(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149226
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】センサ付きモータおよび電動オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20220929BHJP
H02K 21/14 20060101ALI20220929BHJP
H02K 15/03 20060101ALI20220929BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K21/14 M
H02K15/03 G
H02K7/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051282
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】北山 直嗣
【テーマコード(参考)】
5H607
5H611
5H621
5H622
【Fターム(参考)】
5H607AA14
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF06
5H607GG08
5H607HH01
5H607HH09
5H607JJ03
5H611BB01
5H611BB07
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611UA04
5H611UB01
5H621HH02
5H621JK02
5H622CA01
5H622CA02
5H622CA10
5H622QB01
(57)【要約】
【課題】磁気センサの位置調整が不要なセンサ付きモータを提供する。
【解決手段】ロータシャフト10の外周に固定して設けられたロータマグネット11と、ロータマグネット11を囲むように配置された環状のステータ12と、ロータシャフト10の軸端に固定して設けられたセンサマグネット13と、センサマグネット13に対向して配置された回転位相検出用の磁気センサ14とを有するセンサ付きモータにおいて、ロータマグネット11の磁極23とセンサマグネット13の磁極32とが予め設定した所定の位相関係となるようにロータマグネット11とセンサマグネット13を周方向に位置決めする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータシャフト(10)と、
前記ロータシャフト(10)の外周に固定して設けられ、周方向に交互に並ぶ複数の磁極(23)をもつロータマグネット(11)と、
前記ロータマグネット(11)を囲むように配置された環状のステータ(12)と、
前記ロータシャフト(10)の軸端に固定して設けられ、周方向に交互に並ぶ複数の磁極(32)をもつセンサマグネット(13)と、
前記センサマグネット(13)に対向して配置された回転位相検出用の磁気センサ(14)と、を有するセンサ付きモータにおいて、
前記ロータマグネット(11)の前記磁極(23)と前記センサマグネット(13)の前記磁極(32)とが予め設定した所定の位相関係となるように前記ロータマグネット(11)と前記センサマグネット(13)を周方向に位置決めしたことを特徴とするセンサ付きモータ。
【請求項2】
前記ロータシャフト(10)の外周に、前記ロータシャフト(10)の軸線と平行な平面に沿って前記ロータシャフト(10)の外周を切り取った形状の面取り部(33)を形成し、
前記面取り部(33)を基準に前記ロータマグネット(11)を前記ロータシャフト(10)に周方向に位置決めして固定するとともに、前記面取り部(33)を基準に前記センサマグネット(13)を前記ロータシャフト(10)に周方向に位置決めして固定した請求項1に記載のセンサ付きモータ。
【請求項3】
前記センサマグネット(13)は、センサマグネットホルダ(27)を介して前記ロータシャフト(10)の軸端に固定され、
前記センサマグネットホルダ(27)に、周方向の位置決めの基準となる切欠き(30)を形成し、
前記切欠き(30)と前記面取り部(33)との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように前記センサマグネットホルダ(27)を前記ロータシャフト(10)に周方向に位置決めして固定した請求項2に記載のセンサ付きモータ。
【請求項4】
前記センサマグネット(13)は、センサマグネットホルダ(27)を介して前記ロータシャフト(10)の軸端に固定され、
前記センサマグネット(13)の前記磁極(32)と前記面取り部(33)との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように前記センサマグネットホルダ(27)を前記ロータシャフト(10)に周方向に位置決めした状態で前記センサマグネットホルダ(27)を前記ロータシャフト(10)の外周に加締めて固定した請求項2に記載のセンサ付きモータ。
【請求項5】
着磁後の前記センサマグネット(13)を前記ロータシャフト(10)の軸端に固定するとともに未着磁の前記ロータマグネット(11)を前記ロータシャフト(10)の外周に固定し、その状態で、前記センサマグネット(13)の磁極(32)の位置を基準に前記ロータマグネット(11)を着磁した請求項1に記載のセンサ付きモータ。
【請求項6】
未着磁の前記センサマグネット(13)を前記ロータシャフト(10)の軸端に固定するとともに未着磁の前記ロータマグネット(11)を前記ロータシャフト(10)の外周に固定し、その状態で、前記センサマグネット(13)と前記ロータマグネット(11)を同時に着磁した請求項1に記載のセンサ付きモータ。
【請求項7】
前記ロータシャフト(10)の外周を前記ロータマグネット(11)と前記センサマグネット(13)の間で回転可能に支持する転がり軸受(34)を有し、
前記転がり軸受(34)を前記ロータシャフト(10)の外周に装着した状態で前記着磁を行なった請求項6に記載のセンサ付きモータ。
【請求項8】
前記ロータマグネット(11)が、継ぎ目のないリング状のリングマグネットである請求項1から7のいずれかに記載のセンサ付きモータ。
【請求項9】
前記ロータマグネット(11)が、断面円弧状の複数のセグメントマグネットを周方向に並べて配置したものである請求項1から4のいずれかに記載のセンサ付きモータ。
【請求項10】
前記センサマグネット(13)のもつ前記磁極(32)の数が、前記ロータマグネット(11)のもつ前記磁極(23)の数よりも少ない請求項1から9のいずれかに記載のセンサ付きモータ。
【請求項11】
前記センサマグネット(13)は、前記複数の磁極(32)として180度ピッチで周方向に並ぶN極とS極をもつ2極マグネットである請求項1から10のいずれかに記載のセンサ付きモータ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のセンサ付きモータ(1)と、
前記センサ付きモータ(1)で回転駆動されるポンプロータ(2)と、を有する電動オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサ付きモータ、およびそのセンサ付きモータを用いた電動オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
センサ付きモータとして、例えば、特許文献1のものが知られている。特許文献1のセンサ付きモータは、ロータシャフトと、ロータシャフトの外周に固定して設けられたロータマグネットと、ロータマグネットを囲むように配置された環状のステータと、ロータシャフトの軸端に固定して設けられたセンサマグネットと、センサマグネットに対向して配置された回転位相検出用の磁気センサとを有する。ロータマグネットは、周方向に交互に並ぶ複数の磁極を有する永久磁石である。また、センサマグネットも、周方向に交互に並ぶ複数の磁極を有する永久磁石である。
【0003】
このセンサ付きモータは、ステータに電流を供給すると、ステータとロータマグネットの間に働く電磁力によってロータシャフトが回転する。ロータシャフトが回転すると、ロータシャフトの軸端のセンサマグネットも回転し、センサマグネットに対向して配置された磁気センサの出力信号が変化する。ステータに供給する電流の制御は、この磁気センサの出力信号に基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のセンサ付モータは、組み立てた後に、磁気センサの位置調整を行なう必要がある。すなわち、特許文献1においては、ロータマグネットの磁極に対するセンサマグネットの磁極の位相を管理せずにモータの組み立てを行なっているので、モータを組み立てた後、ロータシャフトが回転するときに磁気センサで検出されるセンサマグネットの磁束の変化が、ステータに対するロータマグネットの回転位相に対してずれを含んだものとなり、そのままでは、ステータに対するロータマグネットの回転位相を正確に検出することができない。
【0006】
そこで、特許文献1では、ステータに対するロータマグネットの回転位相を正確に検出できるようにするため、モータを組み立てた後に、手動でロータシャフトを少しずつ回転させ、その回転に応じて磁気センサで検出されるセンサマグネットの磁束の変化が最適なものとなるように、磁気センサの固定位置(取付角度)を調整する必要があった。
【0007】
しかしながら、磁気センサの位置調整を行なうには、磁気センサの位置調整用のプログラムや、磁気センサの位置調整用の設備や、磁気センサの位置調整のための時間と労力が必要である。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、磁気センサの位置調整が不要なセンサ付きモータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明では、以下の構成のセンサ付きモータを提供する。
ロータシャフトと、
前記ロータシャフトの外周に固定して設けられ、周方向に交互に並ぶ複数の磁極をもつロータマグネットと、
前記ロータマグネットを囲むように配置された環状のステータと、
前記ロータシャフトの軸端に固定して設けられ、周方向に交互に並ぶ複数の磁極をもつセンサマグネットと、
前記センサマグネットに対向して配置された回転位相検出用の磁気センサと、を有するセンサ付きモータにおいて、
前記ロータマグネットの前記磁極と前記センサマグネットの前記磁極とが予め設定した所定の位相関係となるように前記ロータマグネットと前記センサマグネットを周方向に位置決めしたことを特徴とするセンサ付きモータ。
【0010】
このようにすると、ロータマグネットとセンサマグネットが、ロータマグネットの磁極とセンサマグネットの磁極とが予め設定した所定の位相関係となるように周方向に位置決めされているので、ロータシャフトが回転するときに磁気センサで検出されるセンサマグネットの磁束の変化と、ステータに対するロータマグネットの回転位相とを、常にずれを含まない一定の関係とすることができる。そのため、磁気センサの周方向の位置調整が不要である。
【0011】
前記ロータシャフトの外周に、前記ロータシャフトの軸線と平行な平面に沿って前記ロータシャフトの外周を切り取った形状の面取り部を形成し、
前記面取り部を基準に前記ロータマグネットを前記ロータシャフトに周方向に位置決めして固定するとともに、前記面取り部を基準に前記センサマグネットを前記ロータシャフトに周方向に位置決めして固定することができる。
【0012】
このようにすると、面取り部を基準にロータマグネットが周方向に位置決めされるので、ロータマグネットの磁極と面取り部との周方向の位置関係が所定の位置関係となる。また、面取り部を基準にセンサマグネットが周方向に位置決めされるので、センサマグネットの磁極と面取り部との周方向の位置関係が所定の位置関係となる。その結果、面取り部を基準に、ロータマグネットの磁極とセンサマグネットの磁極とを所定の位相関係とすることができる。
【0013】
前記センサマグネットが、センサマグネットホルダを介して前記ロータシャフトの軸端に固定された構成を採用する場合、
前記センサマグネットホルダに、周方向の位置決めの基準となる切欠きを形成し、
前記切欠きと前記面取り部との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように前記センサマグネットホルダを前記ロータシャフトに周方向に位置決めして固定することができる。
【0014】
このようにすると、センサマグネットホルダの切欠きを基準に、センサマグネットの磁極と面取り部との周方向の位置関係を所定の位置関係にすることができる。
【0015】
前記センサマグネットが、センサマグネットホルダを介して前記ロータシャフトの軸端に固定された構成を採用する場合、
前記センサマグネットの前記磁極と前記面取り部との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように前記センサマグネットホルダを前記ロータシャフトに周方向に位置決めした状態で前記センサマグネットホルダを前記ロータシャフトの外周に加締めて固定することができる。
【0016】
このようにすると、センサマグネットホルダの加締めにより、センサマグネットの磁極と面取り部との周方向の位置関係を所定の位置関係とすることができる。
【0017】
着磁後の前記センサマグネットを前記ロータシャフトの軸端に固定するとともに未着磁の前記ロータマグネットを前記ロータシャフトの外周に固定し、その状態で、前記センサマグネットの磁極の位置を基準に前記ロータマグネットを着磁することができる。
【0018】
このようにすると、センサマグネットの磁極の位置を基準にロータマグネットを着磁するので、ロータマグネットの磁極とセンサマグネットの磁極とを所定の位相関係とすることができる。
【0019】
未着磁の前記センサマグネットを前記ロータシャフトの軸端に固定するとともに未着磁の前記ロータマグネットを前記ロータシャフトの外周に固定し、その状態で、前記センサマグネットと前記ロータマグネットを同時に着磁することができる。
【0020】
このようにすると、センサマグネットとロータマグネットを同時に着磁するので、ロータマグネットの磁極とセンサマグネットの磁極とを所定の位相関係とすることができる。
【0021】
前記ロータシャフトの外周を前記ロータマグネットと前記センサマグネットの間で回転可能に支持する転がり軸受を有する場合、
前記転がり軸受を前記ロータシャフトの外周に装着した状態で前記着磁を行なうことができる。
【0022】
前記ロータマグネットとしては、継ぎ目のないリング状のリングマグネットを採用することができる。
【0023】
また、前記ロータマグネットとして、断面円弧状の複数のセグメントマグネットを周方向に並べて配置したものを採用することもできる。
【0024】
前記センサマグネットのもつ前記磁極の数は、前記ロータマグネットのもつ前記磁極の数よりも少なく設定することができる。
【0025】
前記センサマグネットとしては、前記複数の磁極として180度ピッチで周方向に並ぶN極とS極をもつ2極マグネットを採用することができる。
【0026】
また、この発明では、上記のセンサ付きモータを用いた電動オイルポンプとして、以下の構成のものも併せて提供する。
上記のセンサ付きモータと、
前記センサ付きモータで回転駆動されるポンプロータと、を有する電動オイルポンプ。
【発明の効果】
【0027】
この発明のセンサ付きモータは、ロータマグネットとセンサマグネットが、ロータマグネットの磁極とセンサマグネットの磁極とが予め設定した所定の位相関係となるように周方向に位置決めされているので、ロータシャフトが回転するときに磁気センサで検出されるセンサマグネットの磁束の変化と、ステータに対するロータマグネットの回転位相とを、常にずれを含まない一定の関係とすることができる。そのため、磁気センサの周方向の位置調整が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】この発明の実施形態のセンサ付きモータを用いた電動オイルポンプを示す断面図
【
図2】
図1の電動オイルポンプに組み込む前の状態のロータシャフトユニット(ロータシャフトにロータマグネットとセンサマグネットを取り付けたもの)を示す断面図
【
図4】
図2のロータシャフトユニットをセンサマグネットの側から見た端面図
【
図5】
図2のロータシャフトユニットのセンサマグネットの近傍の拡大図
【
図6】
図5のセンサマグネットホルダの外周を加締めることでセンサマグネットをセンサマグネットホルダに固定した変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に、この発明の実施形態のセンサ付きモータを用いた電動オイルポンプを示す。電動オイルポンプは、センサ付きモータ1と、センサ付きモータ1で回転駆動されるポンプロータ2と、センサ付きモータ1およびポンプロータ2を収容するハウジング3とを有する。
【0030】
ハウジング3は、筒状のモータハウジング4と、モータハウジング4と軸方向に隣接した配置された筒状のポンプハウジング5と、モータハウジング4の内部空間とポンプハウジング5の内部空間の間を仕切る隔壁部6と、モータハウジング4の隔壁部6の側とは反対側の端部開口を閉じるモータ蓋部7と、ポンプハウジング5の隔壁部6の側とは反対側の端部開口を閉じるポンプ蓋部8とを有する。
【0031】
センサ付きモータ1は、ロータシャフト10と、ロータシャフト10の外周に固定して設けられたロータマグネット11と、ロータマグネット11を囲むように配置された環状のステータ12と、ロータシャフト10の軸端に固定して設けられたセンサマグネット13と、センサマグネット13に対向して配置された回転位相検出用の磁気センサ14とを有する。
【0032】
ハウジング3の隔壁部6には、軸方向の貫通孔15が形成され、その貫通孔15をロータシャフト10が挿通している。隔壁部6には、ロータシャフト10の外周に摺接するオイルシール16が組み込まれている。オイルシール16は、モータハウジング4の内部空間とポンプハウジング5の内部空間の間をシールしている。また、隔壁部6には、ロータシャフト10を回転可能に支持する転がり軸受17が組み込まれている。
【0033】
ポンプロータ2は、複数の歯を外周にもつインナーロータ18と、複数の歯を内周にもつ環状のアウターロータ19で構成されている。インナーロータ18は、ロータシャフト10の隔壁部6からポンプハウジング5内に突出した部分の外周に回り止めされ、ロータシャフト10が回転すると、ロータシャフト10と一体にインナーロータ18が回転するようになっている。
【0034】
アウターロータ19は、インナーロータ18の中心(ロータシャフト10の回転中心)に対して偏心した位置を中心に回転するように、ポンプハウジング5の内周で回転可能に支持されている。アウターロータ19の内周の歯の数は、インナーロータ18の外周の歯の数よりも1つ多い。アウターロータ19の内周の歯は、インナーロータ18の外周の歯と周方向の一箇所で噛み合っている。
【0035】
隔壁部6には、インナーロータ18の外周とアウターロータ19の内周の間に形成されるチャンバの吸入側部分に連通する吸入ポート20と、インナーロータ18の外周とアウターロータ19の内周の間に形成されるチャンバの吐出側部分に連通する吐出ポート21とが形成されている。
【0036】
モータハウジング4の内周には、ステータ12が固定されている。ステータ12は、周方向に間隔をおいて巻回された複数の電磁コイル(図示せず)を有し、その電磁コイルに電流を供給することで、ロータマグネット11に回転トルクを付与する。
【0037】
ロータマグネット11は、ロータシャフト10の外周に固定したロータコア22の外周に固定されている。すなわち、ロータマグネット11は、ロータシャフト10の外周にロータコア22を介して固定されている。ロータコア22は、電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を軸方向に積層して形成された積層体である。ロータコア22として、金属磁性粉末の圧粉体を使用してもよい。
【0038】
図4に示すように、ロータマグネット11は、周方向に交互に並ぶ複数(S極とN極の合計2極を整数倍した偶数)の磁極23を有する永久磁石である。すなわち、ロータマグネット11は、S極とN極の磁極23が、ロータマグネット11の外周に沿って周方向に交互に現れるように着磁されている。ロータマグネット11としては、継ぎ目のないリング状のリングマグネット(未着磁の継ぎ目のないリング状のマグネット素材を着磁して形成したもの)や、断面円弧状の複数のセグメントマグネットを周方向に並べて配置したものを採用することができる。ロータマグネット11として、リング状の強磁性体(ロータコア22)の内部に複数の永久磁石を埋め込んだもの(いわゆるIPMモータのロータ)を採用することも可能である。
【0039】
図1に示すように、モータハウジング4とポンプハウジング5の径方向外側には、モータ基板収容凹部24が一体に形成され、そのモータ基板収容凹部24内に、ステータ12に供給する電流を制御するモータ駆動用電子回路基板25が収容されている。モータ基板収容凹部24は、ハウジング3に固定したカバーで外部から覆われている。
【0040】
図2に示すように、センサマグネット13は、センサマグネットホルダ27を介してロータシャフト10の軸端に固定されている。センサマグネットホルダ27は、センサマグネット13の外周に嵌合するセンサマグネット嵌合筒部28と、ロータシャフト10の軸端の外周に嵌合するシャフト嵌合筒部29とを有する。
【0041】
図5に示すように、センサマグネット13は、ロータシャフト10の軸方向の端面と軸方向に対向して配置され、そのセンサマグネット13がロータシャフト10と一体に回転するようにセンサマグネット嵌合筒部28に固定されている。センサマグネット13のセンサマグネットホルダ27への固定は、圧入あるいは接着により行なうことができる。
図6に示すように、センサマグネットホルダ27の外周を加締めることにより固定してもよい。シャフト嵌合筒部29は、ロータシャフト10の軸端の外周にスライド可能に嵌合し、そのシャフト嵌合筒部29を加締めることで固定されている。
【0042】
図3に示すように、センサマグネットホルダ27には、周方向の位置決めの基準となる切欠き30が形成されている。切欠き30は、センサマグネット嵌合筒部28に設けられた径方向外向きのフランジ部31の全周のうちの1箇所に形成されている。
【0043】
センサマグネット13は、周方向に交互に並ぶ複数の磁極32を有する永久磁石である。すなわち、センサマグネット13は、複数の磁極32が、センサマグネット13の軸方向端面(
図1に示す磁気センサ14との対向面)に周方向に交互に現れるように着磁されている。図では、センサマグネット13は、複数の磁極32として180度ピッチで周方向に並ぶN極とS極をもつ2極マグネットである。センサマグネット13のもつ磁極32の数(図では2極)は、ロータマグネット11のもつ磁極23の数(図では12極)よりも少ない。
【0044】
ロータシャフト10のセンサマグネット13が固定される側とは反対側の端部外周に、面取り部33が形成されている。面取り部33は、ロータシャフト10の軸線と平行な平面に沿ってロータシャフト10の外周を切り取った形状の部分である。この面取り部33は、インナーロータ18(
図1参照)の内周と嵌合してインナーロータ18をロータシャフト10に回り止めする。図では、ロータシャフト10の外周に2箇所の面取り部33を形成して二面取り形状としているが、ロータシャフト10の外周の1箇所のみに面取り部33を形成してDカット形状とすることも可能である。
【0045】
図2に示すように、ロータシャフト10の外周の、センサマグネットホルダ27の嵌合部分とロータコア22の嵌合部分の間の部分には、転がり軸受34が装着されている。
図1に示すように、転がり軸受34の外周は、モータ蓋部7に形成された軸受支持筒35の内周に嵌合し、転がり軸受34の内周は、ロータシャフト10の外周に嵌合している。転がり軸受34は、ロータシャフト10の外周を、ロータマグネット11とセンサマグネット13の間で回転可能に支持している。軸受支持筒35は、軸方向の両端が開口した形状を有する。
【0046】
図1に示すように、磁気センサ14は、磁気センサ用電子回路基板36に取り付けられている。磁気センサ用電子回路基板36は、モータ蓋部7の外面に固定されるセンサカバー37の内面に取り付けられている。磁気センサ用電子回路基板36は、モータ駆動用電子回路基板25にL字型の接続端子38を介して電気的に接続されている。磁気センサ14は、ホールIC、磁気抵抗素子(MRセンサ)や、磁気インピーダンス素子(MIセンサ)などを用いることができる。
【0047】
このセンサ付きモータ1は、モータ駆動用電子回路基板25からステータ12に電流を供給すると、ステータ12とロータマグネット11の間に働く電磁力によってロータシャフト10が回転する。ロータシャフト10が回転すると、ロータシャフト10の軸端のセンサマグネット13も回転し、センサマグネット13に対向して配置された磁気センサ14の出力信号が変化する。ステータ12に供給する電流の制御は、この磁気センサ14の出力信号に基づいて行われる。
【0048】
ところで、ロータマグネット11の磁極23に対するセンサマグネット13の磁極32の位相を管理せずにモータの組み立てを行なった場合、ロータシャフト10が回転するときに磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化が、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相に対してずれを含んだものとなり、そのままでは、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相を正確に検出することができない。この場合、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相を正確に検出できるようにするため、モータを組み立てた後に、手動でロータシャフトを少しずつ回転させ、その回転に応じて磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化が最適なものとなるように、磁気センサ14の固定位置(取付角度)を調整する必要がある。しかしながら、磁気センサ14の固定位置(取付角度)の調整を行なうには、磁気センサ14の位置調整用のプログラムや、磁気センサ14の位置調整用の設備や、磁気センサ14の位置調整のための時間と労力が必要であるという問題がある。
【0049】
そこで、上記実施形態のセンサ付きモータ1においては、磁気センサ14の位置調整の作業を不要とするため、ロータマグネット11の磁極23とセンサマグネット13の磁極32とが予め設定した所定の位相関係となるようにロータマグネット11とセンサマグネット13が周方向に位置決めされている。具体的には、以下の実施例1から実施例4のいずれの方法で組立てあるいは着磁を行なうことにより、ロータマグネット11とセンサマグネット13が周方向に位置決めされている。
【0050】
<実施例1>
図3に示すロータマグネット11をロータシャフト10の外周に固定する。このとき、
図4に示すように、ロータマグネット11の磁極23と、ロータシャフト10の面取り部33との周方向の位置関係が所定の位置関係(図では、特定の磁極23の周方向の中央部が一対の面取り部33のちょうど中間の位置に対応する位置関係)となるように、ロータマグネット11をロータシャフト10に周方向に位置決めし、その状態でロータマグネット11をロータコア22を介してロータシャフト10の外周に固定する。未着磁のロータマグネット11をロータシャフト10の外周に固定し、その状態で、ロータマグネット11の磁極23と、ロータシャフト10の面取り部33との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように、ロータマグネット11を着磁するようにしてもよい。
【0051】
一方、
図3に示すセンサマグネット13をセンサマグネットホルダ27に固定する。このとき、
図4に示すように、センサマグネットホルダ27の切欠き30と、センサマグネット13の磁極32との周方向の位置関係が所定の位置関係(図では切欠き30の周方向位置と磁極32の境目の周方向位置が一致する位置関係)となるように、センサマグネット13をセンサマグネットホルダ27に周方向に位置決めし、その状態でセンサマグネット13をセンサマグネットホルダ27に固定する。
【0052】
その後、
図3に示すセンサマグネットホルダ27をロータシャフト10の軸端に固定する。このとき、
図4に示すように、センサマグネットホルダ27の切欠き30と、ロータシャフト10の面取り部33との周方向の位置関係が所定の位置関係(図では切欠き30の周方向位置が一対の面取り部33のちょうど中間の位置に対応する位置関係)となるように、センサマグネットホルダ27をロータシャフト10に周方向に位置決めし、その状態でセンサマグネットホルダ27をロータシャフト10に固定する。
【0053】
以上のように、面取り部33を基準にロータマグネット11をロータシャフト10に周方向に位置決めして固定するとともに、面取り部33を基準にセンサマグネット13をロータシャフト10に周方向に位置決めして固定することができる。
【0054】
これにより、面取り部33を基準にロータマグネット11が周方向に位置決めされ、また面取り部33を基準にセンサマグネット13が周方向に位置決めされるので、結局、面取り部33を基準に、ロータマグネット11の磁極23とセンサマグネット13の磁極32とが、所定の位相関係(図ではロータマグネット11の特定の磁極23の周方向の中央部と、センサマグネット13の磁極32の境目の周方向位置が一致する位相関係)となる。
【0055】
そして、以上のようにして組み立てられたセンサ付きモータ1は、ロータマグネット11とセンサマグネット13が、ロータマグネット11の磁極23とセンサマグネット13の磁極32とが予め設定した所定の位相関係となるように周方向に位置決めされているので、ロータシャフト10が回転するときに磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化と、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相とが、常にずれを含まない一定の関係となる。そのため、磁気センサ14の周方向の位置調整が不要である。
【0056】
<実施例2>
実施例1と同様、
図4に示すように、ロータマグネット11の磁極23と、ロータシャフト10の面取り部33との周方向の位置関係が所定の位置関係となるように、着磁後のロータマグネット11をロータシャフト10の外周に固定するか、未着磁のロータマグネット11を着磁する。
【0057】
一方、
図3に示すセンサマグネット13をセンサマグネットホルダ27に固定する。このとき、センサマグネット13とセンサマグネットホルダ27の周方向の位置関係は、特に管理しない。
【0058】
その後、
図3に示すセンサマグネットホルダ27をロータシャフト10の軸端に固定する。このとき、まず、センサマグネット13の磁極32の周方向位置を確認し、そして、
図4に示すように、センサマグネット13の磁極32と、ロータシャフト10の面取り部33との周方向の位置関係が所定の位置関係(図ではセンサマグネット13の磁極32の境目の周方向位置が一対の面取り部33のちょうど中間の位置に対応する位置関係)となるように、センサマグネットホルダ27をロータシャフト10に周方向に位置決めし、その状態でセンサマグネットホルダ27をロータシャフト10の外周に加締めて固定する。
【0059】
以上のように組み立てても、実施例1と同様、面取り部33を基準にロータマグネット11をロータシャフト10に周方向に位置決めして固定するとともに、面取り部33を基準にセンサマグネット13をロータシャフト10に周方向に位置決めして固定することができる。そして、以上のようにして組み立てたセンサ付きモータ1は、ロータシャフト10が回転するときに磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化と、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相とが、常にずれを含まない一定の関係となる。そのため、磁気センサ14の周方向の位置調整が不要である。
【0060】
<実施例3>
図3に示すロータマグネット11の未着磁のものをロータシャフト10の外周に固定する。一方、着磁後のセンサマグネット13をセンサマグネットホルダ27を介してロータシャフト10の軸端に固定する。
【0061】
その後、ロータマグネット11の着磁を行なう。このとき、まず、センサマグネット13の磁極32の周方向位置を検出し、そして、
図4に示すように、ロータマグネット11の磁極23とセンサマグネット13の磁極32が所定の位相関係(図ではロータマグネット11の特定の磁極23の周方向の中央部と、センサマグネット13の磁極32の境目の周方向位置が一致する位相関係)となるように、ロータマグネット11の着磁を行なう。なお、センサマグネット13の磁極32の周方向位置の検出は、ロータシャフト10を回転させ、センサマグネット13に対向して配置した図示しないセンサで磁極32を検出することで行なうことができる。
【0062】
以上のように組立ておよび着磁を行なっても、実施例1と同様、ロータシャフト10が回転するときに磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化と、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相とが、常にずれを含まない一定の関係となる。そのため、磁気センサ14の周方向の位置調整が不要である。
【0063】
<実施例4>
図3に示すロータマグネット11の未着磁のものをロータシャフト10の外周に固定する。また、センサマグネット13の未着磁のものをセンサマグネットホルダ27を介してロータシャフト10の軸端に固定する。そして、センサマグネット13とロータマグネット11とを同時に着磁する。この着磁は、
図3に示すように、転がり軸受34をロータシャフト10の外周に装着した状態で行なう。
【0064】
このように組立ておよび着磁を行なっても、実施例1と同様、ロータシャフト10が回転するときに磁気センサ14で検出されるセンサマグネット13の磁束の変化と、ステータ12に対するロータマグネット11の回転位相とが、常にずれを含まない一定の関係となる。そのため、磁気センサ14の周方向の位置調整が不要である。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 センサ付きモータ
2 ポンプロータ
10 ロータシャフト
11 ロータマグネット
12 ステータ
13 センサマグネット
14 磁気センサ
23 磁極
27 センサマグネットホルダ
30 切欠き
32 磁極
33 面取り部
34 転がり軸受