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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149246
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04228 20160101AFI20220929BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20220929BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20220929BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20220929BHJP
   H02H 5/00 20060101ALI20220929BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220929BHJP
【FI】
H01M8/04228
H01M8/04313
H01M8/04955
H01M8/04303
H01M8/04664
H02J3/38 170
H02H5/00
H01M8/12 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051307
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】白木 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】小山 義彦
【テーマコード(参考)】
5G066
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5G066HA06
5G066HB07
5G066KA06
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB23
5H127AC05
5H127AC17
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA37
5H127BA57
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DA12
5H127DB91
5H127DB92
5H127DC42
5H127GG04
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】地震の発生に拘わらず発電部の劣化を極力抑制できる電力供給システムを提供する。
【解決手段】燃料ガスの供給により発電を行う燃料電池7を有する発電部Mと、発電部Mの発電を制御する運転制御部Cを備え、運転制御部Cが、発電部Mの発電を停止する際に、降温工程を含む通常停止用手順に沿って発電部Mの発電を停止させる通常停止処理と、緊急停止用手順に沿って発電部Mの発電を停止する緊急停止処理とのうちの何れか一方を実行し、発電部Mの設置位置を示す発電部位置情報及び地震の発生に関する地震情報に基づいて、設置位置に、設定大きさの地震が設定時間内に到来することが予測される地震到来予測状態であることを判別する地震到来判別部が設けられ、運転制御部Cが、地震到来予測状態であることが判別されると、通常停止処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスの供給により発電を行う燃料電池を有する発電部と、前記発電部の発電を制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部が、前記発電部の発電を停止する際に、降温工程を含む通常停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止させる通常停止処理と、緊急停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止する緊急停止処理とのうちの何れか一方を実行する電力供給システムであって、
前記発電部の設置位置を示す発電部位置情報及び地震の発生に関する地震情報に基づいて、前記設置位置に、設定大きさの地震が設定時間内に到来することが予測される地震到来予測状態であることを判別する地震到来判別部が設けられ、
前記運転制御部が、前記地震到来判別部にて前記地震到来予測状態であることが判別されると、前記通常停止処理を実行する電力供給システム。
【請求項2】
前記燃料ガスの供給停止を検出する供給停止検出部が設けられ、
前記運転制御部が、前記通常停止処理の実行中に、前記供給停止検出部にて前記燃料ガスの供給停止が検出されると、前記通常停止処理を停止して前記緊急停止処理を実行する請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記地震到来判別部が、前記地震情報として、地震が発生した地震発生地域と震度とを示す震度報知式地震発生情報を取得したときに、前記設置位置が前記地震発生地域に含まれ、かつ、前記震度が設定判別震度以上の場合には、前記地震到来予測状態であると判別する請求項1又は2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記地震到来判別部が、設定期間内に、前記設置位置が前記地震発生地域に含まれ、かつ、前記震度が前記設定判別震度よりも低い設定予備判別震度以上の前記震度報知式地震発生情報を設定回数取得したときに、前記地震到来予測状態であると判別する請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記地震到来判別部が、前記地震情報として、震源と地震の強度を示す強度報知式地震発生情報を取得したときに、前記設置位置が前記震源から設定距離以内であり、かつ、前記強度が設定判別値以上の場合には前記地震到来予測状態であると判別する請求項1~4のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記地震到来判別部が、設定期間内に、前記設置位置が前記震源から設定距離以内であり、かつ、前記強度が設定判別値よりも低い設定予備判別震度以上の前記強度報知式地震発生情報を設定回数取得したときに、前記地震到来予測状態であると判別する請求項5に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガスの供給により発電を行う燃料電池を有する発電部と、前記発電部の発電を制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部が、前記発電部の発電を停止する際に、降温工程を含む通常停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止させる通常停止処理と、緊急停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止する緊急停止処理とのうちの何れか一方を実行する電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給システムとして、特許文献1には、水素含有ガスと空気との電気化学反応により発電する燃料電池を有する発電部を備え、発電部に燃料ガスを供給する設備、燃料電池に空気を供給する送風機、燃料電池の出力電力を調整するインバータ、これらを制御する制御部を備えた燃料電池システムが示されている。
【0003】
この燃料電池システムでは、燃料電池での発電時に発生する熱を利用するコージェネレーションシステムとして構成され、燃料電池は、固体酸化物を電解質層とするセルを複数積層して構成されている。発電部は、燃料ガスと改質用水蒸気とを改質反応させることにより水素を主成分とする改質ガスを生成する改質器を有し、この改質器や、これに付随する機器類の異常を検出する異常検出センサを備えている。
【0004】
更に、制御部は、操作部から通常停止指令が入力された場合に、降温工程を含む通常停止用手順に沿って通常停止処理を実行し、異常検出センサで異常が検出された場合には緊急停止指令が入力されたとして、降温工程を経ることなく緊急停止処理により発電を停止するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-191863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力供給システムは、例えば、一般家庭等に設置されて、都市ガスが燃料ガスとして供給されて運転されることが多い。そして、地震の発生により燃料ガスの供給が停止することがある。そのような場合には、燃料ガスの供給が停止していることが検出されて、緊急停止処理が行われることになる。
【0007】
しかしながら、緊急停止処理にて発電部の発電が停止されると、特許文献1にも記載の如く、通常停止処理にて発電部の発電を停止する場合に較べて、燃料電池を備える発電部の劣化が大きくなる。従って、発電効率の早期低下を回避するために、緊急停止処理にて発電部の発電を停止することを極力回避することが望まれている。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みて為されたものであって、その目的は、地震の発生に拘わらず発電部の劣化を極力抑制できる電力供給システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力供給システムは、燃料ガスの供給により発電を行う燃料電池を有する発電部と、前記発電部の発電を制御する運転制御部とを備え、
前記運転制御部が、前記発電部の発電を停止する際に、降温工程を含む通常停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止させる通常停止処理と、緊急停止用手順に沿って前記発電部の発電を停止する緊急停止処理とのうちの何れか一方を実行するものであって、その特徴構成は、
前記発電部の設置位置を示す発電部位置情報及び地震の発生に関する地震情報に基づいて、前記設置位置に、設定大きさの地震が設定時間内に到来することが予測される地震到来予測状態であることを判別する地震到来判別部が設けられ、
前記運転制御部が、前記地震到来判別部にて前記地震到来予測状態であることが判別されると、前記通常停止処理を実行する点にある。
【0010】
すなわち、地震到来判別部が、発電部の設置位置を示す発電部位置情報及び地震の発生に関する地震情報に基づいて、発電部の設置位置に、設定大きさの地震が設定時間内に到来することが予測される地震到来予測状態であることを判別することになる。
そして、地震到来判別部にて地震到来予測状態が判別されると、運転制御部が、地震が到来する前に、事前に、通常停止処理を実行する。
【0011】
このように、運転制御部が、地震が到来する前に、事前に、通常停止処理を開始することになるから、地震が到来して燃料ガスの供給が停止されるまでの間は、降温工程を含む通常停止用手順に沿って発電部の発電を停止させることができるのであり、その結果、地震の発生に拘わらず発電部の劣化を極力抑制できるのである。
【0012】
要するに、本発明の電力供給システムの特徴構成によれば、地震の発生に拘わらず発電部の劣化を極力抑制できる。
【0013】
本発明の電力供給システムの更なる特徴構成は、前記燃料ガスの供給停止を検出する供給停止検出部が設けられ、
前記運転制御部が、前記通常停止処理の実行中に、前記供給停止検出部にて前記燃料ガスの供給停止が検出されると、前記通常停止処理を停止して前記緊急停止処理を実行する点にある。
【0014】
すなわち、運転制御部が、地震が到来する前に、事前に、通常停止処理を開始することになるが、通常停止処理が終了する前に、供給停止検出部にて燃料ガスの供給停止が検出されると、通常停止処理を停止して緊急停止処理が実行されることになる。
【0015】
したがって、地震が到来する前に事前に開始した通常停止処理が終了する前に、燃料ガスの供給が停止されても、発電部を緊急停止処理にて停止することができるから、発電部が故障する等の大きなトラブル発生に至ることを未然に防止しながら、発電部の発電を適切に停止できる。
【0016】
要するに、本発明の電力供給システムの更なる特徴構成によれば、地震が到来する前に事前に開始した通常停止処理が終了する前に、燃料ガスの供給が停止されても、発電部の発電を適切に停止できる。
【0017】
本発明の電力供給システムの更なる特徴構成は、前記地震到来判別部が、前記地震情報として、地震が発生した地震発生地域と震度とを示す震度報知式地震発生情報を取得したときに、前記設置位置が前記地震発生地域に含まれ、かつ、前記震度が設定判別震度以上の場合には、前記地震到来予測状態であると判別する点にある。
【0018】
すなわち、地震情報として、気象庁等から地震が発生した地震発生地域と震度とを示す震度報知式地震発生情報が発信される。
そして、地震到来判別部が、震度報知式地震発生情報を取得したときに、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度以上の場合には、地震到来予測状態であると判別することになり、運転制御部が通常停止処理を開始することになる。
【0019】
また、地震到来判別部が、震度報知式地震発生情報を取得したときに、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれない場合や、震度が設定判別震度未満の場合には、地震到来予測状態であると判別しないため、運転制御部が、不必要に通常停止処理を開始しないことになる。
【0020】
つまり、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度以上の場合には、発電部への燃料ガス(都市ガス等)の供給が停止される可能性が高いとして、通常停止処理が適切に開始されるものの、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれない場合や、震度が設定判別震度未満の場合には、不必要に通常停止処理が開始されない。
【0021】
要するに、本発明の電力供給システムの更なる特徴構成によれば、発電部への燃料ガスの供給が停止される可能性が高い場合には、適切に通常停止処理を開始させるようにしながらも、通常停止処理を不必要に開始させないようにすることができる。
【0022】
本発明の電力供給システムの更なる特徴構成は、前記地震到来判別部が、設定期間内に、前記設置位置が前記地震発生地域に含まれ、かつ、前記震度が前記設定判別震度よりも低い設定予備判別震度以上の前記震度報知式地震発生情報を設定回数取得したときに、前記地震到来予測状態であると判別する点にある。
【0023】
すなわち、地震到来判別部が、設定期間内(例えば、24時間内)に、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度よりも低い設定予備判別震度以上の震度報知式地震発生情報を設定回数(例えば、3回以上)取得したときには、地震到来予測状態であると判別することになり、運転制御部が、通常停止処理を開始することになる。
【0024】
つまり、気象庁等から、発電部の設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度よりも低い設定予備判別震度以上の震度報知式地震発生情報が、設定回数(例えば、3回以上)発信されると、例えば、ガス会社が燃料ガス(都市ガス等)の供給を停止する等、燃料ガスの供給が停止される可能性が高いため、通常停止処理を開始させることができる。
【0025】
要するに、本発明の電力供給システムの更なる特徴構成によれば、震度が大きな地震が発生していなくても、発電部への燃料ガスの供給が停止される可能性が高い場合には、適切に通常停止処理を開始させることができる。
【0026】
本発明の電力供給システムの更なる特徴構成は、前記地震到来判別部が、前記地震情報として、震源と地震の強度を示す強度報知式地震発生情報を取得したときに、前記設置位置が前記震源から設定距離以内であり、かつ、前記強度が設定判別値以上の場合には前記地震到来予測状態であると判別する点にある。
【0027】
すなわち、地震情報として、気象庁等から震源と地震の強度を示す強度報知式地震発生情報が発信される。
そして、地震到来判別部が、強度報知式地震発生情報を取得したときに、発電部の設置位置が震源から設定距離以内であり、かつ、地震の強度が設定判別値以上の場合には、地震到来予測状態であると判別することになり、運転制御部が通常停止処理を開始することになる。
【0028】
また、地震到来判別部が、強度報知式地震発生情報を取得したときに、発電部の設置位置が震源から設定距離よりも離れている場合や、地震の強度が設定判別値未満の場合には、地震到来予測状態であると判別しないため、運転制御部が、不必要に通常停止処理を開始しないことになる。
【0029】
つまり、発電部の設置位置が震源から設定距離以内であり、かつ、地震の強度が設定判別値以上の場合には、発電部への燃料ガス(都市ガス等)の供給が停止される可能性が高いとして、通常停止処理が適切に開始されるものの、発電部の設置位置が震源から設定距離よりも離れている場合や、地震の強度が設定判別値未満の場合には、不必要に通常停止処理が開始されない。
【0030】
要するに、本発明の電力供給システムの更なる特徴構成によれば、発電部への燃料ガスの供給が停止される可能性が高い場合には、適切に通常停止処理を開始させるようにしながらも、通常処理を不必要に開始させないようにすることができる。
【0031】
本発明の電力供給システムの更なる特徴構成は、前記地震到来判別部が、設定期間内に、前記設置位置が前記震源から設定距離以内であり、かつ、前記強度が設定判別値よりも低い設定予備判別強度以上の前記強度報知式地震発生情報を設定回数取得したときに、前記地震到来予測状態であると判別する点にある。
【0032】
すなわち、地震到来判別部が、設定期間内(例えば、24時間内)に、発電部の設置位置が震源から設定距離以内であり、かつ、地震の強度が設定判別値よりも低い設定予備判別強度以上の強度報知式地震発生情報を設定回数(例えば、3回以上)取得したときには、地震到来予測状態であると判別することになり、運転制御部が、通常停止処理を開始することになる。
【0033】
つまり、気象庁等から、発電部の設置位置が震源から設定距離以内であり、かつ、地震の強度が設定判別値よりも低い設定予備判別強度以上の強度報知式地震発生情報が、設定回数(例えば、3回以上)発信されると、例えば、ガス会社が燃料ガス(都市ガス等)の供給を停止する等、燃料ガスの供給が停止される可能性が高いため、通常停止処理を開始させることができる。
【0034】
要するに、本発明の電力供給システムの更なる特徴構成によれば、強度が大きな地震が発生していなくても、発電部への燃料ガスの供給が停止される可能性が高い場合には、適切に通常停止処理を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電力供給システムの構成を示す図である。
図2】運転制御装置の構成を示す図である。
図3】発電停止制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔電力供給システムの概要〕
図1に示すように、外部から燃料ガスとして供給される都市ガス(以下、燃料ガスと称することもある)によって発電する発電モジュールM(発電部の一例)と、発電された電力を交流に変換する電力変換部1と、発電モジュールMでの発電時に発生する排熱を回収する排熱回収熱交換部2と、排熱回収熱交換部2で回収した排熱で水を加熱して温湯として貯える貯湯槽3と、システム全体を制御する運転制御装置C(運転制御部の一例)と、を備えてコージェネ型の電力供給システムAが構成されている。
【0037】
この電力供給システムAは、一般家庭等の家屋の屋外に配置されるものであり、屋内のリモートコントローラ4にて操作できるように構成されている。また、貯湯槽3に蓄えられた温湯が屋内に供給できるように構成され、発電された電力が、電力変換部1で交流に変換されて家屋の内部の電気機器に供給されるように構成されている。
【0038】
〔電力供給システムの具体構成〕
図1に示すように、発電モジュールMは、気化器5と、改質器6と、複数のセルを積層したセルスタック7(燃料電池の一例)と、都市ガスの一部を燃焼させるバーナ8とをケース9に収容することでホットモジュールとして構成されている。セルスタック7を構成する複数のセルは、固体酸化物形燃料電池が用いられている。
【0039】
電力供給システムAは、都市ガスが供給されるガス供給流路11に対して電磁式の燃料バルブ12と、ガス圧センサ13と、ガスブロア14と、脱硫器15とを、この順序で配置してガス供給系を構成しており、脱硫器15を通過した都市ガスは発電モジュールMの気化器5に供給される。
ちなみに、ガス圧センサ13は、都市ガスの供給圧力が設定圧力以下に低下したことを検出すると、都市ガス(燃料ガス)の供給停止であるとする供給停止検出部として機能することになる。
【0040】
このように構成されるガス供給流路11では、電磁式の燃料バルブ12の制御により都市ガスの供給と遮断との切り換えが可能であり、ガス圧センサ13で都市ガスの圧力を検出が可能である。また、ガスブロア14は電動モータによって駆動されるブロアを有しており、電動モータの制御により都市ガスの供給と遮断との切り換えが可能である。
【0041】
電力供給システムAは、改質水タンク17に貯留した改質水を送る改質水流路18に対して改質水ポンプ19を備えて改質水供給系を構成しており、改質水流路18からの改質水は気化器5に供給される。
【0042】
電力供給システムAは、発電モジュールMのケースに空気を供給する空気供給流路21を有し、この空気供給流路21に空気を送るエアブロア22を備えている。
【0043】
発電モジュールMでは、バーナ8で都市ガスの一部を燃焼させることによりケース9の内部空間に高温環境を作り出しており、この高温環境において改質器6も高温化されている。このため、発電モジュールMは、ガス供給流路11から気化器5を介して改質器6に都市ガスが供給され、改質水流路18から気化器5を介して改質器6に供給される水が水蒸気化して、この改質器6において都市ガスと混合して化学反応する結果、水素を多く含む燃料ガスに改質される。
【0044】
また、燃料ガスは、セルスタック7を構成する各々のセルのアノード極に供給され、空気供給流路21から共有された空気は、セルスタック7を構成する各々のセルのカソード極に供給される。これにより電気化学反応により発電が行われ、電力変換部1に送り出される。また、発電モジュールMのケース9から高温の排ガスを送り出す排ガス流路23が形成され、この排ガス流路23に排熱回収熱交換部2が備えられている。
【0045】
貯湯槽3に蓄えられた水(温湯)を、排熱回収熱交換部2に供給し貯湯槽3に戻す循環流路25が形成され、この循環流路25に水を循環させる循環ポンプ26を備えている。また、貯湯槽3に対して水(基本的に水道水)を供給する水供給流路27を備え、貯湯槽3に蓄えられた水(温湯)を外部に送り出す温湯流路28に電磁式の温湯バルブ29を備えている。
【0046】
図面には示していないが、貯湯槽3の水温を検出する水温センサを備えており、水温センサで検出される水温が設定値未満に低下した場合に、循環ポンプ26を駆動して水温の上昇を図る制御が運転制御装置Cで実行される。
【0047】
〔運転制御装置について〕
運転制御装置Cは、マイクロプロセッサや、DSP(Digital Signal Processor)等を備えることにより、予め記憶されたプログラムに従って処理を実行する。
【0048】
図2に示すように、運転制御装置Cは、ソフトウエアで構成される発電制御部31と、温湯制御部32と、起動制御部33と、停止制御部34と、地震到来判別部35とを備えている。更に、運転制御装置Cは、記憶部36と、位置情報取得部37と、受信部38とを備えている。
【0049】
尚、発電制御部31と、温湯制御部32と、起動制御部33と、停止制御部34との夫々におけるソフトウエアによる制御の一部をハードウエアで行わせるようにハードウエアと組み合わせても構成しても良い。
【0050】
図2には、後述する発電停止制御に関連する情報を取得する対象と、制御情報の出力対象との概要を示している。つまり、運転制御装置Cは、リモートコントローラ4からの情報が入力すると共に、ガス圧センサ13と、起動スイッチ40と、停止スイッチ41と、GPS受信ユニット42とからの情報が入力する。
【0051】
また、この運転制御装置Cは、燃料バルブ12と、ガスブロア14と、改質水ポンプ19と、エアブロア22と、ディスプレイ43(情報出力部の一例)とに制御情報を出力する。受信部38は、通信ネットワークとしてのインターネットINを介して地震発生に関する情報を発信する地震情報サーバ45に接続されている。
ちなみに、地震情報サーバ45は、気象庁のサーバや、気象庁が発信する地震に関する情報を取得して、当該情報を発信するガス会社の管理サーバである。
【0052】
発電制御部31は、発電モジュールMに対する都市ガスの供給量、改質水の供給量、空気の供給量、ケース9の内部の温度等を決めることにより発電を制御する。温湯制御部32は、貯湯槽3に貯留される温湯(水)の温度を制御し、出湯を制御する。
【0053】
起動制御部33は、起動スイッチ40の操作に基づき、停止状態にある発電モジュールMで発電を開始させる。停止制御部34は、発電モジュールMを停止させる制御を実行する。停止制御部34の制御形態は後述する。
【0054】
記憶部36は、EEPROM等の不揮発性メモリを備えている。位置情報取得部37は、GPS受信ユニット42で受信された複数の測位衛星の情報に基づき発電モジュールM(電力供給システムA)が設置されている位置情報を取得する。このように取得される位置情報は、経度情報と緯度情報であるが、この経度情報と緯度情報とに併せて、住居表示の情報、あるいは、地番の情報を位置情報として記憶部36に記憶される。
【0055】
受信部38は、インターネットIN(通信ネットワーク)からの情報を取得する。ディスプレイ43(情報出力部)は、人が認識できる形で情報を出力する情報出力部の一例であり、電力供給システムAの筐体の外面に露出する状態で備えられるものを想定しており情報を表示する。
【0056】
地震到来判別部35は、発電モジュールMの設置位置を示す発電部位置情報及び地震の発生に関する地震情報に基づいて、発電モジュールMの設置位置に、設定大きさの地震が設定時間内に到来することが予測される地震到来判予測状態であることを判別する。
【0057】
図2では、起動スイッチ40と、停止スイッチ41と、ディスプレイ43とが運転制御装置Cに対して直接接続する構成を示しているが、これらをリモートコントローラ4に備えるように構成しても良い。
【0058】
〔停止制御の概要〕
一般家庭等でガスの使用量を計量するガスメータは、大きい震度の地震を感知して自動的にガス供給を停止する機能を有している。このように地震の発生時にガスメータで都市ガスの供給が停止した場合には、ガス圧センサ13で検出される都市ガスの圧力が大きく低下するため、これに連携して停止制御部34が緊急停止処理を行う。
【0059】
この緊急停止処理は、ガス圧の低下が検出された場合に、迅速な停止を優先する緊急停止用手順に沿って発電モジュールMでの発電を停止するものである。この緊急停止処理では、ガス圧の低下が検出されと、直ちに、ガスブロア14を停止し、改質水ポンプ19を停止し、エアブロア22を停止する処理を行うことにより、発電モジュールMのケース9の内部の温度を自然放熱によって低下させることになる。
【0060】
発電時において発電モジュールMのケース9の内部の温度は、改質及び発電を可能にする高い温度に維持され、セルスタック7を構成するセルの燃料極と空気極との温度も高い温度に維持されている。しかしながら、緊急停止処理によって、都市ガスの供給が停止した場合には、温度が管理されない状態で温度が低下することにより、燃料極と空気極とが劣化し、発電効率の低下に繋がるものである。
【0061】
このような理由から、停止制御部34は、発電モジュールM(発電部)の保護を優先する降温工程を含む通常停止用手順に沿って発電モジュールMでの発電を停止させる通常停止処理を行えるように構成されている。
【0062】
つまり、通常停止処理では停止制御部34が、ガスブロア14と、改質水ポンプ19と、エアブロア22とを制御することで、都市ガスと、改質水と、空気との供給量を、時間を掛けて徐々に低下させており、自然放熱より低速での温度低下(降温工程)を実現している。このような通常停止処理を可能にするため、発電モジュールMには複数の温度センサ(図示せず)を備えており、停止制御部34は、このような通常停止用手順に従う制御を可能にするプログラムを有している。
【0063】
通常停止処理は、緊急停止処理と比較して処理の完了までに長い時間を必要とするものであり、降温工程により、発電モジュールMの温度を管理する状況で設定温度まで低下させ、この温度低下を確認した後に、都市ガスと、改質水と、空気との供給を完全に停止させることにより燃料極と空気極との劣化を抑制している。尚、通常停止処理において、放熱時に温度を複数段階で低下させるためエアブロア22を停止させるタイミングを送らせても良い。
【0064】
ちなみに、緊急停止処理にて発電モジュールMを停止させた場合においてセルスタック7等に与える負荷は、例えば、通常停止処理にて発電モジュールMを停止させる場合おいてセルスタック7等に与える負荷の10倍程度になる虞があり、緊急停止処理にて発電モジュールMを停止させることは極力回避することが望ましい。
このため、詳細は後述するが、地震到来判別部35が地震到来予測状態であることを判別すると、停止制御部34が、通常停止処理を実行することになる。そして、停止制御部34は、当該通常停止処理を実行しているときに、地震の到来等により、ガス圧センサ13にて燃料ガスの供給が検出されると、通常停止処理を停止して緊急停止処理を実行することになる。
【0065】
〔地震到来判別部の詳細〕
地震到来判別部35は、地震情報として、地震が発生した地震発生地域と震度とを示す震度報知式地震発生情報を取得したときに、発電モジュールMの設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度以上(例えば、震度4以上)の場合には、地震到来予測状態であると判別するように構成されている。
【0066】
また、地震到来判別部35は、設定期間内(例えば、24時間内)に、発電モジュールMの設置位置が地震発生地域に含まれ、かつ、震度が設定判別震度(例えば、震度4)よりも低い設定予備判別震度以上(例えば、震度2以上)の震度報知式地震発生情報を設定回数(例えば、3回以上)取得したときに、地震到来予測状態であると判別するように構成されている。
【0067】
また、地震到来判別部35は、地震情報として、発生した地震の震源と地震の強度を示す強度報知式地震発生情報を取得したときに、発電モジュールMの設置位置が震源から設定距離以内(例えば、半径20Km以内)であり、かつ、強度が設定判別値以上(例えば、マグニチュード5以上)の場合には地震到来予測状態であると判別するように構成されている。
【0068】
また、地震到来判別部35は、設定期間内(例えば、24時間内)に、発電モジュールMの設置位置が震源から設定距離以内(例えば、半径20Km以内)であり、かつ、強度が設定判別値(例えば、マグニチュード5)よりも低い設定予備判別強度以上(例えば、マグニチュード3以上)の強度報知式地震発生情報を設定回数(例えば、3回以上)取得したときに、地震到来予測状態であると判別するように構成されている。
【0069】
つまり、地震到来判別部35は、震度報知式地震発生情報及び強度報知式地震発生情報を取得したときに、上述の4つの条件のいずれかが満たされると、地震到来予測状態であると判別するように構成されている。
【0070】
〔停止制御部の制御作動の詳細〕
次に、ガス圧センサ13が燃料ガスの供給停止を検出した場合及び地震到来判別部35が地震到来予測状態であると判別した場合における停止制御部34の制御作動について、
図3のフローチャートに基づいて説明する。
【0071】
先ず、ガス圧センサ13が燃料ガスの供給停止を検出した燃料ガス供給停止状態であるか否かが判別され(#1)、燃料ガス供給停止状態である場合には、緊急停止処理が実行される(#2)。
【0072】
#1の処理にて、燃料ガス供給停止状態でないと判別した場合には、続いて、地震到来判別部35にて地震到来予測状態が判別されているか否かを判別し(#3)、地震到来予測状態でない場合には、#1の処理に移行する。
【0073】
#3の処理にて、地震到来予測状態であると判別されている場合には、通常停止処理を実行する(#4)。続いて、開始した通常停止処理により発電モジュールMの停止を完了した停止完了であるか否かを判別し(#5)、停止完了でない場合には、続いて、ガス圧センサ13が燃料ガスの供給停止を検出した燃料ガス供給停止状態であるか否かを判別し(#6)、燃料ガス供給停止状態でない場合には、#4の処理に移行することになる。
【0074】
#6の処理にて、燃料ガス供給停止状態であると判別した場合には、#2の緊急停止処理が実行され、また、#5の処理にて、発電モジュールMの停止を完了した停止完了であると判別した場合には、停止制御の処理を終了する。
【0075】
つまり、#4の通常停止処理が開始されると、通常停止処理により発電モジュールMが停止されるまで、#4の通常停止処理が実行されることになるが、通常停止処理を実行しているときに、燃料ガス供給停止状態であることが判別されると、#2の緊急停止処理により、発電モジュールMが緊急停止されることになる。
【0076】
〔別実施形態〕
次に、別実施形態を列記する
(a)上記実施形態では、運転制御部としての運転制御装置Cにて、地震到来判別部35を構成する場合を例示したが、地震到来判別部35を、運転制御装置Cとは別の制御部として構成して、地震到来判別部35の判別結果を運転制御装置Cに通信する形態で実施してもよい。
【0077】
(b)上記実施形態では、ガス供給流路11を流動する燃料ガスのガス圧を検出するガス圧センサ13にて、燃料ガスの供給停止を検出する場合を例示したが、ガス供給流路11を流動する燃料ガスの流量を検出する流量センサを設けて、燃料ガスの供給停止を、燃料ガスの流量が設定流量以下になることにより検出させるようにしてもよい。
【0078】
(c)上記実施形態では、地震到来判別部35が、地震の発生に関する地震情報として、実際に地震が発生した後に報知される震度報知式地震発生情報や強度報知式地震発生情報に基づいて、地震到来予測状態を判別する場合を例示したが、地震の発生に関する地震情報として、地震が発生する前に予知した強度報知式地震発生情報が報知される場合には、その情報に基づいて地震到来予測状態を判別する形態で実施してもよい。
【0079】
(d)上記実施形態では、発電部としての発電モジュールMの設置位置を示す発電部位置情報を、GPS受信ユニット42を用いて取得する場合を例示したが、例えば、設置位置としての住所を手動にて予め入力して記憶させるようにする等、設置位置を示す発電部位置情報を入力する形態は種々変更できる。
【0080】
(e)上記実施形態では、燃料ガスとして都市ガスを例示したが、燃料ガスとしては種々の炭化水素系ガスを適用できる。
【0081】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、燃料ガスの供給により発電を行う発電部を備えている電力供給システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
7 燃料電池
35 地震到来判別部
C 運転制御部
M 発電部
図1
図2
図3