(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149254
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】細胞培養容器および細胞培養方法
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20220929BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220929BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051317
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼城 誠太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠田 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃輔
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC11
4B029DG01
4B029GA08
4B029GB02
4B065AA90X
4B065BC01
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】簡易な作業工程で使用することができる細胞培養容器を提供すること。
【解決手段】内筒一端部と、内筒一端部と対向する内筒他端部と、内筒一端部と内筒他端部とを繋ぐ筒状の内筒側壁と、内筒他端部に切り欠きとして形成された内筒凹部と、を有する内筒と、内筒凹部に着脱可能に装着され、内筒凹部を塞ぐ液止めピンと、内筒一端部に配置されて、内筒一端部に形成された内筒開口部を塞ぐ培養膜部と、内筒に内筒一端部側から内筒に着脱可能に装着される外筒であって、外筒一端部と、外筒一端部と対向する外筒他端部と、外筒一端部と外筒他端部とを繋ぐ筒状の外筒側壁とを有する外筒と、を備え、培養膜部は、外筒が内筒に装着された装着状態の場合に、外筒他端部の外筒開口部を塞ぐ、細胞培養容器。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器であって、
内筒一端部と、前記内筒一端部と対向する内筒他端部と、前記内筒一端部と前記内筒他端部とを繋ぐ筒状の内筒側壁と、前記内筒他端部に切り欠きとして形成された内筒凹部と、を有する内筒と、
前記内筒凹部に着脱可能に装着され、前記内筒凹部を塞ぐ液止めピンと、
前記内筒一端部に配置されて、前記内筒一端部に形成された内筒開口部を塞ぐ培養膜部と、
前記内筒に前記内筒一端部側から前記内筒に着脱可能に装着される外筒であって、外筒一端部と、前記外筒一端部と対向する外筒他端部と、前記外筒一端部と前記外筒他端部とを繋ぐ筒状の外筒側壁とを有する外筒と、を備え、
前記培養膜部は、前記外筒が前記内筒に装着された装着状態の場合に、前記外筒他端部の外筒開口部を塞ぐ、細胞培養容器。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養容器であって、
前記外筒は、さらに、
前記装着状態の場合に、前記内筒の径方向において、前記内筒凹部と重なる位置に、前記外筒側壁の一部が切り欠きとして形成された外筒凹部を有する、細胞培養容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細胞培養容器であって、
前記外筒は、さらに、
前記外筒側壁の内周面から突出し、前記装着状態の場合に、前記培養膜部と前記内筒の中心軸に沿った方向に向かい合って当接する凸部を有する、細胞培養容器。
【請求項4】
請求項3に記載の細胞培養容器であって、
前記凸部は、前記培養膜部と当接する平滑面を有する、細胞培養容器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の細胞培養容器であって、
前記培養膜部は、さらに、
前記内筒側壁の前記内筒一端部の端面を覆って配置される円環状の支持枠と、前記支持枠に接合される細胞培養膜とを有する、細胞培養容器。
【請求項6】
複数の細胞培養容器を用いた細胞培養方法であって、
前記複数の細胞培養容器の各々は、
内筒一端部と、前記内筒一端部と対向する内筒他端部と、前記内筒一端部と前記内筒他端部とを繋ぐ筒状の内筒側壁と、前記内筒他端部に切り欠きとして形成された内筒凹部と、を有する内筒と、
前記内筒一端部に配置されて、前記内筒一端部に形成された内筒開口部を塞ぐ培養膜部と、
前記内筒に前記内筒一端部側から前記内筒に着脱可能に装着される外筒であって、外筒一端部と、前記外筒一端部と対向する外筒他端部と、前記外筒一端部と前記外筒他端部とを繋ぐ筒状の外筒側壁とを有する外筒と、を備え、
前記培養膜部は、前記外筒が前記内筒に装着された装着状態の場合に、前記外筒他端部の外筒開口部を塞ぎ、
前記細胞培養方法は、
前記複数の細胞培養容器が有する複数の前記内筒を同時に固定可能な固定治具と、
前記複数の内筒を把持し、前記複数の内筒を同時に反転可能な反転治具と、
前記複数の細胞培養容器が有する複数の前記内筒凹部に着脱可能に装着され、前記複数の内筒凹部を塞ぐ液止め治具と、を用いて共培養する細胞培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細胞培養容器および細胞培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養膜の両面に細胞を培養するための細胞培養器具がある(例えば、特許文献1)。特許文献1の細胞培養器具は、第1の内筒と、外筒と、第1の内筒の端部を覆って配置される細胞培養用膜とを備える。そして、細胞が培養される際には、ウェルに細胞培養器具が入れられ、ウェル内が培養液で満たされることで、細胞培養膜は培養液に浸漬される。また、細胞培養膜の一方の面に細胞が培養された後、ウェルから細胞培養器具が取り出され、細胞培養器具が反転された後、ウェルに細胞培養器具が入れられ、細胞培養膜の他方の面に細胞が培養される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の細胞培養器具では、培養工程において、上記のように、ウェルに細胞培養用器具を入れる作業が必要であり、さらに、細胞培養器具を反転させるために、ウェルから細胞培養器具を取り出す作業が必要であり、作業が煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、細胞培養容器が提供される。この細胞培養容器は、内筒一端部と、前記内筒一端部と対向する内筒他端部と、前記内筒一端部と前記内筒他端部とを繋ぐ筒状の内筒側壁と、前記内筒他端部に切り欠きとして形成された内筒凹部と、を有する内筒と、前記内筒凹部に着脱可能に装着され、前記内筒凹部を塞ぐ液止めピンと、前記内筒一端部に配置されて、前記内筒一端部に形成された内筒開口部を塞ぐ培養膜部と、前記内筒に前記内筒一端部側から前記内筒に着脱可能に装着される外筒であって、外筒一端部と、前記外筒一端部と対向する外筒他端部と、前記外筒一端部と前記外筒他端部とを繋ぐ筒状の外筒側壁とを有する外筒と、を備え、前記培養膜部は、前記外筒が前記内筒に装着された装着状態の場合に、前記外筒他端部の外筒開口部を塞ぐ。この形態によれば、第1細胞を培養する第1培養工程においては、培養膜部を内筒の底面とする姿勢とすることによって、内筒を、第1細胞用液体培地を貯留するための容器として使用することができる。これにより、ウェルに細胞培養容器を入れる手間や、ウェルから細胞培養容器を取り出す手間がなく、作業性を向上させることができる。また、第2細胞を培養する第2培養工程においては、培養膜部を外筒の底面とする姿勢とすることによって、外筒を、第2細胞用液体培地を貯留するための容器として使用することができる。よって、細胞培養容器を用いて共培養を行うことができる。また、第2培養工程において、第1細胞用液体培地の残留空気を内筒凹部から排出することができる。
(2)上記形態の細胞培養容器において、前記外筒は、さらに、前記装着状態の場合に、前記内筒の径方向において、前記内筒凹部と重なる位置に、前記外筒側壁の一部が切り欠きとして形成された外筒凹部を有していてもよい。この形態によれば、第2培養工程において、内筒が液体に浸漬された場合、液体に残留する空気を、液止めピンが装着されていない内筒凹部と、外筒凹部とを介して排出することができる。よって、培養を良好に行うことができる。
(3)上記形態の細胞培養容器において、前記外筒は、さらに、前記外筒側壁の内周面から突出し、前記装着状態の場合に、前記培養膜部と前記内筒の中心軸に沿った方向に向かい合って当接する凸部を有していてもよい。この形態によれば、培養膜部が配置された内筒に外筒を固定し易くすることができる。
(4)上記形態の細胞培養容器において、前記凸部は、前記培養膜部と当接する平滑面を有していてもよい。この形態によれば、第2培養工程において、外筒に入れられた液体の、凸部と培養膜部との隙間からの漏れを抑制することができる。
(5)上記形態の細胞培養容器において、前記培養膜部は、さらに、前記内筒側壁の前記内筒一端部の端面を覆って配置される円環状の支持枠と、前記支持枠に接合される細胞培養膜とを有していてもよい。この形態によれば、端面に支持枠が配置されることにより、外力を支持枠で受けることができるため、内筒凹部にかかる応力を軽減し、細胞培養膜が受ける応力を軽減することができる。よって、細胞培養膜12の破損や傷つきおよび第1細胞の損傷による品質低下を抑制することができる。
(6)本開示の一形態によれば、複数の細胞培養容器を用いた細胞培養方法が提供される。この細胞培養方法において、前記複数の細胞培養容器の各々は、内筒一端部と、前記内筒一端部と対向する内筒他端部と、前記内筒一端部と前記内筒他端部とを繋ぐ筒状の内筒側壁と、前記内筒他端部に切り欠きとして形成された内筒凹部と、を有する内筒と、前記内筒一端部に配置されて、前記内筒一端部に形成された内筒開口部を塞ぐ培養膜部と、前記内筒に前記内筒一端部側から前記内筒に着脱可能に装着される外筒であって、外筒一端部と、前記外筒一端部と対向する外筒他端部と、前記外筒一端部と前記外筒他端部とを繋ぐ筒状の外筒側壁とを有する外筒とを備え、前記培養膜部は、前記外筒が前記内筒に装着された装着状態の場合に、前記外筒他端部の外筒開口部を塞ぐ。前記細胞培養方法は、前記複数の細胞培養容器が有する複数の前記内筒を同時に固定可能な固定治具と、前記複数の内筒を把持し、前記複数の内筒を同時に反転可能な反転治具と、前記複数の細胞培養容器が有する複数の前記内筒凹部に着脱可能に装着され、前記複数の内筒凹部を塞ぐ液止め治具と、を用いて共培養する。この形態によれば、複数の細胞培養容器に対して同時に作業可能な固定治具、反転治具、および液止め治具を用いての作業であるため、個々の細胞培養容器について個別に作業を行うよりも、効率的に細胞培養を行うことができる。
【0007】
本開示は、細胞培養容器および細胞培養方法以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、細胞培養容器を用いた細胞培養方法や、固定治具、反転治具、液止め治具等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。
【
図6】第2培養工程における細胞培養容器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
A1.細胞培養容器の構成:
図1は、細胞培養容器100の分解斜視図である。
図2は、細胞培養容器100の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III断面図である。
図1から
図3では、互いに直交する、X軸と、Y軸と、Z軸とを示している。細胞培養容器100は、典型的には、Z方向が鉛直方向と沿うように配置されて使用される。以下では、+Z方向を上方向、-Z方向を下方向として説明する場合がある。細胞培養容器100は、培養膜部10と、内筒20と、外筒40と、液止めピン60とを備える。細胞培養容器100は、培養膜部10の両面に細胞を培養する共培養のために用いられる容器である。
【0010】
図1に示すように、培養膜部10は、中心軸CXを有する円板形状を有する。培養膜部10は、支持枠11と、細胞培養膜12とを有する。培養膜部10は、内筒20に接合される。支持枠11は、円環状の枠である。そして、支持枠11の端面を覆うように円形の細胞培養膜12が接合されている。支持枠11は、樹脂材料にて形成されている。樹脂材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリル、ポリエステル、ポリメチルペンテン等を挙げることができる。細胞培養膜12は、細胞培養を行う際に、細胞培養の足場となる膜である。細胞培養膜12として、膜の厚み方向に貫通する多数の細孔を有する、合成高分子製の多孔質膜や天然高分子製の多孔質膜を用いることができる。具体的には、多孔質膜として、トラックエッチング膜や、ナノファイバー膜や、コラーゲンビトリゲル膜や、多孔質ポリウレタン膜等が挙げられる。
【0011】
内筒20は、筒状である。具体的には、内筒20は、中心軸CXを有する円筒形状である。内筒20の外径は、培養膜部10の外径と、ほぼ同じである。内筒20は、樹脂材料で形成されている。樹脂材料としては、ポリエチレンや、ポリプロピレンや、ポリスチレン、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0012】
内筒20は、内筒一端部21と、内筒他端部22と、内筒側壁23と、内筒凹部24とを有する。内筒一端部21は、内筒20の中心軸CX方向における一端である。内筒他端部22は、中心軸CX方向において内筒一端部21と対向する。内筒側壁23は、内筒一端部21と内筒他端部22とを繋ぐ。内筒凹部24は、内筒一端部21の端面から中心軸CX方向に沿って、内筒一端部21に切り欠きとして形成されている。内筒20を用いて細胞の培養を行う後述する第1培養工程P20において、内筒凹部24には、液止めピン60が装着される。内筒凹部24は、中心軸CX方向に沿った2つの第1凹部面24aと、内筒側壁23の周方向に沿った第2凹部面24bとにより形成されている。すなわち、内筒凹部24は、端面21aから凹んだ形状であり、凹形状の底部となる第2凹部面24bと、第2凹部面24bから端面21aに向かって立ち上がる2つの第1凹部面24aとを備える。内筒凹部24は、内筒20の径方向内方から径方向外方に向かうに従い、開口面積が大きくなるテーパー形状を有する。本実施形態では、
図3に示すように、第2凹部面24bは、内筒20の径方向において、内筒20の内周面から外周面に向かって、内筒一端部21から遠ざかるように傾斜することでテーパー形状を有する。これにより、液止めピン60を装着し易くすることができる。
【0013】
図2に示すように、内筒一端部21に培養膜部10が配置される。そして、培養膜部10は、内筒一端部21に形成された内筒開口部25を塞ぐ。具体的には、
図3に示すように、内筒一端部21の端面21aを覆って、端面21aと支持枠11とが接するように、培養膜部10が配置される。そして、内筒一端部21の端面21aと培養膜部10とが接合される。端面21aに支持枠11が配置されることにより、培養膜部10が配置された内筒20は、外力を支持枠11で受けることができる。このため、内筒凹部24にかかる応力を軽減し、細胞培養膜12が受ける応力を軽減することができる。よって、細胞培養膜12の破損や傷つきおよび第1細胞の損傷による品質低下を抑制することができる。
【0014】
図1に示すように、液止めピン60は、径方向に沿って、内筒凹部24に着脱可能に装着され、内筒凹部24を塞ぐ。これにより、第1培養工程P20において、内筒20を側面として、培養膜部10を底面とする容器として、内筒20を使用することができる。液止めピン60は、弾性を有する材料で形成されている。弾性を有する材料としては、シリコンゴムや、フッ素ゴムや、ウレタンゴムや、スチレン系エラストマーや、オレフィン系エラストマーや、ウレタン系エラストマーや、エステル系エラストマーや、アミド系エラストマーを挙げることができる。液止めピン60は、ピン本体61と、ピン把持部62とを有する。ピン本体61の大きさは、内筒凹部24の大きさよりも大きい。そして、ピン本体61が弾性変形により縮小されて、内筒凹部24に嵌められて装着される。これにより、内筒20が容器として使用される場合、内筒凹部24からの液漏れが抑制される。
【0015】
図3に示すように、ピン把持部62は、液止めピン60が内筒20に装着された場合、内筒側壁23の外方に配置される。
図1に示すように、内筒20の径方向から視た場合、ピン把持部62の外形は、ピン本体61の外形よりも大きい。具体的には、内筒20の径方向から視た場合、ピン把持部62の幅方向両側の面(+Y方向側の面、-Y方向側の面)、およびピン把持部62の高さ方向下側の面(-Z方向側の面)のそれぞれは、ピン本体61の幅方向両側の面(+Y方向側の面、-Y方向側の面)、およびピン本体61の高さ方向下側の面(-Z方向側の面)よりも外方に位置する。これにより、ピンセットなどの器具を内筒側壁23の外周面と、ピン把持部62との間に挿入することができるため、液止めピン60を取り外し易くすることができる。なお、内筒20の径方向から視た場合、ピン把持部62の高さ方向上側の面(+Z方向側の面)は、ピン本体61の高さ方向上側の面(+Z方向側の面)と面一である。これにより、液止めピン60が装着された内筒20に外筒40が装着される場合、液止めピン60と外筒40との干渉を抑制することができる。さらに、
図1および
図3に示すように、ピン把持部62の、内筒20の中心軸CX方向に沿った端面には、周方向に凹んだピン凹部62aが形成されている。液止めピン60を取り外す際には、ピンセットなどの器具の先端をピン凹部62aに配置することで、器具にて、液止めピン60を把持し易くすることができる。よって、液止めピン60を内筒20から取り外し易くすることができる。
【0016】
図1に示すように、外筒40は、筒状である。具体的には、外筒40は、中心軸CXを有する円筒形状を有する。外筒40は、内筒20と同様の樹脂材料で形成されている。外筒40の内径は、内筒20の外径よりも大きい。外筒40は、外筒一端部41と、外筒他端部42と、外筒側壁43と、外筒凹部44と、凸部45とを有する。外筒一端部41は、外筒40の中心軸CX方向における一端である。外筒他端部42は、中心軸CX方向において外筒一端部41と対向する。外筒側壁43は、外筒一端部41と外筒他端部42とを繋ぐ。外筒凹部44は、外筒他端部42の端面から中心軸CX方向に沿って、外筒他端部42に切り欠きとして形成されている。後述する培養工程の工程P40では、培養膜部10が配置された内筒20に対して、外筒他端部42が内筒一端部21を覆うように、内筒一端部21側から外筒40が装着される。
【0017】
図2に示すように、外筒凹部44は、径方向から視たときに、内筒凹部24と重なる形状を有する。凸部45は、外筒側壁43の内周面43aから径方向に突出して形成されている。凸部45は、培養膜部10が配置された内筒20に外筒40が装着された装着状態の場合、内筒20に配置された培養膜部10と中心軸CX方向に向かい合って当接する。凸部45の中心軸CX方向から視た形状は、円環状である。凸部45は、中心軸CX方向において、外筒他端部42の端面から離れた位置に形成されている。中心軸CX方向において、凸部45と外筒他端部42の端面との間に外筒凹部44が形成されている。後述する第2培養工程P60において、培養膜部10が配置された内筒20に外筒40が装着された装着状態の場合、培養膜部10は、外筒他端部42の外筒開口部46を塞ぐ。外筒40は、外筒40の外筒側壁43を側面として、培養膜部10を底面とする容器として機能する。
図3に示すように、凸部45は、内筒20と当接する平滑面45aを有する。これにより、後に詳述するように、第2培養工程P60において、外筒40が容器として使用される場合、外筒40に入れられた液体の漏れを抑制することができる。外筒他端部42の内径は、平滑面45aとの境界部から内筒20が位置する側(-Z方向側)に向かうに従い、大きくなるように形成されている。これにより、培養膜部10および内筒20の外周面と、外筒他端部42の内周面43aとの間に隙間が形成されるため、培養膜部10が配置された内筒20に外筒40を装着し易くすることができる。
【0018】
A2.細胞培養容器を用いた細胞培養方法:
細胞培養容器100を用いた細胞培養方法について説明する。
図4は、細胞培養容器100を用いた細胞の細胞培養方法の工程を示すフローチャートである。
図5は、第1培養工程P20における内筒20の模式図である。
図6は、第2培養工程P60における細胞培養容器100の模式図である。
図5および
図6には、細胞培養容器100の使用態様における、X軸と、Y軸と、Z軸とが示されている。Z方向は、鉛直方向を示し、XY平面は、水平面を示す。+Z方向を上、-Z方向を下とも呼ぶ。
【0019】
まず
図4の工程P10にて、培養膜部10が接合され、液止めピン60が装着された内筒20が用意される。以下の説明では、特記しない限り、内筒20とは、培養膜部10が接合された内筒20を指す。
図4の第1培養工程P20にて、
図5に示ように、内筒一端部21が内筒他端部22の下方となるようにプレート500上に配置された内筒20に第1細胞懸濁液401が注入され、第1細胞402が培養される。第1細胞懸濁液401には、第1細胞402と、第1細胞402用の液体である第1培地403とが含まれている。第1細胞懸濁液401が注入されることにより、細胞培養膜12に第1細胞402が播種される。プレート500の内筒20と対向する表面は、平滑である。これにより、培養膜部10とプレート500との間に隙間が生じにくくなり、内筒20からの第1細胞懸濁液401の漏れを抑制することができる。さらに、プレート500は、細胞接着性が低い材料で形成されている。これにより、第1細胞懸濁液401が内筒20から漏れたとしても、細胞培養膜12のプレート500と対向する面での、第1細胞402の定着を抑制することができる。
【0020】
図4の工程P30にて、例えばピペットを用いて、内筒20から第1細胞懸濁液401が吸い出され、内筒一端部21が内筒他端部22の上方となるように、内筒20が反転される。工程P40にて、内筒20に外筒40が装着され、内筒20から液止めピン60が取り外される。具体的には、液止めピン60が装着された内筒20の内筒一端部21側から、外筒40の凸部45が培養膜部10に当接するまで、外筒40が内筒20に嵌め込まれる。また、中心軸CX方向から視た場合、外筒凹部44の位置が液止めピン60の位置と重なるように、外筒40が内筒20に嵌め込まれる。この際、液止めピン60のピン把持部62は、内筒側壁23の外方に位置するため、突出するピン把持部62に外筒凹部44が嵌るように、外筒40は内筒20に装着される。これにより、内筒20の径方向から視て、内筒凹部24と外筒凹部44とが重なるように、外筒40を内筒20に装着することができる。内筒20から液止めピン60が取り外されることにより、内筒20の内部と、外部とが、内筒凹部24を介して連通する。
【0021】
工程P50にて、第1細胞402用の第1培地403が入れられたウェル501に、外筒40が装着された内筒20が入れられる。これにより、細胞培養膜12の第1細胞402が定着している内筒20側の面は、第1培地403に浸漬される。第2培養工程P60にて、
図6に示すように、外筒40に第2細胞懸濁液404が入れられ、第2細胞405が培養される。具体的には、第2細胞懸濁液404が入れられることにより、第2細胞405が播種され、その後、時間の経過に伴い、細胞培養膜12に第2細胞405が培養される。第2細胞懸濁液404には、第2細胞405と、第2細胞405用の液体である第2培地とが含まれている。第2細胞懸濁液404が注入されることにより、細胞培養膜12に第2細胞405が播種される。内筒20の内部と外部とは、内筒凹部24および外筒凹部44を介して連通しているため、内筒凹部24および外筒凹部44を介して第1培地403の残留空気を内筒20の外部に排出することができる。これにより、第1細胞402の培養を良好に行うことができる。凸部45は、平滑面45aを有するため、凸部45と培養膜部10における隙間の形成は低減され、外筒40に入れられた第2細胞懸濁液404の漏れを抑制することができる。よって、第1培地403への第2細胞405の混入を抑制することができる。なお、第2細胞405の培養中、第2培地の交換が適宜行われてもよい。第2培地の交換の際には、ピペットなどの器具を用いて、外筒40から第2細胞懸濁液404が吸い出される。この際、器具の先端を凸部45上に位置させることにより、器具の先端が細胞培養膜12に当たることによる細胞培養膜12の損傷を抑制することができる。第2細胞405の培養が終了すると、本工程は終了する。
【0022】
以上、説明した第1実施形態によれば、細胞培養容器100は、内筒20と、内筒凹部24を塞ぐ液止めピン60と、内筒側壁23の内筒一端部21に配置される培養膜部10と、内筒20に内筒一端部21側から着脱可能に装着される外筒40とを備える。よって、第1培養工程P20においては、内筒20を、第1細胞用の第1培地403を貯留するための容器として使用することができるため、ウェルに細胞培養容器100を入れる手間や、ウェルから細胞培養容器100を取り出す手間がなく、作業性を向上させることができる。また、第2培養工程P60においては、外筒40を、第2細胞用の第2培地を貯留するための容器として使用することができる。よって、細胞培養容器100を用いて共培養を行うことができる。また、内筒20は内筒凹部24を備えるため、第2培養工程P60において、第1培地403の残留空気を内筒凹部24から排出することができる。
【0023】
また、外筒40は、内筒20の径方向において、内筒凹部24と重なる位置に、外筒凹部44を有している。これにより、第2培養工程P60において、内筒20が第1培地403に浸漬された場合、第1培地403に残留する空気を、排出し易くすることができる。よって、培養を良好に行うことができる。また、凸部45は、培養膜部10と当接する平滑面45aを有している。これにより、第2培養工程P60において、外筒40に入れられた第2細胞懸濁液404の、凸部45と培養膜部10との隙間からの漏れを抑制することができる。また、培養膜部10は、内筒一端部21の端面21aを覆って配置される円環状の支持枠11と、細胞培養膜12とを有している。これにより、外力を支持枠11で受けることができるため、内筒凹部24にかかる応力を軽減し、細胞培養膜12が受ける応力を軽減することができる。よって、細胞培養膜12の破損や傷つきおよび第1細胞の損傷による品質低下を抑制することができる。
【0024】
B.第2実施形態:
B1.治具の構成:
第2実施形態では、複数の細胞培養容器100を用いて、細胞培養が行われる。
図7は、内筒20と共に示す液止め治具510および固定治具520の斜視図である。
図8は、内筒20と共に示す反転治具530の斜視図である。
図9は、内筒20と共に示す反転治具530の平面図である。
図10は、
図9のX-X断面図である。第2実施形態に係る細胞培養容器100では、第1実施形態に係る液止めピン60に代えて、液止め治具510が用いられる。
図7から
図10では、互いに直交する、X軸と、Y軸と、Z軸とを示している。X方向およびY方向は、固定治具520における内筒20の配列方向である。Z方向は、内筒20の中心軸CX方向である。細胞培養容器100は、典型的には、Z方向が鉛直方向と沿うように配置されて使用される。以下では、+Z方向を上方向、-Z方向を下方向として説明する場合がある。培養膜部10、内筒20、および外筒40の構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0025】
本実施形態では、合計24個の細胞培養容器100が、
図7に示すような4行、6列のマトリクス状に配列されて細胞培養が行われる場合を例示して説明する。なお、同時に細胞培養される細胞培養容器100の数は、24に限られない。
【0026】
固定治具520は、載置された複数の内筒20を固定し、第1細胞402を培養するための治具である。固定治具520は、複数の細胞培養容器100が有する複数の内筒20を同時に固定可能である。固定治具520は、樹脂材料または金属材料で形成されている。樹脂材料としては、ポリプロピレンや、ポリスチレンや、アクリル樹脂、等があげられる。金属材料としては、ステンレスや、チタンを挙げることができる。さらに、固定治具520は、医療機材に使用される金属であることが好ましい。医療機材に使用される金属として、チタンや、Ti-6Al-4V合金や、ステンレス鋼や、Co-Cr合金などを挙げることができる。固定治具520は、底面部521と、24つの固定凸部522とを有する。本実施形態では、底面部521は、矩形のプレートと、矩形のプレートの4つの辺から上方向に立設された4つの側面とを有する箱形状を有している。後述するように、第1細胞402の培養の際には、固定治具520の上方に図示しない蓋が被せられることにより、培養中のコンタミネーションを抑制することができる。底面部521のプレートは、第1実施形態に係るプレート500と同様に、表面は平滑であり、表面の細胞接着性は低い。細胞接着性を低くする方法としては、例えば、ポリスチレンのような細胞接着性の低い材料を用いてプレートを形成する方法や、プレートを形成する樹脂の表面にポリエチレングリコールや、アガロースゲル、等の細胞接着性の低い材料をコーティングする方法などが挙げられる。固定凸部522は、円環の周方向の一部を欠くC字状の形状を有する。固定凸部522は、Y方向に沿って、等間隔で配置されている。同様に、固定凸部522は、X方向に沿って、等間隔で配置されている。固定凸部522の内径は、内筒20の外径よりも大きい。また、固定凸部522の開口部分は、液止め治具510の後述するピン本体511よりも大きい。これにより、固定凸部522の開口部分にピン本体511を配置して、液止め治具510が装着された複数の内筒20を固定治具520に載置することができる。または、固定凸部522の開口部分に内筒凹部24を配置して載置された内筒20に、液止め治具510装着することができる。
【0027】
液止め治具510は、複数の細胞培養容器100が有する複数の内筒凹部24に着脱可能に装着され、複数の内筒凹部24を塞ぐ。液止め治具510は、6つのピン本体511と、連結板部512とを有する。ピン本体511は、第1実施形態に係るピン本体61と同様の形状を有する。すなわち、ピン本体511の大きさは、内筒凹部24の大きさよりも大きく、ピン本体511が弾性変形にて縮小されて内筒凹部24に嵌められて装着される。6つのピン本体511は、装着される6つの内筒20の内筒凹部24の各々に対応して設けられている。具体的には、6つのピン本体511の間隔は、固定凸部522の配置される間隔と同じである。連結板部512は、内筒20の配列方向であるY方向に長い平板形状を有し、内筒20と対向する+X方向側の面にて、6つのピン本体511を連結する。
【0028】
図8に示す反転治具530は、弾性のある樹脂材料または金属材料で形成されている。樹脂材料としては、ポリエーテルケトンや、ポリプロピレンや、ポリスチレンや、アクリル樹脂、等が挙げられる。金属材料としては、ステンレスや、チタンなどを挙げることができる。金属材料は、医療機材に使用される金属であることが好ましい。医療機材に使用される金属として、チタンや、Ti-6Al-4V合金や、ステンレス鋼や、Co-Cr合金などを挙げることができる。複数の細胞培養容器100が有する複数の内筒20を把持し、複数の内筒20を同時に反転することができる治具である。反転治具530は、第1平板531と、第2平板532と、複数の第1半円部533と、複数の第2半円部534と、第1底面部535と、第2底面部536と、係止部537とを有する。第1平板531は、内筒20の配列方向であるY方向に長い平板である。第1平板531は、幅方向が内筒20の中心軸CX方向に沿うように、厚さ方向が内筒20の径方向に沿うように配置されている。第1平板531の+Y方向における端部に第1平板凹部531aが形成されている。第1平板凹部531aは、第1平板531の+Z方向側の端面にZ方向に沿って凹んで形成されている。第2平板532は、第1平板531と同様のY方向に長い平板である。第2平板532は、幅方向が内筒20の中心軸CX方向に沿うように、厚さ方向が内筒20の径方向に沿うように配置されている。第2平板532は、第1半円部533および第2半円部534を挟んで、内筒20の径方向であるX方向において、第1平板531と対向する。
図9に示すように、第1半円部533および第2半円部534は、内筒20の外周を囲む円筒形状を、内筒20の直径方向に沿って切断して形成される半円環形状を有する。複数の第1半円部533の第1平板531と接する-X方向側の端部は、第1平板531に接合されている。複数の第2半円部534の第2平板532と接する+X方向側の端部は、第2平板532に接合されている。
【0029】
第1底面部535および第2底面部536は、平板形状を有し、第1平板531と第2平板532とを連結する。第1底面部535は、第1平板531および第2平板532の-Y方向端部に配置されている。第2底面部536は、第1平板531および第2平板532の+Y方向端部に配置されている。第1平板531は、第1底面部535および第2底面部536と固定されている。対して第2平板532は、第1底面部535および第2底面部536に対して、Y方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、
図10に示すように、第1底面部535の第2平板532が配置される面には、第2平板532の幅方向に沿って凹んだ第1底面溝535aが形成されている。そして、第2平板532の幅方向である-Z方向における端部は、第1底面溝535aと嵌る凸形状に形成されている。
図9に示すように、第1底面溝535aは、第2平板532の長辺方向であるY方向に沿って形成されている。第2底面部536の第2平板532が配置される面にも、第1底面溝535aと同様の第2底面溝536aが形成されている。これにより、第2平板532は、第1底面溝535aおよび第2底面溝536aに案内されて、第1底面部535および第2底面部536に対して、Y方向に移動することができる。ここで、
図9に示すように、第1半円部533および第2半円部534の各々が、内筒20と接するように配置された状態における、第1平板531に対する第2平板532の位置を固定位置と称する。対して、
図8の実線にて示すように、第2半円部534が、内筒20と離隔するように配置された状態における、第1平板531に対する第2平板532の位置を離隔位置と称する。
【0030】
図9に示すように、係止部537は、第2平板532の+Y方向における端部に取り付けられている。係止部537は、移動可能な第2平板532を、第1平板531に対して固定するために用いられる。係止部537は、係止平板537aと、係止凸部537bとを有する。係止平板537aは、X方向に長い矩形平板である。係止平板537aの+X方向側の端部は、第2平板532の+Z方向における端部に軸支されている。これにより、係止部537は、係止平板537aの+X方向における端部を軸に回動可能である。係止凸部537bは、係止平板537aの第1平板531に近い側の端部に、長辺方向に沿って突設されている。係止凸部537bは、第1平板凹部531aと嵌る形状を有している。
【0031】
複数の内筒20を反転する場合、まず、
図8の実線にて示すように、配置した場合、第2半円部534が内筒20と離隔するように第2平板532が離隔位置に調整される。次に、第1半円部533と第2半円部534とが内筒20を挟んで対向するように、反転治具530が複数の内筒20に対して配置される。この際、Z方向において、液止め治具510と内筒20の内筒他端部22との間の部分に第1半円部533および第2半円部534が位置するように反転治具530は配置される。次に、
図8の破線にて示すように、第1半円部533および第2半円部534が、内筒20と接する固定位置となるように、第2平板532は第1平板531に対して移動される。これにより、
図9に示すように、内筒20は、第1半円部533と第2半円部534とに挟まれて、把持される。次に、係止部537の係止凸部537bが第1平板531の第1平板凹部531aに嵌められる。これにより、第2平板532の第1平板531に対する移動が制限される。次に、複数の内筒20を把持している反転治具530の+Z方向端部が-Z方向端部となるように、反転治具530が上下に反転される。これにより、複数の内筒20は、同時に、上下に反転される。
【0032】
B2.複数の細胞培養容器を用いた細胞培養方法:
第2実施形態では、第1実施形態と同様の工程により、細胞培養が行われる。よって、
図4を用いて、本実施形態に係る複数の細胞培養容器100を用いた細胞培養方法について説明し、各工程の詳細な説明は適宜省略する。
【0033】
図4の工程P10にて、液止めピン60に代えて、液止め治具510が装着された複数の内筒20が用意される。複数の内筒20は、
図7に示す固定治具520の固定凸部522に配置され、固定される。複数の内筒20が固定治具520に配置されることで、複数の内筒20を予め定められた間隔で固定することができる。これにより、予め定められた間隔でピン本体511が配置された液止め治具510を用いて、複数の内筒20の内筒凹部24を同時に塞ぐことができる。
【0034】
図4の第1培養工程P20にて、第1実施形態と同様に、内筒20に第1細胞懸濁液401が注入され、第1細胞402が培養される。第1細胞懸濁液401が注入された後、固定治具520の上方は、図示しない蓋で覆われる。これにより、培養中のコンタミネーションが抑制される。
【0035】
図4の工程P30にて、内筒20から第1細胞懸濁液401が吸い出され、内筒20が反転される。反転の際には、
図8に示す反転治具530が用いられる。反転治具530を用いることにより、個々の内筒20を個別に反転するよりも効率的に、反転作業を行うことができる。
【0036】
図4の工程P40にて、内筒20に外筒40が装着され、内筒20から液止め治具510が取り外される。工程P30にて、内筒20が反転された後、複数の内筒20に、対応する複数の外筒40が装着される。これにより、内筒20と外筒40とは一体化される。具体的には、複数の内筒20は、反転治具530に把持された状態で、図示しない治具により把持された複数の外筒40が装着される。外筒40が装着された後、反転治具530の第2平板532が離隔位置に移動されて、内筒20から反転治具530が取り外される。内筒20から反転治具530が取り外された後、複数の内筒20から液止め治具510が取り外される。
【0037】
図4の工程P50にて、第1細胞402用の第1培地403が入れられたウェル501(
図6)に、外筒40が装着された内筒20が入れられる。工程P40にて一体化された外筒40と内筒20とは、外筒40が治具に把持されることにより、治具に把持されている状態で、ウェル501に入れられる。第2実施形態では、固定治具520における固定凸部522の配置態様と同様の配置態様で、複数のウェル501がプレートに配置された図示しないウェルプレートが用いられる。つまり、ウェルプレートには、固定治具520における固定凸部522の間隔と同じ間隔でウェル501が配置されている。このため、複数の一体化された外筒40と内筒20とを治具を用いて把持した状態で、同時にウェル501に入れることができる。これにより、一体化された外筒40と内筒20とをウェル501に入れる作業を個別に行うよりも効率的に、ウェル501に入れることができる。複数の外筒40を把持する治具は、外筒40の外筒一端部41を把持することにより、複数の外筒40を把持可能な治具である。なお、複数の外筒40を把持する治具として、反転治具530と同様の治具が用いられてもよい。
【0038】
図4の第2培養工程P60にて、外筒40に第2細胞懸濁液404が入れられ、第2細胞405が培養される。第2細胞405の培養が終了すると、本工程は終了する。
【0039】
以上、説明した第2実施形態によれば、複数の内筒20を同時に固定可能な固定治具520と、複数の内筒20を同時に反転可能な反転治具530と、複数の前記内筒凹部24に着脱可能に装着される液止め治具510とを用いて、共培養が行われる。よって、個々の細胞培養容器100について、個別に作業を行うよりも、効率的に細胞培養を行うことができる。また、作業プロセスの簡略化と作業時間を短縮することにより、培養工程におけるコンタミネーションを抑制することができる。
【0040】
C.他の実施形態:
(C1)上記第1実施形態では、第1培養工程P20にて、内筒20は、プレート500に配置され、第2培養工程P60では、細胞培養容器100はウェル501に入れられる。これに対して、第1培養工程P20にて、内筒20をウェル501に入れてもよい。外筒40は、第2細胞懸濁液404を入れる容器として機能し、ウェル501に第2細胞懸濁液404が入れられることはないため、ウェル501に入れられる液体は、第1細胞懸濁液401と第1培地403とのいずれかである。よって、同じウェル501を用いて、第1培養工程P20および第2培養工程P60を行うことも可能である。
【0041】
(C2)上記実施形態では、内筒凹部24は、内筒一端部21の端面21aから中心軸CX方向に沿って、内筒一端部21に切り欠きとして形成されている。これに対して、内筒凹部24は、内筒一端部21の端面21aから内筒他端部22の端面まで中心軸CX方向において貫通するスリットとして形成されてもよい。
【0042】
(C3)上記第2実施形態に係る反転治具530の第1半円部533および第2半円部534は、半円環形状を有する。第1半円部533および第2半円部534の形状は、半円環形状に限られず、例えば、半円環形状の一部分のみの形状としてもよい。第1半円部533と、第2半円部534とが、内筒20を挟むことが可能な形状であれば、内筒20を把持することができる。
【0043】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
10…培養膜部、11…支持枠、12…細胞培養膜、20…内筒、21…内筒一端部、21a…端面、22…内筒他端部、23…内筒側壁、24…内筒凹部、24a…第1凹部面、24b…第2凹部面、25…内筒開口部、40…外筒、41…外筒一端部、42…外筒他端部、43…外筒側壁、44…外筒凹部、45…凸部、45a…平滑面、46…外筒開口部、60…液止めピン、61,511…ピン本体、62…ピン把持部、62a…ピン凹部、100…細胞培養容器、401…第1細胞懸濁液、402…第1細胞、403…第1培地、404…第2細胞懸濁液、405…第2細胞、500…プレート、501…ウェル、510…液止め治具、512…連結板部、520…固定治具、521…底面部、522…固定凸部、530…反転治具、531…第1平板、531a…第1平板凹部、532…第2平板、533…第1半円部、534…第2半円部、535…第1底面部、535a…第1底面溝、536…第2底面部、536a…第2底面溝、537b…係止凸部、537a…係止平板、537…係止部、CX…中心軸、P10,P30,P40,P50…工程、P20…第1培養工程、P60…第2培養工程