(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149161
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20220929BHJP
H02K 24/00 20060101ALI20220929BHJP
H02K 11/225 20160101ALI20220929BHJP
H02K 9/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K3/24 J
H02K24/00
H02K11/225
H02K9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051184
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】角戸 弘輝
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 祐貴
【テーマコード(参考)】
5H603
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H603AA12
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC17
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP16
5H609QQ02
5H609QQ10
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB07
5H611BB08
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR01
5H611UA01
(57)【要約】
【課題】温度上昇をより抑制することが可能なモータが提供されること。
【解決手段】モータは、回転可能なシャフトと、シャフトと共に回転可能なモータ磁石と、モータコイルを含む回転不能なモータステータと、径方向内側から径方向外側に向けて延び、且つ、シャフトと共に回転可能な位置検出器用支持部材と、位置検出器用支持部材に設けられる、回転可能な検出用ロータと、検出用ロータの内周側に配置され、且つ、回転不能な検出用ステータと、を有する位置検出器と、ハウジングと、を備える。検出用ロータは、軸方向から見た場合にモータコイルと重なる位置に配置され、検出用ステータは、軸方向から見た場合にモータ磁石と重なる位置に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸の軸方向に延び、且つ、前記中心軸の軸回り方向に回転可能なシャフトと、
前記シャフトの外周側に配置され、且つ、前記シャフトと共に回転可能なモータ磁石と、
前記モータ磁石の外周側に対向配置され、且つ、モータコイルを含む回転不能なモータステータと、
軸方向から見た場合に前記モータコイルと重なる位置まで径方向内側から径方向外側に向けて延び、且つ、前記シャフトと共に回転可能な位置検出器用支持部材と、
前記位置検出器用支持部材に設けられ、且つ、前記シャフトと共に回転可能な検出用ロータと、前記検出用ロータの内周側に配置され、且つ、回転不能な検出用ステータと、を有する位置検出器と、
前記モータ磁石、前記モータステータ、前記位置検出器用支持部材および前記位置検出器を内方に収容するハウジングと、を備え、
前記検出用ロータは、前記モータコイルの軸方向の一方側に配置され、且つ、軸方向から見た場合に前記モータコイルと重なる位置に配置され、
前記検出用ステータは、軸方向から見た場合に前記モータ磁石と重なる位置に配置される、
モータ。
【請求項2】
前記ハウジングは、ロアハウジングと、前記ロアハウジングの軸方向の一方側に位置するアッパハウジングと、を備え、
前記アッパハウジングは、前記検出用ロータと前記検出用ステータとを軸方向の一方側から覆うように径方向外側から径方向内側に延び、
前記アッパハウジングに前記検出用ステータが取り付けられる、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記位置検出器用支持部材は、
前記位置検出器と、前記モータ磁石および前記モータステータと、の間に配置される、
請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記アッパハウジングは、軸受の外輪に連結され、
前記シャフトは、前記軸受の内輪に連結されることにより、
前記シャフトは、回転可能に設けられる、
請求項2に記載のモータ。
【請求項5】
前記位置検出器用支持部材は、前記シャフトの外周から径方向外側に向けて延びる第1部位と、前記第1部位から軸方向の一方側に延びる第2部位と、前記第2部位から径方向外側に向けて延びる第3部位と、を有し、
前記検出用ロータは、前記第3部位に固定される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ハウジングには、貫通孔が設けられ、当該貫通孔には、吸引装置が接続可能な吸引用継手が嵌合される、
請求項1から5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記位置検出器用支持部材は、非磁性体である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
前記シャフトは、径方向外側に突出し、且つ、前記モータ磁石が取り付けられる突出部を有し、
前記突出部の軸方向の一方側には、凹溝が設けられ、
前記中心軸を含む断面において、前記凹溝には、前記シャフトの回転時のバランスを調整するバランサーが収容され、前記凹溝は、前記位置検出器用支持部材で覆われる、
請求項1から7のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項9】
前記検出用ステータと前記検出用ロータとは、径方向に対向して配置される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項10】
前記検出用ステータと前記検出用ロータとは、軸方向に対向して配置される、
請求項1から8のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
径方向の中央に回転シャフトが配置されるインナーロータ型モータが公知である(特許文献1参照)。特許文献1のモータでは、回転シャフトの外周側にステータ(固定子)が配置され、ステータの外周側にロータ(回転子)が配置される。ステータは、コイル(巻線)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したステータのコイルに電流が流れることによってコイルが発熱し、ひいてはモータの温度が上昇する。モータは、温度上昇によって回転トルクが低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、温度上昇をより抑制することが可能なモータが提供されることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、一態様に係るモータは、中心軸の軸方向に延び、且つ、前記中心軸の軸回り方向に回転可能なシャフトと、前記シャフトの外周側に配置され、且つ、前記シャフトと共に回転可能なモータ磁石と、前記モータ磁石の外周側に対向配置され、且つ、モータコイルを含む回転不能なモータステータと、軸方向から見た場合に前記モータコイルと重なる位置まで径方向内側から径方向外側に向けて延び、且つ、前記シャフトと共に回転可能な位置検出器用支持部材と、前記位置検出器用支持部材に設けられ、且つ、前記シャフトと共に回転可能な検出用ロータと、前記検出用ロータの内周側に配置され、且つ、回転不能な検出用ステータと、を有する位置検出器と、前記モータ磁石、前記モータステータ、前記位置検出器用支持部材および前記位置検出器を内方に収容するハウジングと、を備え、前記検出用ロータは、前記モータコイルの軸方向の一方側に配置され、且つ、軸方向から見た場合に前記モータコイルと重なる位置に配置され、前記検出用ステータは、軸方向から見た場合に前記モータ磁石と重なる位置に配置される。
【0007】
このように、本開示のモータは、回転可能なモータ磁石の外周側に回転不能なモータステータが配置され、回転不能な検出用ステータの外周側に回転可能な検出用ロータが配置される。また、軸方向から見た場合に、モータコイルと検出用ロータとが重なり、モータ磁石と検出用ステータとが重なる。従って、検出用ロータが位置検出器用支持部材と共に回転することにより、ハウジングの内方の空気が攪乱されて空気が乱流になる。この空気は、モータコイルに当たるため、モータコイルが冷却される。このように、モータコイルが冷却されることにより、モータの定格トルクの向上が可能となる。
【0008】
本開示のモータと比較して、回転可能なモータ磁石の外周側に回転不能なモータステータが配置され、回転可能な検出用ロータの外周側に回転不能な検出用ステータが配置される比較例のモータでは、回転不能なモータステータの軸方向の一方側には、回転不能な検出用ステータが配置される。このため、比較例のモータにおいては、検出用ロータの回転による空気の攪乱による乱流がモータコイルに当たりにくく、モータコイルが冷却されにくいため、本開示のモータに対して、モータの定格トルクの向上を図ることが困難である。また、本開示のモータにおいては、ハウジングの内方の空気が攪乱されて空気が乱流になるため、モータ全体の温度上昇を抑制することにより、モータのトルク低下を抑制することが可能となる。これに対して、前述した比較例のモータにおいては、検出用ロータの回転による空気の攪乱による乱流が発生しにくいため、モータ全体の温度上昇を抑制することが困難であり、モータのトルク低下を抑制しにくい。
【0009】
望ましい態様として、前記ハウジングは、ロアハウジングと、前記ロアハウジングの軸方向の一方側に位置するアッパハウジングと、を備え、前記アッパハウジングは、前記検出用ロータと前記検出用ステータとを軸方向の一方側から覆うように径方向外側から径方向内側に延び、前記アッパハウジングに前記検出用ステータが取り付けられる。従って、アッパハウジングという簡単な構成によって、モータ磁石の外周側にモータステータが配置され、検出用ステータの外周側に検出用ロータが配置されるという構成を成立させることが可能となる。
【0010】
望ましい態様として、前記位置検出器用支持部材は、前記位置検出器と、前記モータ磁石および前記モータステータと、の間に配置される。このため、位置検出器用支持部材の回転が、位置検出器、モータ磁石およびモータステータによって阻害されにくい。即ち、中心軸を含む断面において、位置検出器用支持部材が、例えば、モータ磁石やモータステータと重なる位置に配置される場合には、位置検出器用支持部材が回転すると、モータ磁石やモータステータに干渉するおそれがある。従って、位置検出器と、モータ磁石およびモータステータと、の間に位置検出器用支持部材を配置することにより、位置検出器用支持部材が回転してもモータ磁石やモータステータと干渉しなくなる。
【0011】
望ましい態様として、前記アッパハウジングは、軸受の外輪に連結され、前記シャフトは、前記軸受の内輪に連結されることにより、前記シャフトは、回転可能に設けられる。これにより、簡単な構造で、シャフトを回転可能にすることが可能となる。
【0012】
望ましい態様として、前記位置検出器用支持部材は、前記シャフトの外周から径方向外側に向けて延びる第1部位と、前記第1部位から軸方向の一方側に延びる第2部位と、前記第2部位から径方向外側に向けて延びる第3部位と、を有し、前記検出用ロータは、前記第3部位に固定される。
【0013】
検出用ステータは軸方向に延びているため、位置検出器用支持部材を径方向に沿って延びる平坦形状に形成する場合、検出用ステータの位置を、本開示よりも、軸方向の一方側に寄せて配置する必要がある。よって、この場合、モータの軸方向高さがより大きくなる。従って、本開示では、位置検出器用支持部材を径方向に沿った平坦形状に形成する場合よりも、モータの軸方向高さがより小さくなる。
【0014】
望ましい態様として、前記ハウジングには、貫通孔が設けられ、当該貫通孔には、吸引装置が接続可能な吸引用継手が嵌合される。このように、ハウジングの外部から内部の空気を吸引することにより、モータ内の空気を排出することができる。従って、モータの温度上昇を更に抑制し、モータのトルクの低下を更に抑制することが可能となる。
【0015】
望ましい態様として、前記位置検出器用支持部材は、非磁性体である。これにより、位置検出器に対するモータ磁石の磁束の影響を小さくすることができ、モータの誤作動等を抑制することが可能となる。
【0016】
望ましい態様として、前記シャフトは、径方向外側に突出し、且つ、前記モータ磁石が取り付けられる突出部を有し、前記突出部の軸方向の一方側には、凹溝が設けられ、前記中心軸を含む断面において、前記凹溝には、前記シャフトの回転時のバランスを調整するバランサーが収容され、前記凹溝は、前記位置検出器用支持部材で覆われる。
【0017】
突出部はシャフトと共に回転するため、バランサーが飛散しやすい。従って、凹溝が位置検出器用支持部材で覆われることによって、バランサーの飛散を抑制することが可能となる。
【0018】
望ましい態様として、前記検出用ステータと前記検出用ロータとは、径方向に対向して配置される。このため、検出用ロータがより径方向外側に配置されるので、検出用ロータの回転による空気の攪乱による乱流がより生じやすい。
【0019】
望ましい態様として、前記検出用ステータと前記検出用ロータとは、軸方向に対向して配置される。このようなアキシャルギャップ型の位置検出器によっても、ハウジングの内部の空気は、検出用ロータを取り付けた位置検出器用支持部材の回転によって攪拌されて乱流を起こす。従って、モータステータのモータコイルを冷却して、モータの温度上昇を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、温度上昇をより抑制することが可能なモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
図2は、
図1の一部を拡大した断面図である。
図1および
図2に示すように、第1実施形態に係るモータ1は、減速機構(例えば、減速ギヤ、伝動ベルトなど)を介在させることなくロータに回転力をダイレクトに伝達し、当該ロータを回転させることができる。本実施形態では、インナーロータ型のモータ1を適用する。
【0024】
モータ1は、ハウジング2と、モータステータ3と、位置検出器4と、位置検出器用支持部材5と、ロータ6と、シャフト7と、を備える。モータ1は、中心軸Axを中心とする円環状の形状を有する。実施形態では、中心軸Axに沿った軸方向の一方側を上側として図面ではUPと示す。また、軸方向の他方側を下側として図面ではLWと示す。ただし、モータ1は、中心軸Axが上下方向に沿って配置される態様に限定されない。
【0025】
ハウジング2は、ロアハウジング21と、アッパハウジング22、23と、を備える。ロアハウジング21の内方には収容部24が設けられ、アッパハウジング22の内方には収容部25が設けられる。収容部24には、モータステータ3が収容される。収容部25には、位置検出器4が収容される。ハウジング2は、中心軸Axを中心とする円環状の形状を有する。ハウジング2の材質は、例えばアルミニウムが適用可能である。アルミニウムによって、ハウジング2の放熱性が高くなる。
【0026】
ロアハウジング21は、底板211と、内周側板212と、外周側板213と、を備える。底板211は、中心軸Axに直交する径方向に延びる。底板211の内周側の端部には、軸方向の一方側である上側UPに向けて突出する内周側板212が設けられる。底板211の外周側の端部には、上側UPに向けて突出する外周側板213が設けられる。外周側板213の軸方向の高さ(上下方向の高さ)は、内周側板212の軸方向の高さよりも高い。
【0027】
アッパハウジング22は、外周部221と、連結部222と、内周部223と、を備える。アッパハウジング22は、ロアハウジング21の上部開口を覆う蓋状部材である。外周部221の外周端部は、ロアハウジング21の外周側板213の上部の窪み213aに嵌合され、ボルト110を介して外周側板213の上部に固定されている。連結部222は、外周部221の内周側から上側に向けて延びている。連結部222の上端部から径方向内側に向けて、即ち、中心軸Axに近づく方向に向けて内周部223が延びている。
【0028】
アッパハウジング23は、内周部231と、連結部232と、外周部233と、を有する。内周部231は、軸方向(
図1の上下方向)に延びる。内周部231の上端には、ボルト114を介して、アッパハウジング22の内周部223の内周端部が固定されている。内周部231の下端から径方向外側に向けて連結部232が延びている。連結部232の径方向外側端から軸方向の他方側(
図1の下側LW)に向けて外周部233が延びている。
【0029】
シャフト7は、軸方向(
図1の上下方向)に延びる。シャフト7は、円筒部71と、突出部72と、を有する。円筒部71は、軸方向に延びる円筒部材である。円筒部71の内方には、貫通孔70が設けられる。貫通孔70は、円筒部71を軸方向に貫通する。円筒部71は、小径部711と、大径部712と、を有する。大径部712の外径は、小径部711の外径よりも大きいため、大径部712の上面は露出される。なお、シャフト7の上端面には、搭載物取付用穴120、121が設けられ、シャフト7の下端面には、搭載物取付用穴122、123が設けられる。搭載物取付用穴120、121、122、123には、ボルトが噛み合い可能であり、例えばアームなどの搭載物がボルトを介して搭載物取付用穴120、121、122、123に取り付けられる。従って、本実施形態のモータ1では、シャフト7の軸方向の一方側(上側)と他方側(下側)との両側に、搭載物が取付可能である。
【0030】
突出部72は、円筒部71の外周面から径方向外側に向けて突出する円環状の部材である。突出部72の上面には、凹溝73が設けられる。凹溝73は、周方向に延びる。凹溝73は、中心軸Axを含む断面において矩形形状を有する。凹溝73には、バランサー74が収納される。バランサー74は、シャフト7が回転する際のバランスを調整する。バランサー74は、例えばエポキシ樹脂である。突出部72の外周側には、ロータ6のモータ磁石61が固定される。モータ磁石61は、例えば接着によって突出部72に固定される。モータ磁石61は、中心軸Axを中心とする円環形状である。
【0031】
ここで、軸受100は、内輪101と、外輪103と、転動体102と、を有する深溝玉軸受である。内輪101と外輪103とは、球状の転動体102を介して、相対回転が可能である。本実施形態では、上側と下側にそれぞれ軸受100が設けられる。上側の軸受100における内輪101は、大径部712の上面に載置される。また、外輪103の上面とアッパハウジング23の内周部231および連結部232の下面との間には、円環状のスペーサ45とウェーブワッシャ(波ワッシャ)44とが挟持される。ウェーブワッシャ(波ワッシャ)44は、軸方向(上下方向)の圧縮荷重によって縮んで与圧予圧が加えられているため、外輪103はウェーブワッシャ44の与圧(弾性力)によって軸方向に固定される。これにより、上側の軸受100は、シャフト7の軸方向中央部をアッパハウジング23に対して回転可能に支持する。また、下側の軸受100における内輪101は、シャフト7の外周に固定され、外輪103は底板211および内周側板212に固定される。従って、下側の軸受100は、シャフト7の軸方向の他方側の端部(下側LWの端部)をロアハウジング21の下端部に対して回転可能に支持する。
【0032】
位置検出器用支持部材5は、シャフト7の円筒部71からアッパハウジング22の外周部221近傍まで径方向に延びる。位置検出器用支持部材5は、非磁性体で構成され、非磁性体として、例えばアルミニウムやステンレスが適用可能である。また、位置検出器用支持部材5は、中心軸Axを中心とする円環形状を有し、ロアハウジング21の上部開口を覆うように配置される。位置検出器用支持部材5は、中心軸Axを含む断面において、2つのL字部材を連結させた形状を有する。具体的には、位置検出器用支持部材5は、第1部位51と、第2部位52と、第3部位53と、第4部位54と、を有する。第1部位51は、径方向外側に向けて延びる。第1部位51は、ボルト113を介して突出部72の上部に固定される。突出部72には、凹溝73が設けられるため、第1部位51によって凹溝73の上側UPが封止される。第2部位52は、第1部位51における径方向の外側端から軸方向の一方側(上側UP)に向けて延びる。第3部位53は、第2部位52における軸方向の一方側の端(上側UPの端)から径方向外側に向けて延びる。第4部位54は、第3部位53における径方向の外側端から軸方向の一方側(上側UP)に向けて延びる。第4部位54は、アッパハウジング22の外周部221の内周面に近接して配置される。第4部位54は、外周部221の内周面に対向して配置される。
【0033】
位置検出器4は、回転センサとも称され、モータ1の回転状態(例えば、回転角度)を検出する。位置検出器として様々な仕様が適用可能であるが、第1実施形態の位置検出器4は、ラジアルギャップ型のレゾルバを一例として説明する。位置検出器4により、シャフト7に取り付けられた各種ワークなどの搭載物を所定角度だけ正確に回転させ、目標位置に高精度に位置決めすることが可能となる。位置検出器4は、レゾルバステータ(検出用ステータ)41と、レゾルバロータ(検出用ロータ)42と、を備える。レゾルバステータ41およびレゾルバロータ42は、中心軸Axを中心とする円環形状を有する。レゾルバステータ41は、アッパハウジング23の連結部232の上面にボルト112を介して固定される。レゾルバステータ41は、巻線部411を有する。レゾルバロータ42は、位置検出器用支持部材5の第3部位53の上面にスペーサ43を介して載置される。レゾルバロータ42は、位置検出器用支持部材5の第4部位54の内周面に近接して配置される。レゾルバロータ42は、スペーサ43の上に載置された状態で、ボルト111を介して第3部位53に固定される。レゾルバロータ42は、モータ磁石61よりも径方向外側に配置される。レゾルバステータ41およびレゾルバロータ42は、軸方向(上下方向)の位置が略同一であり、径方向で対向して配置される。
【0034】
さらに、アッパハウジング22には、位置検出器の配線用穴130、131が設けられる。配線用穴130は、レゾルバステータ41の巻線部411に径方向で対向して配置される。配線用穴130は、アッパハウジング22の内周部223を軸方向に貫通する。配線用穴131は、アッパハウジング22の外周部221および連結部222を軸方向に貫通する。
【0035】
モータステータ3は、ステータコア(鉄心)31と、モータコイル32と、を有する。ステータコア31は、例えば、打ち抜き加工により成形された1枚の円環状の電磁鋼板、冷間圧延鋼板等の薄板を軸方向に複数に重ねて構成される。モータコイル32は、ステータコア31に巻回されている。ステータコア31とモータ磁石61とは、軸方向の位置が略同一である。ステータコア31は、モータ磁石61と径方向で対向して配置される。レゾルバロータ42は、軸方向から見た場合に、モータコイル32と重なって配置されている。また、位置検出器4は、モータコイル32の軸方向の一方側に配置される。
【0036】
以上のように、モータ1における回転部分は、シャフト7、モータ磁石61を含むロータ6、位置検出器用支持部材5、およびレゾルバロータ42である。また、モータ1における回転不能部分は、ハウジング2、モータコイル32を含むモータステータ3、およびレゾルバステータ41である。モータ1における回転部分は、回転不能部分に対して、上下2つの軸受100を介して回転可能である。
【0037】
以上説明したように、モータ1は、中心軸Axの軸回り方向に回転可能なシャフト7と、シャフト7の外周側に配置され、且つ、シャフト7と共に回転可能なモータ磁石61と、モータ磁石61の外周側に対向配置され、且つ、モータコイル32を含む回転不能なモータステータ3と、軸方向から見た場合にモータコイル32と重なる位置まで径方向内側から径方向外側に向けて延び、且つ、シャフト7と共に回転可能な位置検出器用支持部材5と、位置検出器用支持部材5に設けられ、且つ、シャフト7と共に回転可能なレゾルバロータ(検出用ロータ)42と、レゾルバロータ(検出用ロータ)42の内周側に配置され、且つ、回転不能なレゾルバステータ(検出用ステータ)41と、を有する位置検出器4と、モータ磁石61、モータステータ3、位置検出器用支持部材5および位置検出器4を内方に収容するハウジング2と、を備える。レゾルバロータ(検出用ロータ)42は、モータコイル32の軸方向の一方側に配置され、且つ、軸方向から見た場合にモータコイル32と重なる位置に配置される。レゾルバステータ(検出用ステータ)41は、軸方向から見た場合にモータ磁石61と重なる位置に配置される。
【0038】
このように、回転可能なモータ磁石61の外周側に回転不能なモータステータ3が配置され、回転不能なレゾルバステータ(検出用ステータ)41の外周側に回転可能なレゾルバロータ(検出用ロータ)42が配置される。また、軸方向から見た場合に、モータコイル32とレゾルバロータ(検出用ロータ)42とが重なり、モータ磁石61とレゾルバステータ(検出用ステータ)41とが重なる。従って、レゾルバロータ(検出用ロータ)42が位置検出器用支持部材5と共に回転することにより、ハウジング2の内方の空気が攪乱されて空気が乱流になる。この空気は、モータコイル32に当たるため、モータコイル32が冷却される。このように、モータコイル32が冷却されることにより、モータ1の定格トルクの向上が可能となる。
【0039】
なお、従来は、回転可能なモータ磁石の外周側に回転不能なモータステータが配置され、回転可能なレゾルバロータ(検出用ロータ)の外周側に回転不能なレゾルバステータ(検出用ステータ)が配置される。即ち、回転不能なモータステータの軸方向の一方側には、回転不能なレゾルバステータ(検出用ステータ)が配置されるため、レゾルバロータ(検出用ロータ)の回転による空気の攪乱による乱流がモータコイルに当たりにくいためにモータコイルが冷却されにくい。このため、従来のモータにおいては、レゾルバロータ(検出用ロータ)の回転による空気の攪乱による乱流がモータコイルに当たりにくく、モータコイルが冷却されにくいため、本開示のモータに対して、モータの定格トルクの向上を図ることが困難である。また、本開示のモータ1においては、ハウジング2の内方の空気が攪乱されて空気が乱流になるため、モータ1全体の温度上昇を抑制することにより、モータ1のトルク低下を抑制することが可能となる。これに対して、前述した従来のモータにおいては、レゾルバロータ(検出用ロータ)の回転による空気の攪乱による乱流が発生しにくいため、モータ全体の温度上昇を抑制することが困難であり、モータのトルク低下を抑制しにくい。
【0040】
ハウジング2は、ロアハウジング21と、ロアハウジング21の軸方向の一方側に位置するアッパハウジング22、23と、を備える。アッパハウジング22、23は、レゾルバロータ(検出用ロータ)42とレゾルバステータ(検出用ステータ)41とを軸方向の一方側から覆うように径方向外側から径方向内側に延びる。アッパハウジング23にレゾルバステータ(検出用ステータ)41が取り付けられる。
【0041】
従って、アッパハウジング22、23という簡単な構成によって、モータ磁石61の外周側にモータステータ3が配置され、レゾルバステータ(検出用ステータ)41の外周側にレゾルバロータ(検出用ロータ)42が配置されるという構成を成立させることが可能となる。
【0042】
位置検出器用支持部材5は、位置検出器4と、モータ磁石61およびモータステータ3と、の間に配置される。このため、位置検出器用支持部材5の回転が、位置検出器4、モータ磁石61およびモータステータ3によって阻害されにくい。即ち、
図1および
図2の断面図において、位置検出器用支持部材5が、例えば、モータ磁石61やモータステータ3と重なる位置に配置される場合には、位置検出器用支持部材5が回転すると、モータ磁石61やモータステータ3に干渉するおれがある。従って、位置検出器4と、モータ磁石61およびモータステータ3と、の間に位置検出器用支持部材5を配置することにより、位置検出器用支持部材5が回転してもモータ磁石61やモータステータ3と干渉しなくなる。
【0043】
アッパハウジング23は、軸受100の外輪103に連結され、シャフト7は、軸受100の内輪101に連結されることにより、シャフト7は、回転可能に設けられる。これにより、簡単な構造で、シャフト7を回転可能にすることが可能となる。
【0044】
位置検出器用支持部材5は、シャフト7の外周から径方向外側に向けて延びる第1部位51と、第1部位51から軸方向の一方側に延びる第2部位52と、第2部位52から径方向外側に向けて延びる第3部位53と、を有し、レゾルバロータ(検出用ロータ)42は、第3部位53に固定される。位置検出器用支持部材を径方向に沿った平坦形状に形成すると、本開示の位置検出器用支持部材5に対して、レゾルバステータ(検出用ステータ)41の位置を軸方向の一方側に寄せて配置する必要があるため、モータの軸方向高さがより大きくなる。従って、本開示では、モータ1の軸方向高さがより小さくなる。
【0045】
位置検出器用支持部材5は、非磁性体であるため、位置検出器4に対するモータ磁石61の磁束の影響を小さくすることができ、モータ1の誤作動等を抑制することが可能となる。非磁性体としては、例えば慣性モーメントを小さくするためにアルミニウムが好ましく、非磁性体であればステンレスも適用可能である。
【0046】
シャフト7は、径方向外側に突出し、且つ、モータ磁石61が取り付けられる突出部72を有し、突出部72の軸方向の一方側には、凹溝73が設けられ、中心軸Axを含む断面において、凹溝73には、シャフト7の回転時のバランスを調整するバランサー74が収容され、凹溝73は、位置検出器用支持部材5で覆われる。突出部72はシャフト7と共に回転するため、バランサー74が飛散しやすい。従って、凹溝73が位置検出器用支持部材5で覆われることによって、バランサー74の飛散を抑制することが可能となる。
【0047】
レゾルバステータ(検出用ステータ)41とレゾルバロータ(検出用ロータ)42とは、径方向に対向して配置される。このため、レゾルバロータ(検出用ロータ)42がより径方向外側に配置されるので、レゾルバロータ(検出用ロータ)の回転による空気の攪乱による乱流がより生じやすい。
【0048】
[第2実施形態]
次いで、第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態と同一構成の部位には同一の符号を付けて説明を省略する。
図3は、第2実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【0049】
第2実施形態に係るモータ1Aは、第1実施形態に係るモータ1に対して、吸引用継手300を備える点が相違する。
【0050】
図3に示すように、ロアハウジング21の外周側板213には、径方向に貫通する貫通孔213bが設けられる。貫通孔213bは、軸方向で、モータステータ3のモータコイル32に対向して配置される。貫通孔213bにおける径方向外側の端部には、吸引用継手300が嵌合されている。吸引用継手300には、図外の吸引装置が接続可能である。吸引装置は、例えば、吸引用継手300に接続されるホースと、ホースに接続される吸引ポンプと、を備える。吸引ポンプを稼働させることにより、ホースおよび吸引用継手300を介して、ハウジング2の内方の空気をハウジング2の外方に排出することが可能である。
【0051】
以上説明したように、ロアハウジング21には、貫通孔213bが設けられ、貫通孔213bには、吸引装置が接続可能な吸引用継手300が嵌合される。このように、ハウジング2の外部から内部の空気を吸引することにより、モータ1A内の高温の空気を排出することができる。従って、モータ1Aの温度上昇を更に抑制し、モータ1Aのトルクの低下を更に抑制することが可能となる。
【0052】
[第3実施形態]
次いで、第3実施形態について説明するが、前述した第1および第2実施形態と同一構成の部位には同一の符号を付けて説明を省略する。
図4は、第3実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
図5は、
図4の一部を拡大した断面図である。
【0053】
第3実施形態に係るモータ1Bは、第1および第2実施形態に係るモータ1に対して、位置検出器4Aおよびアッパハウジング23Aが相違する。
【0054】
図4および
図5に示すように、アッパハウジング23Aは、内周部231Aと、連結部232Aと、外周部233Aと、を有する。連結部232Aは、第1および第2実施形態に係る連結部232よりも軸方向の長さが長く形成されている。
【0055】
第3実施形態の位置検出器4Aは、アキシャルギャップ型の位置検出器であり、多極に着磁された位置検出器用磁石421Aと磁束検出用素子412Aを有する。位置検出器4Aは、ステータ41Aと、ロータ42Aと、を備える。ステータ41Aおよびロータ42Aは、中心軸Axを中心とする円板形状を有する。ステータ41Aは、基板411Aと、磁束検出用素子412Aと、を有する。基板411Aは、アッパハウジング23Aの連結部232Aの上面にボルト112を介して固定される。磁束検出用素子412Aは、基板411Aの径方向外側の端部の下側(軸方向の他方側)に固定される。
【0056】
ロータ42Aは、支持板422Aと、位置検出器用磁石421Aと、を有する。支持板422Aは、位置検出器用支持部材5の第3部位53の上面にスペーサ43を介して載置される。支持板422Aは、位置検出器用支持部材5の第4部位54の内周面に近接して配置され、径方向内側に向けて延びる。支持板422Aは、スペーサ43の上に載置された状態で、ボルト111を介して第3部位53に固定される。位置検出器用磁石421Aは、支持板422Aの径方向内側の端部の上面(軸方向の一方側の面)に固定される。位置検出器用磁石421Aは、例えば接着によって支持板422Aに固定される。磁束検出用素子412Aは、位置検出器用磁石421Aに対して軸方向で対向して配置される。
【0057】
以上説明したように、第3実施形態においては、アキシャルギャップ型の位置検出器4Aを適用している。位置検出器4Aは、ステータ41Aの磁束検出用素子412Aと、ロータ42Aの位置検出器用磁石421Aと、が軸方向に対向して配置されている。このようなアキシャルギャップ型の位置検出器4Aによっても、ハウジング2Aの内部の空気は、ロータ42Aを取り付けた位置検出器用支持部材5の回転によって攪拌されて乱流を起こす。従って、モータステータ3のモータコイル32を冷却して、モータ1Bの温度上昇を抑制することが可能となる。これにより、モータ1Bのトルクの低下を抑制することが可能となる。
【0058】
[第4実施形態]
次いで、第4実施形態について説明するが、前述した第1から第3実施形態と同一構成の部位には同一の符号を付けて説明を省略する。
図6は、第4実施形態に係るモータの全体構成を概略的に示す断面図である。
【0059】
第4実施形態に係るモータ1Cは、第3実施形態に係るモータ1Bに対して、吸引用継手300を備える点が相違する。
【0060】
図6に示すように、ロアハウジング21の外周側板213には、径方向に貫通する貫通孔213bが設けられる。貫通孔213bは、軸方向で、モータステータ3のモータコイル32に対向して配置される。貫通孔213bにおける径方向外側の端部には、吸引用継手300が嵌合されている。吸引用継手300には、図外の吸引装置が接続可能である。吸引装置は、例えば、吸引用継手300に接続されるホースと、ホースに接続される吸引ポンプと、を備える。吸引ポンプを稼働させることにより、ホースおよび吸引用継手300を介して、ハウジング2の内方の空気をハウジング2の外方に排出することが可能である。
【0061】
以上説明したように、モータ1Cにおいては、モータ1Aと同様に、ロアハウジング21には、貫通孔213bが設けられ、貫通孔213bには、吸引装置が接続可能な吸引用継手300が嵌合される。このように、ハウジング2Aの外部から内部の空気を吸引することにより、モータ1C内の高温の空気を排出することができる。従って、モータ1Cの温度上昇を更に抑制し、モータ1Cのトルクの低下を更に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B、1C モータ
2、2A ハウジング
3 モータステータ
4、4A 位置検出器
5 位置検出器用支持部材
6 ロータ
7 シャフト
21 ロアハウジング
22 アッパハウジング
23、23A アッパハウジング
24、25 収容部
31 ステータコア(鉄心)
32 モータコイル
41 レゾルバステータ(検出用ステータ)
41A ステータ(検出用ステータ)
42 レゾルバロータ(検出用ロータ)
42A ロータ(検出用ロータ)
43 スペーサ
44 ウェーブワッシャ(波ワッシャ)
45 スペーサ
51 第1部位
52 第2部位
53 第3部位
54 第4部位
61 モータ磁石
70 貫通孔
71 円筒部
72 突出部
73 凹溝
74 バランサー
100 軸受
101 内輪
102 転動体
103 外輪
110、111、112、113、114 ボルト
130、131 配線用穴
211 底板
212 内周側板
213 外周側板
213b 貫通孔
221 外周部
222 連結部
223 内周部
231、231A 内周部
232、232A 連結部
233、233A 外周部
300 吸引用継手
411 巻線部
411A 基板
412A 磁束検出用素子
421A 位置検出器用磁石
422A 支持板
711 小径部
712 大径部
Ax 中心軸