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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149209
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】複合部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20220929BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20220929BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B32B15/08 N
C08J7/00 306
C08J7/00 CER
C08J7/00 CEZ
C09J133/04
C09J163/00
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051253
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊範
(72)【発明者】
【氏名】宮田 篤史
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 純治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 実
【テーマコード(参考)】
4F073
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F073AA01
4F073BA08
4F073BA47
4F073BB01
4F073CA01
4F073CA62
4F073CA63
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AD11A
4F100AK01A
4F100AK03A
4F100AK07A
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100AK53B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100DG01A
4F100EH46
4F100EJ20
4F100EJ30
4F100EJ42
4F100EJ61
4F100EJ82
4F100JB16A
4F100JK06
4J040DF021
4J040EC001
4J040EF001
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材と、金属部材との接着強度が高い複合部材、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】複合部材は、少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、前記樹脂部材の前記一方の面上に配置された、接着層と、前記接着層上に配置された、金属を少なくとも含む金属部材と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、
前記樹脂部材の前記一方の面上に配置された、接着層と、
前記接着層上に配置された、金属を少なくとも含む金属部材と、
を有する、複合部材。
【請求項2】
前記樹脂部材の前記一方の面の水との接触角が、45°以上である、
請求項1に記載の複合部材。
【請求項3】
前記樹脂部材の前記一方の面の表面に存在する、炭素原子の数、酸素原子の数、および窒素原子の数の合計に対する、前記樹脂部材の前記一方の面の表面に存在する酸素原子の数および窒素原子の数の合計の割合が、1%以上である、
請求項1または2に記載の複合部材。
【請求項4】
前記接着層は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン接着剤からなる群から選ばれる接着剤またはその固化物を含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項6】
前記金属部材は、アルミニウムを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項7】
前記樹脂部材の前記一方の面が、プラズマ処理されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項8】
前記樹脂部材において、前記強化繊維が一方向に配列している、
請求項1~7のいずれか一項に記載の複合部材。
【請求項9】
少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、かつ熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、金属部材とを準備し、
前記樹脂部材の前記一方の面および前記金属部材のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、前記樹脂部材および前記金属部材を、前記接着剤を介して貼り合わせる工程を含む、
複合部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維と樹脂とを複合した樹脂部材は、強度や弾性率が高く、軽量構造材料として種々の分野で使用されている。特に、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸した樹脂部材は、スタンピング成形等の高速成型が容易であり、かつリサイクルも行いやすいことから非常に有用である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリオレフィンが含浸した炭素繊維束を含む、樹脂部材が記載されている。また、特許文献2には、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシアクリレート樹脂)が含浸した繊維を含む樹脂成形体と、アルミニウムとを、エポキシ系接着剤を介して接着した複合部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/050992号
【特許文献2】特開2018-161800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材と、金属部材とを接着層を介して貼着しようとすると、樹脂部材と接着層との接着強度が十分に高まり難く、樹脂部材と接着層との界面で剥離しやすいという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものである。本発明は、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材と金属部材とが、強固に接着された複合部材、およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の複合部材を提供する。
[1]少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、前記樹脂部材の一方の面上に配置された、接着層と、前記接着層上に配置された、金属を少なくとも含む金属部材と、を有する、複合部材。
【0008】
[2]前記樹脂部材の一方の面の水との接触角が、45°以上である、[1]に記載の複合部材。
【0009】
[3]前記樹脂部材の一方の面の表面に存在する、炭素原子の数、酸素原子の数、および窒素原子の数の合計に対する、前記樹脂部材の前記一方の面の表面に存在する酸素原子の数および窒素原子の数の合計の割合が、1%以上である、[1]または[2]に記載の複合部材。
【0010】
[4]前記接着層は、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン接着剤からなる群から選ばれる接着剤またはその固化物を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の複合部材。
【0011】
[5]前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである、[1]~[4]のいずれかに記載の複合部材。
【0012】
[6]前記金属部材は、アルミニウムを含む、[1]~[5]のいずれかに記載の複合部材。
【0013】
[7]前記樹脂部材の前記一方の面が、プラズマ処理されている、[1]~[6]のいずれかに記載の複合部材。
【0014】
[8]前記樹脂部材において、前記強化繊維が一方向に配列している、[1]~[7]のいずれかに記載の複合部材。
【0015】
本発明は、以下の複合部材の製造方法を提供する。
[9]少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、かつ熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、金属部材とを準備し、前記樹脂部材の前記一方の面および前記金属部材のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、前記樹脂部材および前記金属部材を、前記接着剤を介して貼り合わせる工程を含む、複合部材の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の複合部材は、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材と、金属部材とが、強固に接着されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0018】
1.樹脂部材
本発明の複合部材は、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材と、金属部材とを含み、これらが接着層を介して接着された構造を有する。つまり、樹脂部材と、接着層と、金属部材とが、この順に積層されている。従来、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含む樹脂部材は、接着層との接着強度が低く、例えば金属部材等と接着層を介して貼り合わせると、接着層と樹脂部材との界面で、剥離が生じやすかった。
【0019】
これに対し、本発明者らは、樹脂部材の接着層と積層する面の水との接触角を90°以下にすることで、樹脂部材と接着層との接着強度が格段に高まり、金属部材とも接着可能であることを見出した。本発明の複合部材では、樹脂部材と金属部材とが強固に接着されていることから、当該複合部材を種々の用途に適用することが可能である。以下、本発明の複合部材の各構成について説明する。
【0020】
(1)樹脂部材
樹脂部材は、少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含んでいればよい。当該樹脂部材は、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0021】
また、当該樹脂部材の形状は特に制限されず、例えば平板状であってもよく、立体的な形状を有していてもよい。
【0022】
・強化繊維
樹脂部材が含む強化繊維の例には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維、および金属繊維等が含まれる。樹脂部材は、強化繊維を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、力学特性に優れる点で、炭素繊維やガラス繊維が好ましく、特に成形品をより軽量化できる点から、炭素繊維が好ましい。炭素繊維の例には、PAN系の炭素繊維、ピッチ系の炭素繊維、レーヨン系の炭素繊維等が含まれる。これらのうち、強度と弾性率とのバランスに優れることから、PAN系の炭素繊維が好ましい。
【0023】
強化繊維が炭素繊維である場合、X線光電子分光法により測定される炭素繊維の表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比[O/C](以下、「表面酸素濃度比」とも称する)が、0.05以上0.5以下であることが好ましく、0.08以上0.4以下であることがより好ましく、0.1以上0.3以下であることがさらに好ましい。表面酸素濃度比が0.05以上であると、炭素繊維表面に十分な量の官能基が有るといえ、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性を高めることができる。一方で、表面酸素濃度比が0.5以下であると、炭素繊維の取扱い性および生産性が良好になる。上記表面酸素濃度比は、国際公開第2017/183672号に記載の方法により測定できる。上記表面酸素濃度比は、電解酸化処理、薬液酸化処理、気相酸化処理等の公知の方法により制御できる。これらの中でも、電解酸化処理による制御が好ましい。
【0024】
強化繊維の平均直径は、樹脂部材の強度を十分に高める観点から、1μm以上20μm以下が好ましく、3μm以上15μm以下がより好ましく、4μm以上10μm以下がさらに好ましい。
【0025】
強化繊維の長さは特に制限されず、樹脂部材の種類に合わせて適宜選択される。例えば、強化繊維の長さの上限は、樹脂部材の長さと略同じとすることができる。一方、強化繊維の長さの下限値は、通常15mm以上であり、20mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。ただし、樹脂部材の長さが、15mm未満である場合、強化繊維の長さは、15mm未満であってもよい。
【0026】
強化繊維は、集束剤(サイズ剤)により集束された繊維束であることが好ましい。上記繊維束の単糸数は特に制限されないが、100本以上350,000本以下が好ましく、1,000本以上250,000本以下がより好ましく、5,000本以上220,000本以下がさらに好ましい。
【0027】
集束剤は、オレフィン系エマルション、ウレタン系エマルション、エポキシ系エマルション、ナイロン系エマルション等の公知の集束剤であってもよく、これらのうちオレフィン系エマルションが好ましく、エチレン系エマルションまたはプロピレン系エマルションがより好ましい。エチレン系エマルションに含まれるエチレン系重合体の例には、エチレン単独重合体、およびエチレンと炭素原子数3以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。上記プロピレン系エマルションに含まれるプロピレン系重合体の例には、プロピレン単独重合体、およびプロピレンとエチレンまたは炭素原子数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体が含まれる。
【0028】
また特に、繊維束と熱可塑性樹脂との接着性をより高める観点で、集束剤は、未変性ポリオレフィンと変性ポリオレフィンとを含むことが好ましい。未変性ポリオレフィンの例には、ホモポリプロピレン、ホモポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体等が含まれる。一方、変性ポリオレフィンの例には、未変性ポリオレフィンの重合体鎖に、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、またはカルボン酸エステル基をグラフト重合し、さらにグラフト重合した官能基と金属カチオンとの間で塩を形成させたものが含まれる。これらの中でも、カルボン酸金属塩を含む変性ポリオレフィンがより好ましい。
【0029】
・熱可塑性樹脂
樹脂部材が含む熱可塑性樹脂は、上記強化繊維に含浸可能であり、かつ熱可塑性を有する樹脂であればよい。樹脂部材は、熱可塑性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0030】
上記熱可塑性樹脂の例には、ポリカーボネート樹脂;スチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS樹脂);変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂);ポリアセタール樹脂(POM樹脂);液晶ポリエステル;ポリアリレート;ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)等のアクリル樹脂;塩化ビニル;ポリイミド(PI);ポリアミドイミド(PAI);ポリエーテルイミド(PEI);ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリケトン;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、およびポリ4-メチル-1-ペンテン等のポリオレフィンやこれらの変性物である変性ポリオレフィン;フェノキシ樹脂;等が含まれる。
【0031】
熱可塑性樹脂は、これらの樹脂の共重合体であってもよく、その例には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン/1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、エチレン・一酸化炭素・ジエン共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸グリシジル、およびエチレン・酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体等が含まれる。本明細書において(メタ)アクリルとの記載は、メタクリルおよびアクリルのいずれか一方または両方を表す。
【0032】
熱可塑性樹脂は、複合部材の用途に応じて適宜選択される。例えば熱可塑性樹脂に極性が要求される場合には、ポリアミド系樹脂およびポリエステル樹脂が好ましく、非極性であることが要求される場合には、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、樹脂部材のコストを低減したり、成形品を軽量化したりする観点からは、ポリプロピレン系樹脂およびポリアミド系樹脂が好ましい。また、上記集束剤により集束された強化繊維との親和性を高める観点では、変性ポリオレフィンが好ましい。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂の種類は特に制限されず、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン系共重合体であってもよく、これらの混合物であってもよい。ポリプロピレン系樹脂の立体規則性も特に限定されず、イソタクチックであっても、シンジオタクチックであっても、アタクチックであってもよいが、イソタクチックまたはシンジオタクチックがより好ましい。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂は、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)であってもよく、重合体鎖に結合したカルボン酸塩等を含む変性ポリプロピレン系樹脂(P2)あってもよく、これらの混合物であってもよい。これらの中でも混合物が好ましい。当該混合物では、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)と変性ポリプロピレン系樹脂(P2)と質量の合計に対する、未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)の質量比[(P1)/(P1+P2)]が、80質量%以上99質量%以下であることが好ましく、85質量%以上98質量%であることがより好ましく、90質量%以上97質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)は、ASTM D1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイト(MFR)が、100g/10分以上であることが好ましく、130g/10分以上500g/10分以下であることがより好ましい。MFRがこの範囲内であると、熱可塑性樹脂を強化繊維に含浸させやすくなる。
【0036】
未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)の重量平均分子量(Mw)は、50,000以上300,000以下が好ましく、50,000以上200,000以下がより好ましい。
【0037】
未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)は、プロピレン由来の構造単位を主体とする、プロピレン由来の構造単位の含有量が50モル%以上である樹脂成分であればよい。未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)は、プロピレン由来の構造単位のほかに、プロピレン以外のα-オレフィン、共役ジエンもしくは非共役ジエンまたはポリエン由来の構造単位を含んでいてもよい。
【0038】
未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)が共重合体であるときの、共重合成分としてのα-オレフィンの例には、エチレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、1-オクテン、1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、および1-エイコセン等、炭素原子数2以上20以下のα-オレフィン(プロピレンを含む)が含まれる。これらのうち、1-ブテン、エチレン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-ヘキセンが好ましく、1-ブテンおよび4-メチル-1-ペンテンがより好ましい。共重合成分としての共役ジエンや非共役ジエンの例には、ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5-ヘキサジエン等が含まれる。これらのα-オレフィン、共役ジエンおよび、非共役ジエンは、2種以上を併用してもよい。
【0039】
一方、変性ポリプロピレン系樹脂(P2)は、重合体鎖に結合したカルボン酸塩等を含むポリプロピレン系樹脂である。変性ポリプロピレン系樹脂(P2)カルボン酸塩を有すると、強化繊維と熱可塑性樹脂との界面での接着強度が高まりやすい。
【0040】
変性ポリプロピレン系樹脂(P2)の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上100,000以下が好ましく、2、000以上80,000以下がより好ましい。
【0041】
変性ポリプロピレン系樹脂(P2)は、未変性のプロピレン系重合体と、カルボン酸構造を有する単量体とをラジカルグラフト重合することによって得られる。
【0042】
未変性のプロピレン系重合体は、上述の未変性ポリプロピレン系樹脂(P1)と同様のプロピレン系重合体であればよいが、プロピレン単独重合体、またはエチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体等のプロピレンとα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0043】
上記カルボン酸構造を有する単量体は、カルボン酸基を有する単量体であってもよいし、カルボン酸エステルを有する単量体であってもよい。上記カルボン酸基は、中和されていてもよいし、上記カルボン酸エステルは、ケン化されていてもよい。これらの具体例には、エチレン系不飽和カルボン酸やその無水物、エチレン系不飽和カルボン酸のエステル、オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物が含まれる。
【0044】
上記エチレン系不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、およびイソクロトン酸等が含まれる。上記無水物の例には、ナジック酸(エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸)、無水マレイン酸、および無水シトラコン酸等が含まれる。
【0045】
上記オレフィン以外の不飽和ビニル基を有する化合物の例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等を含む(メタ)アクリル酸エステル類;ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類;グリシジル(メタ)アクリレート、およびメチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類;ビニルイソシアナート、およびイソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン等の芳香族ビニル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド等のアミド類;酢酸ビニル、およびプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;N、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N、N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N、N-ジヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類;スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ソーダ、および2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類;モノ(2-メタクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等を含む不飽和リン酸類等が含まれる。これらは2種類以上を用いてもよい。
【0046】
カルボン酸構造を有する単量体は、エチレン系不飽和カルボンの無水物が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0047】
変性ポリプロピレン系樹脂(P2)は、公知の方法で合成できる。例えば、有機溶剤中で上記未変性のプロピレン系重合体と上記カルボン酸構造を有する単量体とを重合開始剤の存在下で反応させ、その後脱溶剤させてもよいし、上記未変性のプロピレン系重合体を加熱溶融して得た溶融物と上記不飽和ビニル基を有するカルボン酸とを、重合開始剤の存在下で攪拌して反応させてもよいし、上記未変性のプロピレン系重合体と上記不飽和ビニル基を有するカルボン酸と重合開始剤との混合物を押出機に供給して加熱混練しながら反応させ、その後中和やケン化等の方法でカルボン酸塩としてもよい。
【0048】
一方、熱可塑性樹脂として使用可能なポリアミド系樹脂の種類は特に限定されず、公知のポリアミド系樹脂であればよい。上記ポリアミド系樹脂の例には、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド11、および芳香族系ポリアミド等が含まれる。これらのうち、ポリアミド6、およびポリアミド12が好ましい。
【0049】
上記ポリアミド系樹脂の80℃、5時間乾燥後ASTM D1238に準じて230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレイト(MFR)は、40g/10分以上であることが好ましく、40g/10分以上400g/10分以下であることがより好ましい。MFRがこの範囲内であると、熱可塑性樹脂を強化繊維に含浸させやすくなる。
【0050】
上記ポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上50,000以下が好ましく、5,000以上30,000以下がより好ましい。
【0051】
・その他
樹脂部材は、上述の熱可塑性樹脂以外の樹脂や、強化繊維よりも短い長さの短繊維、エラストマー、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、制泡剤等、本発明の目的および効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0052】
・樹脂部材の物性およびその形成方法
上述のように、樹脂部材は、上記熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を含んでいればよい。樹脂部材中において、強化繊維は、ランダムに配置されていてもよく、一定方向に配列していてもよい。特に、強化繊維が一定方向に配列しているシート状の樹脂部材は、UDシート(Uni-Direction シート)とも称され、その機械的強度が非常に高い。したがって、強化繊維は、一定方向に配列していることがより好ましい。
【0053】
樹脂部材中の強化繊維の量は、20~80質量%が好ましく、30~75質量%がより好ましく、30~65質量%がさらに好ましい。樹脂部材中の強化繊維の量が20質量%以上であると、樹脂部材の強度が高まる。また、樹脂部材中の強化繊維の量が80質量%以下であると、熱可塑性樹脂の量が十分になり、強化繊維が樹脂によって十分に含浸される。
【0054】
一方、樹脂部材中の熱可塑性樹脂の量は、20~80質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましく、35~70質量%がさらに好ましく、40~65質量%特に好ましい。熱可塑性樹脂の量が当該範囲であると、樹脂部材の成形性や強度が十分に高くなる。
【0055】
樹脂部材の全体積に対する、強化繊維の含有量(繊維体積含有率:Vf)は、10体積%以上70体積%以下が好ましく、15体積%以上60体積%以下がより好ましく、20体積%以上60体積%以下がさらに好ましい。
【0056】
樹脂部材の形状は特に制限されないが、例えばシート状である場合には、その厚みは1μm以上500μm以下が好ましく、5μm以上400μm以下がより好ましく、5μm以上300μm以下がさらに好ましい。
【0057】
ここで、樹脂部材の少なくとも一方の面(接着層との積層面)の水との接触角は、90°以下であればよく、下限値は45°以上が好ましい。樹脂部材の水との接触角が90°以下であると、後述の接着層との接着強度が良好になる。一方、水との接触角が45°以上であると、接着強度が良好になる傾向があるため好ましい。樹脂部材の水との接触角は、45°以上80°以下が好ましく、45°以上70°以下がより好ましい。樹脂部材の接着層との積層面の水との接触角は、例えば協和界面科学社製のFACE固体表面エナジー解析装置CA-XE型を用いて測定できる。測定に際し、使用する水は蒸留水が好ましく、水を樹脂部材の表面に滴下直後、その接触角を10点測定し、これらの平均値を水接触角とする。
【0058】
なお、樹脂部材の一方の面(接着層との積層面)全体の水との接触角が90°以下であってもよいが、接着層と積層される領域のみ、水との接触角が90°以下であってもよい。また、樹脂部材の両面の水との接触角が90°以下であってもよい。樹脂部材の水との接触角は、後述のように、強化繊維を熱可塑性樹脂で含浸した後、表面に細かな凹凸を形成すること等によって調整できる。
【0059】
また、樹脂部材の一方の面(接着層との積層面)の表面に存在する、炭素原子の数、酸素原子の数、および窒素原子の数の合計に対する、酸素原子の数および窒素原子の数の合計の割合(以下、「酸素原子および窒素原子の合計含有率」とも称する)は、1%以上が好ましく、2%以上30%以下がより好ましく、5%以上30%以下がさらに好ましい。樹脂部材の表面における酸素原子および窒素原子の量が多いと、接着層と表面に存在する官能基と結合することが可能となり、樹脂部材および接着層の接着強度が高まる。
【0060】
樹脂部材の一方の面(接着層との積層面)の表面の酸素原子および窒素原子の合計含有率は、X線光電子分光法(XPS)によって特定できる。具体的には、炭素原子の含有率(C元素含有率)、酸素原子の含有率(O元素含有率)、および窒素原子の含有率(N元素含有率)をXPS法によってそれぞれ特定する。そして、下記式によって、酸素原子および窒素原子の合計含有率を算出する。
酸素原子および窒素原子の合計含有率=(O元素含有率+N元素含有率)/(C元素含有率+O元素含有率+N元素含有率)×100
【0061】
なお、樹脂部材の一方の面(接着層との積層面)全体の酸素原子および窒素原子の合計含有率が1%以上であってもよいが、接着層と積層される領域の表面のみ、酸素原子および窒素原子の合計含有率が1%以上であってもよい。また、樹脂部材の両表面の酸素原子および窒素原子の合計含有率が1%以上であってもよい。樹脂部材の表面の酸素原子および窒素原子の合計含有率は、例えばプラズマ処理等によって調整できる。
【0062】
上記樹脂部材は、公知の方法で上記強化繊維に上記熱可塑性樹脂を含浸して作製できる。例えば、樹脂部材を上述のUDシートとする場合には、溶融状態の熱可塑性樹脂で表面がコーティングされた含浸ロールに、開繊されて一方向に配列された複数の強化繊維を同時に接触させるようにして、含浸ロールを回転させる。このとき、複数の強化繊維を上記回転方向に沿って移動させることで、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸する。
【0063】
熱可塑性樹脂の含浸方法は上記方法に限定されず、溶融した上記熱可塑性樹脂の浴に上記強化繊維を浸漬する方法等であってもよい。
【0064】
炭素繊維に熱可塑性樹脂を含浸した後、熱可塑性樹脂を冷却固化させることで、一方向に配向して配列された複数の強化繊維に、熱可塑性樹脂が含浸したUDシートが得られる。
【0065】
ただし、当該方法で作製しただけでは、樹脂部材の表面の水との接触角が90°以下となり難い。そこで、強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸した後、樹脂の表面に、細かな凹凸を形成する処理を行うことが好ましい。細かな凹凸を形成する方法の例には、ロールプレス処理、ブラスト処理、レーザー処理、プラズマ処理、ウェットエッチング等が含まれる。これらの中でも、樹脂部材表面の水との接触角を所望の範囲に調整しやすく、かつ酸素原子および窒素原子の合計含有率を1%以上に調整しやすいとの観点で、プラズマ処理が好ましく、特に大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0066】
大気圧プラズマ処理の条件は、樹脂部材の表面の水との接触角が90°以下となる条件であれば特に制限されない。プラズマ発生用ガスは、窒素や酸素、またはこれらの混合ガスであると、樹脂部材の表面の酸素原子の量や窒素原子の量を高めやすくなる。また、大気圧プラズマの発生方式は、直流でもよく、交流周波数0.1Hz~1000kHzでもよい。また、0.1MHz~1000MHz高周波方式でもよく、0.1GHz~10GHzのマイクロ波方式でもよい。
【0067】
(2)金属部材
金属部材は、金属を含む部材であればよく、その形状は、複合部材の用途に応じて適宜選択される。例えば、金属部材は、箔状であってもよく、板状であってもよく、さらに任意の立体形状であってもよい。
【0068】
金属部材を構成する金属は特に限定されず、その例には、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン、またはこれらの合金(例えば、ステンレス、アルミニウム合金、真鍮、リン青銅等)等が含まれる。金属部材は、これらの金属を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。これらの中でも、高強度であり汎用性が高いことから、アルミニウム系金属および鉄が好ましく、軽量である点からアルミニウムおよびアルミニウム系金属がより好ましい。
【0069】
また、金属部材は、表面が金属であればよく、例えば金属以外の部材の表面に、金属がめっきされたり、蒸着されたり、塗布されたりしたものであってもよい。また、アルミニウム等への酸化、アルマイト処理などが施されたものであってもよい。
【0070】
さらに、当該金属部材は、表面処理されていてもよい。表面処理の例には、ブラスト処理、レーザー処理、プラズマ処理、ウェットエッチング等が含まれる。金属部材の表面が、このような処理を施されていると、その表面が適度な凹凸を有し、接着層との接着強度が高まりやすくなる。
【0071】
(3)接着層
接着層は、接着剤またはその固化物から構成される層であり、上述の樹脂部材および金属部材を接合するための層である。接着層は、タルクやガラスビーズ等の無機物を含有していてもよい。
【0072】
接着層の厚みは、接着剤の種類等に応じて適宜選択されるが、通常10μm以上3000μm以下が好ましく、50μm以上2000μm以下がより好ましく、100μm以上1500μm以下がさらに好ましい。接着層の厚みが10μm以上であると、上記樹脂部材および金属部材を強固に接着しやすくなる。また、接着層の厚みが500μm以下であると、複合部材の強度を高められる。
【0073】
接着剤層を構成する接着剤の種類は特に制限されず、上述の樹脂部材や金属部材の種類や形状等に合わせて適宜選択される。接着層を形成するための接着剤の例には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン接着剤、シアノアクリレート系接着剤が含まれる。
【0074】
アクリル系接着剤は、公知の(メタ)アクリル系接着剤であれば、特に制限されず使用することができる。(メタ)アクリル系接着剤は、1液型であってもよく、2液型であってもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。また、アクリル系とは、アクリル系とメタクリル系の少なくとも一方を意味する。
【0075】
1液型の(メタ)アクリル系接着剤の例には、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸エステル重合体と、重合開始剤および/または架橋剤とを含む、熱硬化型または光硬化型の接着剤が含まれる。
【0076】
また、2液型のアクリル系接着剤の例には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび有機過酸化物を含む第1液と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび還元剤を含む第2液とを有する態様が含まれる。また、2液型のアクリル系接着剤の例には、架橋性の官能基を含む(メタ)アクリル系ポリマーを含む第1液と、架橋剤を含む第2液とを有する態様も含まれる。さらに、2液型のアクリル系接着剤の例には、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む第1液と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび/または重合開始剤を含む第2液とを有する態様も含まれる。これらは例示であり、アクリル系接着剤を限定するものではない。
【0077】
2液型アクリル系接着剤の第1液および/または第2液が含む、(メタ)アクリル酸エステルモノマーの例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等が含まれる。
【0078】
また、2液型アクリル系接着剤の第1液が含む有機過酸化物は、ラジカルを発生して(メタ)アクリル酸エステルモノマーをビニル重合させることが可能な化合物であればよい。有機過酸化物の例には、ハイドロパーオキサイド、アルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ケトンパーオキサイド等が含まれる。また、2液型のアクリル系接着剤が含む重合開始剤は、上述の有機過酸化物やアゾ化合物が挙げられる。アゾ化合物の例には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ABVN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが含まれる。
【0079】
2液型アクリル系接着剤の第2液が含む還元剤の例には、チオ尿素化合物、金属キレート化合物、金属石鹸類、3級アミン、ポリアミン、メルカプタン等が含まれる。
【0080】
また、2液型アクリル系接着剤の第1液が含む、架橋性の官能基を含む(メタ)アクリル系ポリマーの例には、上述の(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む重合体等が含まれる。また、第2液が含む架橋剤の例には、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、多官能(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0081】
また、エポキシ系接着剤は、1液型であってもよく、2液型であってもよい。1液型のエポキシ系接着剤の例には、ケチミンやオキサゾリジン、アルジミン系化合物等の潜在性硬化剤と液状エポキシ樹脂と、を含む常温硬化型または加熱硬化型の組成物が含まれる。
【0082】
2液型のエポキシ系接着剤の例には、エポキシ樹脂を含む第1液と、硬化剤を含む第2液とを有する態様が含まれる。第1液が含むエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が含まれる。一方、第2液が含む硬化剤の例には、鎖状脂肪族アミンや、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、イミダゾール化合物等の含窒素芳香族等のアミン系硬化剤や、アミドアミン硬化剤、ケチミン等が含まれる。
【0083】
ウレタン系接着剤は、1液型であってもよく、2液型であってもよい。1液型のウレタン系接着剤の例には、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型接着剤が含まれる。
【0084】
また、2液型のウレタン系接着剤の例には、イソシアネートを含む第1液と、当該イソシアネートと反応可能な成分を含む第2液と、を有する態様が含まれる。第1液が含むウレタンプレポリマーの例には、メチレンビス(p-フェニレンジイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1-クロロフェニルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、エチルベンゼン-α-2-ジ-イソシアネート、4,4,4-トリフェニルメタントリイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-キシリレンジイソシアネート等のイソシアネートが含まれる。
【0085】
第2液が含むイソシアネートと反応可能な成分の例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、ヘキサントリオール、キシリレンジオール、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリアミン(およびポリアミド)等が含まれる。
【0086】
シアノアクリレート系接着剤の例には、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、メトキシエチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、オクチルシアノアクリレート等を含む接着剤が含まれる。
【0087】
これらの中でも、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、およびウレタン系接着剤が、取扱性等の観点で好ましい。
【0088】
2.複合部材の製造方法
上記複合部材の製造方法は特に制限されず、例えば以下のように製造できる。まず、少なくとも一方の面の水との接触角が90°以下であり、熱可塑性樹脂が含浸した強化繊維を少なくとも含む樹脂部材と、金属部材と、を準備する。その後、樹脂部材の一方の面および金属部材のいずれか一方または両方に接着剤を塗布し、樹脂部材および金属部材を、接着剤を介して貼り合わせる。
【0089】
なお、準備する樹脂部材および金属部材は、上述したものと同様である。これらは製造したものであってもよく、市販品であってもよく、市販品を加工したものであってもよい。ただし、一般的なUDシート等からなる樹脂部材は、表面の水との接触角が通常90°以上であるため、その表面の水との接触角が90°以下となるように、表面に、細かな凹凸を形成する工程を行うことが好ましい。具体的には、上述のロールプレス処理、ブラスト処理、レーザー処理、プラズマ処理、またはウェットエッチング処理等を行うことが好ましい。
【0090】
また、接着剤を塗布する部材は、樹脂部材であってもよく、金属部材であってもよく、両方であってもよい。接着剤は、上述したものを用いることができる。また、接着剤を塗布する方法は特に制限されず、一般的な塗布方法とすることができ、接着剤の塗布面積に合わせて適宜選択できる。その例には、ディスペンサによる塗布、ダイコート、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、デップコート、スプレイコート、その他の印刷法等が含まれる。また、接着剤の吐出ガン等を用いたり、ヘラ等を用いた手作業で塗布してもよい。塗布の際、接着剤に空気を多量に混入させない事が接着強度を保つ上で重要である。
【0091】
また、上記接着剤を介して樹脂部材および金属部材を貼り合わせ後、接着剤の種類に応じて、加熱したり、活性エネルギーを照射したり、所定の環境下で一定時間静置したりして、接着剤を固化する工程をさらに行ってもよい。
【0092】
3.複合部材の用途
上記複合部材の用途は限定されないが、他の構造材料の補強材として有用であり、特に、瞬間的な衝撃が発生する車両や航空機を構成する部材の補強材として有用である。
【0093】
上記複合部材の用途の具体例には、主翼、垂直および水平尾翼などを含む一次構造材、補助翼、方向舵および昇降舵などを含む二次構造材、座席およびテーブルなどを含む内装材、動力装置、油圧シリンダー、ならびにコンポジットブレーキなどを含む、航空機およびヘリコプターなどの一般的な飛行体の部品部材、ノズルコーンおよびモーターケースなどを含むロケット部品部材、アンテナ、構造体、太陽電池パネル、バッテリーケースおよび望遠鏡などを含む人工衛星部品部材、フレーム、シャフト、ローラー、板バネ、工作機械ヘッド、ロボットアーム、搬送ハンドおよび合成繊維ポットなどを含む機械部品部材、遠心分離機ローターおよびウラン濃縮筒などを含む高速回転体部品部材、パラボラアンテナ、電池部材、レーダー、音響スピーカーコーン、コンピューター部品、プリンター部品、パソコン筐体およびタブレット筐体などを含む電子電機部品部材、骨格部品、準構造部品、外板部品、内外装部品、動力装置、他機器-油圧シリンダー、ブレーキ、バッテリーケース、ドライブシャフト、エンジンパーツ、スポイラー、レーシングカーボディー、クラッシュコーン、イス、タブレット、電話カバー、アンダーカバー、サイドカバー、トランスミッションカバー、バッテリートレイ、リアステップ、スペアタイア容器、バス車体壁およびトラック車体壁などを含む自動車・バイク部品部材、内装材、床板パネル、天井パネル、リニアモーターカー車体、新幹線・鉄道車体、窓拭きワイパー、台車および座席などを含む車両部品部材、ヨット、クルーザーおよびボートなどを含む船舶船体、マスト、ラダー、プロペラ、硬帆、スクリュー、軍用艦胴体、潜水艦胴体および深海探査船などを含む船舶部品部材・機体、アクチュエーター、シリンダー、ボンベ、水素タンク、CNGタンクおよび酸素タンクなどを含む圧力容器部品部材、攪拌翼、パイプ、タンク、ピットフロアーおよびプラント配管などを含む科学装置部品・部材、ブレード、スキン、骨格構造および除氷システムなどを含む風力発電部品部材、X線診断装置部品、車椅子、人工骨、義足・義手、松葉杖、介護補助器具・ロボット(パワーアシストスーツ)、歩行機および介護用ベッドなどを含む医療・介護機器部品部材・用品、CFコンポジットケーブル、コンクリート補強部材、ガードレール、橋梁、トンネル壁、フード、ケーブル、テンションロッド、ストランドロッドおよびフレキシブルパイプなどを含む土木建築・インフラ部品部材、マリンライザー、フレキシブルジャンパー、フレキシブルライザーおよびドリリングライザーなどを含む海底油田採掘用部品部材、釣竿、リール、ゴルフクラブ、テニスラケット、バドミントンラケット、スキー板、ストック、スノーボード、アイスホッケースティック、スノーモービル、弓具、剣道竹刀、野球バット、水泳飛び込み台、障害者用スポーツ用品およびスポーツヘルメットなどを含むスポーツ・レジャー用品。)フレーム、ディスクホイール、リム、ハンドルおよびサドルなどを含む自転車部品、メガネ、鞄、洋傘およびボールペンなどを含む生活用品、ならびに、プラスチックパレット、コンテナ、物流資材、樹脂型、家具、洋傘、ヘルメット、パイプ、足場板、安全靴、プロテクター、燃料電池カバー、ドローンブレード、フレーム、ジグおよびジグフレームなどを含むその他産業用途の部品部材・用品等が含まれる。
【実施例0094】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0095】
[試験方法]
実施例および比較例で得られたサンプルの各種試験の方法を以下に示す。
【0096】
1)引張剪断接着強度
幅18mmの樹脂部材(もしくは金属部材)と、幅18mmの金属部材とが、5mm重なるように接着された複合部材(接着面積は90mm)を、引張試験機(インテスコ社製、万能試験機、モデル210)にセットした。そして、チャック間距離30mm、引張速度10mm/分の条件で、樹脂部材(もしくは金属部材)および金属部材を引き離すように、それぞれ長さ方向に引張り、これらが剥離する直前の強度を測定した。測定は5点行い、測定により得られた最大荷重(N)を接着面積(mm)で除した値の5点平均値を、引張剪断接着強度(MPa)とした。
【0097】
2)破壊形態
上述の引張剪断接着強度を測定した後の複合部材の破壊形態を目視にて検査を行った。樹脂部材または金属部材と接着剤との間で剥離している場合を「界面剥離」とし、接着剤が樹脂部材および金属部材に残存した状態で破壊した場合を「接着剤凝集破壊」とした。また、樹脂部材または金属部材の変形によって破壊が生じた場合を「材料破壊」とした。
【0098】
3)樹脂部材の表面の水接触角
樹脂部材の接着層と積層する面の水との接触角を、協和界面科学社製のFACE固体表面エナジー解析装置CA-XE型を用いて測定した。測定に使用した液体は蒸留水であり、樹脂部材の表面に滴下直後、その接触角を10点測定した。そして、これらの平均値を水接触角とした。
【0099】
4)樹脂部材の表面のO原子およびN原子の合計含有率
樹脂部材の接着層との積層面の表面の組成を、KRATOS社製のAXIS-NOVA装置により、X線光電子分光法(XPS)によって測定した。具体的には、炭素原子の含有率(C元素含有率)、酸素原子の含有率(O元素含有率)、および窒素原子の含有率(N元素含有率)をXPS法によってそれぞれ特定した。そして、下記式によって、酸素原子および窒素原子の合計含有率を算出した。
酸素原子および窒素原子の合計含有率=(O元素含有率+N元素含有率)/(C元素含有率+O元素含有率+N元素含有率)×100
【0100】
[複合部材の製造方法]
1)各部材の準備
樹脂部材、金属部材、および接着剤として、以下のものを準備した。
【0101】
1-1)樹脂部材
・製造例1
一方向に配列した炭素繊維に、ポリプロピレンが含浸したUDシート(三井化学社製、TAFNEX(登録商標)、繊維体積分率(VF):50%、厚さ、0.16mm)を準備した。これをロータリーカッターにて、所望の大きさにカットした。そして、シートの長手方向に対して繊維方向が0°のUDシートと、シートの長手方向に対して繊維方向が90°のUDシートとを交互に配置し、13枚のUDシートを重ね合わせた。
【0102】
上記積層体と同寸法の平板状真鍮板、200μm厚のテフロン(登録商標)シート、100μm厚のアルミニウム板をそれぞれ2枚ずつ準備し、一方の真鍮板の上に、一方のアルミニウム板および一方のテフロンシートを配置した。テフロンシートの上に、ステンレス製の2mm厚の額縁状(幅10mm)スペーサを配置し、当該スペーサの内側に前記で上述のUDシートの積層体を配置した。その後、他方のテフロンシート、他方のアルミニウム板、および他方の真鍮板を順に積層し、サンドイッチ状の金型内に上記UDシートの積層体を配置した。そして、サンドイッチ状の金型を東洋精機製作所社製のミニテストプレス機装置(PRESS-10)にセットし、温度180℃、圧力8MPaで2分間熱プレスを実施した。次に、サンドイッチ状の金型をプレス機より取り出し、東洋精機製作所社製のミニテストプレス機装置(MP-WCH)にて、温度20℃、圧力8MPaで2分間冷却プレスした。これにより、UD積層シートが熱融着した2mm厚みのUDシート積層体が得られた。得られたUDシート積層体を、スギノマシン社製のウォータージェットカッターを用いて、幅18mm×長さ45mmの寸法にカットした。このとき、最表面の連続繊維が積層体の長手方向と0°になるように、UDシート積層体を切り出した。当該UDシート積層体の一方の表面を、アセトン溶剤によって脱脂処理し、樹脂部材1とした。得られた樹脂部材1の水との接触角は108°であり、当該表面の上述のO原子およびN原子の合計含有率は0.1%であった。
【0103】
・製造例2
脱脂処理をしない以外は、製造例1と同様に作製したUDシート積層体に対し、積水化学工業社製のAP-T02装置を用いて、大気圧プラズマ処理を施した。大気圧プラズマの照射条件は、周波数30kHz、電圧180V、電流0.45Aとした。なお、プラズマ発生用電極の走査速度は2m/minであった。また、プラズマ発生用ガスは、窒素および酸素の混合ガスとした。得られた樹脂部材2のプラズマ処理面の水との接触角は60.6°であり、当該表面の上述のO原子およびN原子の合計含有率は13.2%であった。
【0104】
・製造例3~10
表1に記載の水接触角およびO原子およびN原子の合計含有率になるように、プラズマ発生用電極の走査速度を変更したこと以外は製造例2と同様にして、樹脂部材3~10を得た。
【0105】
1-2)金属部材
・製造例A
幅18mm×長さ45mm×厚み2mmにカットされたアルミニウム合金A5052に、以下のウェットエッチング処理を施し、表面に凹凸形状を作成し、アルミニウム合金1を得た。
(ウェットエッチング処理)
(1)脱脂処理したアルミニウム合金を、水酸化ナトリウム19質量%と酸化亜鉛3質量%とを含有するアルカリ系エッチング剤(30℃)が充填された処理槽1に2分間浸漬して表面処理し、その後、水洗した。
【0106】
(2)水洗後のアルミニウム合金板を、硫酸4.1質量%、塩化第二鉄3.9質量%、塩化第二銅0.2質量%と、を含有する酸系エッチング水溶液が充填された処理槽2に、30℃下で250秒間浸漬した。そして、アルミニウム合金板を揺動させることによってエッチングした。
【0107】
(3)処理槽2からアルミニウム合金板を取り出し、超音波洗浄(水中、1分間)し、その後、30質量%硝酸水溶液に40℃下で5分間浸漬した。そして、アルミニウム合金板を硝酸水溶液から取り出して十分に洗浄し、乾燥させた。
【0108】
・製造例B
アルミニウム合金ADC12に、アセトンにて脱脂処理を行い、幅18mm×長さ45mm×厚み2mmにカットしてアルミニウム合金2を得た。
【0109】
・製造例C
幅18mm×長さ45mm×厚み2mmにカットされたアルミニウム合金A6063に、製造例Aと同様のウェットエッチング処理を施し、表面に凹凸形状を作成し、アルミニウム合金3を得た。
【0110】
1-3)接着剤
以下の接着剤を使用した。
接着剤1:3M社製の2液型エポキシ系接着剤(オートミックスパネルボンド8115、主剤と硬化剤の混合比率(2:1))
接着剤2:三井化学社製の2液型エポキシ系接着剤(ストラクトボンドEW-D241、主剤と硬化剤の混合比率(3:2))
接着剤3:イーテック社製の2液型ウレタン系接着剤(MG5000/MG5032B、主剤と硬化剤の混合比率(3:2))
接着剤4:セメダイン社製の2液型アクリル系接着剤(メタルロックY612BLACK、主剤と硬化剤の混合比率(1:1))
接着剤5:スリーボンド社製の1液シアノアクリレート系接着剤(TB7737)
【0111】
2)接合部材の製造
2-1)実施例1
製造例2の樹脂部材2と、アルミニウム合金1(金属部材)とを、それぞれの長さ方向の端部側同士が、5mm重なるように、接着剤1(エポキシ系接着剤)で接着し、複合部材を得た。接着層で貼着された領域の大きさは、18mm×5mmであり、接着面積は90mmであった。また、接着剤1の塗布厚みは約200μmとし、常温環境下で1週間放置して、接着剤1を固化させた。さらに、恒温恒湿室(23℃、50%)環境下に1日放置した後に、得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表1に示す。
【0112】
2-2)実施例2、および比較例1、2
樹脂部材または金属部材を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合部材を得た。得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表1に示す。
【0113】
2-3)比較例3
樹脂部材を金属部材2(アルミニウム合金2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、貼着部材を得た。すなわち、アルミニウム合金2を2枚、接着剤1にて貼着した。得られた積層体の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
上記表1に示されるように、樹脂部材の接着剤を塗布する面の水との接触角が90°より大きい比較例1および2では、樹脂部材と接着層との間で、容易に界面剥離が生じた。一方で、水との接触角が90°以下である樹脂部材を用いた実施例1および2では、引張剪断接着強度が格段に高まった。なお、金属部材どうしを接着した場合には、引張剪断接着強度が高く、接着剤の凝集破壊が生じた(比較例3)。
【0116】
2-4)実施例3~13、および比較例4、5
樹脂部材または金属部材を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合部材を得た。得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表2に示す。
【0117】

【表2】
【0118】
2-5)実施例14、15、および比較例6
樹脂部材または金属部材を、表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合部材を得た。得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
上記表3に示されるように、樹脂部材の接着剤を塗布する面の水との接触角が90°より大きい比較例6では、樹脂部材と接着層との間で、容易に界面剥離が生じた。一方で、水との接触角が90°以下である樹脂部材を用いた実施例14、15では、引張剪断接着強度が格段に高まった。
【0121】
2-5)実施例16、および比較例7
樹脂部材または金属部材を、表4に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合部材を得た。得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表4に示す。
【0122】
【表4】
【0123】
上記表4に示されるように、樹脂部材の接着剤を塗布する面の水との接触角が90°より大きい比較例7では、樹脂部材と接着層との間で、容易に界面剥離が生じた。一方で、水との接触角が90°以下である樹脂部材を用いた実施例16では、引張剪断接着強度が格段に高まった。
【0124】
2-6)実施例17、および比較例8
樹脂部材または金属部材を、表5に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして複合部材を得た。得られた複合部材の引張剪断接着強度を測定し、破壊形態を確認した。結果を表5に示す。
【0125】
【表5】
【0126】
上記表5に示されるように、樹脂部材の接着剤を塗布する面の水との接触角が90°より大きい比較例8では、樹脂部材と接着層との間で、容易に界面剥離が生じた。一方で、水との接触角が90°以下である樹脂部材を用いた実施例17では、引張剪断接着強度が格段に高まった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の複合部材は、樹脂部材と金属部材との接着強度が非常に高い。したがって、自動車部材、建設部材等の構造部品や軽量部品として幅広い分野で利用可能である。