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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149250
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】足裏触覚デバイス、VRシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051312
(22)【出願日】2021-03-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日:令和2年12月11日 公開場所:電子通信情報学会 公開方法:学会(同年12月18日)の要旨集に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 義哉
(72)【発明者】
【氏名】今村 弘樹
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555AA11
5E555AA27
5E555BA02
5E555BB02
5E555BC30
5E555BE17
5E555CA41
5E555CA44
5E555DA08
5E555DA24
5E555DB32
5E555DC85
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】人が歩行する動作に対応させて、様々な地面状態に応じた触覚を発生させることができる足裏触覚デバイスを提供する。
【解決手段】足裏触覚デバイス40は、足裏用の感圧センサ12を有する入力装置10と、足裏の複数箇所のそれぞれに当接する複数の足裏側シリンジ22と、足裏側シリンジ22を駆動させるステッピングモータ26を有する出力装置20と、入力装置10及び出力装置20を搭載する台座28と、入力装置10からの検出信号と外部信号とを受信して出力装置20に出力信号を出力する制御装置30を備えている。制御装置30は、地面情報Qを受信したとき、感圧センサ12で検出される圧力が地面情報Qに応じた値となるように足裏側シリンジ22のそれぞれを駆動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の足裏に対して触覚を発生させる足裏触覚デバイスであって、
前記足裏にかかる圧力を検出する感圧センサを有する入力装置と、
前記足裏の複数箇所のそれぞれに当接するように設けられた複数の当接部と、前記当接部のそれぞれを駆動させる1又は複数の駆動部とを有する出力装置と、
前記入力装置及び前記出力装置を搭載する台座と、
前記入力装置からの検出信号と前記入力装置以外からの外部信号とを受信し、前記出力装置に出力信号を出力する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記外部信号として少なくとも地面の固さ情報を有する地面情報を受信したとき前記駆動部を制御し、前記感圧センサで検出される圧力が前記地面情報に応じた値となるように前記当接部の各々を駆動させることを特徴とする足裏触覚デバイス。
【請求項2】
前記地面情報は、地面の3次元座標情報をさらに有し、
前記制御装置は、前記3次元座標情報に基づいて前記当接部の各々を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の足裏触覚デバイス。
【請求項3】
両足に対応した請求項1又は2に記載の足裏触覚デバイスと、
前記足裏触覚デバイスを装着した被験者のアバターを仮想空間上で表示可能な画像表示装置と、
前記被験者の足の動きに連動して前記アバターの足が動くように画像処理を行う画像処理装置と、を備えるVRシステムであって、
前記入力装置は、前記被験者の足が移動したとき、前記台座の移動量を検出する移動量検出部と、前記台座の加速度及び角速度を計測することにより前記被験者の移動方向を検出する移動方向検出部とをさらに有し、
前記制御装置は、前記感圧センサが検出した圧力と、前記移動量検出部が検出した前記移動量と、前記移動方向検出部が検出した前記移動方向とを前記画像処理装置に送信し、
前記画像表示装置において、前記画像処理装置に基づいて前記アバターを動作させることを特徴とするVRシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記アバターが前記仮想空間上で歩行したとき、前記地面情報に基づいて前記駆動部を制御することにより前記当接部の各々を駆動させることを特徴とする請求項3に記載のVRシステム。
【請求項5】
前記移動量検出部は、前記被験者の足が移動したとき、磁石が埋め込まれたローラが回転することにより前記移動量を検出するホールセンサであり、
前記ホールセンサは、前記感圧センサの圧力検出時に前記移動量を検出可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載のVRシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足裏に対して触覚を発生させる足裏触覚デバイス、当該足裏触覚デバイスを備えるVRシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、Virtual Reality(VR)技術がシミュレーション、トレーニング等の様々な分野に取り入れられ、人々の生活に役立っている。また、VR技術と触覚技術とが組み合わされ、遠隔地から仮想空間上の3次元オブジェクトに触れる体験等が可能となっている。このような技術は、手の触覚のみならず、足の触覚にも応用されている。
【0003】
下記の特許文献1(公知技術1)のスマートシューズにおいては、シューズ上に組み込まれたコントローラが、1つ以上のセンシング要素から受け取られたデータを用いて圧力マッピング表示を生成する。圧力マッピング表示は、モバイルデバイスのユーザインターフェース中に提示される。
【0004】
当該コントローラは、当該センシング要素からのデータを用いて、動きアニメーション表示を生成することができる。動きアニメーション表示は、スマートシューズを履いている人と同様に動き得るアバターを含み、その人の動きはアバターに実質的に反映される(特許文献1/段落0051,0052、図6)。
【0005】
また、近年では、足裏の位置に複数のシリンジを備えた装置をスライドさせ、触覚を得ることができる触覚デバイスが知られている。この装置では、スライドさせたときに各シリンジを押し上げるように制御することで、足裏に触覚を発生させることができる(公知技術2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2020-518296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
公知技術1のスマートシューズは、固い表面(剛体)上であれば圧力マッピングを行い易いが、比較的柔らかい表面(可塑性体)上においては、正確な圧力マッピングが難しいという問題があった。
【0008】
また、公知技術2の触覚デバイスは、足裏の触覚の大小を被験者に認識させることができる点で優れているが、スライド動作のみを想定しており、足を持ち上げる動作には対応していない。そのため、3次元オブジェクトの表面をなぞる触覚は得られるが、歩行しているとき人が足裏で感じるような触覚は得られなかった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、人が歩行する動作に対応させて、様々な地面状態に応じた触覚を発生させることができる足裏触覚デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明は、被験者の足裏に対して触覚を発生させる足裏触覚デバイスであって、
前記足裏にかかる圧力を検出する感圧センサを有する入力装置と、前記足裏の複数箇所のそれぞれに当接するように設けられた複数の当接部と、前記当接部のそれぞれを駆動させる1又は複数の駆動部とを有する出力装置と、前記入力装置及び前記出力装置を搭載する台座と、前記入力装置からの検出信号と前記入力装置以外からの外部信号とを受信し、前記出力装置に出力信号を出力する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記外部信号として少なくとも地面の固さ情報を有する地面情報を受信したとき前記駆動部を制御し、前記感圧センサで検出される圧力が前記地面情報に応じた値となるように前記当接部の各々を駆動させることを特徴とする。
【0011】
第1発明の足裏触覚デバイスは、入力装置と、出力装置と、制御装置とを備えている。制御装置は、外部信号として地面情報(地面の固さ情報)を受信したとき、足裏触覚デバイスの被験者がその触覚を感じることができるように、当接部の各々を駆動させる。特に、使用時には、感圧センサが常に圧力を検出しているため、制御装置は、その圧力が地面情報に応じた値となるように当接部の各々を駆動して制御する。これにより、本デバイスは、様々な固さの地面に応じた触覚を発生させることができる。
【0012】
第1発明の足裏触覚デバイスにおいて、前記地面情報は、地面の3次元座標情報をさらに有し、前記制御装置は、前記3次元座標情報に基づいて前記当接部の各々を駆動させることが好ましい。
【0013】
地面情報は、地面の固さ情報に加えて、地面の3次元座標情報を有している。このため、制御装置は、圧力が当該地面情報に応じた値となるように当接部の各々を駆動して制御する。これにより、本デバイスは、所定の位置、傾斜又は凹凸のある地面に応じた触覚を発生させることができる。
【0014】
第2発明は、両足に対応した上記の足裏触覚デバイスと、前記足裏触覚デバイスを装着した被験者のアバターを仮想空間上で表示可能な画像表示装置と、前記被験者の足の動きに連動して前記アバターの足が動くように画像処理を行う画像処理装置と、を備えるVRシステムであって、
前記入力装置は、前記被験者の足が移動したとき、前記台座の移動量を検出する移動量検出部と、前記台座の加速度及び角速度を計測することにより前記被験者の移動方向を検出する移動方向検出部とをさらに有し、前記制御装置は、前記感圧センサが検出した圧力と、前記移動量検出部が検出した前記移動量と、前記移動方向検出部が検出した前記移動方向とを前記画像処理装置に送信し、前記画像表示装置において、前記画像処理装置に基づいて前記アバターを動作させることを特徴とする。
【0015】
第2発明のVRシステムは、上記足裏触覚デバイスと、被験者のアバターを仮想空間上で表示可能な画像表示装置と、アバターの足が被験者の足と連動して動くように画像処理を行う画像処理装置とを備えている。足裏触覚デバイスの被験者が足を動かすと台座が移動するため、感圧センサの圧力、移動量検出部の移動量、そして移動方向検出部の移動方向が制御装置に送信され、制御信号が画像処理装置に送信される。これにより、本システムは、画像表示装置において、アバターが被験者の足の動きを再現することができる。
【0016】
第2発明のVRシステムにおいて、前記アバターが前記仮想空間上で歩行したとき、前記地面情報に基づいて前記駆動部を制御することにより前記当接部の各々を駆動させることが好ましい。
【0017】
例えば、アバターが仮想空間上で凹凸のある固い地面を歩行したとき、地面情報を受けた制御装置が駆動部を制御する。このとき、制御装置が地面状態に応じて各当接部の各々を駆動させるので、被験者が当該地面状態に応じた足裏の触覚を得ることができる。
【0018】
また、第2発明のVRシステムにおいて、前記移動量検出部は、前記被験者の足が移動したとき、磁石が埋め込まれたローラが回転することにより前記移動量を検出するホールセンサであり、前記ホールセンサは、前記感圧センサの圧力検出時に前記移動量を検出可能であることが好ましい。
【0019】
移動量検出部は、被験者の足(台座)が移動してローラが回転したとき、ホールセンサが磁石の磁気を検出することで移動量を検出する。また、ホールセンサは、感圧センサの圧力検出時に前記移動量を検出可能であるため、ローラの空転は検出されず、アバターの不要な動きを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るVRシステムの概要を説明する図。
図2】第1実施形態に係る足裏触覚デバイスの詳細を説明する図。
図3】被験者が歩行したときの足裏の接触パターンの一例を示す図。
図4】足裏触覚デバイスの足裏側シリンジの配列を説明する図。
図5】被験者が歩行したときの圧力変化のタイミングチャート。
図6A】VRシステムで行われる各種制御のフローチャート(前半)。
図6B】VRシステムで行われる各種制御のフローチャート(後半)。
図7】本発明の第2実施形態に係るVRシステムに含まれる足裏触覚デバイスの詳細を説明する図。
図8】第2実施形態の足裏触覚デバイスの入出力の相関グラフを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る足裏触覚デバイス、当該足裏触覚デバイスを備えるVRシステムの実施形態について説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態のVRシステム1の概要を示している。
【0023】
VRシステム1は、主に入力装置10、出力装置20、制御装置30、コンピュータ50及びヘッドマウントディスプレイ60で構成されている。また、入力装置10、出力装置20及び制御装置30は、後述する足裏触覚デバイス40を構成する。
【0024】
入力装置10は、感圧センサ12と、ホールセンサ14と、慣性計測装置16とからなる。感圧センサ12は、被験者が足裏触覚デバイス40を装着したとき、足裏触覚デバイス40の底部が地面に接触しているか否かを判定する圧力センサである。
【0025】
ホールセンサ14は、半導体のホール効果を利用した磁気センサである。詳細は後述するが、ホールセンサ14がローラに埋め込まれた磁石の接近を検知することにより、足裏触覚デバイス40の移動量を検出する。
【0026】
また、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)16は、加速度センサにより並進方向の運動を検出し、角速度(ジャイロ)センサにより回転方向の運動を検出する装置である。慣性計測装置16は、合計6軸の運動を計測して足裏触覚デバイス40の向きを決定する。感圧センサ12、ホールセンサ14及び慣性計測装置16の各検出信号は、制御装置30に送信される。
【0027】
出力装置20は、足裏側シリンジ22と、モータ側シリンジ24と、ステッピングモータ26とからなる。足裏側シリンジ22、モータ側シリンジ24及びステッピングモータ26は、制御装置30からの出力信号を受信して駆動し、被験者の足裏に与える圧力を調整することができる。
【0028】
足裏側シリンジ22(本発明の「当接部」)は、被験者の足F(図2参照)の足裏に当接するように立てて設けられたシリンジであり、モータ側シリンジ24は、ステッピングモータ26と接続されたシリンジである。なお、本実施形態の「シリンジ」は円筒部とピストンからなり、空気圧によりピストンが移動する、いわゆるエアシリンダである。
【0029】
ステッピングモータ26(本発明の「駆動部」)は、入力パルス信号の数に応じて回転するモータであり、正確な位置決めを行うことができる。今回使用するステッピングモータ26は、軸部が直線運動することによりモータ側シリンジ24を駆動させるアクチュエータである。
【0030】
制御装置30は、入力装置10及び出力装置20と信号の送受信が可能であり、コンピュータ50とは有線又は無線で制御信号の送受信が可能となっている。今回、制御装置30として、ワンボードマイコン“Arduino(登録商標)”を使用した。また、コンピュータ50は、ゲームエンジン“Unity(登録商標)”を搭載しており、所定の画像処理を行って映像信号を作成し、仮想空間上のアバターの動作に反映させる。
【0031】
当該映像信号による映像は、被験者が装着可能な表示装置であるヘッドマウントディスプレイ60にて表示される。また、制御装置30は、アバターが存在する仮想空間における地面の形状及び材質(地面テクスチャ)、そして被験者の足の動きに合わせてステッピングモータ26を駆動し、被験者の足裏への圧力による触覚を再現する。なお、当該アバターは、コンピュータ50のディスプレイに表示してもよいので、ヘッドマウントディスプレイ60はVRシステム1の必須の構成ではない。
【0032】
ここで、図2に、第1実施形態に係る足裏触覚デバイス40(被験者が装着した状態)の詳細を示す。
【0033】
足裏触覚デバイス40において、複数の足裏側シリンジ22は、足裏の複数箇所のそれぞれに当接するように台座28上に設けられている。台座28の下面側には、感圧センサ12a,12b、ホールセンサ14及び慣性計測装置16が設けられている。また、台座28は、被験者の足Fを足裏触覚デバイス40に固定するためのバンド29を有している。
【0034】
図示するように、感圧センサ12a,12bは、それぞれ台座28の前後方向に1つずつ配置されている。例えば、アバターの存在する仮想空間の地面が柔軟な可塑性体である場合は、感圧センサ12a,12bが踏み込む足の力に応じた圧力の差異を検出する。そして、制御装置30が制御情報として地面情報Qを受信したとき、地面テクスチャ(可塑性体の地面)に応じてステッピングモータ26を駆動させる。なお、可塑性体の地面とは、例えば、ラバー状、スポンジ状又はゼリー状の地面、マット、砂場、草原、雪面等の表面上を意味する。
【0035】
制御装置30に送信される地面情報Qは、仮想空間上の3次元座標(x,y,z)に加えて、地面の固さのパラメータρを含む。制御装置30は、地面情報Q(x,y,z,ρ)に基づいて、足裏に圧力の強弱が発生するようにステッピングモータ26の駆動を調整する。
【0036】
例えば、地面情報Qの座標(x0,y0,z0,ρ1)、(x0,y5,z0,ρ1)、(x5,y0,z0,ρ1)、(x5,y5,z0,ρ1)で囲まれる平面領域は地面の固さがρ1であり、それ以外の領域は地面の固さがρ2(<ρ1)であるとする。この場合、制御装置30は、当該領域内では足裏に、床反力に応じた同等のフィードバック圧力P1が発生するように制御するが、当該平面領域の外側に移動したとき、フィードバック圧力P1よりもΔPだけ小さいフィードバック圧力P2が発生するように制御する。
【0037】
また、地面情報Qは、z座標の値が徐々に変化する傾斜面、又はz座標の値がランダムに変化する凹凸面を表すことができる。このような地面情報Qが入力された場合には、制御装置30は、足裏の各位置(つま先、中央、踵等)で異なるフィードバック圧力Pが発生するように制御する。
【0038】
ホールセンサ14は、前側の感圧センサ12aの下方に配置されている。ホールセンサ14は、主に足裏触覚デバイス40の前後方向に回転するローラ14aを有し、ローラ14aが回転したときに接近する磁石14bの磁気を検知して、足(台座28)の移動量を検出する。当該移動量は、上述のアバターの動作に反映される。後側の感圧センサ12bの下方には、ローラ14a’が設けられ、足が移動し易い構成となっているが、ホールセンサ及び磁石は有していない。
【0039】
また、ホールセンサ14は、感圧センサ12aが圧力を検知しているときにのみ移動量を検知する。これにより、ローラ14a,14a’の空転時にアバターが移動してしまうことを防止することができる。
【0040】
慣性計測装置16は、台座28の最も後方側に配置されている。両足に対応した足裏触覚デバイス40の慣性計測装置16の各々は、左右の足の向きを計測する。制御装置30は、計測された左足の向きと右足の向きがなす角を二等分した方向をアバターの進行方向として設定する。
【0041】
ステッピングモータ26は、台座28とは別体となっている。ステッピングモータ26は、制御装置30からの出力信号を受信して、被験者の足裏に地面テクスチャに応じた触覚を発生させる。モータ側シリンジ24はステッピングモータ26の鉄心と結合されている
【0042】
また、足裏側シリンジ22とモータ側シリンジ24とは、チューブ25で接続されている。このため、モータ側シリンジ24及びステッピングモータ26は、足裏側シリンジ22と物理的距離を離すことができる。ステッピングモータ26が駆動(直線運動)してモータ側シリンジ24が押し出されると、チューブ25を介して足裏側シリンジ22が押し上げられ、足裏に圧力が発生する。
【0043】
詳細は後述するが、本実施形態の足裏側シリンジ22は10分割されているため、足裏に圧力を発生させる面を細分化して地面テクスチャの触覚を再現する。なお、ステッピングモータを複数用意して、1つのステッピングモータで2個の足裏側シリンジを駆動させる等の態様としてもよい。
【0044】
次に、図3図5を参照して、足裏触覚デバイス40を装着した被験者が歩行したときの圧力検出について説明する。
【0045】
まず、図3に、被験者が歩行したときの足裏の接触パターンの一例を示す。当該接触パターンは、被験者が足裏触覚デバイス40を装着したときも同様である。
【0046】
まず、(a)時刻T=tは、被験者の足が地面に着地する直前の状態である。その後、(b)時刻T=tにて踵から地面に着地し、さらに(c)時刻T=tにて足裏の踵部分が地面に接触する。
【0047】
そして、(d)時刻T=tにて足裏全体が地面に接触した状態となり、(e)時刻T=tにて踵が地面から離れる。さらに、(f)時刻T=tにてつま先のみ地面に接触した状態となり、(g)時刻T=tにて足裏全体が地面から離れる。すなわち、時刻T=t~tが被験者の片足の一歩の動作である。
【0048】
次に、図4に、足裏触覚デバイス40の足裏側シリンジ22の配列を示す。足裏側シリンジ22は、シリンジ22a~22jを2×5で配列しており、それぞれが独立して駆動する。
【0049】
ここで、シリンジ22aのフィードバック圧力は「f11」であり、シリンジ22bのフィードバック圧力は「f12」である。つま先部分にかかる圧力F1は、シリンジ22aの圧力f11とシリンジ22bの圧力f12との和で与えられる。
【0050】
また、シリンジ22cのフィードバック圧力は「f21」であり、シリンジ22dのフィードバック圧力は「f22」であるため、つま先に隣接する部分にかかる圧力F2は、シリンジ22cの圧力f21とシリンジ22dの圧力f22との和で与えられる。
【0051】
同様にして、シリンジ22iのフィードバック圧力は「f51」であり、シリンジ22jのフィードバック圧力は「f52」であるため、踵部分にかかる圧力F5は、シリンジ22iの圧力f51とシリンジ22jの圧力f52との和で与えられる。
【0052】
足裏側シリンジ22を構成するシリンジは2×5の配列に限られず、例えば、より細かい3×6の配列としてもよい。特に、可塑性体の地面の場合、土踏まずの部分も地面と接触するため、より正確に足裏の触覚を再現することができる。
【0053】
また、足裏側シリンジ22を構成するシリンジは、つま先に隣接する部分の2箇所(例えば、拇指球と小指球)、踵部分の1箇所のような最小の構成としてもよい。特に、固い地面の場合、土踏まずの部分は地面と接触しないため、この部分のシリンジを省略したり、仮想空間上のアバターが凹凸のある地面を歩行した場合にのみ作動するシリンジを設けるようにしたりしてもよい。
【0054】
次に、図5を参照して、足裏触覚デバイス40を装着した被験者が歩行したときの圧力変化のタイミングチャートを説明する。なお、図5において、横軸が時刻T[s]、縦軸が圧力P[N/m]である。
【0055】
図示するように、時刻T=t~tの期間において、踵部分の圧力F5が20[N/m]まで上昇するような触覚が発生する。踵部分は、時刻T=tで地面から完全に離れてしまうため、時刻T=t~tの期間で圧力F5が徐々に減少するように制御される。
【0056】
また、踵に隣接する部分の圧力F4は、時刻T=t~tの期間において徐々に上昇し、時刻T=t~tの期間において徐々に減少するように制御される。
【0057】
一方、つま先部分は、時刻T=tで地面に接触するため、時刻T=t~tの期間で圧力F1が徐々に増加し、時刻T=tから減少するように制御される。
【0058】
つま先に隣接する部分は、時刻T=t~tの期間において圧力F2が約14[N/m]まで上昇するような触覚が発生する。その後、圧力F2は、時刻T=t~tの期間において徐々に減少するように制御される。
【0059】
また、足裏中央の圧力F3は、時刻T=tと時刻T=tの間の時刻から上昇し、時刻T=tで最大となり、その後、徐々に減少するように制御される。
【0060】
上記結果は、地面が比較的固い場合の例であるが、足裏触覚デバイス40を用いることで、被験者の足裏に地面を歩いた時の触覚を発生させることができる。地面が柔らかい場合においても、足裏に発生させる触覚は同様の傾向になると考えられるが、圧力Pの値は小さくなる。本実施形態のステッピングモータ26は、このような圧力の調整が可能となっている。
【0061】
次に、図6A図6Bを参照して、VRシステム1で行われる各種制御のフローチャートを説明する。なお、ここでは、被験者が両足に足裏触覚デバイス40を装着していることを前提とする。
【0062】
図6Aにおいて、まず、アバターの表示を開始する(ステップS01)。これにより、被験者は、ヘッドマウントディスプレイ60によって、仮想空間上で動作するアバター(特に、アバター視点の風景)を確認することができる。
【0063】
その後、被験者が動かした足が左足か否かが判定される(ステップS02)。動かした足が左足と判定された場合にはステップS03に進み、右足と判定された場合にはステップS13(図6B参照)に進む。
【0064】
初めに、動かした足が左足と判定された場合(ステップS02で「YES」)を説明する。この場合、慣性計測装置16によって左足の向きを計測する(ステップS03)。続いて、アバターの左足の向きを決定する(ステップS04)。具体的には、アバターの左足の向きが慣性計測装置16で計測された左足の向きと一致するように制御される。
【0065】
このとき、アバターの右足の向きも同時に決定するため、アバターの進行方向が決定する(ステップS05)。進行方向は、慣性計測装置16で計測された左足の向きと右足の向きから計算により決定される。
【0066】
次に、左足の感圧センサ12がオンしているか否かが判定される(ステップS06)。これは、左足の足裏触覚デバイス40が地面と接触しているかの判定である。感圧センサ12がオンしている場合にはステップS07に進み、オンしていない場合にはステップS08に進む。
【0067】
感圧センサ12がオンしている場合(ステップS06で「YES」)、アバターの左足を着地させる(ステップS07)。一方、感圧センサ12がオンしていない場合(ステップS06で「NO」)、アバターの左足を地面から離す(ステップS08)。このとき、被験者は、ヘッドマウントディスプレイ60によって、左足の動きに対応したアバターの動作を確認することができる。
【0068】
ステップS07の後、左足のホールセンサ14がオンしているか否かが判定される(ステップS09)。左足のホールセンサ14がオンしている場合にはステップS10に進み、オンしていない場合にはステップS12に進む。
【0069】
左足のホールセンサ14がオンしている場合(ステップS09で「YES」)、アバターの右足を移動する(ステップS10)。ここでは、ステップS05(図6BのステップS05’)の進行方向の情報を利用する。歩行の動作では、片足を前に進めると逆足は相対的に後ろに下がることになるため、地面に着いた状態である左足とは逆足(右足)が進行方向に移動する。
【0070】
次に、左足用のステッピングモータ26を制御する(ステップS11)。これにより、仮想空間の地面テクスチャに応じた圧力(触覚)が生じるように、左足の足裏触覚デバイス40(足裏側シリンジ22)が動作する。その後、ステップS12に進む。
【0071】
次に、動かした足が右足と特定された場合(ステップS02で「YES」)を説明する。図6Bにおいて、慣性計測装置16によって右足の向きを計測する(ステップS13)。続いて、アバターの右足の向きを決定する(ステップS14)。ここでは、アバターの右足の向きが慣性計測装置16で計測された右足の向きと一致するように制御される。そして、アバターの進行方向が決定する(ステップS05’)。
【0072】
次に、右足の感圧センサ12がオンしているか否かが判定される(ステップS16)。これは、右足の足裏触覚デバイス40が地面と接触しているかの判定である。感圧センサ12がオンしている場合にはステップS17に進み、オンしていない場合にはステップS18に進む。
【0073】
感圧センサ12がオンしている場合(ステップS16で「YES」)、アバターの右足を着地させる(ステップS17)。一方、感圧センサ12がオンしていない場合(ステップS16で「NO」)、アバターの右足を地面から離す(ステップS18)。このとき、被験者は、ヘッドマウントディスプレイ60によって、右足の動きに対応したアバターの動作を確認することができる。
【0074】
ステップS17の後、右足のホールセンサ14がオンしているか否かが判定される(ステップS19)。右足のホールセンサ14がオンしている場合にはステップS20に進み、オンしていない場合にはステップS12(図6A)に進む。
【0075】
右足のホールセンサ14がオンしている場合(ステップS19で「YES」)、アバターの左足を移動する(ステップS20)。具体的には、地面に着いた状態である右足とは逆足(左足)が進行方向に移動する。なお、ステップS05’(図6AのステップS05)の進行方向の情報を利用する。
【0076】
次に、右足用のステッピングモータ26を制御する(ステップS21)。これにより、仮想空間の地面テクスチャに応じた圧力(触覚)が生じるように、右足の足裏触覚デバイス40(足裏側シリンジ22)が動作する。その後、ステップS12に進む。
【0077】
最後に、アバターの動作を停止する(ステップS12)。具体的には、足裏触覚デバイス40の検出信号に対応したアバターの動作が終了となるため、被験者は、ヘッドマウントディスプレイ60によって、仮想空間上の停止したアバターを確認することができる。以上のように、VRシステム1の被験者は、仮想空間の映像を見つつ地面テクスチャに応じた足裏の触覚を得ることで、あたかも仮想空間を歩行したような体験をすることができる。
【0078】
[第2実施形態]
次に、図7図8を参照して、第2実施形態に係る足裏触覚デバイス70を説明する。なお、第1実施形態の足裏触覚デバイス40と同じ構成については同じ符号を付し、一部説明を省略する。
【0079】
図7に示す足裏触覚デバイス70において、複数の足裏側シリンジ22は、足裏の複数箇所のそれぞれに当接するように台座28上に設けられている。台座28は、その下面側に感圧センサ12a,12b、ホールセンサ14,14’及び慣性計測装置16が設けられている。
【0080】
ホールセンサ14’は、後方の感圧センサ12bの下方に取り付けられており、ローラ14a’を有し、ローラ14a’の磁石14b’の接近を検知して足(台座28)の移動量を検出する。被験者の歩行は、つま先だけ地面に接地している時間と、踵だけ地面に接地している時間があるため(図3参照)、足裏触覚デバイス70の前方及び後方でそれぞれ移動量を検出した方が正確な数値が得られる。
【0081】
なお、ホールセンサ14から得られた移動量と、ホールセンサ14’から得られた移動量とは、何れか一方(最大値又は最小値)の値を採用したり、双方の平均値を採用したりして適宜調整すればよい。
【0082】
感圧センサ12a,12bは、第1実施形態と同様にそれぞれ足裏触覚デバイス70の前後方向に1つずつ配置されている。さらに、第2実施形態では、足裏側シリンジ22の各々が、足裏と接触する上面側に感圧センサ13を備えている。
【0083】
足裏側シリンジ22が10個のシリンジ22a~22jで構成されるとき(図4参照)、それぞれのシリンジ22a~22jに対して感圧センサ13a~13jが配置される。これにより、被験者の足裏の圧力を正確に検出することができる。
【0084】
ステッピングモータ26は、制御装置30からの出力信号を受信して、被験者の足裏に地面テクスチャに応じた触覚を発生させる。入力装置10の圧力信号(倍率)が変化すると、それに伴い出力装置20の圧力信号(倍率)が変化する。
【0085】
最後に、図8を参照して、足裏触覚デバイス70の入出力の相関グラフを説明する。相関グラフにおいて、横軸は感圧センサ12,13による入力倍率であり、縦軸はステッピングモータ26の出力倍率である。
【0086】
図示するように、感圧センサ12,13による入力倍率が1.0未満の場合、ステッピングモータ26の出力倍率は0であり、圧力(出力信号)は出力されない。しかし、入力倍率が1.0に到達すると出力倍率が1.0となり、入力倍率が1.5のとき出力倍率が1.5というように比例関係となる。足裏触覚デバイス70は、これを応用して所望の出力を得ることができる。
【0087】
以上、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。上記各実施形態の足裏側シリンジ22及びモータ側シリンジ24は何れもエアシリンダであったが、それぞれ上下動を制御することが可能なアクチュエータ(例えば、油圧式又は機械式のシリンダ)に置き換え可能である。
【0088】
また、ホールセンサ14の代わりに光学的に移動量を検出するセンサを用いてもよいし、ステッピングモータ26の代わりにソレノイドコイル等を用いた駆動部を採用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…VRシステム、10…入力装置、12,12a,12b,13,13a~13j…感圧センサ、14,14’…ホールセンサ、14a,14a’…ローラ、14b,14b’…磁石、16…慣性計測装置、20…出力装置、22…足裏側シリンジ、22a~22j…シリンジ、24…モータ側シリンジ、25…チューブ、26…ステッピングモータ、28…台座、29…バンド、30…制御装置、40,70…足裏触覚デバイス、50…コンピュータ、60…ヘッドマウントディスプレイ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8