の端部側で、上辺部23と下辺部26との間に縦方向D1に沿って延在する部分である。
【0049】
そして、図6に示すように、耳掛け部材20aは、縦方向D1で見て、上辺部23に対応する上端部領域E1と、下辺部26に対応する下端部領E2と、上端部領域E1と下端部領域E2との間の中央領域Mを有していてよい。図6に示すような耳掛け部材20aの形状の場合、より具体的には、四角環の内周縁においては、曲率半径が極小となる4つの点(p1、p2、p1'、p2')があるので、そのうちの中央寄りにある2つの点(p1、p2)をそれぞれ通る横方向D2に平行な直線を引いた場合、その直線間の領域を中央領域Mとすることができる。すなわち、上側の第1点p1を通る直線を、上端部領域E1と中央領域Mとの境界線とし、下側の第2点p2を通る直線を、下端部領域E2と中央領域Mとの境界線とすることができる。
【0050】
(耳掛け部材の変形例)
図9に、変形例による耳掛け部材20aA、20aA(耳掛け部材シート20A)を示す。図9に示す耳掛け部材20aAの基本的な構成は、図6~8を参照して説明した耳掛け部材20aと同様であるが、耳掛け部材20aAにおいては、上端部領域E1及び下端部領域E2で使用されている伸縮性紐材9t、9t、…の太さが、中央領域Mで使用されている伸縮性紐材9、9、…の太さより大きくなっている。例えば、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の太さD(dtex)対する、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9t、9t、…の太さD(dtex)の比の値(D/D)は、好ましくは1.1~3とすることができる。また、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の太さDは200~900dtex、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9t、9t、…の太さDは220~1200dtexであってよい。
【0051】
図9に示す耳掛け部材20aAを横方向D2に引っ張った場合、上端部領域E1及び下端部領域E2では、中央領域Mよりも大きな引張応力が横方向D2で発生することになる。ここで、上端部領域E1及び下端部領域E2は、装着時に横方向D2に大きく引っ張られる上辺部23及び下辺部26にそれぞれ対応している。上辺部23及び下辺部26における引張応力が大きいと、上辺部23及び下辺部26がマスク本体10をより大きな力で引っ張ることができるので、マスク本体を顔の方向により強く抑えることができ、マスク本体を顔により密着させることができる。一方、中央領域Mでは、横方向D2にもある程度の伸縮性があることが好ましいが、伸縮性紐材9、9、…の太さが細い方が、耳後方配置部24を柔軟にでき、耳後方配置部24が耳の後方の肌に触れた際の違和感を低減できる。よって、図9に示す例によれば、マスクのフィット性、及び耳周りの快適さを求める装着者に好適な耳掛け部材、及びマスクを提供できる。
【0052】
図10に、別の変形例による耳掛け部材20aB、20aB(耳掛け部材シート20B)を示す。図10に示す耳掛け部材20aBの基本的な構成は、図6~8を参照して説明した耳掛け部材20aと同様であるが、耳掛け部材20aBにおいては、上端部領域E1及び下端部領域E2で使用されている伸縮性紐材9s、9s、…の伸長率が、中央領域Mで使用されている伸縮性紐材9、9、…の伸長率より大きくなっている。例えば、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の伸長率R(%)に対する、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9s、9s、…の伸長率R(%)の比の値(R/R)は、好ましくは1.1~2とすることができる。また、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の伸長率Rは100~300%、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9s、9s、…の伸長率Rは110~400%であってよい。
【0053】
上端部領域E1及び下端部領域E2において伸縮性紐材9、9、…の伸長率が高いということは、それらの領域を引張った時の最大長さが長いということである。よって、上端部領域E1及び下端部領域E2にそれぞれ対応する上辺部23及び下辺部26を大きく引き伸ばすことができるので、引張り力を受ける前の状態では横方向D2の長さが短くとも、装着時には長さを長く、マスク本体から耳までの距離が長い場合にも対応できる耳掛け部材が得られる。一方、中央領域Mに対応する耳後方配置部24にも、自然な変形ができるようある程度の伸縮性があることが好ましいが、伸長率が過度に大きくない方が、横方向D2長さが当たりの表面材の皺が過度に密に形成されない又は厚く形成されないため、耳に当たった時の感触が向上する。よって、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の伸長率が比較的低いことで、耳周りでの感触が快適になる。なお、図10には、第1表面材2の縦方向D1に延びる皺の例を模式的に図示する。図10に示すように、上端部領域E1及び下端部領域E2においては表面材の皺同士の横方向D2のピッチは小さく、皺が密集して形成されている一方、中央領域Mにおいては表面材の皺同士の横方向D2のピッチはより大きく、皺が疎らに形成されている。よって、図10に示す例では、マスク本体の横方向D2の端部から耳までの長さが長い条件、及び耳周りの快適さを求める装着者に好適なマスクを提供できる。
【0054】
図11に、さらに別の変形例による耳掛け部材20aC、20aC(耳掛け部材シート20C)を示す。図11に示す耳掛け部材20aCの基本的な構成は、図6~8を参照して説明した耳掛け部材20aと同様であり、耳掛け部材20aC全体にわたって、縦方向D1に離間して横方向D2延在する複数の伸縮性紐材9、9、…が設けられているが、耳掛け部材20aCにおいては、上端部領域E1及び下端部領域E2における伸縮性紐材9、9、…の配置間隔(ピッチ)が、中央領域Mにおける配置間隔よりも小さくなっている。例えば、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の配置間隔Lに対する、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9、9、…の配置間隔Lの比の値(L/L)は、好ましくは1.1~2とすることができる。また、中央領域Mにおける伸縮性紐材9、9、…の配置間隔Lは1.1~10mm、上端部領域E1及び/又は下端部領域E1における伸縮性紐材9、9、…の配置間隔Lは1~5mmであってよい。
【0055】
端部領域E1及び下端部領域E2において伸縮性紐材9、9、…の配置間隔が小さいと、伸縮性紐材9、9、…の数がより密集していることになる。よって、これらの領域、及びこれらの領域にそれぞれ対応する上辺部23及び下辺部26を横方向D2に引張った時に発生する引張応力は、中央領域Mで発生する引張応力より大きくなる。上辺部23及び下辺部26における引張応力が大きいと、上辺部23及び下辺部26がマスク本体10をより大きな力で引っ張ることができるので、マスク本体を顔の方向により強く抑えることができ、マスク本体を顔により密着させることができる。一方、中央領域Mでは、横方向D2にもある程度の伸縮性があることが好ましいが、伸縮性紐材9、9、…が領域内に密集していない方が耳後方配置部24を柔軟にでき、装着時の耳周りの違和感を低減できる。よって、図11に示す例によれば、マスクのフィット性、及び耳周りの快適さを求める装着者に好適な耳掛け部材、及びマスクを提供できる。
【0056】
図12に、伸縮性紐材の変形例を示す。図12に示す伸縮性紐材9w、9w、…は、横方向D2に沿って直線状に延びているのではなく、縦方向D1に振幅を有する波の形状になっている。図12(a)には、引張力が掛かっていない状態の平面図を示し、図12(b)には、横方向D2で両側から引張られた状態の平面図を示す。波状の伸縮性紐材9w、9w、…は、横方向D2で両側から引張力を受けると、伸縮性紐材9w自体が横方向D2に伸長するとともに、縦方方向D1の波形状の振幅が小さくなって、より直線に近付く(図12(b))。すなわち、波状の伸縮性紐材9w、9w、…が横方向D2に延在して配置された材料は、横方向D2に引っ張られた場合に、横方向D2の長さが長くなるとともに、縦方向D1の長さが短くなり、その分の材料が横方向D2の伸長に寄与する。よって、波状の伸縮性紐材9w、9w、…を含む耳掛け部材は、同じ引張力を受けた条件で、直線状の伸縮性紐材9、9、…を含む耳掛け部材(図6等)と比較した場合、横方向D2により長く伸長できる(伸長性が高い)。言い換えると、波状の伸縮性紐材9w、9w、…を含む耳掛け部材の場合、伸長度合いが同じであっても発生する応力が小さい。そのため、図12に示す伸縮性紐材9w、9w、…を含む耳掛け部材を用いることで、マスク本体が顔に過度に押し付けられること、また耳掛け部材が耳に押し付けられることを避けたい装着者に好適なマスクを提供できる。
【0057】
以上においては、マスク本体と一対の耳掛け部材とが補助材を介して接合されている形態について説明したが、マスクは、補助材のない構成とすることもできる。図13に、補助材なしで構成されたマスク101を示す。マスク101では、一対の耳掛け部材20a、20aがそれぞれ、マスク本体10の横方向D2の端部に、接合部70、70で直接接合されている。接合部70、70は、マスク1(図1図5)における外側接合部50、50、内側接合部60、60と同様の接合手段によって形成できる。
【0058】
なお、図面を参照しながら説明した上記の例及び形態の特徴は、それぞれ単独で構成に含めることができるし、該特徴の2以上を組み合わせて構成に含めることができる。例えば、上端部領域E1及び下端部領域E2において伸縮性紐材の太さ及び伸長率を変更した形態の耳掛け部材を構成することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1 マスク
2 第1表面材
3 第2表面材
6 接着部
9、9t、9s、9w 伸縮性紐材
10 マスク本体
15 プリーツ
18 マーク
20 耳掛け部材シート
20a 耳掛け部材
22 基部
23 上辺部
24 耳後方配置部
25 摘み部
26 下辺部
28 分離可能な結合部
29 開口
30 補助材
50 外側接合部
60 内側接合部
70 接合部
D1 第1方向(上下方向、縦方向)
D2 第2方向(左右方向、横方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13