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特開2022-149215ノズルアセンブリ、及び、静電噴霧装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149215
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ノズルアセンブリ、及び、静電噴霧装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20220929BHJP
   B05B 1/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B05B5/025 A
B05B1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051264
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】501052270
【氏名又は名称】ナガセテクノエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】平賀 芳彦
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
【Fターム(参考)】
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA04
4F033DA05
4F033EA01
4F033NA01
4F034AA04
4F034BA07
4F034BB04
4F034BB15
4F034BB25
(57)【要約】
【課題】対象物の広い範囲に均一な液体膜を形成することが可能なノズルアセンブリ及び静電噴霧装置を提供する。
【解決手段】ノズルアセンブリ50は、同一の吐出方向(-Z方向)に液体を吐出することができる3つ以上のノズル20を有する備える。各ノズルは液体の吐出口22を有し、吐出方向から見て吐出口は第1の方向(X方向)に沿って1列に配置され、吐出方向及び第1の方向に対して直交する第2の方向(Y方向)から見て、3つ以上のノズル20の内の中央に配置されたノズル20Aから端に配置されたノズル20Bに向かって、各ノズル20の吐出口22の先端の位置が吐出方向と反対方向(Z方向)に順に後退するように、各ノズル20が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の吐出方向に液体を吐出することができる3つ以上のノズルを備えるノズルアセンブリであって、
各前記ノズルは液体の吐出口を有し、
前記吐出方向から見て、前記吐出口は第1の方向に沿って1列に配置され、
前記吐出方向及び前記第1の方向に対して直交する第2の方向から見て、
前記3つ以上ノズルの内の中央に配置されたノズルから端に配置されたノズルに向かって、各前記ノズルの吐出口の先端の位置が前記吐出方向と反対方向に順に後退するように、各前記ノズルが配置されている、ノズルアセンブリ。
【請求項2】
前記第2の方向から見て、隣接する前記ノズル間で前記吐出口の先端が後退する量はそれぞれ2~8mmとされている、請求項1に記載のノズルアセンブリ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のノズルアセンブリと、
前記吐出口と対向して配置される対向電極と、
前記対向電極、及び、前記ノズルアセンブリの少なくとも一部の間に電圧を印加する電源と、を備える静電噴霧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルアセンブリ、及び、静電噴霧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、帯電した液体をノズルから排出させ、静電気力による反発力で多数の微少な液滴を形成して対象物に供給する、いわゆる静電噴霧技術を利用した液塗布方法が知られている。これにより、対象物上に薄い液膜を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-58628号公報
【特許文献2】特開2004-136655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静電噴霧技術を利用して、対象物の広い領域に液体の膜を形成させたいと言う要望がある。
【0005】
しかしながら、発明者らが検討したところ、3以上のノズルを並べて静電噴霧による塗布域を広げようとしても、ノズル毎に静電噴霧の液滴の広がり方が大きく変わってしまい、ノズル間での塗布の厚みムラが大きくなって広範囲に均一な塗布膜が形成されにくいことが判明した。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、対象物の広い範囲に均一な液体膜を形成することが可能なノズルアセンブリ及び静電噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係るノズルアセンブリは、同一の吐出方向に液体を吐出することができる3つ以上のノズルを備える。
各前記ノズルは液体の吐出口を有し、
前記吐出方向から見て、前記吐出口は第1の方向に沿って1列に配置され、
前記吐出方向及び前記第1の方向に対して直交する第2の方向から見て、
前記3つ以上ノズルの内の中央に配置されたノズルから端に配置されたノズルに向かって、各前記ノズルの吐出口の先端の位置が前記吐出方向と反対方向に順に後退するように、各前記ノズルが配置されている。
【0008】
ここで、前記第2の方向から見て、隣接する前記ノズル間で前記吐出口の先端が後退する量はそれぞれ2~8mmとされていることができる。
【0009】
本発明の一側面に係る静電噴霧装置は、上記のいずれかのノズルアセンブリと、
前記吐出口と対向して配置される対向電極と、
前記対向電極、及び、前記ノズルアセンブリの少なくとも一部の間に電圧を印加する電源と、を備える
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象物の広い範囲に均一な液体膜を形成することが可能なノズルアセンブリ及び静電噴霧装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る静電塗布装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るノズルアセンブリのノズルプレートの正面図である。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係るノズルアセンブリを図2のIII-III面矢視図である。
図4図4は、本発明の第1実施形態に係るノズルアセンブリを吐出方向から見た概略図である。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係るノズルアセンブリの断面模式図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係るノズルアセンブリのノズル近傍の正面図である。
図7図7の(a)及び(b)は、本発明の第4,5実施形態に係るノズルアセンブリを吐出方向から見た概略である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の1実施形態に係る静電噴霧装置100について図1及び図2を参照して説明する。
【0014】
この静電噴霧装置100は、ノズルアセンブリ50、対向電極60、電源70を主として有する。
【0015】
ノズルアセンブリ50は、吐出方向(-Z方向)に向かって液体を吐出可能な4つのノズル20を有する。4つのノズル20は、2つのノズル20A、及び、2つのノズル20Bを有する。各ノズル20は、それぞれ、個別流路24と吐出口22を有する。4つの個別流路24は、上部で1つの集合流路25に接続され、集合流路25はラインL10に接続されている。
【0016】
図2に、図1のノズルアセンブリ50のノズルプレート10の正面図を、図3に、ノズルアセンブリの図2のIII-III線矢視図を、図3にノズルアセンブリを吐出方向から見た模式図を示す。
【0017】
図2に示すように、ノズルプレート10の表面には溝12が形成されている。溝12は、上部の集合部12Aと、集合部12Aから下部に向かって4つに分岐する分岐部12Bとを有する。分岐部12Bの下端はノズルプレート10の下端に達して外部に開放されている。
【0018】
図3に示すように、ノズルプレート10の表面上には、樹脂板30が重ねられており、ノズルプレート10の溝12の集合部12Aと樹脂板30との隙間が集合流路25を形成し、ノズルプレート10の溝12の分岐部12Bと樹脂板30との隙間が各ノズルの個別流路24を形成する。集合流路25には、樹脂板30に設けられた貫通孔30Aを介してラインL10が接続されている。
【0019】
図1に示すように、各ノズルの流路24は、下方にある対向電極60に向かうように鉛直方向に伸び、流路24は互いに平行に配置され、各流路24の下端には液体を下向き(-Z方向)に吐出する吐出口22が設けられている。
【0020】
図2及び図4に示すように、吐出方向から見て、吐出口22はX方向(第1の方向)に沿って1列に配置されてノズルアレイARを形成し、X方向に伸びる直線上に沿って配置されている。
【0021】
ノズル20の流路24の軸に垂直な断面の径(円相当径)は0.1~1.0mmとすることができる。流路24の断面の形状は矩形であってもよく、半円などの円弧を含む形状でもよい。
【0022】
個別流路24の長さに特に限定はなく、例えば、5~20mmとすることができる。
【0023】
各個別流路24は、流路24の吐出方向(-Z方向)と垂直な方向(X方向:水平方向)に等間隔に離間して配置されている。図2に示すノズル20の間隔Hは、6~16mmとすることができる。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、ノズルプレート10のノズル20に対応する部分(下端部)はそれぞれ吐出方向に突き出たV字形状とされ、図3に示すように、当該V字の先端部分は、樹脂板30に覆われておらず樹脂板30よりも突出している。すなわち、ノズル20の下端部では、ノズルプレート10の溝12のみにより個別流路24及び吐出口22が形成される。
【0025】
本実施形態においては、図2に示すように、ノズル20の吐出方向(-Z方向)及びノズル20(流路24及び吐出口22)が並ぶX方向(第1の方向)に対して垂直な方向(Y方向:第2の方向)からみて、4つのノズル20の吐出口22の先端の位置がすべて同じではなく、ノズル20の場所によって吐出口22の先端の位置が異なるように配置されている。
【0026】
すなわち、Y方向(第2の方向)からみて、ノズルアレイARにおいてノズルの並ぶX方向の中央に配置されたノズル20Aの吐出口22の先端(下端)を基準とし、X方向における外側(端側)に隣り合って配置されるノズル20Bの吐出口22の先端(下端)の位置が、吐出方向(-Z方向:流路の軸方向)と反対方向(上向きZ方向)に後退するように、それぞれのノズル20(ノズルプレート10の下端)の位置が設定されている。
【0027】
隣接するノズル20間において、吐出口22の先端が吐出方向において後退する距離Dは、2~8mmとすることができる。
【0028】
ノズルプレート10の材料は、鋼、ステンレススチール、アルミニウムなどの導電性材料である。ノズルプレート10には電源70が電気的に接続されており、集合流路25及び/又は個別流路24内を流れる液体に電圧(好ましくは正電圧)を印加させ、帯電させることができる。
【0029】
図3に示すように、ノズルプレート10における樹脂板30が重ねられた面とは反対側の面には、樹脂板40が重ねられ、ノズルプレート10が保護されている。
【0030】
樹脂板30,40の材料に特に限定はないが、絶縁性材料であることが好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂であることが好適である。
【0031】
図1に戻って、対向電極60は、ノズル20の下方(吐出方向)に配置されている。対向電極60は、ノズル20の軸線の延長線上に配置されていることが好適であり、ノズル20から離間されている。対向電極60は接地されていることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、対向電極60は板状であり、対向電極60上に、静電噴霧により液膜を形成すべき表面を有する基板SBが載置されている。ノズル20と基板SBとの距離も特に限定されないが、例えば、10~60mm程度とすることができる。
【0033】
電源70は、ノズルアセンブリ50のノズルプレート10と対向電極60との間に電圧を印加し、ノズルアセンブリ内の液体を帯電させる。通常、電源の電圧は、直流であり、電圧は特に限定されないが、本実施形態では、5~20kVとすることができる。電圧は、対向電極60に対して、ノズル側がプラスとなるように印加することが好ましい。電源の電圧は交流であってもよい。
【0034】
液体供給部80は、ラインL10を介してノズルアセンブリ50に対して静電噴霧をする液体を供給する装置である。
【0035】
液体供給部80は、静電噴霧用液を貯留する槽72と、槽72からラインL10を介してノズルアセンブリ50の集合流路25を介して各ノズル20の流路24に静電噴霧用の液体を供給するポンプ74とを備える。本実施形態では、ポンプ74が密閉状態にある槽72にラインL20を介して空気を供給することにより、ラインL10を介して静電噴霧用の液体がノズル20に供給される。
【0036】
続いて、本実施形態の静電噴霧装置100を用いる液膜の塗布方法について説明する。
【0037】
まず、対向電極60上に、塗布対象となる基板SBを載置する。続いて、電源70により、ノズルアセンブリ50と対向電極60との間に電圧を印加する。また、ポンプ74を駆動して、槽72内の液体を、ラインL10を介してノズルアセンブリ50内の流路24、25に供給する。ノズルプレート10により電荷が与えられてノズルアセンブリ50内の液体が帯電し、ノズル20の各吐出口22の先端から突出する液体はテイラーコーンを形成する。コーンの先では、静電気力により液滴が分裂し、吐出方向と直交する2方向に広がりながら多数の微少な液滴群が反対電荷を有する対向電極60に向かって射出される。
【0038】
これにより、静電噴霧用液の多数の液滴群を基板SB上に供給し、基板上に液膜を形成することができる。
【0039】
本実施形態によれば、上述のノズルアセンブリ50を用いているので、3本以上のノズル20から液体を静電噴霧する場合であっても、各ノズル20からの液体の広がり具合及び供給量をノズル間で均一にし易く、広範囲にわたって均一に液体によるコーティングが可能となる。
【0040】
これに対して、各ノズルの吐出口の先端位置が同じであると、一列に並ぶノズルアレイの内の外側のノズルほど、液滴が広がりやすくなると共に液の吐出量も増えてしまい、液体の供給量及び/又は供給範囲の大きさがノズル毎に不均一となり、液膜の厚みが不均一となってしまう。
【0041】
上述の構成のノズルアセンブリ50により本発明の効果が得られるのは以下の理由が考えられる。上述のように、各ノズルの吐出口の先端位置が同じであると、外側のノズルの方が、液の吐出量が多くなったり、液の分裂によるミストの広がりが大きくなったりする傾向がある。本実施形態では、外側に行くほどノズルの吐出口の先端の位置が後退するようにノズルが配置されているので、外側のノズルの電界の大きさが中央に比べて小さくなることが一因と考えられる。
【0042】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態とはノズルアセンブリのみが異なるので、ノズルアセンブリのみについて説明する。
【0043】
図5に示すように、本実施形態に係るノズルアセンブリ50は、樹脂製の容器31を有している。容器31内には、上部チャンバ34Uと、下部チャンバ34Lと、上部チャンバ34Uと下部チャンバ34Lとを結ぶ連結通路34Cとが設けられている。連結通路34Cの内面には、管状の導電材32が設けられている。導電材32は、電源70と電気的に接続されており、容器31内に供給される液体を帯電させることができる。導電材32の材料は、第1実施形態のノズルプレートと同様とすることができる。導電材32の軸方向長さは10~50mmとすることができる。
【0044】
下部チャンバ34Lの下端には、下部チャンバ34Lと外部とを連通するように、4つのノズル20が設けられている。4つのノズル20は、2つのノズル20A、及び、2つのノズル20Bを有する。
【0045】
各ノズルの流路24は、下方にある対向電極に向かうように鉛直方向に伸び、流路24は互いに平行に配置され、各流路24の下端には液体を下向き(-Z方向)に吐出する吐出口22が設けられている。
【0046】
図示は省略するが、図4のように、吐出方向から見て、吐出口22はX方向(第1の方向)に沿って1列に配置されてノズルアレイARを形成し、X方向に伸びる直線上に沿って配置されている。
【0047】
ノズル20の流路24の軸に垂直な断面の径(円相当径)及び形状は第1実施形態と同様にすることができる。流路24の断面の形状は矩形であってもよく、半円などの円弧を含む形状でもよい。流路24の長さに特に限定はなく、例えば、4~16mmとすることができる。
【0048】
各流路24は、流路24の吐出方向(鉛直方向)と垂直な方向(X方向:水平方向)に等間隔に離間して配置されている。ノズル20の間隔Hは第1実施形態と同様にすることができる。
【0049】
本実施形態においても、ノズル20の吐出方向及びノズル20が並ぶX方向(第1の方向)に対して垂直な方向(Y方向:第2の方向)から見て、4つのノズル20の吐出口22の先端の位置がすべて同じではなく、ノズル20の場所によって吐出口22が異なるように配置されている。
【0050】
すなわち、Y方向(第2の方向)からみて、ノズルアレイARの並ぶX方向において中央に配置されたノズル20Aの吐出口22の先端(下端)を基準とし、X方向における外側(端側)に隣り合って配置されるノズル20Bの吐出口22の先端(下端)の位置が、吐出方向(-Z方向:流路の軸方向)と反対方向(上向きZ方向)に後退するように、それぞれのノズル20(ノズルプレート10の下端)の位置が設定されている。
【0051】
隣接するノズル間において、吐出口22の先端が吐出方向において後退する距離Dは第1実施形態と同様とすることができる。
【0052】
ノズル20の材料に限定はなく、ステンレスチールなどの導電性材料でもよく、樹脂、セラミックなどの絶縁性材料でもよい。容器31の材料は、樹脂などの電機絶縁材料とすることができる。
【0053】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
本発明は上記実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。
【0055】
例えば、ノズルアセンブリにおける同一の吐出方向に液体を吐出することができるノズルの数は4つに限定されず、3つ以上であればよく、5つ以上でもよい。
【0056】
いずれの場合でも、吐出方向から見て、吐出口は第1の方向に沿って1列に配置され、吐出方向及び第1の方向に対して直交する第2の方向から見て、X方向にならぶ3つ以上ノズルの内の中央に配置されたノズルから端に配置されたノズルに向かって、各ノズルの吐出口の先端の位置が吐出方向と反対方向に順に後退するように、各ノズルが配置されていればよい。
【0057】
ここで、中央に配置されたノズルとは、ノズルの数が偶数の場合には2つあり、ノズルの数が奇数の場合には1つとなる。
【0058】
なお、「同一の吐出方向」とは、ノズルの軸が互いに完全に平行である場合のみならず、ノズルの軸同士がなす角度が±45°の範囲にある場合を含む。当該なす角度は35°以下が好適である。
【0059】
図6に、ノズルが7本の場合の例を示す。中央のノズル20A、その隣のノズル20B、その隣のノズル20C,その隣の20Dの順に、吐出口22の先端の位置が吐出方向とは反対方向に後退している。
【0060】
また、ノズルアセンブリ50は、このように吐出口の先端の位置がずらして配置されたノズルアレイARを、複数有していてもよい。図7の(a)及び(b)は、複数のノズル20が上記のように配置されたノズルアレイARを複数有する例を示し、ノズルアセンブリ50をノズル20の吐出方向から見た概略図であり、ノズル20及び吐出口22以外は簡略化して記載してある。
【0061】
図7の(a)では、ノズル20が上記のようにX方向に並んだノズルアレイARを、Y方向に離間して複数備えているる。各ノズルアレイARは、中央のノズル20A、中央から1つとなりのノズル20B、中央から2つとなりのノズル20C,一番端のノズル20Dを有し、ノズル20Aからノズル20Dの順に、吐出口22の先端の位置が吐出方向(―Z方向)とは反対方向に後退している。
【0062】
図7の(b)では、ノズル20のノズルアレイARを、中央のノズルを中心にZ軸周りに回転させて3つ配置した形態でもよい。この場合、3つのノズルアレイARにおいて、中央のノズルを共有することになる。
【0063】
ノズルアセンブリの細かい形態も上記の形態には限定されず、容器等によるノズルの支持方法や、ノズルや容器等の材料、帯電用の電極の位置なども特に限定はない。
【実施例0064】
(実施例1)
第1実施形態(図2図4)に示すようなプレート型のノズルアセンブリを用意した。ノズルアセンブリ50は、4つのノズル20を有し、中央の2つのノズル20A,20Aに対する、外側のノズル20B,20Bの吐出口22の先端の位置における吐出方向とは反対向きに後退する距離Dは2mmとした。ノズル間の間隔Hは8mmとし、ノズルの径は0.5mmとした。
【0065】
当該ノズルアセンブリ50を有する図1の静電塗布装置で、塗布実験を行った。
電圧は15kV又は11kVとし、ノズル20Aの先端と対向電極との距離は60mmとし、液としてポリイミドワニスを1mL/minで供給した。
【0066】
対向電極60の上に設けられた基板SB上に、4つのノズルから出るミストで液膜を形成した。電圧15kV及び11kVのいずれでも、4つノズルから静電噴霧によるミストが形成され、基板上で各ノズルからのスプレーにより形成される液膜の円の大きさもほぼ均等であった。
【0067】
(比較例1)
距離D=0、すなわち、4つのノズルの吐出口の先端の位置に差を設けずに4つとも同じにしたノズルアセンブリを用意し、実施例1と同様に塗布を行った。
【0068】
電圧15kVでは、4つのノズルから静電噴霧を行えたが、両外側からの吐出量が多くなり、基板上で各ノズルからのスプレーにより形成される液膜の円の大きさは、中央の2つに比べ外側の2つの方が直径が1.5倍程度となった。
【0069】
電圧11kVでは、外側の2つのノズルからのみ静電噴霧がなされ、中央の2つのノズルからの静電噴霧は行われなかった。
【0070】
(実施例2)
第2実施形態(図5)に示すようなノズルアセンブリ50を用意した。ノズルアセンブリは、4つのノズル20を有し、中央の2つのノズル20A,20Aに対する、外側のノズル20B,20Bの吐出口22の先端の位置の後退する距離Dは2mmとした。ノズル間の間隔H、8mmとし、ノズルの径は0.5mmとした。
【0071】
当該ノズルアセンブリ50を用いた図1の静電塗布装置で、塗布実験を行った。電圧を15kV又は10kVとし、ノズル20Aの先端と対向電極との距離は60mmとし、液としてポリイミドワニスを供給し、供給量は1mL/minとした。
【0072】
対向電極の上に設けられた基板上に、4つのノズルから出るミストで液膜を形成した。電圧15kV及び10kVのいずれでも、4つノズルから静電噴霧によるミストが形成され、基板上で各ノズルからのスプレーにより形成される液膜の円の大きさもほぼ均等であった。
【0073】
(比較例2)
距離D=0、すなわち、ノズルの吐出口の先端の位置に差を設けずに4つとも同じにしたノズルアセンブリを用意し、実施例2と同様に塗布を行った。
【0074】
電圧15kVでは、4つのノズルから静電噴霧を行えたが、両外側から出たミストは中央の2つに比べて大きく広がり、円の半径は中央の2倍以上となった。
【0075】
電圧10kVでも、4つのノズルから静電噴霧を行えたが、中央の2つのミストはほとんど広がらなかった。
【符号の説明】
【0076】
20…ノズル、20A…中央のノズル、22…吐出口、50…ノズルアセンブリ、60…対向電極、70…電源、80…液体供給部、100…静電噴霧装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7