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▶ 株式会社大岡製作所の特許一覧

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  • 特開-タップ 図1
  • 特開-タップ 図2
  • 特開-タップ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014926
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】タップ
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/06 20060101AFI20220114BHJP
【FI】
B23G5/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117432
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】591204252
【氏名又は名称】株式会社大岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝徳
(57)【要約】
【課題】タップによってオーバサイズのねじ穴を加工するときに、追加工なしで、オーバサイズのねじ穴における山部の先端の内径を規定の寸法に収めることができるようにする。
【解決手段】既設のねじ穴をオーバサイズのねじ穴に加工するためのタップ11である。このタップ11は、オーバサイズのねじ2の谷部3を加工するための谷部用の加工部12と、既設のねじ5の山部4aをオーバサイズのねじ2の山部4の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部13とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設のねじ穴をオーバサイズのねじ穴に加工するためのタップであって、オーバサイズのねじの谷部を加工するための谷部用の加工部と、既設のねじの山部をオーバサイズのねじの山部の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部とを備えることを特徴とするタップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタップに関し、特に既設のねじ穴をオーバサイズのねじ穴に加工するためのタップに関する。
【背景技術】
【0002】
既設のねじ穴をオーバサイズのねじ穴に加工するためのタップが知られている(特許文献1)。この種のタップは、既存のねじ穴に沿ってタップの歯部を切り込ませることで、既存のねじ穴をオーバサイズに拡径加工するものである。
【0003】
一般的なタップにおいては、歯部におけるスパイラル状の切れ刃どうしの間に形成される谷部は、工作物と干渉しないように工作物から逃げる形状とされている。このため、タップ加工するためにあらかじめ形成される下穴の内周面が、加工されたねじ穴の山部の先端の内周面となる。
【0004】
このような構成はオーバサイズのねじ穴を加工するためのタップについても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-274420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、オーバサイズのねじ穴を加工するためのタップによって加工されただけのままでは、このオーバサイズのねじ穴の山部の先端の内周は、加工前の元のねじ穴の山部の先端の内周と同じものとして残る。このため、ねじ穴の山部の先端が規定の形状よりも尖った形となり、問題である。そこで、この点を解消するために、オーバサイズのねじ穴について、タップによる加工後に、エンドミルやドリルやリーマなどで追加工を行うことで、オーバサイズのねじ穴における山部の先端の内径が規定の寸法となるようにしている。しかし、このような追加工を行うことは手間である。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点を解決して、タップによってオーバサイズのねじ穴を加工するときに、追加工なしで、オーバサイズのねじ穴における山部の先端の内径を規定の寸法に収めることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の、既設のねじ穴をオーバサイズのねじ穴に加工するためのタップは、オーバサイズのねじの谷部を加工するための谷部用の加工部と、既設のねじの山部をオーバサイズのねじの山部の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタップによれば、オーバサイズのねじの谷部を加工するための谷部用の加工部と、既設のねじの山部をオーバサイズのねじの山部の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部とを備えているため、一度のタップ加工だけで、オーバサイズのねじ穴の谷部を規定の寸法および形状で形成することができるとともに、オーバサイズのねじ穴の山部も規定の寸法および形状で同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態のタップによる加工例を示す断面図である。
図2】元のねじ穴の加工例を示す断面図である。
図3】従来のオーバサイズ用のタップによる加工例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、1は工作物、11は本発明の実施の形態のオーバサイズ用のタップである。工作物1において、2は加工済状態のオーバサイズのねじ、3はねじ2の谷部、4はねじ2の山部である。また5は加工済状態の元の標準サイズのねじ、3aはねじ5の谷部、4aはねじ5の山部である。
【0012】
タップ11において、12はオーバサイズのねじ2の谷部3を加工するための谷部用の加工部であり、13は、既設のねじ5の山部4aをオーバサイズのねじ2の山部4の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部である。通常のタップと同様に、谷部用の加工部12にすなわちタップ11の山部は、スパイラル状に形成されている。そして山部用の加工部13は、タップ11の縦断面において隣り合う山部どうしの間すなわち隣り合う谷部用の加工部12、12どうしの間に形成されている。
【0013】
このようなタップ11を用いて元の標準サイズのねじ5に追加工を施すことで、オーバサイズのねじ2を形成する際には、元の標準サイズのねじ5にタップを入り込ませる。すると、図示のようにオーバサイズのねじ2を切削加工により形成することができる。その詳細を以下より説明する。
【0014】
図2は、標準サイズ用のタップ15を用いて、元の標準サイズのねじ5を加工する様子を示す。16はタップの山部、17はタップの谷部である。工作物1にはあらかじめ下穴6が形成されており、この下穴6を案内としとてタップ15を回転させることで、ねじ5が加工される。このとき、タップ15の谷部17は、下穴6の内周壁部6aと干渉しないように、下穴6の内周面6bから逃げることができる位置、すなわち内周面6bよりも小径となる位置に設けられている。これにより、ねじ5の山部4aの内周先端面6cは、下穴6の内周面6bによって形成されることになる。
【0015】
図3は、従来のオーバサイズ用のタップ21を用いてオーバサイズのねじ2を加工する様子を示す。22はタップの山部、23はタップの谷部である。谷部23は、標準サイズ用のタップ15の場合と同様に、ねじ5の山部4aの内周先端部と干渉しないように、山部4aの内周先端面6cから逃げることができる位置に設けられている。
【0016】
このため、従来のオーバサイズ用のタップ21を用いてオーバサイズのねじ2を加工した場合には、形成されたねじ2の山部4bの内周面は、元の標準サイズのねじ5の山部4aの内周面すなわち下穴6の内周面6bのままとなる。その結果、形成されたオーバサイズのねじ2の山部4bが図示のように内周端で尖ってしまい、正規のねじ形状を呈しない。
【0017】
そこで、従来においては、エンドミルやドリルやリーマなどで追加工を行い、オーバサイズのねじ2の山部4bの内周端の部分7を切削により除去することで、オーバサイズのねじ2の山部4の先端面8すなわちその内周面が正規の位置となって山部4が正規のねじ形状となるようにしている。
【0018】
このため、従来の技術では、タップ21によってオーバサイズのねじ2を加工した後に、追加工によってねじ穴の内面加工を行うことが必要であり、したがって、その分の工数が掛かる。
【0019】
これに対し、図1に示した本発明のオーバサイズ用のタップ11によれば、オーバサイズのねじ2の谷部3を加工するための谷部用の加工部12と、既設の標準サイズのねじ5の山部4aをオーバサイズのねじ2の山部4についての規定の内径の寸法になるように加工するための山部用の加工部13とを備えているため、一度のタップ加工だけで、オーバサイズのねじ2の谷部3を規定の寸法および形状で形成することができるとともに、オーバサイズのねじ2の山部4も規定の寸法および形状で同時に形成することができる。したがって、本発明のタップによれば、従来に比べて少ない工数で、オーバサイズのねじ穴を規定の寸法および形状で形成することができる。
【符号の説明】
【0020】
2 オーバサイズのねじ
3 ねじの谷部
4 ねじの山部
11 オーバサイズ用のタップ
12 谷部用の加工部
13 山部用の加工部
図1
図2
図3