(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149247
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】繊維強化複合材成形方法および繊維強化複合材成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 43/36 20060101AFI20220929BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20220929BHJP
B29C 43/12 20060101ALI20220929BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20220929BHJP
B29C 70/44 20060101ALI20220929BHJP
B29C 41/42 20060101ALI20220929BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B29C43/36
B29C43/34
B29C43/12
B29C70/16
B29C70/44
B29C41/42
B29K105:08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051308
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】下野 耕大
(72)【発明者】
【氏名】倭 誉
(72)【発明者】
【氏名】清水 正彦
(72)【発明者】
【氏名】真能 翔也
(72)【発明者】
【氏名】徳冨 寛
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AD16
4F202AD35
4F202CA03
4F202CB01
4F202CK42
4F202CK52
4F202CK75
4F204AA36
4F204AC05
4F204AD16
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FB11
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ15
4F204FQ37
4F205AA36
4F205AC05
4F205AD16
4F205HA09
4F205HA22
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HK31
(57)【要約】
【課題】繊維基材の端部に樹脂材料のみを含む部分が形成されることを抑制し、複合材の製造コストの上昇や損傷の発生を抑制する。
【解決手段】第2成形型の接触面が第1成形型の成形面と接触するように第2成形型を第1成形型に配置する配置工程S102と、第1成形型の成形面に繊維基材を設置する第1設置工程S103と、繊維基材が第1成形型の第1方向の第1端部に接触し、かつ第2成形型が繊維基材に接触する状態で、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に形成される隙間を測定する測定工程S104と、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に測定された隙間に応じた第1方向の長さを有するスペーサを挿入する挿入工程S105と、繊維基材を密閉部材により第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉工程S107と、密閉空間に樹脂材料を注入する注入工程S108と、を備える繊維強化複合材成形方法を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形型および第2成形型により複合材を成形する繊維強化複合材成形方法であって、
前記第1成形型は、第1方向に沿って延びる成形面を有し、
前記第2成形型は、前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面を有し、
前記接触面が前記成形面と接触するように前記第2成形型を前記第1成形型に配置する配置工程と、
前記第2成形型が配置された前記第1成形型の前記成形面に繊維基材を設置する第1設置工程と、
前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部との間に形成される隙間を測定する測定工程と、
前記第2成形型と前記第1成形型の前記第2端部との間に、前記測定工程により測定された前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサを挿入する挿入工程と、
前記繊維基材を密閉部材により前記第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉工程と、
前記密閉工程により形成された前記密閉空間に樹脂材料を注入する注入工程と、を備える繊維強化複合材成形方法。
【請求項2】
前記第1成形型は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って第1幅を有する第1の前記繊維基材が配置される第1の前記成形面と、前記第2方向に沿って前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2の前記繊維基材が配置される第2の前記成形面と、を有し、
第2の前記成形面に第2の前記繊維基材を設置する第2設置工程を備える請求項1に記載の繊維強化複合材成形方法。
【請求項3】
前記第2成形型は、少なくとも前記繊維基材と接触する部分が伸縮性を有する部材により形成されている請求項1または請求項2に記載の繊維強化複合材成形方法。
【請求項4】
第1方向に沿って延びるとともに繊維基材が設置される成形面を有する第1成形型と、
前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面を有する第2成形型と、
前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部との間に形成される隙間に挿入されるとともに前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサと、
前記繊維基材を前記第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉部材と、
前記密閉空間に封止された前記繊維基材に対して樹脂材料を注入する樹脂注入部と、を備える繊維強化複合材成形装置。
【請求項5】
前記第1成形型は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って第1幅を有する第1の前記繊維基材が配置される第1の前記成形面と、前記第2方向に沿って前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2の前記繊維基材が配置される第2の前記成形面と、を有する請求項4に記載の繊維強化複合材成形装置。
【請求項6】
前記第2成形型は、少なくとも前記繊維基材と接触する部分が伸縮性を有する部材により形成されている請求項4または請求項5に記載の繊維強化複合材成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化複合材成形方法および繊維強化複合材成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維基材で樹脂を強化した繊維強化プラスチック等の繊維強化複合材を成形する成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、金型に配置された繊維基材を成形治具により圧縮する際に、金型と成形治具との間隙を成型品(複合材)の所望の板厚に対応する寸法に設定することが開示されている。特許文献1によれば、金型と成形治具との間隙を調整することにより、成形治具で繊維基材を十分に押し付け、間隙内で繊維基材を十分に圧縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、真空圧と大気圧の差圧を利用して、繊維基材に樹脂材料を含浸させるRTM(Resin Transfer Molding)を適用する場合に、繊維基材の板厚方向の間隙を調整する方法だけでは、適切な複合材を成形することができない可能性がある。例えば、繊維基材の端部において金型と成形治具との間に間隙が生じる場合、間隙に注入された樹脂材料が固化して樹脂材料のみを含む部分(レジンリッチ部分)が形成されてしまう。
【0005】
樹脂材料のみを含む部分が形成されてしまうと、複合材の成形後に樹脂材料のみを含む部分を適切に除去する作業が必要となり、複合材の製造コストが上昇してしまう。また、樹脂材料のみを含む部分は繊維基材を含んでいないため割れやすく、この部分が割れると繊維基材を含む複合材の他の部分にまで損傷が生じてしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、繊維基材の端部に樹脂材料のみを含む部分が複合材に形成されることを抑制し、複合材の製造コストの上昇や損傷の発生を防止することが可能な繊維強化複合材成形方法および繊維強化複合材成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る繊維強化複合材成形方法は、第1成形型および第2成形型により複合材を成形する繊維強化複合材成形方法であって、前記第1成形型は、第1方向に沿って延びる成形面を有し、前記第2成形型は、前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面を有し、前記接触面が前記成形面と接触するように前記第2成形型を前記第1成形型に配置する配置工程と、前記第2成形型が配置された前記第1成形型の前記成形面に繊維基材を設置する第1設置工程と、前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部との間に形成される隙間を測定する測定工程と、前記第2成形型と前記第1成形型の前記第2端部との間に、前記測定工程により測定された前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサを挿入する挿入工程と、前記繊維基材を密閉部材により前記第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉工程と、前記密閉工程により形成された前記密閉空間に樹脂材料を注入する注入工程と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る繊維強化複合材成形装置は、第1方向に沿って延びるとともに繊維基材が設置される成形面を有する第1成形型と、前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面を有する第2成形型と、前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部との間に形成される隙間に挿入されるとともに前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサと、前記繊維基材を前記第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉部材と、前記密閉空間に封止された前記繊維基材に対して樹脂材料を注入する樹脂注入部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば繊維基材の端部に樹脂材料のみを含む部分が複合材に形成されることを抑制し、複合材の製造コストの上昇や損傷の発生を防止することが可能な繊維強化複合材成形方法および繊維強化複合材成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る成形装置を示す分解斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る成形装置を示す斜視図であり、第1成形型に繊維基材を設置した状態を示す。
【
図3】
図1に示す成形装置により製造される複合材の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す成形装置のA-A矢視断面図である。
【
図5】
図2に示す成形装置のB-B矢視断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る複合材成形方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図2に示す成形装置のA-A矢視断面図であり、第2賦形型を第1賦形型に配置した状態を示す。
【
図8】
図2に示す成形装置のA-A矢視断面図であり、第1賦形型に繊維基材を設置した状態を示す。
【
図9】
図2に示す成形装置のB-B矢視断面図であり、第2成形型が繊維基材に接触する状態を示す。
【
図10】第2成形型の端面と第1成形型の第2端面を接触させた状態で、第2成形型と繊維基材との間に充填材を充填した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態に係る成形装置(繊維強化複合材成形装置)100およびそれを用いた繊維強化複合材成形方法について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係る成形装置100を示す分解斜視図である。
図2は、本開示の一実施形態に係る成形装置100を示す斜視図であり、第1成形型10に繊維基材FB1,FB2を設置した状態を示す。
【0012】
図3は、
図1に示す成形装置100により製造される複合材200の一例を示す斜視図である。
図4は、
図2に示す成形装置100のA-A矢視断面図である。
図5は、
図2に示す成形装置100のB-B矢視断面図である。
【0013】
本実施形態の成形装置100は、上型にバギングフィルム30を使用して下型である第1成形型10および第2成形型20に配置される繊維基材FB1および繊維基材FB2を密閉空間CSに封止し、密閉空間CSを減圧することにより密閉空間CSに樹脂材料RMを充填して硬化させるインフュージョン成形を実行する装置である。インフュージョン成形は、真空圧と大気圧の差圧を利用して、繊維基材に樹脂を含浸させるRTM(Resin Transfer Molding)やResin Infusionの一手法である。
【0014】
本実施形態の成形装置100は、一例として、
図3に示す複合材(繊維強化複合材)200を成形する。
図3に示す複合材200は、航空機の胴体を補強する補強材として用いられるストリンガである。複合材200は、長手方向(第1方向)LDに沿って延びる長尺状であり、幅方向WDの中央部が突出する部材である。幅方向(第2方向)WDは、複合材200が設置される面において、長手方向LDに直交する方向である。
【0015】
図3に示すように、複合材200は、繊維基材FB1に樹脂材料を含浸させた第1部材210と、繊維基材FB2に樹脂材料を含浸させた第2部材220とが一体となって硬化した部材である。第1部材210は、幅方向WDの両端側に配置されるとともに平坦状に形成される一対の平坦部211と、一対の平坦部211に接続されるとともに幅方向WDの中央部で突出する突出部212とを備える。第2部材220は、長手方向LDおよび幅方向WDに沿って配置される平坦状あるいは所定の曲率を有する部材である。
【0016】
繊維基材FB1および繊維基材FB2は、例えば、炭素繊維,ガラス繊維等の強化繊維材料により形成されるシートを複数層に渡って積層した部材である。また、繊維基材FB1および繊維基材FB2は、樹脂材料RMが予め部分的に含浸されたプリプレグでも良い。樹脂材料RMは、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、フェノール、シアネートエステル、ポリイミド等の熱硬化性樹脂材料である。
【0017】
以下の説明において、樹脂材料RMは、熱硬化性樹脂材料とするが、例えば、熱可塑性樹脂を用いてもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等である。
【0018】
図3に示す複合材200は、平坦部211と突出部212により画定されるとともに長手方向LDに沿って延びる凹部CPを有する。本実施形態の成形装置100は、凹部CPを有する複合材200を成形するために、凹部CPに挿入される中子であるコア部70を用いる。コア部70を凹部CPに挿入した状態で複合材200を成形することにより、凹部CPの形状を複合材200の成形中に一定の形状に維持することができる。
【0019】
図1および
図2に示すように、本実施形態の成形装置100は、第1成形型10と、第2成形型20と、スペーサ25と、バギングフィルム(密閉部材)30と、吸引ライン(吸引部)40と、樹脂注入ライン(樹脂注入部)50と、樹脂拡散メディア(シート)60と、コア部70と、を備える。
【0020】
第1成形型10は、繊維基材FB1が配置され、繊維基材FB1を所望の形状に成形するための型である。
図1および
図4に示すように、第1成形型10は、一対の成形面(第1の成形面)10aと、成形面10bと、一対の成形面(第2の成形面)10cとが形成された雌型である。
【0021】
一対の成形面10aは、繊維基材FB1が配置されるとともに幅方向WDに沿って延びる成形面である。成形面10bは、繊維基材FB1配置されるとともに成形面10aから下方に凹んだ形状を有する成形面である。一対の成形面10aは、幅方向WDにおいて、成形面10bの両端に配置される。成形面10aおよび成形面10bは、長手方向LDに直交する幅方向WDに沿って第1幅W1を有する繊維基材FB1が配置される成形面である。一対の成形面10cは、繊維基材FB2が配置されるとともに幅方向WDに沿って延びる成形面である。
【0022】
図4に示すように、繊維基材FB1は、幅方向WDに沿って第1幅W1を有し、一対の成形面10aおよび成形面10bに沿って設置される。繊維基材FB2は、幅方向WDに沿って第1幅W1よりも広い第2幅W2を有し、一対の成形面10cに沿って設置される。
図5に示すように、第1成形型10は、長手方向LDの第1端面(第1端部)11と第2端面(第2端部)12との間の領域に繊維基材FB1を収容する。
【0023】
第2成形型20は、長手方向LDに沿って移動可能に第1成形型10に配置され、繊維基材FB1の長手方向LDの端部を所望の形状に成形するための型である。
図1に示すように、第2成形型20は、成形面20aと、接触面20bと、支持部20cとを有する。
【0024】
成形面20aは、繊維基材FB1の長手方向LDの端部と接触することにより、繊維基材FB1を成形する面である。
図5に示すように、成形面20aは、第2端面12から第1端面11に向けて下端からの高さHが漸次低くなるように傾斜する傾斜面となっている。
【0025】
接触面20bは、第2成形型20が第1成形型10に配置された状態で、第1成形型10の成形面10bと接触する面である。
図4に示すように、接触面20bは、幅方向WDにおいて、成形面10bと対応する形状を有している。そのため、第2成形型20が第1成形型10に配置された状態で、接触面20bの全領域が第1成形型10の成形面10bと接触する。
【0026】
支持部20cは、第2成形型20が第1成形型10に配置された状態で、幅方向WDに沿って延びるように配置される部材である。支持部20cは、第2成形型20が第1成形型10に配置された状態で、幅方向WDの両端部が第1成形型10の一対の成形面10aに支持される。
【0027】
支持部20cが一対の成形面10aの上に配置されるため、支持部20cを長手方向LDに沿って移動させて繊維基材FB1の長手方向LDの端面に突き当てることにより、繊維基材FB1の端面を平滑に成形することができる。
【0028】
第2成形型20は、樹脂拡散メディア60を介して繊維基材FB1と接触する部分を含め、全体がアルミニウム合金等の金属材料により形成されるものとするが、他の態様であってもよい。例えば、第2成形型20は、樹脂拡散メディア60を介して繊維基材FB1と接触する部分が熱膨張性や伸縮性を有する部材(例えば、シリコーンや発泡シリコーン)により形成されているものであってよい。
【0029】
伸縮性を有する部材で第2成形型20の繊維基材FB1と接触する部分を形成することにより、樹脂材料RMを密閉空間CSに注入する注入工程やその後の硬化工程等で加圧あるいは熱膨張により繊維基材FB1の形状が変化する場合であっても、繊維基材FB1の形状の変化に追従するように第2成形型20を伸縮させることができる。
【0030】
なお、第2成形型20は、樹脂拡散メディア60を介して繊維基材FB1と接触する部分のみを伸縮性を有する部材とし、他の部分を金属材料により形成してもよい。また、第2成形型20は、樹脂拡散メディア60を介して繊維基材FB1と接触する部分を含む全体が伸縮性を有する部材で形成されていてもよい。
【0031】
スペーサ25は、
図5に示すように、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に形成される隙間GPに挿入される板状部材である。隙間GPは、繊維基材FB1が第1成形型10の長手方向LDの第1端面11に接触し、かつ第2成形型20が繊維基材FB1に接触する状態で、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に形成される。
【0032】
第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に形成される隙間GPは、繊維基材FB1の個体差あるいは第1成形型10の個体差に応じて任意の間隔となる。スペーサ25は、どのような厚さ(長手方向LDに沿った長さ)の隙間GPが形成された場合でも、その隙間GPを適切に調整する必要がある。具体的には、後述する硬化工程で樹脂材料RMを加熱することによる熱膨張等を考慮した所定の間隔が形成されるように、隙間GPを調整する必要がある。したがって、スペーサ25として、それぞれ異なる厚さを有する複数種類を用意しておき、隙間GPが所定の間隔となるような隙間GPに応じた長手方向LDの長さを有するスペーサ25を選択して隙間GPに挿入するものとする。
【0033】
また、スペーサ25として、通常形成される隙間GPの厚さよりも十分に薄い一定の厚さを有する板材を複数枚用意しておいてもよい。この場合、隙間GPの厚さと一致するように、一定の厚さのスペーサ25を複数枚組み合わせて隙間GPと一致する厚さとし、その複数枚のスペーサ25を隙間GPに挿入する。
【0034】
バギングフィルム30は、繊維基材FB1および繊維基材FB2を第1成形型10に封止して密閉空間CSを形成する部材である。バギングフィルム30は、例えば、ナイロンを主成分とする樹脂材料により形成される。バギングフィルム30は、第1成形型10の成形面10a、成形面10b、および成形面10cの全周を覆うように第1成形型10に対してシーラントテープSTにより接合される。
【0035】
吸引ライン40は、
図4および
図5に示すように、一端が真空ポンプ等の吸引源320に接続され、他端が密閉空間CSに接続される管体である。吸引ライン40は、吸引源320と密閉空間CSとを接続することにより、密閉空間CSに存在する空気を密閉空間CSから排出し、密閉空間CSの圧力を大気圧より低い圧力(例えば、真空圧)に減圧することができる。
【0036】
樹脂注入ライン50は、
図5に示すように、吸引ライン40により減圧される密閉空間CSに封止された繊維基材FB1に対して樹脂材料RMを注入する管体である。樹脂注入ライン50は、一端が樹脂材料RMを供給する供給源330に接続され、他端が密閉空間CSに接続される。樹脂注入ライン50は、供給源330と密閉空間CSとを接続することにより、吸引ライン40により減圧された密閉空間CSに対して、供給源330から樹脂材料RMを供給することができる。
【0037】
樹脂拡散メディア60は、樹脂注入ライン50から密閉空間CSへ供給される樹脂材料RMを、繊維基材FB1の全体へ拡散しながら供給するためのシート状の媒体である。樹脂拡散メディア60は、例えば、網状の内部構造を有し、樹脂材料RMが内部を通過することが可能な構造となっている。そのため、吸引ライン40により減圧された密閉空間CSに供給された樹脂材料RMは、樹脂拡散メディア60の内部を通過して繊維基材FB1の表面の全体へ拡散し、繊維基材FB1に含浸する。
【0038】
樹脂拡散メディア60は、例えば、ナイロンやポリエステルにより形成されており、繊維基材FB1に対する離型性を有するシートである。樹脂拡散メディア60が離型性を有するため、複合材200の成形が完了した後は、樹脂拡散メディア60を繊維基材FB1から容易に除去することができる。
【0039】
なお、樹脂拡散メディア60は、繊維基材FB1と第1成形型10との間に配置しないようにしてもよい。この場合、第1成形型10の成形面10a,成形面10b,成形面10cに、樹脂材料RMの拡散を促進する溝部を形成するようにしてもよい。
【0040】
コア部70は、第1成形型10に配置された繊維基材FB1と隙間を設けずに接触した状態で配置される部材である。コア部70は、凹部CPに対応する形状を有するとともに長手方向LDに沿って長尺状に形成される部材である。コア部70は、密閉空間CSが真空状態となった場合でも一定の形状を保持することができる硬度を有する部材である。
【0041】
コア部70は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリルイミド、バルサ材、カーボン発泡体などの発泡材料により形成されている。また、コア部70は、例えば、ブラダー等のゴム製の中空部材で成形中は大気圧で内圧がかけられ、成形後に真空吸引して縮ませて引き抜ける材料により形成してもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る複合材成形方法について図面を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る複合材成形方法を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS101(賦形工程)において、平坦状に形成される繊維基材FB1を賦形型(図示略)により賦形して第1成形型10の成形面10aおよび成形面10bに対応する形状とする。
【0044】
ステップS102(配置工程)において、接触面20bが成形面10bと接触するように第2成形型20を第1成形型10に配置する。第2成形型20を第1成形型10に配置すると、
図7に示す状態となる。
図7は、
図2に示す成形装置100のA-A矢視断面図であり、第2成形型20を第1成形型10に配置した状態を示す。
【0045】
ステップS103(第1設置工程)において、第2成形型20が配置された第1成形型10の成形面10aおよび成形面10bに繊維基材FB1を設置する。繊維基材FB1を第1成形型10に設置する際には、樹脂拡散メディア60を繊維基材FB1と第1成形型10との間に配置する。繊維基材FB1を第1成形型10に設置すると、
図8に示す状態となる。
図8は、
図2に示す成形装置100のA-A矢視断面図であり、第1成形型10に繊維基材FB1を設置した状態を示す。
【0046】
ステップS104(測定工程)において、繊維基材FB1が第1成形型10の長手方向LDの第1端面11に接触し、かつ第2成形型20が繊維基材FB1に接触する状態で、第2成形型20と第1成形型10の第2端面12との間に形成される隙間GPを測定する。
【0047】
ステップS104において、作業者は、第2成形型20の支持部20cを把持し、第2成形型20を第1端面11に向けて長手方向LDに沿って移動させ、
図9に示す状態とする。
図9は、
図2に示す成形装置100のB-B矢視断面図であり、第2成形型20が繊維基材FB1に接触する状態を示す。
【0048】
図9に示すように、第2成形型20が繊維基材FB1に接触する状態となると、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に隙間GPが形成される。作業者は、隙間GPの長手方向LDに沿った長さを測定器(図示略)により測定する。
【0049】
なお、以上においては、繊維基材FB1が第1成形型10の長手方向LDの第1端面11に接触し、かつ第2成形型20が繊維基材FB1に接触する状態で、第2成形型20と第1成形型10の第2端面12との間に形成される隙間GPを直接的に測定するものとしたが、他の態様であってもよい。
【0050】
例えば、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12を接触させた状態で、隙間GPに相当する長さを間接的に測定してもよい。
図10は、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12を接触させた状態で、第2成形型20と繊維基材FB1との間に充填材FLを充填した状態を示す図である。充填材FLは、粘土や硬化性樹脂など所定の力を付与することにより変形し、変形後に形状を保持できる材料である。
【0051】
図10に示すように、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12を接触させた状態で、第2成形型20と繊維基材FB1との間に充填材FLを少しずつ充填し、繊維基材FB1が第1成形型10の第1端面11に接触し、かつ第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12が接触し、かつ第2成形型20と繊維基材FB1との間が充填材FLで満たされた状態とする。
【0052】
そして、
図10に示す状態となったら第1成形型10から繊維基材FB1を取り外し、充填材FLの長手方向LDに沿った長さL1を測定器(図示略)により測定する。計測器により計測される長さL1は、
図9に示す隙間GPの長手方向LDに沿った長さと同一である。したがって、長さL1を測定することにより、隙間GPに相当する長さを間接的に測定することができる。
【0053】
ステップS105(挿入工程)において、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に、測定工程(S104)により測定された隙間GPに応じた長手方向LDの長さを有するスペーサ25を挿入する。スペーサ25を隙間GPに挿入することにより、
図5に示す状態となる。
図5に示す状態で、繊維基材FB1とスペーサ25との間には、後述する硬化工程で樹脂材料RMを加熱することによる熱膨張を考慮した所定の間隔が形成された状態となる。
【0054】
ステップS106(第2設置工程)において、繊維基材FB1が設置された第1成形型10の成形面10cに繊維基材FB2を設置する。
【0055】
ステップS107(密閉工程)において、繊維基材FB1および繊維基材FB2を第1成形型10に封止して密閉空間CSを形成する。具体的には、第1成形型10の全周を覆うように第1成形型10に対してシーラントテープSTによりバギングフィルム30を接合し、密閉空間CSを形成する。ステップS107の密閉工程が完了すると、
図4および
図5に示す状態となる。
【0056】
ステップS107(密閉工程)において、密閉空間CSが形成されると、樹脂材料RMの供給源330に接続される樹脂注入ライン50と密閉空間CSとが連通した状態となる。また、密閉空間CSが形成されると、吸引源320に接続される吸引ライン40と密閉空間CSとが連通した状態となる。
【0057】
ステップS108(注入工程)において、ステップS107(密閉工程)により形成された密閉空間CSの空気を吸引して密閉空間CSを減圧するとともに密閉空間CSに封止された繊維基材FB1および繊維基材FB2に対して樹脂材料RMを注入する。具体的には、吸引源320を作動させ、吸引ライン40を介して密閉空間CSに存在する空気を密閉空間CSから排出し、密閉空間CSの圧力を大気圧より低い真空状態か真空状態に近い圧力まで減圧する。
【0058】
その後、供給源330を樹脂注入ライン50へ樹脂材料RMを供給可能な状態とし、樹脂注入ライン50と減圧された密閉空間CSとの圧力差により、樹脂材料RMを密閉空間CSへ注入する。樹脂材料RMは、樹脂拡散メディア60の内部を通過して繊維基材FB1の表面の全体へ拡散し、繊維基材FB1および繊維基材FB2に注入される。繊維基材FB1および繊維基材FB2へ含浸した樹脂材料RMの一部は、繊維基材FB2を通過して吸引ライン40へ導かれ、余剰の樹脂材料RMとして吸引ライン40へ排出される。
【0059】
ステップS108(注入工程)においては、密閉空間CSが真空状態か真空状態に近い圧力まで減圧されるため、繊維基材FB1とそれに含浸した樹脂材料RMが大気圧により加圧される。
【0060】
ステップS109(硬化工程)において、ステップS108(注入工程)により繊維基材FB1および繊維基材FB2に対して注入された熱硬化性の樹脂材料RMを、加熱部(図示略)により熱硬化温度以上に加熱し、樹脂材料RMを硬化させる。
【0061】
なお、熱可塑性の樹脂材料RMを用いる場合、ステップS109(硬化工程)においては、加熱部による加熱を行わない。ステップS109においては、樹脂材料RMが軟化温度よりも十分に低くなるように樹脂材料RMを冷却する。
【0062】
ステップS110(取り外し工程)において、ステップS109(硬化工程)において硬化した樹脂材料RMと繊維基材FB1と繊維基材FB2を含む複合材200を第1成形型10から取り外す。具体的には、バギングフィルム30と第1成形型10とを接合するシーラントテープSTを除去し、第1成形型10からバギングフィルム30を取り外す。
【0063】
バギングフィルム30が取り外された第1成形型10から凹部CPにコア部70が挿入された状態の複合材200を第1成形型10から取り外す。さらに、複合材200の凹部CPからコア部70を取り外す。以上の工程により、第1成形型10および第2成形型20により成形された複合材200の製造工程が終了する。
【0064】
以上説明した本実施形態の成形装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の複合材成形方法によれば、繊維基材FB1が第1成形型10の長手方向LDの第1端面11に接触し、かつ第2成形型20の成形面20aが繊維基材FB1に接触する状態で、測定工程(S104)において、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に形成される隙間GPを測定する。この隙間GPは、第1成形型10および繊維基材FB1の製造誤差等により形成されるものである。この隙間GPが適切な間隔でない状態で樹脂材料RMを繊維基材FB1に注入して複合材200を成形すると、繊維基材FB1の長手方向LDの第2端面12に樹脂材料RMのみを含む部分が形成されてしまう。
【0065】
そこで、本実施形態に係る複合材成形方法では、挿入工程(S105)において、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に、測定された隙間GPに応じた長手方向LDに長さを有するスペーサ25を挿入する。スペーサ25を隙間GPに挿入することにより隙間GPが適切な間隔に調整されるため、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に適切な間隔が形成される状態で密閉空間CSに樹脂材料RMが注入される。よって、繊維基材FB1の長手方向LDの第2端面12に樹脂材料RMのみを含む部分が複合材に形成されることを抑制することができる。
【0066】
また、伸縮性を有する部材で第2成形型20の繊維基材FB1と接触する部分を形成することにより、注入工程(S108)やその後の硬化工程(S109)で繊維基材FB1の形状が変化する場合であっても、繊維基材FB1の形状の変化に追従するように第2成形型20を伸縮させることができる。そのため、注入工程(S108)やその後の硬化工程(S109)において、第2成形型20の端面20dと第1成形型10の第2端面12との間に適切でない間隔の隙間GPが形成されることを防止することができる。
【0067】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、成形装置100は、長手方向LDにおける繊維基材FB1の個体差あるいは第1成形型10の個体差を考慮し、長手方向LDの隙間GPにスペーサ25を挿入するものであったが、更に、幅方向WDにおける繊維基材FB1の個体差あるいは第1成形型10の個体差を考慮するようにしてもよい。
【0068】
図11は、成形装置100の変形例を示す断面図であり、
図2に示す成形装置のA-A矢視断面図である。
図11に示すように、幅方向WDにおいて、繊維基材FB1の端面FB1aと第1成形型10の第3端面13との間には、隙間GPaが形成されている。また、幅方向WDにおいて、繊維基材FB1の端面FB1bと第1成形型10の第4端面14との間には、隙間GPbが形成されている。
【0069】
隙間GPaおよび隙間GPbは、繊維基材FB1の個体差あるいは第1成形型10の個体差に応じて任意の間隔となる。そこで、隙間GPaおよび隙間GPbをそれぞれ適切な間隔に調整するために、スペーサ26およびスペーサ27が挿入される。隙間GPaおよび隙間GPbを適切な間隔に調整するのは、硬化工程で樹脂材料RMを加熱することによる熱膨張等を考慮した間隔が形成されるようにするためである。
【0070】
スペーサ26は、長手方向LDに沿って棒状に延びる部材であり、隙間GPaに応じた幅方向WDの長さを有する。同様に、スペーサ27は、長手方向LDに沿って棒状に延びる部材であり、隙間GPbに応じた幅方向WDの長さを有する。スペーサ26として、それぞれ異なる幅方向WDの長さを有する複数種類を用意しておき、隙間GPaが所定の間隔となるように隙間GPaに応じた長さを有するスペーサ26を選択して隙間GPaに挿入するものとする。同様に、スペーサ27として、それぞれ異なる幅方向WDの長さを有する複数種類を用意しておき、隙間GPbが所定の間隔となるように隙間GPbに応じた長さを有するスペーサ27を選択して隙間GPbに挿入するものとする。
【0071】
隙間GPaおよび隙間GPbは、前述したステップS104(測定工程)において測定する。また、スペーサ26およびスペーサ27は、前述したステップS105(挿入工程)においてそれぞれ隙間GPaおよび隙間GPbに挿入するものとする。
【0072】
以上の説明においては、第1成形型10の下方に樹脂注入ライン50を設け、第1成形型10の上方に吸引ライン40を設けるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、第1成形型10の上方に樹脂注入ライン50を設け、第1成形型10の下方に吸引ライン40を設けてもよい。
【0073】
以上の説明においては、密閉空間CSを減圧することにより樹脂注入ライン50から密閉空間CSに樹脂材料RMを注入するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、供給源330が樹脂材料RMを加圧して樹脂注入ライン50へ押し出すことにより、樹脂注入ライン50から密閉空間CSに樹脂材料RMを注入してもよい。
【0074】
以上説明した実施形態に記載の繊維強化複合材成形方法は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る繊維強化複合材成形方法は、第1成形型(10)および第2成形型(20)により複合材(200)を成形する繊維強化複合材成形方法であって、前記第1成形型は、第1方向(LD)に沿って延びる成形面(10b)を有し、前記第2成形型は、前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面(20b)を有し、前記接触面が前記成形面と接触するように前記第2成形型を前記第1成形型に配置する配置工程(S012)と、前記第2成形型が配置された前記第1成形型の前記成形面に繊維基材(FB1)を設置する第1設置工程(S103)と、前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部(11)に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部(12)との間に形成される隙間(GP)を測定する測定工程(S104)と、前記第2成形型と前記第1成形型の前記第2端部(12)との間に、前記測定工程により測定された前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサ(25)を挿入する挿入工程(S105)と、前記繊維基材を密閉部材(30)により前記第1成形型に封止して密閉空間(CS)を形成する密閉工程(S107)と、前記密閉工程により形成された前記密閉空間に樹脂材料を注入する注入工程(S108)と、を備える。
【0075】
本開示に係る繊維強化複合材成形方法によれば、繊維基材が第1成形型の第1方向の第1端部に接触し、かつ第2成形型が繊維基材に接触する状態で、測定工程において、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に形成される隙間を測定する。この隙間は、第1成形型および繊維基材の製造誤差等により形成されるものである。この隙間が適切な間隔でない状態で樹脂材料を繊維基材に注入して複合材を成形すると、繊維基材の第1方向の第2端部に樹脂材料のみを含む部分が形成されてしまう。
【0076】
そこで、本開示に係る繊維強化複合材成形方法では、挿入工程において、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に、測定された隙間に応じた第1方向の長さを有するスペーサを挿入する。スペーサを隙間に挿入することにより隙間が適切な間隔に調整されるため、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に適切な間隔が形成される状態で密閉空間に樹脂材料が注入される。よって、繊維基材の第1方向の第2端部に樹脂材料のみを含む部分が複合材に形成されることを抑制することができる。
【0077】
本開示に係る繊維強化複合材成形方法において、前記第1成形型は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って第1幅を有する第1の前記繊維基材が配置される第1の前記成形面と、前記第2方向に沿って前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2の前記繊維基材が配置される第2の前記成形面と、を有し、前記第1の成形面に前記第1の繊維基材を配置するとともに第2の前記成形面に前記第2の繊維基材を設置する第2設置工程を備える構成が好ましい。
【0078】
本構成の繊維強化複合材成形方法によれば、第1成形型の第1の成形面に第1幅を有する第1の繊維基材を配置し、第1成形型の第2の成形面に第1幅よりも広い第2幅を有する第2の繊維基材を配置し、第1の繊維基材および第2の繊維基材を一体とした複合材を成形することができる。
【0079】
本開示に係る繊維強化複合材成形方法において、前記第2成形型は、少なくとも前記繊維基材と接触する部分が伸縮性を有する部材により形成されている構成が好ましい。
伸縮性を有する部材で第2成形型の繊維基材と接触する部分を形成することにより、注入工程やその後の工程で繊維基材の形状が変化する場合であっても、繊維基材の形状の変化に追従するように第2成形型を伸縮させることができる。そのため、注入工程やその後の工程において、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に適切でない間隔の隙間が形成されることを防止することができる。
【0080】
以上説明した実施形態に記載の繊維強化複合材成形装置は、例えば以下のように把握される。
本開示に係る繊維強化複合材成形装置は、第1方向に沿って延びるとともに繊維基材が設置される成形面を有する第1成形型と、前記第1方向に沿って移動可能に前記第1成形型に配置されるとともに前記成形面と接触する接触面を有する第2成形型と、前記繊維基材が前記第1成形型の前記第1方向の第1端部に接触し、かつ前記第2成形型が前記繊維基材に接触する状態で、前記第2成形型と前記第1成形型の第2端部との間に形成される隙間に挿入されるとともに前記隙間に応じた前記第1方向の長さを有するスペーサと、前記繊維基材を前記第1成形型に封止して密閉空間を形成する密閉部材と、前記密閉空間に封止された前記繊維基材に対して樹脂材料を注入する樹脂注入部と、を備える。
【0081】
本開示に係る繊維強化複合材成形装置によれば、繊維基材が第1成形型の第1方向の第1端部に接触し、かつ第2成形型が繊維基材に接触する状態では、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に隙間が形成される。この隙間は、第1成形型および繊維基材の製造誤差等により形成されるものである。この隙間が適切な間隔でない状態で樹脂材料を繊維基材に注入して複合材を成形すると、繊維基材の第1方向の第2端部に樹脂材料のみを含む部分が形成されてしまう。
【0082】
本開示に係る繊維強化複合材成形装置では、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に形成される隙間に応じた第1方向の長さを有するスペーサが挿入される。スペーサを隙間に挿入することにより隙間が適切な間隔に調整されるため、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に適切な間隔が形成される状態で密閉空間に樹脂材料が注入される。よって、繊維基材の第1方向の第2端部に樹脂材料のみを含む部分が複合材に形成されることを抑制することができる。
【0083】
本開示に係る繊維強化複合材成形装置において、前記第1成形型は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って第1幅を有する第1の前記繊維基材が配置される第1の前記成形面と、前記第2方向に沿って前記第1幅よりも広い第2幅を有する第2の前記繊維基材が配置される第2の前記成形面と、を有する構成が好ましい。
【0084】
本構成の繊維強化複合材成形装置によれば、第1成形型の第1の成形面に第1幅を有する第1の繊維基材を配置し、第1成形型の第2の成形面に第1幅よりも広い第2幅を有する第2の繊維基材を配置し、第1の繊維基材および第2の繊維基材を一体とした複合材を成形することができる。
【0085】
本開示に係る繊維強化複合材成形装置において、前記第2成形型は、少なくとも前記繊維基材と接触する部分が伸縮性を有する部材により形成されている構成が好ましい。
伸縮性を有する部材で第2成形型の繊維基材と接触する部分を形成することにより、密閉空間に樹脂材料を注入した後に繊維基材の形状が変化する場合であっても、繊維基材の形状の変化に追従するように第2成形型を伸縮させることができる。そのため、密閉空間に樹脂材料を注入した後に、第2成形型と第1成形型の第2端部との間に適切でない間隔の隙間が形成されることを防止することができる。
【符号の説明】
【0086】
10 第1成形型
10a,10b,10c 成形面
11 第1端面(第1端部)
12 第2端面(第1端部)
20 第2成形型
20a 成形面
20b 接触面
20c 支持部
20d 端面
25,26,27 スペーサ
30 バギングフィルム(密閉部材)
40 吸引ライン(吸引部)
50 樹脂注入ライン(注入部)
60 樹脂拡散メディア
70 コア部
100 成形装置
200 複合材
210 第1部材
211 平坦部
212 突出部
220 第2部材
320 吸引源
330 供給源
CP 凹部
CS 密閉空間
FB1,FB2 繊維基材
FL 充填材
GP 隙間
H 高さ
LD 長手方向
RM 樹脂材料
ST シーラントテープ
W1 第1幅
W2 第2幅
WD 幅方向