(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149243
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】積ブロック用基礎体
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20220929BHJP
E02D 29/02 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E02D17/20 103H
E02D29/02 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051304
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000126447
【氏名又は名称】アスザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 智
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正徳
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044DB53
2D048AA81
(57)【要約】
【課題】積ブロックの積み上げ勾配を現場において簡単に調整可能であって、発注ミスや納品ミスが生じることなく、速やかに積ブロックの積み上げ作業を行うことができる積ブロック用基礎体を提供すること。
【解決手段】法面に沿って積ブロック90を積み上げる際において法面の法尻位置に配設される積ブロック用基礎体100であって、設置面からの起立高さが異なる正面側構造部10と背面側構造部20とを有すると共に、背面側構造部20には背面側構造部20から正面側構造部10に向けて所要間隔をあけて複数の段差52、54を有する段差部50が形成されており、段差52、54における底面52A、54Aは、正面側構造部10に接近するに伴って徐々に高くなる傾斜面に形成されていることを特徴とする積ブロック用基礎体100である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に沿って積ブロックを積み上げる際において前記法面の法尻位置に配設される積ブロック用基礎体であって、
設置面からの起立高さが異なる正面側構造部と背面側構造部とを有すると共に、
前記背面側構造部には前記背面側構造部から前記正面側構造部に向けて所要間隔をあけて複数の段差を有する段差部が形成されており、
前記段差における底面は、前記正面側構造部に接近するに伴って徐々に高くなる傾斜面に形成されていることを特徴とする積ブロック用基礎体。
【請求項2】
前記段差は、前記正面側構造部に接近するに伴って最下部高さ位置が徐々に低くなっていることを特徴とする請求項1記載の積ブロック用基礎体。
【請求項3】
前記正面側構造部には、前記段差の前記法面の側における開口側端面または前記段差の底面と面一になるように前記段差に充填物を充填することにより、前記積ブロックの積み上げ勾配が所定勾配になる積ブロック載置面が形成される積ブロック載置面形成目印を有していることを特徴とする請求項1または2記載の積ブロック用基礎体。
【請求項4】
前記積ブロック載置面形成目印は、前記正面側構造部における稜線であることを特徴とする請求項3記載の積ブロック用基礎体。
【請求項5】
前記充填物はコンクリートまたはモルタルであることを特徴とする請求項3または4記載の積ブロック用基礎体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積ブロック用基礎体に関し、より詳細には擁壁の構築等において用いられる積ブロックを積み上げる際の基礎部分を構成するための積ブロック用基礎体に関する。
【背景技術】
【0002】
擁壁等の法面保護工事には、いわゆる積ブロックと称されるコンクリートブロックが用いられる。このような積ブロックを積み上げる際には、法面の勾配に合わせて所定の勾配で積ブロックが積み上げられる。このような積ブロックは原地盤に配設した積ブロック用基礎体の上面に載置されるが、従来の積ブロック用基礎体は、現場でコンクリートを打設して形成する現場打型や、工場で予め形成された積ブロック用基礎体を現場に配設する二次製品型がある。このような二次製品型の積ブロック用基礎体としては、特許文献1(実用新案登録第3201484号公報)に開示されているような構成を例示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現場打型の積みブロック用基礎体であれば、それぞれの施工現場における積ブロックの積み上げ勾配に合わせて構築することが可能である。しかしながら型枠の構築やコンクリート打設および養生および脱型が必要となり、積ブロックを積み上げるまでに必要な時間が長くなるといった課題がある。一方、二次製品型の積ブロック用基礎体においては、積ブロックの積み上げ勾配に応じた形状の製品を手配すれば直ちに積ブロックの積み上げを行うことができるが、発注ミスや納品ミスにより、施工現場にそぐわない積ブロック用基礎体が届けられる等の課題がある。また、製品のバリエーションが増えるため、製造コストが高騰するといった課題も有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明においては、積ブロックの積み上げ勾配を現場において簡単に調整可能であって、発注ミスや納品ミスにより施工現場にそぐわない製品の納入が生じることなく、速やかに積ブロックの積み上げ作業を行うことができる安価な積ブロック用基礎体の提供を目的としている。
【0006】
すなわち本発明は、法面に沿って積ブロックを積み上げる際において前記法面の法尻位置に配設される積ブロック用基礎体であって、設置面からの起立高さが異なる正面側構造部と背面側構造部とを有すると共に、前記背面側構造部には前記背面側構造部から前記正面側構造部に向けて所要間隔をあけて複数の段差を有する段差部が形成されており、前記段差における底面は、前記正面側構造部に接近するに伴って徐々に高くなる傾斜面に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
これにより、積ブロックの積み上げ勾配を現場において簡単に調整可能であって、発注ミスや納品ミスにより施工現場にそぐわない製品の納入がなく、速やかに積ブロックの積み上げ作業を行うことが可能な積ブロック用基礎体を安価に提供することができる。
【0008】
また、前記段差は、前記正面側構造部に接近するに伴って最下部高さ位置が徐々に低くなっていることが好ましい。
【0009】
これにより、コンパクトな積ブロック用基礎体であっても多様な積勾配の積ブロック載置面を形成することができる。
【0010】
また、前記正面側構造部には、前記段差の前記法面の側における開口側端面または前記段差の底面と面一になるように前記段差に充填物を充填することにより、前記積ブロックの積み上げ勾配が所定勾配になる積ブロック載置面が形成される積ブロック載置面形成目印を有していることが好ましい。
【0011】
これにより、積ブロックの載置面を広範囲に形成することができ、積ブロックを安定した状態で載置面に積み上げることができる。
【0012】
また、前記積ブロック載置面形成目印は、前記正面側構造部における稜線であることが好ましい。
【0013】
これにより、積ブロック用基礎体の外観を良好にすることができる。
【0014】
また、前記充填物はコンクリートまたはモルタルであることが好ましい。
【0015】
これにより、積ブロック載置面の形成を安価かつ容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における積ブロック用基礎体の構成によれば、積ブロックの積み上げ勾配を現場において簡単に調整可能であって、発注ミスや納品ミスにより施工現場にそぐわない製品の納入が生じることなく、速やかに積ブロックの積み上げ作業を行うことができる安価な積ブロック用基礎体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態における積ブロック用基礎体の側面図である。
【
図2】本実施形態における積ブロック用基礎体の平面図である。
【
図3】
図2中のIII―III線における断面図である。
【
図4】
図2中のIV―IV線における断面図である。
【
図6】本実施形態における積ブロック用基礎体の使用例を示す側面図である。
【
図7】本実施形態における積ブロック用基礎体の他の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態における積ブロック用基礎体100は、
図1~
図5に示すように、設置面である底面からの起立高さが異なる正面側構造部10と背面側構造部20とを有している。なお、本明細書中において正面側とは積ブロック90により構築された被覆面の外表面側のことを指し、背面側とは法面側(地山側)のことを指している。正面側構造部10と背面側構造部20とは連結部30により一体に形成されており、平面視長方形状をなしている。本実施形態における正面側構造部10は、背面側構造部20の底面からの起立高さよりも高く形成されている。また、正面側構造部10、背面側構造部20および連結部30により区切られた領域によりコンクリート充填部40が形成されている。コンクリート充填部40は積ブロック用基礎体100の高さ方向に貫通している。このような積ブロック用基礎体100は、いわゆるゼロスランプコンクリートと即時脱型型枠とを用いて製造することができる。
【0019】
本実施形態における正面側構造部10は、
図1に示すように、底面から上面に接近するに伴って徐々に先細りとなる側面視山型形状に形成されている。正面側構造部10の上面は、水平面部12と背面側構造部20の側が徐々に低くなる傾斜面部14とを有している。また、本明細書においては水平面部12と傾斜面部14との境界線のことを第1稜線15と称し、傾斜面部14と背面側構造部20の側の側面16との境界線のことを第2稜線17と称することにする。
【0020】
背面側構造部20には、所要間隔をあけて複数の段差52、54を有する段差部50が形成されている。それぞれの段差52、54には後述する積ブロック90が第1稜線15または第2稜線17との間に掛け渡すようにして載置される。
図1等からも明らかであるが、段差52の底面52A、段差54の底面54Aは、いずれも正面側構造部10に接近するに伴って徐々に高くなる傾斜面に形成されている。また、段差52の最下部高さ位置H1は段差54の最下部高さ位置H2よりも低くなるように形成されている。このように段差52、54は正面側構造部10に接近するに伴って最下部高さ位置(H1、H2)が徐々に低くなるように形成されている。また、段差部50には、段差54の背面側(法面側)に突出部56を形成することもできる。突出部56の上面は段差52、54の底面52A、54Aと同様に正面側構造部10の側が徐々に高くなる傾斜面に形成されている。
【0021】
正面側構造部10と背面側構造部20とを連結する連結部30の高さは、背面側構造部20の正面側構造部10の側の側面の高さよりも低い位置になっている。また連結部30の上面には、積ブロック用基礎体100を吊り上げる際に用いられるフック(図示はせず)を連結するためのネジインサート32が埋設されている。このようなネジインサート32としてはいわゆるPインサートを用いることができる。
【0022】
つづいて、本実施形態における積ブロック用基礎体100の使用例について
図6を参照しながら説明する。積ブロック用基礎体100は、法面の法尻位置に打設された図示しない基礎コンクリートと基礎コンクリートの上面に敷設された図示しない高さ調整材の上に配設される。積ブロック用基礎体100は背面側構造部20が法面側になるようにして法尻位置に沿って連続的に配設される。隣接する積ブロック用基礎体100どうしの間には公知の緩衝部材(図示はせず)を配設することもできる。コンクリート充填部40にはコンクリート(図示はせず)が充填され、積ブロック用基礎体100と基礎コンクリートとの一体化を向上させている。コンクリート充填部40へのコンクリートの充填は連結部30の高さ以下の範囲で行うことが好ましい。
【0023】
積ブロック用基礎体100が配設されたら、施工者は、積ブロック用基礎体100に積ブロック90を載置する。このとき、積ブロック90は、積み上げ勾配に応じて積ブロック90の背面側の下面側角部を段差52または段差54に載置し、積ブロック90の正面側の下面側角部を第1稜線15または第2稜線17に掛け渡すようにして載置する。なお、
図6(A)は、積ブロック90の積み上げ勾配が5分勾配のときの積み上げ状態を示している。具体的には、積ブロック用基礎体100の段差52と第1稜線15に積ブロック90の底面を掛け渡した状態である。また、
図6(B)は、積ブロック90の積み上げ勾配が4分勾配のときの積み上げ状態を示している。具体的には、積ブロック用基礎体100の段差54と第1稜線15に積ブロック90の底面を掛け渡した状態である。
【0024】
図6(C)は、積ブロック90の積み上げ勾配が3分勾配のときの積み上げ状態を示している。具体的には、積ブロック用基礎体100の突出部56と第1稜線15に積ブロック90の底面を掛け渡した状態である。このように、積ブロック用基礎体100への積ブロック90の載置する際において段差52、54または突出部56と第1稜線15とを選択的に用いれば、同一の積ブロック用基礎体100であっても複数の積み上げ勾配に対応可能になる。積ブロック用基礎体100に対する最下段の積ブロック90の積み上げ勾配が決まれば、以降は通常の積ブロック90の積み上げ工程を実行することにより、所定の積み上げ勾配で積ブロック90を積み上げることができる。
【0025】
次に本実施形態における積ブロック用基礎体100の他の使用例について
図7を参照しながら説明する。
図7(A)は、ブロックの積み上げ勾配が5分勾配であるときの状態を示している。
図7(B)は、ブロックの積み上げ勾配が4分勾配であるときの状態を示している。
図7(C)は、ブロックの積み上げ勾配が3分勾配であるときの状態を示している。
【0026】
図7(A)に示すように、施工者は段差52の底面52Aと第1稜線15とが面一になるように、連結部30の上側、コンクリート充填部40および傾斜面部14に充填物60を充填する。充填物60としてはコンクリートやモルタルを用いることができるが、成形が容易であって成形後に所定の硬さになる材料であれば、充填物60の種類は特に限定されるものではない。充填物60が硬化した後、充填物60の上面と同一平面が5分勾配用の積ブロック載置面70となる。また、
図7(B)に示すように、施工者は段差52の法面側における開口側端面52Zと第1稜線15とが面一になるように、段差52、連結部30の上側、コンクリート充填部40および傾斜面部14に充填物60を充填する。充填物60が硬化した後、充填物60の上面と同一平面が4分勾配用の積ブロック載置面70となる。
【0027】
また、
図7(C)に示すように、施工者は段差54の開口側端面54Zと第1稜線15とが面一になるように、段差52、段差54、連結部30の上側、コンクリート充填部40および傾斜面部14に充填物60を充填することもできる。充填物60が硬化した後、充填物60の上面と同一平面が3分勾配用の積ブロック載置面70となる。
【0028】
以上に説明したように、
図7においては、段差52の底面52Aまたは段差52、54の法面側における開口側端面52Z、54Zと正面側構造部10における第1稜線15とが面一になるように充填物60を充填することで積ブロック載置面70を形成している。すなわち、
図6と
図7に示す積ブロック用基礎体100においては、第1稜線15が積ブロック載置面形成目印を構成していることになる。なお、
図6と
図7に示す積ブロック用基礎体100においては、第1稜線15を積ブロック載置面形成目印としているが、第2稜線17を積ブロック載置面形成目印として用いる形態を採用することもできる。
【0029】
このように、
図7に示す使用例においても同一の積ブロック用基礎体100において積ブロック載置面70を複数種類の積み上げ勾配に形成することができる。特に
図7に示す使用例においては、積ブロック載置面70を積ブロック90の底面全体を受ける平面に形成することができるため、より安定させた状態で積ブロック90を載置することができる点で好都合である。
【0030】
以上に本発明にかかる積ブロック用基礎体100について詳細に説明をしたが、本発明の技術的範囲は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、以上の実施形態においては、段差部50には2つの段差52、54を配設しているが、段差部50の段差数を3以上にした形態を採用することもできる。段差部50の段差数を増やせば、より多くの所定勾配の積ブロック載置面70を構築することができる。
【0031】
以上の実施形態においては、段差部50の段差52の最下部高さ位置H1を段差54の最下部高さ位置H2よりも低い位置(異なる高さ位置)にしているが、段差52の最下部高さ位置H1と段差54の最下部高さ位置H2とを同一高さにすることもできる。この場合、積ブロック用基礎体100の底面に対する底面52A、54Aの傾斜角度を異ならせることにより、積ブロック90の積み勾配を変更することができる。
【0032】
また、以上の実施形態においては、積ブロック載置面70の構築にあたり、連結部30、コンクリート充填部40および段差部50の一部に充填物60を充填しているがこの形態に限定されるものではない。連結部30またはコンクリート充填部40および段差部50のいずれかの全部または一部に充填物60を充填する形態を採用してもよい。これにより充填物60の使用量を削減することができる。
【0033】
また、積ブロック90の載置箇所の組み合わせに対応させた積み上げ勾配の一覧が積ブロック用基礎体100の表面に表示されている形態を採用することもできる。また、段差部50における各段差と積ブロック載置面形成目印との組み合わせにより得られる積み上げ勾配の一覧が積ブロック用基礎体100の表面に表示されている形態を採用することもできる。これらの積み上げ勾配の一覧の表示は、連結部30やコンクリート充填部40や段差52、54の底面52A、54Aのような積ブロック90の積み上げ後に隠れる箇所であることが好ましい。これらにより積ブロック90の積み上げ勾配の間違えをなくすことができる。
【0034】
また、以上の実施形態においては、第1稜線15または第2稜線17を積ブロック載置面形成目印として用いる形態について説明しているが、この形態に限定されるものではない。積ブロック載置面形成目印は積ブロック用基礎体100の稜線でなくてもよく、積ブロック用基礎体100の側面16に公知の手法により表示させたものを用いることもできる。
【0035】
また、以上に説明した本実施形態の構成に対し、明細書中に記載されている変形例や、他の公知の構成を適宜組み合わせた形態を採用することもできる。
【符号の説明】
【0036】
10:正面側構造部
12:水平面部
14:傾斜面部
15:第1稜線(積ブロック載置面形成目印)
16:側面
17:第2稜線
20:背面側構造部
30:連結部
32:ネジインサート
40:コンクリート充填部
50:段差部
52、54:段差
52A、54A:底面
52Z、54Z:開口側端面
56:突出部
60:充填物
70:積ブロック載置面
90:積ブロック
100:積ブロック用基礎体
H1:最下部高さ位置
H2:最下部高さ位置