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特開2022-149178非水電解質二次電池及びその解体方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149178
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及びその解体方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20220929BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20220929BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/443 M
H01M10/54
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051206
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 ゆりか
(72)【発明者】
【氏名】八木 弘雅
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H031
【Fターム(参考)】
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE04
5H029AJ00
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029DJ04
5H031AA00
5H031RR01
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】電極体をリサイクルしやすい形態に容易に解体することができる非水電解質二次電池及びその解体方法を提供する。
【解決手段】非水電解質二次電池は電極体を備える。電極体は、正極合剤層を有する正極、負極合剤層を有する負極、正極と負極との間に配置されるセパレータ、及び、機能層を有する。セパレータは微多孔膜を有する。機能層は、正極合剤層及び負極合剤層のうちの少なくとも一方である電極合剤層に接するように設けられ、かつ、電極合剤層と微多孔膜との間に設けられる。[A]機能層は結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、電極合剤層は硬化性樹脂を含む、又は、[B]機能層は結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、電極合剤層は分解性樹脂を含む。分解性樹脂は、電離放射線の照射によって分解する樹脂であり、硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって硬化する樹脂である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体を備える非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、
正極合剤層を有する正極と、
負極合剤層を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、微多孔膜を有するセパレータと、
前記正極合剤層及び前記負極合剤層のうちの少なくとも一方である電極合剤層に接し、かつ、前記電極合剤層と前記微多孔膜との間に設けられた機能層と、を有し、
下記[A]又は[B]:
[A]前記機能層は、結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、前記電極合剤層は、硬化性樹脂を含む、
[B]前記機能層は、結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、前記電極合剤層は、分解性樹脂を含む、
を満たし、
前記分解性樹脂は、電離放射線の照射によって分解する樹脂であり、
前記硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって硬化する樹脂である、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電離放射線は、X線である、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記セパレータは、前記微多孔膜及び前記機能層を有する、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記機能層は、さらにフィラーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記[A]を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記結着性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン及びアクリル樹脂のうちの少なくとも一方を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池に含まれる前記電極体に電離放射線を照射する、非水電解質二次電池の解体方法。
【請求項8】
前記電離放射線は、X線である、請求項7に記載の非水電解質二次電池の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池及びその解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第6404577号公報(特許文献1)及び特表2019-515421号公報(特許文献2)は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6404577号公報
【特許文献2】特表2019-515421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池のリサイクルを行う際には、当該電池を解体し、材料ごとに分別することがある。非水電解質二次電池では、セパレータが電極(正極又は負極)等の他の部材に接着剤によって固定されていることがあるため、セパレータと他の部材とを分離するために手間を要する。また、接着剤によってセパレータが電極に固定されている場合、セパレータと電極とを分離しようとすると、電極の電極合剤層が粉状に破損し、セパレータに電極合剤層を構成する材料が付着した状態で分離されることがある。このような場合、材料ごとに分別することが難しくなり、非水電解質二次電池のリサイクルが困難となる。
【0005】
本開示の目的は、電極体をリサイクルしやすい形態に容易に解体することができる非水電解質二次電池及びその解体方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔1〕 電極体を備える非水電解質二次電池であって、
前記電極体は、
正極合剤層を有する正極と、
負極合剤層を有する負極と、
前記正極と前記負極との間に配置され、微多孔膜を有するセパレータと、
前記正極合剤層及び前記負極合剤層のうちの少なくとも一方である電極合剤層に接し、かつ、前記電極合剤層と前記微多孔膜との間に設けられた機能層と、を有し、
下記[A]又は[B]:
[A]前記機能層は、結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、前記電極合剤層は、硬化性樹脂を含む、
[B]前記機能層は、結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、前記電極合剤層は、分解性樹脂を含む、
を満たし、
前記分解性樹脂は、電離放射線の照射によって分解する樹脂であり、
前記硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって硬化する樹脂である、非水電解質二次電池。
〔2〕 前記電離放射線は、X線である。
〔3〕 前記セパレータは、前記微多孔膜及び前記機能層を有する。
〔4〕 前記機能層は、さらにフィラーを含む。
〔5〕 前記[A]を満たす。
〔6〕 前記結着性樹脂は、ポリフッ化ビニリデン及びアクリル樹脂のうちの少なくとも一方を含む。
〔7〕 前記電極体に電離放射線を照射する、非水電解質二次電池の解体方法。
〔8〕 前記電離放射線は、X線である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、非水電解質二次電池の電極体をリサイクルしやすい形態に容易に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造の一例を模式的に示す断面図である。
図2】本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造の他の一例を模式的に示す断面図である。
図3】本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造のさらに他の一例を模式的に示す断面図である。
図4】本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造のさらに他の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電極体)
本実施形態の非水電解質二次電池(以下、「本電池」ということがある。)は、電極体を備える。電極体は、積層型電極体であってもよく、巻回型電極体であってもよい。電極体は、正極合剤層を有する正極と、負極合剤層を有する負極と、微多孔膜を有するセパレータと、電極の電極合剤層に接するように設けられた機能層と、を有する。セパレータは正極と負極との間に配置される。電極は、正極及び負極のうちの少なくとも一方であり、正極及び負極の両方であってもよい。電極合剤層は、電極が正極である場合は正極合剤層であり、電極が負極である場合は負極合剤層である。正極合剤層は正極活物質等を含み、負極合剤層は負極活物質等を含む。機能層は、電極合剤層と微多孔膜との間に配置される。機能層は、セパレータの微多孔膜にも接するように設けられていることが好ましい。機能層は、後述するように、耐熱層等のようにセパレータの一部を構成してもよく、例えば電極とセパレータとを接着するための接着層等のように電極及びセパレータを構成する層とは区別される層であってもよい。
【0010】
本電池は、下記[A]又は[B]:
[A]機能層は、結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、電極合剤層は、硬化性樹脂を含む、
[B]機能層は、結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、電極合剤層は、分解性樹脂を含む、
を満たす。結着性樹脂は、バインダーとなり得る樹脂であり、電極合剤層等の機能層に接する層に接着可能な接着性を付与できる樹脂であることが好ましい。分解性樹脂は、電離放射線の照射によって分解する樹脂であり、硬化性樹脂は、電離放射線の照射によって硬化する樹脂である。電離放射線の照射によって分解する樹脂は、電離放射線の照射に伴って樹脂の化学結合が切断されると考えられ、ガスの生成を伴うことがある。電離放射線の照射によって硬化する樹脂は、電離放射線の照射によって樹脂に架橋構造等が導入されると考えられる。電離放射線の種類は特に限定されず、X線、α線、β線、γ線、電子線、中性子線等が挙げられるが、好ましくはX線であり、より好ましくは軟X線である。
【0011】
結着性樹脂は、接着性に優れる樹脂であることが好ましく、ポリフッ化ビニリデン及びアクリル樹脂のうちの少なくとも一方を含むことがより好ましい。アクリル樹脂は、アクリル系接着剤であってもよい。機能層中の結着性樹脂の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0012】
分解性樹脂としては、電離放射線の照射によって分解する樹脂であれば特に限定されないが、ポリイソブチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、及び、セルロースからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリイソブチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリルアミド、及び、ポリメタクリロニトリルからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。分解性樹脂及び結着性樹脂の種類によっては、分解性樹脂が結着性樹脂でもあることもあり得る。正極合剤層及び機能層に分解性樹脂が含まれる場合、当該分解性樹脂としては、それぞれ独立して、ポリイソブチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリメタクリル酸エステル、及び、ポリメタクリロニトリルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。負極合剤層に分解性樹脂が含まれる場合、当該分解性樹脂としては、ポリメタクリルアミド及びポリメタクリル酸のうちの少なくとも一方であることが好ましい。
【0013】
機能層中及び電極合剤層中の分解性樹脂の含有量は、それぞれ独立して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0014】
硬化性樹脂としては、電離放射線の照射によって硬化する樹脂であれば特に限定されないが、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン、及び、天然ゴムからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、及び、ポリアクリロニトリルからなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。正極合剤層及び機能層に硬化性樹脂が含まれる場合、当該硬化性樹脂としては、それぞれ独立して、ポリエステル及びポリアクリル酸エステルのうちの少なくとも一方であることが好ましい。負極合剤層に硬化性樹脂が含まれる場合、当該硬化性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、及び、ポリアクリロニトリルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0015】
機能層中及び電極合剤層中の硬化性樹脂の含有量は、それぞれ独立して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であってもよく、5質量%以上であってもよく、また、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
【0016】
セパレータは、微多孔膜であってもよいが、微多孔膜と、その片面又は両面に設けられた後述する耐熱層とを有してもよい。微多孔膜は、単層構造又は多層構造のポリオレフィン製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン又はポリプロピレンの層を含む多孔質フィルムであることがより好ましい。多孔質フィルムが多層構造である場合、各層は同じ樹脂材料で形成されてもよく、異なる樹脂材料で形成されてもよい。微多孔膜の厚みは、例えば5μm以上40μm以下とすることができる。
【0017】
電極体は、互いに接するように設けられた機能層及び電極合剤層のうちの一方が、電離放射線の照射によって硬化する硬化性樹脂を含み、他方が、電離放射線の照射によって分解する分解性樹脂を含む。そのため、本電池の電極体に電離放射線を照射すると、分解性樹脂の分解に伴って発生するガス等により分解性樹脂を含む層と硬化性樹脂を含む層との間に空間が生じ、分解性樹脂を含む層と硬化性樹脂を含む層との結合力が低下すると考えられる。一方、硬化性樹脂を含む層は、硬化性樹脂の硬化により機械的強度が向上すると考えられる。そのため、電極体に電離放射線を照射することにより、機能層と電極合剤層との界面で電極体を分離する際に、硬化性樹脂を含む層が粉状に破損することを抑制しながら、硬化性樹脂を含む層を分解性樹脂を含む層から容易に分離することができる。これにより、本電池の電極体をリサイクルしやすい形態に容易に解体することができ、硬化性樹脂を含む層を構成する材料と、分解性樹脂を含む層を構成する材料とを分別して回収しやすくなる。
【0018】
本電池は、上記[A]を満たすことが好ましい。電離照射線を放射した後に電極体を解体すると分解性樹脂を含む層が粉状になりやすく、電池のリサイクルを行う際に、分解性樹脂を含む層を分別することが困難になりやすい。電極合剤層が硬化性樹脂を含むことにより、電池のリサイクルにあたって電極合剤層が破損されにくくなるため、電極合剤層に含まれる材料を有効利用しやすくなる。
【0019】
以下、図面を参照して電極体の構造について具体例を挙げて説明する。なお、各図面において、同一又は相当する部材に同一の参照符号を付し、その説明を繰り返さない場合がある。
【0020】
(電極体の構造1)
図1は、本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す第1の形態の電極体E1では、セパレータ1は、微多孔膜11の両面に耐熱層12,16を有する。耐熱層12,16は、微多孔膜11に直接接するように設けられることが好ましい。電極体E1では、微多孔膜11の一方の表面上に設けられた第1の耐熱層12に直接接するように、正極22の正極合剤層24が設けられ、微多孔膜11の第1の耐熱層12とは反対側の表面上に設けられた第2の耐熱層16に直接接するように、負極26の負極合剤層28が設けられる。正極22は通常、正極集電体23を有し、正極合剤層24は正極集電体23上に設けられる。負極26は通常、負極集電体27を有し、負極合剤層28は負極集電体27上に設けられる。電極体E1では、耐熱層12,16が機能層3を構成し、正極22及び負極26が電極2を構成し、正極合剤層24及び負極合剤層28が電極合剤層20を構成する。
【0021】
電極体E1では、セパレータ1が機能層3(耐熱層12,16)を含む。したがって、上記[A]の場合には、機能層3である耐熱層12,16が結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、電極合剤層20が硬化性樹脂を含む。そのため、電極体E1に電離放射線を照射することにより、電極合剤層20が破損することを抑制しながら電極2をセパレータ1から容易に分離することができる。また、上記[B]の場合には、機能層3である耐熱層12,16が結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、電極合剤層20が分解性樹脂を含む。そのため、電極体E1に電離放射線を照射することにより、耐熱層12,16が破損することを抑制しながらセパレータ1を電極2から容易に分離することができる。
【0022】
図1では、微多孔膜11の両面に耐熱層12,16を設けた電極体E1を示しているが、耐熱層は微多孔膜11の片面にのみ設けてもよい。この場合、電極体に電離放射線を照射することにより、耐熱層及び耐熱層に接するように設けられた電極合剤層(正極合剤層又は負極合剤層)のうちの、硬化性樹脂を含む層が破損することを抑制しながら、耐熱層と電極合剤層との界面での分離を容易に行うことができる。
【0023】
電極体E1は、例えば、耐熱層12,16を有するセパレータ1を介して、正極22と負極26とを積層することによって得ることができる。
【0024】
(電極体の構造2)
図2及び図3は、本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造の一例を模式的に示す断面図である。図2及び図3に示す第2の形態の電極体E2では、セパレータ1は、微多孔膜11の両面に耐熱層12,16を有する。耐熱層12,16は、微多孔膜11に直接接するように設けられることが好ましい。電極体E2では、微多孔膜11の一方の表面上に設けられた第1の耐熱層12に直接接するように機能層3が設けられ、この機能層3に直接接するように正極22の正極合剤層24が設けられる。また、電極体E2では、微多孔膜11の第1の耐熱層12とは反対側の表面上に設けられた第2の耐熱層16に直接接するように機能層3が設けられ、この機能層3に直接接するように負極26の負極合剤層28が設けられる。電極体E2では、正極22及び負極26が電極2を構成し、正極合剤層24及び負極合剤層28が電極合剤層20を構成する。電極体E2において、機能層3は、セパレータ1と電極2の電極合剤層20とを接着するための接着層である。機能層3は、耐熱層12,16及び電極合剤層20のうちの少なくとも一つの全面に、連続的に設けられてもよく(図2)、例えばドット状のように不連続に設けられてもよい(図3)。
【0025】
電極体E2では、セパレータ1と電極2との間に機能層3を含む。したがって、上記[A]の場合には、機能層3が結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、電極合剤層20が硬化性樹脂を含む。そのため、電極体E2に電離放射線を照射することにより、電極合剤層20が破損することを抑制しながら電極2をセパレータ1から容易に分離することができる。また、上記[B]の場合には、機能層3が結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、電極合剤層20が分解性樹脂を含む。そのため、電極体E2に電離放射線を照射することにより、機能層3が破損することを抑制することができるため、セパレータ1と機能層3との積層体を電極2から容易に分離することができる。
【0026】
電極体E2は、例えば、セパレータ1の耐熱層12,16上に機能層3を設け、この機能層3上に、正極22又は負極26を積層することによって得ることができる。あるいは、正極22の正極合剤層24及び負極26の負極合剤層28上に機能層3を設け、正極合剤層24と負極合剤層28との間にセパレータ1が配置されるように、正極22、セパレータ1、及び負極26を積層してもよい。
【0027】
(電極体の構造3)
図4は、本開示の非水電解質二次電池に含まれる電極体の層構造の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す第3の形態の電極体E3では、セパレータ1が微多孔膜11である。電極体E3では、微多孔膜11の一方の表面に、微多孔膜11に直接接するように機能層3が設けられ、この機能層3に直接接するように正極22の正極合剤層24が設けられる。また、電極体E3では、微多孔膜11の上記一方の表面とは反対側の表面に、微多孔膜11に直接接するように機能層3が設けられ、この機能層3に直接接するように負極26の負極合剤層28が設けられる。電極体E3では、正極22及び負極26が電極2を構成し、正極合剤層24及び負極合剤層28が電極合剤層20を構成する。電極体E3において、機能層3は、セパレータ1と電極2の電極合剤層20とを接着するための接着層である。機能層3は、微多孔膜11及び電極合剤層20のうちの少なくとも一方の全面に、連続的に設けられてもよく、ドット状のように不連続に設けられてもよい。
【0028】
電極体E3では、セパレータ1と電極2との間に機能層3を含む。したがって、上記[A]の場合には、機能層3が結着性樹脂及び分解性樹脂を含み、電極合剤層20が硬化性樹脂を含む。そのため、電極体E3に電離放射線を照射することにより、電極合剤層20が破損することを抑制しながら電極2をセパレータ1である微多孔膜11から容易に分離することができる。また、上記[B]の場合には、機能層3が結着性樹脂及び硬化性樹脂を含み、電極合剤層20が分解性樹脂を含む。そのため、電極体E2に電離放射線を照射することにより、機能層3が破損することを抑制することができるため、微多孔膜11と機能層3との積層体を電極2から容易に分離することができる。
【0029】
電極体E3は、例えば、セパレータ1の微多孔膜11上に機能層3を設け、この機能層3上に、正極22又は負極26を積層することによって得ることができる。あるいは、正極22の正極合剤層24及び負極26の負極合剤層28上に機能層3を設け、正極合剤層24と負極合剤層28との間にセパレータ1が配置されるように、正極2、セパレータ1、及び負極26を積層してもよい。
【0030】
図2図4では、セパレータ1の両面に機能層3を設けた電極体E2,E3を示しているが、機能層3はセパレータ1の片面にのみ設けてもよい。この場合、電極体に電離放射線を照射することにより、機能層3及び当該機能層3に接するように設けられた電極合剤層(正極合剤層24又は負極合剤層28)のうちの、硬化性樹脂を含む層が破損することを抑制しながら、機能層と電極合剤層との界面での分離を容易に行うことができる。
【0031】
電極体E1,E2において、耐熱層12,16はフィラーを含んでいてもよく、さらにバインダー等を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、シリカ、チタニア、窒化ケイ素、及び窒化チタンからなる群より選ばれる1種以上であるセラミック粒子が挙げられる。セラミック粒子の平均粒子径(D50)は、例えば0.1μm以上15μm以下である。バインダーとしては、例えばアクリル樹脂等のアクリル系バインダー、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素ポリマー系バインダー、及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。耐熱層12,16中のバインダーの含有量は、例えば2重量%以上10重量%以下である。耐熱層12,16の厚みは、例えば0.5μm以上10μm以下とすることができる。
【0032】
電極体E1において機能層3として用いられる耐熱層12,16は、フィラーに加えて、結着性樹脂、及び、分解性樹脂又は硬化性樹脂を含む。結着性樹脂は上記したバインダーとして用いられる樹脂であってもよい。電極体E2,E3において、機能層3は上記した結着性樹脂を含む。
【0033】
正極集電体23は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金等のアルミニウム材料を用いて構成された金属箔である。正極合剤層24は、分解性樹脂又は硬化性樹脂を含み、さらに、リチウム遷移金属酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32、LiNiO2、LiCoO2、LiFeO2、LiMn24、LiNi0.5Mn1.54等)、リチウム遷移金属リン酸化合物(LiFePO4等)等の正極活物質、カーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック等)等の炭素材料で構成される導電材、ポリフッ化ビニリデン等の結着材等を含むことができる。
【0034】
負極集電体27は、例えば、銅及び銅合金等の銅材料を用いて構成された銅箔である。負極合剤層28は、例えば炭素材料(黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等)、チタン酸リチウム、Si、Sn等の負極活物質、スチレンブタジエンゴム等の結着材、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤等を含むことができる。
【0035】
(非水電解質二次電池)
本実施形態の電池は、上記した電極体を含み、さらに、非水電解液、上記した電極体を収容するケース等を含むことができる。非水電解液としては、公知の非水電解質二次電池に用いられているものを用いることができ、例えば、有機溶媒等の非水溶媒中に、支持塩を含有させたものが挙げられる。非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)からなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。支持塩としては、例えば、リチウム塩(LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3等)を好適に用いることができる。支持塩の濃度は、0.7mol/L以上1.3mol/L以下であることが好ましい。
【0036】
(非水電解質二次電池の解体方法)
本実施形態の本電池の解体方法は、本電池に含まれる電極体に電離放射線を照射する方法である。電離放射線は、電極体に照射されるように本電池に照射してもよく、本電池から取り出した電極体に照射してもよい。電離放射線としては、上記したものが挙げられるが、好ましくはX線である。取扱いの容易性、設備の経済性、及び、X線の遮蔽の容易性等の観点から、電離放射線は軟X線であることがより好ましい。
【0037】
電離放射線の照射条件は、分解性樹脂を十分に分解でき、硬化性樹脂を十分に硬化できるように設定すればよい。電離放射線がX線である場合には、X線の吸収線量が例えば10kGy以上1000kGy以下となるように照射条件を調整すればよい。X線の吸収線量は、50kGy以上であってもよく、90kGy以上であってもよく、100kGy以上であってもよく、また、700kGy以下であってもよく、500kGy以下であってもよく、300kGy以下であってもよい。
【実施例0038】
以下、実施例及び比較例を示して本開示をさらに具体的に説明する。
〔実施例1~4、比較例1~3〕
(正極の作製)
表1及び表2の正極合剤層の欄に樹脂の記載がある場合は、当該樹脂を3質量%となる量(表に記載がない場合は配合しない)、導電材としてのアセチレンブラックを2質量%となる量、結着材としてのポリフッ化ビニリデンを2質量%となる量、及び、残部を正極活物質としての層状リチウム金属化合物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)として、これら材料をその合計量が100質量%となるように準備し、これらの材料とN-メチル-2-ピロリドンとを、ハイスピードミキサー(アーステクニカ製)を用いて撹拌混合して粒状の混合物(p)を得た。正極集電体としてのアルミ箔(厚み15μm)の両面に、厚みが100μmとなるように混合物(p)を転写成形した後、乾燥処理及び圧縮処理を行うことにより、正極集電体上に正極合剤層が形成された正極を作製した。
【0039】
(負極の作製)
表1及び表2の負極合剤層の欄に樹脂の記載がある場合は、当該樹脂を3質量%となる量(表に記載がない場合は配合しない)、結着材としてのスチレン・ブタジエンゴムを2質量%となる量、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースを2質量%となる量、及び、残部を負極活物質としての黒鉛として、これら材料をその合計量が100質量%となるように準備し、これらの材料と水とを、ハイスピードミキサー(アーステクニカ製)を用いて撹拌混合して粒状の混合物(n)を得た。負極集電体としての銅箔(厚み10μm)の両面に、厚みが100μmとなるように混合物(n)を転写成形した後、乾燥処理及び圧縮処理を行うことにより、負極集電体上に負極合剤層が形成された負極を得た。
【0040】
(セパレータの作製)
表1及び表2の耐熱層の欄に樹脂の記載がある場合は、当該樹脂を5質量%となる量(表に記載がない場合は配合しない)、結着性樹脂(バインダーでもある)としてのポリフッ化ビニリデンを5質量%となる量、及び、残部をフィラーとしてのアルミナ粒子として、これら材料をその合計量が100質量%となるように混合した混合物(h)を得た。ポリエチレン製の微多孔膜の両面に、混合物(h)を塗布して耐熱層としての機能層を形成し、微多孔膜と機能層とを有するセパレータを得た。
【0041】
(電極体の作製)
上記で得た正極、負極、及びセパレータをそれぞれ約30mm角に切断し、切断した正極及び負極に、超音波溶接により、それぞれアルミニウムリード及びニッケルリードを取付けた。電極合剤層(正極合剤層、負極合剤層)が機能層に接するように、正極、セパレータ、及び負極をこの順に重ね合わせて電極体を得た。
【0042】
(電池の作製)
ラミネートフィルムを用いて形成された、四角形の4辺のうちの3辺が熱封止されたケースに、上記で得た電極体を収容し、さらに非水電解液(1MのLiPF EMC(エチルメチルカーボネート)/DMC(ジメチルカーボネート))を1cm注入した後、ケースの残りの1辺を熱封止して、電池を得た。電池の充放電容量は約50mAhであった。
【0043】
[X線照射実験]
上記で得た電池を、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.5V、電流1C(50mA)で1000サイクル充放電を行ったところ、放電容量が初期の約50%に低下した。この程度の容量低下による劣化が生じた場合、通常、電極合剤層(正極合剤層、負極合剤層)は、電極(正極、負極)とセパレータとを分離しようとすると粉状に散乱しやすい状態となっていると考えられる。上記の充放電を行った後の電池(放電後の電池)を分解し、正極合剤層、負極合剤層、及び機能層の状態を確認し、また、分解後の正極、負極、及びセパレータのうちの破損なく分離できた部材を確認した。この結果を、X線照射前の結果として表1及び表2に示す。
【0044】
上記の充放電を行った後の電池(放電後の電池)に対して、当該電池までの距離が20cmとなる位置に配置された軟X線源からX線を1日間照射した。軟X線源は、管電圧が40kVであり、電流が25mA(出力1kW)であった。X線照射後、電池を分解し、正極、負極、及びセパレータの状態を観察した。この結果を、X線照射後の結果として表1及び表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
実施例に示すように、機能層とこれに接して配置される電極合剤層(正極合剤層又は負極合剤層)のうちの一方が硬化性樹脂を含み、他方が分解性樹脂を含む場合、X線照射後に解体すると、分解性樹脂を含む層が粉状になったが硬化性樹脂を含む層は粉状にならず形状を維持できたため、硬化性樹脂を含む層を有するセパレータ又は電極を破損することなく分離することができた。また、特に実施例1及び2の結果から、正極合剤層及び負極合剤層が硬化性樹脂を含み、耐熱層が結着性樹脂及び分解性樹脂を含むことにより、正極及び負極を破損することなくセパレータから分離できることがわかる。
【0048】
一方、比較例に示すように、機能層及び電極合剤層が硬化性樹脂を含まない場合、X線照射を行うと、機能層も電極合剤層も粉状となり、セパレータも電極も破損されたため、セパレータも電極も破損することなく分離することはできなかった。また、硬化性樹脂を含む正極合剤層に接する機能層が分解性樹脂を含まない場合、X線照射を行うと、正極合剤層は粉状にならず形状を維持したが、機能層が粉状となり、粉状となった機能層の一部が正極合剤層に付着した状態で分離されるため、正極を良好に分離することができなかった。なお、実施例及び比較例のいずれにおいても、X線照射を行う前には、セパレータ又は電極を破損することなく分離することはできなかった。
【符号の説明】
【0049】
1 セパレータ、2 電極、3 機能層、11 微多孔膜、12,16 耐熱層、20 電極合剤層、22 正極、23 正極集電体、24 正極合剤層、 26 負極、27 負極集電体、28 負極合剤層、E1~E3 電極体。
図1
図2
図3
図4