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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149262
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】圃場水位管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 13/02 20060101AFI20220929BHJP
   A01G 25/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E02B13/02 G
A01G25/00 501D
A01G25/00 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051325
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】横田 生吹樹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
(72)【発明者】
【氏名】平井 一禎
(57)【要約】
【課題】開水路圃場において、開水路(側溝)の給水口(貫通孔)の開閉をゴミ・草等で阻害されるのを防止可能な圃場水位管理システムを提供する。
【解決手段】本発明の圃場水位管理システム100は、側溝から圃場への開口部8Hに位置する仕切り板20と、前記仕切り板20に設けられた圃場側と側溝側をつなぐ貫通穴70と、前記貫通穴70の開口面積よりも大きな面積を有する板状部材30と、前記板状部材30を上下にスライドさせるスライド機構60と、を有する止水機構10と、前記板状部材30を覆うように取付けられ、少なくとも左右一方に開口部8Hが設けられた保護部材1と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝から圃場への開口部に位置する仕切り板と、前記仕切り板に設けられた圃場側と側溝側をつなぐ貫通穴と、前記貫通穴の開口面積よりも大きな面積を有する板状部材と、前記板状部材を上下にスライドさせるスライド機構と、を有する止水機構と、
前記板状部材を覆うように取付けられ、少なくとも左右一方に開口部が設けられた保護部材と、を備える圃場水位管理システム。
【請求項2】
前記保護部材は、前記保護部材の上端が、前記貫通穴の上端と前記側溝の上端の間となるように形成されている、請求項1記載の圃場水位管理システム。
【請求項3】
前記保護部材は、前記側溝を流れる水の流れ方向に応じて、前記開口部を変更可能である、請求項1又は2記載の圃場水位管理システム。
【請求項4】
前記保護部材は、前記保護部材の下端に取付けられるシート状部材を有する、請求項1から3のいずれか1項記載の圃場水位管理システム。
【請求項5】
前記シート状部材は、前記側溝の底面に接するように設けられている、請求項4記載の圃場水位管理システム。
【請求項6】
前記スライド機構を駆動する駆動部をさらに備える、請求項1から5のいずれか1項記載の圃場水位管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場水位管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水田等の圃場には、稲等の作物に用水を供給するための給水装置が設置されている。例えば、用水は、用水路から分岐させた各圃場の側溝へと導かれ、時期等に応じて、側溝から圃場へと連通させた貫通孔に設けられた給水栓等の操作による圃場内への引水(流入)量調整がなされ、作業者は、圃場における必要水位を維持している。また、昨今では、引水(流入)量調整を自動化したシステムも考案されている。
ここで、側溝に導かれた用水の流量が多いとき等には、給水栓等の止水性能が問題となる場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている自動給水栓では、上記給水栓等の止水性能を安定させるための給水栓として、シール材とシール材に対して上流側から押圧可能に設けられた弁体とを有する給水栓と、給水栓駆動機構と、太陽電池と、バッテリーと、を備えた自動給水栓を開示している。
上記自動給水栓における、給水栓駆動機構には、回転駆動により弁体に対して近接離間する方向に進退移動する角柱部が設けられ、止水時には水圧により弁体がシール材に上流側から押圧され、通水時にはスピンドルを上流側へ移動させることによりスピンドルの上流側先端が弁体に対して下流側から押圧して弁体がシール材から離間していることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-158503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の自動給水栓では、引水(流入)時に、各圃場の側溝の水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等が、圃場に向けて流入することを防止できなかった。そのため、自動給水栓内部に残存したゴミ等が、自動給水栓の止水の妨げとなり、確実な引水(流入)量調整が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、開水路圃場において、開水路(側溝)の給水口(貫通孔)の開閉をゴミ・草等で阻害されるのを防止可能な圃場水位管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、側溝から圃場への開口部に位置する仕切り板と、前記仕切り板に設けられた圃場側と側溝側をつなぐ貫通穴と、前記貫通穴の開口面積よりも大きな面積を有する板状部材と、前記板状部材を上下にスライドさせるスライド機構と、を有する止水機構と、前記板状部材を覆うように取付けられ、少なくとも左右一方に開口部が設けられた保護部材と、を備える。
【0008】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、少なくとも左右一方、側溝を流れる水の流れ方向の下流側に開口部が設けられた保護部材により、止水機構が有する板状部材が覆われる。これにより、側溝の上流側から流れる水は、一旦、側溝の、圃場水位管理システムが備える止水機構における貫通孔の正面の領域を、下流側へと通過するとともに、水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等も同様に下流側へと通過する。ここで、保護部材には、下流側に開口部が設けられているため、水のみが、流体であることに起因して、貫通孔、即ち、圃場に向けても流入することとなる。従って、側溝の水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等が、圃場に向けて流入するのを防止しつつ、圃場へ給水することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、前記保護部材の上端が、前記貫通穴の上端と前記側溝の上端の間となるように形成されていてもよい。
【0010】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、保護部材の上端を、側溝側水位よりも高い位置に設定することができる。したがって、水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等が、圃場に向けて流入するのを、より効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、前記側溝を流れる水の流れ方向に応じて、前記保護部材の前記開口部の位置を変更可能であってもよい。
【0012】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、施工状況、すなわち、側溝の形状、側溝を流れる水の流れ方向に応じて、保護部材に設けられた開口部の位置を変更できるため、施工性、汎用性等を向上させることができる。
【0013】
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、前記保護部材の下端に取付けられるシート状部材を有していてもよい。
【0014】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、シート状部材によって、保護部材の下端を覆うことにより、側溝の底面付近のゴミ等が、圃場に向けて流入することを、防止することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、前記シート状部材が、前記側溝の底面に接するように設けられていてもよい。
【0016】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、シート状部材によって、保護部材の下端を覆うとともに、シート状部材と、側溝の底面が物理的に接していることにより、側溝の底面付近のゴミ等が、圃場に向けて流入することを、より効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る圃場水位管理システムは、前記スライド機構を駆動する駆動部をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記態様に係る圃場水位管理システムによれば、スライド機構を手動、すなわち人力にて操作することが不要となり、圃場水位管理の作業効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圃場水位管理システムによれば、開水路圃場において、開水路(側溝)の給水口(貫通孔)の開閉をゴミ・草等で阻害されるのを防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る保護部材の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る保護部材とカバーの正面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る保護部材の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システムにおける保護部材取付け前の状態を示した正面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システムの正面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システムにおける保護部材取付け前の状態を示した正面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システムの正面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システムの自動制御例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(方向定義)
以下、実施形態の説明において、方向を示すとき、上下方向をD1方向、左右方向をD2方向、奥行き方向をD3方向と称すことがある。
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システム100を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る保護部材1の斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る保護部材1Aとカバー1Bの正面図である。図3は、本発明の一実施形態に係る保護部材1の側面図である。図4及び図6は、本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システム100における保護部材1取付け前の状態を示した正面図である。図5及び図7は、本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システム100の正面図である。図8は、本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システム100の自動制御例を示した概略図である。
【0023】
図4に示すように、圃場水位管理システム100における保護部材1取付け前の状態において、圃場水位管理システム100は、筐体120と、止水機構10と、から少なくとも構成されている。
筐体120は、制御部130と、回転付与部110と、支持台113と、軸体111と、連結部材112と、脚部122に支持された支持部121と、挿通部114と、を有する。
止水機構10は、スライド機構60を備える。スライド機構60は、スピンドル80と、螺着部116と、保持部40と、結合機構82と、連係部81と、側壁40aと、保持壁50と、仕切り板20と、板状部材30と、貫通穴70と、を有する。
また、例えば、圃場水位管理システム100は、不図示の圃場に接続された水路の給水管200に設けられる。水路としては、用水路等から分岐し、圃場に水を流入可能なように接続された側溝(開水路)等が挙げられる。
【0024】
(スライド機構)
止水機構10が備える仕切り板20は、側溝から圃場への開口部に位置する。仕切り板20には、圃場側と側溝側をつなぐ貫通穴70が形成されている。仕切り板20は、D1方向に延びるような板状であるとともに、開口部において、少なくとも貫通穴70を介することによって、側溝から圃場への水の流入が可能な形状及び配置とされる。
【0025】
仕切り板20には、D1方向に延びる2つの側壁40aからなる保持部40が設けられている。保持部40は、D3方向から見たときに、仕切り板20の左右両方に、貫通穴70に重ならないように設けられる。保持部40は、貫通穴70のD3方向から見たときの面積より平面面積が大きく、貫通穴70を閉塞可能なように形成された板状部材30を、D1方向に摺動移動可能に保持する。板状部材30は、D1方向における下限位置(閉位置)にあるときにおいて、貫通穴70を実質的に密閉する。また、仕切り板20には、左右方向の両側であって、貫通穴70よりも左右方向において外側にそれぞれ任意の位置に、少なくとも2つずつ仕切り板側ねじ穴21(ねじ穴)が形成されている。仕切り板側ねじ穴21により、後述する保護部材1が取付け可能となる。仕切り板側ねじ穴21は、保持部40に設けられていてもよい。
【0026】
止水機構10が備えるスライド機構60は、次のようにして、板状部材30をD1方向にスライド移動させる。板状部材30は、対となる側壁40aのそれぞれの保持部40に保持されている。板状部材30に取付けられた結合機構82と、外周面にねじ切りされているとともにD1方向に延びるスピンドル80に形成された連係部81によって、スピンドル80と板状部材30が、D1方向に延びるスピンドル80の回転軸周りに相対回動可能なように結合される。スピンドル80は、螺着部116における貫通孔115を貫通する。貫通孔115の内周面に形成されたねじが、スピンドル80の外周面に形成されたねじに対応する。スピンドル80の回転軸周りの回転に伴い、スピンドル80がD1方向に昇降し、板状部材30はD1方向にスライド移動する。このとき、板状部材20が保持部40(ガイドレール)によって保持されることで、板状部材20がD3方向に移動(前記回転軸回りに回転)することがない。ここで、上記説明においては、D1方向を基準とした一例を挙げたが、D1方向に限るという趣旨ではなく、D2方向やD3方向にスライド移動してもよい。
【0027】
上記説明では、保持部40が、D1方向に延びる2つの側壁40aである例を挙げたが、これには限られない。図6に示すように、具体的には、2つの側壁40aの上端を、貫通穴70よりも高い位置で、かつ、止水機構10の上端よりも低い位置の範囲において、任意の位置となる長さに設定できる。この場合、側壁40aとは称さず、保持壁50と称すべきことも考えられるが、ここでは、側壁40aと称する。さらに、2つの側壁40aの上端と下端にそれぞれ、押さえ部材41をボルト等の締結により設けてもよい。押さえ部材41は、板状部材30のD3方向への移動をより確実に規制する。
【0028】
さらに、止水機構10は、保持部40に加え、板状部材30と仕切り板20のD3方向の離間距離を調整するスペーサ90を備えていてもよい。スペーサ90は、D2方向における、板状部材30の両端に対応する仕切り板20の側溝側の表面に、D1方向に延在するように設けられる。スペーサ90は、板状部材30のスライド移動を円滑にする。
【0029】
(筐体)
筐体120は、支持部121上に配置される。支持部121は、筐体120の土台である。支持部121は、仕切り板20上に配置される。支持部121から下方に向けて脚部122が延びている。脚部122は、仕切り板20の前面に固定されている。
筐体120には、制御部130と、回転付与部110と、支持台113と、軸体111と、連結部材112と、が収容されている。回転付与部110は、モータ等からなる駆動部である。モータとしては、直流、交流、各種モータを、圃場水位管理システム100の寸法等による要求出力を考慮し、適宜選択してよい。モータにより、軸体111を回転させ、スピンドル80に連結された板状部材30を、手動によらず、スライド移動させることができる。回転付与部110は、軸体111を備える。回転付与部110は、軸体111を回転させる。回転付与部110は、支持台113上に配置される。軸体111は、支持台113から下方に突出する。連結部材112は、軸体111とスピンドル80とを連結する。連結部材112は、軸体111の回転をスピンドル80に伝達する。連結部材112は、支持台113から下方に延びて支持台113を支持する。
【0030】
制御部130は、受信部、送信部、出力部、処理部をさらに備えている。さらに、圃場水位管理システム100は、図示しない、検知部を備えている。また、制御部130、駆動部及び検知部は、有線の電源により動作してもよいし、太陽光パネル等の自家発電等の手段によってもよい。
なお、回転付与部110は、駆動部を有していなくてもよい。この場合は、手動によって、回転付与部110を回転させる。
【0031】
受信部は、作業者等による、遠隔信号を受け取る。遠隔信号は、主に、板状部材30のスライド移動により、板状部材30を開位置とするか、または、閉位置とするか等を伝達及び指令する。処理部は伝達及び指令を処理し、出力部を介して、伝達及び指令された動作を駆動部に行わせるための電流を供給する。検知部により、伝達及び指令された動作が完了したことが検知されると、処理部を介して、送信部から、作業者等に、伝達及び指令された動作が完了した旨が通知される。
【0032】
検知部は、側溝及び圃場の水位のみならず、板状部材30の位置、水温、気温等、適宜、変更または追加してもよい。検知部によって得られた情報を、処理部、送信部を介して、定期的に作業者等に通知するように設定してもよい。このようにすることで、管理する圃場が広大であっても、例えば、画面上で一括管理ができる。
さらに、上記情報に基づく、伝達及び指令の内容を予め設定しておくことで、画面上での一括管理も効率化が可能となる。
【0033】
(保護部材、カバー)
次に、図1から図3を用いて、本発明の一実施形態に係る圃場水位管理システム100における、保護部材1を説明する。ここで、図3に示す側面図における上側を前側、下側を後側とする。また、図3に示す側面図における左右方向は上下方向、すなわち、D1方向である。さらに、図3に示す側面図における奥行方向は、D2方向であり、D1方向とD2方向の両方に直交する方向はD3方向である。D3方向における、保護部材1に対する仕切り板20側が後側である。D3方向における、保護部材1に対する仕切り板20の反対側が前側である。保護部材1は、保護部材1Aとカバー1Bを備える。
保護部材1Aは、前側第1平面部2と、前側第2平面部3と、接続部4と、垂直部6と、後側平面部5と、開口部8Hと、を有する。保護部材1Aは、前側第1平面部2を1つ、前側第2平面部3、接続部4、後側平面部5、及び、開口部8Hを、それぞれ、2つずつ有し、垂直部6を4つ有している。前側第1平面部2、前側第2平面部3、及び、後側平面部5は、D3方向に直交する水平面上に延在する板状である。垂直部6は、少なくともD3方向成分を有する板状であればよく、D2方向に直交する水平面上に延在する板状でなくてもよい。
【0034】
前側第1平面部2は、D1方向に延びるとともに、D1方向の両側においてD2方向に延びるように形成された前側第2平面部3と接続されている。前側第2平面部3は、それぞれ対応する後側平面部5と接続部4及び垂直部6を介して接続されている。接続部4は、それぞれD2方向における前側第1平面部2から遠い側に向かうに従って、前側から後側に向かって湾曲するように形成されるとともに、垂直部6を経て、対応する後側平面部5に接続されている。接続部4は、曲面状である。後側平面部5は、D1方向に離れた2つの垂直部6を接続する。開口部8Hは、それぞれ対応する後側平面部5から前側第1平面部2にかけて、前側第1平面部2と、前側第2平面部3と、接続部4と、後側平面部5と、の強度を逸失しない範囲において形成されている。
【0035】
後側平面部5には、取付け用ねじ穴7a(ねじ穴)が、上記仕切り板20に形成された仕切り板側ねじ穴21の位置に対応する任意の位置に形成されている。前側第1平面部2、前側第2平面部3、垂直部6の、それぞれには、後述のカバー1Bを取付ける際に用いるカバー取付け用ねじ穴7(ねじ穴)が任意の位置に任意の個数形成されている。
【0036】
また、保護部材1をD2方向から側面視して、前側第1平面部2から後側平面部5の距離は、圃場水位管理システム100を設置する側溝の幅に応じて変更できる。好ましくは、上記距離は側溝の幅の半分以下となるように設定するとよい。具体的には、接続部4と垂直部6の有するD3方向成分の寸法を調整することで設定が可能となる。
なお、前側第1平面部2から後側平面部5の距離は側溝の幅の半分以下でなくともよい。例えば、水路の水位が低いような地域においては、前側第1平面部2から後側平面部5の距離は側溝の幅の半分以上としてもよく、これにより側溝内の水位を上昇させる堰上げ効果が期待できる。
【0037】
次に、カバー1Bは、カバー前側部8と、カバー湾曲部9と、カバー後側部10と、を有する。
カバー前側部8は、開口部8Hよりも、D1方向及びD2方向のそれぞれに大きな寸法を有するとともに、D3方向に直交する水平面上に延在する板状である。カバー後側部10は、カバー湾曲部9を介して、カバー前側部8と接続されており、D1方向の寸法が開口部8Hよりも大きい。また、カバー後側部10のD3方向の長さは、垂直部6のD3方向の長さと同等となるように設定される。D3方向から見て、カバー前側部8とカバー後側部10の、それぞれ前側第1平面部2、前側第2平面部3、垂直部6と重なる部分には、カバー側ねじ穴11(ねじ穴)が形成されている。カバー側ねじ穴11の個数及び位置は、前側第1平面部2、前側第2平面部3、垂直部6にカバー1Bを取付けるべく形成されたカバー取付け用ねじ穴7の、上記任意の位置及び任意の個数に対応する。
【0038】
(保護部材1Aとカバー1Bの取付け方法)
図2に示すように、カバー1BのD2方向における一方の開口部8Hに重ね合わせるようにカバー1Bを移動させ、配置する。このとき、カバー1Bと保護部材1Aに形成されたカバー取付け用ねじ穴7及びカバー側ねじ穴11の位置を一致させる。一致させた後、ボルト及びナット、雄ねじ等で固定する。カバー1Bは、保護部材1AのD2方向における、側溝を流れる水の流れ方向の上流側に位置する開口部8Hを閉塞するように取付けられる。従って、保護部材1AのD2方向における、側溝を流れる水の流れ方向の下流側に位置する開口部8Hには、取付けなくてよい。このように、保護部材1Aは、側溝を流れる水の流れ方向に応じて、開口部8Hを変更可能である。
【0039】
(止水機構10への取付け)
図5に示すように、上記保護部材1Aとカバー1Bの取付け方法によって保護部材1Aにカバー1Bが取付けられた保護部材1の取付け用ねじ穴7aと、止水機構10が備える仕切り板20に形成された仕切り板側ねじ穴21ねじ穴が、それぞれ重なるように配置し、ボルト及びナット、雄ねじ等で固定するのみである。
【0040】
(保護部材1の相対的寸法関係)
図5図7に示すように、保護部材1Aの上端は、貫通穴70の上端よりも高く、側溝の壁面の高さよりも低い位置に設定される。また、保護部材1Aの下端は、貫通穴70の下端よりも低い位置に設定される。すなわち、少なくとも、前側第1平面部2と前側第2平面部3のD1方向における長さは、貫通穴70よりも大きい。次に、前側第2平面部3のD2方向における左右両端のそれぞれは、貫通穴70の左右両端のそれぞれよりも、D2方向において、前側第1平面部2よりも遠い位置に設定される。すなわち、前側第2平面部3のD2方向における長さは、貫通穴70よりも大きい。なお本実施形態では、後側平面部が、(1)仕切り板20において、保護部40よりもD2方向の外側に配置されている、(2)保護部40の前面に配置されている、のいずれかであることが好ましい。これにより、保護部40が保護部材1Aと干渉することがない。その結果、保護部40と保護部材1Aとの間の隙間から、意図せずにごみなどが流入することが規制される。
【0041】
保護部材1Aの上端に蓋部が設けられていてもよい。蓋部は、方向D1から見た保護部材1Aの上端の開口部を塞ぐように設けられ、側溝の水位が保護部材1Aを超えた場合でもゴミが保護部材1A内に侵入するのを防ぐことができる。蓋部はカバー1Bと同様に着脱可能であってもよい。
なお、蓋部は板状部材30の上下移動を阻害しない様、D1方向に回転付与部80および板状部材30の形状に対応した開口部を設けるか、板状部材30の移動範囲よりも広い範囲を覆うように設けられる。
【0042】
(圃場水位管理システム100の設置例)
図8に示すように、圃場水位管理システム100が側溝に設置されている。側溝を流れる水の流れ方向は、D2方向に平行に、図8における左側から右側へ向かう方向である。図8においては、板状部材30は、閉位置にあり、側溝から圃場への、水の流入は行われていない状態である。また、水面には草等のゴミが流れていることを模式的に示している。
【0043】
(圃場水位管理システム100使用時の水位制御)
圃場水位管理システム100使用時に、圃場の水位と側溝の水位が等しくなる場合がある。この場合、板状部材30が開位置にあっても、側溝から圃場へ、用水を流入させることができない。また、圃場の水位が、側溝の水位よりも高い場合、板状部材30を開位置とすると、圃場から側溝へと、用水が逆流する。このような事象を防ぐため、圃場水位管理システム100を設置した側溝を流れる水の流れ方向の下流側に、水を堰き止めるための堰等を設け、側溝の水位が、貫通穴70の上端よりも高く、圃場の水位よりも高い状態を維持することが望ましい。
加えて、上記水位を維持することにより、水面に浮遊したゴミが、仮に、渦巻きに巻き込まれて保護部材1内に侵入したとしても、仕切り板20により、水面に浮遊したゴミが圃場内へと侵入することを防ぐことができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る圃場水位管理システム100の保護部材1は、保護部材1Aの下側を覆いつくすように、シート状部材12が設けられていてもよい。上記説明したように、保護部材1Aの下端は、貫通穴70の下端よりも低い位置に設定されているため、シート状部材12を設けることにより、保護部材1Aの下側からゴミ等が、保護部材1内に侵入することを防止できる。また、シート状部材12は、側溝の底面に接するように設けられてもよい。このように、保護部材1は、保護部材1の下端に取付けられるシート状部材12を有する。また、シート状部材12は、側溝の底面に接するように設けられている。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る圃場水位管理システム100によれば、少なくとも左右一方、側溝を流れる水の流れ方向の下流側に開口部8Hが設けられた保護部材1により、止水機構10が有する板状部材30が覆われる。これにより、側溝の上流側から流れる水は、一旦、側溝の、圃場水位管理システム100が備える止水機構10における貫通穴70の正面の領域を、下流側へと通過するとともに、水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等も同様に下流側へと通過する。ここで、保護部材1には、下流側に開口部8Hが設けられているため、水のみが、流体であることに起因して、貫通穴70、即ち、圃場に向けても流入することとなる。従って、側溝の水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等が、圃場に向けて流入するのを防止することができる。
【0046】
さらに、保護部材1の上端が、側溝側水位よりも高い位置に設定することができるため、水面に浮遊した草等、並びに水中のゴミ等が、圃場に向けて流入するのを、より効果的に防止することができる。
【0047】
さらに、施工状況、すなわち、側溝の形状、側溝を流れる水の流れ方向に応じて、保護部材1に設けられた開口部8Hの位置を変更できるため、施工性、汎用性等を向上させることができる。
【0048】
さらにシート状部材12によって、保護部材1の下端を覆うことにより、側溝の底面付近のゴミ等が、圃場に向けて流入することを、防止することができる。
【0049】
さらに、シート状部材12によって、保護部材1の下端を覆うとともに、シート状部材12と、側溝の底面が物理的に接していることにより、側溝の底面付近のゴミ等が、圃場に向けて流入することを、より効果的に防止することができる。
【0050】
さらに、スライド機構60を手動、すなわち人力にて操作することが不要となり、圃場水位管理の作業効率を向上することができる。
【0051】
さらに、伝達及び指令の内容を予め設定しておくことで、管理する圃場が広大であっても、少ない労働力で、管理が可能となり、生産性が向上する。
【0052】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100…圃場管理システム
10…止水機構
20…仕切り板
30…板状部材
40…保持部
60…スライド機構
80…回転付与部
116…螺着部
1…保護部材
1A…保護部材本体
1B…カバー
8H…開口部
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